説明

平版印刷版用版面保護剤及び平版印刷版の製版方法

【課題】製版後の平版印刷版の指紋跡汚れ防止効果に優れる平版印刷版用版面保護剤を提供する。
【解決手段】下記一般式(I)で表される少なくとも1種の化合物を含有することを特徴とする平版印刷版用版面保護剤。
R−O−(CHCHO)n−H (I)
(式中、Rは炭素原子数14〜22のアルキル基を表し、nはエチレンオキシド基の平均付加モル数であり、20〜60を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平版印刷版の製版に用いる版面保護剤およびそれを用いた製版方法に関する。
【背景技術】
【0002】
平版印刷版を製版する際、その最終工程で所謂ガム液が塗布される。ガム液を塗布する目的は、非画像領域の親水性を保護するのみならず、画像領域の加筆又は修正消去等の画像修正、製版後印刷するまでの期間の保存又は再使用までの保存、印刷機に取り付ける際や取り扱い中の指紋、油脂、塵埃等の付着によって引き起こされる汚れの防止及び傷の発生等からの保護であり、更に酸化汚れの発生を抑えることなど、いわゆる不感脂化処理である。
従来、平版印刷版のガム液としては、一般的にアラビアガム、セルロースガム又は分子中にカルボキシル基を有する水溶性高分子化合物と、各種界面活性剤、酸、塩基、有機溶剤、親油性物質、無機塩、錯化剤、防腐剤、消泡剤等からなる水溶液が使用されている。
【0003】
ガム液が塗布された平版印刷版は、印刷に供されるまで保管される。その保管条件により、印刷開始から正常な印刷物が得られるまでの印刷紙枚数が大きく異なることが知られている。すなわち日本の冬期間のように、低温低湿度での保管では問題ない程度の印刷紙枚数で正常な印刷物が得られるが、夏のような高温、高湿度で保管すると、正常な印刷物が得られるまでの印刷紙枚数が増えてしまう。特にガム液塗布後に版を取り扱う際には、版面に指紋がつきやすい。ついた指紋は、その後の版を高湿度で経時保管すると指紋跡が印刷されて、いわゆる指紋跡汚れになり、正常な印刷物が得られるまでの印刷紙枚数が増えてしまう大きな要因になっていた。
一般的なガム液の汚れ防止剤としては、水溶性樹脂、各種界面活性剤などが使われている(例えば特許文献1及び2参照)が、指紋跡汚れ防止に特異的に有効な成分としては、いままで知られていないのが現状であった。
【0004】
【特許文献1】特開昭58−175695号公報
【特許文献2】特開平7−52577号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、製版後の平版印刷版の指紋跡汚れ防止効果に優れる平版印刷版用版面保護剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、平版印刷版用版面保護剤に特定の化合物を含有させることによって、優れた指紋跡汚れ防止効果を発揮できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
従って本発明は、下記一般式(I)で表される少なくとも1種の化合物を含有することを特徴とする平版印刷版用版面保護剤である。
R−O−(CH2CH2O)n−H (I)
(式中、Rは炭素原子数14〜22のアルキル基を表し、nはエチレンオキシド基の平均付加モル数であり、20〜60を表す。)
本発明の好ましい実施態様として、一般式(I)においてnが30〜50、さらに好ましくはnが30〜40である化合物を含有する平版印刷版用版面保護剤がある。本発明の別の好ましい実施態様として、一般式(I)においてRが炭素原子数16又は18のアルキル基である化合物を含有する平版印刷版用版面保護剤がある。
本発明の平版印刷版用版面保護剤は、種々のタイプの感光性平版印刷版原版からの平版印刷版の製版方法に用いることができ、該感光性平版印刷版原版を画像露光及び現像処理した後、本発明の平版印刷版用版面保護剤で処理し、製版することができる。本発明の平版印刷版用版面保護剤を使用する好ましい実施態様として、支持体上に、光重合開始剤及びエチレン性不飽和結合含有化合物を含有する光重合型感光層を有する感光性平版印刷版原版を、画像露光及び現像処理した後、該平版印刷版用版面保護剤にて処理することを含む平版印刷版の製版方法が挙げられる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の版面保護剤によれば、平版印刷版の非画像領域の親水性を保護するのみならず、画像領域の加筆又は修正消去等の画像修正、製版後印刷するまでの期間の保存又は再使用までの保存、印刷機に取り付ける際や取り扱い中の、指紋、油脂、塵埃等の付着によって引き起こされる汚れを防止することができ、また、傷の発生等から版面を充分に保護することができる。本発明の版面保護剤は、特に指紋跡汚れ防止に有用であり、版に指紋が付着したとしても、印刷開始後、少ない損紙で高品質の印刷物を提供することができる。
特に、指紋には遊離脂肪酸、グリセリド、ワックスなどが含まれ、脂肪酸のアルキル鎖長は長鎖で分布が広い。それゆえ、指紋跡汚れ改良には、親和性の点で長鎖アルキルを有し、かつ印刷時に湿し水等で除去されやすいポリエチレンオキシド長鎖アルキルエーテルが望ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の平版印刷版用版面保護剤は溶液タイプ、乳化タイプのいずれとしても調製することができる。版面保護剤は先ず濃縮した形態で調製されることが一般的である。そのような濃縮液は用時に、水で適宜希釈して使用時の版面保護剤とされる。以下に記載する版面保護剤の各種成分の含有量は、使用時の版面保護剤の全質量に基づくものである。
【0009】
本発明の版面保護剤は、下記一般式(I)で表される少なくとも1種の化合物を含有することを特徴とする。
下記一般式(I)で表される少なくとも1種の化合物を含有することを特徴とする平版印刷版用版面保護剤。
R−O−(CH2CH2O)n−H (I)
(式中、Rは炭素原子数14〜22のアルキル基を表し、nはエチレンオキシド基の平均付加モル数であり、20〜60を表す。)
式中、Rが表す炭素原子数14〜22のアルキル基は、直鎖でも分岐鎖でもよい。
Rのアルキル基が炭素原子数14〜22の範囲にあると、指紋跡汚れの防止効果が充分であるとともに、濃縮型版面保護剤中での溶解性および、版面保護剤の抑泡性が良好である。Rの最も好ましい範囲は炭素原子数16〜18のアルキル基であり、特に炭素原子数16又は18のアルキル基である。Rが14未満では、指紋汚れを防止する効果が薄れ、
また22より大きいと、指紋跡汚れ防止力の劣化と版面保護剤への溶解性が劣化する。
本発明の版面保護剤中に、Rが異なる化合物を2種以上混合して用いてもよい。
また、式中、nが20〜60の範囲にあることで、指紋跡汚れを防止する効果が充分に得られ、また溶解性や抑泡性が優れる。nのより好ましい範囲は30〜50であり、最も好ましい範囲は30〜40である。nが20未満では、版面保護剤への溶解性が劣化し、また60より大きいと発泡しやすく問題になる。本発明の版面保護剤中に、異なるn数の化合物を2種以上混合して用いてもよい。
【0010】
本発明の版面保護剤中における、上記一般式(I)の化合物の含有量は、0.1〜3質量%が好適である。該含有量がこの範囲にあると、指紋跡汚れを防止する効果が充分であるとともに、版面保護剤中で析出することなく良好に溶解した状態が維持される。さらに好ましくは0.5〜1.5質量%であり、最も好ましくは0.7〜1.1質量%である。
これらの化合物は市場で一般に入手可能であり、本発明では市販品を使用することができる。市販品の具体例としては、例えば竹本油脂(株)のパイオニンシリーズ、花王(株)のエマルゲンシリーズ、日本エマルジョン(株)のエマレックスシリーズなどがある。
これらの構造は核磁気共鳴分光器、液体クロマトグラフ質量分析検出器(液体クロマトグラフ条件は逆相カラム、酢酸アンモニウムメタノール溶液と酢酸アンモニウム水溶液の混合溶離液、質量分析条件はイオン化法(エレクトロスプレーイオニゼーション法、カチオン検出))で確認することができる。一般式(I)の化合物におけるエチレンオキサイド骨格の平均付加モル数を検出する手法としては、例えばアルキル基が直鎖の場合は、プロトン核磁気共鳴分光器によればRの末端メチルのプロトンに由来するピークの面積A(H3個分)とエチレンオキサイドのプロトンに由来するピークの面積B(H4個分)により、式:n=(B÷4)/(A÷3)によって、nを求めることができる。
【0011】
本発明の版面保護剤には上記化合物の他に、更に、水溶性高分子化合物;無機酸及び/又は有機酸及び/又はそれらの塩;上記化合物以外の界面活性剤;有機溶剤;硝酸塩、硫酸塩;キレート剤;防腐剤;消泡剤などを含ませることができる。以下に各種成分について述べる。
版面保護剤には、親水性の維持や傷から版面を保護するために皮膜形成性を有する水溶性高分子化合物を加えることが好ましい。かかる水溶性高分子化合物として、例えばアラビアガム、繊維素誘導体(例えばカルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルプロピルセルロース等)及びその変性体、ポリビニルアルコール及びその誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド及びその共重合体、ビニルメチルエーテル/無水マレイン酸共重合体、酢酸ビニル/無水マレイン酸共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体、水溶性大豆多糖類、澱粉誘導体(例えばデキストリン、酵素分解デキストリン、ヒドロキシプロピル化澱粉、酵素分解デキストリン、カルボキシメチル化澱粉、リン酸エステル化澱粉、サイクロデキストリン)、プルラン及びプルラン誘導体、大豆から抽出されるヘミセルロース等があげられる。中でもアラビアガム、デキストリンといった澱粉誘導体、カルボキシメチルセルロース、大豆多糖類などが好ましく使用することができる。
これら水溶性高分子化合物の含有量は、版面保護剤の全質量に基いて0.1〜25.0質量%が適当であり、より好ましくは0.3〜20.0質量%である。
【0012】
版面保護剤は、一般的には酸性領域pH2〜6の範囲で使用する方が有利である。そのようなpHにするためには一般的には版面保護剤中に鉱酸、有機酸、又はそれらの塩を添加し調節する。かかるpH調整剤としては、例えば鉱酸としては硝酸、硫酸、燐酸、メタ燐酸、ポリ燐酸などが挙げられる。有機酸としては酢酸、蓚酸、クエン酸、リンゴ酸、マロン酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸、乳酸、レプリン酸、フィチン酸、有機ホスホン酸などが挙げられる。好ましく使用できる塩として、燐酸水素二ナトリウム、燐酸水素二カリウム、燐酸水素二アンモニウム、燐酸二水素ナトリウム、燐酸二水素カリウム、燐酸二水素アンモニウム、ピロ燐酸カリウム、ヘキサメタ燐酸ナトリウム、トリポリ燐酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム、硫酸ナトリウムなどがある。鉱酸、有機酸又はそれらの塩から1種単独で使用してもよいし、あるいは2種以上を併用してもよい。その添加量は版面保護剤の全質量に基いて、般に0.01〜3.0質量%程度である。
【0013】
版面保護剤にはさらに界面活性剤を含めてもよく、例えばアニオン界面活性剤及び/又はノニオン界面活性剤が挙げられる。アニオン界面活性剤としては、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルジフェニルエーテルモノまたはジスルホン酸塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム類、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩類、石油スルホン酸塩類、硫酸化ヒマシ油、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸エステル塩類、スチレン−無水マレイン酸共重合物の部分ケン化物類、オレフィン−無水マレイン酸共重合物の部分ケン化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類等が挙げられる。これらの中でもジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキル硫酸エステル塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類およびアルキルジフェニルエーテルモノまたはジスルホン酸塩類が特に好ましく用いられる。
【0014】
また、ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンヒマシ油エーテル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシドなどが挙げられる。その中でもポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ポリオキシエチレンヒマシ油エーテル等が好ましく用いられる。
また、アセチレングリコール系とアセチレンアルコール系のオキシエチレン付加物、フッ素系、シリコン系等のアニオン、ノニオン界面活性剤も同様に使用することができる。
【0015】
これら界面活性剤は2種以上併用することもできる。例えば、互いに異なる2種以上のアニオン界面活性剤の併用やアニオン界面活性剤とノニオン界面活性剤の併用が好ましい。これらの化合物は環境面への影響を考慮して適宜選択して使用することが好ましい。
上記の界面活性剤の使用量は特に限定する必要はないが、好ましくは版面保護剤中に0.01〜20質量%である。
【0016】
版面保護剤には、画像部の感脂性を保護するために沸点130℃以上の有機溶剤を添加することができる。この種の有機溶剤は一方で非画像部親水性層上に付着している微量の残量の感光膜を除去し、非画像部の親水性を高める効果を発揮する働きをする。使用される沸点130℃以上の有機溶剤の具体例として、アルコール類としては、n-ヘキサノール、2-エチルブタノール、n-ヘプタノール、2-ヘプタノール、3-ヘプタノール、2-オクタノール、2-エチルヘキサノール、3,5,5-トリメチルヘキサノール、ノナノール、n-デカノール、ウンデカノール、n-ドデカノール、トリメチルノニルアルコール、テトラデカノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール等が挙げられる。ケトン類としてはメチル-n-アミルケトン、メチル-n-ヘキシルケトン、エチル-n-ブチルケトン、ジ-n-プロピルケトン、ジアセトンアルコール、シクロヘキサノン等が挙げられる。エステル類としては酢酸-n-アミル、酢酸イソアミル、酢酸メチルイソアミル、酢酸メトキシブチル、酢酸ベンジル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸-n-アミル、安息香酸メチル、安息香酸エチル及び安息香酸ベンジルなどの安息香酸エステル類、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸-ジ-2-エチルヘキシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジデシル、フタル酸ジラウリル、フタル酸ブチルベンジルなどのフタル酸ジエステル類、ジオクチルアジペート、ブチルグリコールアジペート、ジオクチルアゼレート、ジブチルセバケート、ジ(2−エチルヘキシル)セバケート、ジオクチルセバケートなどの脂肪族二塩基酸エステル類、例えばエポキシ化大豆油などのエポキシ化トリグリセライド類、トリクレジルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリスクロルエチルホスフェートなどの燐酸エステル類等が挙げられる。
【0017】
多価アルコール類及びその誘導体としてはエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールイソアミルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、エチレングリコールベンジルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、メトキシエタノール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、1−ブトキシエトキシプロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールプロパン、グリセリンモノアセテート、グリセリントリアセテート類を挙げることができる。
炭化水素系としては沸点160℃以上の石油留分の芳香族、脂肪族化合物、スクワランなどが挙げられる。
上記有機溶剤を選択するときの条件としてはその環境安全性、特に臭気が挙げられる。これらの溶剤は1種単独で使用してもよいし、あるいは2種以上を併用してもよい。その使用量は版面保護剤中に0.1〜5.0質量%が適当であり、より好ましくは0.3〜3.0質量%である。
版面保護剤において、これらの有機溶剤は界面活性剤によって可溶化させて溶液タイプとしてもよいし、あるいは油相として乳化分散させて乳化タイプとしてもよい。
【0018】
版面保護剤に含ませることができる硝酸塩、硫酸塩としては、硝酸マグネシウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸ニッケルなどが挙げられる。これらの使用量は版面保護剤中に0.05〜1.0質量%である。
版面保護剤にはビニルピロリドンと酢酸ビニルの共重合体のようなプレートのバックコート面との密着を促進するような、親水性ビニル共重合体を含有してもよい。
【0019】
通常、版面保護剤は濃縮液として市販され、使用時に水道水、井戸水等を加えて希釈して使用される。この希釈する水道水や井戸水に含まれているカルシウムイオン等が印刷に悪影響を与え、印刷物を汚れ易くする原因となることもあるので、キレート化合物を添加して、上記欠点を解消することができる。好ましいキレート化合物としては、例えば、Na227、Na533、Na339、Na24P(NaO3P)PO3Na2、カルゴン(ポリメタリン酸ナトリウム)などのポリリン酸塩、エチレンジアミンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ジヒドロキシエチルグリシン、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ヒドロキシイミノジ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;グリコールエーテルジアミンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ジエチレントリアミンペンタ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1,2−ジアミノシクロヘキサンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1,3−ジアミノ−2−プロパノールテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩などのようなアミノポリカルボン酸類、ニトリロトリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;エチレンアジミンテトラ(メチレンホスホン酸)、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、そのカリウム塩、そのナトリウム塩などのような有機ホスホン酸類、あるいは2−ホスホノブタントリカルボン酸−1,2,4、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;2一ホスホノブタノントリカルボン酸−2,3,4、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1−ホスホノエタントリカルボン酸−1,2、2、そのカリウム塩、そのナトリウム塩などのようなホスホノアルカントリカルボン酸類を挙げることができる。上記キレート剤のナトリウム塩、カリウム塩の代りに有機アミンの塩も有効である。これらキレート剤は版面保護剤組成中に安定に存在し、印刷性を阻害しないものが選ばれる。添加量としては使用時の版面保護剤に対して0.001〜1.0質量%が適当である。
【0020】
版面保護剤にはさらに防腐剤、消泡剤などを添加することができる。防腐剤として例えばフェノール又はその誘導体、ホルマリン、イミダゾール誘導体、デヒドロ酢酸ナトリウム、4−イソチアゾリン−3−オン誘導体、5−クロロ−2−メチル−3−イソチアゾロン、2−メチル−3−イソチアゾロン、ベンゾイソチアゾリン−3−オン、ベンズトリアゾール誘導体、アミジングアニジン誘導体、四級アンモニウム塩類、ピリジン、キノリン、グアニジン等の誘導体、ダイアジン、トリアゾール誘導体、オキサゾール、オキサジン誘導体、及びニトロブロモアルコール系の2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、1,1−ジブロモ−1−ニトロ−2−エタノール、1,1−ジブロモ−1−ニトロ−2−プロパノールオマジンなどがある。防腐剤の好ましい添加量は、細菌、カビ、酵母等に対して、安定に効力を発揮する量であって、細菌、カビ、酵母の種類によっても異なるが、版面保護剤中に0.01〜4.0質量%の範囲が好ましく、また種々のカビ、殺菌に対して効力のあるように2種以上の防腐剤を併用することが好ましい。
また、消泡剤としては一般的なシリコン系の自己乳化型タイプ、乳化タイプ、界面活性剤ノニオン系のHLBの5以下等の化合物を使用することができる。シリコン消泡剤、例えばジメチルシリコーンなどが好ましい。その中で乳化分散型及び可溶化型等がいずれも使用できる。好ましくは版面保護剤中に0.001〜1.0質量%の範囲が最適である。
【0021】
本発明の、版面保護剤の残余の成分は水である。版面保護剤は、使用時よりも水の含有量を少なくした濃縮液としておき、使用時に水で希釈するようにしておくことが運搬上有利である。この場合の濃縮度は各成分が分離や析出を起こさない程度が適当である。版面保護剤は乳化分散型として調製してもよく、その油相としては有機溶剤が用いられ、又、可溶化剤の助けを借りて、可溶化型にしてもよい。また、スプレードライ法等で水分を除去するか、或いは固形原料を混合した固形化版面保護剤も好ましい態様である。
版面保護剤を乳化タイプとするとき、例えば乳化分散は、水相を温度40℃±5℃に調製し、高速攪拌し、水相の中に調製した油相をゆっくり滴下し充分攪拌後、圧力式のホモジナイザーを通して乳化液を作成することができる。
【0022】
版面保護剤の使用態様は特に制限されるものではないが、自動ガム塗布機などを使用すると均一に塗布することができ、好ましい。版面保護剤による処理は、現像処理工程の後、無水洗で直ちに行うこともできるし、現像処理後(水洗工程、流水循環水洗あるいは少量の塗りつけ水洗を含む)あるいは界面活性剤を含有するリンス液で処理した後に行うこともできる。
版面保護剤による処理は、自動現像機を用いて行うことも適している。この自動現像機は、一般に現像部と後処理部からなり、平版印刷版原版を搬送する装置と、各処理液槽およびスプレー装置からなり、露光済みの平版印刷版原版を水平に搬送しながら、ポンプで汲み上げた各処理液をスプレーノズルから吹き付けて現像および後処理するものである。また、処理液が満たされた処理液槽中に液中ガイドロールなどによって浸漬搬送させて現像処理する方法や、現像後一定量の少量の水洗水を版面に供給して水洗し、その廃水を現像液原液の希釈水として再利用する方法も知られている。
このような自動処理においては、各処理液に処理量や稼働時間等に応じてそれぞれの補充液を補充しながら処理することができる。また、実質的に未使用の処理液で処理するいわゆる使い捨て処理方式も適用できる。
上記の版面保護剤により処理され版面保護層が塗設された平版印刷版はオフセット印刷機に掛けられ、多数枚の印刷に用いられる。
【0023】
本発明の版面保護剤を適用し得る平版印刷版原版(感光性平版印刷版)は特に制限されるものではなく、従来から用いられているコンベンショナルポジ型・ネガ型感光性平版印刷版、ネガ型・ポジ型赤外線感光性平版印刷版、光重合型感光性平版印刷版などのいずれにも本発明の版面保護剤を適用できる。ここで、コンベンショナル感光性平版印刷版とは、原稿フィルムを介して画像露光を行う方式の印刷版をいう。
本発明の版面保護剤は、光重合型感光性平版印刷版に好ましく適用することができる。その光重合型感光性平版印刷版の種類は特に制限されるものではなく、赤外線光重合型感光性平版印刷版(吸収した赤外線を熱に変換し、その熱でラジカルを発生し、そのラジカルで重合する化合物を含むヒートモードネガ型印刷版(いわゆる熱重合型感光性平版印刷版)を含む)、及び紫外線光重合型感光性平版印刷版などのいずれにも、本発明の版面保護剤を適用できる。光重合型感光性平版印刷版は、一般的に光重合開始剤(以下、ラジカル発生剤とも称する)及びエチレン性不飽和結合含有化合物(以下、ラジカル重合性化合物とも称する)を含有する光重合型感光層が支持体上に設けられているものである。
以下に、各種の感光性平版印刷版の構成を例示する。
【0024】
[コンベンショナル感光性平版印刷版]
ポジ型感光性平版印刷版は、一般にo−キノンジアジド化合物を単独あるいはノボラック型のフェノール樹脂、クレゾール樹脂などのアルカリ可溶性樹脂と混合し金属又はプラスチック等の適当な支持体上に塗布したものであり、透明陽画を通して活性光線で露光した場合、露光された部分のo−キノンジアジド化合物が分解し、アルカリ可溶性に変化するので、アルカリ水溶液により容易に除去されポジ画像を与える。
他方、ネガ型感光性組成物には、ジアゾニウム塩やアジド化合物又は光重合性化合物を用いたものが多く、このような感光物は単独あるいは適当な樹脂などの添加剤と混合され、支持体上に塗設されて、ネガ型感光性平版印刷版を構成する。
【0025】
上述のような感光性平版印刷版(以下PS版とも称する)として、例えば英国特許第1,350,521号明細書に記されているようなジアゾ樹脂(p−ジアゾジフェニルアミンとパラホルムアルデヒドとの縮合物の塩)とシェラックとの混合物からなる感光層をアルミニウム板上に設けたもの、英国特許第1,460,978号および同第1,505,739号の各明細書に記されているようなジアゾ樹脂とヒドロキシエチルメタクリレート単位またはヒドロキシエチルアクリレート単位を主なる繰返し単位として有するポリマーとの混合物からなる感光層をアルミニウム板上に設けたもののようなネガ型PS版、および特開昭50−125806号公報に記されているようなo−キノンジアジド感光物とノボラック型フェノール樹脂との混合物からなる感光層をアルミニウム板上に設けたポジ型PS版が含まれる。更に米国特許第3,860,426号明細書の中に具体的に示されているような光架橋性フォトポリマーの感光層をアルミニウム板上に設けたPS版、米国特許第4,072,528号および同第4,072,527号の各明細書に記されているような光重合型フォトポリマー組成物の感光層をアルミニウム板上に設けたPS版、英国特許第1,235,281号および同第1,495,861号の各明細書に記されているようなアジドと水溶性ポリマーとの混合物からなる感光層をアルミニウム板上に設けたPS版も好ましい。これらのPS版の中でも、特に好ましいPS版はo−ナフトキノンジアジド化合物とノボラック樹脂とからなる感光層を有するポジ型PS版であり、米国特許第4,259,434号明細書第3欄下から2行目〜第6欄第14行に詳しく説明されている。
【0026】
[赤外線感光性平版印刷版]
赤外線感光性平版印刷版は、支持体上に画像形成層を有し、さらに必要に応じて他の層を有してなり、ポジ型の画像形成層は(A)赤外線吸収染料を含み、さらに(B)アルカリ可溶性高分子化合物を含み、任意に(C)アルカリ可溶性高分子化合物と相溶させて該アルカリ可溶性高分子化合物のアルカリ水溶液への溶解性を低下させるとともに、加熱により該溶解性低下作用が減少する化合物、(D)環状酸無水物などを含有してもよい。また、ネガ型の平版印刷版原版の場合には、露光部が硬化して画像部となるため、画像形成層にさらに(E)熱により酸を発生する化合物と、(F)酸により架橋する架橋剤とを含有して構成される。以下に、各構成成分について簡単に説明する。
【0027】
−(A)赤外線吸収染料−
画像形成層に用いられる赤外線吸収染料は、赤外光を吸収し熱を発生する染料であれば特に制限はなく、赤外線吸収染料として知られる種々の染料を用いることができる。
赤外線吸収染料としては、市販の染料又は文献(例えば、「染料便覧」、有機合成化学協会編集、昭和45年刊)に記載の公知のものが挙げられ、例えば、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。これらの染料のうち赤外光、もしくは近赤外光を吸収するものが、赤外光もしくは近赤外光を発光するレーザの利用に適する点で特に好ましい。
【0028】
そのような赤外光、もしくは近赤外光を吸収する染料として、例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭59−202829号、特開昭60−78787号等に記載のシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等に記載のメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等に記載のナフトキノン染料、特開昭58−112792号等に記載のスクワリリウム色素、英国特許434,875号明細書に記載のシアニン染料、米国特許5,380,635号明細書に記載のジヒドロペリミジンスクアリリウム染料等が好適に挙げられる。
【0029】
また、染料として米国特許第5,156,938号明細書に記載の近赤外吸収増感剤も好ましく、米国特許第3,881,924号明細書に記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645(米国特許第4,327,169号明細書)に記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号に記載のピリリウム系化合物、特開昭59−216146号に記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号明細書に記載のペンタメチンチオピリウム塩等、特公平5−13514号、同5−19702号に記載のピリリウム化合物、市販品としては、Epolight III-178、Epolight III-130、Epolight III-125、Epolight IV−62A(エポリン社製)等も好ましい。
さらに、米国特許第4,756,993 号明細書に記載の式(I)、(II)で表される近赤外線吸収染料も好適なものとして挙げることができる。
上記のうち、シアニン色素、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体がより好ましい。
【0030】
さらに具体的に、下記一般式(Z)で表される化合物を挙げることができる。
【化1】

