説明

常磁性特性を持つ小粒子に結合した、多様な化学ライブラリー

本発明は、常磁性特性を持つ小粒子に結合した多様な化学ライブラリーを提供する。典型的には、化学構造は、複数の異なる化学部分を含み、粒子は常磁性であり、かつ約100nmと約10ミクロンの間の直径を有し、特定の粒子各々に結合した化学構造は、実質的に同じ構造を有し、かつコンビナトリアルライブラリーは、少なくとも100,000の異なる化学構造を含む。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、コンビナトリアル化学、タンパク質化学および生化学の分野に関する。
【0002】
本出願は、2005年3月23日に出願された、米国仮特許出願第60/664,794号、および同じ日に出願された「タンパク質を精製する方法」と題されるPCT特許出願(Boschetti and Lomas)に恩典を請求し、これらの開示は、その全体が、参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
分子の大規模なコレクション(例えばライブラリー)は、有用な化合物の同定を成功させるための重要なツールとして現れてきた。こうしたライブラリーは、典型的には、本明細書にさらに記載するようなコンビナトリアルアプローチを用いて合成される。コンビナトリアルライブラリーは、より小さいサブユニットまたはモノマーで構成される多数の種の化合物のコレクションであり、例えばアミノ酸残基で構成されるコンビナトリアルペプチドライブラリーまたはヌクレオチドで構成されるコンビナトリアル核酸ライブラリーがある。コンビナトリアルライブラリーは、数百種から数百万種の化合物の範囲に渡る、多様なサイズで提供される。例えば、18の天然アミノ酸で作製される直鎖六量体ペプチドのライブラリーは、34×106の異なる化学構造を含有する。アミノ酸類似体および異性体もまた含まれる場合、潜在的な構造の数は、事実上、無限である。化学的アプローチはまた、環状および分枝ペプチドの合成も容易にする。ペプチド、炭水化物、核酸、オリゴヌクレオチド、および小有機分子等の化合物で構成されるオリゴマーおよびポリマーライブラリーを含めた、多様なライブラリー種もまた、存在する。
【0004】
無作為なオリゴペプチドの数千、数百万ですらあるライブラリーが、化学合成(Houghten et al., 1991, Nature 354:84-6)、または遺伝子発現(Marks et al., 1991, J Mol Biol 222:581-97)によって調製され、クロマトグラフィー支持体上(Lam et al., 1991, Nature 354:82-4)、細菌細胞内部(Colas et al., 1996, Nature 380:548-550)、細菌線毛上(Lu, 1990, Bio/Technology 13:366-372)、またはファージ上(Smith, 1985, Science 228:1315-7)にディスプレイされている。タンパク質(Ladner、米国特許第4,664,989号)、ペプトイド(Simon et al., 1992, Proc Natl Acad Sci USA 89:9367-71)、核酸(Ellington and Szostak, 1990, Nature 246:818-22)、炭水化物、および小有機分子(Eichler et al., 1995, Med Res Rev 15:481-96)のライブラリーもまた、調製されてきている。さらに、環状ペプチド、ペプチドアミド、ペプチドアルデヒド等が、固体支持体上で、直接合成された(Barany et al., 1987, Int. J Peptide Protein Res 30:705-739; Fields et al., 1990, Int. J Peptide Protein Res 35:161-214; Lloyd- Williams et al, 1993, Tetrahedron 49:11065-11133; Wang, 1973, J Amer Chem Soc 95:1328; Barlos et al., 1989, Tetrahedron Letters 30:3947; Beebe et al., 1995, J Org Chem 60:4204; Rink, 1987, Tetrahedron Letters 28:3787; Rapp et al., in "Peptides 1988", Proc. 20th European Peptide Symposium, Jung G. and Boyer E. (Eds.), Walker de Gruyter, Berlin, pp 199 1989]。
【0005】
コンビナトリアルライブラリーを作製するため、固相支持体(樹脂)を1つまたは複数の化合物サブユニットと、かつ1つまたは複数の試薬と、注意深く管理され、あらかじめ決定された化学反応順で、反応させる。言い換えると、ライブラリーサブユニットを、固相支持体上で「成長」させる。固相支持体は、典型的には、ライブラリーの化合物を形成するため、サブユニットまたはモノマーと結合するように官能化された表面を持つ、ポリマー性物体である。1つのライブラリーの合成には、典型的には、多数の固相支持体が関与する。当技術分野に知られる固相支持体には、とりわけ、ポリスチレン樹脂ビーズ、木綿糸、およびポリテトラフルオロエチレン(「PTFE」)のメンブレンシートが含まれる。
【0006】
コンビナトリアルライブラリーは、アクセプター分子が結合するかまたは関心対象の生物学的活性を仲介するのを可能にするリガンドを同定し、かつ特徴付けること(Scott and Smith, 1990, Science 249:386-390; Salmon et al., 1993, Proc Natl Acad Sci USA 90:11708-11712; )、抗ペプチド抗体に結合させること(Fodor et al., 1991, Science 251:767-773; Needles et al., 1993, Proc Natl Acad Sci USA 90:10700-10704; Valadon et al., 1996, J Mol Biol 261 :11-22)、細胞タンパク質 (Schmitz et al., 1996, J Mol Biol 260:664-677)、ウイルスタンパク質(Hong and Boulanger, 1995, EMBO J 14:4714-4727)、細菌タンパク質(Jacobsson and Frykberg, 1995, Biotechniques 18:878-885)、核酸(Cheng et al., 1996, Gene 171:1-8)、プラスチック(Siani et al., 1994, J Chem Inf Comput Sci 34:588-593)、および生物学的機能を有する分子(Hammon et al.、米国特許出願第2004/0101830号)を含む多様な標的への結合に関してスクリーニングすることなどの、多様な使用を有する。
【0007】
大規模なリガンドライブラリーに関する別の重要な使用は、プロテオミクスにおけるものであり、より具体的には、血清などの複雑な生物学的混合物中の分析物の濃度範囲を減少させるためのものである。この方法はまた、「同等化」とも呼ばれ、固相に結合したリガンドライブラリーを、試料由来のタンパク質に曝露する工程を伴う。大規模なライブラリーを用いる場合、試料中のタンパク質の大部分またはすべてが、ライブラリー中の少なくとも1つのユニークなリガンドに結合する。用いるライブラリーのサイズ、すなわちリガンド全部の実際の数を限定することによって、非常に豊富なタンパク質はそのリガンドを飽和させる一方、稀なタンパク質はリガンドを飽和させないであろう。結合に不十分なリガンドしかないタンパク質を洗浄した後、保持されるタンパク質は、圧縮された濃度範囲を有し-最も豊富なタンパク質の相対量は、稀なタンパク質の相対量により近くなる。この方法は、例えば、EP 1 580 559 Al (Boschetti)に記載される。この方法を行う際、少量でしか入手可能でない試料を「同等化」させる場合は、少量のリガンドライブラリーが有用である。
【発明の開示】
【0008】
発明の概要
本発明の目的は、複合タンパク質混合物を分析し、かつタンパク質を精製するのに有用な、スプリット-カップル-リコンバイン(split-couple-and-recombine)コンビナトリアル化学合成中、非常に小さい粒子を操作する際の問題点の解決法を提供することである。本発明の1つの局面において、方法は、スプリット-カップル-リコンバイン・コンビナトリアル化学合成をその上で行う、常磁性特性を持つ小粒子を提供する工程、および磁力を通じて、例えば磁石を用いて、粒子を操作する工程を伴う。
【0009】
本発明の好ましい態様において、粒子に結合した多様な化学構造のコンビナトリアルライブラリーを作製する方法を提供する。この方法は、約100 nmと約10ミクロンの間の直径および複数の異なる化学部分を有し常磁性特性を持つ、粒子のコレクションを用いて、多数のラウンドのスプリット-カップル-リコンバイン化学合成を行う工程を含み、スプリット-カップル-リコンバイン化学合成の各ラウンドが、化学構造に化学部分を付加し、かつ常磁性特性を持つ粒子を磁気的に操作する工程を伴い、かつラウンドの数は、少なくとも100,000のユニークな化学構造の多様性を有するライブラリーを組み立てるのに十分である。
【0010】
特定の態様において、常磁性特性を持つ粒子は、約300 nmと約5ミクロンの間、または約1ミクロンと3ミクロンの間の直径を有する。
【0011】
多くの化学構造を用いて、本発明の方法を実施し、かつ本発明の組成物を産生してもよい。好ましい化学構造は、ペプチド、オリゴヌクレオチド、オリゴ糖または合成有機分子である。
【0012】
ライブラリーは、多数のユニークな化学構造の多様性を有する。本発明の好ましいライブラリーは、少なくとも100万のユニークな化学構造の多様性を有し、かつさらにより好ましくは、ライブラリーは、少なくとも100,000,000の化学構造のサイズを有する。
【0013】
化学構造がペプチドである態様において、ライブラリーは少なくとも300万のユニークなペプチド、好ましくは少なくとも6400万のユニークなペプチドの多様性を有する。
【0014】
コンビナトリアルライブラリーの実質的にすべてのメンバーを含むライブラリーが、好ましい。
【0015】
約100 nmと約10ミクロンの間の直径を有し常磁性特性を持つ粒子を用いると、好ましい態様において、ライブラリー、および特にペプチドライブラリーは、約100マイクロリットル未満である。
【0016】
常磁性特性を持つ粒子は、異なる方法で作製可能である。1つの態様において、常磁性特性を持つ粒子は、常磁性物質が埋め込まれたポリマー物質を含む。常磁性特性を持つ粒子はまた、常磁性物質がこれらの粒子の孔中に留まった、多孔粒子も含んでもよい。
【0017】
本発明の別の局面において、約100 nmと約10ミクロンの間の直径を有し常磁性特性を持つ粒子のコレクションに結合した多様な化学構造のライブラリーを提供する。こうしたライブラリーの化学構造は、複数の異なる化学部分を含み、かつ常磁性特性を持つ各個々の粒子に結合した化学構造が実質的に同じ構造を含む。典型的には、こうしたライブラリーは、少なくとも100,000のユニークな化学構造の多様性を有する。
【0018】
好ましい態様において、粒子は実質的に単分散であり、化学構造はペプチドであり、かつライブラリーは少なくとも300,000のユニークなペプチドの多様性を有する。同様に好ましいのは、少なくとも3,000,000のユニークなペプチドの多様性を有するライブラリーであり、好ましくは少なくとも30,000,000のユニークなペプチドの多様性、より好ましくは少なくとも64,000,000のユニークなペプチドの多様性、かつさらにより好ましくは少なくとも100,000,000のユニークなペプチドの多様性を有するライブラリーである。好ましいライブラリーは、コンビナトリアルライブラリーの実質的にすべてのメンバーを含むライブラリーである。
【0019】
粒子は、多様な架橋された合成または天然ポリマーを含んでもよい。好ましいのは、架橋された合成または天然ポリマーが、ポリアクリレート、ポリビニル、ポリスチレン、ナイロン、ポリウレタン、または多糖である粒子である。
【0020】
本発明の別の局面において、化学構造が複数の異なる化学部分を含み、ライブラリーが少なくとも100,000のユニークな化学構造の多様性を有し、かつ特定の粒子各々がこれら粒子に結合した化学構造の多様性の大部分を有する、約100 nmと約10ミクロンの間の直径を有し常磁性特性を持つ粒子のコレクションに結合した多様な化学構造のライブラリーを提供する。
【0021】
本発明はまた、キットも提供する。本発明の好ましいキットは、本発明のライブラリーを含む。本発明のキットを用いて、例えば、混合物中の分析物の濃度範囲を減少させるか、混合物中の分析物を検出するか、またはタンパク質を精製してもよい。したがって、キットは、混合物中の分析物の濃度範囲を減少させるためにライブラリーを使用するか、混合物中の分析物を検出するか、またはタンパク質を精製するための、1つまたは複数の使用説明書を含む。任意で、キットはまた、緩衝剤を含有する容器をさらに含んでもよい。本発明のさらなるキット態様には、一般の当業者が、本明細書記載の方法の任意の変動を実行するのを可能にする、任意の機能構成要素が含まれる。
【0022】
本発明の組成物は、多くの異なる方法を実施するのに有用である。本発明の組成物の好ましい使用は、混合物中の異なる分析物種の濃度範囲を減少させるための方法における。この方法は:(a)第一の濃度範囲で第一の試料中に存在する、複数の異なる分析物種を含む、第一の試料を提供する工程;(b)化学構造が複数の異なる化学部分を含み、かつ常磁性特性を持つ各個々の粒子に結合した化学構造が実質的に同じ構造を有し、かつコンビナトリアルライブラリーが少なくとも100,000のユニークな化学構造の多様性を有する、約100 nmと約10ミクロンの間の直径を有し常磁性特性を持つ粒子のコレクションに結合した多様な化学構造のライブラリーのある量と、第一の試料を接触させる工程;(c)異なる化学構造を用いて、第一の試料から、異なる分析物種の量を捕捉し、かつ非結合分析物種を除去する工程;および(d)化学構造から、捕捉された分析物種を単離して、第二の濃度範囲で第二の試料中に存在する、複数の異なる分析物種を含む、第二の試料を生じる工程;を含み第二の濃度範囲が第一の濃度範囲未満であるように、異なる分析物種の量を捕捉するため、ライブラリーの量を選択する。
【0023】
この方法の1つの局面において、捕捉された分析物種の単離は、段階的溶出を含み、複数のアリコットを生じてもよい。
【0024】
任意で、この方法は、単離された分析物を検出する工程を含む。検出は、質量分析または電気泳動によってもよい。
【0025】
好ましい態様において、捕捉された分析物の単離は、分析物を、粒子から、吸着表面を持つバイオチップ上に溶出する工程を含み、吸着表面が溶出物由来の分析物に結合する。
【0026】
本発明のさらに別の局面において、混合物中の分析物を検出するための方法を提供する。好ましい態様において、この方法は:(a)第一の濃度範囲で第一の試料中に存在する、複数の異なる分析物種を含む、第一の試料を提供する工程;(b)化学構造が複数の異なる化学部分を含み、かつ常磁性特性を持つ各個々の粒子に結合した化学構造が実質的に同じ構造を有し、かつコンビナトリアルライブラリーが少なくとも100,000のユニークな化学構造の多様性を有する、約100 nmと約10ミクロンの間の直径を有し常磁性特性を持つ粒子のコレクションに結合した多様な化学構造のライブラリーのある量と、第一の試料を接触させる工程;(c)異なる化学構造を用いて、第一の試料から、異なる分析物種の量を捕捉し、かつ非結合分析物種を除去する工程;(d)捕捉された分析物を伴う粒子を質量分析計に入れる工程;および(e)捕捉された分析物を、レーザー脱離質量分析によって検出する工程;を含む。
【0027】
さらに、本発明は、標的タンパク質群を精製するための方法を提供する。好ましい態様において、この方法は:(a)化学構造が複数の異なる化学部分を含み、かつ常磁性特性を持つ各個々の粒子に結合した化学構造が実質的に同じ構造を有し、かつコンビナトリアルライブラリーが、混入タンパク質および少量の標的タンパク質群に結合するのに十分な量の、少なくとも100,000のユニークな化学構造の多様性を有する、約100 nmと約10ミクロンの間の直径を有し常磁性特性を持つ粒子のコレクションに結合した多様な化学構造のライブラリーと、少なくとも95%の標的タンパク質群および多くても5%の混入タンパク質を含む試料を接触させる工程;(b)混入タンパク質および少量の標的タンパク質群を、化学構造のライブラリーに結合させる工程;(c)化学構造のライブラリーに結合した混入タンパク質および標的タンパク質群から、非結合標的タンパク質群を分離する工程;および(d)試料から非結合標的タンパク質群を収集する工程;を含み、それによって収集した標的タンパク質群は、試料中の標的タンパク質群より純粋である。
【0028】
発明の詳細な説明
