説明

平板表示装置及びその製造方法

【課題】優れた輝度特性及び低電圧駆動を有する平板表示装置を提供する。
【解決手段】互いに対向配置される第1基板及び第2基板、放電空間を区画する隔壁、各放電空間内に形成される蛍光体層、第2基板の一側に沿って形成されるアドレス電極、第2基板でアドレス電極を覆いながら形成される第2誘電層、第1基板でアドレス電極と交差する方向に沿って形成され、各放電空間で少なくとも一対が対向形成される表示電極及び第1基板で表示電極を覆いながら形成される第1誘電層を含み、第1誘電層は誘電層内部から放電空間に向かって成長した炭素系物質を含む。放電時炭素系物質を分離せず、平板表示装置内部でのイオンによる2次電子放出係数が増大してグロー放電に要求される電子を容易に供給することによって、放電空間内電子密度を高め、放電モード変更による放電特性及び輝度特性が顕著に向上できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は優れた輝度特性及び発光効率を示し、低い放電電圧を有する平板表示装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置は、大別して、CRTとFDPに分けられる。FDPはCRTに比べて、厚さが薄く携帯が簡便で消耗電力が小さいためCRTを代替できる代表的な表示装置として注目されている。
【0003】
FDPは、大別して、液晶表示装置(LCD)とプラズマ表示パネル(PDP)、電界放出表示装置(FED)等に分けられるが、LCDは大画面の形成が難しい反面、PDPは大画面形成に有利で、LCDの短所を補完しつつ、光増幅素子の組み込みなど、輝度向上を図ることができる。
【0004】
この中でPDPは、気体放電を通して得られたプラズマから放射した真空紫外線(VUV)が蛍光体を励起させることによって発生する赤(R)、緑(G)、青(B)の可視光を利用して、映像を表示する表示素子である。このようなPDPは、60インチ以上の超大型画面をわずか10cm以内の厚さに実現できて、CRTのような自発光表示素子であるため、色再現力及び視野角による歪み現象がない特性を有し、また、LCDなどに比べて製造工法が単純で、生産性及び原価の側面からも長所を有して、TV及び産業用平板表示装置の分野で脚光を浴びている。
【0005】
このようなPDPは、放電空間内でプラズマによって電離されたイオンが衝突した時、二次電子の放出量を増大させて輝度を向上させることが要求され、カーボンナノチューブを利用する技術が多く開発されている。
【0006】
韓国特許出願第2001−0077686号は、2次電子放出を極大化し、輝度向上及び駆動電圧を減少させるために、カーボンナノチューブを用いて2次電子増倍構造体を形成して含むプラズマ表示パネルについて開示しており、韓国特許出願第2002−0036888号は、カーボンナノチューブを用いた電子増倍積層物を備えた平板表示装置及びその製造方法について開示している。
【0007】
【特許文献1】韓国特許出願第2001−0077686号
【特許文献2】韓国特許出願第2002−0036888号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、優れた輝度特性及び低電圧駆動を有する平板表示装置を提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、前記平板表示装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、互いに対向配置される第1基板及び第2基板、前記第1基板と第2基板の間の空間に配置されて放電空間を区画する隔壁、前記各放電空間内に形成される蛍光体層、前記第2基板の一側に沿って形成されるアドレス電極、前記第2基板でアドレス電極を覆いながら形成される第2誘電層、前記第1基板で前記アドレス電極と交差する方向に沿って形成され、前記各放電空間で少なくとも一対が対向形成される表示電極、及び前記第1基板で表示電極を覆いながら形成される第1誘電層を含み、前記第1誘電層は誘電層内部から放電空間に向かって成長した炭素系物質を含むことを特徴とする平板表示装置を提供する。
【0011】
前記炭素系物質は第1誘電層外部まで成長して存在してもよい。
【0012】
また、前記平板表示装置は保護膜をさらに含み、前記炭素系物質は保護膜の外部まで成長して、放電空間に露出させてもよい。
【0013】
好ましくは、前記平板表示装置はプラズマ表示パネル(PDP)である。
【0014】
前記炭素系物質は第1誘電層の全体に分布させてもよく、表示電極が形成された領域にだけ対応して第1誘電層に分布させてもよい。
