説明

干渉を回避するための”IN‐SITU”変調方式を用いる患者のバイタルパラメータのモニタリング

本発明は、患者の組織上に放出される光の減衰を測定することによって患者のバイタルパラメータをモニタリングする方法に関し、該方法は次のステップを有する:変調周波数及び/又は変調符号で光を変調するステップ、変調された光を患者の組織上に放出するステップ、組織を通して透過される及び/又は組織から反射される光を収集するステップ、収集された光を復調するステップ、復調された収集された光を周辺光との干渉に関して解析するステップ、周辺光との干渉が最小化されるか又は所定閾値を下回る変調周波数及び/又は変調符号を決定するステップ、周辺光との干渉が最小化されるか又は所定閾値を下回る、決定された変調周波数及び/又は変調符号に従って光を変調するために変調周波数及び/又は変調符号を設定するステップ。このようにして高い信号対干渉比で患者のバイタルパラメータをモニタリングする万能で信頼性のある可能性が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光減衰測定の分野に関し、特に患者の組織上に放出される光の減衰を測定することによって患者のバイタルパラメータをモニタリングするための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特定の媒体中を伝播するとき、又は特定の媒体から反射するときの光の吸収及び/又は散乱の測定は、患者モニタリングなど、様々な医療領域において広く応用されている多数の光学分光法の基礎を成す。説明に役立つ1つの実例は、透過型パルスオキシメトリである。
【0003】
パルスオキシメトリは、患者の動脈血酸素飽和度の非侵襲性モニタリングのための光学的方法であり、臨床診療において最も一般に使用される技術の1つとなっている。ヘモグロビンタンパク質(Hb)は体内輸送のために赤血球中の酸素と結合し、酸化されると色が暗赤色から鮮赤色に変化する特性を持つ。2つ以上の波長で光を放出及び検出することによって、パルスオキシメータは、酸素飽和度、すなわち酸化ヘモグロビン(HbO)の濃度比の間接推定に達するために末梢血管床における光吸収を決定する。パルスオキシメータは、動脈血のみを拍動させることによって吸収された光の量を決定するために、心収縮及び心弛緩によって引き起こされる動脈血液量の変化に依存し、その結果組織と静脈血の寄与を大いに取り除く。
【0004】
オキシメトリを含む多くの用途においては、異なる波長、すなわち異なる色の光路の同時又は準同時減衰測定が必要とされる。そのため、典型的には多光源が利用され、これらは一般的に単一光検出器と組み合わされる。光検出器において発光体の各々からの信号を区別することができるようにするために、一般的に、時分割多重化(TDM)、周波数分割多重化(FDM)、又は符号分割多重化(CDM)などの電気的多重化方式が採用される。
【0005】
医療業務においては、例えば患者モニタリングに適用される光減衰測定は、電磁干渉に悩まされる。典型的には、こうした干渉は様々な光波長で異なる変調周波数を持つ周辺光から成る。一般例は、典型的には変調されない自然照明、ならびに、電源周波数の二倍(double mains frequency)(100Hz又は120Hz)及び50Hz又は60Hz高調波において変調される白熱灯からの、及び、特定の電子安定器に応じて数十から数百キロヘルツに及ぶフリッカレートを持つ蛍光灯からの人工光を含む。
【0006】
一般的に、分光装置においては測定に対する外部干渉の影響を軽減する措置がとられる。例えばパルスオキシメータにおいては、光検出器において、放射光がフィルタリング又は復調によって周辺光から区別されることができるように、光源が変調される。適用される変調技術にかかわらず、従来の方法は、環境光のスペクトル変調の知識に依存し、使用される光源変調周波数又は帯域が装置の寿命にわたって固定されたままであることができると仮定する。しかしながら、分光装置が光通信システムの近くで動作するときの場合のように、周辺光変調スペクトルが先験的に部分的にしかわからない又は全くわからない場合、装置動作周波数における検出光の変調スペクトルに干渉が存在し得る。同様に、高輝度放電(HID)ランプの新たな動作方式は、広周波数帯域を持つ干渉信号をもたらし得る。さらに、新しい発光ダイオード(LED)光源は広範囲の変調周波数を使用することが予測され、新たな干渉源を作り出す。