【0031】
前記一般式(Z)中、R21〜R24は、それぞれ独立に水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、アリール基を表し、R21とR22、R23とR24はそれぞれ結合して環構造を形成していてもよい。
21〜R24としては、例えば、水素原子、メチル基、エチル基、フェニル基、ドデシル基、ナフチル基、ビニル基、アリル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、これらの基は、さらに置換基を有していてもよい。ここで、置換基としては、例えば、ハロゲン原子、カルボニル基、ニトロ基、ニトリル基、スルホニル基、カルボキシル基、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル等が挙げられる。
【0032】
式中、R25〜R30は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基を表し、前記R25〜R30としては、例えば、メチル基、エチル基、フェニル基、ドデシル基、ナフチル基、ビニル基、アリル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、これらの基は、さらに置換基を有していてもよい。ここで、置換基としては、例えば、ハロゲン原子、カルボニル基、ニトロ基、ニトリル基、スルホニル基、カルボキシル基、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル等が挙げられる。
【0033】
式中、R31〜R33は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、又は置換基を有してもよい炭素数1〜8のアルキル基を表し、前記R32は、前記R31又はR33と結合して環構造を形成していてもよく、m>2の場合は、複数のR32同士が結合して環構造を形成していてもよい。
前記R31〜R33としては、例えば、塩素原子、シクロヘキシル基、R32同士が結合してなるシクロペンチル環、シクロヘキシル環等が挙げられ、これらの基は、さらに置換基を有していてもよい。ここで、置換基としては、例えば、ハロゲン原子、カルボニル基、ニトロ基、ニトリル基、スルホニル基、カルボキシル基、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル等が挙げられる。
また、mは1〜8の整数を表し、中でも1〜3が好ましい。
【0034】
式中、R34〜R35は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、又は置換基を有してもよい炭素数1〜8のアルキル基を表し、前記R34は、R35と結合して環構造を形成していてもよく、m>2の場合は、複数のR34同士が結合して環構造を形成していてもよい。
前記R34〜R35としては、例えば、塩素原子、シクロヘキシル基、R34同士が結合してなるシクロペンチル環、シクロヘキシル環等が挙げられ、これらの基は、さらに置換基を有していてもよい。ここで、置換基としては、例えば、ハロゲン原子、カルボニル基、ニトロ基、ニトリル基、スルホニル基、カルボキシル基、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル等が挙げられる。
また、mは、1〜8の整数を表し、中でも、1〜3が好ましい。
【0035】
式中、X-は、アニオンを表し、例えば、過塩素酸、四フッ化ホウ酸、六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸、5−ニトロ−O−トルエンスルホン酸、5−スルホサリチル酸、2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸、2−ニトロベンゼンスルホン酸、3−クロロベンゼンスルホン酸、3−ブロモベンゼンスルホン酸、2−フルオロカプリルナフタレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、1−ナフトール−5−スルホン酸、2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイル−ベンゼンスルホン酸及びパラトルエンスルホン酸等が挙げられる。
中でも、六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸、2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸等のアルキル芳香族スルホン酸が好ましい。
【0036】
前記一般式(Z)で表される化合物のなかでも、具体的には、以下に示す化合物が好適に用いられるが、本発明においては、これらに限られるものではない。
【化2】