【0015】
前記炭素系物質としては、カーボンナノチューブ、グラファイトナノファイバー、カーボンナノファイバー、カーボンナノチップ、及びダイヤモンドで構成される群より選択される何れか一種以上のものを用いることができる。
【0016】
また、前記平板表示装置は前記第1誘電層上にフッ化物膜、及び酸化物膜で構成された群より選択される何れか一種以上の保護膜をさらに含むことができ、より好ましくは、MgF、CaF、LiF、MgO、Al、ZnO、CaO、SrO、SiO及びLaで構成される群より選択される何れか一つ以上の保護膜をさらに含むこともできる。
【0017】
本発明は、また、第1基板に表示電極を形成する段階、前記第1基板上の表示電極を覆うように誘電層形成組成物をコーティングした後、予備焼成して第1誘電層を形成する段階、前記第1誘電層上で炭素系物質を放電空間に向かって成長させた後、完全焼成する段階、第2基板にアドレス電極を形成する段階、前記第2基板上に前記アドレス電極を覆う第2誘電層を形成し、前記アドレス電極の間の前記第2誘電層上に放電空間を画する隔壁を形成する段階、前記放電空間内に蛍光体層を形成する段階、及び前記形成された第1基板及び第2基板を互いに付着、排気及び密封する段階を含む平板表示装置の製造方法を提供する。
【0018】
前記製造方法は、また、前記第1誘電層の形成後、フッ化物膜及び酸化物膜で構成された群より選択される何れか一種以上の保護膜を形成する段階をさらに含むこともできる。
【発明の効果】
【0019】
本発明による平板表示装置は、放電時に炭素系物質が分離されず、平板表示装置内部でのイオンによる2次電子放出係数が増大してグロー放電に要求される電子を容易に供給することによって、放電空間内電子密度を高め、放電モード変更による放電特性及び輝度特性を顕著に向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0021】
平板表示装置は、基板上に隔壁を形成してプラズマ放電空間を形成して放電することで映像を表示する。この中で、MgOなどを含む保護膜は放電空間内で2次電子を放出して効率を上げることによって電極の間に印加される放電電圧を下げて、パネル内部にある電極を保護する役割を果たす。しかし、現在の平板表示装置に用いられる保護膜は、2次電子放出係数が低いため、2次電子増倍率が低く電圧増加と輝度低化の原因となった。
【0022】
これにより、現在PDPの放電空間内でプラズマによって分離されたイオンが衝突した時、2次電子の放出量を増大させて輝度を向上させるために、カーボンナノチューブを用いることもある。
【0023】
カーボンナノチューブは、縦横比が非常に高くて(例、直径数nmに対して長さ数μm程度)、金属または半導体としての性質を有するため、カーボンナノチューブの先端部には電界が集中しやすい。また、カーボンナノチューブは抵抗が非常に低いため、前記電極に低い駆動電圧を印加しても強電界が印加されたのと同程度の電子放出を誘導できて、多量のプラズマ放電を得られると共に、形成された放電が安定化されやすい。また、カーボンナノチューブは機械的強度が大きく、化学的耐性が強くて寿命が長い。このようにカーボンナノチューブのような2次電子増倍手段をPDPに適用すると、PDP内部でのイオンによる2次電子放出係数が増大するため、優れた輝度特性、発光効率を得ることができ、放電電圧、特にアドレス電圧を減少させて、消費電力及び駆動ICの電源電圧を下げて、更に低原価の低電圧ICを使用できるため、低費用のプラズマ表示装置を製作できる。
【0024】
しかし、カーボンナノチューブを、パネルに堅固に植え付けることは容易ではない。カーボンナノチューブがしっかり植え付けられないと、放電時にカーボンナノチューブが分離し、パネル中に異物が残って異物発生率を高める。
【0025】
これに対して本発明では、平板表示装置製造時に第1誘電層を予備焼成して、炭素系物質を放電空間に向かって成長させた後に完全焼成するので、第1誘電層内に形成された微細気孔に炭素系物質が入ってパネル内に堅固に固定され、炭素系物質の放電時分離を防止し、また電子放出を極大化して、プラズマ表示パネルの輝度及び効率を向上させることで放電維持電圧を減少させることができた。
【0026】
つまり、本発明の実施形態による平板表示装置は、互いに対向配置される第1基板及び第2基板;前記第1基板と第2基板の間の空間に配置されて放電空間を画する隔壁;前記各放電空間内に形成される蛍光体層;前記第2基板の一側に沿って形成されるアドレス電極;前記第2基板にアドレス電極を覆いながら形成される第2誘電層;前記第1基板に前記アドレス電極と交差する方向に沿って形成され、前記各放電空間で少なくとも一対が対向形成される表示電極;及び前記第1基板上で表示電極を覆いながら形成される第1誘電層を含み、前記第1誘電層は誘電層内部から放電空間に向かって成長した炭素系物質を含む。