血清、脳脊髄液および他のものなどの生物学的試料は、数ミリリットル以下の量でしか、研究者に入手可能でないことがある。スクリーニング実験においては、この貴重な材料をできる限り少しだけ用いることが好ましい。生物学的試料を分析する1つの方法は、例えば「スプリット-カップル-リコンバイン」法によって作製された、粒子に結合した多様な化学ライブラリーに、試料を曝露する工程を伴う。しかし、典型的には、こうしたライブラリーを作製するのに用いられる粒子は、40ミクロン〜100ミクロンのサイズ範囲である。20アミノ酸の6ペプチドの完全コンビナトリアルライブラリーは、約6400万のユニークなペプチド種の多様性を有する。40ミクロン〜100ミクロンのサイズ範囲を有するビーズに付着させると、ライブラリーは約16ミリリットルの体積を有する。一般的に、ビーズは、最低限、10倍量の血清とともに装填され、これは160mLまたはタンパク質9600mgに相当する。100μLの血清体積を扱うには、10μLのリガンドライブラリーが必要であろう。こうしたライブラリーは、約30,000のユニークな6ペプチド種の多様性しか持たず、血清などの複雑な生物学的試料中の、多様なタンパク質を捕捉するには最適ではない。さらに数千万の組み合わせで構成される物質の大量のストックから、こうしたライブラリーの10μLをサンプリングする場合、各個々の試料が互いに異なるであろう。その結果、最終結果の再現性が不確かになり得る。
【0029】
この問題を解決するための1つのアプローチは、例えば直径200ナノメートル〜10ミクロンの範囲の、非常に小さい粒子を用いることである。第一の場合、これらのビーズの10μLは、1.25×1012ビーズを含み;第二の場合は、同じ体積が、約107のビーズを含む。しかし、こうしたサイズのビーズは、取り扱いが非常に困難である。特に、コンビナトリアル化学のスプリット-カップル-リコンバイン法は、典型的には、フロースルーカラムにおける化学合成、その後溶媒および過剰な試薬を分離するためのろ過を実行する工程を伴う。小粒子は、これらのカラムにおいて、フィルターにくっつくため、化学的カップリング後、粒子を洗浄しかつプールするのが実行不可能になる。分離の代替法としての遠心分離は、労働力を要し、かつ時間がかかる。
【0030】
本発明は、スプリット-カップル-リコンバイン・コンビナトリアル化学合成中の、非常に小さい粒子を操作する際の問題点に対する解決法を提供する。この方法は、化学合成をその上で行う、常磁性特性を持つ小粒子を提供する工程、および磁力を通じて、例えば磁石を用いて、粒子を操作する工程を伴う。
【0031】
本発明はまた、ライブラリーの大部分のまたは実質的にすべてのユニークなメンバーが各個々の粒子に付着した、粒子に結合したリガンドのライブラリーも提供する。
【0032】
I.常磁性特性を持つ小粒子
A.常磁性および非常磁性物質
本発明の粒子は、常磁性特性を有する。すなわち、粒子は、外部磁場と並列する原子磁気双極子を有する。したがって、本発明の粒子は、磁石によって引き付けられ、かつ磁場にさらされた場合は、普通の磁石のように引き付けることも可能である。粒子は、一般的に単分散であり、その直径は、100〜1000nmの範囲であってもよい。操作中、これらのビーズは懸濁中に留まり;次いで磁場によって分離される。「実質的に単分散」は、粒子の直径範囲の標準偏差が2%を超えないことを意味する。
【0033】
本発明の常磁性特性を持つ粒子は、化学構造を化学的に結合させる、一般的には共有結合させる、常磁性物質および非常磁性物質を一般的に含む。
【0034】
常磁性物質は、常磁性特性を持つ、非常に細かいミネラル酸化物粒子、例えば磁鉄鉱(混合酸化鉄)、赤鉄鉱(酸化鉄)、クロム鉄鉱(鉄およびクロムの塩)および永久磁石または電磁石によって引き付けられるすべての他の物質で構成される。限定されるわけではないが、四酸化三鉄(Fe3O4)、γ-三二酸化物(γ-Fe2O3)、MnZn-フェライト、NiZn-フェライト、YFe-ガーネット、GaFe-ガーネット、Ba-フェライト、およびSr-フェライトなどのフェライト;鉄、マンガン、コバルト、ニッケル、およびクロムなどの金属;鉄、マンガン、コバルト、ニッケル等の合金を用いてもよい。入手可能であり、かつ安価であることから、好ましい物質は磁鉄鉱である。これは、乾燥した異なるサイズの粒子として、または水性安定化懸濁物として供給される。
【0035】
これらの粒子は、ポリマーネットワーク内で分散し、かつ粒子全体に、永久磁石または電磁石によって引き付けられる特性を与える。
【0036】
化学構造を付着させる非常磁性物質は、ポリマー物質でできている。最も一般的なポリマー物質の中には、架橋されたアクリレート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリビニル、ナイロン、および多糖がある。より具体的には、これらのポリマー物質には、重合可能モノマーの重合によって産生される有機ポリマーが含まれ:モノマーには、スチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-n-ブチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、p-n-ドデシルスチレン、p-メトキシスチレン、およびp-フェニルスチレンなどのスチレン性重合可能モノマー;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸n-アミル、アクリル酸n-ヘキシル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸n-オクチル、アクリル酸n-ノニル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸ジメチルホスファトエチル、アクリル酸ジエチルホスファトエチル、アクリル酸ジブチルホスファトエチル、およびアクリル酸2-ベンゾイルオキシエチルなどのアクリル酸重合可能モノマー;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸n-アミル、メタクリル酸n-ヘキシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸n-オクチル、メタクリル酸n-ノニル、メタクリル酸ジエチルホスファトエチル、アクリルアミド、メタクリルアミドおよび誘導体;メタクリル酸ジブチルホスファトエチルなどのメタクリル酸重合可能モノマー;メチレン-脂肪族モノカルボン酸エステル;ビニルエステル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、およびギ酸ビニルなどのビニル重合可能モノマー;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、およびビニルイソブチルエーテルなどのビニルエーテル;ならびにビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、およびビニルイソプロピルケトンなどのビニルケトンが含まれる。ポリマー構造の他の例は、カオリナイト、ベントナイト、タルク、および雲母などの粘土鉱物を含む無機固体;アルミナ、二酸化チタン、および酸化亜鉛などの金属酸化物;シリカゲル、ヒドロキシアパタイト、およびリン酸カルシウムゲルなどの不溶性無機塩;金、銀、白金、および銅などの金属;ならびにGaAs、GaP、およびZnSなどの半導体化合物でできているものである。物質はこれらに限定されない。ポリマー構造をその2つまたはそれより多い組み合わせで用いてもよい。
【0037】
これらの非常磁性ポリマーネットワークは、ぎっしり詰まっていてもまた多孔性であってもよい。第一の場合、外部表面領域が分析物との相互作用に用いられ、第二の場合、孔が分析物の自由な分散のために十分に大きい場合、分子相互作用にすべての孔構造が用いられるであろう。
【0038】
B.微粒子固体支持体のサイズ
本発明の好ましい態様は、直径10μm未満、好ましくは直径200ナノメートルと10ミクロンの間、直径300nmと5ミクロンの間または直径1と3ミクロンの間の、小さいビーズ状の微粒子固体支持体を利用する。(非球状粒子の直径は、最長の寸法の長さを指す。)微粒子固体支持体は、より大きいビーズと比較して増加した表面積対体積比を保持するため、こうした支持体が望ましい。微粒子固体支持体はまた、全コンビナトリアルライブラリーを含有するのに必要な支持体の体積も減少させ、それによってより複雑で、かつ使用するのに効率的なライブラリーを可能にする。
【0039】
C.常磁性特性を持つ小さいビーズ状物質の作製
本発明に有用な常磁性特性を持つ粒子は、いくつかの商業的供給元から入手可能である。これらには、例えばDynal (Invitrogen) (Carlsbad, CA)、Ademtech (Pessac France -超常磁性ナノ粒子)およびSpherotech (Libertyville, IL)が含まれる。
【0040】
いくつかの方法を用いて、本発明の常磁性特性を持つ小さいビーズ状物質を作製してもよい。
【0041】
本発明の一つの態様において、磁鉄鉱の粒子または粒子の凝集物をポリマー外層内に被包してもよく、次いで、この層の上にコンビナトリアルリガンドを付着させてもよい。
【0042】
本発明の別の態様において、既存の非常磁性多孔ポリマービーズに、磁鉄鉱などの常磁性粒子の水性コロイド性懸濁物を装填することによって、常磁性物質を得てもよい。これらの後者の常磁性粒子は、多孔性ポリマービーズ内に徐々に分散し、かつ孔構造内で内部凝集物を形成するにつれて捕捉される。次いで、適切な溶媒を用いて、ポリマービーズ内に捕捉されていない過剰な常磁性物質を洗い流す。コンビナトリアルライブラリーのリガンドがポリマービーズに付着する前または後のいずれかに、常磁性物質のこの「装填」を完了してもよい。
【0043】
別の態様において、常磁性物質をポリマーまたはモノマーと混合し、かつポリマーもしくはモノマーを重合させるかまたは架橋することによって、常磁性特性を持つ粒子を作製してもよい。第一の場合、アクリル酸モノマーまたはビニルモノマーの溶液を小さい常磁性物質とともに添加し、かつ適切に攪拌することによって懸濁中に維持する。次いで、小滴の懸濁物を得るため、溶液を非混和性溶媒に注ぐ。小滴のサイズおよびその分布は、攪拌法に依存する。小滴懸濁物が期待されるサイズに達したら、モノマーを重合させ、かつ小滴を小さいビーズに変える。この方法を「エマルジョン重合」と称する。この結果、常磁性物質の粒子がポリマーネットワーク内に捕捉される。第二の場合、多糖(例えばアガロース、デキストラン)の溶液を小さい常磁性物質(例えば粒子)に添加し、かつ適切な架橋剤(例えばバイセポキシラン(bisepoxyranes)、ジビニルスルホン)を添加しながら適切に攪拌することによって、懸濁中に維持し、かつ架橋条件を得るため、pHを調整する。次いで、小滴懸濁物が得られるように、懸濁中の粒子を含む多糖溶液を非混和性溶媒に注ぐ。小滴のサイズおよびその分布は、攪拌法に依存する。小滴懸濁物が期待されるサイズに達したら、架橋反応が達成されるまで、懸濁物をあらかじめ決定した温度に放置する。小さい水性小滴を徐々に小さいビーズに変える。この結果、常磁性物質の粒子がポリマーネットワーク内に捕捉され、得られた物質に常磁性特性が与えられる。
【0044】
D.固体支持体
特にペプチドライブラリーを合成するために本発明において使用するための固体支持体物質の適合性を、以下の基準に対して評価してもよい:(a)固体支持体上で、ペプチドを合成する能力(固体支持体は、コンビナトリアルペプチドライブラリーの合成で用いられるすべての溶媒に対して、安定でなければならない);(b)固体支持体は、遊離アミノ基、または安定であるが切断可能な、適切なリンカーを含有すべきである(しかし切断可能リンカーが必要とはされないことに注目すべきである);(c)固体支持体は、合成、スクリーニングおよび取り扱い中に、機械的に安定でなければならない;(d)固体支持体サイズは、手動の取り扱い、またはいかなる代替取り扱い手段が意図されていても、これを可能にするのに十分に大きい;(e)ビーズのペプチド容量は、ビーズあたり少なくとも約10 pmolまたはより低い限界が、配列決定および検出技術における進歩によって実現可能になった場合、その量のペプチドでなければならない(約100 pmolの容量が好ましい);かつ(f)固体支持体は、選択したリガンドの、かつタンパク質一般の非特異的吸着を低い度合いでしか示してはならない。一般の当業者は、これらの基準を絶対的な必要条件として見なすべきでないことを認識するであろう。
【0045】
本発明での使用に許容され得る固体支持体は、非常に多様であり得る。固体支持体は、多孔性または無孔性であってよいが、好ましくは多孔性である。固体支持体は、連続的または非連続的、柔軟性または非柔軟性であってもよい。固体支持体は、セラミック、ガラス、金属、有機ポリマー物質、またはその組み合わせを含めて、多様な物質でできていてもよい。
【0046】
微粒子支持体の形状は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ジアセテート、トリアセテート、セロファン、セルロイド、ポリカーボネート、ポリイミド、塩化ポリビニル、塩化ポリビニリデン、ポリアクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびポリエステルなどのプラスチック物質のフィルム;塩化ポリビニル、ポリビニルアルコール、アセチルセルロース、ポリカーボネート、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン、およびテフロンなどのポリマーの多孔性フィルム;木板;ガラス板;シリコン支持体;コットン、レーヨン、アクリル繊維、シルク、およびポリエステル繊維などの物質から形成される布;ならびに木を含まない紙、中質紙、アート紙、ボンド紙、再生紙、バライタ紙、キャストコート紙、段ボール紙、および樹脂コーティング紙などの紙シートの形状であってもよい。当然ながら、キャリアーの形状はこれらに限定されない。フィルムまたはシートの形状の物質は、その上に磁気物質を保持可能である限り、滑らかな表面またはでこぼこした表面を有してもよい。
【0047】
好ましい固体支持体には、微粒子またはビーズ状支持体などの有機ポリマー性支持体が含まれ、ポリアクリルアミド、ならびにケイ酸塩および金属酸化物などのミネラル支持体もまた、用いてもよい。特に好ましい態様には、球状もしくは不規則な形状のビーズ、または粒子の形の固体支持体が含まれる。
【0048】
多孔性物質は、広い表面積を提供するため有用である。多孔性支持体は、合成または天然、有機または無機であってもよい。適切な固体支持体は、多孔性構造を持つ、タンパク質分離のためのクロマトグラフィー吸着剤に非常に似ており、少なくとも約1.0ナノメートル(nm)の直径、および少なくとも約0.1立方センチメートル/グラム(cm3/g)の孔体積を持つ孔を有する。より大きい孔は、分散に対してより制限性でないであろうことから、好ましくは、孔直径は、少なくとも約30nmである。好ましくは、孔体積は、少なくとも約0.5cm3/gであり、これは、孔を取り囲む表面積がより広いため、より大きな潜在的容量を持つためである。好ましい多孔性支持体には、球状および不規則な形状のビーズならびに粒子を含む、アガロース、親水性ポリアクリレート、ポリスチレン、ミネラル酸化物などの微粒子またはビーズ状支持体が含まれる。
【0049】
重要な利点のため、化学構造用の固体支持体は、好ましくは親水性である。好ましくは、親水性ポリマーは、分析物のより多量の浸潤を可能にするため、水膨張性である。こうした支持体の例には、セルロース、修飾セルロース、アガロース、架橋デキストラン、アミノ修飾架橋デキストラン、グアーゴム、修飾グアーゴム、キサンチンゴム、ローカストビーンゴムおよびヒドロゲルなどの天然多糖が含まれる。他の例には、ポリアクリルアミド、ポリアクリレート、ポリビニルアルコール(PVA)および修飾ポリエチレングリコールなどの架橋合成親水性ポリマーが含まれる。好ましいポリマー物質は、組成にしたがって、コンビナトリアルライブラリーを構築するのに用いられる溶媒と適合するものである。
【0050】
一般的に、常磁性特性を持つ粒子は、アミンもしくはカルボキシルなどの反応性基、またはその上に化学部分をカップリングさせ得るアフィニティークロマトグラフィー支持体の調製のための一般的に周知の反応性基を含む。
【0051】
表面上の反応していない架橋基を、メルカプトエタノールなどの小さい化学物質と反応させて、さらなる反応を防止してもよい。さらに、表面をさらに処理して、タンパク質の非特異的接着を防止してもよい。
【0052】
微粒子固体支持体には、非結合標的タンパク質群、および常磁性ビーズにカップリングした化学構造に結合したタンパク質の、容易な一工程分離を可能にする常磁性ビーズが含まれる。
【0053】
II.化学構造のライブラリー
本発明で用いる化学構造のライブラリーは、少なくとも100,000の異なる化学構造のコレクションを含む。特定の態様において、化学構造のライブラリーは、少なくとも300,000、1,000,000、3,000,000、10,000,000、50,000,000、または少なくとも100,000,000のユニークな化学構造を含む。好ましくは、ライブラリー中の少なくとも1つの化学構造が、分析しようとする混合物中の各分析物を認識する。好ましくは、化学構造のライブラリーには、少なくとも試料中に存在する分析物と同じくらい多くの異なる化学構造が含まれる。
【0054】
典型的に、および以下に詳細に記載するように、化学構造のライブラリーを不溶性固体支持体または微粒子物質にカップリングさせる。各固体支持体または不溶性粒子は、好ましくは同じ化学構造のいくつかのコピーを保持し、各粒子種が異なる化学構造にカップリングする。
【0055】