【0037】
上記のような赤外線吸収染料の含有量としては、画像形成層の全固形分質量に対して0.01〜50質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましく、さらに0.5〜10質量%が最も好ましい。
前記含有量が0.01質量%未満であると、感度が低くなることがあり、50質量%を超えると、画像形成層の均一性が低下し、その耐久性が劣化することがある。
【0038】
−(B)アルカリ可溶性高分子化合物−
使用可能なアルカリ可溶性高分子化合物(以下、「(B)成分」ということがある。)としては、下記(1)〜(3)の酸性基を主鎖及び/又は側鎖の構造中に有するアルカリ水可溶性の高分子化合物を用いることができる。
(1)フェノール基(−Ar−OH)
(2)スルホンアミド基(−SO2NH−R)
(3)置換スルホンアミド系酸基(以下、「活性イミド基」という。)
〔−SO2NHCOR、−SO2NHSO2R、−CONHSO2R〕
前記(1)〜(3)中、Arは置換基を有していてもよい2価のアリール連結基を表し、Rは、置換基を有していてもよい炭化水素基を表す。
以下に、その具体例を示すが、本発明においては、これらに限定されるものではない。
【0039】
(1)フェノール基を有するアルカリ可溶性高分子化合物としては、例えば、フェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体、m−クレゾールとホルムアルデヒドとの縮重合体、p−クレゾールとホルムアルデヒドとの縮重合体、m−/p−混合クレゾールとホルムアルデヒドとの縮重合体、フェノールとクレゾール(m−、p−又はm−/p−混合のいずれでもよい。)とホルムアルデヒドとの縮重合体等のノボラック樹脂又はピロガロールとアセトンとの縮重合体を挙げることができる。さらに、フェノール基を側鎖に有するモノマーを重合させた高分子化合物を挙げることもできる。
【0040】
側鎖にフェノール性水酸基を有する高分子化合物としては、フェノール性水酸基と重合可能な不飽和結合をそれぞれ1つ以上有する低分子化合物からなる重合性モノマーを単独重合、或いは、該重合性モノマーに他の重合性モノマーを共重合させて得られる高分子化合物が挙げられる。
フェノール基を側鎖に有するモノマーとしては、フェノール基を側鎖に有するアクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル又はヒドロキシスチレン等が挙げられる。
【0041】
具体的には、N−(2−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(3−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、o−ヒドロキシフェニルアクリレート、m−ヒドロキシフェニルアクリレート、p−ヒドロキシフェニルアクリレート、o−ヒドロキシフェニルメタクリレート、m−ヒドロキシフェニルメタクリレート、p−ヒドロキシフェニルメタクリレート、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、2−(2−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2−(3−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2−(2−ヒドロキシフェニル)エチルメタクリレート、2−(3−ヒドロキシフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルメタクリレート等を好適に挙げることができる。
【0042】
前記フェノール基を有するアルカリ可溶性高分子化合物の重量平均分子量としては、5.0×102〜2.0×105のものが、数平均分子量としては、2.0×102〜1.0×105のものが、画像形成性の点で好ましい。
また、フェノール基を有するアルカリ可溶性高分子化合物は、単独での使用のみならず、2種類以上を組合わせて使用してもよい。組合わせる場合には、米国特許第4123279号明細書に記載されているような、t−ブチルフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体や、オクチルフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体のような、炭素数3〜8のアルキル基を置換基として有するフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体を併用してもよい。
これらの縮重合体も、重量平均分子量が5.0×102〜2.0×105のもの、数平均分子量が2.0×102〜1.0×105のものが好ましい。
【0043】
(2)スルホンアミド基を有するアルカリ可溶性高分子化合物としては、例えば、スルホンアミド基を有する化合物を主たるモノマー構成単位とする重合体、即ち、単独重合体又は前記モノマー構成単位に他の重合性モノマーを共重合させた共重合体を挙げることができる。
スルホンアミド基を有する重合性モノマーとしては、1分子中に、窒素原子上に少なくとも一つの水素原子が結合したスルホンアミド基−SO2 −NH−と、重合可能な不飽和結合とを、それぞれ1以上有する低分子化合物からなるモノマーが挙げられる。中でも、アクリロイル基、アリル基又はビニロキシ基と、置換或いはモノ置換アミノスルホニル基又は置換スルホニルイミノ基と、を有する低分子化合物が好ましい。
前記低分子化合物としては、例えば、下記一般式(a)〜(e)で表される化合物が挙げられるが、本発明においては、これらに限定されるものではない。
【0044】
【化3】

【0045】
式中、X1、X2は、それぞれ独立に酸素原子又はNR7 を表す。R1 、R4 は、それぞれ独立に水素原子又はCH3を表す。R2、R5、R9、R12、R16は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基又はアラルキレン基を表す。R3、R7、R13は、それぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。また、R6、R17は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基を表す。R8、R10、R14は、それぞれ独立に水素原子又はCH3を表す。R11、R15は、それぞれ独立に単結合又は置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基又はアラルキレン基を表す。Y1、Y2はそれぞれ独立に単結合又はCOを表す。
【0046】
中でもm−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミド等を好適に使用することができる。
【0047】
(3)活性イミド基を有するアルカリ可溶性高分子化合物としては、例えば、活性イミド基を有する化合物を主たるモノマー構成単位とする重合体を挙げることができる。
活性イミド基を有する化合物を主たるモノマー構成単位とする重合体としては、1分子中に、下記式で表される活性イミド基と、重合可能な不飽和結合とをそれぞれ1以上有する低分子化合物からなるモノマーを単独重合、或いは、該モノマーに他の重合性モノマーを共重合させて得られる高分子化合物を挙げることができる。
【0048】
【化4】

【0049】
このような化合物としては、具体的には、N−(p−トルエンスルホニル)メタクリルアミド、N−(p−トルエンスルホニル)アクリルアミド等を好適に挙げることができる。
さらに、上記のほか、前記フェノール基を有する重合性モノマー、スルホンアミド基を有する重合性モノマー、及び活性イミド基を有する重合性モノマーのうちのいずれか2種類以上を重合させた高分子化合物、或いは、これら2種以上の重合性モノマーにさらに他の重合性モノマーを共重合させて得られる高分子化合物も好適に挙げられる。
【0050】
フェノール基を有する重合性モノマー(M1)に、スルホンアミド基を有する重合性モノマー(M2)及び/又は活性イミド基を有する重合性モノマー(M3)を共重合させる場合の配合比(M1:M2及び/又はM3;質量比)としては、50:50〜5:95が好ましく、40:60〜10:90がより好ましい。
【0051】
アルカリ可溶性高分子化合物が、前記酸性基(1)〜(3)より選ばれるいずれかを有するモノマー構成単位と、他の重合性モノマーの構成単位とから構成される共重合体である場合、該共重合体中に、前記酸性基(1)〜(3)より選ばれるいずれかを有するモノマー構成単位を10モル%以上含むことが好ましく、20モル%以上含むことがより好ましい。
前記モノマー構成単位の含有量が、10モル%未満であると、十分なアルカリ可溶性が得られずに、現像ラチチュードが狭くなることがある。
前記共重合体の合成方法としては、従来より公知のグラフト共重合法、ブロック共重合法、ランダム共重合法等を用いることができる。
【0052】
前記酸性基(1)〜(3)より選ばれるいずれかを有するモノマーを構成単位とする重合性モノマーと共重合させる。他の重合性モノマーとしては、例えば、下記(a)〜(1)に挙げるモノマーを挙げることができるが、本発明においては、これらに限定されるものではない。
【0053】
(a)2−ヒドロキエチルアクリレート又は2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の脂肪族水酸基を有するアクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類。
(b)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルアクリレート、N−ジメチルアミノエチルアクリレート等のアルキルアクリレート。
(c)メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルメタクリレート、N−ジメチルアミノエチルメタクリレート等のアルキルメタクリレート。
【0054】
(d)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−ヘキシルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリるアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド等のアクリルアミド、又はメタクリルアミド。
(e)エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル類。
(f)ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等のビニルエステル類。
(g)スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン等とスチレン類。
【0055】
、(h)メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトン等のビニルケトン類。
(i)エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジェン、イソプレン等のオレフィン類。
(j)N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、4−ビニルピリジン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
(k)マレイミド、N−アクリロイルアクリルアミド、N−アセチルメタクリルアミド、N−プロピオニルメタクリルアミド、N−(p−クロロベンゾイル)メタクリルアミド等の不飽和イミド。
(l)アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸。
【0056】
前記アルカリ水可溶性高分子化合物としては、単独重合体、共重合体に関わらず、膜強度の点で、重量平均分子量が2000以上、数平均分子量が500以上のものが好ましく、重量平均分子量が5000〜300000、数平均分子量が800〜250000であり、分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が1.1〜10のものがより好ましい。
また、前記アルカリ可溶性高分子化合物が、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、クレゾール−アルデヒド樹脂等である場合には、重量平均分子量が500〜20000であって、数平均分子量が200〜10000のものが好ましい。
【0057】
前記アルカリ水可溶性高分子化合物の含有量としては、画像形成層の全固形分質量に対して30〜99質量%が好ましく、40〜95質量%がより好ましく、50〜90質量%が最も好ましい。
前記含有量が、30質量%未満であると、画像形成層の耐久性が低下することがあり、99質量%を越えると、感度、耐久性が低下することがある。
また、前記高分子化合物は、1種類のみを用いても、2種類以上を組合わせて用いてもよい。
【0058】
−(C)前記アルカリ可溶性高分子化合物と相溶させて該アルカリ可溶性高分子化合物のアルカリ水溶液への溶解性を低下させるとともに、加熱により該溶解性低下作用が減少する化合物−
この(C)成分は、分子内に存在する水素結合性の官能基の働きにより、前記(B)アルカリ可溶性高分子化合物との相溶性が良好であり、均一な画像形成層用塗布液を形成しうるとともに、アルカリ可溶性高分子化合物との相互作用により、該アルカリ可溶性高分子化合物のアルカリ可溶性を抑制する機能(溶解性抑制作用)を有する化合物を指す。
【0059】
また、加熱によりアルカリ可溶性高分子化合物に対する前記溶解性抑制作用は消滅するが、この赤外線吸収剤自体が加熱により分解する化合物である場合には、分解に十分なエネルギーが、レーザー出力や照射時間等の諸条件により付与されないと、アルカリ可溶性高分子化合物の溶解性抑制作用を十分に低下させることができず、感度が低下するおそれがある。このため、(C)成分の熱分解温度としては、150°C以上が好ましい。
【0060】
(C)成分としては、前記(B)アルカリ可溶性高分子化合物との相互作用を考慮して、例えば、スルホン化合物、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、アミド化合物等の前記アルカリ可溶性高分子化合物と相互作用しうる化合物の中から適宜選択することができる。
(C)成分と前記(B)アルカリ可溶性高分子化合物との配合比(C/B)としては、一般に1/99〜25/75が好ましい。
なお、上記の(A)赤外線吸収染料で説明した一般式(Z)で表される化合物は(C)成分の作用も有するので、例えば一般式(Z)で示されるようなシアニン染料を使用することで(A)成分と(C)成分の双方の作用を発揮させることができる。
【0061】
−(D)環状酸無水物−
平版印刷版原版には、さらに環状酸無水物を使用してもよい。該環状酸無水物は、その構造内にカルボン酸無水物のカルボニル基と共役する結合を有し、そのカルボニル基の安定性を増すことで分解速度を制御し、保存経時において適当な速度で分解して酸を発生する。そのため、保存経時での現像性劣化を抑え、現像性を長期間安定に維持しうる。
前記環状酸無水物としては、下記一般式(III)又は(IV)で表される化合物が挙げられる。
【0062】
【化5】