【0027】
以下、添付図を参照して本発明の多様な実施形態をより詳細に説明する。
【0028】
図1は本発明の一実施形態による平板表示装置を概略的に示した分解斜視図であり、図2と図3は図1のII−II線と並行に切断した断面図である。
【0029】
この図を参照して、平板表示装置を概略的に説明すると、本発明の一実施形態による平板表示装置は、第1基板1(以下、前面基板)と第2基板3(以下、背面基板)を互いに面対向に付着(相互縫着)し、この前面基板1と背面基板3の間に放電ガスを充填して形成される。この前面基板1と背面基板3の間に形成される空間には多数の隔壁5が配置されて、複数の放電空間7R、7G、7Bを形成する。この放電空間7R、7G、7Bの内には赤(R)、緑(G)、青(B)色の蛍光体が形成されている。
【0030】
前記前面基板1上には図面のx軸方向に沿って表示電極9、11が形成され、この表示電極9、11はy軸方向に各放電空間7R、7G、7Bに相応する間隔で配置される。そして、背面基板3上には前記表示電極9、11と交差する方向(図面のy軸方向)に沿ってアドレス電極13が形成され、このアドレス電極13は図面のx軸方向に各放電空間7R、7G、7Bに相応する間隔で配置される。つまり、表示電極9、11とアドレス電極13は各放電空間7R、7G、7Bに交差しながら対応する構造に配置される。
【0031】
このような前面基板1と背面基板3の間に備えられる隔壁5は、互いに隣接する隔壁5と平行配置されて、前面基板1と背面基板3が所定の間隔で配置されて、これらの間の空間にプラズマ放電に必要な放電空間7R、7G、7Bを区画形成する。
【0032】
図1はアドレス電極13と平行な方向(図面のy軸方向)に形成された隔壁5だけで形成される帯状隔壁構造を例示しているが、本発明の隔壁構造は前記隔壁構造に限られない。本発明の一実施形態による隔壁構造は、アドレス電極13と平行な方向(図面のy軸方向)に形成される隔壁5とこの隔壁5と交差する方向(図面のx軸方向)に形成される隔壁(図示せず)によって、放電空間7R、7G、7Bを各々独立的に閉鎖して区画する閉鎖型隔壁構造を含むこともでき、前記放電空間7R、7G、7Bを四角形に形成する閉鎖型隔壁構造と6角形及び8角形に形成する閉鎖型隔壁構造を含むこともできる。
【0033】
前記アドレス電極13は、通常背面基板3に形成されるため、本実施形態はアドレス電極13を背面基板3に形成した構成を例示しているが、本発明はこれに限定されず、アドレス電極13を前面基板1や隔壁5などに形成した構成を全て含む。前記アドレス電極13は、放電空間7R、7G、7Bに壁電荷を形成して、アドレス放電を起こすように第2誘電層15で覆われ、前記隔壁5は前記第2誘電層15上に形成される。
【0034】
前記表示電極9、11は、放電空間7R、7G、7Bの両側に対向する維持電極及び走査電極9、11で構成されて前面基板1に形成される。また、本実施形態では前面基板1に維持電極及び走査電極9、11を備えることを例示しているが、スキャン及びアドレシングのために、前面基板1に前記の表示電極9、11と別途の中間電極(図示せず)を維持電極及び走査電極9、11の間にさらに備えることもできる。
【0035】
前記維持電極及び走査電極9、11は、図1に示したように、各々透明電極9a、11aとバス電極9b、11bで形成でき、透明電極9a、11aやバス電極9b、11bのみで各々形成できる。中間電極(図示せず)が備えられる場合、製作工程を単純にするため、前記中間電極も前記維持電極及び走査電極9、11と同じ材料と構造で形成されるのが望ましい。前記透明電極9a、11aは、アドレス電極13と交差する方向(図面のx軸方向)の帯状に形成できる。
【0036】
また、前記透明電極9a、11aは放電空間7R、7G、7Bの内部で面放電を起こす部分であり、放電空間7R、7G、7Bの相当な面積を遮断するため、可視光の遮断を最少化して、輝度を確保できるように透明な材質で形成されるのが好ましく、より好ましくは、ITO(インジウム錫酸化物)電極で形成できる。
【0037】
そして、前記バス電極9b、11bは透明電極9a、11aの高い抵抗を補って電極線としての通電性を確保するためであり、導電性が優れた金属材質で形成されるのが好ましく、より好ましくはAl電極で形成できる。このようなバス電極9b、11bは、前面基板1上に形成される透明電極9a、11aに積層構造で形成されて、アドレス電極13と交差する方向(図面のx軸方向)に形成される。また、前記バス電極9b、11bは不透明材質で形成されるため、隔壁5に対応して配置され、隔壁5の幅より狭い幅で形成されて、放電空間7R、7G、7Bから発光する可視光の遮断を最少化するのが望ましい。