干渉が動作周波数帯域を汚染する場合、信号対干渉比(SIR)は大幅に減少し、その結果測定品質を低下させ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、万能で信頼性のある方法で高い信号対干渉比を可能にする、患者の組織上に放出される光の減衰を測定することによって患者のバイタルパラメータをモニタリングする方法、及びそれにかかる装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、患者の組織上に放出される光の減衰を測定することによって患者のバイタルパラメータをモニタリングする方法によって達成され、該方法は次のステップを有する。
変調方式に従って光を変調するステップ、
変調された光を患者の組織上に放出するステップ、
周辺光、及び/又は、組織を通して透過される光、及び/又は、組織から反射される光を収集するステップ、
収集された光を変調方式に従って復調するステップ、
復調された収集された光を周辺光の寄与に関して解析するステップ、
周辺光の寄与が最小化されるか又は所定閾値を下回る変調方式を決定するステップ、
周辺光の寄与が最小化されるか又は所定閾値を下回る、決定された変調方式に従って光を変調するために変調方式を設定するステップ。
【0009】
本発明によれば、組織を通して透過される及び/又は組織から反射される光が収集され、これは患者のバイタルパラメータをモニタするために減衰測定に必要である。しかしながら、この光を収集するとき、少なくともいくらかの周辺光も収集することを完全に回避することができない。従って、"周辺光を収集する"ステップは、この周辺光を収集するために特別な手段がとられなければならないことを意味しない。しかし当然ながら、透過される及び/又は反射される光が収集されるときに周辺光が常に収集されるような措置をとることも本発明の範囲内にある。さらに、光が放出されないために、透過される及び/又は反射される光が存在しない場合も、周辺光が収集されることができる。これは本発明にかかる方法の上述のステップが同時に実行されなくてもよいことを意味する。特にこれは、"周辺光及び/又は組織を通して透過される光及び/又は組織から反射される光を収集する"ステップが、変調された光の放出中、及び/又は、変調された光が放出されない、従って周辺光のみが収集される期間に、実行されることができることを意味する。
【0010】
従って、動作中、すなわち"in‐situ"に、変調方式を周辺光の変調スペクトルに適応させることが本発明の重要なアイデアである。変調方式、すなわち変調周波数又は変調符号を、周辺光の寄与に基づいて"in‐situ"に決定される周辺光との干渉に従って"in‐situ"に設定することにより、信号対干渉比に対する周辺光の悪影響が大幅に削減される。
【0011】
"患者"という語は、病人だけでなく、健康であるか否かを問わず全てのヒト及び動物をあらわすことが強調されるべきである。
【0012】
概して、本発明を実行するための異なる方法がある。しかしながら、本発明の好適な実施形態によれば、変調方式は変調周波数及び/又は変調符号である。
【0013】
さらに、本発明の好適な実施形態によれば、患者の組織上に光を放出するステップは、所定の中断期間中断され、この中断期間中に、収集された光が異なる変調周波数で連続的に復調され、収集された光を復調する出力が最小化されるか又は所定閾値を下回る変調周波数が、所定の中断期間後に患者の組織上に放出される光に対する変調周波数であると決定される。従って、本発明のこの好適な実施形態によれば、該方法が異なる周波数で、すなわち異なるFDM方式で動作されることができるという事実が使用される。好適には、これらの異なるFDM方式はおおよそ、最も好適には厳密に、周波数領域において互いに直行する。
【0014】
本発明のこの好適な実施形態に関して、異なる変調周波が、周波数の離散的セットであるか、又は所定範囲内で連続的であることがさらに好ましい。さらに、患者の組織上に光を放出するステップは好適には周期的に中断される。さらに、減衰測定と周波数適応を交互に変化させる代わりに、復調器出力の解析に基づいて適応相が開始されることが好ましい。
【0015】
本発明の別の好適な実施形態によれば、患者の組織上に光を放出するステップは、所定の中断期間中断され、この中断期間中に、収集された光が異なる変調符号で連続的に復調され、収集された光を復調する出力が最小化されるか又は所定閾値を下回る変調符号が、所定の中断期間後に患者の組織上に放出される光に対する変調符号であると決定される。
