説明

常温硬化型組成物および親水性部材

【課題】各種物品表面に優れた親水性を付与し、かつ、耐摩耗性、透明性、保存安定性、防曇性、防汚性、可視光透過性、耐薬品性、耐候性に優れるとともに、常温で硬化可能な常温硬化型組成物およびこれを用いた親水性部材を提供すること。
【解決手段】(A)加水分解性シリル基を有する親水性ポリマーおよび(B)金属キレート触媒または金属塩触媒を含有することを特徴とする常温硬化型組成物。前記常温硬化型組成物を、基材上に塗布し、常温乾燥を行うことにより得られる親水性部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の基板表面に親水性に優れ、且つ、良好な耐磨耗性、耐傷性を有する親水性膜を常温で形成するのに有用な常温硬化型組成物、及び、該常温硬化型組成物による親水性膜を備えた親水性、耐磨耗性、耐傷性表面を有する親水性部材に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂フィルム表面を有する製品・部材は、幅広い分野で用いられ、目的に応じ加工され機能を付与した上で使用されている。但しそれらの表面は、樹脂本来の特性から、疎水性・親油性を示すものが一般的である。従って、これらの表面に汚れ物質として、油分等が付着した場合、容易に除去することができず、また蓄積することにより、該表面を有する製品・部材の機能・特性を著しく低下させることがあった。また高湿度の条件や降雨下に曝される製品・部材では、水滴が付着することにより、透明な機能を有する製品・部材において、光の乱反射により光の透過性が阻害される問題があった。ガラスや金属等の無機表面を有する製品・部材においても、油分等の汚れ物質の付着に対する防汚性は十分とは言えず、水滴の付着による防曇性についても十分ではなかった。特に自動車用ガラス、建材用ガラスでは、都市媒塵、自動車等の排気ガスに含有されるカーボンブラック等の燃焼生成物、油脂、シーラント溶出成分等の疎水性汚染物質が付着する場合や、水滴の付着によりガラスを透して(鏡の場合は反射して)視界を確保することが妨げられる場合が多く、防汚性や防曇性の機能付与が強く求められていた。
【0003】
防汚性の観点から、汚れ物質を油分等の有機系物質と想定すると、汚れ防止の為には材料表面との相互作用を低減する、即ち親水化するか、撥油化する必要がある。また防曇性に対しても、付着水滴を表面に一様に拡げる拡張濡れ性(即ち親水性)を付与するか、付着水滴を除去し易くさせる撥水性を付与することが必要となる。従って、現在検討されている防汚・防曇材料は、親水化や撥水・撥油化に依拠しているものが多い。
従来提案されている親水化するための表面処理方法、例えば、エッチング処理、プラズマ処理等によれば、高度に親水化されるものの、その効果は一時的であり、親水化状態を長期間維持することができない。また、親水性樹脂の一つとして親水性グラフトポリマーを使用した表面親水性塗膜も提案されている(非特許文献1)。この報告によればこの塗膜はある程度の親水性を有するものの、基材との親和性が充分とはいえず、より高い耐久性が求められている。
【0004】
その他の表面親水性機能を有する部材として、従来から光触媒として酸化チタンの利用が知られている。これは、光照射による有機物の酸化分解機能と親水化機能に基づくもので、例えば、特許文献1において、基材表面に光触媒含有層を形成すると、光触媒の光励起に応じて表面が高度に親水化されることが開示されており、この技術をガラス、レンズ、鏡、外装材、水回り部材等の種々の複合材に適用すれば、これら複合材に優れた防曇、防汚等の機能を付与できることが報告されている。酸化チタンをガラス表面にコーティングした部材は、セルフクリーニング材料として、建材用窓ガラスや自動車用フロントガラスに使用されているが、防汚性や防曇性の機能発現には、長時間太陽光の下に曝すことが必要であり、長期経時での汚れの蓄積により、その性質が劣化することは避けられなかった。また膜強度が十分とは言えず、耐久性の向上が必要であった。またプラスチック基材上に酸化チタン層を設けたセルフクリーニングフィルムも自動車用サイドミラー等に使用されているが、同じく十分な膜強度を有さず、より良好な耐摩耗性を有する親水性材料が求められていた。
【0005】
一方、撥水・撥油性に基づく防汚・防曇性材料としては、主にシリコーン化合物やフッ素化合物が使用されている。例えば、基材表面を末端シラノール有機ポリシロキサンで被覆した防汚材料が特許文献2に、ポリフルオロアルキル基を有するシラン化合物を有する材料が特許文献3に、二酸化珪素を主成分とする光学薄膜とパーフルオロアクリレートとアルコキシシラン基を有するモノマーとの共重合体との組合せが特許文献4に開示されている。しかしながらこれらのシリコーン化合物やフッ素化合物を用いた防汚材料は、防汚性が不十分であり、指紋、皮脂、汗、化粧品等の汚れを除去し難く、フッ素やシリコーン等の表面エネルギーの低い化合物による表面処理は、経時による機能の低下が懸念され、耐久性の優れた防汚・防曇性部材の開発が望まれていた。
【0006】
【特許文献1】国際公開第96/29375号パンフレット
【特許文献2】特開平4−338901号公報
【特許文献3】特公平6−29332号公報
【特許文献4】特開平7−16940号公報
【非特許文献1】化学工業日報、1995年1月30日
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、各種物品表面に優れた親水性を付与し、かつ、耐摩耗性、耐傷性、透明性、保存安定性に優れるとともに、常温で硬化可能な常温硬化型組成物およびこれを用いた親水性部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下のとおりである。
〔1〕
(A)加水分解性シリル基を有する親水性ポリマーおよび(B)金属キレート触媒または金属塩触媒を含有することを特徴とする常温硬化型組成物。
〔2〕
前記金属キレート触媒または金属塩触媒における金属がTi、ZrおよびAlから選ばれることを特徴とする〔1〕に記載の常温硬化型組成物。
〔3〕
(C)金属アルコキシド化合物をさらに含有することを特徴とする〔1〕または〔2〕に記載の常温硬化型組成物。
〔4〕
前記(C)金属アルコキシド化合物がSi、Ti、AlおよびZrから選択される元素のアルコキシド化合物であることを特徴とする〔3〕に記載の常温硬化型組成物。
〔5〕
前記加水分解性シリル基を有する親水性ポリマーが、下記一般式(I)〜(III)で表される構造の少なくとも1種を有するポリマーであることを特徴とする〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の常温硬化型組成物。
【0009】
【化1】

【0010】
(一般式(I)〜(III)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表し、mとnはモノマーのモル比を表わす。ただし、m1≧5、m2≧50、m1+n1=100、m2+n2=100である。Xは加水分解性シリル基を表し、A、L、L、L3、L4及びL5は、それぞれ独立に単結合または連結基を示し、Yは−NHCOR11、−CONH2、−CON(R112、−COR11、−OH、−CO2M、−SO3M、−POM、−OPOM又は−N(R11を表す。ここで、R11は炭素数1〜18のアルキル基、アリール基、アラルキル基を表し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はオニウムを表し、Zはハロゲンイオンを表す。Bは下記一般式(IV)で表される構造を有する基を表す。)
【0011】
【化2】

