平板型燃料電池装置
【課題】熱膨張差に起因して接続導体における界面が損傷するのを抑制させるのに有利な燃料電池装置を提供する。
【解決手段】燃料電池装置は、電解質膜21をこれの厚み方向に挟むアノード22およびカソード23を有するセル2と、セル2をこれの厚み方向に挟む位置に設けられたセパレータ3とを備える。セパレータ3とアノード22との間、および/または、セパレータ3とカソード23との間には、接続導体5が設けられている。接続導体5は、セル使用温度域において導電性を有する導電材料で形成された複数の導片51からなる導片群59を備える。接続導体5の表面5sに対して垂直方向から透視するとき、導片群59を構成する複数の導片51は、接続導体5の表面5sにおける中心域5cに向けてほぼ放射方向に沿って配列されており、中心域5cに向けてほぼ放射方向に変形可能とされている。
【解決手段】燃料電池装置は、電解質膜21をこれの厚み方向に挟むアノード22およびカソード23を有するセル2と、セル2をこれの厚み方向に挟む位置に設けられたセパレータ3とを備える。セパレータ3とアノード22との間、および/または、セパレータ3とカソード23との間には、接続導体5が設けられている。接続導体5は、セル使用温度域において導電性を有する導電材料で形成された複数の導片51からなる導片群59を備える。接続導体5の表面5sに対して垂直方向から透視するとき、導片群59を構成する複数の導片51は、接続導体5の表面5sにおける中心域5cに向けてほぼ放射方向に沿って配列されており、中心域5cに向けてほぼ放射方向に変形可能とされている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は平板型燃料電池装置に関する。
【背景技術】
【0002】
平板型燃料電池装置の従来技術について、中温領域または高温領域に加熱された状態で使用される固体酸化物形燃料電池装置を例にとって説明する。この燃料電池装置は、固体酸化物の電解質膜と電解質膜をこれの厚み方向に挟むアノードおよびカソードを有するセルと、セルをこれの厚み方向に挟む位置に設けられたセパレータと、セパレータとカソードとの間に設けられた導電材料で形成された集電機能をもつインターコネクタとも呼ばれる接続導体とを備える(特許文献1)。固体酸化物形燃料電池の使用温度は固体高分子形燃料電池に比較して高温である。更に、接続導体とカソードとが広い面積で密着しているため、両者の間における熱膨張差を効率よく吸収できず、使用期間が長期にわたると、接続導体とカソードとの接合界面が劣化するおそれがある。
【0003】
そこで熱膨張差を吸収できる固体酸化物形燃料電池装置として、多数の突状部が形成された一対の電極板を酸素イオン伝導性固体電解質膜の表裏面の多孔性電極に当接させた構造をもつものが知られている(特許文献2)。更に、セパレータに断面で波状とされた波状部を形成し、波状部をセルのカソードやアノードにあてがう構造をもつものが知られている(特許文献3)。また、セルのカソードとカソード側のセパレータとの間に断面波状部の導片を複数個、ろう付けで結合させた燃料電池スタックが知られている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−99308号公報
【特許文献2】特開2006−331944号公報
【特許文献3】特開2005−317241号公報
【特許文献4】国際公開2005−013405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来技術によれば、接続導体とセルとは材料が相違するため、燃料電池装置の発電運転時には、接続導体とセルとの熱膨張差が発生するが、この熱膨張差を解消させるには、必ずしも充分ではなく、燃料電池装置が長期にわたり使用されると、熱膨張差に起因して接続導体における界面が損傷するおそれがある。本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、熱膨張差に起因して接続導体における界面が損傷するのを抑制させるのに有利な燃料電池装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の様相1に係る燃料電池装置は、(i)イオン伝導性をもつ電解質膜と電解質膜をこれの厚み方向に挟むアノードおよびカソードを有するセルと、(ii)セルをこれの厚み方向に挟む位置に設けられたセパレータと、(iii)アノード側のセパレータとアノードとの間、および/または、カソード側のセパレータとカソードとの間に設けられ、導電材料で形成された接続導体とを具備しており、(iv)接続導体は、セル使用温度域において導電性を有する導電材料で形成された断面板状をなす複数の導片からなる導片群を備えており、接続導体の表面に対して垂直方向から透視するとき、導片群を構成する複数の導片は、接続導体の表面における中心域に向けてほぼ放射方向に沿って配列されている。
【0007】
本様相によれば、接続導体の表面に対して垂直方向から透視するとき、導片群を構成する複数の導片は、接続導体の表面における中心域に向けてほぼ放射方向に沿って配列されている。各導片は、接続導体の表面における中心域に向けてほぼ放射方向に変形可能とされている。熱膨張差に起因する変形を抑制できる。従って、熱膨張差に起因して接続導体とセル(アノードまたはカソード)とにおける界面が損傷するのを抑制させるのに、更に有利となる。燃料電池は、中温域または高温域で使用される固体酸化物形燃料電池が好ましいが、場合によっては、固体高分子形燃料電池でも良い。ほぼ放射方向とは、接続導体の表面における中心域に向けて基本的には放射する方向に指向する方向を意味する。中心域はX方向およびY方向の中心域をいい、必ずしも中心点でなくても良い。
【0008】
(2)本発明の様相2に係る燃料電池装置によれば、上記様相において、導片は、セルの厚み方向に沿った断面において導片の可撓性を高める曲成部を備えている。導片の曲成部は可撓性を示す。従って、各導片は、接続導体の表面における中心域に向けてほぼ放射方向に高い変形可能性を発揮する。このため、熱膨張差に起因して接続導体とセルとの界面が損傷するのを抑制させるのに更に有利となる。
【0009】
(3)本発明の様相2に係る燃料電池装置によれば、上記様相において、接続導体は、複数のスリットを有する導板部材と、導板部材に各スリットを介して導板部材の部位を導板部材から部分的に立起させて形成された複数の導片からなる導片群とを備えている。立起した導片は高い変形性を示す。このため、熱膨張差に起因して接続導体とセルとの界面が損傷するのを抑制させるのに更に有利となる。
【0010】
(4)本発明の様相2に係る燃料電池装置によれば、上記様相において、接続導体は、導板部材と、導板部材に結合された複数の導片からなる導片群とを備えている。導片は高い変形性を示す。従って、各導片は、接続導体の表面における中心域に向けてほぼ放射方向に高い変形可能性を発揮する。このため、熱膨張差に起因して接続導体とセルとの界面が損傷するのを抑制させるのに更に有利となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る燃料電池装置によれば、導片群を構成する複数の導片は、接続導体の表面における中心域に向けてほぼ放射方向に沿って配列されている。各導片は、中心域に向けてほぼ放射方向に変形可能とされている。従って、燃料電池装置の使用期間が長期にわたったとしても、接続導体とセル(アノードまたはカソード)との熱膨張差が吸収される。従って熱膨張差に起因して接続導体とセル(アノードまたはカソード)とにおける界面が損傷するのを抑制させるのに更に有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】固体酸化物形燃料電池を示す斜視図である。