【0016】
さらに、前記の本発明の好適な実施形態と同様に、患者の組織上に光を放出するステップは、好適には周期的に中断される。さらに、減衰測定と符号適応を交互に変化させる代わりに、復調器出力の解析に基づいて適応相が開始されることが好ましい。
【0017】
さらに、変調周波数の代わりに変調符号を用いることに関して、復調された収集された光を周辺光の寄与に関して解析するステップがより低レベルの寄与をもたらす場合は、より短い変調符号が適用され、復調された収集された光を周辺光の寄与に関して解析するステップがより高レベルの寄与をもたらす場合は、より長い変調符号が適用される。
【0018】
さらに、本発明の好適な実施形態によれば、患者の組織上に光を放出するステップは、所定の中断期間中断され、この中断期間中に、収集された光のパワースペクトルがフーリエ変換を用いて決定され、パワースペクトルが最小値を持つと決定される周波数、又はパワースペクトルが所定閾値を下回る周波数が、所定の中断期間後に患者の組織上に放出される光に対する変調周波数であると決定される。従って、本発明のこの好適な実施形態は、収集された光のスペクトルを直接、すなわち復調前に評価すること関する。また、この好適な実施形態に関して、患者の組織上に光を放出するステップは周期的に中断されることがさらに好ましい。
【0019】
本発明の別の好適な実施形態によれば、組織上に放出される光の変調周波数は、少なくとも2つの周波数モード又は周波数帯域の所定のセットを周期的に繰り返すことによって連続的に変更され、収集された光を復調する出力が最大化されるか又は所定閾値を超える変調周波数が、患者の組織上に放出される光に対するアクティブな変調周波数であると決定される。この好適な方法は周波数ホッピングとも呼ばれる。
【0020】
この場合、周波数のセットは好適には、変調された周辺光による干渉を回避するために適応される。一般的に、周辺光変調スペクトルは全周波数セットをカバーしないことが予測でき、変調周波数の少なくとも1つは干渉がないと推測できる。そのため、周波数セットは好適には高スペクトル多様性が保障されるように選ばれる。従って、セット中の周波数の少なくとも1つに対する検出光、すなわち外乱のないものが、最大減衰測定をもたらす。特定色の光の場合、減衰測定は変調周波数と無関係である。セット中の別の周波数がより低い減衰測定をもたらす場合、これはその変調周波数帯域における干渉の結果であり、対応する周波数は好適には置き換えられる。
【0021】
原則として、セット中の新たな周波数は任意に又はいくつかの選択基準に基づいて選ばれることができる。好適には、前述のようなスペクトルセンシングが、周波数ホッピングに対する初期セットを選択するため、またセット中の周波数を置き換えるためにも適用される。本発明のこの好適な実施形態の場合、患者の組織上に光を放出するステップは好適には中断されない。好適には、別の変調周波数が使用される間に、新たな変調周波数又はセットが選択される。さらに、2つの周波数のみのセットが使用されることが特に好ましく、第二の変調周波数は、第一の周波数を用いて減衰が測定されるときのスペクトルから選ばれ、逆もまた同様であり、それによって最適変調周波数を連続的に探し求める。
【0022】
適応変調周波数ホッピングの利点は、該方法が多重周波数における受信信号の準同時評価に基づき、その結果適応相による中断の無い連続測定を可能にするということである。
【0023】
上述の目的は、患者の組織上に放出される光の減衰を測定することによって患者のバイタルパラメータをモニタリングするための装置によってさらに取り組まれ、該装置は、
変調方式に従って光を変調するように構成される光変調器と、
変調された光を患者の組織上に放出するように構成される発光体と、
組織を通して透過される及び/又は組織から反射される光に適した、かつ、周辺光を収集するように不可避的に構成される、光検出器と、
収集された光を変調方式に従って復調するように構成される光復調器と、
復調された収集された光を周辺光の寄与に関して解析するように構成される干渉アナライザと、
周辺光の寄与が最小化されるか又は所定閾値を下回る変調方式を決定し、かつ、周辺光の寄与が最小化されるか又は所定閾値を下回る、決定された変調方式に従って光を変調するために変調方式を設定するように構成される、処理ユニットとを持つ。