【0038】
前記のように形成される表示電極9、11は、壁電荷の蓄積のために第1誘電層17によって覆われる。前記第1誘電層17は、可視光の透過率を向上させるように透明誘電体で形成されるのが望ましい。
【0039】
また、前記第1誘電層17は電子増倍のために第1誘電層17から放電空間に向かって成長した炭素系物質21を含む。
【0040】
前記炭素系物質21は、第1誘電層17外部まで成長して存在できる。
【0041】
前記炭素系物質21は、第1誘電層総重量に対して40重量%以下に限って含まれるのが望ましく、0.1〜40重量%に含まれるのがさらに望ましく、5〜30重量%に含まれるのがより一層望ましい。前記含有量範囲内では優れた輝度及び効率向上効果、及び放電維持電圧減少効果を得ることができるが、前記含有量範囲を外れる場合、電子増倍効果が減少し、費用の面でも望ましくない。
【0042】
前記炭素系物質21は、2次電子が放電空間に離脱しやすくなるために放電空間に露出することもありうる。そのために、前記炭素系物質は、第1誘電層17の全体に分布でき、表示電極が形成された領域にだけ対応して第1誘電層17に形成されてもよく、第1誘電層に特定パターンを有して形成できる。また、前記第1誘電層が上部誘電層と下部誘電層の複層構造を有して、その間に炭素系物質が介された形態で形成できる。
【0043】
前記パターニングされた炭素系物質は、第1誘電層17のパターニングによって実現できる。
【0044】
図3を参照すると、第1誘電層17は複層構造を形成する第3、第4誘電層17a、17bを含む。つまり、表示電極9、11上に第3誘電層17aが形成され、この第4誘電層17aから炭素系物質21が成長し、第4誘電層17bが前記炭素系物質21の一部を露出させるようにパターニング形成される。従って、第4誘電層17bのパターンにより、前記炭素系物質21は第4誘電層17bで覆われる部分21aと第4誘電層17bの開口パターンによって、第4誘電層17b外部に露出する部分21bが存在する。前記のように、二次電子の放出増大及び低電圧駆動のために露出される部分21bは、前記表示電極9、11の前記放電セル7Gの中心に向かう端部に対応するように形成されるのが望ましい。つまり、前記露出の部分21bは、前記各透明電極9a、11aの互いに対向する端部に対応するパターンで形成される。
【0045】
前記炭素系物質としては、カーボンナノチューブ、グラファイトナノファイバー、カーボンナノファイバー、カーボンナノチップ、及びダイヤモンドで構成される群より選択される何れか一つ以上を用いることができ、より好ましくはカーボンナノチューブを用いられる。
【0046】
前記炭素系物質は高い縦横比を有するため、炭素系物質の先端部分に電界が集中しやすくて放電電圧を減少できる。
【0047】
また、前記炭素系物質はフッ化物及び酸化物で構成される群より選択される一つ以上のコーティング物質によって表面処理できる。前記コーティング物質の具体的な例としては、MgO、MgF、CaF、LiF、Al、ZnO、CaO、SrO、SiO及びLaで構成される群より選択される何れか一つ以上である。
【0048】
このような炭素系物質は、維持電極及び走査電極9、11の中、ある一方の電極(通常、走査電極)とアドレス電極13の間のアドレシングと可視光の発光を妨げずに、二次電子の放出量をさらに増加させて消費電力に対する輝度の比、つまり、効率を向上させて輝度を良くする。
【0049】
本発明の実施形態による平板表示装置は、前記第1誘電層17の上にフッ化物膜及び酸化物膜で構成された群より選択される何れか一つ以上の保護膜19をさらに含むこともできる。より好ましくは、MgO、MgF、CaF、LiF、Al、ZnO、CaO、SrO、SiO及びLaで構成される群より選択される何れか一つ以上を含む保護膜19を一層以上さらに含むこともできる。
【0050】
前記保護膜19は、プラズマによって分離された原子のイオンが第1誘電層17に衝突して第1誘電層17を損傷させることを防止し、イオンが衝突した時に二次電子の放出を良くする。
【0051】
前記のように、前記炭素系物質21は保護膜19の外部まで成長して、放電空間に露出されることもある。
【0052】