当業者に公知の任意の技術を用いて、本発明の化学構造のライブラリーを作製してもよい。例えば、化学構造のライブラリーを化学的に合成しても、天然供給源から採取しても、または生物有機ポリマーである化学構造のライブラリーの場合、組換え技術を用いて産生してもよい。しかし、好ましい態様において、周知の「スプリット-カップル-リコンバイン」法を用い、コンビナトリアル合成を通じて、化学構造を産生する。
【0056】
固体支持体にあらかじめカップリングした化学構造を購入してもよいし、または標準法を用いて、固体支持体上に間接的に付着させるか、もしくは直接固定してもよい(例えば、Harlow and Lane, Antibodies, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY (1988); Biancala et al., Letters in Peptide Science 2000, 7(291):297; MacBeath et al., Science 2000, 289:1760-1763; Cass et al., ed., Proceedings of the Thirteenth American Peptide Symposium; Leiden, Escom, 975-979 (1994);米国特許第5,576,220号; Cook et al., Tetrahedron Letters 1994, 35:6777-6780; およびFodor et al., Science 1991, 251(4995):767- 773を参照されたい)。
【0057】
A.コンビナトリアルライブラリー
本発明の一つの態様において、化学構造のライブラリーはコンビナトリアルライブラリーまたはその部分である。コンビナトリアル化学ライブラリーは、すべて可能な組み合わせで、多数の化学的「構築ブロック」を組み合わせることにより、化学合成または生物学的合成のいずれかによって生成される化合物コレクションである。例えば、ポリペプチドライブラリーなどの完全直鎖コンビナトリアル化学ライブラリーは、所定の化合物長(すなわち、ポリペプチド化合物中のアミノ酸数)に関して、すべての可能な方式で、化学的構築ブロック(アミノ酸)のセットを組み合わせることによって形成される。例えば、構築ブロックの数が5であり、かつ構築物が5つのメンバーで構成される場合、可能な直鎖組み合わせの数は、55または3,125メンバーである。この場合、構築ブロック(A、B、C、DおよびE)は:A-A-A-A-A; A-A-A-A-B; A-A-A-A-C; A-A-A-B-A; A-A-A-B-B; A-A-A-B-C; ……; A-A-B-A-A; A-A-B-A-B; A-A-B-A-C; ……; E-E-E-E-C; E-E-E-E-D; E-E-E-E-Eのように直鎖で組み立てられる。コンビナトリアルライブラリーの「実質的にすべて」のメンバーは、ライブラリーのユニークなメンバーの少なくとも95%である。
【0058】
別の形態のコンビナトリアルライブラリーは骨格に基づく。これらの構築物は、単一の中心分子またはコアを基とし、ブロックを構築することによって、選択的にかつ/または連続的に置換可能な位を含む。いくつかの置換基を付着させてもよいトリクロロ-トリアジン(3つの選択的に温度依存性の置換可能な位)が例として挙げられる。置換基の数が3である場合、可能な組み合わせの数は10である。各置換基の相対的配置を考慮することもまた可能であり;この場合、組み合わせの数はさらに大きくなる。

3つの置換可能位(カルボキシル、アルファ-アミンおよびイプシロン-アミン)が選択的に保護され、こうして結合ブロックによって選択的に置換可能であり得るリジンが、骨格の別の例として挙げられる。
【0059】
第三のレベルとして、直鎖コンビナトリアルライブラリーと骨格に基づくライブラリーを組み合わせることが可能であり、この後者の置換基はコンビナトリアル直鎖配列である。
【0060】
化学的構築ブロックのこうした組み合わせ混合を通じて、何百万の化合物を合成可能である。ペプチド化学構造では、好ましくは、長さを15、10、8、6または4アミノ酸に制限する。本発明のポリヌクレオチド化学構造は、少なくとも4、より好ましくは6、8、10、15、または少なくとも20ヌクレオチドの好ましい長さを有する。オリゴ糖は、好ましくは、長さ少なくとも5単糖単位、より好ましくは8、10、15、20、25またはそれより多い単糖単位である。
【0061】
コンビナトリアルライブラリーは完全であってもまたは不完全であってもよい。バイオポリマーの完全コンビナトリアルライブラリーは、所定のポリマー長および組成に関して、すべての可能なモノマー順列の典型を含有するライブラリーである。不完全ライブラリーは、所定のポリマー長に関して、モノマーの1つまたは複数の可能な順列を欠くライブラリーである。
【0062】
当技術分野に周知のコンビナトリアルおよび合成化学技術は、各々がユニークな構造を有する、数百万のメンバーを含有するライブラリーを生成可能である(Lam et al., Nature 354: 82-84 (1991)および国際(PCT)特許出願WO 92/00091)。例えば、天然アミノ酸のうちの18でできている直鎖六量体リガンドのライブラリーは、34×106の異なる構造を含有し、20アミノ酸でできているライブラリーは、例えば、64×106の異なる構造を含有する。アミノ酸類似体および異性体もまた含まれる場合、潜在的な構造の数は、事実上無限である。コンビナトリアルライブラリーのメンバーを、ビーズなどの固体支持体上で合成しても、または固体支持体にカップリングしてもよく、各ビーズは、本質的に、数百万コピーのライブラリーメンバーを表面上に有する。異なるビーズを異なるライブラリーメンバーにカップリングしてもよく、かつライブラリーメンバーをカップリングするのに用いるビーズの総数が多いため、ビーズにカップリングしたライブラリーメンバーに結合可能な異なる分子の潜在的な数は膨大である。
【0063】
Hammondら、US 2003/0212253 (2003年11月13日)は、以下の線に沿って、コンビナトリアルライブラリーを記載する。天然アミノ酸と比較して増加した安定性を提供するアミノ酸から、ペプチド化学構造ライブラリーを合成してもよい。例えば、ライブラリーからシステイン、メチオニンおよびトリプトファンを省き、かつ2-ナフチルアラニンおよびノルロイシンなどの非天然アミノ酸を含めてもよい。アミノ-ペプチダーゼの存在下でより高い生化学的安定性を提供するため、N-末端アミノ酸はD-異性体であってもよく、またはN-末端アミノ酸をアセチル化してもよい。化学構造密度は、標的分子に対する十分な結合を提供するのに十分でなければならないが、化学構造が、標的分子よりも化学構造自体と相互作用するほど高くてはならない。支持体の乾燥重量のグラムあたり、0.1μmol〜500μmolの化学構造密度が望ましく、かつより好ましくは、支持体のグラムあたり、10μmol〜100μmolの化学構造密度が望ましい。Toyopearl-AF Amino 650M樹脂(Tosoh USA, Grove City, OH)上で六量体ペプチドライブラリーを合成した。樹脂ビーズのサイズは、ビーズあたり60〜130 mmの範囲であった。Fmoc-Ala-OHおよびBoc-Ala-OH(1:3.8モル比)の混合物のカップリングによって、出発樹脂の最初の置換を達成した。カップリング後、薄めていないTFAで、Boc保護基を完全に除去した。次いで、生じた脱保護アミノ基をアセチル化した。樹脂ビーズ上に残ったFmoc-Ala-OH部位を介して、ペプチド鎖を組み立てた。標準的Fmoc合成戦略を使用した。典型的な実験の一つの態様において、20%ピペリジン/DMFで6グラムのFmoc-Ala-(Ac-Ala-)Toyopearl樹脂を脱保護し(2x20分間)、次いでDMFで洗浄し(8回)、かつ18の別個の反応容器に等しく分けた。別個の容器各々において、単一のFmoc-アミノ酸を樹脂(BOP/NMM、5〜10倍過剰)に4〜7時間カップリングした。個々の樹脂を洗浄し、かつ「スプリット/ミックス」ライブラリー技術を用いて化合させた(Furka et al., Int. J. Peptide Protein Res., 37, 487-493 (1991); Lam et al., Nature, 354, 82-84 (1991); 国際特許出願WO 92/00091 (1992); 米国特許第5,010,175号;米国特許第5,133,866号; および米国特許第5,498,538号)。アミノ酸配列が完成するまで、脱保護およびカップリングのサイクルを反復した(六量体ライブラリーでは6サイクル)。最後のカップリングサイクル中、別個の反応容器中で、20%ピペリジン/DMFを用いて、ペプチド樹脂から最後のFmocを除去した。TFAで2時間処理して、側鎖保護基を除去した。樹脂を徹底的に洗浄し、かつ真空下で乾燥させた。達成されたペプチド密度は、典型的には、0.06〜0.12 mmol/樹脂gの範囲であった。
【0064】
ペプチドリガンド-樹脂ビーズ複合体の配列およびペプチド組成を確認し、かつCommonwealth Biotechnologies, Inc., Richmond, Va.での定量的アミノ酸分析によって、樹脂の置換の度合いを計算した。配列決定は、Hewlett Packard G1005Aを用いたエドマン分解によって、Protein Technologies Laboratories, Texas A&M Universityで行った。
【0065】
コンビナトリアルライブラリーの調製のためのデバイスが市販されている(例えば、357 MPS, 390 MPS, Advanced Chem Tech, Louisville KY, Symphony, Rainin, Woburn, MA, 433A Applied Biosystems, Foster City, CA, 9050 Plus, Millipore, Bedford, MAを参照されたい)。さらに、多くのコンビナトリアルライブラリー自体が市販されている(例えば、ComGenex, Princeton, N.J., Tripos, Inc., St. Louis, MO, 3D Pharmaceuticals, Exton, PA, Martek Biosciences, Columbia, MDなどを参照されたい)。
【0066】
多様な置換基の導入によって、コンビナトリアルライブラリーおよび特にペプチドライブラリーを化学的に修飾してもよい。例えば、末端一級アミン基を持つペプチドライブラリーを、固有のさらなる特性を与える多数の分子で化学的に置換してもよい。曝露されたアミノ基(末端および側鎖リジン鎖)を、エポキシ、アルデヒド、カルボキシル、無水物、アシル塩化物、イソシアネート、ビニルスルホン、トシレート、ラクトンおよびその他などの反応性部分を有する多数の分子と反応させてもよい。反応性部分が、ライブラリーの一級アミノ基と反応する場合、この基は、ライブラリーにさらなる構造を付加する。したがって、ライブラリーは、最初のライブラリーに対して補完的であってもよい生化学的機能を持つ化学物質で末端キャップされる。
【0067】
例えば、一級アミノ末端ペプチドをスクシニル無水物と反応させ、2つのメチレン基のスペーサーの根元に末端カルボキシル基を導入する。生じるライブラリーの全体の特性は、その最初の主要な陽イオン性特性を、正味の陰イオン性特性に変化させる。この変化は、明白に、複雑な混合物の構成要素の濃度範囲の減少に関して、異なる振る舞いを誘導する。また、一級アミン末端ライブラリーを、好適にカルボキシル末端ライブラリーと混合してもよく、これはより広い適用可能分野を持つ可能性がある。
【0068】
ペプチドライブラリーの利用可能な一級アミンを修飾する別の方法は、末端糖を導入することであり;この場合、よりよい親水性が得られるとともに、コンビナトリアルペプチド鎖由来の構造の存在によって増進される、糖に対する親和性を有する種を捕捉する可能性が伴う。
【0069】
別の例において、末端一級アミノ基にキレート剤を付着させてもよい。これらの化学官能を遷移金属イオンとともに添加する場合、全ライブラリーの振る舞いが修飾され、かつ金属イオン相互作用を有し得るタンパク質がより特異的に取り扱われる。この場合、ライブラリーは、キレート剤およびより具体的にはEDTAなどの特異的置換剤を用いた選択的脱着によって、タンパク質吸着後に利用可能なさらなる特徴を保持するであろう。
【0070】
誘導体を作製する化学反応は、コンビナトリアルペプチドに限定されず、コンビナトリアルオリゴヌクレオチドおよびオリゴ糖などの他のライブラリーすべてに対するものであってもよい。
【0071】
1.小有機分子
本発明の好ましい態様において、方法は、小有機分子のコンビナトリアルライブラリーである、化学構造のライブラリーと、試料を接触させる工程を含む。
【0072】
したがって、小分子はまた、本発明の方法およびキットで使用するための化学構造のライブラリーとしても意図される。典型的には、小有機分子は、分析物と、イオン性、疎水性、または親和性相互作用を可能にする特性を有する。小有機分子のライブラリーには、モノ-、ジ-およびトリ-メチルアミノエチル基、モノ-、ジ-およびトリ-エチルアミノエチル基、スルホニル、ホスホリル、フェニル、カルボキシメチル基等の、クロマトグラフィープロセスで伝統的に使用される化学基が含まれる。例えば、ライブラリーは、ベンゾジアゼピン(例えば、Bunin et al., Proc Natl Acad Sci USA 1994, 91:4708-4712を参照されたい)およびペプトイド(例えばSimon et al., Proc Natl Acad Sci USA 1992, 89:9367-9371; Gilon et al., Biopolymers 1991, 31:745-750)を用いてもよい。ペプトイドは、ペプチド結合(-NHCO-)が類似の構造、例えば-NRCO-によって置換されているペプチド類似体である。別の態様において、化学構造は色素またはトリアジン誘導体である。当業者が、本発明の方法において、化学構造のライブラリーとしての使用に適合する、イオン性、疎水性または親和性特性を持つ数千の化学的官能基を容易に認識するであろうように、このリストは、いかなる意味でも網羅的ではない。
【0073】
本発明の好ましい態様において、小有機分子のコンビナトリアルライブラリーは、固体支持体、好ましくは複数のビーズに共有結合する。本明細書にさらに記載するように、固体支持体への小有機分子のコンビナトリアルライブラリーの付着は、直接であってもまたはリンカーを介してもよい。
【0074】
2.バイオポリマー
本発明の好ましい態様において、方法は、バイオポリマーのコンビナトリアルライブラリーである、化学構造のライブラリーと、試料を接触させる工程を含む。
【0075】
本発明の一つの態様において、バイオポリマーは、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、脂質およびオリゴ糖からなる群より選択される。
【0076】
本発明の化学構造のバイオポリマーライブラリーでは、直鎖長は、好ましくは4〜50モノマー単位、特に15以下、10以下であり、望ましくは、8、7、6、5、4または3モノマー単位である。ペプチドライブラリーでは、長さは、好ましくは15、10、8、6または4アミノ酸以下に限定される。核酸ライブラリーは、少なくとも4、より好ましくは少なくとも6、8、10、15、または少なくとも20ヌクレオチドの好ましい長さを有する。オリゴ糖は、好ましくは長さ少なくとも5単糖単位であり、より好ましくは少なくとも8、10、15、20、25またはそれを超える単糖単位である。
【0077】
本発明の一つの態様において、バイオポリマーは、固体支持体、好ましくは複数のビーズに共有結合する。本明細書にさらに記載するように、固体支持体へのバイオポリマーのコンビナトリアルライブラリーの付着は、直接であってもまたはリンカーを介してもよい。
【0078】
a)ペプチド
本発明の好ましい態様において、バイオポリマーはペプチドである。特に好ましい化学構造のライブラリーは、組換えまたは固相化学反応技術を用いて容易に産生されるため、50、40、30、25、20、15、10、8、6または4アミノ酸以下を有するペプチドを含む。さらに、本発明の方法のための使用を容易にする方式で、化学構造のペプチドライブラリーを産生してもよい。例えば、ペプチドがファージ・コートの一部として提示されるファージディスプレイライブラリーとして、ペプチドを組換え的に産生してもよい(例えばTang et al., J Biochem 1997, 122(4):686-690を参照されたい)。これに関連して、ペプチドは、固体支持体であるファージに付着するであろう。請求する発明で使用するのに適したペプチド化学構造のライブラリーを生成するための他の方法がまた、当業者に周知であり、例えば「スプリット-カップル-リコンバイン」法(例えば、すべてその全体が参照により本明細書に組み入れられる、Furka et al., Int J Peptide Protein Res 1991, 37:487-493; Fodor et al., Science 1991, 251:767-773; Houghton et al., Nature 1991, 354:84-88; Lam et al., Nature 1991, 354:82-84; 国際特許出願WO 92/00091; ならびに米国特許第5,010,175号、第5,133,866号、および第5,498, 538号を参照されたい)または当技術分野に知られる他のアプローチがある。ペプチドライブラリーの発現はまた、Devlin et al., Science 1990, 249:404-406に記載される。
