説明

平型ケーブルの被覆材除去方法

【課題】帯状導体を被覆する絶縁フィルムの所望領域を効率良く除去できて、他の導体との電気的接続性を良好にすることができる平型ケーブルの被覆材除去方法を提供する。
【解決手段】平型ケーブル1は、平行に配列された帯状導体2群の一側の面が接着層5を介して絶縁フィルム3で被覆されていると共に、帯状導体2群の他側の面が接着層6を介して絶縁フィルム4で被覆されている。この平型ケーブル1の帯状導体2を所望領域で露出させるために、まず、平型ケーブル1の一側の面で該領域内の絶縁フィルム3にレーザ光を照射するが、その際、平型ケーブル1の他側の面で該領域内の絶縁フィルム4に空気A等の気体を吹き付けて冷却しておく。しかる後、平型ケーブル1の他側の面で該領域内の絶縁フィルム4にレーザ光を照射する。これにより、絶縁フィルム3,4および接着層5,6を局所的に除去して帯状導体2を露出させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラットケーブルと称される平型ケーブルの被覆材除去方法に係り、より詳しくは、平型ケーブルの被覆材を除去して帯状導体を露出させるための加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
平型ケーブル(フラットケーブル)は、平行に配列された複数本の帯状導体を、接着層を介して一対の絶縁フィルム(被覆材)で挟んで積層し一体化してなる帯状体である。平型ケーブルを電気回路と接続する際には、その電気回路と導通される接続用導体に平型ケーブルの帯状導体を重ね合わせて、溶接(スポット溶接等)にて両導体を電気的かつ機械的に接続させることが一般的である。
【0003】
例えば、自動車のステアリング装置に組み込まれてエアーバッグシステム等の電気的接続手段として使用される回転コネクタには、可動側ハウジングと固定側ハウジング間に画成される環状空間内に平型ケーブルが巻回状態で収納されており、この平型ケーブルの両端部の帯状導体が各ハウジングに保持されたリードブロック(コネクタ部材)のピン端子(接続用導体)に溶接接合されている。すなわち、回転コネクタにおいては、前記環状空間内に収納された平型ケーブルの内端部がハンドル(ステアリングホイール)と一体的に回転する可動側ハウジングに保持されたリードブロックと接続されていると共に、この平型ケーブルの外端部がステアリングコラム等に設置された固定側ハウジングに保持された別のリードブロックと接続されている。
【0004】
ところで、絶縁フィルムで被覆されている平型ケーブルの帯状導体をピン端子等の接続用導体と溶接接合するためには、予め帯状導体の一部を露出させておかねばならない。そこで、帯状導体を露出させていない状態の平型ケーブル、つまり開口部の存しない一対の絶縁フィルムで帯状導体を被覆してなる平型ケーブルに対して、レーザ光を照射して絶縁フィルムを局所的に除去することにより、帯状導体の一部を所望位置に露出させるという被覆材除去方法が知られている。このようにレーザ光の熱で平型ケーブルの絶縁フィルムを局所的に蒸発させて帯状導体を露出させるという手法を採用すると、接続用導体の数やピッチに応じて帯状導体の露出位置を容易に変更できるため、平型ケーブルのコストダウンが図れる。また、かかる被覆材除去方法は、レーザ光の照射によって絶縁フィルムを局所的に除去するので、平型ケーブルの所望位置に帯状導体を高精度に露出させることが容易となる。
【0005】
レーザ光の照射によって絶縁フィルムを除去する従来技術としては、平型ケーブルの片面側から帯状導体の所望位置にレーザ光を照射して、この一側の面の絶縁フィルムに穿孔を形成した後、該穿孔内の帯状導体にレーザ光を照射し続けて加熱することにより、その熱で他面側の絶縁フィルムを局所的にめくれ上がらせ、当該部分を切断して除去するという加工方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この手法によれば、平型ケーブルの一側の面にレーザ光を照射するだけで、帯状導体の表裏両面を被覆している絶縁フィルムに開口部(めくれ上がった部分)を形成することができるため、平型ケーブルの他側の面にレーザ光を照射する必要がなくなる。
【0006】
