説明

平板スイッチ

【課題】 平板に加える力が小さかったり不規則であっても、操作者の能力に合わせた確実なスイッチングができる平板スイッチを提供する。
【解決手段】 硬質体からなる平板1と、平板を下部で支え、前記平板に加えられた加重量を検出する3個以上の加重センサ6と、加重センサの信号によってスイッチング判定を行うスイッチング制御手段とを有し、スイッチング制御手段は、操作者の能力に応じてスイッチング判定の閾値を調整可能であることを特徴とする平板スイッチ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肢体不自由児などでも確実にスイッチング及び意思伝達が行える、平板スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、日常生活に欠かせない機器の多くのインターフェイスは小型化してきている。しかしながら、使用者の運動能力の程度によっては機器の装置に組み込まれたボタンでは操作が困難であることがあり、別途、ボタンを操作するための冶具やボタンを接続して使用することがある。現在開発されているスイッチには、使用者の残存能力を考慮して少ない力でかつ大きな動きでスイッチを簡便にオン・オフを行う機能を備えているものがある(特許文献1、特許文献2)。一方、タッチパネルなどを使用した、接触面の場所や力の大きさに依存しないスイッチなどもある(特許文献3)。また、キーボードのレイアウトを三次元形状にしたり、打鍵を容易にするシステムなどの開発もされている(特許文献4)。リハビリ用の機器では、木製のプレイボードなどがあり、形状などの認識機能を高める装置がある(特許文献5)。また、タッチスクリーン方式では、画面のアイコンをクリックすることで意思を伝達することが可能なデバイスも開発されている(特許文献6)。
【0003】
脳機能の発達は、四肢の運動による神経機能の発達に大きく影響される。重度な肢体機能の障害を持つ小児では、残存機能の著しい制約に伴い脳機能の発達をより遅延させる可能性がある。そのため、脳機能をより活発にさせるためには、出来る限り四肢を動かすことが必要不可欠であると考えられる。
近年、市販されている小児用オモチャは、指や手のひらを巧みに動かすような構造となっている。そのため、肢体不自由児がそのオモチャを触りながら遊ぶことは困難であり、実際には介護者が肢体不自由児の前でオモチャを使ってみせる程度にとどまってしまう。それゆえ、多くのオモチャでは介護者がスイッチを動かし、肢体不自由児はオモチャの動きや音や光などを視聴覚で楽しむのが現状である。また、肢体不自由児が別途設けられた大きなスイッチにより操作することもあるが、既存のスイッチはボタン面が非常に大きく作られ、容易に押すことが可能な構造であるにも関わらず、肢体不自由児が上手くスイッチングを行うことは困難な場合もある。これには、スイッチの置く場所が悪いためスイッチを上手く押せない、さらにはスイッチとオモチャの動きに関する因果関係の認識が低い、などの要因も含まれる。
【0004】
一般的に押しボタンは、電気的な接点となるリミットスイッチ、ボタン部、それを支えるばねと案内部などで構成されている。そのためスイッチの操作性は、電気的接点が動作するまでの機械的機構に依存する。特に、ボタンの表面積が拡大し、電気的接点に加わる力が接触部の中心から離れれば離れるほど、スイッチングの押し込み量が大きくなり、スイッチングしにくくなることがある。そのため、肢体不自由児の残存機能、例えば、稼動範囲や力などと、スイッチ動作の移動量や加重位置の関係を明らかにすることが出来れば、スイッチのレイアウトや実際の接触を伴う部品表面の形状を改善することが可能となる。
一方、タッチパネルなどのような認知力を要するスイッチを、肢体不自由児に使用することは難しい。また、タッチパネルは、接触にともなう抵抗変化もしくは静電方式を使用しており、細かい動作を要する必要はないが、パネルの大きさを大きくするとコストが増大し、かつ加重力に対する制限がある。そのため、スイッチ面が大きくてもコストが低く、大きな加重でも壊れないようなスイッチが望まれている。
特許文献7には、平板と加重センサを使った入力用装置が記載されている。しかしながら、特許文献7の入力用装置は、肢体不自由児を想定したスイッチング装置ではなく、いわゆるポインティングデバイスである。したがって、この入力用装置は、スイッチング操作が不自由な使用者を想定した構成を有していない。また、加重センサも2個しかないので、加重センサ以外に平板を支えるための構造が必要である。
【特許文献1】特開平11−219638号公報
【特許文献2】登録実用新案第3043541号公報