【0063】
一般式(III)中、R41、R42はそれぞれ独立に水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素原子数1〜12のアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、アリール基、カルボニル基、カルボキシ基もしくはカルボン酸エステルを表す。なお、R41、R42は互いに連結して環構造を形成してもよい。
前記R41、R42としては、例えば水素原子、又は炭素原子数1〜12の無置換のアルキル基、アリール基、アルケニル基、シクロアルキル基などが好適に挙げられ、具体的には水素原子、メチル基、エチル基、フェニル基、ドデシル基、ナフチル基、ビニル基、アリル基、シクロヘキシル基などが挙げられ、これらの基は、さらに置換基を有していてもよい。
41、R42が互いに連結して環構造を形成する場合、その環状基としては、例えばフェニレン基、ナフチレン基、シクロヘキセン基、シクロペンテン基などが挙げられる。
前記置換基としては、例えばハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボニル基、スルホン酸エステル、ニトロ基、ニトリル基などが挙げられる。
【0064】
一般式(IV)中、R43、R44、R45、R46は、それぞれ独立に水素原子、ヒドロキシ基、塩素などのハロゲン原子、ニトロ基、ニトリル基、又は置換基を有していてもよい炭素年始数1〜12のアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、アリール基、カルボニル基、カルボキシ基もしくはカルボン酸エステル基などを表す。
前記R43、R44、R45、R46としては、例えば水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜12の無置換のアルキル基、アルケニル基、炭素原子数6〜12のアリール基などが好適に挙げられ、具体的にはメチル基、ビニル基、フェニル基、アリル基などが挙げられる。これらの基はさらに置換基を有していてもよい。
前記置換基としては、例えばハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボニル基、スルホン酸エステル、ニトロ基、ニトリル基、カルボキシ基などが挙げられる。
【0065】
環状酸無水物として、例えば無水フタル酸、3,4,5,6−テトラヒドロ無水フタル酸、テトラクロロ無水フタル酸、3−ヒドロキシ無水フタル酸、3−メチル無水フタル酸、3−フェニル無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、フェニル無水マレイン酸、ジメチル無水マレイン酸、ジクロロ無水マレイン酸、クロロ無水マレイン酸などが好適に挙げられる。
環状酸無水物の含有量としては、画像形成層の全固形分含量に対して0.5〜20質量%が好ましく、1〜15質量%がより好ましく、1〜10質量%が最も好ましい。前記含有量が0.5質量%未満であると現像性の維持効果が不十分となることがあり、20質量%を超えると画像を形成できないことがある。
【0066】
以下は、ネガ型平版印刷版の記録層を構成する成分である。
−(E)熱により酸を発生する化合物−
画像形成材料がネガ型の場合、加熱時に酸を発生する化合物(以下、「酸発生剤」という。)を併用する。この酸発生剤は、100°C以上に加熱することにより分解して酸を発生する化合物を増す。発生する酸としては、スルホン酸、塩酸等の pKa が2以下の強酸であることが好ましい。
前記酸発生剤としては、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩等のオニウム塩を好適に挙げることができる。具体的には、米国特許4,708,925号や特開平7−20629号に記載の化合物を挙げることができ、中でも、スルホン酸イオンを対イオンとするヨードニウム塩、スルホニウム塩、ジアゾニウム塩が好ましい。
【0067】
前記ジアゾニウム塩としては、米国特許第3,867,147号に記載のジアゾニウム塩化合物、米国特許第2,632,703号明細書に記載のジアゾニウム化合物、特開平1−102456号、特開平1−102457号の各公報に記載のジアゾ樹脂も好適に挙げることができる。
また、米国特許第5,135,838号、米国特許第5,200,544号に記載のベンジルスルホナート類、特開平2−100054号、特開平2−100055号、特開平8−9444号に記載の活性スルホン酸エステルやジスルホニル化合物類も好ましい。その他特開平7−271029号に記載の、ハロアルキル置換されたS−トリアジン類も好ましい。
前記酸発生剤の添加量としては、画像形成層の全固形分質量に対し0.01〜50質量%が好ましく、0.1〜40質量%がより好ましく、0.5〜30質量%が最も好ましい。
【0068】
−(F)酸により架橋する架橋剤−
平版印刷版原版がネガ型である場合、酸により架橋する架橋剤(以下、単に「架橋剤」という場合がある。)を併用する。
前記架橋剤としては、以下のものを挙げることができる。
(i)アルコキシメチル基又はヒドロキシメチル基で置換された芳香族化合物
(ii)N−ヒドロキシメチル基、N−アルコキシメチル基又はN−アシルオキシメチル基を有する化合物
(iii)エポキシ化合物
さらに、特開平11−254850号公報に記載のものやフェノール誘導体等も挙げることができる。
【0069】
前記架橋剤の添加量としては、画像形成層の全固形分質量に対し5〜80質量%が好ましく、10〜75質量%がより好ましく、20〜70質量%が最も好ましい。
前記フェノール誘導体を架橋剤として使用する場合、該フェノール誘導体の添加量としては、画像形成材料の全固形分質量に対し5〜70質量%が好ましく、10〜50質量%がより好ましい。
上記の各種化合物の詳細については、特開2000−267265号公報に記載されている。
【0070】
−その他の成分−
平版印刷版原版の画像形成層には、必要に応じて、さらに種々の添加剤を添加することができる。
例えば、感度を向上させる目的で、フェノール類、有機酸類、スルホニル化合物類等の公知の添加剤を併用することもできる。
フェノール類としては、ビスフェノールA、p−ニトロフェノール、p−エトキシフェノール、2,4,4′−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4,4′,4″−トリヒドロキシトリフェニルメタン、4,4′,3″,4″−テトラヒドロキシ−3,5,3′,5′−テトラメチルトリフェニルメタンなどが挙げられる。
【0071】
前記有機酸類としては、特開昭60−88942号公報、特開平2−96755号公報などに記載されている、スルホン酸類、スルフィン酸類、アルキル硫酸類、ホスホン酸類、リン酸エステル類およびカルボン酸類などがあり、具体的には、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルフィン酸、エチル硫酸、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、リン酸フェニル、リン酸ジフェニル、安息香酸、イソフタル酸、アジピン酸、p−トルイル酸、3,4−ジメトキシ安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、4−シクロヘキセン−2,2−ジカルボン酸、エルカ酸、ラウリン酸、n−ウンデカン酸、アスコルビン酸などが挙げられる。
スルホニル化合物類としては、例えばビスヒドロキシフェニルスルホン、メチルフェニルスルホン、ジフェニルジスルホンなどが挙げられる。
前記のフェノール類、有機酸類又はスルホニル化合物類の添加量としては、画像形成層の全固形分質量に対し、0.05〜20質量%が好ましく、0.1〜15質量%がより好ましく、0.1〜10質量%が最も好ましい。
【0072】
また、現像条件に対する処理性の安定性を拡げる目的で、EP950517号公報に記載されているようなシロキサン系化合物、特開平11−288093号公報に記載されているようなフッ素含有のモノマー共重合体を添加することができる。
シロキサン系化合物としては、ジメチルシロキサンとポリアルキレンオキシドのブロック共重合体が好ましく、具体例として(株)チッソ社製、DBE−224、DBE−621、DBE−712、DBP−732、DBP−534、独Tego社製、Tego Glide 100等のポリアルキレンオキシド変性シリコーンを挙げることができる。
前記界面活性剤の使用量としては、画像形成層の全固形分質量に対し、0.05〜15質量%が好ましく、0.1〜5質量%がより好ましい。
【0073】
前記画像形成層には、露光による加熱後、直ちに可視像を得るための焼き出し剤や画像着色剤としての染料や顔料を加えることができる。
前記焼き出し剤としては、例えば、露光による加熱によって酸を発生する化合物と塩を形成しうる有機染料との組合せが挙げられる。
具体的には、特開昭50−36209号、特開昭53−8128号の各公報に記載の、o−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸ハロゲニドと塩形成性有機染料との組合せ、特開昭53−36223号、特開昭54−74728号、特開昭60−3626号、特開昭61−143748号、特開昭61−151644号及び特開昭63−58440号の各公報に記載の、トリハロメチル化合物と塩形成性有機染料との組合せ、が挙げられる。
前記トリハロメチル化合物として、オキサゾール系化合物とトリアジン系化合物があり、いずれも経時安定性に優れ、明瞭な焼き出し画像を与える。
前記画像着色剤としては、例えば、前記塩形成性有機染料以外に、他の染料を用いることができ、例えば、油溶性染料、塩基性染料が好適に挙げられる。
【0074】
具体的には、オイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上、オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(C.I.42555)、メチルバイオレット(C.I.42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(C.I.145170B)、マラカイトグリーン(C.I.42000)、メチレンブルー(C.I.52015)等を挙げることができる。また、特開昭62−293247号公報に記載の染料は、特に好ましい。
前記各種染料の添加量としては、画像形成層の全固形分質量に対し、0.01〜10質量%が好ましく、0.1〜3質量%がより好ましい。
【0075】
また、必要に応じて、その塗膜に柔軟性等を付与する目的で、可塑剤を添加することができる。
可塑剤としては、例えばブチルフタリル、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸又はメタクリル酸のオリゴマー及びポリマーなどが挙げられる。
【0076】
さらに必要に応じて、以下の種々添加剤を添加することができる。
例えば、オニウム塩、o−キノンジアジド化合物、芳香族スルホン化合物、芳香族スルホン酸エステル化合物等の、熱分解性で、未分解状態ではアルカリ水可溶性高分子化合物の溶解性を実質的に低下させる化合物を併用することができる。該化合物の添加は、画像部の現像液への溶解阻止能の向上を図る点で好ましい。
前記オニウム塩としては、例えばジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、アルソニウム塩などが挙げられる。
中でも、例えばS.I. Schlesinger, Photogr. Sci. Eng., 18, 387(1974), T.S.Bal et al, Polymer, 21, 423 (1980), 特開昭5−158230号公報に記載のジアゾニウム塩、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号、特開平3−140140号に記載のアンモニウム塩、D. C. Necker et al, Macromolecules, 17, 2468 (1984), C. S. Wen et al, The Proc. Conf. Rad. Curing ASIA, p478 Tokyo, Oct (1988)、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号に記載のホスホニウム塩、J. V. Crivelloet et al. Macromolecules, 10(6), 1307 (1977)、Chem. & Eng. News, Nov. 28, p.31 (1988)、欧州特許第104,143号、米国特許第339,049号、同第410,201号、特開平2−150848号、特開平2−296514号に記載のヨードニウム塩、
【0077】
J. V. Crivello et al, Polymer J. 17, 73 (1985)、J. V. Crivello et al, J. Org. Chem., 43, 3055 (1978)、W. R, Watt et al, J. Polymer Sci., Polymer Chem. Ed., 22, 1789 (1984)、J. V. Crivello et al, Polymer bull., 14, 279 (1985)、J. V. Crivello et al, Macromolecules, 14(5), 1141 (1981), J.V. Crivello et al, J. Polymer Sci., Polymer Chem. Ed., 17. 2877 (1979), 欧州特許第370,693号、同233,567号、同297,443号、同297,442号、米国特許第4,933,377号、同3,902,114号、同410,201号、同399,049号、同4,760,013号、同4,734,444号、同2,833,827号、独国特許第2,904,626号、同3,604,580号、同3,604,581号に記載のスルホニウム塩、
【0078】
J. V. Crivello et al, Macromolecules, 10(6), 1307 (1977), J.V. Crivello et al, J. Polymer Sci., Polymer Chem. Ed., 17, 1047 (1979)に記載のセレノニウム塩、C. S. Wen et al, The Proc. Conf. Rad. Curing ASIA, p.478, Tokyo, Oct (1988)に記載のアルソニウム塩などが挙げられる。
上記のうち、ジアゾニウム塩が好ましく、中でも、特開平5−158230号公報に記載のものがより好ましい。
【0079】
オニウム塩の対イオンとしては、四フッ化ホウ酸、六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸、5−ニトロ−o−トルエンスルホン酸、5−スルホサチリル酸、2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸、2−ニトロベンゼンスルホン酸、3−クロロベンゼンスルホン酸、3−ブロモベンゼンスルホン酸、2−フルオロカプリルナフタレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、1−ナフトール−5−スルホン酸、2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイル−ベンゼンスルホン酸、及びパラトルエンスルホン酸などを挙げることができる。
中でも、六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸、2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸などのアルキル芳香族スルホン酸が好ましい。
【0080】
前記o−キノンジアジド化合物としては、少なくとも1個のo−キノンジアジド基を有する化合物で、熱分解によりアルカリ可溶性を増すものが挙げられ、種々の構造の化合物を用いることができる。
前記o−キノンジアジドは、熱分解により結着剤の溶解抑制能を喪失し、且つo−キノンジアジド自身がアルカリ可溶性の物質に変化する、両効果により平版印刷版原版の溶解性を助ける。
【0081】
上記のようなo−キノンジアジド化合物としては、例えば、J.コーサー著「ライト−センシティブ・システムズ」(John Wiley & Sons. Inc.)第339〜352頁に記載の化合物が使用可能であるが、中でも、種々の芳香族ポリヒドロキシ化合物又は芳香族アミノ化合物と反応させたo−キノンジアジドのスルホン酸エステル又はスルホン酸アミドが好ましい。
また、特開昭43−28403号公報に記載の、ベンゾキノン(1,2)−ジアジドスルホン酸クロライド又は、米国特許第3,046,120号、同第3,188,210号に記載のベンゾキノン−(1,2)−ジアジドスルホン酸クロライド又はナフトキノン−(1,2)−ジアジド−5−スルホン酸クロライドとフェノールホルムアルデヒド樹脂とのエステルも好ましい。
【0082】
さらに、ナフトキノン−(1,2)−ジアジド−4−スルホン酸クロライドとフェノールホルムアルデヒド樹脂あるいはクレゾール−ホルムアルデヒド樹脂とのエステル、ナフトキノン−(1,2)−ジアジド−4−スルホン酸クロライドとピロガロール−アセトン樹脂とのエステルも好ましい。
その他、例えば特開昭47−5303号、特開昭48−63802号、特開昭48−63803号、特開昭48−96575号、特開昭49−38701号、特開昭48−13354号、特公昭41−11222号、特公昭45−9610号、特公昭49−17481号、米国特許第2,797,213号、同第3,454,400号、同第3,544,323号、同第3,573,917号、同第3,674,495号、同第3,785,825号、英国特許第1,227,602号、同第1,251,345号、同第1,267,005号、同第1,329,888号、同第1,330,932号、ドイツ特許第854、890号などに記載のものも有用である。
これらの化合物は単独でも、数種を組み合わせて混合物として使用してもよい。
前記オニウム塩、o−キノンジアジド化合物、芳香族スルホン酸エステル等の添加量としては、画像形成層の全固形分質量に対し、0.1〜50質量%が好ましく、0.5〜30質量%がより好ましく、0.5〜20質量%が最も好ましい。
【0083】
その他、画像のディスクリミネーションの強化や表面のキズに対する抵抗力を強化する目的で、特開2000−187318号公報に記載されているような、分子中に炭素数3〜20のパーフルオロアルキル基を2又は3個有する(メタ)アクリレート単量体を重合成分とする重合体を併用することが好ましい。添加量としては画像形成層の全固形分質量に対し、0.1〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜5質量%である。
また、キズに対する抵抗性を付与する目的で、表面の静摩擦係数を低下させる化合物を添加することもできる。具体的には、米国特許第6117913号明細書に開示されているような長鎖アルキルカルボン酸のエステルなどを挙げることができる。その添加量として好ましいのは、画像形成層の全固形分質量に対し0.1〜10質量%であり、より好ましくは0.5〜5質量%である。
また、画像形成層の溶解性を調節する目的で種々の溶解抑制剤を含んでもよい。溶解抑制剤としては、特開平11−119418号公報に記載されるようなジスルホン化合物又はスルホン化合物が好適に用いられ、具体例として4,4'-ビスヒドロキシフェニルスルホンを用いることが好ましい。その添加量として好ましいのは、画像形成層の全固形分質量に対し0.05〜20質量%であり、より好ましくは0.5〜10質量%である。
【0084】
感光性平版印刷版の具体例として、特開2002−182400号公報に開示されるような画像形成層を2層構造のポジ型感熱層とした平版印刷版原版も挙げられる。即ちこのポジ型感熱層は積層構造を有し、表面(露光面)に近い位置に設けられている感熱層と、支持体に近い側に設けられているアルカリ可溶性高分子化合物を含有する下層とを有することを特徴とする。該感熱層と下層の双方に或いは一方に、上述してきた(A)赤外線吸収染料、(B)アルカリ可溶性高分子化合物、(C)アルカリ可溶性高分子化合物と相溶させて該アルカリ可溶性高分子化合物のアルカリ水溶液への溶解性を低下させるとともに、加熱により該溶解性低下作用が減少する化合物、−その他の成分−を含有させることができる。
下層で用いられるアルカリ可溶性高分子化合物としては、アクリル樹脂が、緩衝作用を有する有機化合物と塩基とを主成分とするアルカリ現像液に対して下層の溶解性を良好に保持し得るため、現像時の画像形成の観点から好ましい。さらにこのアクリル樹脂としてスルホアミド基を有するものが特に好ましい。また、感熱層で用いられるアルカリ可溶性高分子化合物としては、未露光部では強い水素結合性を生起し、露光部においては、一部の水素結合が容易に解除される点などからフェノール性水酸基を有する樹脂が望ましい。更に好ましくはノボラック樹脂である。
赤外線吸収染料は、感熱層のみならず、下層にも添加することができる。下層に赤外線吸収染料を添加することで下層も感熱層として機能させることができる。下層に赤外線吸収染料を添加する場合には、上部の感熱層におけるのと互いに同じ物を用いてもよく、また異なる物を用いてもよい。
その他の添加剤は下層のみに含有させてもよいし、感熱層のみに含有させてもよく、更に両方の層に含有させてもよい。
【0085】
平版印刷版原版の画像形成層(上記2層構造も含む)は、上記各成分を溶媒に溶かして、適当な支持体上に塗布することができる。溶媒として、例えばエチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、α−ブチロラクトン、トルエンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。前記溶媒は単独でも2種以上を混合してもよい。
【0086】
画像形成層を2層構造とする場合、感熱層に用いるアルカリ可溶性高分子化合物と下層に用いるアルカリ可溶性高分子化合物に対して溶解性の異なるものを選ぶことが好ましい。つまり、下層を塗布した後、それに隣接して上層である感熱層を塗布する際、最上層の塗布溶剤として下層のアルカリ可溶性高分子化合物を溶解させうる溶剤を用いると、層界面での混合が無視できなくなり、極端な場合、重層にならず均一な単一層になってしまう場合がある。このため、上部の感熱層を塗布するのに用いる溶剤は、下層に含まれるアルカリ可溶性高分子化合物に対する貧溶剤であることが好ましい。
【0087】
画像形成層を塗布する場合の溶媒中の上記成分の全固形分濃度は、一般的に1〜50質量%が好ましい。
また、支持体上に塗布、乾燥して設けられる画像形成層の乾燥塗布量(固形分)としては、一般的に0.5〜5.0g/m2が好ましい。2層構造とする場合には、感熱層は0.05〜1.0g/m2であり、下層は0.3〜3.0g/m2であることが好ましい。塗布量が少なくなるにつれて、見かけの感度は大になるが、画像形成層の皮膜特性は低下する。
支持体上に塗布する方法としては、公知の種々の方法の中から適宜選択できるが、例えばバーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、グレード塗布、ロール塗布などを挙げることができる。
画像形成層用塗布液中には、塗布性を良化する目的で界面活性剤、例えば特開昭62−170950号公報に記載のフッ素系界面活性剤などを添加することができる。その添加量としては、画像形成層の全固形分質量に対して0.01〜1質量%が好ましく、0.05〜0.5質量%がより好ましい。
【0088】
[光重合型感光性平版印刷版]
光重合型感光性平版印刷版の画像記録層は、一般的に(A)ラジカル発生剤(ラジカル重合開始剤)と、発生したラジカルにより重合反応を起こして硬化する(B)ラジカル重合性化合物とを含有する。この画像記録層では、露光により、(A)ラジカル重合開始剤が分解し、ラジカルを発生する。(B)ラジカル重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有し、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれ、発生したラジカルにより連鎖的に重合反応が生起し、硬化して画像部が形成される。以下、画像記録層の構成成分について説明する。
【0089】
(A)ラジカル発生剤
好適に用いられるラジカル発生剤としては、トリアハロメチル基を有するS−トリアジン、ボレート塩、及びオニウム塩が挙げられる。オニウム塩としては、ヨードニウム塩、ジアゾニウム塩、スルホニウム塩が挙げられる。これらのオニウム塩は酸発生剤としての機能も有するが、後述するラジカル重合性化合物と併用する際には、ラジカル重合の開始剤として機能する。特に、後述する赤外線吸収剤と組み合わせると、加熱或いは露光領域で、熱により、オニウム塩等のラジカル重合開始剤が分解し、ラジカルを発生する。好適に用いられるオニウム塩は、下記一般式(1)〜(3)で表されるオニウム塩である。
【0090】
【化6】