前記構造を有する本発明の一実施形態による平板表示装置は、アドレス電極と交差する方向に並んで形成された走査及び維持電極の間に放電開示電圧以上の電圧が印加される場合、放電空間に面放電が起こるとともに、2次電子を大量に放出させる。これは走査及び維持電極間に電圧が印加されるとともに放電空間に大量のプラズマ放電状態が形成されることを意味する。これは、また、放電空間に注入された放電ガスが同じ印加電圧で従来より多くイオン化されることを意味する。従って、放電空間内でより多量の紫外線が放出されて、放出した紫外線は蛍光膜を励起させるため、蛍光膜から放出される光は従来よりずっと多くなる。従って、画像の輝度を顕著に向上される。
【0053】
本発明の一実施形態による平板表示装置は、好ましくはプラズマ表示パネルである。
【0054】
本発明の一実施形態による平板表示装置は、第1基板に表示電極を形成する段階;前記第1基板上に前記表示電極を覆うように誘電層形成組成物をコーティングした後、予備焼成して第1誘電層を形成する段階;前記第1誘電層内部から炭素系物質を放電空間に向かって成長させた後、完全焼成する段階;第2基板にアドレス電極を形成する段階;前記第2基板上に前記アドレス電極を覆う第2誘電層を形成し、前記アドレス電極の間の前記第2誘電層上に放電空間を画する隔壁を形成する段階;前記放電空間内に蛍光体層を形成する段階;及び前記形成された第1基板及び第2基板を互いに付着、排気及び密封する段階を含む製造方法によって製造できる。
【0055】
本発明の一実施形態による平板表示装置工程において、第1誘電層形成方法及び炭素系物質の植え付け方法を除いた平板表示装置の製造方法は、当該分野に周知されている内容であり、当業者には十分に理解できる内容であるため、本明細書での詳細な説明は省略する。このような実施形態は本発明を単に例示するためであり、本発明がここに限定されるものではない。
【0056】
まず、第1基板に透明電極とバス電極で構成される表示電極を形成し、この表示電極上に誘電層形成組成物をコーティングした後、予備焼成して第1誘電層を形成する。
【0057】
前記誘電層形成組成物は、通常の誘電層形成物質を含むことができ、具体的には酸化鉛、酸化ビスマスなどのガラス質系物質を含み、誘電層の白色度を増加させるために前記ガラス成分以外のアルミナ、或いはチタニアなど白色系セラミック物質をさらに含むこともできる。
【0058】
前記誘電層形成組成物を印刷法によって第1基板にコーティングしたり、またはドライフィルム法によって誘電層形成組成物から誘電層フィルムを製造した後、第1基板の上にラミネーティングして第1誘電層を形成できる。
【0059】
第1基板上に形成された第1誘電層を430〜480℃、より好ましくは450〜480℃の温度で予備焼成する。前記予備焼成によって、第1誘電層内に炭素系物質を固定できる微細気孔が形成される。予備焼成時の温度が430℃未満の場合は、焼成率が低くて誘電層内気孔の平均直径が大きくなるため炭素系物質の固定効果が低下し、また480℃を超える場合、炭素系物質の植え付け効率が低下するため望ましくない。
【0060】
次に、微細気孔が形成された第1誘電層から炭素系物質を放電空間に向かって成長させた後に完全焼成する。
【0061】
微細気孔が形成された第1誘電層に炭素系物質を植え付け方法により成長させた後、完全焼成するのがより望ましい。この時、前記炭素系物質は第1誘電層の全面に植え付けることができ、また表示電極が形成された領域にだけ対応して、第1誘電層上に植え付けできる。
【0062】
前記炭素系物質の種類及び含有量は前記の説明と同様である。
【0063】
また、前記植え付け工程は通常の方法で実施でき、好ましくは炭素系物質をスプレー噴射またはスポイト滴下法によって、第1誘電層に植え付けできる。植え付け工程時の温度及び時間は特に限定しないが、第1誘電層総重量に対して炭素系物質の含有量が40重量%以下に限って含まれるのが望ましく、0.1〜40重量%に含まれるのがさらに望ましく、5〜30重量%に含まれるのがより一層望ましい。
【0064】
前記完全焼成は520〜600℃で実施するのが望ましく、520〜580℃で実施するのがより望ましい。完全焼成時処理温度が520℃未満の場合、誘電層が完全に焼成できない恐れがあり、600℃を超える場合、炭素系物質が燃えてしまう恐れがあって望ましくない。また、前記完全焼成工程は酸素雰囲気下で実施するのがより望ましい。
【0065】
このように前記平板表示装置の製造方法は、第1誘電層を予備焼成した後、炭素系物質を放電空間に向かって成長させて完全焼成することによって、予備焼成後に誘電層内に生成された微細気孔で炭素系物質が成長し、以降完全焼成工程によって、誘電層と炭素系物質が固定される。
【0066】
以降、通常の方法によって第2基板を製造し第1基板と第2基板を付着、排気及び密封して、平板表示装置を製造できる。