【0024】
本発明の好適な実施形態にかかる装置に関して、この装置は少なくとも2つの異なる波長で光を放出するように構成される。さらに、該装置はパルスオキシメータであることが特に好ましい。
【0025】
本発明のこれらの及び他の態様は、以下に記載の実施形態から明らかとなり、それらを参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】透過型パルスオキシメトリ用の典型的なセットアップを示す。
【図2】本発明の一実施形態にかかる透過型パルスオキシメトリの一般化されたブロック図を描く。
【図3】周期的矩形波基準信号とともに復調器を示す。
【図4】本発明の一実施形態にかかる異なるFDM方式のスペクトルを示す。
【図5】WH256符号表からの異なる符号のスペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の一実施形態によれば、減衰測定装置の製造時に光変調周波数帯域を固定する代わりに、変調方式が周辺光の変調スペクトルに"in‐situ"に適応される。この変調方式は、周辺光、又は検出性能に対する周辺光の影響をアクティブにモニタリングし、変調された周辺光との干渉が回避又は抑制されるように透過及び/又は検出パラメータを変化させることによって、実現される。
【0028】
図1は透過型パルスオキシメトリ用の典型的なセットアップを示す。赤色光源1と赤外(IR)光源2が、660nmの赤色光と940nmのIR光を患者の組織上、すなわち指3上に照射するために使用される。そして指3を通して透過される光の一部は、共通光検出器4で収集される。
【0029】
図2は本発明の一実施形態にかかる透過型パルスオキシメータの略ブロック図を描く。該システムは、パルスコントローラとして機能する、かつ光源1,2を変調する光変調器6のパラメータを調節する処理ユニット5を有する。光変調器6の構成は適用される特定の多重化方式によって決まり、例えばTDMの場合光源1,2は交互に駆動され、FDMの場合光源1,2は同時にただし異なる変調周波数で光を照射する。多重化方式の理由は、このようにして同じ光検出器4が両光源1,2からの光の減衰を推定するために使用されることができるということである。
【0030】
光検出器4は、指3の媒体中を伝播した光を検出し、それを電気信号へ変換する。そしてこの信号は信号調整ブロック8によって前処理され、これはアナログ増幅器とバンドパスフィルタを有し、信号をアナログデジタル変換器(ADC)9によるデジタル領域への変換に適したものにする。各々復調器11とデマルチプレクサ12を有する相関器10は、検出光を同時に復調及び逆多重化するために使用され、その結果は処理ユニット5に提示され、処理ユニット5は透過された復調された信号を評価することによって関心のあるパラメータを決定する。そのため、処理ユニットは干渉アナライザ14を有する。
【0031】
本発明の一実施形態にかかる方式は、全減衰測定法が特定の変調方式を組み込むため、適用される特定の多重化技術とは無関係である。問題を単純化するために、以下の実施形態の記載は単一光源に限定され、それによって特定の逆多重化法を無視する。単一光源の場合、ただ1つの相関器10が必要である。そしてこの相関器10は単に、図3に描かれるような復調器11に相当する。ここで、光減衰についての情報は、同じ基本周波数(fm=1/Tm)の局所基準で受信信号を多重化することによってベースバンドに現れるようになる。続いて、信号をローパスフィルタ13に通すことによってベースバンド信号のみが保存され、それによって帯域外干渉を無視する。
【0032】
図3における矩形波は一例に過ぎず、基本周波数及び/又は高調波が一致する限り、任意の周期信号が、光源1,2を変調するため、及び受信信号を復調するために適用されることができることに留意すべきである。
【0033】
本発明の第一の実施形態によれば、該システムは異なる周波数又はFDM方式において動作することができるという事実が適用される。図4に図示されるようなこれらのFDM方式は、周波数領域においておおよそ直交する。経験される干渉がスペクトル色であるとき、経験される干渉を最小化する方式が存在する。さらに、TDMシステムは単一又は多重FDM方式で動作するとも解釈されることができることに留意すべきである。
【0034】