【図2】固体酸化物形燃料電池の1つのセル付近を示す断面図である。
【図3】接続導体を示す平面図である。
【図4】図3のIV−IV線に沿った接続導体の断面図である。
【図5】接続導体の作製過程を示す斜視図である。
【図6】実施形態2に係り、接続導体を示す平面図である。
【図7】図6のVII−VII線に沿った接続導体の断面図である。
【図8】実施形態3に係り、導片を示す断面図である。
【図9】実施形態4に係り、導片を示す断面図である。
【図10】実施形態5に係り、導片を示す断面図である。
【図11】実施形態6に係り、導片を示す断面図である。
【図12】実施形態7に係り、導片を示す断面図である。
【図13】実施形態8に係り、導片を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施形態1)
以下、本発明の実施形態1について図1〜図5を参照して説明する。図1に示す燃料電池装置は平板型の固体酸化物形燃料電池であり、多数のセルを厚み方向に積層した平板型のセル積層体1と、セル積層体1を厚み方向つまり積層方向において挟む平板型の第1エンドプレート11および第2エンドプレート12と、セル積層体1、第1エンドプレート11および第2エンドプレート12を締結するボルトを備える締結具13とを有する。第1エンドプレート11は、燃料ガス入口14、燃料オフガス出口15と、空気であるカソードガスが供給されるカソードガス入口16、空気オフガスであるカソードオフガスが排出されるカソードオフガス出口17とをもつ。オフガスとは発電反応を経たガスを意味する。セル2は四角形をなし、X方向およびY方向の双方に延びる。
【0014】
図2はセル積層体1を構成する一つのセル構造を示す。図2に示すように、セル構造は、固体酸化物形の電解質膜21と電解質膜21をこれの厚み方向に挟むアノード22(燃料極)およびカソード23(酸化剤極)を有する平板型のセル2と、セル2をこれの厚み方向に挟む位置に設けられたセパレータ3(材質:鉄−クロム系合金等の金属)と、セパレータ3とアノード22との間に設けられた多孔質体4と、セパレータ3とカソード23との間に設けられた導電材料で形成されたインターコネクタとも呼ばれる接続導体5とを備えている。セパレータ3は、燃料ガスを分配させる流路3xをもつ。
【0015】
アノード22を形成する材料としては、金属酸化物および安定化ジルコニア系が例示される。金属酸化物としては酸化ニッケルが例示できる。カソード23を形成する材料としては、LaおよびSrを含有する酸化物セラミックスが挙げられる。かかるセラミックスとしてはLSCF(La0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3)が例示されるが、これに限定されるものではない。
【0016】
図2に示すように、互いに対向するセパレータ3間の周縁には、ガスケット60が介在しており、シールされている。セル構造は、厚み方向に貫通するように形成されたカソードガスマニホルド通路61と、カソードガスマニホルド通路61のカソードガスをカソード23に向けて供給させるカソードガス連通孔62と、発電反応に使用されたカソードオフガスをカソード23から排出させるカソードオフガス連通孔63と、厚み方向に貫通するように形成されたカソードオフガスマニホルド通路64とをもつ。同様に、セル構造は、図示しないものの、厚み方向に貫通するように形成された燃料ガスマニホルド通路と、燃料ガスマニホルド通路の燃料ガスをアノード22に向けて供給させる燃料ガス連通孔と、発電反応に使用された燃料オフガスであるアノードオフガスをアノード22から排出させるアノードオフガス連通孔と、厚み方向に貫通するように形成されたアノードオフガスマニホルド通路とをもつ。多孔質体4は連続的な細孔をもつ導電材料で形成されており、集電性機能と、燃料ガスをアノード22に分配させて供給させる機能を有する。
【0017】
接続導体5は、セル使用温度域において導電性を有する導電材料で形成されている。導電材料としては鉄系合金、クロム系合金、ニッケル系合金が挙げられる。鉄系合金としては鉄−クロム合金、鉄−クロム−ニッケル合金、鉄−ニッケル合金が挙げられる。接続導体5は、セラミックスで形成されているセル2(特にカソード23)よりも熱膨張係数が大きく、燃料電池の発電運転時において接続導体5はセル2よりも延びる。
【0018】
図3は接続導体5の平面を示し、接続導体5の表面5sに対して垂直方向から透視した状態を示す。図4は図3のIV−IV線に沿った断面を示す。図3および図4に示すように、一枚の接続導体5は、互いに対向するようにX方向に延びる辺5aと、互いに対向するようにY方向に延びる辺5bとを有する。一枚の接続導体5は、板状の導板部材50と、導板部材50に保持された断面板状をなす複数の導片51からなる導片群59を備えている。
【0019】
接続導体5の表面5sに対して垂直方向から透視するとき(図3)、導片群59を構成する複数の導片51は、それぞれ、接続導体5の表面5sにおける中心域5cに向けてほぼ放射方向(矢印R方向)に沿って配列されている。導片群59を構成する複数の導片51は、それぞれ、中心域5cに向けてほぼ放射方向(矢印R方向)に沿って変形可能とされている。
【0020】
図4および図5によれば、各導片51は、板状の接続導体5の厚み方向に延びるように第1曲成部52を介して曲成されて立起された立起部53と、立起部53の先端に第2曲成部54を介して板状の接続導体5の面方向(表面5sの面方向)とほぼ平行に延びる受けフランジ部55とを有する。図4に示すように、中心域5cの一方側(矢印A1側)においては、導片51の受けフランジ部55の先端面55eは中心域5cに向けて指向する。中心域5cの他方側(矢印A2側)においては、導片51の受けフランジ部55の先端面55eは中心域5cに向けて指向しており、中心域5cの一方側(矢印A1側)における導片51の受けフランジ部55の指向方向と反対方向に指向する。図3に示すように、接続導体5の表面5sにおける中心域5cは、接続導体5の表面5sにおけるX方向における中心域とY方向の中心域とが交差する領域である。
【0021】
図2に示すように、各導片51の先端の受けフランジ部55は、導電性接着剤56を介してカソード23の表面23sに接着されており、導片51の受けフランジ部55は導電性接着剤56を介してカソード23と電気的に導通可能とされている。導電性接着剤56としては、白金ペースト、銀パラジウム合金などが例示される。なお、導片51がセル積層方向におけるバネ性を有するときには、導片51の受けフランジ部55をカソード23の表面23sに電気的に導通可能に圧着させることにしても良い。
【0022】