【0091】
式(1)中、Ar11とAr12は、それぞれ独立に、置換基を有していても良い炭素原子数20個以下のアリール基を示す。このアリール基が置換基を有する場合の好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、または炭素原子数12個以下のアリールオキシ基が挙げられる。Z11-はハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、カルボン酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオン、およびスルホン酸イオン等の対イオンを表し、好ましくは、過塩素酸イオン、カルボン酸イオン、およびアリールスルホン酸イオンである。
【0092】
式(2)中、Ar21は、置換基を有していても良い炭素原子数20個以下のアリール基を示す。好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、炭素原子数12個以下のアリールオキシ基、炭素原子数12個以下のアルキルアミノ基、炭素原子数12個以下のジアルキルアミノ基、炭素原子数12個以下のアリールアミノ基または、炭素原子数12個以下のジアリールアミノ基が挙げられる。Z21-はZ11-と同義の対イオンを表す。
【0093】
式(3)中、R31、R32及びR33は、それぞれ同じでも異なっていても良く、置換基を有していても良い炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、または炭素原子数12個以下のアリールオキシ基が挙げられる。Z31-はZ11-と同義の対イオンを表す。
【0094】
好適に用いることのできるオニウム塩の具体例としては、以下に挙げるが、本発明はこれらに制限されるものではない。




【0095】
【化7】













【0096】
【化8】















【0097】
【化9】





【0098】
【化10】















【0099】
【化11】

【0100】
ラジカル発生剤は、極大吸収波長が400nm以下であることが好ましく、さらに360nm以下であることが好ましい。このように吸収波長を紫外線領域にすることにより、平版印刷版原版の取り扱いを白灯下で実施することができる。
【0101】
これらのラジカル発生剤は、画像記録層塗布液の全固形分に対し0.1〜50質量%、好ましくは0.5〜30質量%、特に好ましくは1〜20質量%の割合で画像記録層塗布液中に添加することができる。添加量が0.1質量%未満であると感度が低くなり、また50質量%を越えると印刷時非画像部に汚れが発生する。これらのラジカル発生剤は、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。また、これらのラジカル発生剤は他の成分と同一の層に添加してもよいし、別の層を設けそこへ添加してもよい。
【0102】
(B)ラジカル重合性化合物
画像記録層に使用されるラジカル重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有するラジカル重合性化合物であり、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。この様な化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、これらを特に限定無く用いることができる。これらは、例えばモノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体およびオリゴマー、またはそれらの混合物ならびにそれらの共重合体などの化学的形態をもつ。モノマーおよびその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類があげられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基や、アミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル、アミド類と単官能もしくは多官能イソシアネート類、エポキシ類との付加反応物、単官能もしくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアナート基やエポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルまたはアミド類と、単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類およびチオール類との付加反応物、さらに、ハロゲン基やトシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルまたはアミド類と、単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類およびチオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン等に置き換えた化合物群を使用する事も可能である。
【0103】
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルであるラジカル重合性化合物の具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等がある。
【0104】
メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。
【0105】
イタコン酸エステルとしては、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等がある。
クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等がある。
イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等がある。
マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等がある。
【0106】
その他のエステルの例として、例えば、特公昭46−27926号、特公昭51−47334号、特開昭57−196231号公報に記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240号、特開昭59−5241号、特開平2−226149号公報に記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613号公報に記載のアミノ基を含有するもの等も好適に用いられる。
【0107】
また、イソシアネートと水酸基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報中に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記一般式(4)で示される水酸基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
【0108】
一般式(4)
CH2=C(R41)COOCH2CH(R42)OH
(ただし、R41およびR42は、HまたはCH3を示す。)
【0109】
これらのラジカル重合性化合物について、どのような構造を用いるか、単独で使用するか併用するか、添加量はどうかといった、使用方法の詳細は、最終的な記録材料の性能設計にあわせて、任意に設定できる。例えば、次のような観点から選択される。感度の点では1分子あたりの不飽和基含量が多い構造が好ましく、多くの場合、2官能以上がこのましい。また、画像部すなわち硬化膜の強度を高くするためには、3官能以上のものが良く、さらに、異なる官能数・異なる重合性基を有する化合物(例えば、アクリル酸エステル系化合物、メタクリル酸エステル系化合物、スチレン系化合物等)を組み合わせて用いることで、感光性と強度の両方を調節する方法も有効である。大きな分子量の化合物や、疎水性の高い化合物は感度や膜強度に優れる反面、現像スピードや現像液中での析出といった点で好ましく無い場合がある。また、画像記録層中の他の成分(例えばバインダーポリマー、開始剤、着色剤等)との相溶性、分散性に対しても、ラジカル重合化合物の選択・使用法は重要な要因であり、例えば、低純度化合物の使用や、2種以上化合物の併用によって、相溶性を向上させうることがある。また、支持体、オーバーコート層等の密着性を向上せしめる目的で特定の構造を選択することもあり得る。画像記録層中のラジカル重合性化合物の配合比に関しては、多い方が感度的に有利であるが、多すぎる場合には、好ましく無い相分離が生じたり、画像記録層の粘着性による製造工程上の問題(例えば、記録層成分の転写、粘着に由来する製造不良)や、現像液からの析出が生じる等の問題を生じうる。
これらの観点から、ラジカル重合性化合物の好ましい配合比は、多くの場合、組成物全成分に対して5〜80質量%、好ましくは20〜75質量%である。また、これらは単独で用いても2種以上併用してもよい。そのほか、ラジカル重合性化合物の使用法は、酸素に対する重合阻害の大小、解像度、かぶり性、屈折率変化、表面粘着性等の観点から適切な構造、配合、添加量を任意に選択でき、さらに場合によっては下塗り、上塗りといった層構成・塗布方法も実施しうる。
【0110】
(C)光吸収剤
紫外光線、可視光線、又は赤外光線に感応して画像形成を行うことから、画像記録層中に光吸収剤を含有することが好ましい。用いられる光吸収剤は紫外線、可視光、又は赤外線を吸収する化合物であり、ラジカル発生剤と組み合わせることによりラジカルを発生する。
このような組合せとしては、例えば、紫外域に感度を示す開始剤としてはアセトフェノン系、ベンゾイン系、ベンゾフェノン系、チオキサンソン系などが挙げられる。
【0111】
また、可視光域に感度を示す開始剤としては、有機過酸化物とクロロフィルとの組合せ、有機過酸化物とエオシンGとの組合せ、有機過酸化物とリボフラビンとの組合せ、有機過酸化物とメチレンブルーとの組合せ、有機過酸化物と(チオ)ピリリウム塩との組合せ、有機過酸化物とメロシアニンとの組合せ、有機過酸化物とキノリンとの組合せ、有機過酸化物とスチリルキノンとの組合せ、有機過酸化物と(チオ)キサンテン系色素との組合せ、有機過酸化物とリボフラビンテトラブチレートとの組合せ、有機過酸化物と(ケト)クマリン系色素との組合せ、有機過酸化物とN−フェニルグリシンとチオキサンテン系色素との組合せ、ジフェニルヨードニウム塩とメロシアニン色素との組合せ、ジフェニルヨードニウム塩とローダニン誘導体ポリマーとの組合せ、ジフェニルヨードニウム塩とケトクマリン系色素との組合せ、ジフェニルヨードニウム塩とテトラフェニルポルフィリン系色素との組合せ、ジフェニルヨードニウム塩とテトラベンゾポルフィリンとの組合せ、ジフェニルヨードニウム塩とスピロピランとの組合せ、
【0112】
ジフェニルヨードニウム塩とN−フェニルグリシンとチオキサンテン系色素との組合せ、ジフェニルヨードニウム塩とN−フェニルグリシンとメロシアニン系色素との組合せ、シアニン系色素、シアニン系色素のアルキルほう酸塩、ローダミン系色素のアルキルほう酸塩、メチレンブルー系色素のアルキルほう酸塩、鉄アレーン錯体、鉄アレーン錯体とケトクマリン系色素との組合せ、鉄アレーン錯体とチオキサンテン系色素との組合せ、チタノセン、チタノセンとメロシアニン系色素との組合せ、ビスイミダゾールとアリーリリデンアリールケトンとの組合せ、ビスイミダゾールとケトクマリン系色素との組合せ、N−フェニルグリシンとケトクマリン系色素との組合せ、N−フェニルグリシンと(チオ)キサンテン系色素との組合せ、トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン誘導体、トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン誘導体とメロシアニン系色素との組合せ、トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン誘導体とケトクマリン系色素との組合せ、トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン誘導体とチオピリリウム塩との組合せ、トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン誘導体とチオキサンテン系色素との組合せ、アミノ安息香酸エステルとリボフラビンテトラブチレートとの組合せ、2−メルカプトベンゾイミダゾールとチオピリリウム塩との組合せ等が挙げられる。
さらに、近赤外光に感度を有する開始剤は例えば、近赤外域吸収性カチオン染料のボレート塩、近赤外域吸収カチオン性染料とボレート塩の組合せ、近赤外域吸収性カチオン染料とトリアジン化合物の組合せ等が挙げられる。
【0113】
画像記録材料の画像記録層を、赤外線を発するレーザで記録する場合には、露光に使用された赤外光を熱に変換する機能を有する光吸収剤を添加することが感度向上の観点から好ましい。このような光吸収剤としては、特に波長760nmから1200nmに吸収極大を有する染料又は顔料が好ましい。以下に、赤外域に吸収を有する光吸収剤(赤外線吸収剤)について詳述する。
【0114】
染料としては、市販の染料及び例えば「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、例えば、特開平10−39509号公報の段落番号[0050]〜[0051]に記載のものを挙げることができる。
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体が挙げられる。さらに、シアニン色素が好ましく、特に下記一般式(5)で示されるシアニン色素が最も好ましい。
【0115】
【化12】