【0067】
また、前記製造方法は、前記第1誘電層の形成後フッ化物膜、及び酸化物膜で構成された群より選択される何れか一つ以上の保護膜を形成する段階をさらに含むこともできる。
【0068】
具体的には、前記保護膜はMgF、CaFまたはLiFのようなフッ化物膜;及びMgO、Al、ZnO、CaO、SrO、SiO及びLaのような酸化物膜で構成される群より選択される一層以上の保護膜をさらに形成できる。
【0069】
前記保護膜の形成方法も特に限定されないが、ペーストを利用した厚膜印刷法とプラズマを利用した蒸着法で形成でき、この中で蒸着法はイオンの衝撃によるスパッタリングに相対的に強く、2次電子放出による放電維持電圧と放電開示電圧を減少させられるため望ましい。
【0070】
前記プラズマ蒸着法で保護膜を形成する方法は、マグネトロンスパッタリング法、電子ビーム蒸着法、IBAD(ion beam assisted deposition、イオンビーム支援堆積法)、CVD(chemical vapor deposition、化学気相蒸着法)、ゾル−ゲル(sol−gel)法、または蒸発する粒子をイオン化して成膜させる方法として保護膜の密着性と結晶性に対してスパッタリング法と類似特性を示すが蒸着を8nm/sの高速で行える利点を有するイオンプレーティング法(ion plating)等を用いることができ、この中でも電子ビーム蒸着法が最も望ましい。
【0071】
このように放電空間に第1誘電層内に炭素系物質を含む本発明の一実施形態による平板表示装置を利用する場合、炭素系物質が誘電層内に堅固に固定して放電時に炭素系物質が分離する恐れがなく、平板表示装置内部でのイオンによる2次電子放出係数が増大してグロー放電に要求される電子を容易に供給することによって、放電空間内電子密度を高めて、放電モード変更による放電特性及び輝度特性を顕著に向上できる。
【0072】
以下、本発明の望ましい実施形態及び比較例を記載する。
【0073】
しかし、下記の実施形態は本発明の望ましい一実施形態であり、本発明が下記の実施形態に限定されるものではない。
【0074】
[実施形態1]
ソーダ石灰ガラスで製造された前面基板上にITO(インジウム錫酸化物)をスパッタリングした後ドライフィルムレジスト(DFR)をラミネーティングした。前記DFRの上にパターン形成されたフォトマスクをさらにラミネーティングした後、高圧水銀灯を利用して露光し、NaCO0.4%アルカリ水溶液を利用して現像して乾燥して、透明電極形状にパターニングした。以降、塩酸と硝酸を利用してエッチングした後、NaOH5.0%水溶液を利用してDFRパターン部分を剥離した後、焼成して透明電極を形成した。透明電極上にAgを含む感光性バス電極形成用ペーストを塗布した。塗布されたAg含有感光性ペーストを平坦化し乾燥した後、DI(direct imaging)露光器を利用して露光した。前記乾燥と露光工程を5回以上繰り返し実施した後、NaCO0.4%アルカリ水溶液を利用して現像して焼成し、細い帯状にバス電極を形成することによって透明電極及びバス電極を含む表示電極を製造した。
【0075】
次に、28.4wt%のSiO、69.8wt%のPbO及び1.8wt%のBで構成される誘電層形成組成物を前記表示電極が形成された前面基板の全面に渡ってコーティングして400℃で予備焼成して第1誘電層内に微細気孔を形成した。以降前記第1誘電層上にカーボンナノチューブを植え付けて、酸素雰囲気下550℃で完全焼成した。
【0076】
次に保護膜蒸着室に入れてイオンプレーティング法を利用してMgOを含む保護膜を蒸着形成して、前面基板を製造した。蒸着室内部の場合、基本圧力を1×10-4Paに、蒸着形成時の圧力を5.3×10-2Paにして、酸素を100sccm(流量体積単位)で供給しながら基板を200±5℃に維持した。
【0077】
そして、背面基板にアドレス電極、第2誘電層、隔壁及び蛍光体層を形成し、これを前記表示電極、第1誘電層及び保護膜が形成された前面基板と付着し、放電空間内の空気を排気した後、400Torrの条件で放電ガスを注入してプラズマ表示パネルを製造した。
【0078】
[実施形態2]
予備焼成時の処理温度を410℃にしたことを除いては実施形態1と同様に実施して、プラズマ表示パネルを製造した。
【0079】
[実施形態3]
予備焼成時の処理温度を420℃にしたことを除いては実施形態1と同様に実施して、プラズマ表示パネルを製造した。
【0080】
[実施形態4]
予備焼成時の処理温度を440℃にしたことを除いては実施形態1と同様に実施して、プラズマ表示パネルを製造した。
【0081】
[比較例1]プラズマ表示パネルの製造