導片51の作製過程について説明を加える。図5に示すように、板状の接続導体5にスリット500をコの字形状に形成する。スリット500は板状の接続導体5の導板部材50の厚み方向に貫通しており、互いに平行に沿って並走する平行なスリット501,501’と、スリット501,501’の端同士をつなぐ中間スリット502とをもつ。スリット500で区画された片部508を、第1曲成部52を介して曲成させて接続導体5の厚み方向(矢印T方向)に立起させ、板状の接続導体5の導板部材50の厚み方向に延びるように立起された立起部53と、立起部53の先端に第2曲成部54を介して曲成させて板状の接続導体5の面方向とほぼ平行に延びる受けフランジ部55とを形成する。これにより開口509をもつ1個の導片51が形成される。受けフランジ部55は中間スリット502に基づく。スリット501,501’の長さに基づいて、立起部53の長さが基本的には決定される。スリット501,501’の長さを調整すれば、立起部53の長さが基本的には調整される。他の導片51についても同様に形成する。このような導片51の作製はプレス成形により簡単に実行できる。このような導片51の一端部51eが板状の接続導体5に支持されている片持ち構造となる。
【0023】
実施形態1では、スリット501,501’がほぼ中心域5cに向いているが、詳細にはスリット501とスリット501’との中間の仮想線が中心域5cに向いている。但し、スリット501とスリット501’とは互いに平行である場合に限らず、中心域5cに近づくにつれてスリット501,501’が並走しつつ、スリット501,501’の間隔が狭くなったり、広くなったりしても良い。すなわちスリット501,501’で区画される片部508の形状が台形状となっていても良い。この場合、スリット501,501’の間の中間の仮想線が中心域5cに向いていることが好ましい。
【0024】
ところで燃料電池装置の発電運転時において、セル2は高温(例えば400〜1000℃、500〜800℃)に維持される。このとき、セル2や接続導体5の熱膨張は面方向に発生する。ここで、セル2や接続導体5の表面5sにおける中心域5cを中心としてX方向およびY方向の双方に熱膨張すると考えることができる。すなわち、燃料電池や接続導体5の表面5sにおける中心域5cを中心としてほぼ放射方向(図3に示す矢印R方向)に熱膨張を吸収させることが好ましい。厚み方向の熱膨張は無視できる。
【0025】
そこで本実施形態によれば、前述したように、接続導体5の表面5sに対して垂直方向から透視するとき(図3参照)、導片群59を構成する複数の導片51は、接続導体5の表面5sにおける中心域5cに向けてほぼ放射方向(矢印R方向)に配列されている。各導片51は、接続導体5の表面5sにおける中心域5cに向けてほぼ放射方向(矢印R方向)に容易に変形可能とされている。
【0026】
このような本実施形態によれば、接続導体5とセル2のカソード23との間における熱膨張差による変形を吸収できる。従って、燃料電池装置が長期にわたり使用されるときであっても、接続導体5とセル2のカソード23との間における熱膨張差が吸収される。かかる熱膨張差の吸収が得られるため、接続導体5の受けフランジ部55とカソード23との間における界面が損傷するのを抑制させるのに有利となる。各導片51は、板状の接続導体5の厚み方向に延びるように立起された立起部53と、立起部53の先端に第2曲成部54を介して板状の接続導体5の面方向とほぼ平行に延びる受けフランジ部55とを有する。曲成部52,54は放射方向(矢印R方向)において可撓性を高める。このため、熱膨張差に起因して接続導体5とカソード23とにおける界面が損傷するのを抑制させるのに更に有利となる。
【0027】
なお図2から理解できるように、アノード22と多孔質体4との界面、多孔質体4とセパレータ3との界面については、接合されていないため、滑りが期待できる。よって、アノード22と多孔質体4との界面における熱膨張差を吸収できる。同様に、多孔質体4とセパレータ3との界面における熱膨張差を吸収できる。セル2の積層の締結加重により多孔質体4の厚み方向に圧縮されるため、アノード22と多孔質体4との界面における接触抵抗、多孔質体4とセパレータ3との界面における接触抵抗も抑制できる。
【0028】
(実施形態2)
図6および図7は実施形態2を示す。本実施形態は前記した実施形態1と基本的には同様の構成および作用効果を有する。図6は固体酸化物形燃料電池の平面視を示す。図7は図6のVII−VIIに沿った断面を示す。図6に示すように、セル2は円形状の外輪郭2fをもち、平面視において円形状をなしている。燃料電池装置の発電運転時において、燃料電池は高温(例えば400〜1000℃)に維持される。セル2や接続導体5の熱膨張は基本的には面方向に発生する(厚み方向は無視できる)。このときセル2や接続導体5の表面5sにおける中心域5cを中心としてX方向およびY方向の双方に熱膨張すると考えることができる。従って、燃料電池や接続導体5の表面5sにおける中心域5cを中心としてほぼ放射方向(図6に示す矢印R方向)に熱膨張を吸収させることが好ましい。
【0029】
この点本実施形態によれば、前述したように、接続導体5の表面5sに対して垂直方向から透視するとき、導片群59を構成する複数の導片51は、接続導体5の表面5sにおける中心域5cに向けてほぼ放射方向(図6に示す矢印R方向)に沿って配列されている。各導片51は、接続導体5の表面5sにおける中心域5cに向けてほぼ放射方向(矢印R方向)に沿って容易に変形可能とされている。熱膨張差に起因して接続導体5の受けフランジ部55とカソード23との間における界面が損傷するのを抑制させるのに有利となる。
【0030】
図7に示すように、各導片51は、板状の接続導体5の厚み方向に延びるようにセル2に向けて立起された立起部53と、立起部53の先端に第2曲成部54を介して板状の接続導体5の面方向とほぼ平行に延びる受けフランジ部55とを有する。導体の第2曲成部54は放射方向(図6に示す矢印R方向)において可撓性を高める。このため、熱膨張差に起因して接続導体5とカソード23とにおける界面が損傷するのを抑制させるのに更に有利となる。
【0031】
(実施形態3)
図8は実施形態3を示す。本実施形態は前記した実施形態1,2と基本的には同様の構成および作用効果を有する。図8に示すように、各導片51は、板状の接続導体5の厚み方向に延びるように第1曲成部52を介してカソード23に向けて曲成されて立起された立起部53と、立起部53の先端に第2曲成部54を介して曲成されて板状の接続導体5の面方向とほぼ平行に延びる受けフランジ部55とを有する。平板状の接続導体5に対して第1曲成部52を介して曲成させた角度θ1は、95〜160°内の任意値とされている。立起部53に対して第2曲成部54を介して受けフランジ部55を曲成させた角度θ2は、85°内の任意値とされている。立起部53は、接続導体5の表面5s、カソード23の表面23sに対して傾斜している。図8に示すように、導片51は、厚み方向の断面で、ほぼZ形状とされている。このような導片51は放射方向(矢印R方向)において可撓変位量を高めることができる。このため、熱膨張差に起因して接続導体5とカソード23とにおける熱膨張差に起因する変形を吸収できる。接続導体5とカソード23とにおける界面が損傷するのを抑制させるのに更に有利となる。カソード23と受けフランジ部55との間には、導電性接着剤56が介在しており、強固に接着され導通性が確保されている。導片51の立起部53はセル2のカソード23に向けて矢印F1方向の付勢力(接続導体51の厚み方向の付勢力)を発揮するバネ性を示すため、バネ性により導片51の受けフランジ部55をカソード23の表面23sに圧着させることができる。このためカソード23と受けフランジ部55との間における導電性接着剤56を廃止させることもできる。
