説明

平版式耳付き和紙ラベル用紙およびその製造方法

【課題】本発明は、手漉き、あるいは機械漉きによって縦横列に抄紙された平版式耳付き和紙および剥離紙に貼付して印刷することを目的とする平版式耳付き和紙ラベル用紙およびその製造方法である。
【解決手段】本発明は、手漉き、あるいは機械漉きで一定間隔ごとに細い線部8によって接続された状態で抄紙される複数の平版状の耳付き和紙7を脱水・乾燥させ、剥離紙12と貼り合わせることにより、耳付き和紙7の切り離しが切手を切り離す如く容易に行うことができる構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平版式耳付き和紙ラベル用紙およびその製造方法に関する。詳しくはパソコン用プリンタ、オフセット印刷、スクリーン印刷などによって容易に枚葉印刷することができる平版式耳付き和紙ラベル用紙およびその製造方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来より高級感を演出するために日本酒や焼酎などのビン容器のラベルとして耳付き和紙が用いられることが多い。この耳付き和紙は、他のラベルと異なり、その縁形状がちぎったように形成されることから一枚ごとの製造となり、印刷機による連続給紙印刷ができない。また、ビン容器などに耳付き和紙を貼る場合には、手作業によって一枚ごとに糊を付けてビン容器等に貼り付けるしかなく、効率的なラベルの貼付が行えないことにより非常に手間と生産コストが高くなる問題があった。
【0003】

そこで耳付き和紙として、例えば必要とされる和紙のサイズより大きい和紙を漉く。その際に必要とするサイズに、紙漉きのすだれ(メッシュ)の面に凸部を付けすかしを作る。その後印刷を正確に行うために、すかしの部分を残すように紙片を裁断する。印刷が終了したら、すかしに沿って水切りの技法でちぎるように裁断し、裁断部が漏れているうちに耳を整える。すかしにより裁断部が薄くなるので裁断しやすく、裁断面の繊維のケバ立ちも少なく、簡単に印刷可能な耳付き和紙ができる(特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開2000−328497号公報(要約書、第5図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら前記耳付き和紙の製造方法では、縦横(行列)の集合体で、ある程度大きさでの印刷は可能であるが印刷後のすかしに沿って折り込んで、その頂点に水を付けて、水が頂点に良くしみ込んだところを見はかり、静かに破る。そしてその破断面を手でしごくことにより耳付きのような体裁とする「ちぎり」という作業工程が必要であり、非常に煩雑な作業となる。また、剥離紙などへの貼り合わせも不可能となる。
【0006】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであって、手漉き、あるいは機械漉きによって切手の様に手で切り離し可能な細い線で接続された状態で抄紙された平版式耳付き和紙並びに剥離紙に貼付して印刷することを目的とする平版式耳付き和紙ラベル用紙およびその製造方法である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明に係る平版式耳付き和紙ラベル用紙は、手漉き、あるいは機械漉きで一定間隔ごとに接続された状態で抄紙される複数の平版状の耳付き和紙を脱水・乾燥させる構成とする。
【0008】
ここで、機械漉き、あるいは手漉きで、互いの耳付き和紙が、水又は工具を使用しないで容易に切り離すことが可能とされる細い線部によって接続される状態で抄紙されることにより、印刷された各耳付き和紙ラベルを、切手を切り離す如く容易に手で簡単に切り離すことが可能となる。
【0009】
また、上記の目的を達成するために、本発明に係る平版式耳付き和紙ラベル用紙の製造方法は、機械漉き、あるいは手漉きで互いに一定間隔ごとに接続された状態で抄紙される複数の平版状の耳付き和紙を脱水・乾燥させる構成とする。
【0010】