【0079】
遺伝的にコードされる20アミノ酸:アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、およびバリンの1つまたは複数を用いて、コンビナトリアル6ペプチドライブラリーなどのコンビナトリアルペプチドライブラリーを合成してもよい。これらのうち、グリシンを除くすべてには光学異性体があるが、ヒトではL-型のみが見られる。にもかかわらず、これらのアミノ酸のD-型は、生物学的重要性を有し;例えばD-Pheは、公知の鎮痛剤である。したがって、これらのアミノ酸のD-およびL-型両方を、コンビナトリアルペプチドライブラリーの構築ブロックとして用いてもよい。
【0080】
多くの他のアミノ酸もまた公知であり、かつペプチドライブラリーの構築ブロックとしての使用を見出し、これらには:2-アミノアジピン酸;3-アミノアジピン酸;ベータ-アミノプロピオン酸;2-アミノ酪酸;4-アミノ酪酸(ピペリジン酸);6-アミノカプロン酸;2-アミノヘプタン酸;2-アミノイソ酪酸;3-アミノイソ酪酸;2-アミノピメリン酸;2,4-ジアミノ酪酸;デスモシン;2,2’-ジアミノピメリン酸;2,3-ジアミノプロピオン酸;N-エチルグリシン;N-エチルアスパラギン;ヒドロキシリジン;アロ-ヒドロキシリジン;3-ヒドロキシプロリン;4-ヒドロキシプロリン;イソデスモシン;アロ-イソロイシン;N-メチルグリシン(ザルコシン);N-メチルイソロイシン;N-メチルバリン;ノルバリン;ノルロイシン;およびオルニチンが含まれる。
【0081】
天然アミノ酸と比較して増加した安定性を提供するアミノ酸から、ペプチド化学構造のライブラリーを合成してもよい。例えば、ライブラリーからシステイン、メチオニンおよびトリプトファンを省き、かつ2-ナフチルアラニンおよびノルロイシンなどの非天然アミノ酸を含めてもよい。アミノ-ペプチダーゼの存在下でより高い生化学的安定性を提供するため、N-末端アミノ酸はD-異性体であってもよく、またはN-末端アミノ酸をアセチル化してもよい。ライブラリー密度は、分析物に対する十分な結合を提供するのに十分でなければならないが、化学構造ライブラリーが、分析物よりもライブラリー自体と相互作用するほど高くてはならない。固体支持体の乾燥重量のグラムあたり、0.1μmol〜500μmolの範囲のライブラリー密度が望ましく、かつより好ましくは、固体支持体のグラムあたり、10μmol〜100μmolの範囲のライブラリー密度が望ましい。他の好ましい範囲は、固体支持体mlあたり、10μmol〜100μmolである。
【0082】
標準的「メリフィールド」合成では、微粒子樹脂などの支持体物質に、カルボキシ末端によって側鎖保護アミノ酸をカップリングする。側鎖およびアミノ末端保護アミノ酸試薬を添加し、かつカルボキシ末端を、不溶化アミノ酸の曝露されたアミノ末端と反応させて、ペプチド結合を形成する。次いで、生じたペプチドのアミノ末端を脱保護し、かつ新規アミノ酸試薬を添加する。望ましいペプチドが合成されるまで、サイクルを反復する。技術の概説に関しては、Geisaw, 1991, Trends Biotechnol 9:294-95を参照されたい。
【0083】
この方法の慣用的適用において、アミノ酸試薬はできる限り純粋にされる。しかし、ペプチド混合物が望ましい場合、1つまたは複数のサイクルで使用されるアミノ酸試薬は、アミノ酸混合物であってもよく、かつこの混合物は、サイクルごとに同じであってもまたは異なってもよい。したがって、Alaが固体支持体にカップリングされ、かつGlu、Cys、HisおよびPheの混合物が添加された場合、二ペプチド、Ala-Glu、Ala-Cys、Ala-HisおよびAla-Pheが形成されるであろう。
【0084】
ペプチドライブラリーは、本質的に同じ長さのペプチドからのみなってもよいし、または異なる長さのペプチドを含んでもよい。ライブラリーのペプチドには、任意の多様な残基位で、任意の所望のアミノ酸が含まれてもよい。可能なセットには、限定されるわけではないが:(a)遺伝的にコードされるアミノ酸のすべて、(b)システイン(ジスルフィド架橋を形成する能力のため)を除く、遺伝的にコードされるアミノ酸のすべて、(c)遺伝的にコードされるアミノ酸、ならびにそのD-型のすべて;(d)すべての天然存在アミノ酸(例えばヒドロキシプロリンを含む);(e)すべての親水性アミノ酸;(f)すべての疎水性アミノ酸;(g)すべての荷電アミノ酸;(h)すべての非荷電アミノ酸;などが含まれる。ペプチドライブラリーには、分枝および/または環状ペプチドが含まれてもよい。
【0085】
いくつかのコンビナトリアルペプチドライブラリー態様において、組換えバクテリオファージ表面上にペプチドを発現させて、大きなライブラリーを生じる。「ファージ法」(Scott and Smith, Science 249:386-390, 1990; Cwirla, et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 87:6378-6382, 1990; Devlin et al., Science, 49:404-406, 1990)を用いると、非常に大きいライブラリーを構築可能である(106〜108の化学実体)。第二のアプローチは、主に化学的方法を用い、このうち、Geysen法(Geysen et al., Molecular Immunology 23:709-715, 1986; Geysen et al, J. Immunologic Method 102:259-274, 1987; およびFodor et al.(Science 251:767-773, 1991)の方法)が例である。Furka et al. (14th International Congress of Biochemistry, Volume #5, Abstract FR:013, 1988; Furka, Int. J. Peptide Protein Res. 37:487-493, 1991)、Houghton (米国特許第4,631,211号、1986年12月発行)およびRutter et al. (米国特許第5,010,175号、1991年4月23日発行) は、アゴニストまたはアンタゴニストとして試験可能なペプチドの混合物を生じる方法を記載する。
【0086】
本発明の好ましい態様において、方法は、抗体ライブラリーを含む、化学構造のライブラリーと、試料を接触させる工程を含む(例えばVaughn et al., Nature Biotechnology 1996, 14(3):309-314; PCT/US96/10287を参照されたい)。本発明の好ましい態様において、方法は、ファージ粒子上にディスプレイされる抗体ライブラリーと、試料を接触させる工程を含む。
【0087】
b)ポリヌクレオチド
核酸は、化学構造の別の好ましいバイオポリマーライブラリーである。ペプチドと同様、当業者に周知の合成または組換え技術を用いて、核酸を産生してもよい。用語「ポリヌクレオチド」、「核酸」、および「核酸分子」は、本明細書において、交換可能に用いられ、かつ一本鎖型または二本鎖らせんいずれかの、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、および/またはその類似体のポリマー型を指す。核酸分子はまた、メチル化核酸分子および核酸分子類似体などの修飾核酸分子も含んでもよい。プリンおよびピリミジンの類似体が当技術分野に公知である。当技術分野に公知であるように、核酸は、天然存在の、例えばDNAもしくはRNAであってもよいし、または合成類似体であってもよい。こうした類似体は、優れた安定性のため、化学構造として使用するために好ましい可能性もある。主鎖、糖または複素環塩基の改変を含む、天然構造における修飾は、細胞内安定性および結合親和性を増加させることが示されてきている。主鎖化学の有用な変化には、ホスホロチオエート;非架橋酸素の両方がイオウで置換されているホスホロジチオエート;ホスホロアミダイト;アルキルホスホトリエステルおよびボラノホスフェートがある。アキラルホスフェート誘導体には、3’-O’-5’-S-ホスホロチオエート、3’-S-5’-O-ホスホロチオエート、3’-CH2-5’-O-ホスホネートおよび3’-NH-5’-O-ホスホロアミデートが含まれる。ペプチド核酸は、すべてのリボース・ホスホジエステル主鎖を、ペプチド連結で置換する。
【0088】
バイオポリマーが核酸である場合、慣用的なDNAまたはRNA合成および配列決定法を使用してもよい。通常の塩基は、プリンであるアデニンおよびグアニン、ならびにピリミジンであるチミジン(RNAではウラシル)およびシトシンである。しかし、以下のもののような普通でない塩基を合成中に取り込んでも、または突然変異誘発剤で合成後に処理することによって産生してもよい:4-アセチルシチジン、5-(カルボキシヒドロキシルメチル)ウリジン、2’-O-メチルシチジン、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウリジン、ジヒドロウリジン、2’-O-メチルプソイドウリジン、ベータ,D-ガラクトシルキューオシン(queosine)、2’-O-メチルグアノシン、イノシン、N6-イソペンテニルアデノシン、1-メチルアデノシン、1-メチルプソイドウリジン、1-メチルグアノシン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアノシン、2-メチルアデノシン、2-メチルグアノシン、3-メチルシチジン、5-メチルシチジン、N6-メチルアデノシン、7-メチルグアノシン、5-メチルアミノメチルウリジン、5-メトキシアミノメチル-2-チオウリジン、ベータ,D-マンノシルキューオシン、5-メトキシカルボニルメチルウリジン、5-メトキシウリジン、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデノシン、N-((9-ベータ-D-リボフラノシル-2-メチルチオプリン-6-イル)カルバモイル)スレオニン、N-((9-ベータ-D-リボフラノシルプリン-6-イル)N-メチルカルバモイル)スレオニン、ウリジン-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウリジン-5-オキシ酢酸、ワイブトキソシン(wybutoxosine)、プソイドウリジン、キューオシン、2-チオシチジン、5-メチル-2-チオウリジン、-2-チオウリジン、4-チオウリジン、5-メチルウリジン、N-((9-ベータ-D-リボフラノシルプリン-6-イル)カルバモイル)スレオニン、2’-O-メチル-5-メチルウリジン、2’-O-メチルウリジン、ワイブトシン(wybutosine)、3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)ウリジン。
【0089】
好ましい核酸化学構造は、長さ少なくとも4、より好ましくは少なくとも6、8、10、15、または20ヌクレオチドである。核酸化学構造には、タンパク質または代謝産物などの特定の分子標的に結合する、二本鎖DNAまたは一本鎖RNA分子(例えばアプタマー)が含まれる。
【0090】
c)オリゴ糖
バイオポリマーはオリゴ糖であってもよい。したがって、オリゴ糖化学構造もまた、本発明の方法およびキットでの使用に意図される。オリゴ糖化学構造は、好ましくは、長さ少なくとも5単糖単位、より好ましくは、長さ少なくとも8、10、15、20、25またはそれより多い単糖単位である。
【0091】
ポリマー性炭水化物ライブラリー中の単糖は、アルドース、ケトース、または誘導体であってもよい。これらは、テトロース、ペントース、ヘキソースまたはより複雑な糖であってもよい。これらは、D-またはL-型であってもよい。適切なD-糖には、D-グリセルアルデヒド、D-エリスロース、D-トレオース、D-アラビノース、D-リボース、D-リキソース、D-キシロース、D-グルコース、D-マンノース、D-アルトロース、D-アロース、D-タロース、D-ガラクトース、D-イドース、D-グロース、D-ラムノース、およびD-フコースが含まれる。適切なL-糖には、前述のD-糖のL-型が含まれる。
【0092】
d)脂質
バイオポリマーは脂質であってもよい。本明細書において、用語「脂質」は、疎水性または両親媒性部分を指す。したがって、脂質化学構造もまた、本発明の方法およびキットでの使用に意図される。適切な脂質には、窒素、イオウ、酸素、およびリンからなる群より選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含んでもよい、C14〜C50の脂肪族、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、またはアリールアルキニル部分が含まれる。他の適切な脂質には、ホスホグリセリド、グリコシルグリセリド、スフィンゴ脂質、ステロール、ホスファチジルエタノールアミンまたはホスファチジルプロパノールアミンが含まれる。脂質化学構造は、好ましくは、長さ少なくとも5単位であり、より好ましくは、長さ少なくとも8、10、15、20、25またはそれより多い単位である。
【0093】
III.固体支持体への化学構造の付着
A.「スプリット-カップル-リコンバイン」法を用いた、常磁性特性を持つ粒子上での化学構造の組み立て
「スプリット-カップル-リコンバイン」は、固体支持体を複数のアリコットにスプリットする工程;モノマーなどの部分を、支持体または先のラウンドで固体支持体に付着させた化学構造にカップリングする工程;および混合を可能にするため固体支持体をプールする工程の、多数のラウンドが関与する、コンビナトリアル合成の周知の方法である。以下は、より詳細な方法の説明である。
【0094】
適切なリンカーを伴う、10ミクロン未満の直径の磁気ビーズのある量を、等しい量を含有する多数の群にスプリットする。群の数は、ライブラリーの調製に用いようとする構築ブロックの数と同じである。例えば、標準的なアデノシン、チミジン、シトシンおよびグアニジン・ヌクレオチドを用いて、オリゴヌクレオチドライブラリーを作製しようとする場合、ビーズの群は、モノヌクレオチドの数と同様、4であろう。構築ブロックは、「a」、「b」、「c」および「d」と名付けられる。最初の群のビーズ上には、構築ブロック「a」が付着するであろう。構築ブロック「b」、「c」および「d」が、それぞれ、第二、第三および第四のビーズ群上に付着するであろう。穏やかな攪拌下、懸濁中で4つの別個の操作を行ったら、副産物および合成に用いた溶媒を洗い流す。
【0095】
10ミクロン未満の直径を有する粒子は小さすぎ、かつフィルターを詰まらせてしまうであろうため、この操作は、ろ過によっては実行不能である。本発明は、常磁性特性を有する粒子を提供し、かつ次いで、磁力を用いて、スプリット-カップル-リコンバイン・プロセス中にこれらの粒子を操作することによって、この問題を解決する。これらを分離する1つの様式は、外部に配置した永久磁石によって、常磁性特性を持つ粒子を合成容器内に保持し、かつ容器の単純な回転によって溶媒を除去して、液体を排出することである。あるいは、また、すべての常磁性物質がくっつくであろう活性化された電磁石を、懸濁物内部に導入することによって、常磁性特性を持つ粒子を液体溶媒から除去してもよい。徹底的に洗浄し、かつ最終洗浄溶液から除去したならば、ビーズを一緒に混合する。共通の容器内部の電磁石によって、捕捉された常磁性粒子を遊離させることによって、この操作を行う。電磁石を単純に非活性化することによって、ビーズが遊離されるであろう。一度、古典的なスターラーで一斉にビーズを徹底的に混合し、かつ次いで再び、4つの等しい群にスプリットする。第一の群上には、構築ブロック「a」が付着し、一方、構築ブロック「b」、「c」、および「d」は、それぞれ、常磁性特性を持つ粒子の第二、第三および第四の群と反応する。上記と類似の操作が続く:再度、再スプリットする前の洗浄、回収および混合。反復数は、リガンドライブラリーの望ましい長さに応じる。典型的には、アミノ酸の場合、最も一般的な、用いる構築ブロックの数は、6(6ペプチド)であり、一方、オリゴヌクレオチドの場合、15〜30まで多様であり得る。
【0096】
固体支持体に、先に調製した化学構造のライブラリーを付着させることによって、化学構造の完全に調製されたライブラリーを誘導体化してもよい。あるいは、固体支持体に前駆体分子を付着させ、かつ続いて、第一の前駆体分子によって固体支持体に結合した成長しつつある鎖に、さらなる前駆体分子を付加することによって、化学構造のライブラリーを固体支持体上に形成してもよい。固体支持体上に吸着剤を構築するこの機構は、化学構造がポリマー、特にポリペプチド、ポリヌクレオチドまたは多糖分子などのバイオポリマーである場合、特に有用である。当技術分野に公知の方法を用いて、連続的にモノマー構成要素(例えばアミノ酸、ヌクレオチドまたは単純な糖)を、固体支持体に付着した第一のモノマー構成要素に付加することによって、バイオポリマー化学構造を提供してもよい。例えば、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第5,445,934号(Fodor et al.)を参照されたい。
【0097】
ライブラリーの「多様性」は、ライブラリーにおけるユニークな化学構造式の期待される数である。
【0098】