【0032】
(実施形態4)
図9は実施形態4を示す。本実施形態は前記した実施形態1,2と基本的には同様の構成および作用効果を有する。図9に示すように、各導片51は、板状の接続導体5の厚み方向に延びるように第1曲成部52を介して立起された立起部53と、立起部53の先端に第2曲成部54を介して板状の接続導体5の面方向とほぼ平行に延びる受けフランジ部55とを有する。平板状の接続導体5に対して第1曲成部52を介して立起部53をカソード23に向けて曲成させ、更に、立起部53に対して第2曲成部54を介して受けフランジ部55を曲成させている。このような導片51は放射方向(矢印R方向)において可撓変位量を高めることができる。このため、熱膨張差に起因して接続導体5とカソード23とにおける界面が損傷するのを抑制させるのに更に有利となる。導片51は、厚み方向の断面で、ほぼS形状とされている。このような導片51は放射方向(矢印R方向)において可撓変位量を高めることができる。このため、熱膨張差に起因して接続導体5とカソード23とにおける界面が損傷するのを抑制させるのに更に有利となる。導片51の立起部53は矢印F1方向(接続導体5の厚み方向)におけるバネ性を示すため、バネ性により導片51の受けフランジ部55をカソード23の表面23sに圧着させることができる。このためカソード23と受けフランジ部55との間における導電性接着剤56を廃止させることもできる。
【0033】
(実施形態5)
図10は実施形態5を示す。本実施形態は前記した実施形態1,2と基本的には同様の構成および作用効果を有する。図10に示すように、各導片51は、板状の接続導体5の厚み方向に延びるように第1曲成部52を介してほぼ垂直方向に立起された立起部53と、立起部53の先端に第2曲成部54を介して板状の接続導体5の面方向とほぼ平行に延びる受けフランジ部55とを有する。受けフランジ部55の先端面55eは中心域5cとは反対側に指向している。但し、受けフランジ部55の先端面55eは中心域5c側に指向していても良い。導片51はプレス成形等により形成できる。このような導体は放射方向(矢印R方向)において可撓変位量を高めることができる。導片51の立起部53は蛇腹部57をもち、矢印F1方向のバネ性を示すため、バネ性により導片51の受けフランジ部55をカソード23の表面23sに圧着させることができる。このためカソード23と受けフランジ部55との間における導電性接着剤56を廃止させている。但し導電性接着剤56をもちいても良い。
【0034】
(実施形態6)
図11は実施形態6を示す。本実施形態は前記した実施形態1,2と基本的には同様の構成および作用効果を有する。図11に示すように、各導片51の立起部53はプレス成形等により蛇腹構造とされている。受けフランジ部55の先端面55eは中心域5cとは反対側に指向している。導片51の立起部53は、山谷が交互に繰り返される蛇腹構造をもち、バネ性を示すため、バネ性により導片51の受けフランジ部55をカソード23の表面23sに圧着させることができる。このためカソード23と受けフランジ部55との間における導電性接着剤56を廃止させている。但し導電性接着剤56をもちいても良い。
【0035】
(実施形態7)
図12は実施形態7を示す。本実施形態は前記した実施形態1,2と基本的には同様の構成および作用効果を有する。図12に示すように、接続導体5は、板状をなす導板部材50と、導板部材50に溶接部などの結合部58で結合された断面でほぼZ形状の複数の導片51とを備えている。スリットは形成されていない。
【0036】
(実施形態8)
図13は実施形態8を示す。本実施形態は前記した実施形態1,2と基本的には同様の構成および作用効果を有する。図13に示すように、接続導体5は、導板部材50と、導板部材50のうちセル2側の表面に溶接部などの結合部58で結合された断面でほぼS形状の複数の導片51とを備えている。スリットは形成されていない。
【0037】
(その他)
実施形態1によれば、アノード22と多孔質体4との界面、多孔質体4とセパレータ3との界面については、接続導体5が設けられていないが、設けることにしても良い。燃料電池装置は固体酸化物形燃料電池に限定されず、高温領域や中温領域で発電する燃料電池に適用できる。場合によっては、固体高分子形燃料電池に適用を排除するものではない。本発明は上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。
【0038】
(付記項)
(i)イオン伝導性をもつ電解質膜と電解質膜をこれの厚み方向に挟むアノードおよびカソードを有するセルと、(ii)セルをこれの厚み方向に挟む位置に設けられたセパレータと、(iii)アノード側のセパレータとアノードとの間、および/または、カソード側のセパレータとカソードとの間に設けられ、導電材料で形成された接続導体とを具備しており、(iv)接続導体は、セル使用温度域において導電性を有する導電材料で形成された断面板状をなす複数の導片からなる導片群を備えており、導片群を構成する複数の導片は、それぞれ、接続導体をこれの厚み方向に貫通するように形成されたスリットを介して接続導体の厚み方向において立起され且つセルのカソードまたはアノードに対面可能な立起部を備えている燃料電池装置。導電性を有する接続導体と導片の立起部とを一体的に形成でき、導片の強度が確保され易い。各導片にバネ性を持たせることもできる。
【符号の説明】
【0039】
1はセル積層体、11,12はエンドプレート、13は締結具、2はセル、21は電解質膜、22はアノード、23はカソード、3はセパレータ、4は多孔質体、5は接続導体、5cは中心域、500はスリット、50は導板部材、51は導片、52,54は曲成部、56は導電性接着剤、59は導片群を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は平板型燃料電池装置に関する。
【背景技術】
【0002】
平板型燃料電池装置の従来技術について、中温領域または高温領域に加熱された状態で使用される固体酸化物形燃料電池装置を例にとって説明する。この燃料電池装置は、固体酸化物の電解質膜と電解質膜をこれの厚み方向に挟むアノードおよびカソードを有するセルと、セルをこれの厚み方向に挟む位置に設けられたセパレータと、セパレータとカソードとの間に設けられた導電材料で形成された集電機能をもつインターコネクタとも呼ばれる接続導体とを備える(特許文献1)。固体酸化物形燃料電池の使用温度は固体高分子形燃料電池に比較して高温である。更に、接続導体とカソードとが広い面積で密着しているため、両者の間における熱膨張差を効率よく吸収できず、使用期間が長期にわたると、接続導体とカソードとの接合界面が劣化するおそれがある。