その他の従来技術として、まず平型ケーブルの一側の面にレーザ光を照射して、この一面側の絶縁フィルムを局所的に除去した後、平型ケーブルの他側の面の対応する領域にレーザ光を照射して、この他側の面の絶縁フィルム等を局所的に除去する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−47132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載されている従来の被覆材除去方法は、平型ケーブルの一側の面にレーザ光を照射するだけで良いため、レーザ光の照射時間を短縮することはできるものの、レーザ光を照射してめくれ上がった絶縁フィルムの両面側の部分をそれぞれ切断しなければならない。そのため、この切断作業が煩雑であり、被覆材除去に要する加工時間を短縮することは困難である。
【0009】
一方、平型ケーブルの一側の面と他側の面にレーザ光を順次照射して絶縁フィルムを除去するという後者の被覆材除去方法の場合は、一側の面にレーザ光を照射しているときに、その熱で帯状導体に積層された他側の面の絶縁フィルムが軟化して皺状に変形しやすく、皺状になった他側の面の絶縁フィルムは、表面の皺状の凹凸にレーザ光の焦点を合わせにくくなり、きれいに絶縁フィルムを除去するのが困難になるという問題があった。なお、一側の面に照射するレーザ光のパワーを下げれば他側の面の絶縁フィルムは皺状になりにくいが、こうすると、レーザ光の照射時間が長くなって加工効率が悪化し、また、帯状導体上に接着層の炭化物等からなる残渣が多量に付着するため、他の導体と接続すると、それらの残渣の影響で電気的接続性が悪化して信頼性が低下するので好ましくない。
【0010】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、帯状導体を被覆する絶縁フィルムの所望領域を効率良く除去でき、かつ、他の導体との電気的接続性を良好にすることができる平型ケーブルの被覆材除去方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明は、平行に配列された複数本の帯状導体の一側の面が第1の絶縁フィルムで被覆されていると共に、前記複数本の帯状導体の他側の面が第2の絶縁フィルムで被覆されている平型ケーブルに対して、前記複数本の帯状導体を所望領域で露出させるために、レーザ光を照射することによって前記第1および第2の絶縁フィルムを除去する平型ケーブルの被覆材除去方法において、まず、平型ケーブルの他側の面で前記所望領域内の前記第2の絶縁フィルムを冷却手段によって冷却しながら、平型ケーブルの一側の面で前記所望領域内の前記第1の絶縁フィルムにレーザ光を照射し、しかる後、前記平型ケーブルの他側の面で前記所望領域内の前記第2の絶縁フィルムにレーザ光を照射するようにした。
【0012】
かかる構成によれば、一側の面において帯状導体を覆う部分の第1の絶縁フィルムと、帯状導体を介さずに積層された第1および第2の絶縁フィルムとが、レーザ光の照射によって加熱されて除去され、他側の面において帯状導体を覆う部分の第2の絶縁フィルムは、直接的な冷却効果と帯状導体を介して熱が伝導して拡散する放熱効果とによって過度に加熱されず、めくれや皺状の変形がなくレーザ照射前の状態がそのまま維持されるため、しかる後に、第2の絶縁フィルムにレーザ光の焦点を容易に集中させることができる。したがって、帯状導体を被覆する絶縁フィルムの所望領域を効率良く除去することができ、他の導体との電気的接続性を良好にすることができる。また、レーザ光のパワーを高く設定できるため、レーザ光の照射時間を更に短縮できて製造コストを大幅に削減できる。なお、平型ケーブルの第1および第2の絶縁フィルムと帯状導体との間に第1および第2の接着層が介在する構成についても上述の効果が得られる。すなわち、平型ケーブルの一側の面の所望領域内でレーザ光を照射しているときに、他側の面の第2の絶縁フィルムを前記所望領域と対応する領域で冷却しておけば、帯状導体を覆う部分の第1の絶縁フィルムおよび第1の接着層と、帯状導体を介さずに積層された第1の絶縁フィルム、第1の接着層、第2の絶縁フィルムおよび第2の接着層とが、レーザ光の照射で加熱されて除去される。一方、他側の面において帯状導体を覆う部分の第2の絶縁フィルムおよび第2の接着層は、レーザ光の照射による加熱が抑制されてレーザ照射前の状態をそのまま維持するので、上述と同様の効果が得られる。