【0012】
(一般式(IV)中、R1、R2、L及びYは一般式(I)中のものと同じものを表す。)
〔6〕
前記一般式(III)におけるLが、単結合、または、−CONH−、−NHCONH−、−OCONH−、−SONH−および−SO−からなる群より選択される構造を1つ以上有する連結基を表すことを特徴とする〔5〕に記載の常温硬化型組成物。
〔7〕
基板上に、〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の常温硬化型組成物を塗布し、常温乾燥を行うことにより形成される親水性膜を有することを特徴とする親水性部材。
〔8〕
前記常温乾燥の温度が10〜50℃であり、常温乾燥時間が10分〜8時間であることを特徴とする〔7〕に記載の親水性部材。
〔9〕
前記の塗布がロールコーティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、スプレーコーティング法、フローコーティング法のいずれかの方法で行われることを特徴とする〔7〕または〔8〕に記載の親水性部材。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、各種物品表面に優れた親水性を付与し、かつ、耐摩耗性、耐傷性、透明性、保存安定性に優れるとともに、常温で硬化可能な常温硬化型組成物およびこれを用いた親水性部材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の常温硬化型組成物は、(A)加水分解性シリル基を有する親水性ポリマーおよび(B)金属キレート触媒または金属塩触媒を含有する。
加水分解性シリル基を有する親水性ポリマーを用いることにより、高い親水性を発現することができる。また、加水分解性シリル基により形成された架橋構造を有する親水性層は、高強度の皮膜となる。更に、金属キレート触媒または金属塩触媒を用いることにより、ゲル化や凝集物を生じず安定であり、常温で硬化可能な常温硬化型組成物を得ることができる。
【0015】
以下に、本発明について詳細に説明する。
((A)加水分解性シリル基を有する親水性ポリマー)
本発明における常温硬化型組成物は、(A)加水分解性シリル基を有する親水性ポリマーを含有する。
加水分解性シリル基は下記一般式(V)で表すことができる。
―SiR113−m(OR12 (V)
式中、R11、R12はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を表し、mは1〜3で表される整数である。
前記加水分解性シリル基の加水分解物のシラノール基が縮合してSi−O−Si結合を形成することにより、強固な膜を形成することが可能となる。
【0016】
また本発明に使用される親水性ポリマーは、親水性基を有する。親水性基としては、好ましくはカルボキシル基、カルボキシル基のアルカリ金属塩、スルホン酸基、スルホン酸基のアルカリ金属塩、ヒドロキシ基、アミド基、カルバモイル基、スルホンアミド基、スルファモイル基等の官能基が挙げられる。これらの基は、ポリマー中のどの位置に存在しても良い。ポリマー主鎖より直接、または連結基を介し結合しているか、ポリマー側鎖やグラフト側鎖中に結合しており、複数個が存在するポリマー構造が好ましい。
【0017】
また、本発明に使用される親水性ポリマーは、好ましくは下記で説明する(C)金属アルコキシド化合物と、触媒の作用等により結合を生じる基を有するポリマーであるのがよい。金属アルコキシド化合物と、触媒の作用により結合を生じる基としては、前記の一般式(V)で表される加水分解性シリル基のほか、カルボキシル基、カルボキシ基のアルカリ金属塩、無水カルボン酸基、アミノ基、ヒドロキシ基、エポキシ基、メチロール基、メルカプト基、イソシアナート基、ブロックイソシアナート基、アルコキシシリル基、アルコキシチタネート基、アルコキシアルミネート基、アルコキシジルコネート基、エチレン性不飽和基、エステル基、テトラゾール基などの反応性基が挙げられる。また親水性基、および金属アルコキシド化合物と触媒の作用等により結合を生じる基を有するポリマー構造としては、エチレン性不飽和基(例えばアクリレート基、メタクリレート基、イタコン酸基、クロトン酸基、桂皮酸基、スチレン基、ビニル基、アリル基、ビニルエーテル基、ビニルエステル基など)がビニル重合したポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリアミック酸などのような縮重合したポリマー、ポリウレタンなどのような付加重合したポリマーの他、セルロース、アミロース、キトサンなどの天然物環状ポリマー構造を好ましく挙げることができる。
【0018】
本発明で使用する加水分解性シリル基を有する親水性ポリマーは、下記一般式(I)〜(III)で表される構造の少なくとも1種を有するポリマーであることが特に好ましい。
【0019】
【化3】

【0020】
一般式(I)〜(III)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表し、mとnはモノマーのモル比を表わす。ただし、m1≧5、m2≧50、m1+n1=100、m2+n2=100である。Xは加水分解性シリル基(以下、反応性基ということがある)を表し、A、L、L、L3、L4及びL5は、それぞれ独立に単結合または連結基を示し、Yは−NHCOR11、−CONH2、−CON(R112、−COR11、−OH、−CO2M、−SO3M、−POM、−OPOM又は−N(R11を表す。ここで、R11は炭素数1〜18のアルキル基、アリール基、アラルキル基を表し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はオニウムを表し、Zはハロゲンイオンを表す。Bは下記一般式(IV)を表す。
【0021】
【化4】

【0022】
一般式(IV)中、R1、R2、L及びYは一般式(I)中のものと同じものを表す。
【0023】
本発明で用いられる親水性ポリマーは、反応性基と親水性基を有する。反応性基は、主鎖の末端に一つまたは複数有する場合や、側鎖に一つまたは複数有する場合などがある。
「反応性基」は、金属アルコキシドの加水分解、重縮合物に反応して化学結合を形成できる。また、反応性基同士が化学結合を形成してもよい。親水性ポリマーは、水溶性であることが好ましく、金属アルコキシドの加水分解、重縮合物と反応することにより水不溶性になることが好ましい。
化学結合は、通常の意味と同様に、共有結合、イオン結合、配位結合、水素結合を含む。化学結合は、共有結合であることが好ましい。
【0024】
親水性ポリマーは、片末端に2以上の反応性基を有していてもよい。2以上の反応性基は、互いに異なっていてもよい。
【0025】
親水性ポリマーの繰り返し単位と反応性基との間や、親水性ポリマーの繰り返し単位と主鎖に連結基が介在していることが好ましい。連結基AおよびL1、L2、L、L、Lは、それぞれ独立に単結合、下記で説明する連結基のほか、−N<、脂肪族基、芳香族基、複素環基、およびそれらの組合せから選ばれることが好ましい。連結基は、−O−、−S−、−CO−、−NH−、あるいは、−O−または−S−または−CO−または−NH−を含む組合せであることが好ましい。
【0026】
(一般式(I)で表されるポリマー)
一般式(I)で表されるポリマー、すなわち片末端に反応性基を有する親水性ポリマーは、例えば、連鎖移動剤(ラジカル重合ハンドブック(エヌ・ティー・エス、蒲池幹治、遠藤剛)に記載)やIniferter (Macromolecules1986,19,p287−(Otsu)に記載)の存在下に、親水性モノマー(例、アクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸3−スルホプロピルのカリウム塩)をラジカル重合させることにより合成できる。連鎖移動剤の例は、3−メルカプトプロピオン酸、2−アミノエタンチオール塩酸塩、3−メルカプトプロパノール、2−ヒドロキシエチルジスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランを含む。また、連鎖移動剤を使用せず、反応性基を有するラジカル重合開始剤を用いて、親水性モノマー(例、アクリルアミド)をラジカル重合させてもよい。
片末端に反応性基を有する親水性ポリマーの質量平均分子量は、100万以下が好ましく、1000乃至100万がさらに好ましく、2000乃至10万が最も好ましい。
【0027】
この一般式(I)で表されるポリマーは、末端に反応性基を有する親水性ポリマーである。上記一般式(I)において、R1、R2はそれぞれ独立に、水素原子又は炭化水素基を表す。炭化水素基としては、アルキル基、アリール基などが挙げられ、炭素数8以下の直鎖、分岐又は環状のアルキル基が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられる。R1、R2は、効果及び入手容易性の観点から、好ましくは水素原子、メチル基又はエチル基である。
【0028】
これらの炭化水素基は更に置換基を有していてもよい。アルキル基が置換基を有するとき、置換アルキル基は置換基とアルキレン基との結合により構成され、ここで、置換基としては、水素を除く一価の非金属原子団が用いられる。好ましい例としては、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、アシルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカバモイルオキシ基、アシルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、スルホ基、スルホナト基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、ホスフォノ基、ホスフォナト基、ジアルキルホスフォノ基、ジアリールホスフォノ基、モノアルキルホスフォノ基、アルキルホスフォナト基、モノアリールホスフォノ基、アリールホスフォナト基、ホスフォノオキシ基、ホスフォナトオキシ基、アリール基、アルケニル基が挙げられる。
【0029】
一方、置換アルキル基におけるアルキレン基としては前述の炭素数1から8までのアルキル基上の水素原子のいずれか1つを除し、2価の有機残基としたものを挙げることができ、好ましくは炭素原子数1から12までの直鎖状、炭素原子数3から12までの分岐状ならびに炭素原子数5から10までの環状のアルキレン基を挙げることができる。該置換基とアルキレン基を組み合わせる事により得られる置換アルキル基の、好ましい具体例としては、クロロメチル基、ブロモメチル基、2−クロロエチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシエチル基、アリルオキシメチル基、フェノキシメチル基、メチルチオメチルと、トリルチオメチル基、エチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基、モルホリノプロピル基、アセチルオキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシエチル基、N−フェニルカルバモイルオキシエチル基、アセチルアミノエチル基、N−メチルベンゾイルアミノプロピル基、2−オキシエチル基、2−オキシプロピル基、カルボキシプロピル基、メトキシカルボニルエチル基、アリルオキシカルボニルブチル基、
【0030】
クロロフェノキシカルボニルメチル基、カルバモイルメチル基、N−メチルカルバモイルエチル基、N,N−ジプロピルカルバモイルメチル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルエチル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルバモイルメチル基、スルホブチル基、スルホナトブチル基、スルファモイルブチル基、N−エチルスルファモイルメチル基、N,N−ジプロピルスルファモイルプロピル基、N−トリルスルファモイルプロピル基、N−メチル−N−(ホスフォノフェニル)スルファモイルオクチル基、ホスフォノブチル基、ホスフォナトヘキシル基、ジエチルホスフォノブチル基、ジフェニルホスフォノプロピル基、メチルホスフォノブチル基、メチルホスフォナトブチル基、トリルホスフォノへキシル基、トリルホスフォナトヘキシル基、ホスフォノオキシプロピル基、ホスフォナトオキシブチル基、ベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基、1−メチル−1−フェニルエチル基、p−メチルベンジル基、シンナミル基、アリル基、1−プロペニルメチル基、2−ブテニル基、2−メチルアリル基、2−メチルプロペニルメチル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基等を挙げることができる。
【0031】
AおよびL1は単結合又は有機連結基を表す。ここで、AおよびL1が有機連結基を表す場合、AおよびL1は非金属原子からなる多価の連結基を示し、具体的には、0個から60個までの炭素原子、0個から10個までの窒素原子、0個から50個までの酸素原子、0個から100個までの水素原子、及び0個から20個までの硫黄原子から成り立つものである。より具体的な連結基としては下記の構造単位またはこれらが組合わされて構成されるものを挙げることができる。
【0032】
【化5】