ライブラリーの「サイズ」は、ライブラリー中の化学構造分子の概算数である。このサイズは、構築ブロックの最初の数および最終的なコンビナトリアルリガンドの長さに応じる。スプリット-カップル-リコンバイン合成を使用するすべての場合で、ライブラリーを調製するのに必要なビーズの数は、ダイバーソマー(diversomer)の最終の数を超える必要がある。例えば、15の構築ブロックを用いてライブラリーを作製し、かつ最終リガンドが九量体である場合、最終的なライブラリーは、159の構造で構成されるであろう(これは、約4×1010の構造またはダイバーソマーに相当する)。この場合、常磁性特性を持つ粒子が、6μmの直径を有するならば(常磁性特性を持つ、充填された粒子の各μLは、4.6×106ビーズに相当する)、用いようとするビーズの最低体積は、常磁性特性を持つ粒子10mLより多くなければならない。2.8μm直径の常磁性特性を持つ粒子上に付着した、20の異なるアミノ酸を用いて作製した6ペプチドの場合、常磁性特性を持つ粒子の体積は、1.5μLを超えなければならない。特定の態様において、ライブラリー中のビーズの数は、少なくとも2つの異なるビーズ、少なくとも4つの異なるビーズまたは少なくとも8つの異なるビーズの各々が、同じユニークな化学構造を含むのに十分であろう。例えば、約2億5000万ビーズのビーズライブラリーには、6400万メンバーのライブラリーの同じ化学構造を各々含む、4つのビーズが含まれ得る。
【0099】
わずか1、および10、100、1,000、10,000、1,000,000、3,000,000、10,000,000、1,000,000,000ほどの、またはそれより多い化学構造を、単一の固体支持体にカップリングしてもよい。好ましい態様において、固体支持体は、各ビーズに結合した、単一の、異なる化学構造種を伴う、ビーズの形である。例えば、ペプチド化学構造ライブラリーにおいて、アミノ酸の1つの可能な順列に相当するペプチドが1つのビーズに結合し、別の可能な順列に相当するペプチドが別のビーズに結合するなどである。
【0100】
可逆的または非可逆的反応を用いて、化学構造を固体支持体にカップリングしてもよい。例えば、任意でスペーサー基を通じて、化学構造に化学的に結合する、ヒドロキシル、カルボキシル、スルフィドリル、またはアミノ基などの、少なくとも1つの反応性官能基が含まれる支持体を用いて、非可逆的反応を行ってもよい。適切な官能基には、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、スルホニルエステル、ヨードアセチル基、アルデヒド、エポキシ、カルバミン酸イミダゾリル、ならびに臭化シアンおよび他のハロゲンで活性化された支持体が含まれる。多様な公知の技術によって、支持体にこうした官能基を提供してもよい。例えば、公知の方式で、アミノプロピルトリエトキシシランでガラス表面を誘導体化してもよい。いくつかの態様において、当業者に公知であるように、合成中に、固体支持体に化学構造をカップリングする(例えば固相ペプチドおよび核酸合成)。
【0101】
あるいは、固体支持体および/または化学構造と会合するリンカー部分を用いて、固体支持体および化学構造の間の可逆的相互作用を作製してもよい。本発明で使用するのに適した多様なリンカー部分が公知であり、このうちいくつかを本明細書に論じる。多様な剤をカップリングするためのリンカー部分の使用が、一般の当業者に周知であり、この一般的な知識を適用して、日常的な実験を超えない実験を用いて、本発明で使用するのに適した固体支持体/化学構造カップリングを形成してもよい。
【0102】
別の態様において、異なる化学構造各々を、異なる固体支持体にカップリングしてもよい。これは、例えば、スプリット-カップル-リコンバイン法を用いて、コンビナトリアルライブラリーをビーズ上に構築した場合に当てはまる。あるいは、化学構造コレクションをビーズのプールにカップリングして、各ビーズが、付着した多数の異なる化学構造を有するようにしてもよい。第一のセットの支持体上でコンビナトリアルライブラリーを生成し、支持体から化学構造を切断し、かつ第二のコレクションの支持体にこれらを再カップリングすることによって、これを行ってもよい。
【0103】
好ましい局面において、本発明は:(a)複数の異なる化学部分を提供する工程;(b) 活性化された基を有する粒子のコレクションを用いて、スプリット-プール-リコンバイン化学合成の第一のラウンドを行って、第一のラウンドのスプリット-プール-リコンバイン化学合成が、複数の異なる化学部分の第一の化学部分を、粒子コレクション上の活性化された基に付加する工程;(c)常磁性特性を持つ粒子のコレクションを、磁気的に操作する工程;および(d) 第二のラウンドのスプリット-プール-リコンバイン化学合成を行って、第二のラウンドのスプリット-プール-リコンバイン化学合成が、複数の異なる化学部分の第二の化学部分を、粒子コレクション上の活性化された基に付着した第一の化学部分に付加する工程を含み;スプリット-プール-リコンバイン化学合成のラウンドの数が、少なくとも100,000のユニークな化学構造の多様性を有するライブラリーを組み立てるのに十分である、常磁性特性を持ちかつ約100 nmと約10ミクロンの間の直径を有する粒子のコレクションに結合した、多様な化学構造のコンビナトリアルライブラリーを作製するための方法を提供する。
【0104】
B.化学構造の多様性の大部分が、常磁性特性を持つ各個々の粒子に結合している、常磁性特性を持つ粒子
本発明の別の態様において、合成後、ライブラリーの化学構造を粒子に付着させる。この方法では、特定の粒子各々が、付着した複数の異なる化学構造を有し、かつ単一の粒子は、付着したコンビナトリアルライブラリーのメンバーの大部分または実質的にすべてを有し得る。1つの作製法において、ポリマー部分上に反応基を有する、常磁性特性を持つ粒子2マイクロリットルを、pH9.5の炭酸緩衝液で、繰り返し洗浄する。永久磁石によって生じる磁場によって、粒子から液相を分離する。洗浄工程を行ったら、粒子を可溶性6ペプチドライブラリー1500マイクログラムと接触させる。懸濁物を室温で一晩振盪して、主に利用可能なアミノ基を介して、ベッド上で、ペプチドの化学的カップリングを促進する。リジンまたはエタノールアミンを添加して、粒子上の過剰な反応基を破壊する。
【0105】
IV.試料中の相対的分析物濃度の減少
A.相互作用力
理論によって限定されることは望ましくないが、固相に結合した化学構造のライブラリー上に分析物が捕捉される方式には、多様な相互作用が影響を及ぼすと考えられる。タンパク質は、各ビーズ上に付着したリガンドの構造に応じて、磁気ビーズリガンドライブラリーに捕捉される。本質的に、各リガンドは、複雑なコンホメーションを保持する構造で構成され、かつ異なるリガンドのコレクションは非常に多様である。例えば、ライブラリーが6ペプチドで構成される場合、構築ブロック(アミノ酸)は、芳香族環、複素環、陽性および陰性電荷、疎水性部分を含む。
【0106】
タンパク質およびそのリガンドパートナー間に確立される相互作用の種類は、巨大分子のコンホメーションを安定させる力と似ている。これらは、一般的に、共有結合のものより1桁小さい。これらの弱い相互作用には、コンホメーションのエネルギーを最小限にするように、誘引するかまたは反発する原子または原子団が関与する。これらは:イオン-イオン、水素結合、双極子-双極子、分散および疎水性相互作用にグループ分け可能である。永久双極子-永久双極子;永久双極子-誘起双極子および誘起双極子-誘起双極子相互作用が、ファンデルワールス相互作用の名称の下に集合的に列挙される。存在する弱い誘起双極子-誘起双極子相互作用は、誘引性ロンドン分散力と呼ばれるものである。
【0107】
これらの引力は、パートナー間の距離に依存し、エネルギーは、タンパク質エピトープの原子配置をコンビナトリアルリガンドの原子コンホメーションから分離する距離にまたは距離の何乗かに、反比例する。反比例の距離依存性の指数が増加するにつれて、相互作用は、非常に迅速にゼロに近づく。この種の引力に直接対抗するのが立体反発であり、これは2つの原子が同時に同じ空間を占めることを可能にしない。同時に、誘引性分散および反発性排除相互作用は、エネルギー相互作用が最小限である、2つの原子を分離する最適な距離を定義する。
【0108】
長距離相互作用に関連するエネルギー(例えば電荷-電荷、電荷-双極子)は、環境媒体に依存する。例えば、2つの荷電原子間の相互作用は、極性媒体中ではシールドされ、かつしたがって弱まる。長距離相互作用のエネルギーの発現は、すべて媒体の誘電定数に逆相関し、かつしたがって、水などの非常に分極可能な媒体中では弱まる。媒体の組成はさらに、他の重要な弱い相互作用、例えば水素結合および疎水性相互作用にも影響を及ぼす。このため、タンパク質を六量体リガンドライブラリーで捕捉する際、pHおよびイオンの天然生理学的条件下でプロセスを行う。タンパク質およびリガンド(例えばペプチド)両方の上の原子の位置決めによって生じる、強い相互作用力の中には、水素結合および疎水性会合がある。
【0109】
六量体リガンドと天然タンパク質の相互作用に有利に働き得る非常に多様な水素結合がある:=NHおよびα-らせんのペプチド結合に沿ったカルボニルの酸素の間;=NHおよび-OH基の間;=NHおよびイミダゾール環の間;=NHおよびカルボキシルの酸素の間、ならびに最後に2つの-OH基(Ser、ThrおよびTyrのものなど)の間の相互作用。
【0110】
互いに近い水反発構造が同時に存在することによって、疎水性会合が生じる。いくつかのアミノ酸がこうした構造を含む:イソロイシン、バリンおよびロイシンが主な例である。比較的疎水性のアミノ酸の中で、ヒドロパシー指数によってもまた分類されるものは、トリプトファン、チロシンおよびフェニルアラニンであり、これはおそらく芳香族環のためである。
【0111】
B.適切な試験試料
本発明の試験試料は、本明細書に記載するように、試験試料に存在する分析物が、本発明の結合性部分と接触することを可能にする、任意の形であってもよい。適切な試験試料には、ガス、粉末、液体、懸濁物、エマルジョン、浸透性のまたは微粉砕された固体等が含まれる。好ましい試験溶液は液体である。試験試料を供給源から直接採取して、かついかなる予備操作もなしに、本発明の方法で用いることも可能である。例えば、帯水層から直接、水試料を採取し、かつ本明細書記載の方法を用いて直接処理してもよい。
【0112】
あるいは、多様な方法で元来の試料を調製して、試験のための適切性を増進させてもよい。こうした試料調製には、特定の分析物の枯渇、濃縮、粉砕、抽出、浸出(percolating)等が含まれる。例えば、固体試料を微粉砕して粉末にし、かつ次いで水性または有機溶媒を用いて抽出してもよい。次いで、粉末からの抽出物を本発明の方法に供してもよい。溶液を通じてガス状試料を泡立てるかまたは浸出させて、液体を本発明の方法に供する前に、液体中にガスの構成要素を溶解し、かつ/または液体中でガスの構成要素を濃縮してもよい。
【0113】
試験試料は、好ましくは、少なくとも1000、100,000、1,000,000、10,000,000またはそれより多い関心対象の分析物を含有する。いくつかの状況では、本発明の方法を用いた操作に適した試験試料には、関心対象の分析物が数百または数千、含まれ得る。好ましくは、試験試料中に存在する分析物の濃度は、少なくとも1桁、より好ましくは少なくとも2、3、4またはそれより多い桁に渡る。本発明の方法に供すると、少なくとも1つの検出法によって検出可能な分析物のこの濃度範囲は、少なくとも2の係数、より好ましくは10、20、50、100、1000またはそれより多い係数で減少するであろう。
【0114】
例えば、血清は、最も豊富なもののmg/mlから最も稀なもののpg/mlの濃度範囲で存在する分析物を含有することが知られる。これは、少なくとも109の桁の濃度範囲である。しかし、本発明の方法を用いて濃度範囲を減少させた後、濃度範囲は、少なくとも1〜4またはそれより多い桁、減少し得る。
【0115】
任意の適切な方法を用いて、試験試料を収集してもよい。例えば、ディッピング、摘み取り、すくい取り、吸い取り、または捕捉によって、環境試料を収集してもよい。スワブ、掻爬、外科的な、または皮下注射針を用いた抜き取り(withdrawing)等によって、生物学的試料を収集してもよい。各場合の収集法は、試料供給源および状況に非常に依存し、当業者に周知の、適切な多くの代替収集法がある。
【0116】
空気、水、泥、抽出物等の環境試料を含めて、関心対象の分析物を潜在的に含む任意の供給源から、試験試料を採取してもよい。本発明の好ましい試験試料は、生物学的試料、好ましくは生物学的液体である。本発明で操作可能な生物学的試料には、羊膜液、血液、脳脊髄液、関節内液、眼内液、リンパ液、ミルク、汗、血漿、唾液、精液、精漿、血清、痰、滑液、涙、臍帯液、尿、生検ホモジネート、細胞培養液、細胞抽出物、細胞ホモジネート、馴化培地、発酵ブロス、組織ホモジネートおよびこれらの派生物が含まれる。生物学的試料中の関心対象の分析物には、タンパク質、脂質、核酸および多糖が含まれる。より具体的には、関心対象の分析物は、動物に通常存在するか、または癌、ウイルス感染、寄生虫感染、細菌感染等の疾患もしくは感染状態に関連する細胞代謝産物である。特に興味深い分析物は、細胞性ストレスのマーカーであるものである。動物がストレス下にあることを示す分析物は、特定の精神疾病、心筋梗塞および感染を含む、多数の疾患状態の初期指標である。
【0117】
関心対象の分析物には、動物に対して異質(foreign)であるが、動物組織に見られるものが含まれる。これに関連して特に興味深い分析物には、その多くが、異なる光学異性体として存在する、抗生物質を含む療法薬剤、および生物が感染することによって産生されるか、または環境から動物中に捕捉される毒素が含まれる。試料は、例えば、卵白または大腸菌(E. coli)抽出物であってもよい。
【0118】
C.化学構造のライブラリーを用いた、試験試料からの分析物の捕捉
各結合性部分が、対応する分析物とカップリングするのを可能にする条件下で、結合性部分と試験試料を接触させることによって、試験試料に存在する分析物を捕捉する。上記に引用するように、試験試料と結合性部分を直接接触させるか、またはまず、ディップスティック、SELDIプローブ、または不溶性ポリマービーズ、膜または粉末などの固体支持体に結合性部分を付着させてもよい。
【0119】
また、粒子を操作するため、粒子の常磁性特性を用いて、これらの方法を行ってもよい。すなわち、粒子と試料を混合し、かつインキュベーションした後、磁力を適用して粒子を誘引し、かつこれらを液体から分離することによって、分析物が付着した粒子を液体から分離してもよい。例えばピペットによって、液体を除去してもよい。次いで、洗浄、粒子との混合のために新規液体を添加してもよく、かつ再び磁力を適用することによって、洗浄から粒子を分離してもよい。
【0120】
結合性部分がビーズライブラリーの一部である場合、血清などの複雑な試料に関する試料体積に対する常磁性ビーズ体積の比は、例えば1:150と1:1の間であり得る。試料に対するビーズの比が小さければ小さいほど、存在量が低いかまたは稀な分析物種の相対濃度を増加させる能力が高くなる。ビーズ:試料体積の好ましい定常比は約1:10である。
【0121】
試験試料と結合性部分との接触は、2つを混合する工程、試験試料を結合性部分に塗布する工程、結合性部分が付着した固体支持体上に試験試料を流す工程、および一般の当業者に明らかであろう他の方法によって達成可能である。結合性部分および分析物を、結合性部分が試料との結合平衡に到達するのを可能にするのに十分な時間、接触させ続ける。典型的な実験条件下で、これは少なくとも10分間である。
【0122】
D.非結合分析物の除去
本発明の特徴は、本明細書記載の方法にしたがった分析物の処理が、分析物濃度間の相違を減少させるのに加えて、好ましくは結合した分析物を濃縮し、かつ部分的に精製することである。この特徴の最大限の実行には、固体支持体上の結合性部分に結合した分析物からいかなる非結合分析物も任意で洗浄することが含まれる。
【0123】
好ましくは結合性部分に結合した分析物を穏やかな洗浄溶液と接触させることによって、非結合分析物の洗浄を行う。穏やかな洗浄溶液は、元来、分析物を含有する試験試料に頻繁に見られる混入物質および非結合分析物を除去するよう設計される。典型的には、洗浄溶液は、生理学的pHおよびイオン強度であり、かつ洗浄は、温度および圧力の周囲条件下で行われるであろう。
【0124】
過度の実験を伴わずに、当業者によって、本発明での使用に適した洗浄溶液の配合を行ってもよい。低ストリンジェンシー洗浄法を含めて、混入物質を除去するための方法が、例えばV. Thulasiraman et al., Electrophoresis, 26, (2005), 3561-3571; Scopes, Protein Purification: Principles and Practice (1982); Ausubel, et al. (1987および定期的な補遺); Current Protocols in Molecular Biology; Deutscher (1990) "Guide to Protein Purification" in Methods in Enzymology vol. 182、およびこのシリーズの他の巻に公表される。
【0125】
E.捕捉された分析物の、結合性部分からの単離
よく定義されたタンパク質-リガンド相互作用の存在は、特に、これらが単一構造内で会合している場合、磁気ビーズ捕捉プロセスにおいて、重要な役割を果たす。これらの力の分析および知識によって、血清などの非常に複雑な混合物からの、捕捉されたタンパク質の回収に使用され得る溶出剤を区別することが可能である。
【0126】