【0013】
上記の被覆材除去方法において、冷却手段が、気体(例えば空気)などを吹き付けて第2の絶縁フィルムを冷却するようにしてあることが好ましい。かかる構成によれば、冷却手段を安価に構成できる。また、レーザ光の照射条件や平型ケーブルの構成などに応じて、単位時間あたりの気体の吹付け量や速度などを容易に選択して適切に冷却できる。
【0014】
また、上記の被覆材除去方法において、平型ケーブルの互いに離隔した複数箇所にレーザ光を照射して、複数本の帯状導体を個別に露出させることが好ましい。かかる構成によれば、各穿孔部に露出する帯状導体にそれぞれ接続用導体を接続させたときに帯状導体どうしの短絡を防止できる。
【0015】
また、上記の被覆材除去方法において、平型ケーブルを、前記帯状導体が延びる方向に対して交差する方向にレーザ光を照射して、複数本の帯状導体を一括して露出させるようにすると、作業工程数を削減でき、製造時間をさらに短縮できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の被覆材除去方法によれば、平型ケーブルの一側の面において所望領域内でレーザ光を照射するときに、他側の面の第2の絶縁フィルムを前記所望領域と対応する領域で冷却しておくので、他側の面における帯状導体を覆う部分の第2の絶縁フィルムが過度に加熱されるのを抑制できる。そのため、一側の面において帯状導体を覆う部分の第1の絶縁フィルムと、帯状導体を介さずに積層された第1および第2の絶縁フィルムとが、レーザ光の照射によって加熱されて除去され、他側の面において帯状導体を覆う部分の第2の絶縁フィルムは、除去されないで残留するのは勿論のこと、めくれが生じたり皺状に変形したりすることもなく、レーザ照射前の状態が維持されて厚みが均一に維持される。したがって、しかる後に、除去されずに残留する他側の面の第2の絶縁フィルムをレーザ光の照射によってきれいに除去することができるため、帯状導体を被覆する絶縁フィルムの所望領域内の絶縁フィルムを効率良く除去でき、他の導体との電気的接続性を良好にすることができる。また、照射するレーザ光のパワーを高く設定できるため、レーザ光の照射時間を更に短縮できて製造コストを大幅に削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態例に係る平型ケーブルの断面図である。
【図2】該平型ケーブルの被覆材除去方法の具体例を示す説明図である。
【図3】図2に示す被覆材除去方法によって帯状導体を露出させた平型ケーブルの接続端部を示す斜視図である。
【図4】図3に示す平型ケーブルの接続端部と接続されるコネクタ部材を示す斜視図である。
【図5】図2に示す被覆材除去方法と同様の手法で帯状導体を露出させた平型ケーブルの接続端部を示す平面図である。
【図6】図3に示す穿孔部の模式的な拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態例を図面を参照しながら説明する。本実施形態例に係る平型ケーブル(フラットケーブル)1は、図1(a)に示すように、各帯状導体2の一側の面は第1の接着層5を介して第1の絶縁フィルム3に被覆されており、各帯状導体2の他側の面は第2の接着層6を介して第2の絶縁フィルム4に被覆されている。また、平型ケーブル1において各帯状導体2のない部分は、図1(b)に示すように、帯状導体2を介さずに第1の絶縁フィルム3、第1の接着層5、第2の接着層6および第2の絶縁フィルム4が直接積層されている。各帯状導体2は厚みが約30μmの銅箔からなり、第1および第2の絶縁フィルム3,4はいずれも、厚みが約50μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)からなる。また、第1および第2の接着層5,6はいずれも、厚みが約30μmの熱可塑性ポリエステルからなる。ただし、帯状導体2や第1および第2の絶縁フィルム3,4や第1および第2の接着層5,6を本実施形態例とは異なる材料で形成しても良く、それぞれの厚みも適宜選択可能である。
【0019】