【特許文献3】特開2002−169653号公報
【特許文献4】特開平5−6239号公報
【特許文献5】実開平7−1995号公報
【特許文献6】登録実用新案第3072306号公報
【特許文献7】特開平6−282373号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、従来のスイッチは、例えスイッチ面が大きくても力学的構造の問題で押しにくいという問題がある。肢体不自由児の場合、健常者と異なり、スイッチ面を正確に押すことは困難であり、スイッチ面の中心から外れてしまうと正確にスイッチング操作ができない。場合によっては、スイッチ面以外を叩いてしまうこともある。また、従来技術として特許文献7のようなポインティングデバイスも知られているが、あくまでポインティングを目的としており、肢体不自由児のスイッチング操作を容易にするための構成を有していない。また、特許文献7のポインティングデバイスの加重センサは2個であり、加重センサ以外に平板を支えるための構造が必要であり構造が複雑になると共に、加重センサ以外の支柱があるため平板に加わる加重力の感度が低下してしまう。
本発明は上記問題点を解決し、平板に加える力が小さかったり不規則であっても、操作者の能力に合わせた確実なスイッチングができる平板スイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は以下の構成を有する。
硬質体からなる平板と、前記平板を下部で支え、前記平板に加えられた加重量を検出する3個以上の加重センサと、前記加重センサの信号によってスイッチング判定を行うスイッチング制御手段と、を有し、前記スイッチング制御手段は、操作者の能力に応じて前記スイッチング判定の閾値を調整可能である。
【0007】
また、以下の実施態様を有する。
前記平板スイッチ本体への打音又は振動を検出する補助センサを更に有し、前記スイッチング制御手段は、前記補助センサからの信号によってもスイッチング判定を行う。補助センサとしては、マイクロフォン、加速度センサ、振動センサなどがある。
前記補助センサは、マイクロフォンである。
前記スイッチング制御手段は、平板上に加えられた加重位置によってスイッチング位置も判定する。
前記平板は表面に複数の立体構造を有しており、前記スイッチング制御手段はスイッチング位置判定によりどの立体構造に対してスイッチ操作がされたかを判定する。スイッチ操作に応じて複数の機器の操作が可能である。
前記スイッチング制御手段は、前記平板上の位置ごとに異なる閾値を設定可能である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の平板スイッチは上記構成を採用したことにより、平板に加える力が小さかったり不規則であっても、操作者の能力に合わせた確実なスイッチングができる。加重センサにより平板に加わる加重量を検出しているので、操作者の能力に合わせて閾値を設定することが可能であり、3個以上の加重センサを用いているので平板上の加重位置もわかり、操作者のクセなどを考慮して平板上の場所ごとにスイッチングの閾値を異ならせることも可能である。本発明の平板スイッチは、3個以上の加重センサを用いているので、平板を加重センサのみで支えることが可能であり、他の支柱を有する従来技術に比べてより小さな加重力を検出可能である。操作者の能力によっては大きな力で押すことができないので、小さな加重力を検出できる効果は大きい。また、操作者によってはスイッチ面を押すことができず、スイッチ本体の側面などを叩いてしまうことがあるが、スイッチ本体内にマイクロフォン等の補助センサを設けることでこのような場合でも確実にスイッチング操作が可能である。本発明の平板スイッチは、静電方式ではなく加重方式なので、スイッチ面は硬質体であり、スイッチ面上に凹凸などの立体構造を設けることができる。様々な絵や立体構造をスイッチ表面に設けることで操作者が視覚的・触覚的にスイッチを把握することが可能であり、意思伝達ボードやリハビリ用などに利用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明の実施形態の一例について説明する。