ソーダ石灰ガラスで製造された前面基板上にITO(インジウム錫酸化物)をスパッタリングした後、ドライフィルムレジスト(DFR)をラミネーティングした。前記DFRの上にパターン形成されたフォトマスクをさらにラミネーティングした後、高圧水銀灯を利用して露光して、NaCO0.4%アルカリ水溶液を利用して現像して乾燥して、透明電極を所望の形状、例えば帯状にパターニングした。以降、塩酸と硝酸を利用して、エッチングした後、NaOH5.0%水溶液を利用してDFRパターンの部分を剥離した後、焼成して透明電極を形成した。透明電極上にAgを含む感光性バス電極形成用ペーストを塗布した。塗布されたAg含有感光性ペーストを平坦化し乾燥した後、DI露光器を利用して露光した。前記乾燥と露光工程を5回以上繰り返し実施した後、NaCO0.4%アルカリ水溶液を利用して現像し焼成して帯状の透明電極上にバス電極を形成することによって透明電極及びバス電極を含む表示電極を製造した。
【0082】
次に、28.4wt%のSiO、69.8wt%のPbO及び1.8w%のBで構成される誘電層形成組成物を前記表示電極が形成された前面基板の全面に渡ってコーティングして酸素雰囲気下550℃で焼成して第1誘電層を形成した。以降前記第1誘電層上にカーボンナノチューブを植え付けた。
【0083】
次に保護膜蒸着室に入れてイオンプレーティング法を利用してMgOを含む保護膜を蒸着形成して、前面基板を製造した。蒸着室内部の場合、基本圧力を1×10-4Paに、蒸着形成時の圧力を5.3×10-2Paにして、酸素を100sccm(流量体積単位)に供給しながら基板を200±5℃に維持した。
【0084】
そして、背面基板にアドレス電極、背面誘電層、隔壁及び蛍光体層を形成し、これを前記表示電極、第1誘電層及び保護膜が形成された前面基板と縫着し放電空間内の空気を排気した後、400Torrの条件で放電ガスを注入して、プラズマ表示パネルを製造した。
【0085】
前記実施形態1〜4のプラズマ表示パネル内誘電層での炭素系物質の植え付け程度を走査電子顕微鏡(SEM)で観察した。その結果を図4a〜4dに示した。
【0086】
図4a〜4dは、各々前記実施形態1〜4でのプラズマ表示パネルの誘電層内炭素系物質に対するSEM写真である。
【0087】
図4a〜4dに示したように、予備焼成時の処理温度が440℃の実施形態4の場合、カーボンナノチューブの植え付けが最も優れていることを確認できる。
【0088】
以上を通して、本発明の望ましい実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲と発明の詳細な説明及び添付図の範囲内で多様に変形して実施するのが可能であり、これらも本発明の範囲に属する。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は優れた輝度特性及び発光効率を示し、低い放電電圧を有する平板表示装置及びその製造方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の一実施形態による平板表示装置を概略的に示した分解斜視図である。
【図2】図1のII−II線に沿って切断した断面図である。
【図3】図1のII−II線に沿って切断した断面図である。
【図4a】実施形態1のプラズマ表示パネルにおける誘電層を示す走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図4b】実施形態2のプラズマ表示パネルにおける誘電層を示す走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図4c】実施形態3のプラズマ表示パネルにおける誘電層を示す走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図4d】実施形態4のプラズマ表示パネルにおける誘電層を示す走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【符号の説明】
【0091】
1、3 基板
5 隔壁
7R、7G、7B 放電空間
9、11 表示電極
9a、11a 透明電極
9b、11b バス電極
13 アドレス電極
15、17 誘電層
19 保護膜
21 炭素系物質

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向配置される第1基板及び第2基板と;
前記第1基板と第2基板の間の空間に配置されて、放電空間を区画する隔壁と;
前記各放電空間内に形成される蛍光体層と;
前記第2基板の一側に沿って形成されるアドレス電極と;