この平型ケーブル1は、長手方向の両端部に露出せしめた帯状導体2を、コネクタ部材10の接続用導体であるピン端子12に溶接接合して使用されるというものである(図4参照)。すなわち、図3に示すように、平型ケーブル1の端部には、各帯状導体2を個別に露出させる複数の穿孔部7が設けられている。後述するように、これらの穿孔部7は、平型ケーブル1の端部の一側および他側の面にレーザ光Lを順次照射して、被覆材である第1および第2の絶縁フィルム3,4と、第1および第2の接着層5,6とを除去することによって形成されたものである。また、平型ケーブル1の端部には、帯状導体2と重なり合わない複数箇所に位置決め孔8が設けられている。
【0020】
次に、平型ケーブル1に穿孔部7を形成する際の加工手順について説明する。まず、図2に示すように、平型ケーブル1の端部の一側の面で、所望領域としての穿孔部7に対応する複数箇所(互いに離隔している複数の小領域21)にレーザ発生器22のレーザ光Lを照射するとき、端部の他側の面では、小領域21に対応する領域内の第2の絶縁フィルム4に対して空気Aを吹き付けて冷却する状態にする。こうすることによって、レーザ光Lが照射された小領域21では、図1(a)に示す一側の面において帯状導体2の上面を覆う部分の第1の絶縁フィルム3および第1の接着層5と、図1(b)に示す帯状導体2を介さずに積層された第1の絶縁フィルム3、第1の接着層5、第2の接着層6および第2の絶縁フィルム4とが、レーザ光Lの照射で加熱されて除去される。その際、図1(a)に示す他側の面において帯状導体2の下面を覆う部分の第2の絶縁フィルム4および第2の接着層6は、平型ケーブル1の一側の面に照射されるレーザ光Lの熱で加熱されても除去されず、レーザ光Lの照射前の状態を維持する。すなわち他側の面では、上記冷却による直接的な冷却効果と、帯状導体2を介して熱が伝導して拡散される放熱効果とによって、第2の接着層6および第2の絶縁フィルム4は過度に加熱されなくなり、除去されずに残留するのは勿論、めくれが生じたり皺状に変形したりすることもなく、レーザ光Lの照射前の状態が維持されて厚みが均一に維持される。
【0021】
なお、本実施形態例では、平型ケーブル1の接続端部の一側の面にレーザ光Lを照射する際に、小領域21よりも狭い所定領域にレーザ光Lを照射しながら移動することによって、第1の絶縁フィルム3に前記位置決め孔8を開設している。また、本実施形態例では、ノズル23から空気Aを吐出させる冷却装置(空冷装置)を使用しているが、空気以外の気体(例えば窒素や水蒸気などを含む気体)や水などの液体などを第2の絶縁フィルム4に吹き付けて冷却しても良い。
【0022】
しかる後、平型ケーブル1の端部の他側の面で小領域21と対応する領域にレーザ発生器24からレーザ光Lを照射することによって、小領域21内において除去されずに残留した、帯状導体2を覆う部分の第2の絶縁フィルム4および第2の接着層6を除去する。この場合、第2の絶縁フィルム4および第2の接着層6はめくれや皺状の変形がなく、第2の絶縁フィルム4にレーザ光Lの焦点を容易に集中させることができるので、所望領域内の第1および第2の絶縁フィルムを効率良く除去でき、かつ、他の導体との電気的接続性を良好にすることができる。また、レーザ光のパワーを高く設定できるため、レーザ光の照射時間を更に短縮できて製造コストを大幅に削減できる。このような方法によって形成された穿孔部7は、図6に示すように、穿孔部7の内壁7aが穿孔部7の底(帯状導体2)から外方に向けて次第に拡開するように傾斜面をなし、この傾斜面と各絶縁フィルム3,4の表面との境界部が外方に向けて隆起する隆起部7bをなす。ここで、傾斜面7aは断面形状がやや曲線状をなしている。図6において、第1および第2の絶縁フィルム3,4と第1および第2の接着層5,6とを区別せず、帯状導体3の一側(図中上側)の絶縁層に符号3を付し、他側(図中下側)には符号4を付して簡略化して示す。なお、後述するヒートシール法で製造された平型ケーブルに形成された穿孔部ついても、図6のような形態をなす。
【0023】
なお、レーザ光Lの種類やパワーや照射回数等の加工条件は適宜選択することができるが、本実施形態例では、例えば、波長が9.3μmのCO2レーザ(出力20W)を移動スピード350〜2000(mm/秒)で複数回照射することにより、穿孔部7を形成している。また、平型ケーブル1の一側および他側の面に対するレーザ加工を別々のレーザ発生器を用いて行うことも可能である。
【0024】