【0033】
また、Yは−NHCOR7、−CONH2、−CON(R112、−COR11、−OH、−CO2M、−SO3M、−PO3M、−OPO3M又は−N(R1131を表し、ここで、R11は、炭素数1〜18の直鎖、分岐又は環状のアルキル基、アリール基、アラルキル基を表し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はオニウムを表し、Z1はハロゲンイオンを表す。また、−CON(R112のように複数のR11を有する場合、R11同士が結合して環を形成していてもよく、また、形成された環は酸素原子、硫黄原子、窒素原子などのヘテロ原子を含むヘテロ環であってもよい。R11はさらに置換基を有していてもよく、ここで導入可能な置換基としては、前記R1、R2がアルキル基の場合に導入可能な置換基として挙げたものを同様に挙げることができる。
【0034】
7としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が好適に挙げられる。また、Mとしては、水素原子;リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属、又は、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウムなどのオニウムが挙げられる。Yとしては、具体的には、−NHCOCH3、−CONH2、−COOH、−SO3-NMe4+、モルホリル基等が好ましい。
【0035】
本発明に好適に用い得る一般式(I)で表される親水性ポリマーの具体例(例示化合物1〜例示化合物13)を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0036】
【化6】

【0037】
【化7】

【0038】
上記に例示した親水性ポリマーは、下記一般式(i)で表されるラジカル重合可能なモノマーと、下記一般式(ii)で表されるラジカル重合において連鎖移動能を有するシランカップリング剤を用いてラジカル重合することにより合成することができる。シランカップリング剤(ii)が連鎖移動能を有するため、ラジカル重合においてポリマー主鎖末端にシランカップリング基が導入されたポリマーを合成することができる。
【0039】
【化8】

【0040】
上記式(i)及び(ii)において、A、R1〜R2、L1、X、Yは、上記式(I)と同義である。また、これらの化合物は、市販されおり、また容易に合成することもできる。
【0041】
(一般式(II)で表されるポリマー)
上記一般式(II)で表されるポリマー、すなわち反応性基を複数個有する親水性ポリマーは、反応性基を有する幹ポリマーに親水性基を有する側鎖を導入してなる親水性グラフトポリマーを用いることができる。
上記式(II)において、R3、R4、R5およびR6は、それぞれ独立に、上記式(I)のR1、R2と同様の置換基を表す。L2、L3は、上記式(I)のLと同義である。Bは、上記式(IV)で表され、式(IV)中の、R1、R2、L1及びYは式(I)および(II)中のものと同じである。Xは上記式(I)と同義である。
この親水性グラフトポリマーは、一般的にグラフト重合体の合成法として公知の方法を用いて作成することができる。具体的には、一般的なグラフト重合体の合成方法は、“グラフト重合とその応用”井手文雄著、昭和52年発行、高分子刊行会、および“新高分子実験学2、高分子の合成・反応”高分子学会編、共立出版(株)1995、に記載されており、これらを適用することができる。
【0042】
グラフト重合体の合成方法としては、基本的に1.幹高分子から枝モノマーを重合させる、2.幹高分子に枝高分子を結合させる、3.幹高分子に枝高分子を共重合させる(マクロマー法)という3つの方法に分けられる。これらの3つの方法のうち、いずれを使用しても本発明に用いる親水性グラフトポリマーを作成することができるが、特に製造適性、膜構造の制御という観点からは「3.マクロマー法」が優れている。
【0043】
マクロモノマーを使用したグラフトポリマーの合成は前記の“新高分子実験学2、高分子の合成・反応”高分子学会編、共立出版(株)1995に記載されている。また山下雄他著“マクロモノマーの化学と工業”アイピーシー、1989にも詳しく記載されている。本発明に使用されるグラフトポリマーは、まず、前記の方法により合成した親水性のマクロモノマー(親水性ポリマー側鎖の前駆体に相当する)と反応性基を有するモノマーとを共重合することにより、合成することができる。
【0044】
(親水性マクロモノマー)
本発明で使用される親水性マクロモノマーのうち特に有用なものは、アクリル酸、メタクリル酸などのカルボキシル基含有のモノマーから誘導されるマクロモノマー、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルスチレンスルホン酸、およびその塩のモノマーから誘導されるスルホン酸系マクロモノマー、アクリルアミド、メタクリルアミドなどのアミド系マクロモノマー、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミドなどのN−ビニルカルボン酸アミドモノマーから誘導されるアミド系マクロモノマー、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、グリセロールモノメタクリレートなどの水酸基含有モノマーから誘導されるマクロモノマー、メトキシエチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレートなどのアルコキシ基もしくはエチレンオキシド基含有モノマーから誘導されるマクロモノマーである。またポリエチレングリコール鎖もしくはポリプロピレングリコール鎖を有するモノマーも本発明のマクロモノマーとして有用に使用することができる。これらのマクロモノマーのうち有用な高分子の質量平均分子量(以下、単に分子量と称する)は400〜10万の範囲であり、好ましい範囲は1000〜5万、特に好ましい範囲は1500〜2万である。分子量が400以上であれば有効な親水性が得られ、また10万以下であれば主鎖を形成する共重合モノマーとの重合性が高くなる傾向があり、いずれも好ましい。
【0045】
これらのグラフトポリマーとしては、質量平均分子量が100万以下のものが好ましく用いられ、分子量1000〜100万、さらに好ましくは2万〜10万の範囲のものである。分子量が100万以下であれば親水性被膜形成用塗布液を調製する際に溶媒への溶解性が悪化することなく、塗布液粘度が低くなり、均一な被膜を形成し易いなどハンドリング性に問題がなく、好ましい。
【0046】
上記一般式(II)で表されるポリマーは、式中Yで表される親水性を発現する親水性官能基を有しており、この官能基の密度が高いほど表面親水性が高くなり好ましい。親水性官能基密度は、親水性ポリマー1g当たりの官能基モル数で表すことができ、1〜30meq/gが好ましく、2〜20meq/gがより好ましく、3〜15meq/gが最も好ましい。
一般式(II)で表されるポリマーの共重合比率は、親水性官能基Yの量が上記範囲内になるように任意に設定することができる。好ましくは、Bを含有するモノマーのモル比(m1)とXを含有するモノマーのモル比(n1)が、m1+n1=100としたときにm1≧5、好ましくはm1が10〜99であるのがよい。この範囲に各モノマーのモル比を設定することで、塗布液の高い安定性、高い膜強度と親水性が発現するという効果が奏される。
【0047】
以下に、一般式(II)で表されるポリマー具体例〔例示化合物(1)〜(50)〕をその質量平均分子量(M.W.)とともに以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下に示す具体例のポリマーは、記載される各構造単位が記載のモル比で含まれるランダム共重合体であることを意味する。
【0048】
【化9】

【0049】
【化10】

【0050】
【化11】

【0051】
【化12】

【0052】
【化13】

【0053】
(一般式(III)で表されるポリマー)
上記式(III)において、R、R、RおよびR10は、それぞれ独立に、上記式(I)のR1、R2と同様の置換基を表す。L、Lは、上記式(I)のL1と同義である。YおよびXは式(I)および(II)中のものと同じである。なお本発明では、Lが、単結合、または、−CONH−、−NHCONH−、−OCONH−、−SONH−および−SO−からなる群より選択される構造を1つ以上有する連結基であることが高い親水性を発現するという理由から好ましい。 一分子当たりの加水分解性シリル基を数多く導入することができ、常温乾燥によって非常に良好な硬化性を得ることができることから、一般式(III)で表される側鎖型シランポリマーが最も好ましい。
【0054】
一般式(III)で表されるポリマーの共重合比率は、好ましくは、Yを含有するモノマーのモル比(m2)とXを含有するモノマーのモル比(n2)が、m2+n2=100としたときにm2≧50、好ましくはm2が70〜95であるのがよい。この範囲に各モノマーのモル比を設定することで、塗布液の高い安定性、高い膜強度と親水性が発現するという効果が奏される。
【0055】
以下に、一般式(III)で表されるポリマー具体例〔例示化合物(1)〜(50)〕をその質量平均分子量(M.W.)とともに以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下に示す具体例のポリマーは、記載される各構造単位が記載のモル比で含まれるランダム共重合体であることを意味する。
【0056】
【化14】