一般式(5)中、X1は、ハロゲン原子、X2−L1またはNL23を示す。ここで、X2は酸素原子または、硫黄原子を示し、L1は、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示し、L2及びL3はそれぞれ独立に炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。R1およびR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。記録層塗布液の保存安定性から、R1およびR2は、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましく、さらに、R1とR2とは互いに結合し、5員環または6員環を形成していることが特に好ましい。
Ar1、Ar2は、それぞれ同じでも異なっていても良く、置換基を有していても良い芳香族炭化水素基を示す。Y1、Y2は、それぞれ同じでも異なっていても良く、硫黄原子または炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を示す。R3、R4は、それぞれ同じでも異なっていても良く、置換基を有していても良い炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、カルボキシル基、スルホ基が挙げられる。R5、R6、R7およびR8は、それぞれ同じでも異なっていても良く、水素原子または炭素原子数12個以下の炭化水素基を示す。原料の入手性から、好ましくは水素原子である。また、Z1-は、対アニオンを示す。ただし、R1〜R8のいずれかにスルホ基が置換されている場合は、Z1-は必要ない。好ましいZ1-は、記録層塗布液の保存安定性から、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオン、およびスルホン酸イオンであり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、トリフルオロメチルスルホン酸イオン、およびアリールスルホン酸イオンである。
【0116】
好適に用いることのできる一般式(5)で示されるシアニン色素の具体例としては、以下に挙げるが、これらに制限されるものではない。





























【0117】
【化13】












【0118】
【化14】











【0119】
【化15】












【0120】
【化16】

【0121】
使用される顔料としては、市販の顔料及びカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が利用できる。
【0122】
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。これらの顔料の詳細は、特開平10−39509号公報の段落番号[0052]〜[0054]に詳細に記載されており、これらを適用することができる。これらの顔料のうち好ましいものはカーボンブラックである。
【0123】
画像記録層中における、上述の染料又は顔料の含有量としては、画像記録層の全固形分質量に対し、0.01〜50質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましく、さらに染料の場合には、0.5〜10質量%が最も好ましく、顔料の場合には、1.0〜10質量%が最も好ましい。
前記含有量が、0.01質量%未満であると、感度が低くなることがあり、50質量%を超えると、平版印刷用原版とした場合の非画像部に汚れが発生することがある。
【0124】
(D)バインダーポリマー
画像記録層にさらにバインダーポリマーを添加することが膜性向上の観点から好ましい。バインダーとしては線状有機ポリマーを用いることが好ましい。このような「線状有機ポリマー」としては、どれを使用しても構わない。好ましくは水現像あるいは弱アルカリ水現像を可能とするために、水あるいは弱アルカリ水可溶性または膨潤性である線状有機ポリマーが選択される。線状有機ポリマーは、画像記録層を形成するための皮膜形成剤としてだけでなく、水、弱アルカリ水あるいは有機溶剤現像剤としての用途に応じて選択使用される。例えば、水可溶性有機ポリマーを用いると水現像が可能になる。このような線状有機ポリマーとしては、側鎖にカルボン酸基を有するラジカル重合体、例えば特開昭59−44615号、特公昭54−34327号、特公昭58−12577号、特公昭54−25957号、特開昭54−92723号、特開昭59−53836号、特開昭59−71048号公報に記載されているもの、すなわち、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等がある。また同様に側鎖にカルボン酸基を有する酸性セルロース誘導体がある。この他に水酸基を有する重合体に環状酸無水物を付加させたものなどが有用である。
【0125】
特にこれらの中で、ベンジル基またはアリル基と、カルボキシル基を側鎖に有する(メタ)アクリル樹脂が、膜強度、感度、現像性のバランスに優れており、好適である。
【0126】
また、特公平7−12004号、特公平7−120041号、特公平7−120042号、特公平8−12424号、特開昭63−287944号、特開昭63−287947号、特開平1−271741号公報等に記載される酸基を含有するウレタン系バインダーポリマーは、非常に、強度に優れるので、耐刷性・低露光適性の点で有利である。
【0127】
さらにこの他に水溶性線状有機ポリマーとして、ポリビニルピロリドンやポリエチレンオキサイド等が有用である。また硬化皮膜の強度を上げるためにアルコール可溶性ナイロンや2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンとエピクロロヒドリンのポリエーテル等も有用である。
【0128】
使用されるポリマーの重量平均分子量については好ましくは5000以上であり、さらに好ましくは1万〜30万の範囲であり、数平均分子量については好ましくは1000以上であり、さらに好ましくは2000〜25万の範囲である。多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は1以上が好ましく、さらに好ましくは1.1〜10の範囲である。
【0129】
これらのポリマーは、ランダムポリマー、ブロックポリマー、グラフトポリマー等いずれでもよいが、ランダムポリマーであることが好ましい。
【0130】
使用されるバインダーポリマーは単独で用いても混合して用いてもよい。これらポリマーは、画像記録層塗布液の全固形分に対し20〜95質量%、好ましくは30〜90質量%の割合で画像記録層中に添加される。添加量が20質量%未満の場合は、画像形成した際、画像部の強度が不足する。また添加量が95質量%を越える場合は、画像形成されない。またラジカル重合可能なエチレン性不飽和二重結合を有する化合物と線状有機ポリマーは、重量比で1/9〜7/3の範囲とするのが好ましい。
【0131】
その他の成分
画像記録層には、さらに必要に応じてこれら以外に種々の化合物を添加してもよい。例えば、可視光域に大きな吸収を持つ染料を画像の着色剤として使用することができる。具体的には、オイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)等、及び特開昭62−293247号に記載されている染料を挙げることができる。また、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、酸化チタンなどの顔料も好適に用いることができる。
これらの着色剤は、画像形成後、画像部と非画像部の区別がつきやすいので、添加する方が好ましい。なお、添加量は、画像記録層塗布液全固形分に対し、0.01〜10質量%の割合である。
【0132】
また、画像記録層が光重合層である場合、塗布液の調製中あるいは保存中においてラジカル重合可能なエチレン性不飽和二重結合を有する化合物の不要な熱重合を阻止するために少量の熱重合防止剤を添加することが望ましい。適当な熱重合防止剤としてはハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩等が挙げられる。熱重合防止剤の添加量は、全組成物の重量に対して約0.01質量%〜約5質量%が好ましい。また必要に応じて、画像記録層の摩擦係数を下げ、キズを防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体や1−ドコサノールのようなアルコール等を添加して、塗布後の乾燥の過程で画像記録層の表面に偏在させてもよい。
【0133】
また、画像記録層塗布液中には、現像条件に対する処理の安定性を広げるため、特開昭62−251740号や特開平3−208514号に記載されているような非イオン界面活性剤、特開昭59−121044号、特開平4−13149号に記載されているような両性界面活性剤を添加することができる。
【0134】
非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。
両性界面活性剤の具体例としては、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、N−テトラデシル−N,N−ベタイン型(例えば、商品名アモーゲンK、第一工業(株)製)等が挙げられる。
上記非イオン界面活性剤及び両性界面活性剤の画像記録層塗布液中に占める割合は、0.05〜15質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5質量%である。
【0135】
さらに、画像記録層塗布液中には、必要に応じ、塗膜の柔軟性等を付与するために可塑剤が加えられる。例えば、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル等が用いられる。
【0136】
画像記録材料を製造するには、通常、画像記録層塗布液に必要な上記各成分を溶媒に溶かして、適当な支持体上に塗布すればよい。ここで使用する溶媒としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−3−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、トルエン、水等を挙げることができるがこれに限定されるものではない。これらの溶媒は単独又は混合して使用される。溶媒中の上記成分(添加剤を含む全固形分)の濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
【0137】
また塗布、乾燥後に得られる支持体上の画像記録層塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、平版印刷版原版についていえば一般的に0.5〜5.0g/m2が好ましい。塗布する方法としては、種々の方法を用いることができるが、例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げることができる。塗布量が少なくなるにつれて、見かけの感度は大になるが、画像記録の機能を果たす画像記録層の皮膜特性は低下する。
【0138】
−紫外線光重合型感光性平版印刷版−
紫外線光重合型感光性平版印刷版の感光層の一般的な構成成分として、(a)付加重合可能なエチレン性不飽和二重結合を少なくとも1個有する化合物、(b)アルカリ水溶液に可溶又は膨潤性の高分子重合体、及び(c)光重合開始剤系などがあり、必要に応じ、さらに着色剤、可塑剤、熱重合禁止剤などの種々の化合物が添加される。
本発明の版面保護剤を適用する光重合型感光性平版印刷版は特に制限されるものではなく、例えば特開2001−125255号公報、特開2001−183822号公報、特開2001−199174号公報、特開2001−228608号公報、特開2006‐276237号公報などに記載されたものが挙げられる。特に特開2006‐276237号公報記載の光重合開始剤(段落[0131]〜[0138]に記載)、増感色素(段落[0139]〜[0173]に記載)が好ましく、場合により連鎖移動剤(段落[0174]〜[0186]に記載)を添加してもよい。
【0139】
[支持体]
上述の種々の感光性平版印刷版の支持体としては、寸度的に安定な板状物であれば、特に限定されないが、アルミニウム支持体が好適である。
アルミニウム支持体は、寸度的に安定なアルミニウムを主成分とするアルミニウムおよびアルミニウム含有(例えばケイ素、銅、マンガン、マグネシウム、クロム、亜鉛、鉛、ビスマス、ニッケルなどの金属とアルミニウムとの合金)合金、またはアルミニウムまたはアルミニウム合金がラミネートもしくは蒸着されたプラスチックフィルムまたは紙の中から選ばれる。さらに特公昭48−18327号に記載の様なポリエチレンテレフタレートフィルム上にアルミニウムシートが結合された複合体シートでもかまわない。このアルミニウム支持体には、適宜後述の基板表面処理が施される。
【0140】
(砂目立て処理)
砂目立て処理方法は、特開昭56−28893号公報に開示されているような機械的砂目立て、化学的エッチング、電解グレインなどがある。さらに塩酸または硝酸電解液中で電気化学的に砂目立てする電気化学的砂目立て方法、及びアルミニウム表面を金属ワイヤーでひっかくワイヤーブラシグレイン法、研磨球と研磨剤でアルミニウム表面を砂目立でするボールグレイン法、ナイロンブラシと研磨剤で表面を砂目立てするブラシグレイン法のような機械的砂目立て法を用いることができ、上記砂目立て方法を単独あるいは組み合わせて用いることもできる。
【0141】
その中でも特に有用に使用される表面粗さを作る方法は、塩酸または硝酸電解液中で化学的に砂目立てする電気化学的方法であり、適する電流密度は100C/dm2〜400C/dm2の範囲である。さらに具体的には、0.1〜50%の塩酸または硝酸を含む電解液中、温度20〜100℃、時間1秒〜30分、電流密度100C/dm2〜400C/dm2の条件で電解を行うことが好ましい。
このように砂目立て処理したアルミニウム支持体は、酸またはアルカリにより化学的にエッチングされる。酸をエッチング剤として用いる場合は、微細構造を破壊するのに時間がかがり、工業的に適用するに際しては不利であるが、アルカリをエッチング剤として用いることにより改善できる。
好適に用いられるアルカリ剤は、苛性ソーダ、炭酸ソーダ、アルミン酸ソーダ、メタケイ酸ソーダ、リン酸ソーダ、水酸化カリウム、水酸化リチウム等を用い、濃度と温度の好ましい範囲はそれぞれ1〜50%、20〜100℃であり。Alの溶解量が5〜20g/m3となるような条件が好ましい。
【0142】
エッチングのあと表面に残留する汚れ(スマット)を除去するために酸洗いが行われる。用いられる酸は硝酸、硫酸、リン酸、クロム酸、フッ酸、ホウフッ化水素酸等が用いられる。特に電気化学的粗面化処理後のスマット除去処理方法としては、好ましくは特開昭53−12739号公報に記載されているような50〜90℃の温度の15〜65重量%の硫酸と接触させる方法及び特公昭48−28123号公報に記載されているアルカリエッチングする方法が挙げられる。
なお、例えば有効に用いられるAl支持体の表面粗さは(Ra)は0.3〜0.7μmである。
【0143】
(陽極酸化処理)
以上のようにして処理されたアルミニウム支持体は、さらに陽極酸化処理が施される。
陽極酸化処理はこの分野で従来より行われている方法で行うことができる。具体的には、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、クロム酸、硼酸などの無機酸、シュウ酸、スルファミン酸、ベンゼンスルフォン酸などの有機酸あるいはこれらの二種以上を組み合わせて水溶液または非水溶液中でアルミニウムに直流または交流を流すとアルミニウム支持体表面に陽極酸化皮膜を形成することができる。
陽極酸化処理の条件は使用される電解液によって種々変化するので一概に決定され得ないが、一般的には電解液の濃度が1〜80%、液温5〜70℃、電流密度0.5〜60アンペア/dm2、電圧1〜100V、電解時間10〜100秒の範囲が適当である。
【0144】
これらの陽極酸化処理のうちでも特に英国特許第1,412,768号明細書に記載されている、硫酸中で高電流密度で陽極酸化する方法及び米国特許第3,511,661号明細書に記載されているリン酸を電解浴として陽極酸化する方法が好ましい。
陽極酸化皮膜は1〜10g/m2であることが好ましく、1g/m2以下であると版に傷が入りやすく、10g/m2以上は製造に多大な電力が必要となり、経済的に不利である。好ましくは、1.5〜7g/m2である。更に好ましくは、2〜5g/g2である。
更に、砂目立て処理及び陽極酸化後、アルミニウム支持体に封孔処理を施してもかまわない。かかる封孔処理は、熱水及び無機塩または有機塩を含む熱水溶液への基板の浸漬ならびに水蒸気浴などによって行われる。また、このアルミニウム支持体にはアルカリ金属珪酸塩によるシリケート処理のほか、たとえば弗化ジルコニウム酸カリウム、燐酸塩等の水溶液への浸漬処理などの表面処理がなされてもかまわない。
【0145】
また、感光性平版印刷版の支持体には、前記アルミニウム支持体の他に、寸度的に安定な以下の板状物も好適に用いられる。例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上記の如き金属がラミネート若しくは蒸着された紙またはプラスチックフィルム等が挙げられる。
【0146】
また、これらの支持体に対しては、その支持体に応じた表面親水化処理を行うことも好ましい。表面親水化処理には、エッチングや酸化、還元、ゾル−ゲルコーティングなどの化学反応による処理や、支持体表面に吸着するような特定の化合物をコーティングすること等が挙げられる。
【0147】
[下塗り層]
感光性平版印刷版は、支持体上に少なくとも画像形成層や画像記録層を積層して設けたものであるが、必要に応じて支持体上に下塗り層を設けることができる。
下塗り層に用いる成分としては、種々の有機化合物が挙げられ、例えばカルボキシメチルセルロース、デキストリン、アラビアガム、2−アミノエチルホスホン酸などのアミノ基を有するホスホン酸類;置換基を有していてもよいフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アルキルホスホン酸、グリセロホスホン酸、メチレンジホスホン酸及びエチレンジホスホン酸などの有機ホスホン酸;置換基を有していてもよいフェニルリン酸、ナフチルリン酸、アルキルリン酸及びグリセロリン酸などの有機リン酸;置換基を有していてもよいフェニルホスフィン酸、ナフチルホスフィン酸、アルキルホスフィン酸及びグリセロホスフィン酸などの有機ホスフィン酸;グリシンやβ−アラニンなどのアミノ酸類;トリエタノールアミンの塩酸塩などのヒドロキシル基を有するアミンの塩酸塩などが挙げられる。
前記有機化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。また、前述したジアゾニウム塩を下塗りすることも好ましい態様である。
【0148】
また、下塗り層としては、下記一般式(V)で表される構成単位を有する有機高分子化合物の少なくとも1種を含む有機下塗り層も好ましい。
【化17】