このようにして穿孔部7を形成した平型ケーブル1の端部は、図4に示すコネクタ部材10の支持部材11の凹所11a内に配置されて、穿孔部7内に露出する帯状導体2(露出部2a)をピン端子12と溶接接合することによって、このコネクタ部材10と電気的かつ機械的に接続されるようになっている。
【0025】
図4に示すように、コネクタ部材10は、絶縁性の支持部材11に複数本のピン端子12を圧入して固着させたものである。ただし、コネクタ部材10が、インサート成形等によって各ピン端子12を支持部材11に一体化させた構造のものであっても良い。支持部材11の底板部には、複数箇所に位置決め突起13が突設されていると共に、平型ケーブル1の穿孔部7と対応する箇所にそれぞれ露出孔部14が開設されている。各位置決め突起13を平型ケーブル1の対応する位置決め孔8に挿入してかしめることにより、平型ケーブル1の端部が支持部材11の凹所11a内で位置決めされ固定されて、各穿孔部7が対応する露出孔部14の真上に配置されるようになっている。ピン端子12は露出孔部14の真上を横切って延在しており、穿孔部7内の帯状導体2(露出部2a)とピン端子12とをスポット溶接する際に図示せぬ電極が露出孔部14内に配置される。なお、平型ケーブル1の位置決め孔8に挿入される支持部材11の位置決め突起13は、溶接箇所に外力が直接作用しないようにして、他の導体との電気的接続性を安定にして信頼性を高めるという機能も果たす。
【0026】
また、本実施形態例において、平型ケーブル1は図示せぬ回転コネクタの可動側ハウジングと固定側ハウジング間に画成される環状空間内に巻回状態で収納されるものであり、コネクタ部材10は可動側ハウジングや固定側ハウジングに取着されるリードブロックである。この回転コネクタは、自動車のステアリング装置に組み込まれてエアーバッグシステム等の電気的接続手段として使用されるものであり、平型ケーブル1の一方の端部(内端部)がハンドル(ステアリングホイール)と一体的に回転する可動側ハウジングに保持されたリードブロックに接続され、平型ケーブル1の他方の端部(外端部)がステアリングコラム等に設置された固定側ハウジングに保持された別のリードブロックに接続される。
【0027】
以上説明したように、本実施形態例においては、平型ケーブル1の一側の面にレーザ光を照射して第1の絶縁フィルム3を除去するときに、他側の面の第2の絶縁フィルム4を照射領域と対応する領域で冷却しておくので、一側の面において帯状導体2を覆う部分の第1の絶縁フィルム3と、帯状導体2を介さずに積層された第1および第2の絶縁フィルム3,4とが、レーザ光Lの照射によって加熱されて除去され、他側の面において帯状導体2を覆う部分の第2の絶縁フィルム4は、直接的な冷却効果と帯状導体2を介して熱が伝導して拡散する放熱効果とによって過度に加熱されず、めくれや皺状の変形がなくレーザ照射前の状態をそのまま維持することになる。したがって、しかる後に、第2の絶縁フィルム4にレーザ光Lの焦点を容易に集中させることができるので、平型ケーブル1の他側の面にレーザ光を照射することによって、除去されずに残留する第2の絶縁フィルム4を除去することができる。このように、本実施形態例による平型ケーブル1の被覆材除去方法によれば、図6に示すような断面形状を有する穿孔部7を形成できると共に、帯状導体2を被覆する絶縁フィルムを効率良く除去でき、かつ、他の導体との電気的接続性を良好にすることができる。また、レーザ光のパワーを高く設定できるため、レーザ光の照射時間を更に短縮できて製造コストを大幅に削減できる。
【0028】
なお、平型ケーブル1として、ヒートシール法で製造された平型ケーブルを適用すると、レーザ光Lのパワーや照射回数を低減化でき、さらに短時間で穿孔部7を形成できるので望ましい。例えば、各帯状導体2を厚みが約35μmの銅箔とし、第1および第2の絶縁フィルム3,4を厚みが50μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)とし、第1および第2の接着層5,6を厚みが約30μmの非晶質のPETとする構成は、非晶質のPET層の溶融温度が熱可塑性ポリエステルからなる接着層の溶融温度よりも低いので、さらに短時間で穿孔部7を形成できる。また、本実施形態例による平型ケーブル1は、帯状導体2の両側に接着層5,6を介して絶縁フィルム3,4で覆う構成について説明したが、接着層5,6を介さずに絶縁フィルム3,4で帯状導体2を覆う構成であっても良い。