【0057】
【化15】

【0058】
【化16】

【0059】
【化17】

【0060】
【化18】

【0061】
一般式(III)で表されるポリマーを合成する前記各化合物は、市販されており、また容易に合成することもできる。
一般式(III)で表されるポリマーを合成するためのラジカル重合法としては、従来公知の方法の何れをも使用することができる。具体的には、一般的なラジカル重合法は、例えば、新高分子実験学3、高分子の合成と反応1(高分子学会編、共立出版)、新実験化学講座19、高分子化学(I)(日本化学会編、丸善)、物質工学講座、高分子合成化学(東京電気大学出版局) 等に記載されており、これらを適用することができる。
【0062】
また、一般式(III)で表されるポリマーは、他のモノマーとの共重合体であってもよい。用いられる他のモノマーとしては、例えば、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、ビニルエステル類、スチレン類、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、無水マレイン酸、マレイン酸イミド等の公知のモノマーも挙げられる。このようなモノマー類を共重合させることで、製膜性、膜強度、親水性、疎水性、溶解性、反応性、安定性等の諸物性を改善することができる。
【0063】
一般式(III)で表されるポリマーの質量平均分子量としては、1,000〜1,000,000が好ましく、1,000〜500,000がさらに好ましく、1,000〜200,000が最も好ましい。
【0064】
上記、親水性ポリマーは、金属アルコキシドの加水分解、重縮合物と混合した状態で架橋皮膜を形成する。有機成分である親水性ポリマーは、皮膜強度や皮膜柔軟性に対して関与しており、特に、親水性ポリマーの粘度が0.1〜100cPs(5%水溶液、25℃測定)、好ましくは0.5〜70cPs、さらに好ましくは1〜50cPsの範囲にあると、良好な膜物性を与える。
【0065】
((B)金属キレート触媒または金属塩触媒)
本発明における常温硬化型組成物は、(B)金属キレート触媒または金属塩触媒を含有する。
【0066】
金属キレート触媒
金属キレート触媒は、周期律表の2A,3B,4A及び5A族から選ばれる金属元素とβ―ジケトン、ケトエステル、ヒドロキシカルボン酸又はそのエステル、アミノアルコール、エノール性活性水素化合物の中から選ばれるオキソ又はヒドロキシ酸素含有化合物から構成される化合物である。
構成金属元素の中では、Mg、Ca、St、Baなどの2A族元素、Al、Gaなどの3B族元素、Ti、Zrなどの4A族元素及びV、Nb及びTaなどの5A族元素が好ましく、それぞれ触媒効果の優れた錯体を形成する。その中でもZr、Al及びTiから得られる錯体が優れており、好ましい。
【0067】
上記金属キレート触媒の配位子を構成するオキソ又はヒドロキシ酸素含有化合物は、本発明においては、アセチルアセトン、アセチルアセトン(2,4−ペンタンジオン)、2,4−ヘプタンジオンなどのβジケトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸ブチルなどのケトエステル類、乳酸、乳酸メチル、サリチル酸、サリチル酸エチル、サリチル酸フェニル、リンゴ酸,酒石酸、酒石酸メチルなどのヒドロキシカルボン酸及びそのエステル、4−ヒドロキシー4−メチル−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、4−ヒドロキシ−2−ヘプタノンなどのケトアルコール類、モノエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−メチル−モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミノアルコール類、メチロールメラミン、メチロール尿素、メチロールアクリルアミド、マロン酸ジエチルエステルなどのエノール性活性化合物、アセチルアセトン(2,4−ペンタンジオン)のメチル基、メチレン基またはカルボニル炭素に置換基を有する化合物が挙げられる。
【0068】
好ましい配位子はアセチルアセトン誘導体であり、アセチルアセトン誘導体は、本発明においては、アセチルアセトンのメチル基、メチレン基またはカルボニル炭素に置換基を有する化合物を指す。アセチルアセトンのメチル基に置換する置換基としては、いずれも炭素数が1〜3の直鎖又は分岐のアルキル基、アシル基、ヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基であり、アセチルアセトンのメチレン基に置換する置換基としてはカルボキシル基、いずれも炭素数が1〜3の直鎖又は分岐のカルボキシアルキル基及びヒドロキシアルキル基であり、アセチルアセトンのカルボニル炭素に置換する置換基としては炭素数が1〜3のアルキル基であってこの場合はカルボニル酸素には水素原子が付加して水酸基となる。
【0069】
好ましいアセチルアセトン誘導体の具体例としては、アセチルアセトン、エチルカルボニルアセトン、n−プロピルカルボニルアセトン、i−プロピルカルボニルアセトン、ジアセチルアセトン、1―アセチル−1−プロピオニル−アセチルアセトン、ヒドロキシエチルカルボニルアセトン、ヒドロキシプロピルカルボニルアセトン、アセト酢酸、アセトプロピオン酸、ジアセト酢酸、3,3−ジアセトプロピオン酸、4,4−ジアセト酪酸、カルボキシエチルカルボニルアセトン、カルボキシプロピルカルボニルアセトン、ジアセトンアルコールが挙げられる。中でも、アセチルアセトン及びジアセチルアセトンがとくに好ましい。上記のアセチルアセトン誘導体と上記金属元素の錯体は、金属元素1個当たりにアセチルアセトン誘導体が1〜4分子配位する単核錯体であり、金属元素の配位可能の手がアセチルアセトン誘導体の配位可能結合手の数の総和よりも多い場合には、水分子、ハロゲンイオン、ニトロ基、アンモニオ基など通常の錯体に汎用される配位子が配位してもよい。
【0070】
好ましい金属キレート触媒の例としては、トリス(アセチルアセトナト)アルミニウム錯塩、ジ(アセチルアセトナト)アルミニウム錯塩、モノ(アセチルアセトナト)アルミニウム錯塩、ジ(ジアセチルアセトナト)アルミニウム錯塩、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、環状アルミニウムオキサイドイソプロピレート、ジ(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、トリス(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジルコニウムトリス(エチルアセトアセテート)錯塩、ジルコニウムトリス(安息香酸)錯塩、等が挙げられる。これらは水系塗布液での安定性及び、乾燥時のゾルゲル反応でのゲル化促進効果に優れているが、中でも、特にエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、ジ(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジルコニウムトリス(エチルアセトアセテート)が好ましい。
【0071】
金属塩触媒
上記の金属キレート触媒の代わりに金属塩触媒を用いることもできる。代表的な金属塩触媒は、例えば周期律表の2A,3B,4A及び5A族から選ばれる金属元素のハロゲン化物、酸素酸塩や有機酸塩が挙げられる。
【0072】
前記金属元素の中では、Mg、Ca、St、Baなどの2A族元素、Al、Gaなどの3B族元素、Ti、Zrなどの4A族元素及びV、Nb及びTaなどの5A族元素が好ましく、それぞれ触媒効果の優れた金属塩を形成する。その中でもZr及びAlから得られる金属塩が優れており、好ましい。
好ましくは、ZrOCl・8HO、ZrOSO・nHO、ZrO(NO・4HO、ZrO(CO・nHO、ZrO(OH)・nHO、ZrO(C、(NHZrO(CO、ZrO(C1825、ZrO(C15、AlCl3、Al23・H2O、Al23・3H2O、Al2(SO43・18H2O、Al2(C243・4H2Oが挙げられる。
【0073】
親水性ポリマーと触媒の組み合わせ
親水性ポリマーと触媒の組み合わせとしては、一般式(II)あるいは一般式(III)で表される親水ポリマーとエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、ジ(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジルコニウムトリス(エチルアセトアセテート)といった金属キレート触媒または、ZrOCl・8HO、ZrOSO・nHO、ZrO(NO・4HO、ZrO(CO・nHO、ZrO(OH)・nHO、ZrO(CやAlCl3、Al23・H2O、Al23・3H2Oといった金属塩の組み合わせが挙げられ、更に好ましい組み合わせとしては、一般式(III)で表される親水ポリマーとエチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、ジ(アセチルアセトナト)チタニウム錯塩、ジルコニウムトリス(エチルアセトアセテート)といった金属キレート触媒または、ZrOCl・8HO、ZrO(NO・4HO、ZrO(C、AlCl3、Al23・H2O、Al23・3H2Oの組み合わせが挙げられる。
【0074】
触媒の添加量
常温硬化型組成物に使用される触媒(金属キレートまたは金属塩)の添加量(含有割合)について説明する。この触媒の添加量は特に制限されるものではないが、(A)成分を構成する親水性ポリマー及び金属アルコキシド化合物及び/またはその加水分解物100質量部に対して、通常、0.1〜20質量部の範囲内の値とするのが好ましい。触媒の添加量が0.1質量部未満となると、硬化性が低下し、十分な硬化速度が得られない場合がある。一方、硬化剤の添加量が20質量部を超えると、得られる硬化物の親水性が低下する場合がある。したがって、硬化性と得られる硬化物の親水性とのバランスがより良好な観点から、硬化剤の添加量を、親水ポリマー及び金属アルコキシド化合物及び/またはその加水分解物100質量部に対して1〜15質量部の範囲内の値とすることがより好ましい。
【0075】
((C)金属アルコキシド化合物)
また、本発明の常温硬化型組成物は、(C)金属アルコキシド化合物を含有するのが好ましい。
金属アルコキシド化合物は、下記一般式(VI)で表すことができる。
【0076】
【化19】