【0149】
式中、R51は水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基を表し、R52及びR53は、それぞれ独立に水素原子、水酸基、ハロゲン原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、−OR54、−COOR55、−CONHR56、−COR57又は−CNを表し、前記R52及びR53は互いに結合して環構造を形成してもよい。ここで、R54〜R57はそれぞれ独立にアルキル基又はアリール基を表す。Xは水素原子、金属原子、−NR58596061を表す。ここでR58〜R61はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基又は置換アリール基を表し、R58及びR59は互いに結合して環構造を形成してもよい。mは1〜3の整数を表す。
下塗り層の乾燥塗布量としては2〜200mg/m2が好ましく、5〜100mg/m2がより好ましい。この乾燥塗布量が2mg/m2未満であると十分な膜性が得られないことがある。一方200mg/m2を超えて塗布しても、それ以上の効果を得ることはできない。
【0150】
他の好ましい例として、水溶性の樹脂、例えばポリビニルホスホン酸、スルホ基を側鎖に有する重合体および共重合体、ポリアクリル酸、水溶性金属塩(例えば硼酸亜鉛)もしくは、黄色染料、アミン塩等を下塗りしたものも好適である。さらに特開平7−159983号公報に開示されているようなラジカルによって付加反応を起こし得る官能基を共有結合させたゾル−ゲル処理基板も好適に用いられる。
【0151】
また、任意の支持体上に表面層として耐水性の親水性層を設けたものも上げることができる。この様な表面層としては例えば米国特許第3055295号明細書や、特開昭56−13168号公報記載の無機顔料と結着剤とからなる層、特開平9−80744号公報記載の親水性膨潤層、特表平8−507727号公報記載の酸化チタン、ポリビニルアルコール、珪酸類からなるゾルゲル膜等を上げる事ができる。これらの親水化処理は、支持体の表面を親水性とするために施される以外に、その上に設けられる感光層の有害な反応を防ぐため、かつ感光層の密着性向上等のために施されるものである。
【0152】
中間層のその他の例として、特公昭50−7481号、特開昭54−72104号、特開昭59−101651号、特開昭60−149491号、特開昭60−232998号、特開平3−56177号、特開平4−282637号、特開平5−16558号、特開平5−246171号、特開平7−314937号、特開平8−202025号、特開平8−320551号、特開平9−34104号、特開平9−236911号、特開平9−269593号、特開平10−69092号、特開平10−115931号、特開平10−161317号、特開平10−260536号、特開平10−282682号、特開平11−84674号、特開平11−38635号、特開平11−38629号、特開平10−282645号、特開平10−301262号、特開平11−24277号、特開平11−109641号、特開平10−319600号、特開平11−327152号、特開2000−10292号、特開2000−235254号、特開2000−352824号、特開2001−209170号の各公報等に記載のものを挙げることができる。
【0153】
下塗り層は下記方法により設けることができる。
即ち、水又はメタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤もしくはそれらの混合溶剤に前記有機化合物を溶解させた下塗り層用溶液をアルミニウム板などの支持体上に塗布、乾燥して設ける方法と、水又はメタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤若しくはそれらの混合溶剤に前記有機化合物を溶解させた下塗り層用溶液に、アルミニウム板などの支持体を浸漬して前記有機化合物を吸着させ、その後水等で洗浄、乾燥して設ける方法である。
【0154】
前者の方法では、前記有機化合物の0.005〜10質量%濃度の下塗り層用溶液を用いることが好ましい。
一方、後者の方法では、下塗り層用溶液の前記有機化合物の濃度としては、0.01〜20質量%が適当であり、好ましくは0.05〜10質量%であり、より好ましくは0.1〜5質量%である。また、浸漬温度としては20〜90℃が好ましく、25〜50℃がより好ましい。浸漬時間としては0.1秒〜20分が好ましく、2秒〜1分がより好ましい。下塗り層用溶液はアンモニア、トリエチルアミン、水酸化カリウムなどの塩基性物質や塩酸、リン酸などの酸性物質を用いてpH1〜12の範囲に調整することもできる。また、調子再現性改良を目的として黄色染料を追加することもできる。
【0155】
本発明の版面保護剤を用いて製版する平版印刷版の一例として、その感光性平版印刷版の支持体の裏面に、すなわち感光層を有する面に対して反対面に、バックコート層が設けられているものがある。
かかるバックコートとしては特開平5−45885号公報記載の有機高分子化合物および特開平6−35174号公報記載の有機または無機金属化合物を加水分解および重縮合させて得られる金属酸化物からなる被覆層が好ましく用いられる。これらの被覆層のうち、Si(OCH3)4、Si(OC2H5)4、Si(OC3H7)4、Si(OC4H9)4、などの珪素のアルコキシ化合物が安価で入手し易く、それから得られる金属酸化物の被覆層が耐現像液に優れており特に好ましい。
さらにバックコート層に含まれる有機高分子化合物としては、たとえばエポキシ樹脂などが挙げられ、エポキシ樹脂とともに、ロジン及びフェノール性水酸基を有する樹脂から選ばれる少なくとも1種を含んでいる態様も好ましいものとして挙げられる。中でもエポキシ樹脂とロジンの組み合わせが好適に用いられ、さらにフェノール性水酸基を有する樹脂を含有していてもよい。さらに、バックコート層の種々の特性を向上させるために、その他の樹脂や、添加剤を併用してもよい。
【0156】
(エポキシ樹脂)
バックコート層に用いるエポキシ樹脂としては、多価アルコールや多価フェノールなどとエピクロロヒドリンとの反応によって得られるグリシジルエーテル化合物若しくはそのプレポリマー、更に、アクリル酸又はメタクリ酸グリシジルの重合体又は共重合体等を挙げることができる。
好適な化合物の具体例としては、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、レソルシノールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル若しくはエピクロロヒドリン重付加物、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル若しくはエピクロロヒドリン重付加物、ハロゲン化ビスフェノールAのジグリシジルエーテル若しくはエピクロロヒドリン重付加物、ビフェニル型ビスフェノールのジグリシジルエーテル若しくはエピクロロヒドリン重付加物、ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物等、更に、メタクリ酸メチル/メタクリ酸グリシジル共重合体、メタクリ酸エチル/メタクリ酸グリシジル共重合体等が挙げられる。
【0157】
上記の化合物の市販品としては、例えば、ジャパンエポキシレジン(株)製のjER1001(分子量約900、エポキシ当量450〜500)、jER1002(分子量約1600、エポキシ当量600〜700)、jER1004(分子量約1060、エポキシ当量875〜975)、jER1007(分子量約2900、エポキシ当量2000)、jER1009(分子量約3750、エポキシ当量3000)、jER1010(分子量約5500、エポキシ当量4000)、jER1100L(エポキシ当量4000)、jERYX31575(エポキシ当量1200)、住友化学(株)製のスミエポキシESCN−195XHN、ESCN−195Xl、ESCN−195XF等を挙げることができる。
【0158】
エポキシ樹脂の重量平均分子量は、ポリスチレン換算で、1000以上であることが好ましい。より好ましくは、重量平均分子量が1,000〜500,000で、更に好ましくは1,000〜200,000、特に好ましくは1,000〜100,000である。
エポキシ樹脂のバックコート層中の含有量は、バックコート層の全質量に対して、50〜100質量%の範囲であることが好ましく、65〜99質量%の範囲であることがより好ましく、70〜97.5質量%の範囲であることが更に好ましい。
【0159】
バックコート層に用いるロジンとしては、例えば、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジンなどの天然ロジン;該天然ロジンから誘導される重合ロジン;前記天然ロジンや重合ロジンを不均化又は水素添加して得られる安定化ロジン;前記天然ロジンや重合ロジンに不飽和カルボン酸類を付加して得られる不飽和酸変性ロジンなどが挙げられる。なお、前記不飽和酸変性ロジンとは、例えば、マレイン酸変性ロジン、無水マレイン酸変性ロジン、フマル酸変性ロジン、イタコン酸変性ロジン、クロトン酸変性ロジン、ケイ皮酸変性ロジン、アクリル酸変性ロジン、メタクリル酸変性ロジンなど、或いはこれらに対応する酸変性重合ロジンが挙げられる。
このようなロジンの中でも、ロジン変性フェノール樹脂又はロジンエステルが好ましく用いられる。
【0160】
前記ロジンエステルとしては、スーパーエステルE−720、スーパーエステルE−730−55、スーパーエステルE−650、スーパーエステルE−786−60、タマノルE−100、エマルジョンAM−1002、エマルジョンSE−50(以上全て商品名、特殊ロジンエステルエマルジョン、荒川化学工業(株)製)、スーパーエステルL、スーパーエステルA−18、スーパーエステルA−75、スーパーエステルA−100、スーパーエステルA−115、スーパーエステルA−125、スーパーエステルT−125(以上全て商品名、特殊ロジンエステル、荒川化学工業(株)製)等を好ましく用いることができる。
また、ロジンエステルとして、エステルガムAAG、エステルガムAAL、エステルガムA、エステルガムAAV、エステルガム105、エステルガムHS、エステルガムAT、エステルガムH、エステルガムHP、エステルガムHD、ペンセルA、ペンセルAD、ペンセルAZ、ペンセルC、ペンセルD−125、ペンセルD−135、ペンセルD−160、ペンセルKK(以上全て商品名、ロジンエステル系樹脂、荒川化学工業(株)製)、も好ましく用いることができる。
【0161】
また、前記ロジン変性フェノール樹脂としては、タマノル135、タマノル145、タマノル340、タマノル350、タマノル351、タマノル352、タマノル353、タマノル354、タマノル359、タマノル361、タマノル362、タマノル366、タマノル374、タマノル379、タマノル380、タマノル381、タマノル384、タマノル386、タマノル387、タマノル388、タマノル392、タマノル394、タマノル395、タマノル396、タマノル405、タマノル406、タマノル409、タマノル410、タマノル414、タマノル415(以上全て商品名、ロジン変性フェノール樹脂、荒川化学工業(株)製)、を好ましく用いることができる。
更に、その他のロジンとしては、ロンヂスR、ロンヂスK−25、ロンヂスK−80、ロンヂスK−18(以上全て商品名、ロジン誘導体、荒川化学工業(株)製)パインクリスタルKR−85、パインクリスタルKR−612、パインクリスタルKR−614、パインクリスタルKE−100、パインクリスタルKE−311、パインクリスタルKE−359、パインクリスタルKE−604、パインクリスタル30PX、パインクリスタルD−6011、パインクリスタルD−6154、パインクリスタルD−6240、パインクリスタルKM−1500、パインクリスタルKM−1550(以上全て商品名、超淡色系ロジン誘導体、荒川化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0162】
ロジンの重量平均分子量は、ポリスチレン換算で、1000以上であることが好ましい。より好ましくは、重量平均分子量が1,000〜500,000で、更に好ましくは1,000〜200,000、特に好ましくは1,000〜100,000である。
ロジンのバックコート層中の含有量は、バックコート層の全質量に対して、0〜50質量%の範囲であることが好ましく、1〜35質量%の範囲であることがより好ましく、2.5〜30質量%の範囲であることが更に好ましい。
【0163】
バックコート層に用いるフェノール性水酸基を有する樹脂としては、例えば、フェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体、m−クレゾールとホルムアルデヒドとの縮重合体、p−クレゾールとホルムアルデヒドとの縮重合体、m−/p−混合クレゾールとホルムアルデヒドとの縮重合体、フェノールとクレゾール(m−、p−、又はm−/p−混合のいずれでもよい)とホルムアルデヒドとの縮重合体等のノボラック樹脂や、ピロガロールとアセトンとの縮重合体であるピロガロール樹脂を挙げることができる。
【0164】
また、フェノール性水酸基を有する樹脂として、フェノール性水酸基を有する化合物を共重合させた共重合体を用いることもできる。
ここで、フェノール性水酸基を有する化合物としては、フェノール性水酸基を有するアクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、又はヒドロキシスチレン等が挙げられる。
【0165】
フェノール性水酸基を有する樹脂の重量平均分子量は、皮膜性の観点から、ポリスチレン換算で、1000以上であることが好ましい。より好ましくは、重量平均分子量が1,000〜500,000で、更に好ましくは1,000〜200,000、特に好ましくは1,000〜100,000である。
【0166】
フェノール性水酸基を有する樹脂のバックコート層中の含有量は、皮膜性、感光性記録層側の最表面との耐接着性の観点から、バックコート層の全質量に対して、0.1〜90質量%の範囲であることが好ましく、0.1〜50質量%の範囲であることがより好ましく、0.5〜30質量%の範囲であることが更に好ましい。
【0167】
更に、バックコート層には、皮膜性向上のために有機、無機の高分子化合物を添加したり、また、可とう性を持たせたり、すべり性を調整する目的で、可塑剤、界面活性剤、その他の添加物を必要により添加できる。
バックコート層には、更に、o−ナフトキノンジアジド化合物、感光性アジド化合物、不飽和二重結合含有モノマーを主成分とする光重合性組成物、桂皮酸やジメチルマレイミド基を含む光架橋性化合物、及びジアゾニウム塩モノマーや芳香族ジアゾニウム塩と反応性カルボニル基含有有機縮合剤(特に、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドなどのアルデヒド類又はアセタール類)とを酸性媒体中で縮合したジアゾ樹脂を耐薬品性の向上などのために添加することができる。このうちポジ型の感光性化合物として知られるo−ナフトキノンジアジド化合物類が好適に用いられる。
【0168】
バックコート層は、フイルムの熱圧着や溶融ラミネーション法、塗布法によって設けることができるが、溶液からの塗布が薄層を効率よく設ける上でより好ましい。従って、バックコート層に用いられる樹脂としては非結晶性で、工業用各種有機溶剤に溶け易いものが好ましい。バックコート層の被覆量は、乾燥後の質量で、0.01〜10g/m2の範囲が好ましく、0.05〜7g/m2の範囲がより好ましく、0.1〜5g/m2の範囲が更に好ましい。
【0169】
[露光]
上記のようにして得られた平版印刷版原版を画像露光する。像露光に用いられる活性光線の光源としては、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯等がある。放射線としては、電子線、X線、イオンビーム、遠赤外線などがある。またg線、i線、Deep-UV光、高密度エネルギービーム(レーザービーム)も使用される。レーザービームとしてはヘリウム・ネオンレーザー、アルゴンレーザー、クリプトンレーザー、ヘリウム・カドミウムレーザー、KrFエキシマレーザー等が挙げられる。またレーザー直描型印刷版においては近赤外から赤外領域に発光波長を持つ光源が好ましく、固体レーザー、半導体レーザーが特に好ましい。
上記の平版印刷版原版は露光後、従来より用いられているアルカリ性現像液にて現像処理される。必要に応じて露光後、現像前に加熱処理を行ってもよい。使用されるアルカリ性現像液及び現像処理条件は特に制限されるものではなく、感材に応じて適宜選択して用いることができる。
現像処理後の版は、上記に詳述したように本発明の版面保護剤で処理される。
【実施例】
【0170】
以下、実施例によって本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
版面保護剤の作成
各種版面保護剤1〜28を、以下の表1〜5の組成(単位:グラム)に従って調製した。
また、その版面保護剤について液分離の観察を行った。具体的には、版面保護剤を透明なガラスビンに入れ、45℃に加温し、3日経過後の液分離状態を目視にて次の基準で評価した。結果を表1〜5の下段に示す。
◎:分離は起きていない。
○:表面にわずかに浮遊物があるが問題ない。
○△:表面にわずかな層分離が認められるが、振ると分離はなくなり、使用には問題ない。
△:表面に層分離があるが、振ると層分離はなくなり、使用には問題ない。
×:2層に分離し、振っても分離したままで、長期間経時後の使用には問題が生じる。
【0171】
また、版面保護剤について発泡性の観察を行った。具体的には版面保護剤を作成後、容器(例えば富士フイルム(株)社製GN−2K用5L容器)に充填する際の発泡性と、富士フイルム(株)社製自動現像機LP−1310HIIに仕込み、15分間循環させた際の発泡性を比較した。結果を表1〜5の下段に示す。
A:容器に充填する際の発泡と、自動現像機内で循環したときの発泡はほとんどなく、発泡性で問題になることはない。
B:容器に充填する際の発泡と、自動現像機内で循環したときの発泡は認められるが、発泡性で問題になることはない。
C:容器に充填する際の発泡は多いが、生産性を落としてゆっくり充填すれば問題ないレベルである。自動現像機内で循環したときの発泡は認められるが、発泡性で問題になることはない。
D:容器に充填する際の発泡と、自動現像機内で循環したときの発泡がひどく、発泡性で実用には適さない。
【0172】
指紋跡汚れに関する試験
上記の各版面保護剤を用いて光重合型平版印刷版から製版された平版印刷版において、指紋跡汚れを評価した。
[評価方法]
平版印刷版の非画線部に指紋をつけ、温度35℃、湿度85%で一晩保管した。その後、オフセット印刷機に取り付けて印刷を開始した。指紋をつけた部分の指紋跡汚れが無くなり、正常な印刷物が得られるまでの枚数を比較した。この枚数が少ない方が、無駄な紙を消費することがないので優れている。結果を表1〜5の下段に示す。
なお、用いた光重合型平版印刷版の調製及び製版方法は、以下のとおりである。
【0173】
光重合型平版印刷版の調製及び製版
(支持体の作製)
厚さ0.30mm、幅1030mmのJIS A 1050アルミニウム板を用いて、以下に示す表面処理を行った。
<表面処理>
表面処理は、以下の(a)〜(f)の各種処理を連続的に行った。なお、各処理及び水洗の後にはニップローラで液切りを行った。
【0174】
(a)アルミニウム板を苛性ソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%、温度70℃でエッチング処理を行い、アルミニウム板を5g/m2溶解した。その後水洗を行った。
(b)温度30℃の硝酸濃度1質量%水溶液(アルミニウムイオン0.5質量%含む)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後水洗した。
【0175】
(c)60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。この時の電解液は、硝酸1質量%水溶液(アルミニウムイオン0.5質量%、アンモニウムイオン0.007質量%含む)、温度30℃であった。交流電源は電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが2msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電流密度は電流のピーク値で25A/dm2、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で250C/cm2であった。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。その後水洗を行った。
【0176】
(d)アルミニウム板を苛性ソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%でスプレーによるエッチング処理を35℃で行い、アルミニウム板を0.2g/m2溶解し、前段の交流を用いて電気化学的な粗面化を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分の除去と、生成したピットのエッジ部分を溶解し、エッジ部分を滑らかにした。その後水洗した。
【0177】
(e)温度60℃の硫酸濃度25質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後スプレーによる水洗を行った。
(f)硫酸濃度170g/リットル(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、温度33℃、電流密度が5(A/dm2)で、50秒間陽極酸化処理を行った。その後水洗を行った。この時の陽極酸化皮膜重量が2.7g/m2であった。
【0178】
このようにして得られたアルミニウム支持体の表面粗さRa、表面積比ΔS、急峻度a45は、それぞれ、Ra=0.27(測定機器;東京精密(株)製サーフコム、蝕針先端径2ミクロンメーター)、ΔS=75%、a45=44%(測定機器;セイコーインスツルメンツ社製SPA300/SPI3800N)であった。
【0179】
(下塗り層の形成)
続いて、表面処理したアルミニウム支持体の同じ面に、下記下塗り層形成用塗布液をワイヤーバーにて塗布し、90℃30秒間乾燥した。塗布量は10mg/m2であった。
<下塗り層形成用塗布液>
・下記構造の高分子化合物A(重量平均分子量:10,000) 0.05g
・メタノール 27g
・イオン交換水 3g
【0180】
【化18】