相互作用力の重要性を考慮して、溶出剤を考案することが可能である。この方式で、タンパク質を全て一緒に脱着するか、または相互作用の主な種類にしたがって、連続的に脱着するかのいずれかが可能である。イオン-イオン支配的相互作用(ペプチドリガンドが、主にまたは完全に、アスパラギン酸またはグルタミン酸などの酸性アミノ酸で構成される場合、これに当てはまる)の場合、イオン交換クロマトグラフィーで通例、行われるように、1M塩化ナトリウムなどの塩溶液によって、タンパク質を溶出させてもよい。このプロセスは、一般的に、天然型のタンパク質の回収を可能にし、したがってさらなる監視を可能にするはずである。また、適切な電場によってイオン結合を破壊することにより、塩の存在と類似の効果を得てもよく、これもまたタンパク質完全性を維持するプロセスである。
【0127】
タンパク質および常磁性特性を持つ粒子のリガンドの間の穏やかな疎水性相互作用を破壊するため、50%エチレングリコールを用いてもよい(アフィニティークロマトグラフィーの際と同様)。しかし、強い疎水性会合(大部分、ロイシン、イソロイシンまたはバリンで構成される6ペプチド)では、水中のイソプロパノール、アセトニトリルおよび類似の溶媒を含む、水-有機混合物が好ましい。別の種類のタンパク質溶出は、pH 2.5の200mMグリシン-HClであり;この溶離剤は、典型的には、おそらく、免疫アフィニティーカラムにおける抗原および抗体の間で生じるもののような、コンホメーション構造に関連する強固な相互作用を破壊するために採用される。これらの相互作用は、同時に存在する多くの相乗力の結果である。この場合、非常に低いpHは、タンパク質エピトープを有意に変形させるのに寄与し、したがって、そのときの相対的に高いイオン強度によって弱まった相互作用が減少する。
【0128】
水中の2Mチオ尿素、7M尿素、4% CHAPSの混合物は、ペプチドライブラリー上に吸着されたタンパク質の優れた溶離剤であるようである。これは、混合様式の溶離剤であり、水素結合ならびに疎水性会合を同時に破壊することが可能であり、したがって大量のタンパク質集団を遊離させる。ほぼ定量的なタンパク質脱着効率で、酸性またはアルカリ性pHの尿素の濃縮水性溶液もまた用いられる。最後に、タンパク質を一斉に溶出するため、6MグアニジンHCl(GuHCl)、pH 6を用いてもよい。この溶液は、カオトロピック効果が強く、かつイオン強度が高いため、一般的な溶離剤と見なされ、すべての結合を破壊することが可能であり、かつすべてのタンパク質を還元してランダムなポリマーコイルにする。すべてのタンパク質を一度に脱着しなければならない場合、GuHClを単一の溶出工程として用いてもよいし、または連続溶出カスケードの最後に、最終工程として用いてもよい(例えば、Scopes, Protein Purification: Principles and Practice (1982);ならびにDeutscher (1990) "Guide to Protein Purification" in Methods in Enzymology vol. 182、およびこのシリーズの他の巻を参照されたい)。
【0129】
常磁性特性を持つ粒子から、群別にタンパク質を脱着する典型的な順序は、まず、塩化ナトリウムの添加によってイオン強度の増加を使用することである。第二の溶離剤として、100〜300mMグリシン-HCl、pH 2.2〜2.6の酸性溶液、その後、イソプロパノール-アセトニトリル-水の、水-有機混合物が続く。最後にいくつかのさらなるタンパク質がなおビーズ上に吸着している場合は、pH 3.3の9M尿素の使用が推奨される。
【0130】
適切な溶出緩衝液の例には、pH緩衝溶液などの、分析物および/または結合性部分の表面電荷を修飾するものが含まれる。酸性度の修飾を通じて、表面電荷を破壊するのに用いるpH緩衝溶液は、好ましくは、酸性範囲、すなわち7未満のpH、好ましくは6.8、6.5、6.0、5.5、5.0、4.0もしくは3.0未満のpHに;または7より高いpH、好ましくは7.5、8.0、8.3、8.5、9.0、9.3、10.0もしくは11.0より高いpHの塩基性範囲に、溶液のpHを維持するのに十分に強い緩衝液である。特定の態様において、溶出緩衝液は、pH 3の9M尿素、pH 11の9M尿素または6.66% MeCN/13.33% IPA/79.2% H2O/0.8% TFAの混合物を含んでもよい。別の方法に対して1つの方法を選択するかどうかは、均一化された試料に関して用いる分析法に応じる。
【0131】
あるいは、分析物および/または結合性部分の電荷特性をマスクするのに十分なイオン強度を有する高い塩濃度の溶液を用いてもよい。これに関連して、多価イオンを有する塩、例えばアルカリ土類または遷移金属対イオンを伴う硫酸塩およびリン酸塩が特に好ましいが、生じる溶液のイオン強度が、少なくとも0.1、好ましくは0.25、0.3、0.35、0.4、0.5、0.75、1.0mol l-1またはそれより高いという条件で、1つまたは複数の一価に解離する塩もまた、本発明で使用するのに適している。例えば、多くのタンパク質分析物/結合性部分相互作用は、その環境のイオン強度の改変に感受性である。したがって、結合した分析物を、塩溶液、好ましくは塩化ナトリウムなどの無機塩溶液と接触させることによって、分析物を結合性部分から単離してもよい。これは、分析物が結合した固体支持体を、溶出緩衝液中に水浴させるか、浸すか、もしくはディップすることを含む多様な方法を用いて、または固体支持体上を、溶出緩衝液でリンスするか、スプレーするか、もしくは洗浄することによって、達成可能である。こうした処理は、固体支持体にカップリングした結合性部分から分析物を遊離させるであろう。次いで、溶出緩衝液から分析物を回収してもよい。
【0132】
グアニジンおよび尿素などのカオトロピック剤は、結合性部分および結合した分析物の周りの水膜構造を破壊し、分析物および結合性部分間の複合体の解離を引き起こす。本発明の溶出緩衝液としての使用に適したカオトロピック塩溶液は、適用特異的であり、かつ日常的な実験を通じて、当業者によって配合可能である。例えば、適切なカオトロピック溶出緩衝液は、0.1〜9Mの濃度範囲の尿素またはグアニジンを含有してもよい。
【0133】
界面活性剤に基づく溶出緩衝液は、表面張力および分子複合体構造に関して、アフィニティー分子の選択性を修飾する。溶出緩衝液として使用するのに適した界面活性剤には、イオン性および非イオン性界面活性剤両方が含まれる。非イオン性界面活性剤は、溶液の誘電率を修飾することによって、分子間の疎水性相互作用を破壊し、一方、イオン性界面活性剤は、一般的に、均一な電荷を与える方式で、受容性分子をコーティングして、コーティングされた分子が同様にコーティングされた分子と反発するようにする。例えば、イオン性界面活性剤、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)は、均一な陰性電荷を与える方式で、タンパク質をコーティングする。非イオン性界面活性剤の例には、Triton X-100、TWEEN、NP-40およびオクチル-グリコシドが含まれる。両性イオン界面活性剤の例には、CHAPSが含まれる。
【0134】
溶液の誘電率の修飾を通じて、疎水性相互作用を破壊する、別の種類の界面活性剤様化合物には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ならびにエタノール、プロパノール、アセトニトリル、およびグリセロールなどの有機溶媒が含まれる。
【0135】
本発明の1つの緩衝液には、質量分析計で用いるのに適したマトリックス物質が含まれる。マトリックス物質は、溶出緩衝液中に含まれていてもよい。本発明のいくつかの態様は、任意で、結合性部分から、直接、質量分析計プローブ、例えばタンパク質またはバイオチップに、分析物を溶出させる工程が含まれ得る。本発明の他の態様において、結合性部分からの溶出後、マトリックスを分析物と混合してもよい。さらに他の態様には、タンパク質チップ上にあらかじめ配置されたエネルギー吸収マトリックスを含むSENDまたはSEAC/SENDタンパク質チップに、分析物を直接、溶出させる工程が含まれる。これらの後者の態様において、溶出緩衝液中に、さらなるマトリックス物質が存在する必要はない。
【0136】
本発明に適した他の溶出緩衝液には、上述の緩衝液構成要素の組み合わせが含まれる。2以上の前述の溶出緩衝液構成要素から配合される溶出緩衝液は、多数の溶出特性に基づいて、複合体のサブユニット間の分子相互作用の選択性を修飾することが可能である。
【0137】
一つの態様において、連続勾配または段階的勾配で、溶出緩衝液を用いて、捕捉された分析物を溶出する。例えば、軽く吸着された分析物のみを溶出させる第一の溶出緩衝液を用いてもよい。より強く結合した分析物を溶出させる次の緩衝液を用いてもよく、以下、同様である。この方式で、分析物のサブセットを異なるアリコット中に溶出してもよい。
【0138】
本発明を用いて単離される分析物は、分析物の濃度範囲、または分析物の濃度範囲未満の分析物間の濃度相違、または試験試料に元来存在する濃度相違を有するであろう。例えば、本発明の方法を用いた操作後、単離された分析物は、本明細書記載の任意の方法に試験試料を供する前に試験試料に存在した、同じ分析物間の濃度相違から、少なくとも2の係数、より好ましくは10、20、25、50、100、1000もしくはそれより多い係数で減少した、分析物の濃度範囲、または他の単離分析物からの濃度相違を有するであろう。好ましくは、溶出緩衝液中の単離分析物の濃度が最大になることを確実にするため、最小量の溶出緩衝液で、本発明の方法を行う。より好ましくは、少なくとも1つの単離分析物の濃度は、試験試料中に先にあったよりも、溶出緩衝液中でより高いであろう。
【0139】
捕捉された分析物を単離した後、分子量、等電点または化学的もしくは生化学的リガンドに対する親和性などの、いくつかの化学的または物理的特性に基づいて、濃縮または分画によって、分析物をさらにプロセシングしてもよい。核酸、タンパク質、脂質および多糖の分画法が当技術分野に周知であり、かつ例えば、Scopes, Protein Purification: Principles and Practice (1982); Sambrook et al., Molecular Cloning-A Laboratory Manual (2nd ed.) Vol. 1-3, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Press, N. Y., (Sambrook) (1989); およびCurrent Protocols in Molecular Biology, F. M. Ausubel et al., eds., Current Protocols, a joint venture between Greene Publishing Associates, Inc. and John Wiley & Sons, Inc., (1994 Supplement) (Ausubel)に論じられる。
【0140】
F.単離分析物の検出
分析物を溶出し、かつ結合性部分を含まないように単離した後、一般の当業者に利用可能な任意の技術を用いて、分析物を検出し、定量化し、または別の方式で性質決定してもよい。本発明の分析技術を複雑な試験試料に適用することの特徴は、元来の試験試料に見られる分析物濃度の広い範囲と比較して、単離分析物では分析物濃度における相違が劇的に減少することである。分析物濃度範囲におけるこの減少は、検出装置を再較正することなく、元来の試験試料自体を用いた分析物検出に利用可能であろうよりも、はるかにより高い割合で、元来の試験試料に見られる分析物が検出され、かつ特徴付けられることを可能にする。達成される分析物濃度の実際の減少は、元来の試験試料の性質、ならびに用いた結合性部分の性質および多様性を含めた、多様な要因に依存する。一般的に、本明細書記載の技術を用いた、分析物濃度相違の減少は、装置再較正を伴わずに、少なくとも25%、より好ましくは少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、75%または80%の単離分析物を検出可能にするのに十分である。理想的には、本発明は、単離分析物の少なくとも90%、95%、98%またはそれより多くが、装置再較正を伴わずに、検出されることを可能にする。
【0141】
一般の当業者に公知の任意の適切な方法を用いて、本明細書記載の技術を用いて単離された分析物の検出を達成してもよい。例えば、色素を用いた比色アッセイが広く利用可能である。あるいは、検出を分光的に達成してもよい。分光検出装置は、屈折率の変化;紫外および/または可視光吸収、または適切な波長で励起した後の蛍光に頼って、反応構成要素を検出する。例示的な検出法には、蛍光光度法、吸光度、反射率、および透過率分光法が含まれる。検出の他の例は、抗体の使用に基づく(例えばELISAおよびウェスタンブロッティング)。複屈折率、屈折率、または回折の変化もまた、複合体形成または反応進行を監視するのに使用可能である。分子相互作用を検出するのに特に有用な技術には、表面プラスモン共鳴、偏光解析法、共振ミラー技術、格子結合導波管技術、および多極共鳴分光法が含まれる。これらの技術および他の技術が周知であり、かつ過度の実験を伴わずに、当業者によって本発明に容易に適用可能である。これらの方法および他の方法の多くが、例えば、"Spectrochemical Analysis" Ingle, J.D. and Crouch, S.R., Prentice Hall Publ.(1988)および"Analytical Chemistry" Vol. 72, No. 17に見出され得る。
【0142】
好ましい検出法は、質量分析による。質量分析技術には、限定されるわけではないが、マトリックス支援レーザー脱離 (MALDI)、連続またはパルス化エレクトロスプレー(ESI)および関連法(例えばIONSPRAYまたはTHERMOSPRAY)、またはマッシブクラスター衝撃 (MCI)などのイオン化(I)技術が含まれ;これらのイオン供給源を、線形または非線形反射時間飛行(TOF)、単または多四極子、単または多磁気セクター、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(FTICR)、イオン捕捉、およびその組み合わせ (例えば、イオン捕捉/時間飛行)を含む検出形式とマッチさせてもよい。イオン化のため、多くのマトリックス/波長の組み合わせ(MALDI)、または溶媒の組み合わせ(ESI)を使用してもよい。例えば、ESI (Valaskovic, G. A. et al., (1996) Science 273:1199-1202)またはMALDI (Li, L. et al., (1996) J. Am. Chem. Soc. 118:1662-1663)質量分析を用いて、アトモル未満のレベルの分析物が検出されてきている。ES質量分析は、Fennら(J. Phys. Chem. 88, 4451-59 (1984); PCT出願第WO 90/14148号)によって導入されており、かつ現在の適用は、最近の概説論文に要約されている(R. D. Smith et al., Anal. Chem. 62, 882-89 (1990)およびB. Ardrey, Electrospray Mass Spectrometry, Spectroscopy Europe, 4, 10-18 (1992))。MALDI-TOF質量分析は、Hillenkampら("Matrix Assisted UV-Laser Desorption/Ionization: A New Approach to Mass Spectrometry of Large Biomolecules," Biological Mass Spectrometry (Burlingame and McCloskey, editors), Elsevier Science Publishers, Amsterdam, pp. 49-60, 1990)によって導入されてきている。ESIでは、フェントモル量の試料における分子量の決定は、質量計算に使用可能である多数のイオンピークが存在するため、非常に正確である。本発明の好ましい分析法は、例えば米国特許第6,020,208号に論じられるような、表面増強レーザー脱離/イオン化(SELDI)を利用する。質量分析は、質量分析計プローブもしくはバイオチップ上への分析物の直接の溶出が起こる場合、または溶出緩衝液がマトリックス物質を含有するか、もしくは結合性部分からの分析物の溶出後にマトリックス物質と組み合わされる場合の本発明の態様において、特に好ましい検出法である。
【0143】
常磁性特性を持つコンビナトリアルビーズによって捕捉されたタンパク質を溶出する別の異なる様式を、タンパク質の分析と関連付けてもよい。例えば、ビーズのサイズが、数μLの体積内にすべてのリガンド多様性を有するのに十分に小さい場合、タンパク質と会合する、常磁性特性を持つ粒子の試料を、MALDIプローブ上またはProteinChipアレイスポット上に、直接装填してもよい。マトリックスの添加(溶媒および酸の存在下)は、リガンドとタンパク質の相互作用を弱め、かつこの混合物上に発射されたレーザーは、タンパク質をイオン化し、これは結果として質量分析によって検出され得る。
【0144】
広く用いられる別の検出法は、関心対象の分析物の1つまたは複数の物理的特性に基づく電気泳動分離法である。ポリペプチドおよびタンパク質分析物の分析に特に好ましい態様は、二次元電気泳動である。好ましい適用は、第一の次元で等電点によって、かつ第二の次元でサイズによって、分析物を分離する。分析物の電気泳動分析法は、研究中の分析物によって非常に多様であるが、所定の分析物に適した特定の電気泳動法を同定するための技術が、当業者に周知である。