ここで、機械漉き、あるいは手漉きで、互いの耳付き和紙が、水又は工具を使用しないで容易に切り離すことが可能とされる細い線部によって接続される状態で抄紙することにより、接続された個々の耳付き和紙ラベルを切り離す場合には、手によって容易に切り離すことが可能となる。
【0011】
また、前記複数の平版状の耳付き和紙の集合体の周囲が少なくとも1辺以上印刷位置決め可能な直線とすることにより前記複数の平版状の耳付き和紙を印刷可能とすることにより、パソコン用プリンターやオフセット印刷あるいはスクリーン印刷機などによって容易に印刷することができ。
【0012】
また、前記耳付き和紙の形状もシルクスクリーン印刷の製版要領で製版され、抄紙されるので名刺、はがき、卒業証書、あるいは各種ラベルに応じて四角形、丸、楕円などの任意の形状とすることが可能となる。
【0013】
また、乾燥させた複数の平版状の耳付き和紙を剥離紙に貼着させることにより、糊付け作業もなく、剥離紙から個々の耳付き和紙を切り離して瓶や袋へのラベルの効率的な貼着が可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複数の耳付き和紙がリード紙部および細い線部によって接続される状態で抄紙されることにより、従来のように水などで湿し引きちぎり切断することなく、切手を切り離すように容易に複数の耳付き和紙を切り離すことが可能となる。
【0015】
また、耳付き和紙の集合体の周囲が少なくとも1辺以上印刷位置決め可能な直線とされことにより、印刷時の位置決めが可能となり各耳付き和紙への印刷が正確、かつ自動的に印刷することが可能となる。
【0016】
また、複数の平版状の耳付き和紙を剥離紙に貼着させることにより、剥離紙より耳付き和紙を切り離して瓶や袋などに容易に貼着することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面を参酌しながら説明し、本発明の理解に供する。
図1は、本発明を適用した耳付き和紙を機械漉きによって製造するための丸網の使用例を示す説明図、図2は、本発明を適用した耳付き和紙を機械漉きの短網によって製造するための平網の使用例を示す説明図、図3は、本発明を適用した耳付き和紙を手漉きによって製造するための竹簾の使用例を示す説明図である。
【0018】
ここで、漉き箱の中で抄紙回転する丸網シリンダー1の円周表面には通常25〜160メッシュの金網が形成される。
【0019】
また、ロール2間において平面状に抄紙回転する短網の平網3は通常25〜160メッシュの網目に形成されている。
【0020】
また、手漉きの場合には本実施例では竹簾4を使用するが、他に金簾、金網およびプラスチック網なども機械漉き同様手漉きにも利用できる。この金網や竹簾表面にシルクスクリーン印刷の製版の要領で耳付き和紙の型をつける。
【0021】
この耳付き和紙の具体例として、機械漉きによる丸網の金網、短網の平網あるいは手漉きによる竹簾の表面に紫外線硬化剤を一定厚さに塗布し、暗室などで乾燥させ、それに透明なフィルムに黒色系で描かれた「耳付き和紙」の形状と切断位置マークを印刷したポジフィルムを重ね合わせ固定し、ポジフィルムの上から紫外線ランプで照射し、硬化させると透明部は紫外線の照射により感光固着し、それ以外の部分は硬化されずに固着しない。
【0022】
したがって、版のポジフィルムを剥がし、網を洗浄することにより固着されない部分は洗い流され、網目部と目潰しされた部分ができ、この網を利用して紙漉きを行えば、ポジフィルムの版と同等の形状の耳付き和紙の集合体ができる。
【0023】
また、図1で示す丸網シリンダー1により平版式耳付き和紙を抄紙する場合には、丸網シリンダー1の長手方向に沿って網目をつぶして切り目5が形成されるように焼付け製版を行うことにより平版状の耳付き和紙が抄紙できる。
【0024】
そこで図4に示すように、ラベル、あるいは名刺などに使用するために複数の耳付き和紙を抄紙する場合には、前述したように金網や竹簾表面にシルクスクリーン印刷の製版の要領で抄紙される各耳付き和紙7が細い線部8によって互いに接続されるように形成されるものである。
【0025】
すなわち、図5の(イ)(ロ)で示すように、透明なフィルム上に複数の「耳付き和紙」が互いに細い線部8によって互いに接続された集合体となるように黒色系によって描く。