システム動作周波数(fm)は、復調器出力(y)を評価することによって干渉が低い帯域に適応される。そのため、最初に光源がオフにされ、そして復調器出力が最小化されるか又は所定閾値よりも低くなるようにシステムの復調周波数が適応され、続いてそれに従って変調周波数が変更される。
【0035】
該方法は減衰測定と周波数適応を周期的に繰り返すことができ、又は復調器出力信号の解析に基づいて適応相が開始されることができる。考えられる周波数は離散的セットであるか又は特定範囲内で連続的であることができる。処理ユニットは、いくつかの選択基準が満たされるまで、例えばある最小SIRが得られるまで、復調周波数を適応させるか、又は周波数の全範囲又はセットを評価してから最適なものを選択するか、又は探索アルゴリズムによって所定周波数空間を評価するかのいずれかが可能である。
【0036】
各動作は、受信信号のスペクトルを直接、すなわち信号を復調する前に評価すること、及び、干渉が低い周波数又は周波数セットを選択することによって、本発明の別の実施形態に従って実現されることもできる。そのため、最初に光がオフにされ、そして受信信号のパワースペクトル(x)が離散フーリエ変換を用いて決定される。続いて、変調及び対応する復調周波数(fm)が、パワースペクトルの最小値から、又はパワースペクトルに閾値を適用することによって、選択される。
【0037】
再度該方法は、減衰測定と周波数適応を周期的に繰り返すことができ、又は受信信号若しくは復調器出力信号の解析に基づいて、例えば瞬時電力の変動によって、適応相が開始されることができる。
【0038】
あるいは、変調周波数(fm)は、少なくとも2つの周波数モード又は周波数帯域の特定の離散的セットを周期的に繰り返すことによって、すなわち周波数ホッピングによって、連続的に変化させることができる。この場合、周波数のセットは変調された周辺光による干渉を回避するために適応される。一般的に、周辺光変調スペクトルは全周波数セットをカバーせず、変調周波数の少なくとも1つは干渉がないと推測されることができる。そのため、周波数セットは、十分なスペクトル多様性が保障されるように最初に選ばれるべきである。従ってセット中の周波数の少なくとも1つに対する検出光、すなわち外乱のないものが、最大減衰測定をもたらす。明らかに、特定色の光の場合、減衰測定は変調周波数とは無関係である。ここで、セット中の別の周波数がより低い減衰測定をもたらす場合、これはその変調周波数帯域における干渉の結果であり、対応する周波数は置き換えられるべきである。
【0039】
原則として、セット中の新たな周波数は任意に又はいくつかの選択基準に基づいて選ばれることができる。前の実施形態に記載されるようなスペクトルセンシングが、周波数ホッピングに対する初期セットを選択するため、またセット中の周波数を置き換えるためにも適用され得る。この機能を実現するために、光源はオフにされる必要がなく、新たな変調周波数又はセットは、別の変調周波数が使用されている間に選択されることができる。2つの周波数のみが使用されることが特に好ましく、第二の変調周波数は、第一の周波数を用いて減衰が測定されるときのスペクトルから選ばれ、逆もまた同様であり、それによって最適変調周波数を連続的に探し求めることが留意されるべきである。
【0040】
こうした適応変調周波数ホッピングの利点は、該方法が多重周波数における受信信号の準同時評価に基づき、その結果適応相による中断の無い連続測定を可能にするということである。
【0041】
本発明の別の実施形態によれば、CDMが使用され、異なる光源が固有の、好適には直交符号を用いて、光検出器がそれらの光の寄与を区別することを可能にする。適切な直交符号はウォルシュ‐アダマール(WH)符号であり、収容されることができる光源の数はおおよそ符号の長さに等しい。異なる光源の光の寄与の識別を可能にすることは別にして、これらの符号は光信号のスペクトルも形作る。一例として1つのWH符号を除く全てが、DCフリーのスペクトルを実現し、それらのスペクトルは互いに異なる。
【0042】
これは長さ256のWH符号について図5に図示される。そこには符号表における256符号から4つのスペクトルが描かれている。図5から結論付けられることができるように、これらの符号は著しく異なるスペクトルを持つ。同様に、受信側における拡散符号との相関は、送信された符号に関連しない周波数の抑制を実現する。図3に図示される周波数多重化とは対照的に、これらの符号によって実現されるスペクトルは一般的に重なることに留意すべきである。
【0043】