【0181】
(感光層の形成)
下記感光層形成用塗布液Aを調製し、上記のように形成された下塗り層上にワイヤーバーを用いて塗布した。乾燥は、温風式乾燥装置にて125℃で34秒間行った。乾燥後の被覆量は1.4g/m2であった。
<感光層形成用塗布液A>
・赤外線吸収剤(IR−1) 0.038g
・重合開始剤A(S−1) 0.061g
・重合開始剤B(I−1) 0.094g
・メルカプト化合物(E−1) 0.015g
・重合性化合物(M−1) 0.425g
(商品名:A−BPE−4 新中村化学工業(株))
・バインダーポリマーA(B−1) 0.311g
・バインダーポリマーB(B−2) 0.250g
・バインダーポリマーC(B−3) 0.062g
・添加剤(T−1) 0.079g
・重合禁止剤(Q−1) 0.0012g
・エチルバイオレット(EV−1) 0.021g
・フッ素系界面活性剤 0.0081g
(メガファックF−780−F 大日本インキ化学工業(株)、
メチルイソブチルケトン(MIBK)30質量%溶液)
・メチルエチルケトン 5.886g
・メタノール 2.733g
・1−メトキシ−2−プロパノール 5.886g
【0182】
なお、上記感光層形成用塗布液Aに用いた、赤外線吸収剤(IR−1)、重合開始剤A(S−1)、重合開始剤B(I−1)、メルカプト化合物(E−1)、重合性化合物(M−1)、バインダーポリマーA(B−1)、バインダーポリマーB(B−2)、バインダーポリマーC(B−3)、添加剤(T−1)、重合禁止剤(Q−1)、及びエチルバイオレット(EV−1)の構造を以下に示す。






































【0183】
【化19】









【0184】
【化20】






【0185】
【化21】

【0186】
(下部保護層の形成)
形成された感光層上に、合成雲母(ソマシフMEB−3L、3.2%水分散液、コープケミカル(株)製)、ポリビニルアルコール(ゴーセランCKS−50:ケン化度99モル%、重合度300、スルホン酸変性ポリビニルアルコール日本合成化学工業(株)製)、界面活性剤A(日本エマルジョン社製、エマレックス710)、及び界面活性剤B(アデカプルロニックP−84:旭電化工業(株)製)の混合水溶液(下部保護層形成用塗布液)をワイヤーバーで塗布し、温風式乾燥装置にて125℃で30秒間乾燥させた。
この混合水溶液(下部保護層形成用塗布液)中の合成雲母(固形分)/ポリビニルアルコール/界面活性剤A/界面活性剤Bの含有量割合は、7.5/89/2/1.5(質量%)であり、塗布量は(乾燥後の被覆量)は0.5g/m2であった。
【0187】
(上部保護層の形成)
下部保護層上に、有機フィラー(アートパールJ−7P、根上工業(株)製)、合成雲母(ソマシフMEB−3L、3.2%水分散液、コープケミカル(株)製)、ポリビニルアルコール(L−3266:ケン化度87モル%、重合度300、スルホン酸変性ポリビニルアルコール日本合成化学工業(株)製)、増粘剤(セロゲンFS−B、第一工業製薬(株)製)、高分子化合物A(前記構造)、及び界面活性剤(日本エマルジョン社製、エマレックス710)の混合水溶液(上部保護層形成用塗布液)をワイヤーバーで塗布し、温風式乾燥装置にて125℃で30秒間乾燥させた。
この混合水溶液(上部保護層形成用塗布液)中の有機フィラー/合成雲母(固形分)/ポリビニルアルコール/増粘剤/高分子化合物A/界面活性剤の含有量割合は、4.7/2.8/67.4/18.6/2.3/4.2(質量%)であり、塗布量は(乾燥後の被覆量)は1.2g/m2であった。
【0188】
こうして得られた平版印刷版原版をセッティング部分からオートローダーにて、Creo社製Trendsetter3244に搬送し、解像度2400dpiで50%平網画像を、出力7W、外面ドラム回転数150rpm、版面エネルギー110mJ/cm2で露光した。露光後、加熱処理、水洗処理は行わず、富士フイルム(株)社製自動現像機LP−1310HIIを用い搬送速度(ライン速度)2m/分、現像温度30℃で現像処理した。なお、現像液はDH−Nの1:4水希釈液を用い、現像補充液はFCT−421の1:1.4水希釈、版面保護剤は表1〜5に示す各種版面保護剤1〜28を用いた。こうして塗布量0.25g/m2の版面保護層を設けた平版印刷版を得た。
この平版印刷版を用いて上記の指紋跡汚れの試験を行った。

































【0189】
【表1】







































【0190】
【表2】







































【0191】
【表3】






































【0192】
【表4】






































【0193】
【表5】







【0194】
上記の試験結果から、本発明の版面保護剤は液分離せず、発泡も抑えられたものであり、本発明の版面保護剤で処理した平版印刷版は、保管中に指紋が付着したとしても、印刷時において少ない損紙で正常な印刷物を得ることができ、よって、該版面保護剤が指紋跡汚れ防止効果に優れていることが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される少なくとも1種の化合物を含有することを特徴とする平版印刷版用版面保護剤。
R−O−(CH2CH2O)n−H (I)
(式中、Rは炭素原子数14〜22のアルキル基を表し、nはエチレンオキシド基の平均付加モル数であり、20〜60を表す。)
【請求項2】
一般式(I)においてnが30〜50である、請求項1の平版印刷版用版面保護剤。
【請求項3】
一般式(I)においてnが30〜40である、請求項1の平版印刷版用版面保護剤。
【請求項4】
一般式(I)においてRが炭素原子数16又は18のアルキル基である、請求項1〜3のいずれか1項記載の平版印刷版用版面保護剤。
【請求項5】
支持体上に、光重合開始剤及びエチレン性不飽和結合含有化合物を含有する光重合型感光層を有する感光性平版印刷版原版を、画像露光及び現像処理した後、請求項1〜4のいずれか1項記載の平版印刷版用版面保護剤にて処理することを特徴とする平版印刷版の製版方法。

【公開番号】特開2009−83106(P2009−83106A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−251788(P2007−251788)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】