【0003】
そこで熱膨張差を吸収できる固体酸化物形燃料電池装置として、多数の突状部が形成された一対の電極板を酸素イオン伝導性固体電解質膜の表裏面の多孔性電極に当接させた構造をもつものが知られている(特許文献2)。更に、セパレータに断面で波状とされた波状部を形成し、波状部をセルのカソードやアノードにあてがう構造をもつものが知られている(特許文献3)。また、セルのカソードとカソード側のセパレータとの間に断面波状部の導片を複数個、ろう付けで結合させた燃料電池スタックが知られている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−99308号公報
【特許文献2】特開2006−331944号公報
【特許文献3】特開2005−317241号公報
【特許文献4】国際公開2005−013405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来技術によれば、接続導体とセルとは材料が相違するため、燃料電池装置の発電運転時には、接続導体とセルとの熱膨張差が発生するが、この熱膨張差を解消させるには、必ずしも充分ではなく、燃料電池装置が長期にわたり使用されると、熱膨張差に起因して接続導体における界面が損傷するおそれがある。本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、熱膨張差に起因して接続導体における界面が損傷するのを抑制させるのに有利な燃料電池装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の様相1に係る燃料電池装置は、(i)イオン伝導性をもつ電解質膜と電解質膜をこれの厚み方向に挟むアノードおよびカソードを有するセルと、(ii)セルをこれの厚み方向に挟む位置に設けられたセパレータと、(iii)アノード側のセパレータとアノードとの間、および/または、カソード側のセパレータとカソードとの間に設けられ、導電材料で形成された接続導体とを具備しており、(iv)接続導体は、セル使用温度域において導電性を有する導電材料で形成された断面板状をなす複数の導片からなる導片群を備えており、接続導体の表面に対して垂直方向から透視するとき、導片群を構成する複数の導片は、接続導体の表面における中心域に向けてほぼ放射方向に沿って配列されている。
【0007】
本様相によれば、接続導体の表面に対して垂直方向から透視するとき、導片群を構成する複数の導片は、接続導体の表面における中心域に向けてほぼ放射方向に沿って配列されている。各導片は、接続導体の表面における中心域に向けてほぼ放射方向に変形可能とされている。熱膨張差に起因する変形を抑制できる。従って、熱膨張差に起因して接続導体とセル(アノードまたはカソード)とにおける界面が損傷するのを抑制させるのに、更に有利となる。燃料電池は、中温域または高温域で使用される固体酸化物形燃料電池が好ましいが、場合によっては、固体高分子形燃料電池でも良い。ほぼ放射方向とは、接続導体の表面における中心域に向けて基本的には放射する方向に指向する方向を意味する。中心域はX方向およびY方向の中心域をいい、必ずしも中心点でなくても良い。
【0008】
(2)本発明の様相2に係る燃料電池装置によれば、上記様相において、導片は、セルの厚み方向に沿った断面において導片の可撓性を高める曲成部を備えている。導片の曲成部は可撓性を示す。従って、各導片は、接続導体の表面における中心域に向けてほぼ放射方向に高い変形可能性を発揮する。このため、熱膨張差に起因して接続導体とセルとの界面が損傷するのを抑制させるのに更に有利となる。
【0009】
(3)本発明の様相2に係る燃料電池装置によれば、上記様相において、接続導体は、複数のスリットを有する導板部材と、導板部材に各スリットを介して導板部材の部位を導板部材から部分的に立起させて形成された複数の導片からなる導片群とを備えている。立起した導片は高い変形性を示す。このため、熱膨張差に起因して接続導体とセルとの界面が損傷するのを抑制させるのに更に有利となる。
【0010】
(4)本発明の様相2に係る燃料電池装置によれば、上記様相において、接続導体は、導板部材と、導板部材に結合された複数の導片からなる導片群とを備えている。導片は高い変形性を示す。従って、各導片は、接続導体の表面における中心域に向けてほぼ放射方向に高い変形可能性を発揮する。このため、熱膨張差に起因して接続導体とセルとの界面が損傷するのを抑制させるのに更に有利となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る燃料電池装置によれば、導片群を構成する複数の導片は、接続導体の表面における中心域に向けてほぼ放射方向に沿って配列されている。各導片は、中心域に向けてほぼ放射方向に変形可能とされている。従って、燃料電池装置の使用期間が長期にわたったとしても、接続導体とセル(アノードまたはカソード)との熱膨張差が吸収される。従って熱膨張差に起因して接続導体とセル(アノードまたはカソード)とにおける界面が損傷するのを抑制させるのに更に有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】固体酸化物形燃料電池を示す斜視図である。
【図2】固体酸化物形燃料電池の1つのセル付近を示す断面図である。
【図3】接続導体を示す平面図である。
【図4】図3のIV−IV線に沿った接続導体の断面図である。
【図5】接続導体の作製過程を示す斜視図である。
【図6】実施形態2に係り、接続導体を示す平面図である。
【図7】図6のVII−VII線に沿った接続導体の断面図である。
【図8】実施形態3に係り、導片を示す断面図である。
【図9】実施形態4に係り、導片を示す断面図である。
【図10】実施形態5に係り、導片を示す断面図である。
【図11】実施形態6に係り、導片を示す断面図である。
【図12】実施形態7に係り、導片を示す断面図である。
【図13】実施形態8に係り、導片を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施形態1)
以下、本発明の実施形態1について図1〜図5を参照して説明する。図1に示す燃料電池装置は平板型の固体酸化物形燃料電池であり、多数のセルを厚み方向に積層した平板型のセル積層体1と、セル積層体1を厚み方向つまり積層方向において挟む平板型の第1エンドプレート11および第2エンドプレート12と、セル積層体1、第1エンドプレート11および第2エンドプレート12を締結するボルトを備える締結具13とを有する。第1エンドプレート11は、燃料ガス入口14、燃料オフガス出口15と、空気であるカソードガスが供給されるカソードガス入口16、空気オフガスであるカソードオフガスが排出されるカソードオフガス出口17とをもつ。オフガスとは発電反応を経たガスを意味する。セル2は四角形をなし、X方向およびY方向の双方に延びる。
【0014】