【0077】
一般式(VI)中、R13は水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、R14はアルキル基又はアリール基を表し、QはSi、Al、Ti又はZrを表し、kは0〜2の整数を表す。R13及びR14がアルキル基を表す場合の炭素数は好ましくは1から4である。アルキル基又はアリール基は置換基を有していてもよく、導入可能な置換基としては、ハロゲン原子、アミノ基、メルカプト基などが挙げられる。なお、この化合物は低分子化合物であり、分子量1000以下であることが好ましい。
以下に、一般式(VI)で表される金属アルコキシド化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。QがSiの場合、即ち、金属アルコキシド化合物中にケイ素を含むものとしては、例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、γ−クロロプリピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等を挙げることができる。これらのうち特に好ましいものとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトルイメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等を挙げることができる。
QがAlである場合、即ち、金属アルコキシド化合物中にアルミニウムを含むものとしては、例えば、トリメトキシアルミネート、トリエトキシアルミネート、トリプロポキシアルミネート、テトラエトキシアルミネート等を挙げることができる。
QがTiである場合、即ち、チタンを含むものとしては、例えば、トリメトキシチタネート、テトラメトキシチタネート、トリエトキシチタネート、テトラエトキシチタネート、テトラプロポキシチタネート、クロロトリメトキシチタネート、クロロトリエトキシチタネート、エチルトリメトキシチタネート、メチルトリエトキシチタネート、エチルトリエトキシチタネート、ジエチルジエトキシチタネート、フェニルトリメトキシチタネート、フェニルトリエトキシチタネート等を挙げることができる。
QがZrである場合、即ち、ジルコニウムを含むものとしては、例えば、前記チタンを含むものとして例示した化合物に対応するジルコネートを挙げることができる。
これらの中でも、QがSiである金属アルコキシド化合物が被膜性の観点から好ましい。
本発明に係る金属アルコキシド化合物は、単独で用いても2種以上併用してもよい。
【0078】
金属アルコキシド化合物は、組成物中、不揮発性成分として、好ましくは5〜80質量%、更に好ましくは10〜70質量%の範囲で使用される。
【0079】
上記の金属アルコキシド化合物は市販品が容易に入手できるし、公知の合成方法、たとえば各金属塩化物とアルコールとの反応によっても得られる。
【0080】
また、この金属アルコキシド化合物は、そのまま、あるいは加水分解物および/または縮合物として使用される。金属アルコキシド化合物を加水分解物および/または縮合物として使用する場合は、予め加水分解・縮合させて使用することもできるが、金属アルコキシド化合物を残りの成分と混合して組成物を調製する際に、適量の水を添加することにより金属アルコキシド化合物を加水分解・縮合させて用いることが好ましい。
【0081】
金属アルコキシド化合物が縮合物として使用されるとき、該縮合物のポリスチレン換算質量平均分子量(以下「Mw」という)は、好ましくは、300〜100,000、更に好ましくは、400〜70,000、特に好ましくは1,000〜50,000である。Mwが1,000〜50,000であると、特に、本発明の組成物の硬化性が向上する。
【0082】
〔組成物の平均粒子径〕
平均粒子径について説明する。
組成物の平均粒子径が小さいほど、本発明の常温硬化型組成物を塗布、乾燥により形成された層(親水性膜)は緻密になり、非常に硬度に優れる親水性膜を形成させることが可能となる。また、平均粒子径が小さいほど、得られる親水性膜の表面粗さは小さくなり、引っ掻きに対する耐傷性が向上する。更に、透過性においても平均粒子径が小さい方が優れる。親水性膜が優れた高度、耐傷性、透過性を有するためには、組成物の平均粒子径が1nm〜100nmであることが好ましく、5nm〜70nmであることがより好ましい。
上記のような平均粒子径を達成するためには、重合体が溶液中で安定に存在する必要がある。本発明の親水性ポリマーは非常に親水性が高いため、触媒により経時で加水分解・架橋が進んでも溶液中で凝集せずに安定に存在することができ、非常に小さい平均粒子径となる。
【0083】
〔親水性膜の表面粗さ〕
親水性膜の表面粗さについて説明する。
親水性膜の表面粗さRaは、0.1〜60nmであるのが好ましく、0.5〜50nmであるのがより好ましい。上記範囲内であると、耐傷性、透明性に優れた親水性膜を作成することができる。
【0084】
〔無機微粒子〕
本発明の組成物は、親水性の向上や、皮膜のひび割れ防止、膜強度向上のために、無機微粒子を含有してもよい。
無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、炭酸マグネシウム、アルギン酸カルシウムまたはこれらの混合物が好適に挙げられる。
無機微粒子は、平均粒子径が2nm〜1μmであるのが好ましく、10nm〜100nmであるのがより好ましい。上記範囲内であると、塗布、乾燥して得られる親水性膜中に安定に分散して、親水性膜の膜強度を十分に保持し、耐久性の高い親水性に優れる親水性膜を形成することができる。
上述したような無機微粒子の中で、特にコロイダルシリカ分散物が好ましく、市販品として容易に入手することができる。
無機微粒子の含有量は、組成物の全固形分に対して、80質量%以下であるのが好ましく、50質量%以下であるのがより好ましい。
【0085】
(その他の成分)
以下に、必要に応じて本発明の常温硬化型組成物に用いることのできる種々の添加剤について述べる。
1)界面活性剤
本発明の常温硬化型組成物には、界面活性剤を添加してもよい。
界面活性剤としては、特開昭62−173463号、同62−183457号の各公報に記載されたものが挙げられる。例えば、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。なお、前記界面活性剤の代わりに有機フルオロ化合物を用いてもよい。前記有機フルオロ化合物は、疎水性であることが好ましい。前記有機フルオロ化合物としては、例えば、フッ素系界面活性剤、オイル状フッ素系化合物(例、フッ素油)及び固体状フッ素化合物樹脂(例、四フッ化エチレン樹脂)が含まれ、特公昭57−9053号(第8〜17欄)、特開昭62−135826号の各公報に記載されたものが挙げられる。
【0086】
2)紫外線吸収剤
本発明の常温硬化型組成物においては、親水性部材の耐候性向上、耐久性向上の観点から、紫外線吸収剤を用いることができる。
紫外線吸収剤としては、例えば、特開昭58−185677号公報、同61−190537号公報、特開平2−782号公報、同5−197075号公報、同9−34057号公報等に記載されたベンゾトリアゾール系化合物、特開昭46−2784号公報、特開平5−194483号公報、米国特許第3214463号等に記載されたベンゾフェノン系化合物、特公昭48−30492号公報、同56−21141号公報、特開平10−88106号公報等に記載された桂皮酸系化合物、特開平4−298503号公報、同8−53427号公報、同8−239368号公報、同10−182621号公報、特表平8−501291号公報等に記載されたトリアジン系化合物、リサーチディスクロージャーNo.24239号に記載された化合物やスチルベン系、ベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤、などが挙げられる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、親水性膜中、固形分換算で0.5〜15質量%であることが好ましい。
【0087】
3)酸化防止剤
本発明の常温硬化型組成物には、安定性向上のため、酸化防止剤を添加することができる。酸化防止剤としては、ヨーロッパ公開特許、同第223739号公報、同309401号公報、同第309402号公報、同第310551号公報、同第310552号公報、同第459416号公報、ドイツ公開特許第3435443号公報、特開昭54−48535号公報、同62−262047号公報、同63−113536号公報、同63−163351号公報、特開平2−262654号公報、特開平2−71262号公報、特開平3−121449号公報、特開平5−61166号公報、特開平5−119449号公報、米国特許第4814262号明細書、米国特許第4980275号明細書等に記載のものを挙げることができる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、親水性膜中、固形分換算で0.1〜8質量%であることが好ましい。
【0088】
4)溶剤
本発明の親水性部材の親水性膜形成時に、基材に対する均一な塗膜の形成性を確保するために、本発明の常温硬化型組成物には、適度に有機溶剤を添加することも有効である。
溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン系溶剤、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、1−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール系溶剤、クロロホルム、塩化メチレン等の塩素系溶剤、ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピルなどのエステル系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、などが挙げられる。
この場合、VOC(揮発性有機溶剤)の関連から問題が起こらない範囲での添加が有効であり、その量は本発明の常温硬化型組成物全体に対し0〜50質量%が好ましく、より好ましくは0〜30質量%の範囲である。
【0089】
5)高分子化合物
本発明の常温硬化型組成物には、親水性膜の膜物性を調整するため、親水性を阻害しない範囲で各種高分子化合物を添加することができる。高分子化合物としては、アクリル系重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、シェラック、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、その他の天然樹脂等が使用できる。また、これらは2種以上併用してもかまわない。これらのうち、アクリル系のモノマーの共重合によって得られるビニル系共重合が好ましい。更に、高分子結合材の共重合組成として、「カルボキシル基含有モノマー」、「メタクリル酸アルキルエステル」、又は「アクリル酸アルキルエステル」を構造単位として含む共重合体も好ましく用いられる。
【0090】
また、必要に応じて、例えば、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのワックス類、基材への密着性を改善するために、親水性を阻害しない範囲でタッキファイヤーなどを含有させることができる。
タッキファイヤーとしては、具体的には、特開2001−49200号公報の5〜6pに記載されている高分子量の粘着性ポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルキル基を有するアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数3〜14の脂環族アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数6〜14の芳香族アルコールとのエステルからなる共重合物)や、重合性不飽和結合を有する低分子量粘着付与性樹脂などである。
また、この他にも、本発明の目的や硬化を損なわない範囲において、ラジカル性重合開始剤、光増感剤、重合禁止剤、重合開始助剤、濡れ性改良剤、可塑剤、帯電防止剤、シランカップリング剤、防腐剤、顔料、乾燥剤、沈殿防止剤、たれ防止剤、増粘剤、皮張り防止剤、色別れ防止剤、平滑剤、消泡剤、粘着防止剤、つや消し防止剤、難燃剤、防錆剤などの添加剤を更に含有させることができる。
添加量は目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、親水性膜中、固形分換算で0.5〜15質量%であることが好ましい。
【0091】
(親水性部材)
本発明の親水性部材は、上記常温硬化型組成物を、基材上に塗布し、常温乾燥することにより得られる。本発明でいう常温乾燥とは、例えば10〜50℃、好ましくは15〜35℃である。
乾燥時間は、好ましくは10分〜8時間、さらに好ましくは15〜2時間である。
前記塗布方法は、特に限定されないが、ロールコーティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、スプレーコーティング法、フローコーティング法、グラビアコーティング法などの塗布法、真空蒸着法、反応性蒸着法、イオンビームアシスト法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法(PVD)、化学蒸着法(CVD)をはじめとする気相法など公知の方法を適用することができる。中でも膜厚を薄膜から厚膜までコントロールすることができるという理由から、ロールコーティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、スプレーコーティング法、フローコーティング法のいずれかの方法が好ましい。
【0092】
(常温硬化)
前記常温硬化とは、前記常温乾燥によって高い耐傷性を有する膜を形成することである。高い耐傷性を有する膜とは、鉛筆硬度で2B以上、好ましくはHB以上である膜である。
鉛筆硬度はJIS K 5400に準じて評価することができる。
【0093】
(基材)
本発明の常温硬化型組成物は、ガラス、石材、セラミック、木材、合成樹脂、金属、セメント、コンクリート、繊維、布帛、それらの組み合わせ、それらの積層体等のような広範囲の基材に適応できる。組成物を塗布する際、未処理基材のままであってもよいが、必要に応じ、親水性膜の密着性を向上させる目的で、片面又は両面に、表面親水化処理を施すことができる。上記表面親水化処理法としては、例えばコロナ放電処理、グロー放電処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理、アルカリ洗浄、サンドブラスト、ブラシ研磨などが挙げられる。
