説明

帰還型利得向上アンテナ

【課題】短縮型アンテナの欠点である利得低減を、正帰還によって利得を増大させアンテナの性能を飛躍的に向上させる。
【解決手段】アンテナエレメント2及び3の近くに導体4及び7を設置しエレメントとの間のキャパシタンスを利用してエレメントに発生した電界エネルギーを捕捉し、かつリアクタンス成分キャンセル用コイル5及び6を設置することにより、非常に効率よく正帰還が働くようにした。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【技術分野】
【0002】
この発明は主に短縮されたアンテナの利得向上を実現する技術に関する。
【背景技術】
【0003】
アンテナから輻射される電磁界を捕捉しそのエネルギーを給電点に給電エネルギーと同位相で帰還させると大幅な利得向上が実現出来ることが発見された。間接的に電磁界の位相が一致する部分を増大させる効果があり利得向上が計れる。本考案はこの現象を実際のアンテナにて具体化するものである。
【発明の開示】
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
【0006】
従来より短縮アンテナ利得向上法が考案されているが特に短縮率が大きいと利得の低下が著しく実用的でなくなる。この問題が本発明で解決しようとする課題である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
【0011】
請求項1の導体4及び5はアンテナエレメントの近くに位置し、エレメントとの間のキャパシタンスを利用してエレメントに発生した電界を捕捉する。この導体と給電点に接続しても利得の向上を計ることができるが十分とは言えない。これで得られる利得向上は数dB程度である。
【0012】
そこでコイル5及び6を挿入するとリアクタンスがうち消され電界捕捉用導体に誘起された電圧による電流が障害なく流れることになる。給電用同軸ケーブルの被覆から見た導体12での電圧位相と導体16での電圧位相は一致している。同様に導体13での電圧位相と導体17での電圧位相は一致している。この時の利得向上は20dBにも達することが実験的に確かめられている。
【0013】
もともと非常に短縮されたアンテナに適応するものなのでほぼ短縮されていない半波長ダイポールアンテナの利得並になったものと考えられる。
【発明の効果】
【0014】
【0015】
とりわけ短縮された小型アンテナの効率を向上させ短縮されていない大型アンテナと同等の性能に出来ること。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の第1実施の形態に係るアンテナ利得向上機構1を、図1及至図2り説明する。図1は実施例の典型である。導体2、コイル1、導体3は短縮されたダイポールアンテナを構成する。
【0017】
短縮されたアンテナの輻射インピーダンスは短縮されていないアンテナに比し非常に小さく効率の低下をまねくものである。なぜならコイル2のQに限りがあるため供給電力のうち多くがコイル1に消費されてしまうからである。
【0018】
そこで導体4及び5を設置し導体2及び導体4間及び導体3及び導体5にキャパシタンスを形成させるとこの間に電界が生じることになる。さらにコイル5及び6により回路の容量性リアクタンスを相殺させると導体4、コイル5、コイル1、導体15また導体7、コイル6、コイル1、導体14導体2とで形成される閉回路に最大電流が流れることになる。
【0019】
給電用同軸ケーブル11の外皮又は心線から見た導体12に印加される位相と導体16に印加される電圧の位相が一致されるようにコイル5、6のインダクタンスが調整されている。この位相一致が起きるのはダイポール・アンテナの共振周波数と同じ周波数で駆動した場合である。
【0020】
この機構によりアンテナ輻射インピーダンスが大幅に大きくなり効率が非常に高くなる。実験ではこの利得の向上は20dBにも達する。ほぼ短縮されていないダイポールアンテナに匹敵する程の利得となる結果を得た。
【0021】
給電用同軸ケーブル11より供給された高周波電力は12のバランに伝達され平衡電力となる。この電力は導体12、コンデンサ8及び導体13、コンデンサ9を通して導体4、7へ供給される。更にコイル5、6を介して短縮ダイポール・アンテナの共振コイルへと供給される。
【0022】
コンデサ8,9は主にコイル5,6による誘導性リアクタンスを相殺するために必要なものである。
【0023】
このように構成されたアンテナで調整が完全であれば、11の給電用同軸ケーブルの被覆から見た導体12での電圧位相と導体16での電圧位相は一致している。
同様に導体13での電圧位相と導体17での電圧位相は一致している。導体16,17には導体12,13での電圧に比し高い電圧となる。このことからコイル1の中立点である電力供給点には正帰還された高周波電力が供給されることになる。
【0024】
アンテナエレメント2及び3は通常波長の1/100から1/200程度の大きさで薄い銅板等を丸く曲げて作る。電界捕捉導体4及び7も同様である。アンテナの短縮率が大きくなくエレメント長が長い場合には細いアルミニューム・パイプやワイヤでもよい。
【0025】
アンテナエレメント2から3に至るまで直線上に配列させるのがつくりやすい。これらの支持には塩化ビニール製パイプ等の樹脂製をつかう。
【0026】
コンデンサ7は高周波電力用コンデンサを使う。マイカコンデンサやチタンコンデンサが適当である。
【0027】
コイルは直径2mm程度の太さのエナメル線を捲いた物を使う。
【0028】
図2は第2実施例である。不平衡型の典型例である。短縮ダイポール・アンテナのエレメント片側3のみの近傍に導体4を設置したものである。この形態はアンテナの垂直設置を容易に可能にすることを目的にしたものである。動作は実施例1と変わらないがアンテナ内部の給電用同軸ケーブルの存在による位相のずれのため完全な調整が困難な場合があり得る。
【0029】
また給電用同軸ケーブル11の芯線と被覆側を反対にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施例1を示す構成図
【図2】実施例2を示す構成図
【符号の説明】
【0031】
1 短縮ダイポール・アンテナ用共振コイル
2 短縮ダイポール・アンテナ用エレメント
3 短縮ダイポール・アンテナ用エレメント
4 電界捕捉用導体
5 帰還部リアクタンス相殺用コイル
6 帰還部リアクタンス相殺用コイル
7 電界捕捉用導体
8 給電部リアクタンス相殺用コンデンサ
9 給電部リアクタンス相殺用コンデンサ
10 バラン
11 給電用同軸ケーブル
12 給電用導体
13 給電用導体
14 短縮ダイポール・アンテナ用ワイヤエレメント
15 短縮ダイポール・アンテナ用ワイヤエレメント
16 短縮ダイポール・アンテナ用給電導体
17 短縮ダイポール・アンテナ用給電導体
18 アンテナ内部用給電同軸ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナの利得向上を目的とする技術に於いて、アンテナ・エレメントより輻射される電界を補足する導体(4)、(7)とコイル(5)、(6)を設置しこのエネルギーの電圧、電流の位相と給電電力の電圧、電流との位相を一致させるように帰還させることにより非常に利得向上を実現出来ることを特徴とする。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−5451(P2008−5451A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−197448(P2006−197448)
【出願日】平成18年6月21日(2006.6.21)
【出願人】(000235819)