そして変調方式は適応符号選択によって実行される。該システムによって使用される拡散又は変調符号は、干渉によって最も影響されないもの、すなわち干渉と最も直交する符号に適応される。これは復調器出力を評価することによってなされる。そのため、上記の第一の実施形態の技術が適用されることができ、最初に光がオフにされ、そして復調器出力が最小化されるか又は所定閾値よりも低くなるように該システムの復調符号が適応され、続いて送信器拡散符号がそれに従って変更される。
【0044】
減衰測定の精度/信頼性もまた、異なる符号長を持つ符号を適用することによってこうした方法においてスケールされることができるということに留意すべきである、すなわち干渉のレベルが低い時には短い符号が使用され、高い時にはより高いコード長が使用される。長い符号の利点は、これらがより良いスペクトル形成を実現し、従って受信側においてより良いノイズ及び干渉抑制をもたらすということである。短い符号の利点はこれらが測定時間を削減することである。
【0045】
上記実施形態は単一光源について記載されている。これらの方法において、該システムは最適変調周波数/符号を検索する。しかしながらN個の光源を持つシステムの場合、該システムは干渉及びノイズの影響が最小化される/所定閾値を下回るようなN個の符号/周波数のセットを見つける。ここで、動作モードに応じて、光源のうちの1つに対する最悪エラー、又は全光源に対する平均エラーを最少化するように選ぶことが可能である。
【0046】
本発明は図面と前述の説明において詳細に図示され記載されているが、こうした図示と記載は説明又は例示であって限定ではないとみなされるものであり、本発明は開示された実施形態に限定されない。
【0047】
開示された実施形態への他の変更は、図面、開示、及び添付の請求項の考察から、請求された発明を実践する上で当業者によって理解され、達成されることができる。請求項において"有する"という語は他の要素又はステップを除外せず、不定冠詞"a"又は"an"は複数を除外しない。特定の手段が相互に異なる従属請求項に列挙されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用されることができないことを示すものではない。請求項における任意の参照符号はその範囲を限定するものと解釈されるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者のバイタルパラメータを、前記患者の組織上に放出される光の減衰を測定することによってモニタリングする方法であって、前記方法は、
変調方式に従って前記光を変調するステップと、
前記変調された光を前記患者の前記組織上に放出するステップと、
周辺光、及び/又は、前記組織を通して透過される光、及び/又は、前記組織から反射される光を収集するステップと、
前記収集された光を前記変調方式に従って復調するステップと、
前記復調された収集された光を前記周辺光の寄与に関して解析するステップと、
前記周辺光の寄与が最小化されるか又は所定閾値を下回る変調方式を決定するステップと、
前記周辺光の寄与が最小化されるか又は所定閾値を下回る、前記決定された変調方式に従って前記光を変調するために前記変調方式を設定するステップと、
を有する、方法。
【請求項2】
前記変調方式が変調周波数及び/又は変調符号である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記患者の前記組織上に光を放出するステップが所定の中断期間中断され、
この中断期間中に、前記収集された光が異なる変調周波数で連続的に復調され、
前記収集された光を復調する出力が最小化されるか又は所定閾値を下回る変調周波数が、前記所定の中断期間後に前記患者の前記組織上に放出される光に対する変調周波数であると決定される、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記異なる変調周波数が、周波数の離散的セットであるか、又は所定範囲内で連続的である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記患者の前記組織上に光を放出するステップが所定の中断期間中断され、
この中断期間中に、前記収集された光が異なる変調符号で連続的に復調され、
前記収集された光を復調する出力が最小化されるか又は所定閾値を下回る変調符号が、前記所定の中断期間後に前記患者の前記組織上に放出される光に対する変調符号であると決定される、