【0094】
また、本発明の親水性部材が、例えば防汚及び/又は防曇効果を期待して透明な基材を使用する場合には、その材質はガラスまたは無機化合物層を含有したガラス等の無機基材や、透明プラスチック基材または無機化合物層を含有した透明プラスチック基材など、可視光を透過しうる基材が好適に利用できる。
【0095】
無機基材の詳細について述べれば、通常のガラス板、樹脂層、気体層、真空層などを含む積層ガラス板、強化成分や着色剤などを含む各種のガラス板を挙げることができる。
無機化合物層を含有したガラス板としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化スズ、酸化ジルコニウム、酸化ナトリウム、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ビスマス、酸化イットリウム、酸化セリウム、酸化亜鉛、ITO(Indium Tin Oxide)等の金属性酸化物;フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化ランタン、フッ化セリウム、フッ化リチウム、フッ化トリウム等の金属ハロゲン化物;などで形成した無機化合物層を備えたガラス板を挙げることができる。
【0096】
無機化合物層は、単層あるいは多層構成とすることができる。無機化合物層はその厚みによって、光透過性を維持させることもでき、また、反射防止層として作用させることもできる。無機化合物層の形成方法としては、例えば、ディップコーティング法、スピンコーティング法、フローコーティング法、スプレーコーティング法、ロールコーティング法、グラビアコーティング法などの塗布法、真空蒸着法、反応性蒸着法、イオンビームアシスト法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法(PVD)、化学蒸着法(CVD)をはじめとする気相法など公知の方法を適用することができる。
【0097】
また、プラスチックなどの有機基材のうち、透明プラスチック基材としては、可視光透過性を有する種々のプラスチック材料からなる基材を挙げることができる。特に、光学部材として使用される基材は、透明性、屈折率、分散性などの光学特性を考慮して選択され、使用目的により、種々の物性、例えば、耐衝撃性、可撓性など強度をはじめとする物理的特性や、耐熱性、耐候性、耐久性などを考慮して選択される。これらの観点からは、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、或いは、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール、アクリル系樹脂、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セロフィン等のセルロース系樹脂などを好ましく挙げることができる。これらは、使用目的に応じて、単独で用いられてもよく、或いは、2種以上を混合物、共重合体、積層体などの形態で組み合わせて用いることもできる。
【0098】
透明プラスチック基材として、ガラス板の説明において記載した無機化合物層をプラスチック板上に形成したものを用いることもできる。この場合、無機化合物層は反射防止層として作用させることもできる。無機化合物層を透明プラスチック基材上に形成する場合も、前述した無機基材におけるのと同様の手法で形成することができる。
【0099】
透明プラスチック基材に無機化合物層を形成する場合、両層の間には、ハードコート層を形成してもよい。ハードコート層を設けることにより、基材表面の硬度が向上すると共に、基材表面が平滑になるので、透明プラスチック基材と無機化合物層との密着性が向上し、耐引っ掻き強度の向上と、基材の屈曲に起因する無機化合物層へのクラックの発生を抑制することができる。このような基材を用いることで親水性部材の機械的強度を改善できる。ハードコート層の材質は、透明性、適度な強度、及び機械的強度を有するものであれば、特に限定されない。例えば、電離放射線や紫外線の照射による硬化樹脂や熱硬化性の樹脂が使用でき、特に紫外線照射硬化型アクリル系樹脂、有機ケイ素系樹脂、熱硬化性ポリシロキサン樹脂が好ましい。これらの樹脂の屈折率は、透明プラスチック基材の屈折率と同等、もしくはこれに近似していることがより好ましい。
【0100】
このようなハードコート層の被膜方法は、特に限定されず、均一に塗布されるのであれば任意の方法を採用することができる。また、ハードコート層の膜厚は3μm以上であれば十分な強度となるが、透明性、塗工精度、取り扱いの点から5〜7μmの範囲が好ましい。さらにハードコート層に平均粒子径0.01〜3μmの無機あるいは有機物粒子を混合分散させることによって、一般的にアンチグレアと呼ばれる光拡散性処理を施すことができる。これらの粒子は透明であれば特に限定されないが、低屈折率材料が好ましく、酸化ケイ素、フッ化マグネシウムが安定性、耐熱性等の点で特に好ましい。光拡散性処理は、ハードコート層の表面に凹凸を設けることによっても達成できる。
【0101】
このように、例えばガラス基材や透明プラスチック基材に無機化合物層を有するものを基材として用い、本発明の常温硬化型組成物を用いて親水性膜を形成することにより、本発明の親水性部材を得ることができる。親水性部材は表面に親水性と耐久性に優れた親水性膜を有することより、支持体(基材)表面に優れた防汚性、特に油脂汚れに対する防汚性、防曇性のいずれか或いは双方を付与することができる。
【0102】
(表面自由エネルギー)
親水性とは、汎用的に、水滴接触角で測定される。しかし、本発明のような非常に親水性の高い表面においては、水滴接触角が10°以下、さらには5°以下になることがあり、親水性度の相互比較を行うには、限界がある。一方、固体表面の親水性度をより詳細に評価する方法として、表面自由エネルギーの測定がある。種々の方法が提案されているが、本発明では、一例として、Zismanプロット法を用いて表面自由エネルギーを測定した。具体的には、塩化マグネシウムなどの無機電解質の水溶液が濃度とともに表面張力が大きくなる性質を利用し、その水溶液を用いて空中、室温条件で接触角を測定した後、横軸にその水溶液の表面張力、縦軸に接触角をcosθに換算した値をとり、種々の濃度の水溶液の点をプロットして直線関係を得、cosθ=1すなわち、接触角=0°になるときの表面張力を、固体の表面自由エネルギーと定義する測定方法である。水の表面張力は72mN/mであり、表面自由エネルギーの値が大きいほど親水性が高いといえる。
このような方法で測定した表面自由エネルギーが、70mN/m〜95mN/m、好ましくは72mN/m〜93mN/m、さらに好ましくは75mN/m〜90mN/mの範囲にある親水性膜が、親水性に優れ、良好な性能を示す。
【0103】
本発明の親水性膜を塗設した親水性部材は、窓ガラス等に適用(使用、貼り付け)する場合、視界確保の観点から透明性が重要である。本発明の親水性膜は、透明性に優れ、膜厚が厚くても透明度が損なわれず、耐久性との両立が可能である。本発明の親水性膜の厚さは、0.01μm〜100μmが好ましく、0.05μm〜50μmがさらに好ましく、0.1μm〜20μmが最も好ましい。膜厚が0.01μm以上の場合は、十分な親水性、耐久性が得ら好ましく、膜厚が100μm以下の場合は、クラックが入るなど製膜性に問題を来たすことがなく、好ましい。
透明性は、分光光度計で可視光領域(400nm〜800nm)の光透過率を測定し評価する。光透過率が100%〜70%が好ましく、95%〜75%がより好ましく、95%〜80%の範囲にあることが最も好ましい。この範囲にあることによって、視界をさえぎることなく、親水性被膜を塗設した親水性部材を各種用途に適用することができる。
【0104】
更に、基材と親水性膜との間に、一層以上の下塗り層を設けることができる。下塗り層の素材としては、金属酸化膜、親水性樹脂や水分散性ラテックスを用いることができる。
金属酸化膜としては、SiO、Al、ZrO、TiO等が挙げられ、ゾルゲル法、スパッタ法や蒸着法により形成することができる。
親水性樹脂としては、たとえば、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂、セルロース系樹脂〔メチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、等〕、キチン類、キトサン類、デンプン、エーテル結合を有する樹脂〔ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル(PVE)等〕、カルバモイル基を有する樹脂〔ポリアクリルアミド(PAAM)、ポリビニルピロリドン(PVP)、等〕等が挙げられる。また、カルボキシル基を有するポリアクリル酸塩、マレイン酸樹脂、アルギン酸塩、ゼラチン類等も挙げることができる。
上記の中でも、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂、セルロース系樹脂、エーテル結合を有する樹脂、カルバモイル基を有する樹脂、カルボキシル基を有する樹脂、及びゼラチン類から選ばれる少なくとも1種が好ましく、特に、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂、ゼラチン類が好ましい。
【0105】
水分散性ラテックスとしては、アクリル系ラテックス、ポリエステル系ラテックス、NBR樹脂、ポリウレタン系ラテックス、ポリ酢酸ビニル系ラテックス、SBR樹脂、ポリアミド系ラテックス等が挙げられる。中でも、アクリル系ラテックスが好ましい。
上記の親水性樹脂及び水分散性ラテックスは、各々一種単独で用いるほか二種以上を併用してもよく、親水性樹脂と水分散性ラテックスとを併用してもよい。
また、上記親水性樹脂や水分散性ラテックスを架橋する架橋剤を用いても良い。
本発明に適応可能な架橋剤としては、公知の熱により架橋を形成する架橋剤を用いることができる。一般的な熱架橋剤としては、「架橋剤ハンドブック」山下晋三、金子東助著、大成社刊(1981)に記載されているものがある。本発明に用いられる架橋剤の官能基数は2個以上で、且つ、親水性樹脂や水分散性ラテックスと有効に架橋可能ならば特に制限はない。具体的な熱架橋剤としては、ポリアクリル酸等のポリカルボン酸、ポリエチレンイミン等のアミン化合物、エチレンまたはプロピレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ノナエチレンチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレンまたはポリプロピレングリコールグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル等のポリエポキシ化合物、グリオキザル、テレフタルアルデヒドなどのポリアルデヒド化合物、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、シクロヘキサンフェニレンジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、イソプロピルベンゼン-2,4-ジイソシアネート、ポリプロピレングリコール/トリレンジイソシアネート付加反応物などのポリイソシアネート化合物、ブロックポリイソシアネート化合物、テトラアルコキンシランなどのシランカップリング剤、アルミニウム、銅、鉄(III)のアセチルアセトナートなどの金属架橋剤、トリメチロールメラミン、ペンタエリスリトールなどのポリメチロール化合物、などが挙げられる。これらの熱架橋剤のなかでも、塗布溶液の調液のしやすさ、作製した親水性膜の親水性低下を防止するという観点から水溶性の架橋剤であることが好ましい。
前記親水性樹脂及び/又は水分散性ラテックスの、下塗り層中における総量としては、0.01〜20g/m 2 が好ましく、0.1〜10g/m 2 がより好ましい。
【0106】
本発明の親水性部材表面には、反射防止層を設けることもできる。適用可能な反射防止層は、前述の無機化合物層に限定されず、例えば、反射率、屈折率の異なる複数の薄層を積層することにより、反射防止効果を得る公知の反射防止層なども適宜用いることができ、その材料も無機化合物、有機化合物のいずれも使用することができる。特に、表面に反射防止膜としての無機化合物層が形成された基材は、反射防止膜が形成された側の表面に本発明に係る親水性膜を適用することにより、表面の防汚性及び/又は防曇性機能、さらに反射防止性が特に優れる。また、目的に応じて、前記構成を有する部材に、偏光板などの機能性光学部材などを、ラミネートに代表される貼り合わせ技術で貼り合わせることにより、本発明の親水性部材を用いて種々の機能や特性を有する反射防止・光学機能性部材を得ることもできる。
【0107】
これらの反射防止部材や反射防止・光学機能性部材を、粘着剤、接着剤などを用いて各種ディスプレイ(液晶ディスプレイ、CRTディスプレイ、プロジェクションディスプレイ、プラズマディスプレイ、ELディスプレイなど)の表示装置の前画板のガラス板、プラスチック板、偏光板などに貼付することにより、この反射防止部材の表示装置への適用が可能となる。
【0108】
また、本発明の親水性部材は、前記した表示装置以外にも、防汚及び/又は防曇効果を要求される種々の用途への適用が可能である。なお、防汚及び/又は防曇性部材に透明性を必要としない基材に適用しようとする場合には、上記の透明基材に加えて、例えば、金属、セラミックス、木、石、セメント、コンクリート、繊維、布帛、それらの組合せ、それらの積層体が、支持体基材としていずれも好適に利用できる。
【実施例】
【0109】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0110】
実施例1
下記組成の塗布液を24℃で100時間放置した。最も一般的な透明の板ガラスであるフロート板ガラス(厚み2mm)を準備し、該板ガラスの表面を10分間UV/O3処理により親水化し、上記塗布液をスピンコート塗布した後、20℃、30分乾燥して、乾燥塗布量1.0g/m2の親水性膜を形成した。この親水性部材の水滴接触角は2.2°で、非常に親水性の高い表面であった。親水性層の可視光透過率は、88%で非常に透明性が良かった(日立分光光度計U3000で測定)。
【0111】
<塗布液>
・コロイダルシリカ分散物20質量%水溶液(スノーテックスC) 100g
・下記ゾルゲル調製液 500g
・下記アニオン系界面活性剤の5質量%水溶液 30g
・精製水 450g
【0112】
【化20】