図2はセル積層体1を構成する一つのセル構造を示す。図2に示すように、セル構造は、固体酸化物形の電解質膜21と電解質膜21をこれの厚み方向に挟むアノード22(燃料極)およびカソード23(酸化剤極)を有する平板型のセル2と、セル2をこれの厚み方向に挟む位置に設けられたセパレータ3(材質:鉄−クロム系合金等の金属)と、セパレータ3とアノード22との間に設けられた多孔質体4と、セパレータ3とカソード23との間に設けられた導電材料で形成されたインターコネクタとも呼ばれる接続導体5とを備えている。セパレータ3は、燃料ガスを分配させる流路3xをもつ。
【0015】
アノード22を形成する材料としては、金属酸化物および安定化ジルコニア系が例示される。金属酸化物としては酸化ニッケルが例示できる。カソード23を形成する材料としては、LaおよびSrを含有する酸化物セラミックスが挙げられる。かかるセラミックスとしてはLSCF(La0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3)が例示されるが、これに限定されるものではない。
【0016】
図2に示すように、互いに対向するセパレータ3間の周縁には、ガスケット60が介在しており、シールされている。セル構造は、厚み方向に貫通するように形成されたカソードガスマニホルド通路61と、カソードガスマニホルド通路61のカソードガスをカソード23に向けて供給させるカソードガス連通孔62と、発電反応に使用されたカソードオフガスをカソード23から排出させるカソードオフガス連通孔63と、厚み方向に貫通するように形成されたカソードオフガスマニホルド通路64とをもつ。同様に、セル構造は、図示しないものの、厚み方向に貫通するように形成された燃料ガスマニホルド通路と、燃料ガスマニホルド通路の燃料ガスをアノード22に向けて供給させる燃料ガス連通孔と、発電反応に使用された燃料オフガスであるアノードオフガスをアノード22から排出させるアノードオフガス連通孔と、厚み方向に貫通するように形成されたアノードオフガスマニホルド通路とをもつ。多孔質体4は連続的な細孔をもつ導電材料で形成されており、集電性機能と、燃料ガスをアノード22に分配させて供給させる機能を有する。
【0017】
接続導体5は、セル使用温度域において導電性を有する導電材料で形成されている。導電材料としては鉄系合金、クロム系合金、ニッケル系合金が挙げられる。鉄系合金としては鉄−クロム合金、鉄−クロム−ニッケル合金、鉄−ニッケル合金が挙げられる。接続導体5は、セラミックスで形成されているセル2(特にカソード23)よりも熱膨張係数が大きく、燃料電池の発電運転時において接続導体5はセル2よりも延びる。
【0018】
図3は接続導体5の平面を示し、接続導体5の表面5sに対して垂直方向から透視した状態を示す。図4は図3のIV−IV線に沿った断面を示す。図3および図4に示すように、一枚の接続導体5は、互いに対向するようにX方向に延びる辺5aと、互いに対向するようにY方向に延びる辺5bとを有する。一枚の接続導体5は、板状の導板部材50と、導板部材50に保持された断面板状をなす複数の導片51からなる導片群59を備えている。
【0019】
接続導体5の表面5sに対して垂直方向から透視するとき(図3)、導片群59を構成する複数の導片51は、それぞれ、接続導体5の表面5sにおける中心域5cに向けてほぼ放射方向(矢印R方向)に沿って配列されている。導片群59を構成する複数の導片51は、それぞれ、中心域5cに向けてほぼ放射方向(矢印R方向)に沿って変形可能とされている。
【0020】
図4および図5によれば、各導片51は、板状の接続導体5の厚み方向に延びるように第1曲成部52を介して曲成されて立起された立起部53と、立起部53の先端に第2曲成部54を介して板状の接続導体5の面方向(表面5sの面方向)とほぼ平行に延びる受けフランジ部55とを有する。図4に示すように、中心域5cの一方側(矢印A1側)においては、導片51の受けフランジ部55の先端面55eは中心域5cに向けて指向する。中心域5cの他方側(矢印A2側)においては、導片51の受けフランジ部55の先端面55eは中心域5cに向けて指向しており、中心域5cの一方側(矢印A1側)における導片51の受けフランジ部55の指向方向と反対方向に指向する。図3に示すように、接続導体5の表面5sにおける中心域5cは、接続導体5の表面5sにおけるX方向における中心域とY方向の中心域とが交差する領域である。
【0021】
図2に示すように、各導片51の先端の受けフランジ部55は、導電性接着剤56を介してカソード23の表面23sに接着されており、導片51の受けフランジ部55は導電性接着剤56を介してカソード23と電気的に導通可能とされている。導電性接着剤56としては、白金ペースト、銀パラジウム合金などが例示される。なお、導片51がセル積層方向におけるバネ性を有するときには、導片51の受けフランジ部55をカソード23の表面23sに電気的に導通可能に圧着させることにしても良い。
【0022】
導片51の作製過程について説明を加える。図5に示すように、板状の接続導体5にスリット500をコの字形状に形成する。スリット500は板状の接続導体5の導板部材50の厚み方向に貫通しており、互いに平行に沿って並走する平行なスリット501,501’と、スリット501,501’の端同士をつなぐ中間スリット502とをもつ。スリット500で区画された片部508を、第1曲成部52を介して曲成させて接続導体5の厚み方向(矢印T方向)に立起させ、板状の接続導体5の導板部材50の厚み方向に延びるように立起された立起部53と、立起部53の先端に第2曲成部54を介して曲成させて板状の接続導体5の面方向とほぼ平行に延びる受けフランジ部55とを形成する。これにより開口509をもつ1個の導片51が形成される。受けフランジ部55は中間スリット502に基づく。スリット501,501’の長さに基づいて、立起部53の長さが基本的には決定される。スリット501,501’の長さを調整すれば、立起部53の長さが基本的には調整される。他の導片51についても同様に形成する。このような導片51の作製はプレス成形により簡単に実行できる。このような導片51の一端部51eが板状の接続導体5に支持されている片持ち構造となる。
【0023】
実施形態1では、スリット501,501’がほぼ中心域5cに向いているが、詳細にはスリット501とスリット501’との中間の仮想線が中心域5cに向いている。但し、スリット501とスリット501’とは互いに平行である場合に限らず、中心域5cに近づくにつれてスリット501,501’が並走しつつ、スリット501,501’の間隔が狭くなったり、広くなったりしても良い。すなわちスリット501,501’で区画される片部508の形状が台形状となっていても良い。この場合、スリット501,501’の間の中間の仮想線が中心域5cに向いていることが好ましい。
【0024】
ところで燃料電池装置の発電運転時において、セル2は高温(例えば400〜1000℃、500〜800℃)に維持される。このとき、セル2や接続導体5の熱膨張は面方向に発生する。ここで、セル2や接続導体5の表面5sにおける中心域5cを中心としてX方向およびY方向の双方に熱膨張すると考えることができる。すなわち、燃料電池や接続導体5の表面5sにおける中心域5cを中心としてほぼ放射方向(図3に示す矢印R方向)に熱膨張を吸収させることが好ましい。厚み方向の熱膨張は無視できる。
【0025】