図1に、本発明の平板スイッチの一例を示す。本スイッチは、硬質体からなる平板1と、スイッチ本体を囲うハウジング2と、平板1を四隅で摺動自在に支えるリニアガイド3及びリニアブッシュ4と、リニアガイド3に設けられ平板1を支えるばね5と、ばね5に接続され平板1に加えられた加重を検出する加重センサ6と、平板1やハウジング2に加えられた打音や振動を検出する補助センサ(マイクロフォン)7と、前記加重センサ6及び補助センサ(マイクロフォン)7からの信号を処理する信号増幅・変換回路8とからなる。本スイッチは、スイッチ接触面の押し位置とその大きさを計測するために、接触面を垂直方向のみにスイッチ接触面(平板1)が移動するように、平板1を4点のリニアガイド3で固定し、平板1との接触面と反対側の四隅には加重センサ6が取り付けてある。検出された加重信号は、信号増幅・変換回路8を経由してパソコンにデジタル信号として保存される。その他、補助的に加重以外でスイッチングを行うために、マイクロフォンや加速度センサや振動センサなどの補助センサ7がスイッチ内部の随意な場所に取り付けられる。
【0010】
図2は、平板スイッチのブロック図である。図2を用いて、平板スイッチの装置の動きと感度調整方法について説明する。スイッチシステム部は、主に、ボタン部、ボタンを支える加重センサ6の信号を増幅する回路部と、マイクロフォンや加速度センサなどの補助センサ7による補助的なスイッチング信号回路部とからなり、これらの信号がマイコンに取り込まれ、別途、導入してあるプログラムに応じて制御信号を出力し、機器の制御や平板スイッチの加重の大きさや位置を計測する。また、スイッングの感度や範囲は、使用者の機能を示す測定結果をもとに領域に応じた加重の大きさに合わせてスイッチングの閾値を決定し、その閾値に応じた値をプログラムに追加することで平板スイッチの感度を調整する。本スイッチでは、加重位置を測定することができるので、その加重位置(領域)に応じたスイッチング機能を持たせることが可能である。さらには、肢体不自由児に応じて平板スイッチを使用したときの加重の大きさや位置を確認することで、スイッチングの閾値を各位置で可変させスイッチングのムラを除去することが可能となる。
【0011】
図3は、本発明におけるスイッチの、リハビリもしくは意思伝達ボードとしての活用例である。平板スイッチの接触面は鉄を使用しているため、立体のオブジェや平板の絵にマグネットや両面テープなどで固定が可能である。そこで例えば、そのオブジェや絵に触ると、それに応じた音や光が発生するようにする。そして、オブジェの意味に応じた行動を介護者が行うことで、肢体不自由児の自らの意思を相手に伝える装置とし活用することが可能となる。
【0012】
以上、本発明の実施形態の一例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇において各種の変更が可能であることは言うまでもない。

【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の平板スイッチの一例。
【図2】平板スイッチのブロック図。
【図3】平板スイッチの意思伝達ボードへの応用例。
【符号の説明】
【0014】
1:平板、 2:ハウジング(スイッチ本体)、 3:リニアガイド、 4:リニアブッシュ、 5:ばね、 6:加重センサ、 7:補助センサ(マイクロフォン)及びセンサ回路、 8:信号増幅・変換回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質体からなる平板と、
前記平板を下部で支え、前記平板に加えられた加重量を検出する3個以上の加重センサと、
前記加重センサの信号によってスイッチング判定を行うスイッチング制御手段と、を有し、
前記スイッチング制御手段は、操作者の能力に応じて前記スイッチング判定の閾値を調整可能であることを特徴とする、平板スイッチ。
【請求項2】
前記平板スイッチ本体への打音又は振動を検出する補助センサを更に有し、
前記スイッチング制御手段は、前記補助センサからの信号によってもスイッチング判定を行う、請求項1記載の平板スイッチ。
【請求項3】
前記補助センサは、マイクロフォンである、請求項2記載の平板スイッチ。
【請求項4】
前記スイッチング制御手段は、平板上に加えられた加重位置によってスイッチング位置も判定する、請求項1−3いずれか記載の平板スイッチ。
【請求項5】
前記平板は表面に複数の立体構造を有しており、前記スイッチング制御手段はスイッチング位置判定によりどの立体構造に対してスイッチ操作がされたかを判定する、請求項4記載の平板スイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−210265(P2008−210265A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−47792(P2007−47792)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【出願人】(304020177)国立大学法人山口大学 (579)
【Fターム(参考)】