【0113】
<ゾルゲル調製液>
エチルアルコール200g、アセチルアセトン10g、オルトチタン酸テトラエチル10g、精製水100g中に、テトラメトキシシラン(東京化成工業(株)製)8gと重合体(1)5gを混合し、室温で2時間撹拌して、調製した。
【0114】
(重合体(1)の合成)
500ml三口フラスコにアクリルアミド57.5g、アクリルアミド−3−(エトキシシリル)プロピル100g、及び1−メトキシ−2−プロパノール280gを入れ、80℃窒素気流下、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル2.9gを加えた。6時間攪拌しながら同温度に保った後、室温まで冷却した。アセトン2リットル中に投入し、析出した固体をろ取した。得られた固体をアセトンにて洗浄後、重合体(1)を得た。乾燥後の質量は6gであった。GPC(ポリエチレンオキシド標準)により質量平均分子量10,800のポリマーであった。
以後、実施例にて使用した重合体(2)、(4)、(5)、(7)、(8)は上記と同様の手法により合成し、評価に使用した。
【0115】
(重合体(3)の合成)
三口フラスコにアクリルアミド27g、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン3.7g、ジメチルホルムアミド51.3gを入れて窒素気流下、65℃まで加熱し、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.39g添加し、反応を開始した
。6時間攪拌した後、室温まで戻して酢酸エチル1.5L中に投入したところ固体が析出した。その後、濾過を行い、充分酢酸エチルで洗浄し、乾燥を行った(収量18g)。GPC(ポリスチレン標準)により、8000の質量平均分子量を有するポリマーであることを確認した。
以後、実施例にて使用した重合体(6)は上記と同様の手法により合成し、評価に使用した。
【0116】
実施例2
金属アルコキシド化合物をテトラエトキシシラン(東京化成工業(株)製)に変更した以外は実施例1と同様に親水性部材を作成した。
【0117】
実施例3
金属アルコキシド化合物をテトラブトキシシラン(東京化成工業(株)製)に変更した以外は実施例1と同様に親水性部材を作成した。
【0118】
実施例4
触媒をジルコゾールZA−30(ZrO(C水溶液、第一稀元素化学(株)製)に変更した以外は実施例1と同様に親水性部材を作成した。
【0119】
実施例5
触媒をZrOCl(和光純薬(株)製)に変更した以外は実施例1と同様に親水性部材を作成した。
【0120】
実施例6
触媒をZrO(NO(和光純薬(株)製)に変更した以外は実施例1と同様に親水性部材を作成した。
【0121】
実施例7
触媒をAlCl(和光純薬(株)製)に変更した以外は実施例1と同様に親水性部材を作成した。
【0122】
実施例8
親水性ポリマーを重合体(2)に変更した以外は実施例1と同様に親水性部材を作成した。
【0123】
実施例9
触媒をジルコゾールZA−30(第一稀元素化学(株)製)に変更した以外は実施例8と同様に親水性部材を作成した。
【0124】
実施例10
触媒をZrOCl(和光純薬(株)製)に変更した以外は実施例8と同様に親水性部材を作成した。
【0125】
実施例11
触媒をZrO(NO(和光純薬(株)製)に変更した以外は実施例8と同様に親水性部材を作成した。
【0126】
実施例12
触媒をAlCl(和光純薬(株)製)に変更した以外は実施例8と同様に親水性部材を作成した。
【0127】
実施例13
親水性ポリマーを重合体(3)に変更した以外は実施例1と同様に親水性部材を作成した。
【0128】
実施例14
触媒をジルコゾールZA−30(第一稀元素化学(株)製)に変更した以外は実施例13と同様に親水性部材を作成した。
【0129】
実施例15
触媒をZrOCl(和光純薬(株)製)に変更した以外は実施例13と同様に親水性部材を作成した。
【0130】
実施例16
触媒をZrO(NO(和光純薬(株)製)に変更した以外は実施例13と同様に親水性部材を作成した。
【0131】
実施例17
触媒をAlCl(和光純薬(株)製)に変更した以外は実施例13と同様に親水性部材を作成した。
【0132】
実施例18
親水性ポリマーを重合体(4)に変更した以外は実施例1と同様に親水性部材を作成した。
【0133】
実施例19
触媒をジルコゾールZA−30(第一稀元素化学(株)製)に変更した以外は実施例18と同様に親水性部材を作成した。
【0134】
実施例20
触媒をZrOCl(和光純薬(株)製)に変更した以外は実施例18と同様に親水性部材を作成した。
【0135】
実施例21
触媒をZrO(NO(和光純薬(株)製)に変更した以外は実施例18と同様に親水性部材を作成した。
【0136】
実施例22
触媒をAlCl(和光純薬(株)製)に変更した以外は実施例18と同様に親水性部材を作成した。
【0137】
実施例23
親水性ポリマーを重合体(5)に変更した以外は実施例1と同様に親水性部材を作成した。
【0138】
実施例24
触媒をジルコゾールZA−30(第一稀元素化学(株)製)に変更した以外 は実施例23と同様に親水性部材を作成した。
【0139】
実施例25
触媒をZrOCl(和光純薬(株)製)に変更した以外は実施例23と同様に親水性部材を作成した。
【0140】
実施例26
触媒をZrO(NO(和光純薬(株)製)に変更した以外は実施例23と同様に親水性部材を作成した。
【0141】
実施例27
触媒をAlCl(和光純薬(株)製)に変更した以外は実施例23と同様に親水性部材を作成した。
【0142】
実施例28
親水性ポリマーを重合体(6)に変更した以外は実施例1と同様に親水性部材を作成した。
【0143】
実施例29
触媒をジルコゾールZA−30(第一稀元素化学(株)製)に変更した以外は実施例28と同様に親水性部材を作成した。
【0144】
実施例30
触媒をZrOCl(和光純薬(株)製)に変更した以外は実施例28と同様に親水性部材を作成した。
【0145】
実施例31
触媒をZrO(NO(和光純薬(株)製)に変更した以外は実施例28と同様に親水性部材を作成した。
【0146】
実施例32
触媒をAlCl(和光純薬(株)製)に変更した以外は実施例28と同様に親水性部材を作成した。
【0147】
実施例33
親水性ポリマーを重合体(7)に変更した以外は実施例1と同様に親水性部材を作成した。
【0148】
実施例34
親水性ポリマーを重合体(8)に変更した以外は実施例1と同様に親水性部材を作成した。
【0149】
実施例35:親水性ポリマーを下記の通り合成したグラフトポリマー(1)に変更した以外は実施例1と同様に親水性部材を作成した。
〔グラフトポリマー(1)〕
(アミドマクロモノマーの合成)
アクリルアミド100g、3−メルカプトプロピオン酸10gをエタノール200gに溶解後、窒素雰囲気下60℃に昇温し、熱重合開始剤2,2−アゾビスイソブチルニトリル(AIBN)0.9gを加えて8時間反応した。反応後白色沈殿を濾過しメタノールで十分洗浄して、末端カルボン酸プレポリマーを88g得た(酸価0.80meq/g、分子量1500)。得られたプレポリマー50gをジメチルスルホキシド150gに溶解し、グリシジルメタクリレート20g、N,N−ジメチルドデシルアミン(触媒)1.2g、ハイドロキノン(重合禁止剤)0.2gを加え、窒素雰囲気下140℃で10時間反応した。反応溶液をアセトンに加え、ポリマーを沈殿させ、よく洗浄して末端メタクリレートアクリルアミドマクロモノマーを50g得た(重量平均分子量:1800)。H1−NMR(D2O)6.12、5.70ppmメタクリロイル基オレフィンピークと、酸価の減少から、末端に重合性基が導入できたことを確認した。
【0150】
(アミドマクロモノマーを用いたグラフトポリマー(1)の合成)
ジメチルスルホキシド120gの入ったフラスコに、上記マクロモノマー8g、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン2g、2,2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン](VA061:商品名、和光純薬工業(株)製)0.2gをジメチルスルホキシド35gに溶解した溶液を窒素雰囲気下60℃で4時間かけて滴下した。滴下終了後引き続き6時間加熱を続けた。反応溶液をアセトンに加えポリマーを沈殿させよく洗浄して、複数個加水分解性シリル基を有する親水性ポリマー12gを得た(分子量10万、収率81%)。
【0151】
比較例1
触媒をHClに変更した以外は実施例1と同様に親水性部材を作成した。
【0152】
比較例2
触媒をHNOに変更した以外は比較例1と同様に親水性部材を作成した。
【0153】
比較例3
ポリマーをポリアクリルアミド(Mw=〜10000、50wt%水溶液、Aldrich社製)に変更した以外は実施例1と同様に親水性部材を作成した。
【0154】
評価)上記親水性部材について、以下の評価を行った。
親水性:空中水滴接触角の測定(協和界面科学株式会社製DropMaster500で測定)
鉛筆硬度:JIS K 5400に準じ、試験(安田精機製作所製鉛筆引っ掻き硬度試験機553−Mで試験)を行った。
磨耗試験:不織布(BEMCOT、旭化学繊維社製)で100回こすり、その前後の接触角測定。こすり後も水滴接触角が低い値を示す場合、耐久性が良好。
粒子径:平均粒子径の測定は、動的光散乱測定機(ELS−800、大塚電子社製)により測定した。
安定性:1ヶ月20℃で保存した際の液状態を目視で4段階評価した。
◎・・・・変化無し
○・・・・透明であるが色変化有り
△・・・・透明性が損なわれ、濁りを生じる
×・・・・沈殿物を生じるものやゲル化するものは×とした。
透明性:JIS R 3106に準じ、可視光透過率(日立分光光度計U3000で測定)を測定し、3段階評価した。
◎・・・・80%以上
○・・・・70%以上
×・・・・70%以下
表面粗さ:親水性膜の塗布表面の表面粗さは原子間力顕微鏡(AFM:Digital Instruments社製NanoscopeV+D3100)により算出した。
結果を表1に示す。
【0155】
【化21】