【0029】
また、本実施形態例においては、空気等の気体を吹き付けて第2の絶縁フィルム4を冷却するため、安価な冷却手段によって第2の絶縁フィルム4の所望箇所を効率良く冷却することができる。
【0030】
また、本実施形態例においては、平型ケーブル1の互いに離隔した複数箇所にレーザ光を照射して、これら複数箇所に存する第1および第2の絶縁フィルム3,4と第1および第2の接着層5,6とを除去することにより、各帯状導体2を個別に露出させる複数の穿孔部7を形成しているので、各穿孔部7に露出する帯状導体2にそれぞれピン端子(接続用導体)12を接続させたときに帯状導体2どうしの短絡が防止しやすくなっている。
【0031】
ただし、図5のように、帯状導体2の延びる方向に直交する方向にレーザ光Lを連続的に照射することによって、帯状導体2群を一括して露出させる横断露出部9を形成しても良い。図5に示す横断露出部9を形成する際の加工手順は、平型ケーブル1に穿孔部7を形成する際の加工手順と基本的に同じである。なお、この横断露出部9では、平型ケーブル1の長手方向に沿って被覆材としての第1および第2の絶縁フィルム3,4と第1および第2の接着層5,6とが分離されて帯状導体2群がむき出しになっているため、横断露出部9内において帯状導体2の任意箇所に、コネクタ部材10の支持部材11に設けた複数本のピン端子12等の接続用導体を接続させることが可能である。なお、横断露出部9は、図5のように帯状導体2の延びる方向に直交して形成しても良いが、帯状導体2の延びる方向に対して傾斜するように形成されたものであっても良い。
【符号の説明】
【0032】
1 平型ケーブル(フラットケーブル)
2 帯状導体
3 第1の絶縁フィルム(被覆材)
4 第2の絶縁フィルム(被覆材)
5 第1の接着層
6 第2の接着層
7 穿孔部
8 位置決め孔
9 横断露出部
10 コネクタ部材
12 ピン端子(接続用導体)
22,24 レーザ発生器
23 ノズル
A 空気
L レーザ光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行に配列された複数本の帯状導体の一側の面が第1の絶縁フィルムで被覆されていると共に、前記複数本の帯状導体の他側の面が第2の絶縁フィルムで被覆されている平型ケーブルに対して、前記複数本の帯状導体を所望領域で露出させるために、レーザ光を照射することによって前記第1および第2の絶縁フィルムを除去する平型ケーブルの被覆材除去方法であって、
まず、平型ケーブルの他側の面で前記所望領域内の前記第2の絶縁フィルムを冷却手段によって冷却しながら、平型ケーブルの一側の面で前記所望領域内の前記第1の絶縁フィルムにレーザ光を照射し、しかる後、前記平型ケーブルの他側の面で前記所望領域内の前記第2の絶縁フィルムにレーザ光を照射するようにしたことを特徴とする平型ケーブルの被覆材除去方法。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記第1の絶縁フィルムおよび第2の絶縁フィルムと前記複数本の帯状導体との間に接着層が介設されていることを特徴とする平型ケーブルの被覆材除去方法。
【請求項3】
請求項1または2の記載において、前記冷却手段が、気体を吹き付けて前記第2の絶縁フィルムを冷却するようにしてあることを特徴とする平型ケーブルの被覆材除去方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項の記載において、前記平型ケーブルの互いに離隔した複数箇所にレーザ光を照射して、前記複数本の帯状導体を個別に露出させることを特徴とする平型ケーブルの被覆材除去方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項の記載において、前記前記平型ケーブルを、前記帯状導体が延びる方向に対して交差する方向にレーザ光を照射して、前記複数本の帯状導体を一括して露出させることを特徴とする平型ケーブルの被覆材除去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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