【0026】
そして金網、あるいは竹簾表面に感光剤を一定厚さに塗布し、暗室などで乾燥させ、それに前記透明なフィルムを重ね合わせて紫外線を照射して焼付け製版する。これにより黒色部は感光されないので水洗いすると感光剤が流れて網目がそのまま残り、透明部分は感光して網目をつぶす(白抜き部分)。
【0027】
したがって図5(イ)で示すように、耳付き和紙7および細い線部8のみが網目9として残ることになり、網目9部分には和紙原料が吸い込まれて紙層が形成され、また逆に感光剤が固着した部分には和紙原料が吸い込まれないので紙層が形成されないことにより、図5(ロ)に示すように、和紙原料が吸い込まれない部分(黒塗り部分)が開口されることで各耳付き和紙7が細い線部8によって互いに連結された状態となる。
【0028】
また、前記複数の耳付き和紙7の集合体である和紙基体6の各辺は不揃いな状態となっているために、図6に示すように、和紙基体6のコーナーおよび各辺にカットマーク用としての透孔マーク10を設けることによって和紙基体6の各辺を直線状に裁断することができ、印刷機やプリンターにセットすることが可能となる。
【0029】
このようにして抄紙された湿紙状態の和紙基体6は、プレス機(図示せず。)などによって脱水され、乾燥ドライヤーなどにより乾燥される。
【0030】
次に、図7(イ)で示すように、巻取部11に巻き取られた剥離紙12の上面に塗工機13によって粘着剤14を塗布し、乾燥部15で粘着剤を乾燥させる。そして平版状の和紙基体6を乾燥ドラム21で乾燥させ、剥離紙12に粘着剤を塗布乾燥させた上面と平版状の耳付き和紙7とを貼り合せロール16により貼り合せる。但し、この場合には剥離紙12の粘着面に貼り合わされた耳付き和紙7および細い線部8以外の粘着剤が露出した部分に対して粘着力を消すためにブロックキング防止剤(図示せず。)を吹く付ける必要がある。
【0031】
また、図7(ロ)で示すように、平版状の和紙基体6を乾燥ドラム21で乾燥させ、和紙基体6の上面に塗工機13によって粘着剤14を塗布する。そして巻取部11に巻き取られた剥離紙12と前記平版状の和紙基体6の粘着剤14面とを貼り合せロール16により貼り合せられる。
【0032】
また、図7(ハ)で示すように、平版状の耳付き和紙7を搬送厚板17の先頭部分に仮止めをし、図中入口側から粘着剤塗布ロール13間に押し入れて耳付き和紙7に粘着剤14の塗布を行う。次に粘着剤塗布された耳付き和紙7と前もって所定の寸法に裁断された剥離紙12とを手などによって貼り合せて貼合せロール16を通して圧着させて貼り合わせを行い、透孔マーク10を利用してプリンター、印刷機のサイズに合せて小切りを行い粘着耳付き和紙ラベル用紙を完成させる。
【0033】
そこで図7(ロ)および(ハ)で示す粘着耳付き和紙ラベル用紙では、図8(イ)(ロ)で示すように、本実施例における剥離紙12とは、基紙18上にラミネート19層が設けられ、このラミネート19上にシリコーン20が塗布された構成とするものである。
【0034】
このようにして剥離紙12上に貼り合わされた和紙基体6は、シリコーン20上に塗布される粘着剤14上に貼着されることによってシリコーン20による粘着剤14の接着力より和紙による粘着剤14の接着力の方が強いために、耳付き和紙7を剥離紙12より剥ぎ取る際には、前記耳付き和紙7の裏面に粘着剤14が付いた状態で剥がれることにより、瓶・袋への貼る付けが可能となる。
【0035】
さらに、耳付き和紙7を剥離紙12より剥ぎ取る際には、複数の耳付き和紙7が細い線部8によって連結されているために、切手を切り離す如く容易に手で簡単に切り離すことができ、かつ細い線部8以外の周辺はすかし状、すなわち耳付き状となっているために細い線部8を剥ぎ取った状態では、一枚ごとに作成した耳付き和紙とほとんど変わらない状態となる。
【0036】
ここで、本実施例で詳述する耳付き和紙の形状は必ずしも四角形である必要性はなく、五角形や、例えば図9に示すように丸形状の耳付き和紙などラベルを貼る包装容器の種類に応じて最も適した形状とすることが望ましい。
【0037】