そこで本実施形態によれば、前述したように、接続導体5の表面5sに対して垂直方向から透視するとき(図3参照)、導片群59を構成する複数の導片51は、接続導体5の表面5sにおける中心域5cに向けてほぼ放射方向(矢印R方向)に配列されている。各導片51は、接続導体5の表面5sにおける中心域5cに向けてほぼ放射方向(矢印R方向)に容易に変形可能とされている。
【0026】
このような本実施形態によれば、接続導体5とセル2のカソード23との間における熱膨張差による変形を吸収できる。従って、燃料電池装置が長期にわたり使用されるときであっても、接続導体5とセル2のカソード23との間における熱膨張差が吸収される。かかる熱膨張差の吸収が得られるため、接続導体5の受けフランジ部55とカソード23との間における界面が損傷するのを抑制させるのに有利となる。各導片51は、板状の接続導体5の厚み方向に延びるように立起された立起部53と、立起部53の先端に第2曲成部54を介して板状の接続導体5の面方向とほぼ平行に延びる受けフランジ部55とを有する。曲成部52,54は放射方向(矢印R方向)において可撓性を高める。このため、熱膨張差に起因して接続導体5とカソード23とにおける界面が損傷するのを抑制させるのに更に有利となる。
【0027】
なお図2から理解できるように、アノード22と多孔質体4との界面、多孔質体4とセパレータ3との界面については、接合されていないため、滑りが期待できる。よって、アノード22と多孔質体4との界面における熱膨張差を吸収できる。同様に、多孔質体4とセパレータ3との界面における熱膨張差を吸収できる。セル2の積層の締結加重により多孔質体4の厚み方向に圧縮されるため、アノード22と多孔質体4との界面における接触抵抗、多孔質体4とセパレータ3との界面における接触抵抗も抑制できる。
【0028】
(実施形態2)
図6および図7は実施形態2を示す。本実施形態は前記した実施形態1と基本的には同様の構成および作用効果を有する。図6は固体酸化物形燃料電池の平面視を示す。図7は図6のVII−VIIに沿った断面を示す。図6に示すように、セル2は円形状の外輪郭2fをもち、平面視において円形状をなしている。燃料電池装置の発電運転時において、燃料電池は高温(例えば400〜1000℃)に維持される。セル2や接続導体5の熱膨張は基本的には面方向に発生する(厚み方向は無視できる)。このときセル2や接続導体5の表面5sにおける中心域5cを中心としてX方向およびY方向の双方に熱膨張すると考えることができる。従って、燃料電池や接続導体5の表面5sにおける中心域5cを中心としてほぼ放射方向(図6に示す矢印R方向)に熱膨張を吸収させることが好ましい。
【0029】
この点本実施形態によれば、前述したように、接続導体5の表面5sに対して垂直方向から透視するとき、導片群59を構成する複数の導片51は、接続導体5の表面5sにおける中心域5cに向けてほぼ放射方向(図6に示す矢印R方向)に沿って配列されている。各導片51は、接続導体5の表面5sにおける中心域5cに向けてほぼ放射方向(矢印R方向)に沿って容易に変形可能とされている。熱膨張差に起因して接続導体5の受けフランジ部55とカソード23との間における界面が損傷するのを抑制させるのに有利となる。
【0030】
図7に示すように、各導片51は、板状の接続導体5の厚み方向に延びるようにセル2に向けて立起された立起部53と、立起部53の先端に第2曲成部54を介して板状の接続導体5の面方向とほぼ平行に延びる受けフランジ部55とを有する。導体の第2曲成部54は放射方向(図6に示す矢印R方向)において可撓性を高める。このため、熱膨張差に起因して接続導体5とカソード23とにおける界面が損傷するのを抑制させるのに更に有利となる。
【0031】
(実施形態3)
図8は実施形態3を示す。本実施形態は前記した実施形態1,2と基本的には同様の構成および作用効果を有する。図8に示すように、各導片51は、板状の接続導体5の厚み方向に延びるように第1曲成部52を介してカソード23に向けて曲成されて立起された立起部53と、立起部53の先端に第2曲成部54を介して曲成されて板状の接続導体5の面方向とほぼ平行に延びる受けフランジ部55とを有する。平板状の接続導体5に対して第1曲成部52を介して曲成させた角度θ1は、95〜160°内の任意値とされている。立起部53に対して第2曲成部54を介して受けフランジ部55を曲成させた角度θ2は、85°内の任意値とされている。立起部53は、接続導体5の表面5s、カソード23の表面23sに対して傾斜している。図8に示すように、導片51は、厚み方向の断面で、ほぼZ形状とされている。このような導片51は放射方向(矢印R方向)において可撓変位量を高めることができる。このため、熱膨張差に起因して接続導体5とカソード23とにおける熱膨張差に起因する変形を吸収できる。接続導体5とカソード23とにおける界面が損傷するのを抑制させるのに更に有利となる。カソード23と受けフランジ部55との間には、導電性接着剤56が介在しており、強固に接着され導通性が確保されている。導片51の立起部53はセル2のカソード23に向けて矢印F1方向の付勢力(接続導体51の厚み方向の付勢力)を発揮するバネ性を示すため、バネ性により導片51の受けフランジ部55をカソード23の表面23sに圧着させることができる。このためカソード23と受けフランジ部55との間における導電性接着剤56を廃止させることもできる。
【0032】
(実施形態4)
図9は実施形態4を示す。本実施形態は前記した実施形態1,2と基本的には同様の構成および作用効果を有する。図9に示すように、各導片51は、板状の接続導体5の厚み方向に延びるように第1曲成部52を介して立起された立起部53と、立起部53の先端に第2曲成部54を介して板状の接続導体5の面方向とほぼ平行に延びる受けフランジ部55とを有する。平板状の接続導体5に対して第1曲成部52を介して立起部53をカソード23に向けて曲成させ、更に、立起部53に対して第2曲成部54を介して受けフランジ部55を曲成させている。このような導片51は放射方向(矢印R方向)において可撓変位量を高めることができる。このため、熱膨張差に起因して接続導体5とカソード23とにおける界面が損傷するのを抑制させるのに更に有利となる。導片51は、厚み方向の断面で、ほぼS形状とされている。このような導片51は放射方向(矢印R方向)において可撓変位量を高めることができる。このため、熱膨張差に起因して接続導体5とカソード23とにおける界面が損傷するのを抑制させるのに更に有利となる。導片51の立起部53は矢印F1方向(接続導体5の厚み方向)におけるバネ性を示すため、バネ性により導片51の受けフランジ部55をカソード23の表面23sに圧着させることができる。このためカソード23と受けフランジ部55との間における導電性接着剤56を廃止させることもできる。
【0033】
(実施形態5)