【0145】
V.常磁性ビーズライブラリーを用いたタンパク質精製
非常にしばしば、標的タンパク質とともに、特性が知られていない混入タンパク質が特定の度合いまで一緒に精製され、かつ標的タンパク質から除去するのが非常に困難である。例えば、療法タンパク質溶液の場合、微量の混入タンパク質さえ、こうした療法タンパク質が投与される患者に対して、破滅的な影響を有し得る。こうした影響には、重度のアレルギーまたは免疫学的反応が含まれる。しばしば、これらの影響は、療法タンパク質を組換え的に発現させるのに用いる真核細胞または原核細胞由来の混入タンパク質によって引き起こされる。これらの混入タンパク質は、HCP(宿主細胞タンパク質)として公知である。HCPは、当然、非常に多様であり、かつ先行技術の方法を用いた場合、単一のプロセスでは除去不能である。したがって、その除去は、一連の工程を条件とし、こうした工程はまた、関心対象の療法タンパク質の全体の収量の減少に寄与する。したがって、本明細書記載の組成物を用いて、目的のタンパク質を精製するための方法を提供するのが、本発明のさらなる目的である。
【0146】
A.化学構造のライブラリーとの試料の接触およびこのライブラリーへの試料の結合
本発明は、標的タンパク質群を精製するための方法を提供する。これらの方法は、(a) 混入タンパク質および少量の標的タンパク質群に結合するのに十分な量の、少なくとも100の異なる化学構造を有する化学構造のライブラリーと、少なくとも95%の標的タンパク質群および多くても5%の混入タンパク質を含む試料を接触させる工程、ならびに(b)混入タンパク質および少量の標的タンパク質群を、化学構造のライブラリーに結合させる工程を含む。
【0147】
再び、磁力を用いた方法中、常磁性特性を持つ粒子を操作して、プロセスにおいて粒子を失うことなく、粒子を洗浄し、かつ液体を除去することを可能にしてもよい。
【0148】
多様な分析物を含有する試料に導入した際、化学構造は、混入タンパク質などの、試料中の多様な混入物質に結合するであろう。目的の標的タンパク質群などの豊富な分析物は、それぞれの化学構造の容量を飽和させるのに必要な量をはるかに超えた量で存在するであろう。したがって、これらの豊富な分析物の総量の高い割合が非結合のままであろうし、かつ少量しか化学構造に結合しないであろう。逆に、混入タンパク質などの微量分析物の量がより少ないことは、これらのタンパク質が利用可能な化学構造のすべてを飽和させないことを意味する。したがって、混入タンパク質の出発量の大部分は、それぞれの化学構造に結合するであろう。
【0149】
試料に存在する分析物、標的タンパク質群および混入タンパク質を、少なくとも100,000の異なる化学構造を有する化学構造ライブラリーと、試料中に対応する分析物が存在する場合には各化学構造がこうした分析物と結合するのを可能にする条件下で、接触させる。一般的に、混入タンパク質および少量の標的タンパク質群の、化学構造への結合を可能にする条件下で、化学構造のライブラリーと試料を接触させる。標的タンパク質群が精製される条件は、標的タンパク質群の固有の特性、混入タンパク質の特性を含む、多様なパラメーターにしたがって、多様であろう。
【0150】
試料と化学構造のライブラリーとの接触を多様な方式で達成してもよい。好ましい方法において、試料を常磁性物質と混合し、かつ混入物質が化学構造と結合するのを可能にするのに十分な時間、インキュベーションする。次いで、混入物質が結合した、常磁性特性を持つ粒子を、磁力を用いて溶液から単離する。溶液を粒子から分離し、かつこの溶液は精製タンパク質を含む。
【0151】
典型的には、試料および化学構造は、結合緩衝液中に存在する。適切な結合緩衝液の限定されない例には、50mMリン酸ナトリウムおよび0.15M NaClを含有する溶液、pH 7;50mMリン酸ナトリウムおよび0.15M NaClを含有する溶液、pH 8等を含む。適切な結合緩衝液には、例えばTrisベースの緩衝液、ホウ酸ベースの緩衝液、リン酸ベースの緩衝液、イミダゾール、HEPES、PIPES、MOPS、MOPSO、MES、TES、酢酸、クエン酸、コハク酸緩衝液等が含まれる。
【0152】
適切な結合緩衝液の例には、pH緩衝溶液などの、分析物および/または化学構造の表面電荷を修飾するものが含まれる。pH緩衝溶液は、好ましくは、酸性範囲、すなわち7未満のpH、好ましくは6.8、6.5、6.0、5.5、5.0、4.0もしくは3.0未満のpHに;または7より高いpH、好ましくは7.5、8.0、8.3、8.5、9.0、9.3、10.0もしくは11.0より高いpHの塩基性範囲に、溶液のpHを維持するのに十分に強い緩衝液である。標的タンパク質群および混入タンパク質を含む試料から標的タンパク質群を精製するのに適したpH条件は、約3.5〜約11、約4.0〜約10.0、約4.5〜約9.5、約5.0〜約9.0、約5.5〜約8.5、約6.0〜約8.0、または約6.5〜約7.5の範囲である。典型的には、結合緩衝液は、約6.5〜約7.5の範囲のpHを有する。本発明の別の態様において、結合緩衝液は、約6.5〜約8.5のpH範囲を有する。
【0153】
あるいは、多様な塩濃度の結合緩衝液を用いてもよい。標的タンパク質群および混入タンパク質を含む試料から標的タンパク質群を精製するのに適した例示的なNaCl塩濃度は、約0.01M NaCl〜約3M NaCl、約0.05M NaCl〜約1.5M NaCl、約0.1M NaCl〜約1.0M NaCl、または約0.2M NaCl〜約0.5M NaClの範囲である。好ましい結合緩衝液は、約0M〜約0.25Mの範囲の塩濃度を有する。結合緩衝液中の他の適切な塩は、KClまたはNaHOAcである。
【0154】
本発明に適した他の結合緩衝液には、上述の緩衝剤構成要素の組み合わせが含まれる。前述の結合緩衝剤構成要素の2またはそれより多くから配合される結合緩衝液は、混入タンパク質および化学構造間の分子相互作用の選択性を修飾することが可能である。
【0155】
当業者に認識されるであろうように、タンパク質精製の温度条件は、精製しようとする目的の標的タンパク質群の特性に応じて多様であり得る。典型的には、標的タンパク質群および混入タンパク質を含む試料から標的タンパク質群を精製するのに適した温度条件は、約4℃〜約40℃、約15℃〜約40℃、約20℃〜約37℃、または約22℃〜約25℃の範囲である。典型的な温度条件は、約4℃〜約25℃の範囲内である。1つの好ましい温度は、約4℃である。
【0156】
化学構造のライブラリーと試料を接触させる工程、および化学構造に分析物を結合させる工程を、化学構造のライブラリーに、混入タンパク質および少量の標的タンパク質を結合させるのに十分な期間、行う。典型的には、化学構造のライブラリー、ならびに標的タンパク質群および混入タンパク質を含む試料を、少なくとも約10分間、通常、少なくとも約20分間、より通常は、少なくとも約30分間、より通常は、少なくとも約60分間、一緒にインキュベーションする。インキュベーション時間はまた、数時間、例えば最長12時間であってもよいが、典型的には約1時間を超えない。本発明の方法を、例えばカラムを用いて行う場合、化学構造のライブラリーと試料を接触させる時間は、滞留時間と呼ばれる。典型的な滞留時間範囲は、約1分間〜約20分間である。
【0157】
分析物が化学構造に結合したら、さらなる分析のため、分析物を溶出することが望ましい可能性もある。効率的な溶出緩衝液の中には、表1に記載するものがある。これらは、単独で、またはあらかじめ決定した順序で(例えばイオン交換効果に作用する溶離液が最初、その後、疎水性会合を分解することが可能な溶離剤が続く等)、用いてもよい。
【0158】
(表1)固相ペプチドライブラリー上に吸着されたタンパク質に関する、異なる溶出プロトコルのスキーム

【0159】
本発明の好ましい溶出緩衝液には、質量分析計で使用するのに適したマトリックス物質が含まれる。緩衝液中のマトリックス物質の包含は、本発明のいくつかの態様において、任意で、化学構造から、直接、質量分析計プローブ、例えばタンパク質またはバイオチップに、分析物を溶出させる工程が含まれ得る。本発明の他の態様において、化学構造からの溶出後、マトリックスを分析物と混合してもよい。さらに他の態様には、タンパク質チップ上にあらかじめ配置されたエネルギー吸収マトリックスを含むSENDまたはSEAC/SENDタンパク質チップに、分析物を直接、溶出させる工程が含まれる。これらの後者の態様において、溶出緩衝液中に、さらなるマトリックス物質が存在する必要はない。
【0160】
一つの態様において、常磁性ビーズにカップリングした化学構造に結合した混入タンパク質および標的タンパク質群からの、非結合標的タンパク質群の分離は、磁力を適用することによる。化学構造/常磁性ビーズに結合したタンパク質は、非結合標的タンパク質群から引き離されるであろう。非結合標的タンパク質群は、上清に存在し、そこから収集可能である。常磁性ビーズは、典型的には、強磁性酸化鉄、磁赤鉄鉱、磁鉄鉱、またはマンガン亜鉛フェライトなどの強磁性酸化物粒子を含む(例えば米国特許第6,844,426号を参照されたい)。
【0161】
VI.キット
本発明はまた、標的タンパク質群を精製するためのキットも提供する。キットは、一般の当業者が本明細書記載の方法を実行するのを可能にする構成要素を含有する。好ましい態様において、キットは、少なくとも95%の標的タンパク質群および多くても5%の混入タンパク質を含む試料を、化学構造のライブラリーと接触させることによって、標的タンパク質群を精製するための、少なくとも100の異なる化学構造を有する化学構造のライブラリーおよび使用説明書を含む。
【0162】
本発明の別の態様において、キットは、混合物中の分析物の濃度範囲を減少させるのに有用な、本明細書記載の組成物を含む。別の態様において、キットは、混合物中の分析物を検出するのに有用な本明細書記載の組成物を含む。
【0163】
任意で、本発明のキットは、その組成物を用いて、本発明の方法を実施する使用のための使用説明書を含む。使用説明書は、多様な形で、本キットに存在してもよく、その1つまたは複数がキットに存在してもよい。使用説明書は、適切な媒体または被印刷物、例えば、少なくとも95%の標的タンパク質群および多くても5%の混入タンパク質を含む試料を、化学構造のライブラリーと接触させることによって、標的タンパク質群を精製する方法の情報が印刷された紙片上に、印刷された情報として提示されていてもよい。別の形は、少なくとも95%の標的タンパク質群および多くても5%の混入タンパク質を含む試料を、化学構造のライブラリーと接触させることによって、標的タンパク質群を精製する方法の情報が記録されたCDまたはディスケットなどのコンピュータ読取り可能な媒体であろう。別の形は、キットの使用者が、インターネットを介して、少なくとも95%の標的タンパク質群および多くても5%の混入タンパク質を含む試料を、化学構造のライブラリーと接触させることによって、標的タンパク質群を精製する方法の情報にアクセスするのに使用可能なウェブサイトアドレスであってもよい。他の使用説明書は、本明細書記載のさらなる方法における組成物の使用を記載する。
【0164】
本発明の別の態様において、本発明のキットは、化学構造のライブラリーまたは1つもしくは複数のカラム、例えば分画カラムと、試料を接触させるための、インキュベーション緩衝剤を保持する複数の容器をさらに含む。
【0165】
本発明のキットにはまた、試料調製および分析物単離のための構成要素を保持する複数の容器も含まれる。この性質の例示的な構成要素には、粒子から非結合物質を除去するのに十分な1つまたは複数の洗浄溶液、および化学構造によって特異的に結合された分析物を遊離させるのに十分な少なくとも1つの溶出溶液が含まれる。
【0166】
本発明のいくつかのキット態様において、固体支持体、好ましくは不溶性ビーズにカップリングした、化学構造のライブラリーを供給する。他の態様において、固体支持体および化学構造のライブラリーを別個に供給する。別個に供給した場合、化学構造のライブラリーおよび/または固体支持体には、本発明のオペレーターが、本明細書記載の本発明を実施する経過中、固体支持体に化学構造をカップリングするのを可能にする、リンカー部分および/または相補的リンカー部分が含まれる。化学構造の別個のライブラリーおよび固体支持体を提供するキットは、任意で、固体支持体への化学構造のライブラリーのカップリングを行うのに必要な、さらなる試薬を含んでもよい。
【0167】
さらに、本発明のキットには、本発明の化学構造のライブラリーを用いた、続く洗練のため、先の試料から標的タンパク質を精製するのに用いられるクロマトグラフィー媒体が含まれてもよい。
【0168】
本発明のさらなるキット態様には、一般の当業者が本明細書記載の任意の方法変動を行うのを可能にするであろう、磁石などの任意の機能構成要素が含まれる。
【0169】
前述の発明は、明確さおよび理解のための例示および実施例の目的で、いくぶん詳しく記載されているが、一般の当業者には、本発明の解説を踏まえて、本発明の精神および範囲から必ずしも逸脱せずに、特定の変動、変化、修飾および同等物の代用を行ってもよいことが容易に明らかであろう。その結果、本明細書記載の態様は、多様な修飾、変化等に供され、本発明の範囲は、付随する特許請求の範囲を参照することによってのみ決定される。当業者は、変化させるか、改変するか、または修飾して、本質的に類似の結果を生じ得る、多様な非必須パラメーターを容易に認識するであろう。
【0170】
本発明の各要素は、本明細書において、多数の態様を含有するとして記載されるが、別に示さない限り、本発明の所定の要素の各態様は、本発明の他の要素の各態様とともに用いられることが可能であり、かつこうした使用各々が、本発明の別個の態様を形成するよう意図されることを理解すべきである。
【0171】
上記開示から認識され得るように、本発明は、非常に多様な適用を有する。本発明は、以下の実施例によってさらに例示され、これは、単に例示であり、かついかなる点でも、本発明の定義および範囲を限定するよう意図されない。
【0172】
本発明の好ましい態様において、化学構造のライブラリー、例えばコンビナトリアルライブラリー内の個々の化学的構造の数は、非常に大きいため、試料に存在する各タンパク質が、個々の化学構造の少なくとも1つに対する親和性を有すると仮定される。典型的には、化学構造は、ビーズなどの固体支持体に付着する。精製しようとする関心対象の標的タンパク質群および多数の混入タンパク質を含む試料をこうしたコンビナトリアルライブラリーと接触させる場合、個々の化学構造は、標的タンパク質群および混入タンパク質を含む、タンパク質結合パートナーに結合する。コンビナトリアルライブラリーの広い多様性は、試料中のすべてのタンパク質に、すなわち関心対象の標的タンパク質群および混入タンパク質に特異的な化学構造を提供する。しかし、単一タンパク質種に関するビーズの容量が限定されているため、最小量の標的タンパク質群が結合し、かつ続いて、試料から除去されるであろう。理論では、試料に添加された、ビーズに付着した多様なコンビナトリアルライブラリーの量が、よく計算されている場合、実質的にすべての混入タンパク質が除去されるはずであり、一方、関心対象の標的タンパク質群は非常に部分的にしか除去されないであろう。関心対象の非結合標的タンパク質群は、上清中に留まり、かつろ過、遠心分離または他の手段によって、化学構造のライブラリーに結合したタンパク質から分離可能である。分離後、標的タンパク質群を収集する。収集された標的タンパク質群は、試料中の標的タンパク質群より純粋である。
【0173】
関心対象の標的タンパク質群および混入タンパク質を含む試料から標的タンパク質群を精製するのが好適である一方、当業者はまた、本発明の方法を実施して、標的タンパク質群および非ポリペプチド混入物質または不純物から、関心対象の標的タンパク質群を精製することもまた可能であることを認識するであろう。
【0174】
VII.実施例
2つの異なるプロセスを用いて、磁気固相リガンドライブラリーの調製を達成してもよい:ライブラリーを構築し、かつその後、常磁性物質を導入する、通常のビーズ状吸着剤を用いる工程、または最初に常磁性粒子を作製し、かつ次いでリガンドライブラリー上で構築する工程。
【0175】
第一のアプローチは、以下のプロセスを用いて実施することに帰する:
長さ約10 cmのベッドを形成するように、ペプチドライブラリービーズをクロマトグラフィーカラム内に充填する。
ビーズのカラムを生理学的緩衝液で平衡化する。
1または2倍量の磁鉄鉱懸濁物をカラムベッドに押し込む。
次いで、過剰な磁鉄鉱が除去されるまで、最初の生理学的緩衝液で、カラムを徹底的に洗浄する。
酸性またはアルカリ性pHの濃尿素溶液、濃グアニジン-HCl水性溶液、チオ尿素-尿素-界面活性剤混合物、水-有機混合物などの、ライブラリーの利用に現在用いられている溶液で、さらなる洗浄を行う。
【0176】
あらかじめペプチドリガンドを保持する、得られるビーズは、常磁性特性を有し、かつ磁場によって、液体から分離可能である。約100オングストロームの磁鉄鉱粒子のコロイド性懸濁物(これは、陰イオン性または陽イオン性界面活性剤を用いて安定化可能である)を、カラムの最上部から、ゆっくりと装填する。
【0177】
実施例1:ヒト血清におけるタンパク質濃度相違の減少(「同等化」)のための、磁気固相ペプチドリガンドライブラリーの調製、ならびに非磁気固相ペプチドリガンドライブラリーおよび磁気固相ペプチドリガンドライブラリーの評価