前記第2基板において、アドレス電極を覆いながら形成される第2誘電層と;
前記第1基板で前記アドレス電極と交差する方向に沿って形成され、前記各放電空間で少なくとも一対が対向形成される表示電極と;
前記第1基板において、表示電極を覆いながら形成される第1誘電層と;
を含み、
前記第1誘電層は誘電層内部から放電空間に向かって成長した炭素系物質を含むことを特徴とする、平板表示装置。
【請求項2】
前記炭素系物質は、第1誘電層総重量に対して40重量%以下含まれることを特徴とする、請求項1に記載の平板表示装置。
【請求項3】
前記炭素系物質は、第1誘電層の全体に分布されることを特徴とする、請求項1に記載の平板表示装置。
【請求項4】
前記炭素系物質は、表示電極が形成された領域にだけ対応して、第1誘電層に分布されることを特徴とする、請求項1に記載の平板表示装置。
【請求項5】
前記炭素系物質は、第1誘電層外部まで成長して存在することを特徴とする、請求項1に記載の平板表示装置。
【請求項6】
前記炭素系物質は、植え付け法により第1誘電層内部から放電空間に向かって成長したことを特徴とする、請求項1に記載の平板表示装置。
【請求項7】
前記炭素系物質は、カーボンナノチューブ、グラファイトナノファイバー、カーボンナノファイバー、カーボンナノチップ及びダイヤモンドで構成される群より選択される一つ以上であることを特徴とする、請求項1に記載の平板表示装置。
【請求項8】
前記炭素系物質は、フッ化物及び酸化物で構成される群より選択される何れか一つ以上のコーティング物質によって表面処理されたことを特徴とする、請求項1に記載の平板表示装置。
【請求項9】
前記平板表示装置は、前記第1誘電層の上にフッ化物膜及び酸化物膜で構成された群より選択される何れか一つ以上の保護膜をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の平板表示装置。
【請求項10】
前記炭素系物質は、保護膜の外部まで成長して、放電空間に露出されたことを特徴とする、請求項9に記載の平板表示装置。
【請求項11】
前記保護膜は、MgF、CaF、LiF、MgO、Al、ZnO、CaO、SrO、SiO及びLaで構成される群より選択される何れか一つ以上を含むことを特徴とする、請求項9に記載の平板表示装置。
【請求項12】
前記平板表示装置は、プラズマ表示パネルであることを特徴とする、請求項1に記載の平板表示装置。
【請求項13】
第1基板に表示電極を形成する段階と;
前記第1基板上に前記表示電極を覆うように誘電層形成組成物をコーティングした後、予備焼成して第1誘電層を形成する段階と;
前記第1誘電層上で炭素系物質を放電空間に向かって成長させた後、完全焼成する段階と;
第2基板にアドレス電極を形成する段階と;
前記第2基板上に前記アドレス電極を覆う第2誘電層を形成し、前記アドレス電極の間の前記第2誘電層上に放電空間を画する隔壁を形成する段階と;
前記放電空間内に蛍光体層を形成する段階と;
前記形成された第1基板及び第2基板を互いに付着、排気及び密封する段階と;
を含むことを特徴とする、平板表示装置の製造方法。
【請求項14】
前記予備焼成工程は、430〜480℃の温度で実施されることを特徴とする、請求項13に記載の平板表示装置の製造方法。
【請求項15】
前記炭素系物質は、植え付け方法によって、第1誘電層上に放電空間として成長されることを特徴とする、請求項13に記載の平板表示装置の製造方法。
【請求項16】
前記完全焼成工程は、520〜600℃の温度で実施されることを特徴とする、請求項13に記載の板表示装置の製造方法。
【請求項17】
前記完全焼成工程は、酸素雰囲気下で実施されることを特徴とする、請求項13に記載の平板表示装置の製造方法。
【請求項18】
前記第1誘電層の形成後、フッ化物膜及び酸化物膜で構成された群より選択される何れか一つ以上の保護膜を形成する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項13に記載の平板表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図4d】
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【公開番号】特開2007−95700(P2007−95700A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−268562(P2006−268562)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】