【0156】
【表1】

【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)加水分解性シリル基を有する親水性ポリマーおよび(B)金属キレート触媒または金属塩触媒を含有することを特徴とする常温硬化型組成物。
【請求項2】
前記金属キレート触媒または金属塩触媒における金属がTi、ZrおよびAlから選ばれることを特徴とする請求項1に記載の常温硬化型組成物。
【請求項3】
(C)金属アルコキシド化合物をさらに含有することを特徴とする請求項1または2に記載の常温硬化型組成物。
【請求項4】
前記(C)金属アルコキシド化合物がSi、Ti、AlおよびZrから選択される元素のアルコキシド化合物であることを特徴とする請求項3に記載の常温硬化型組成物。
【請求項5】
前記加水分解性シリル基を有する親水性ポリマーが、下記一般式(I)〜(III)で表される構造の少なくとも1種を有するポリマーであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の常温硬化型組成物。
【化1】

(一般式(I)〜(III)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10はそれぞれ独立に水素原子又は炭化水素基を表し、mとnはモノマーのモル比を表わす。ただし、m1≧5、m2≧50、m1+n1=100、m2+n2=100である。Xは加水分解性シリル基を表し、A、L、L、L3、L4及びL5は、それぞれ独立に単結合または連結基を示し、Yは−NHCOR11、−CONH2、−CON(R112、−COR11、−OH、−CO2M、−SO3M、−POM、−OPOM又は−N(R11を表す。ここで、R11は炭素数1〜18のアルキル基、アリール基、アラルキル基を表し、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属又はオニウムを表し、Zはハロゲンイオンを表す。Bは下記一般式(IV)で表される構造を有する基を表す。)
【化2】

(一般式(IV)中、R1、R2、L及びYは一般式(I)中のものと同じものを表す。)
【請求項6】
前記一般式(III)におけるLが、単結合、または、−CONH−、−NHCONH−、−OCONH−、−SONH−および−SO−からなる群より選択される構造を1つ以上有する連結基を表すことを特徴とする請求項5に記載の常温硬化型組成物。
【請求項7】
基板上に、請求項1〜6のいずれかに記載の常温硬化型組成物を塗布し、常温乾燥を行うことにより形成される親水性膜を有することを特徴とする親水性部材。
【請求項8】
前記常温乾燥の温度が10〜50℃であり、常温乾燥時間が10分〜8時間であることを特徴とする請求項7に記載の親水性部材。
【請求項9】
前記の塗布がロールコーティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、スプレーコーティング法、フローコーティング法のいずれかの方法で行われることを特徴とする請求項7または8に記載の親水性部材。

【公開番号】特開2008−280487(P2008−280487A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−128549(P2007−128549)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】