図10は実施形態5を示す。本実施形態は前記した実施形態1,2と基本的には同様の構成および作用効果を有する。図10に示すように、各導片51は、板状の接続導体5の厚み方向に延びるように第1曲成部52を介してほぼ垂直方向に立起された立起部53と、立起部53の先端に第2曲成部54を介して板状の接続導体5の面方向とほぼ平行に延びる受けフランジ部55とを有する。受けフランジ部55の先端面55eは中心域5cとは反対側に指向している。但し、受けフランジ部55の先端面55eは中心域5c側に指向していても良い。導片51はプレス成形等により形成できる。このような導体は放射方向(矢印R方向)において可撓変位量を高めることができる。導片51の立起部53は蛇腹部57をもち、矢印F1方向のバネ性を示すため、バネ性により導片51の受けフランジ部55をカソード23の表面23sに圧着させることができる。このためカソード23と受けフランジ部55との間における導電性接着剤56を廃止させている。但し導電性接着剤56をもちいても良い。
【0034】
(実施形態6)
図11は実施形態6を示す。本実施形態は前記した実施形態1,2と基本的には同様の構成および作用効果を有する。図11に示すように、各導片51の立起部53はプレス成形等により蛇腹構造とされている。受けフランジ部55の先端面55eは中心域5cとは反対側に指向している。導片51の立起部53は、山谷が交互に繰り返される蛇腹構造をもち、バネ性を示すため、バネ性により導片51の受けフランジ部55をカソード23の表面23sに圧着させることができる。このためカソード23と受けフランジ部55との間における導電性接着剤56を廃止させている。但し導電性接着剤56をもちいても良い。
【0035】
(実施形態7)
図12は実施形態7を示す。本実施形態は前記した実施形態1,2と基本的には同様の構成および作用効果を有する。図12に示すように、接続導体5は、板状をなす導板部材50と、導板部材50に溶接部などの結合部58で結合された断面でほぼZ形状の複数の導片51とを備えている。スリットは形成されていない。
【0036】
(実施形態8)
図13は実施形態8を示す。本実施形態は前記した実施形態1,2と基本的には同様の構成および作用効果を有する。図13に示すように、接続導体5は、導板部材50と、導板部材50のうちセル2側の表面に溶接部などの結合部58で結合された断面でほぼS形状の複数の導片51とを備えている。スリットは形成されていない。
【0037】
(その他)
実施形態1によれば、アノード22と多孔質体4との界面、多孔質体4とセパレータ3との界面については、接続導体5が設けられていないが、設けることにしても良い。燃料電池装置は固体酸化物形燃料電池に限定されず、高温領域や中温領域で発電する燃料電池に適用できる。場合によっては、固体高分子形燃料電池に適用を排除するものではない。本発明は上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。
【0038】
(付記項)
(i)イオン伝導性をもつ電解質膜と電解質膜をこれの厚み方向に挟むアノードおよびカソードを有するセルと、(ii)セルをこれの厚み方向に挟む位置に設けられたセパレータと、(iii)アノード側のセパレータとアノードとの間、および/または、カソード側のセパレータとカソードとの間に設けられ、導電材料で形成された接続導体とを具備しており、(iv)接続導体は、セル使用温度域において導電性を有する導電材料で形成された断面板状をなす複数の導片からなる導片群を備えており、導片群を構成する複数の導片は、それぞれ、接続導体をこれの厚み方向に貫通するように形成されたスリットを介して接続導体の厚み方向において立起され且つセルのカソードまたはアノードに対面可能な立起部を備えている燃料電池装置。導電性を有する接続導体と導片の立起部とを一体的に形成でき、導片の強度が確保され易い。各導片にバネ性を持たせることもできる。
【符号の説明】
【0039】
1はセル積層体、11,12はエンドプレート、13は締結具、2はセル、21は電解質膜、22はアノード、23はカソード、3はセパレータ、4は多孔質体、5は接続導体、5cは中心域、500はスリット、50は導板部材、51は導片、52,54は曲成部、56は導電性接着剤、59は導片群を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン伝導性をもつ電解質膜と前記電解質膜をこれの厚み方向に挟むアノードおよびカソードを有するセルと、
前記セルをこれの厚み方向に挟む位置に設けられたセパレータと、
前記アノード側の前記セパレータと前記アノードとの間、および/または、前記カソード側の前記セパレータと前記カソードとの間に設けられ、導電材料で形成された接続導体とを具備しており、
前記接続導体は、セル使用温度域において導電性を有する導電材料で形成された複数の導片からなる導片群を備えており、
前記接続導体の表面に対して垂直方向から透視するとき、前記導片群を構成する複数の前記導片は、前記接続導体の表面における中心域に向けてほぼ放射方向に沿って配列されている平板型燃料電池装置。
【請求項2】
請求項1において、前記導片は、前記セルの厚み方向に沿った断面において導片の可撓性を高める曲成部を備えている平板型燃料電池装置。
【請求項3】
請求項1または2において、前記接続導体は、複数のスリットを有する導板部材と、前記導板部材に各前記スリットを介して前記導板部材の部位を前記導板部材から部分的に立起させて形成された複数の前記導片からなる前記導片群とを備えている平板型燃料電池装置。
【請求項4】
請求項1または2において、前記接続導体は、前記導板部材と、前記導板部材に結合された複数の前記導片からなる前記導片群とを備えている平板型燃料電池装置。
【請求項1】
イオン伝導性をもつ電解質膜と前記電解質膜をこれの厚み方向に挟むアノードおよびカソードを有するセルと、
前記セルをこれの厚み方向に挟む位置に設けられたセパレータと、
前記アノード側の前記セパレータと前記アノードとの間、および/または、前記カソード側の前記セパレータと前記カソードとの間に設けられ、導電材料で形成された接続導体とを具備しており、
前記接続導体は、セル使用温度域において導電性を有する導電材料で形成された複数の導片からなる導片群を備えており、
前記接続導体の表面に対して垂直方向から透視するとき、前記導片群を構成する複数の前記導片は、前記接続導体の表面における中心域に向けてほぼ放射方向に沿って配列されている平板型燃料電池装置。
【請求項2】
請求項1において、前記導片は、前記セルの厚み方向に沿った断面において導片の可撓性を高める曲成部を備えている平板型燃料電池装置。
【請求項3】
請求項1または2において、前記接続導体は、複数のスリットを有する導板部材と、前記導板部材に各前記スリットを介して前記導板部材の部位を前記導板部材から部分的に立起させて形成された複数の前記導片からなる前記導片群とを備えている平板型燃料電池装置。
【請求項4】
請求項1または2において、前記接続導体は、前記導板部材と、前記導板部材に結合された複数の前記導片からなる前記導片群とを備えている平板型燃料電池装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−4466(P2013−4466A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137441(P2011−137441)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】
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