この最初の実施例において、非磁気および磁気粒子上の6ペプチドライブラリーの使用を、並列させて評価して、磁鉄鉱の存在が、同等化法において、常磁性特性を持つ粒子の使用に対して、何らかの有害な影響を有するかどうか決定した。WO 05094467 A2に記載されるものなどの、既存の非磁化物質から出発して、固相リガンドライブラリーを調製した(このライブラリーは、ビーズあたり1つのペプチド種で構成され、末端一級アミノ基が伴った;「OLOB」)。次いで、非磁化物質の部分を、以下のように磁化した。40ミクロンと110ミクロンの間の粒子直径を有する非磁化物質10mLを、クロマトグラフィーカラムに充填し、かつ生理学的緩衝液(リン酸緩衝生理食塩水)で徹底的に洗浄した。次いで、20mLの磁気コロイド性粒子懸濁物(Ferrofluidics, GermanyのEMG 807)をカラムに装填し、かつ次いで、1時間放置し、かつ過剰な磁気コロイド性粒子が除去されるまで、同じ緩衝液で徹底的に洗浄した。最終濃度50mMでクエン酸を含む9M尿素を用いて、第二の徹底的な洗浄を行った。最後に、生理学的緩衝液中で、ビーズを平衡化した。生じたビーズは、磁場に非常に感受性であり;単に磁石を数秒間使用することによって、これらを液体上清から分離可能であった。
【0178】
次いで、各々、6ペプチドライブラリーに付着した、1mLのこれらの磁化ビーズおよび1mLの非磁化ビーズを、10mLのヒト血清と混合し、かつ穏やかな攪拌下で、30分間放置した。次いで、永久磁石を用いて、磁気ペプチドコンビナトリアルリガンドビーズを分離して、かつ上清を廃棄した。ろ過および遠心分離などの標準的技術を用いて、非磁化ビーズを操作した。生理学的緩衝液で数回洗浄した後、常磁性ビーズ上に吸着されたタンパク質を、9M尿素(クエン酸により、pH3.3にする)を用いて溶出した。次いで、同じ非磁気ビーズと比較して、収集したタンパク質を、電気泳動(SDS-PAGE)および質量分析(SELDI MS)によって分析した。図1でわかるように、非磁気粒子および常磁性特性を持つ粒子の両方が、いずれかの固体支持体に付着した6ペプチドライブラリーから単離された結合分析物の類似のパターンを示した。さらに、常磁性特性を持つ粒子に、分析物の有意な非特異的結合がないことが観察された。
【0179】
実施例2:ヒト血清におけるタンパク質濃度相違の減少のための、磁気固相ペプチドリガンドライブラリーの調製および評価
【0180】
2ml体積の溶液に懸濁された、常磁性特性を持つ直径1μmの反応性粒子1mL(Dynalより)を、棒磁石を用いて上清から分離し、かつ次いで、100mMホウ酸ナトリウム、pH9.5で数回洗浄した。別個に、60mgのコンビナトリアル6ペプチドを、3mLの100mMホウ酸ナトリウム、pH9.5、1.3mLのエタノールおよび1mLのDMSOで構成される混合物中に溶解した。常磁性特性を持つ、調製済みの安定した粒子(1mL)を6ペプチドのペプチド溶液に添加した。次いで、100mMホウ酸ナトリウム、pH9.5中の3.0M硫酸アンモニウム2.75mLを添加した。穏やかな振盪下で、混合物を37℃で25時間インキュベーションした。
【0181】
磁場の適用によって、ビーズを容器内部に維持しつつ、いかなる残った活性基もキャップするため、上清を、0.1Mエタノールアミンを含有する生理学的緩衝液と交換した。この末端キャッピング操作を、37℃で一晩行った。最後に、試薬および副産物が完全に除去されるまで、生じた、カップリングしたビーズを生理学的緩衝液で徹底的にリンスした。生じたライブラリーは、単一ビーズ上にすべてのペプチドを含み(「ALOB」、1ビーズ全リガンド)、遊離の末端カルボキシル基を有した。
【0182】
常磁性特性を持つ粒子上の、生じたコンビナトリアルペプチドライブラリーを、実施例1に記載するように評価した。簡潔には、80μLのこれらの磁化ビーズを、80μLのヒト血清と混合し、かつ穏やかな攪拌下で、30分間放置した。次いで、永久磁石を用いて、磁気ペプチドコンビナトリアルリガンドビーズを分離し、かつ上清を廃棄した。生理学的緩衝液で数回洗浄した後、クエン酸によってpH3.3にした9M尿素を用いて、ビーズ上に吸着されたタンパク質を溶出した。次いで、電気泳動(SDS-PAGE)および質量分析(SELDI MS)によって、収集した血清タンパク質を分析した。
【0183】
図2に示す実験結果は、類似の血清タンパク質が、より大きいサイズのビーズ上に捕捉されたもの(図1、レーンc)または非磁気ビーズ(図1、レーンb、図2、レーンb)を用いたものよりも、1μmの直径の磁気ビーズ(レーンc)上に捕捉されることを立証した。再び、より大きい磁気ビーズに関して観察されるのと同様、直径1μmの磁気ビーズ上には、有意な非特異的結合がないことが観察された。
【0184】
実施例3:ぺプチドリガンドライブラリーを保持し、常磁性特性を持つ粒子による試料処理の再現性
実施例2由来のコンビナトリアルペプチドリガンドでコーティングされた直径1μmの磁気ビーズを比較研究に用いて、血清処理の再現性をチェックした。
【0185】
ストック懸濁物から、10μLのビーズを14回採取し、かつ14の異なる小さい試験管に分配した。各試験管に、800μLの血清を添加し、かつすべての試験管を穏やかな攪拌下で30分間インキュベーションした。各試験管の上清を実施例1および2に上述するように分離し、かつ生理学的緩衝液で徹底的に洗浄した。次いで、50mMクエン酸、pH3.3を含有する9M尿素の水性溶液を用いて、各試験管から、ビーズ上に吸着されたタンパク質を溶出した。次いで、SELDI MSによって、収集したタンパク質溶液を分析した。図3は、この分析の優れた再現性を示す。
【0186】
実施例4:ヒト血清におけるタンパク質濃度相違の減少(「同等化」)のための、磁気固相ペプチドリガンドライブラリーの調製および評価
一級アミンを導入するように、Dynalの常磁性特性を持つ直径2.8μmの反応性粒子を修飾する。エチレンジアミンのカップリングに関する、供給者の推奨にしたがって、これを達成する。アミン化された誘導体を、リン酸緩衝生理食塩水および次いで脱イオン水で徹底的に洗浄する。次いで、得られた誘導体をジメチルホルムアミドで漸次、数回洗浄して、完全に水を除去した。この段階で、古典的なコンビナトリアル方式(スプリット-カップル-リコンバイン)下の固相ペプチド合成のためにビーズを用いて、最終6ペプチドライブラリーを得た。このライブラリーは末端一級アミンを有する。外部磁場を用いて、固相分離などのすべての操作を行い、容器内部にビーズを維持する。
【0187】
一連の溶液:100% DMF、50%-50% DMF-水、100%水、生理学的緩衝液で、最終産物を徹底的に洗浄し、かつ最後に、20%エタノールを含有する1M塩化ナトリウム溶液中に保存する。次いで、最終懸濁物を+4℃で保存する。この方法で構成されたライブラリーは、ビーズあたり1ペプチド種を含み、末端一級アミノ基を伴う。
【0188】
常磁性特性を持つ、約10μLの固定粒子を含有する20μLのビーズ懸濁物を生理学的緩衝液で徹底的に洗浄し、かつ200μLのヒト血清に添加する。懸濁物を室温で30分間振盪する。小さい磁石によって、懸濁物から、常磁性特性を持つ粒子を除去し、かつ小さい試験管に導入し、かつ非結合タンパク質が上清から除去されるまで洗浄する。次いで、血清から捕捉されたタンパク質を伴うビーズを、2Mクエン酸ナトリウムの添加によってpH3.3に酸化された9M尿素で構成される溶出緩衝液で処理する。これらの条件下で、捕捉されたタンパク質をビーズから脱着し、かつ別個に収集する。次いで、本明細書に記載するように、SDS-PAGEおよびSELDI MSによって、回収されたタンパク質を分析する。結果は、タンパク質組成が最初の試料と類似であることを示すと予期される;が、最初の試料中のタンパク質の濃度相違が減少した結果、多くのさらなるタンパク質種が検出されると予期される。
【0189】
参照による組み入れ
本明細書に引用するすべての刊行物、特許および特許出願は、個々の刊行物、特許または特許出願が、具体的にかつ個々に、参照により組み入れられると示されるかのように、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0190】
【図1】図1は、通常のビーズ(レーンb)および磁化ビーズ(レーンc)を用いた同等化法の比較分析の結果を示す、SDS-PAGE分析を示す。レーンaは分子量マーカーを示す。実施例1に詳細を提供する。
【図2】図2は、磁化固相6ペプチドリガンドライブラリー(レーンc)および通常のビーズ(レーンb;実施例1からのデータ)で処理した血清試料ならびに最初のヒト血清タンパク質(レーンa)のSDS-PAGE分析を示す。実施例2に詳細を提供する。
【図3】図3は、14の異なる血清処理試験由来の試料のSELDI MS分析を示す。用いたタンパク質チップアレイはQ10であった。示す分子量範囲は、約5kDa〜約20kDaである。実施例3に詳細を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約100 nm〜約10ミクロンの間の直径および複数の異なる化学部分を有し常磁性特性を持つ、粒子のコレクションを用いて、多数のラウンドのスプリット-カップル-リコンバイン(split-couple-and-recombine)化学合成を行う工程を含み、スプリット-カップル-リコンバイン化学合成の各ラウンドが、化学構造に化学部分を付加し、かつ常磁性特性を持つ粒子を磁気的に操作する工程を伴い、かつラウンドの数が、少なくとも100,000のユニークな化学構造の多様性を有するライブラリーを組み立てるのに十分である、粒子に結合した多様な化学構造のコンビナトリアルライブラリーを作製する方法。
【請求項2】
常磁性特性を持つ粒子が、約300 nmと約5ミクロンの間の直径を有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
常磁性特性を持つ粒子が、約1ミクロンと3ミクロンの間の直径を有する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
化学構造が、ペプチド、オリゴヌクレオチド、オリゴ糖または合成有機分子であり、かつライブラリーが少なくとも100万のユニークな化学構造の多様性を有する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
化学構造がペプチドであり、かつライブラリーが少なくとも300万のユニークなペプチドの多様性を有する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
化学構造がペプチドであり、かつライブラリーが少なくとも6400万のユニークなペプチドの多様性を有する、請求項1記載の方法。
【請求項7】
ライブラリーが少なくとも100,000,000の化学構造のサイズを有する、請求項1記載の方法。
【請求項8】
ライブラリーが、コンビナトリアルライブラリーの実質的にすべてのメンバーを含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
ライブラリーの体積が約100マイクロリットル未満である、請求項5記載の方法。
【請求項10】
常磁性特性を持つ粒子が、常磁性物質が埋め込まれたポリマー物質を含む、請求項1記載の方法。
【請求項11】
常磁性特性を持つ粒子が、常磁性物質が多孔粒子中に留まった、多孔粒子を含む、請求項1記載の方法。
【請求項12】
化学構造が複数の異なる化学部分を含み、かつ常磁性特性を持つ各個々の粒子に結合した化学構造が実質的に同じ構造を有し、かつライブラリーが少なくとも100,000のユニークな化学構造の多様性を有する、約100 nmと約10ミクロンの間の直径を有し常磁性特性を持つ粒子のコレクションに結合した多様な化学構造のライブラリー。
【請求項13】
粒子が実質的に単分散であり、化学構造がペプチドであり、かつライブラリーが少なくとも300,000のユニークなペプチドの多様性を有する、請求項12記載のライブラリー。
【請求項14】
少なくとも3,000,000のユニークなペプチドの多様性を有する、請求項13記載のライブラリー。
【請求項15】
少なくとも30,000,000のユニークなペプチドの多様性を有する、請求項14記載のライブラリー。
【請求項16】
少なくとも64,000,000のユニークなペプチドの多様性を有する、請求項14記載のライブラリー。
【請求項17】
少なくとも100,000,000のペプチドのサイズを有する、請求項14記載のライブラリー。
【請求項18】
コンビナトリアルライブラリーの実質的にすべてのメンバーを含む、請求項12記載のライブラリー。
【請求項19】
粒子が、ポリアクリレート、ポリビニル、ポリスチレン、ナイロン、ポリウレタンおよび多糖からなる群より選択される、架橋された合成または天然ポリマーを含む、請求項12記載のライブラリー。
【請求項20】
化学構造が複数の異なる化学部分を含み、ライブラリーが少なくとも100,000のユニークな化学構造の多様性を有し、かつ特定の粒子各々がこれら粒子に結合した化学構造の多様性の大部分を有する、約100 nmと約10ミクロンの間の直径を有し常磁性特性を持つ粒子のコレクションに結合した多様な化学構造のライブラリー。
【請求項21】
請求項12または請求項20記載のライブラリー、および混合物中の分析物の濃度範囲を減少させるためにライブラリーを使用するための使用説明書を含む、キット。
【請求項22】
緩衝剤を含有する容器をさらに含む、請求項21記載のキット。
【請求項23】
(a)第一の濃度範囲で第一の試料中に存在する、複数の異なる分析物種を含む、第一の試料を提供する工程;
(b)化学構造が複数の異なる化学部分を含み、かつ常磁性特性を持つ各個々の粒子に結合した化学構造が実質的に同じ構造を有し、かつコンビナトリアルライブラリーが少なくとも100,000のユニークな化学構造の多様性を有する、約100 nmと約10ミクロンの間の直径を有し常磁性特性を持つ粒子のコレクションに結合した多様な化学構造のライブラリーのある量と、第一の試料を接触させる工程;
(c)異なる化学構造を用いて、第一の試料から、異なる分析物種の量を捕捉し、かつ非結合分析物種を除去する工程;および
(d)化学構造から、捕捉された分析物種を単離して、第二の濃度範囲で第二の試料中に存在する、複数の異なる分析物種を含む、第二の試料を生じる工程;
を含み、第二の濃度範囲が第一の濃度範囲未満であるように、異なる分析物種の量を捕捉するため、ライブラリーの量を選択する、
混合物中の異なる分析物種の濃度範囲を減少させるための方法。
【請求項24】
単離が段階的溶出を含んで、複数のアリコットを生じる、請求項23記載の方法。
【請求項25】
単離された分析物を検出する工程をさらに含む、請求項23記載の方法。
【請求項26】
単離された分析物が質量分析または電気泳動によって検出される、請求項25記載の方法。
【請求項27】
分析物を、粒子から、吸着表面を持つバイオチップ上に溶出する工程を含み、吸着表面が溶出物由来の分析物に結合する、請求項23記載の方法。
【請求項28】
(a)第一の濃度範囲で第一の試料中に存在する、複数の異なる分析物種を含む、第一の試料を提供する工程;
(b)化学構造が複数の異なる化学部分を含み、かつ常磁性特性を持つ各個々の粒子に結合した化学構造が実質的に同じ構造を有し、かつコンビナトリアルライブラリーが少なくとも100,000のユニークな化学構造の多様性を有する、約100 nmと約10ミクロンの間の直径を有し常磁性特性を持つ粒子のコレクションに結合した多様な化学構造のライブラリーのある量と、第一の試料を接触させる工程;
(c)異なる化学構造を用いて、第一の試料から、異なる分析物種の量を捕捉し、かつ非結合分析物種を除去する工程;
(d)捕捉された分析物を伴う粒子を質量分析計内に配置する工程;および
(e)捕捉された分析物を、レーザー脱離質量分析によって検出する工程
を含む、混合物中の分析物を検出するための方法。
【請求項29】
(a)化学構造が複数の異なる化学部分を含み、かつ常磁性特性を持つ各個々の粒子に結合した化学構造が実質的に同じ構造を有し、かつコンビナトリアルライブラリーが、混入タンパク質および少量の標的タンパク質群に結合するのに十分な量で、少なくとも100,000のユニークな化学構造の多様性を有する、約100 nmと約10ミクロンの間の直径を有し常磁性特性を持つ粒子のコレクションに結合した多様な化学構造のライブラリーと、少なくとも95%の標的タンパク質群および多くても5%の混入タンパク質を含む試料を接触させる工程;
(b)混入タンパク質および少量の標的タンパク質群を、化学構造のライブラリーに結合させる工程;
(c)化学構造のライブラリーに結合した混入タンパク質および標的タンパク質群から、非結合標的タンパク質群を分離する工程;および
(d)試料から非結合標的タンパク質群を収集する工程;
を含み、それによって、収集した標的タンパク質群が、試料中の標的タンパク質群より純粋である、
標的タンパク質群を精製するための方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−538112(P2008−538112A)
【公表日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−503201(P2008−503201)
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【国際出願番号】PCT/US2006/010647
【国際公開番号】WO2006/102542
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(507190880)バイオ−ラッド ラボラトリーズ インコーポレーティッド (25)
【Fターム(参考)】