請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記復調された収集された光を前記周辺光の寄与に関して解析するステップが低レベルの寄与をもたらす場合、短い変調符号が適用され、前記復調された収集された光を前記周辺光の寄与に関して解析するステップが高レベルの寄与をもたらす場合、長い変調符号が適用される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記患者の前記組織上に光を放出するステップが所定の中断期間中断され、
この中断期間中に、前記収集された光のパワースペクトルがフーリエ変換を用いて決定され、
前記パワースペクトルが最小値を持つと決定される周波数、又は前記パワースペクトルが所定閾値を下回る周波数が、前記所定の中断期間後に前記患者の前記組織上に放出される光に対する変調周波数であると決定される、
請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記患者の前記組織上に光を放出するステップが周期的に中断される、請求項3乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記組織上に放出される光の前記変調周波数が、少なくとも2つの周波数モード又は周波数帯域の所定のセットを連続的に繰り返すことによって連続的に変更され、
前記収集された光を復調する出力が最大化されるか又は所定閾値を超える変調周波数が、前記患者の前記組織上に放出される光に対するアクティブな変調周波数であると決定される、
請求項2に記載の方法。
【請求項10】
第一の変調周波数で前記患者の前記組織上に光を放出する最中に、第二の変調周波数が所定スペクトルから選択され、逆もまた同様である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記患者の前記組織上に放出される光が、少なくとも第一の光と第二の光を有し、前記第一の光の波長は前記第二の光の波長と異なり、前記第一の光と前記第二の光は多重化される、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
時分割多重化、周波数多重化、及び/又は符号分割多重化が適用される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記周辺光の寄与が最小化されるか又は所定閾値を下回る変調周波数及び/又は変調符号を決定するステップが、前記第一の光と前記第二の光のうちただ1つに対してなされるか、又は前記第一の光と前記第二の光の平均に対してなされる、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
患者のバイタルパラメータを、前記患者の組織上に放出される光の減衰を測定することによってモニタリングするための装置であって、
変調方式に従って前記光を変調する光変調器と、
前記変調された光を、前記患者の前記組織上に放出する発光体と、
前記組織を通して透過される及び/又は前記組織から反射される光に対する光検出器であって、不可避的に周辺光を収集する光検出器と、
前記収集された光を前記変調方式に従って復調する光復調器と、
前記復調された収集された光を前記周辺光の寄与に関して解析する干渉アナライザと、
前記周辺光の寄与が最小化されるか又は所定閾値を下回る変調方式を決定し、かつ、前記周辺光の寄与が最小化されるか又は所定閾値を下回る、前記決定された変調方式に従って前記光を変調するために変調方式を設定する、処理ユニットと、
を有する装置。
【請求項15】
2つの異なる波長で光を放出するための少なくとも2つの光源が備わっている、請求項14に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−524196(P2011−524196A)
【公表日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−513099(P2011−513099)
【出願日】平成21年6月9日(2009.6.9)
【国際出願番号】PCT/IB2009/052435
【国際公開番号】WO2009/153700
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】