以上の構成よりなる本発明では、複数の抄紙された耳付き和紙が細い線部によって接続されているために、剥離紙に貼り合わせた平版状の和紙基体6の1辺を直線状に裁断することによって印刷時位置決めができ、オフセット印刷等で集合印刷が手軽にまとめてでき、又パソコンを使用して手軽にプリントが可能である。
【0038】
したがって、瓶ラベル、袋物シール、筒ラベル、箱に使用すると手作りのイメージが加わり商品価値を高めることができる。更に形状が任意にできるので多様な用途に使用可能である。
【0039】
また、名刺、はがき、卒業証書、ランチョンマット等に利用できる耳付き和紙は、まとめての印刷が可能であり、印刷コストを下げることが可能となる。さらに、ラベルとして耳付き和紙を利用する場合には、耳付き和紙に接着剤を塗布し剥離紙と貼り合わせれば、手軽に剥離紙から1枚毎剥がせて対象物に容易に貼ることができ、小ロットの印刷粘着シールが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明を適用した耳付き和紙を機械漉きによって製造するための丸網の使用例を示す説明図である。
【図2】本発明を適用した耳付き和紙を機械漉きによって製造するための短網抄紙機の平網の使用例を示す説明図である。
【図3】本発明を適用した耳付き和紙を手漉きによって製造するための竹簾の使用例を示す説明図である。
【図4】本発明を適用した平版式の耳付き和紙の作成状態を示す説明図である。
【図5】本発明を適用した平版式の耳付き和紙の製版状態から妙紙状態を示す拡大説明図である。
【図6】本発明を適用した平版式の耳付き和紙にカットマークを付けた状態を示す説明図である。
【図7】本発明を適用した平版式の耳付き和紙と剥離紙を貼り合わせる工程を示す説明図である。
【図8】本発明を適用した平版式の耳付き和紙と剥離紙との粘着状態を示す拡大説明図である。
【図9】本発明を適用した平版式の耳付き和紙の他の形状を示す説明図である。
【符号の説明】
【0041】
1 丸網シリンダー
2 ロール
3 平網
4 竹簾
5 切り目
6 和紙基体
7 耳付き和紙
8 細い線部
9 網目
10 透孔マーク
11 巻取部
12 剥離紙
13 塗工機
14 粘着剤
15 乾燥部
16 貼り合わせロール
17 ブロッキング防止剤
18 基体
19 ラミネート層
20 シリコーン
21 乾燥ドラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手漉き、あるいは機械漉きで一定間隔ごとに接続された状態で抄紙される複数の平版状の耳付き和紙を脱水・乾燥させる
ことを特徴とする平版式耳付き和紙ラベル。
【請求項2】
前記乾燥させた複数の平版状の耳付き和紙を剥離紙に貼着させる
ことを特徴とする請求項1記載の平版式耳付き和紙ラベル。
【請求項3】
前記互いの耳付き和紙が、水又は工具を使用しないで容易に切り離すことが可能とされる細い線部によって接続される
ことを特徴とする請求項1または2記載の平版式耳付き和紙ラベル。
【請求項4】
前記複数の平版状の耳付き和紙の集合体の周囲が少なくとも1辺以上印刷位置決め可能な直線とされことにより枚葉印刷機により前記複数の平版状の耳付き和紙が印刷可能とされる
ことを特徴とする請求項1、2または3記載の平版式耳付き和紙ラベル。
【請求項5】
機械漉き、あるいは手漉きで互いに一定間隔ごとに接続された状態で抄紙される複数の平版状の耳付き和紙を脱水・乾燥させる
ことを特徴とする平版式耳付き和紙ラベルの製造方法。
【請求項6】
前記乾燥させた複数の平版状の耳付き和紙を剥離紙に貼着させる
ことを特徴とする請求項5記載の平版式耳付き和紙ラベルの製造方法。
【請求項7】
前記互いの耳付き和紙を、水又は工具を使用しないで容易に切り離すことができるように、細い線部によって接続する
ことを特徴とする請求項5または6記載の平版式耳付き和紙ラベルの製造方法。
【請求項8】
前記複数の平版状の耳付き和紙の集合体の周囲が少なくとも1辺以上印刷位置決め可能な直線とすることにより前記複数の平版状の耳付き和紙を印刷可能とする
ことを特徴とする請求項5、6または7記載の平版式耳付き和紙ラベルの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate