説明

平面アンテナの設計方法及び製造方法

【課題】従来の設計方法よりも良好なアンテナ特性を有する平面アンテナを設計し得る平面アンテナの設計方法を実現する。
【解決手段】本発明は、遺伝的アルゴリズムを用いて候補アンテナ群から最良アンテナを探索する探索工程を含む設計方法である。候補アンテナ群は、放射素子11’が形成される放射素子形成領域11と地板11’が形成される地板形成領域11とを含むアンテナ形成領域10を覆う平面導体から、アンテナ形成領域10を分割して得られる複数のブロックより選択された欠損ブロック4,7,15を覆う部分を欠損させた平面アンテナにより構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面アンテナの設計方法及び製造方法、特に、遺伝的アルゴリズムを用いた平面アンテナの設計方法及び製造方法に関する。また、そのような設計方法により設計された平面アンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムの発展に伴い、無線機器の高性能化が求められている。また、携帯電話端末やPDA(Personal Digital Assistance)など小型無線機器の普及も著しく、小型でありながら高性能なアンテナへのニーズが高まっている。そして、このようなニーズに応えるアンテナの設計方法として、遺伝的アルゴリズムとアンテナ特性の数値シミュレーションとを組み合わせた設計方法が注目を集めている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ロッド型の放射素子を有するモノポール型アンテナの設計方法において、遺伝的アルゴリズムを用いた設計方法が開示されている。また、特許文献2には、2次元形状又は3次元形状の放射素子を有するモノポール型アンテナの設計方法において、遺伝的アルゴリズムを用いた設計方法が開示されている。また、特許文献3には、携帯通信端末が閉状態/閉状態であるとして取得した子集団に分けて最適化する技術が開示されている。また、特許文献4には、遺伝的アルゴリズムを用いて、筐体の形状、筐体におけるアンテナの位置、アンテナの形状、筐体におけるアンテナ周辺部品の位置、及びアンテナ周辺部品の形状を最適化する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−238234号公報(2006年 9月 7日公開)
【特許文献2】特開2007− 74604号公報(2007年 3月22日公開)
【特許文献3】特開2011−141882号公報(2011年 7月21日公開)
【特許文献4】特開2006−295580号公報(2006年10月26日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1〜4に記載の設計方法において、遺伝的アルゴリズムを用いた最適化の対象となるのは放射素子の形状のみであり、地板(グランド板)の形状は最適化されていない。したがって、これら従来の設計方法には、更なる最適化の余地が残されている。また、特許文献1〜2に記載の設計方法においては、初期集団の構成方法が十分に考慮されておらず、初期集団の構成方法についても未だ検討の余地が残されている。
【0006】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、特許文献1〜2に記載の設計方法よりも良好なアンテナ特性を有する平面アンテナを設計し得る平面アンテナの設計方法を実現することにある。また、本発明の更なる目的は、特許文献1〜2に記載の設計方法よりも遺伝的アルゴリズムの収束に時間の掛からない平面アンテナの設計方法を実現することにある。また、本発明の更なる目的は、多様な形状で、また、多様な搭載環境で最良のアンテナ特性を発揮する平面アンテナの設計方法を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る設計方法は、放射素子及び地板を備えた平面アンテナの設計方法であって、遺伝的アルゴリズムを用いて候補アンテナ群から最良のアンテナ特性を有する最良アンテナを探索する探索工程を含み、上記候補アンテナ群は、上記放射素子が形成される放射素子形成領域と上記地板が形成される地板形成領域とを含むアンテナ形成領域を覆う平面導体から、該アンテナ形成領域を分割して得られる複数のブロックより選択された欠損ブロックを覆う部分を欠損させた平面アンテナにより構成される、ことを特徴とする。
【0008】
上記の構成によれば、最良のアンテナ特性を得るために放射素子と地板とを同時に最適化することができるので、放射素子のみを最適化する従来の設計方法よりも良好なアンテナ特性を有する平面アンテナを設計することができる。
【0009】
本発明に係る設計方法において、上記複数のブロックには、上記放射素子形成領域と上記地板形成領域との間に介在するギャップ領域に属するブロックが含まれている、ことが好ましい。
【0010】
上記の構成によれば、放射素子と地板とに加えて、更に、放射素子と地板との間に介在する整合パターンや短絡部なども同時に最適化することができるので、更に良好なアンテナ特性を有する平面アンテナを設計することができる。
【0011】
本発明に係る設計方法において、上記探索工程にて上記遺伝的アルゴリズムを適用するために用いられる初期集団は、上記複数のブロックに占める上記欠損ブロックの割合が同じ平面アンテナにより構成される、ことが好ましい。
【0012】
上記の構成によれば、上記初期集団を構成する平面アンテナにて上記複数のブロックに占める上記欠損ブロックの割合を適宜設定することによって、遺伝的アルゴリズムの収束時間を短縮することができる。
【0013】
本発明に係る設計方法において、上記初期集団を構成する平面アンテナにて上記複数のブロックに占める上記欠損ブロックの割合は、0.2以上0.5以下である、ことが好ましい。
【0014】
上記の構成によれば、遺伝的アルゴリズムの収束時間を短縮することができる。
【0015】
本発明に係る設計方法において、上記探索工程にて上記遺伝的アルゴリズムを適用するために用いられる評価関数は、予め定められた2以上の動作帯域の各々におけるVSWRの最大値の重み付き平均である、ことが好ましい。
【0016】
上記の構成によれば、予め定められた2以上の動作帯域において良好なVSWR特性を有する平面アンテナを設計することができる。
【0017】
本発明に係る設計方法において、上記重み付き平均にて低周波側動作帯域におけるVSWRの最大値に係る重み係数は、上記重み付き平均にて高周波側動作帯域におけるVSWRの最大値に係る重み係数以上である、ことが好ましい。
【0018】
上記の構成によれば、インピーダンス整合の図りにくい低周波側動作帯域における最適化を優先することによって、遺伝的アルゴリズムの収束時間を短縮することができる。また、低周波側動作帯域及び高周波側動作帯域の双方において、良好なVSWR特性を有する平面アンテナを設計することができる。
【0019】
本発明に係る設計方法において、上記探索工程にて用いる遺伝的アルゴリズムは、単純型遺伝的アルゴリズムであってもよいし、分散型遺伝的アルゴリズムであってもよい。後者の構成を採用した場合、局所解が探索された際に、進化が停滞して大域解(真の解)に収束するまでの時間が長くなるといった問題が生じ難い。また、各島に関する交叉・突然変異・選択などの処理を並列的に実行することができるので、計算速度を向上させることができる。
【0020】
本発明に係る設計方法において、上記候補アンテナ群は、複数の島に分離されており、上記複数の島の各々に属する平面アンテナに適用される評価関数は、他の島に属する平面アンテナとは異なる折り曲げ方で折り曲げた状態におけるアンテナ特性に応じたものである、ことが好ましい。
【0021】
上記の構成によれば、折り曲げ方の異なる複数のアンテナであって、折り曲げた状態で最良のアンテナ特性を発揮する複数のアンテナを同時に設計することが可能になる。
【0022】
本発明に係る設計方法において、上記評価関数は、予め定められた低周波側動作帯域におけるVSWRの最大値と正の相関をもつ指標と、予め定められた高周波側動作帯域におけるVSWRの最大値と正の相関をもつ指標と、上記低周波側動作帯域と上記高周波側動作帯域とに挟まれた中間帯域におけるVSWRの最小値と負の相関をもつ指標とに応じたものである、ことが好ましい。
【0023】
上記の構成によれば、上記高周波側動作帯域と上記低周波側帯域との双方において反射性が低く、かつ、上記中間帯域において遮断性の高い平面アンテナを設計することができる。
【0024】
本発明に係る設計方法において、上記評価関数は、更に、上記低周波側動作帯域の中心周波数において最も無指向に近い面における各方向の利得の標準偏差と正の相関をもつ指標と、上記低周波側動作帯域の中心周波数において最も無指向に近い面における各方向の利得の標準偏差と正の相関をもつ指標とに応じたものである、ことが好ましい。
【0025】
上記の構成によれば、無指向に近い平面アンテナを設計することができる。
【0026】
本発明に係る設計方法において、上記評価関数は、更に、上記低周波側動作帯域の中心周波数において最も無指向に近い面と上記低周波側動作帯域の中心周波数において最も無指向に近い面とが一致したときに、これらの面が一致しないときよりも小さい値を取る指標に応じたものである、ことが好ましい。
【0027】
上記の構成によれば、低周波側動作帯域と高周波側動作帯域とにおいて最も無指向に近い面が一致した平面アンテナを設計することができる。低周波側動作帯域と高周波側動作帯域とにおいて最も無指向に近い面が一致しない場合、これら2つの帯域におけるアンテナ特性の両立した実装が困難になるが、上記の構成によれば、そのような問題を回避することができる。
【0028】
本発明に係る設計方法において、上記分散型遺伝的アルゴリズムを適用するために用いられる移住は、折り曲げ角度が互いに隣接する島同士の間で行なわれる、ことが好ましい。
【0029】
上記の構成によれば、ランダムに選択された島同士の間で移住を行なう構成と比べて、上記分散型遺伝的アルゴリズムにおける解の収束時間を短縮することができる。
【0030】
本発明に係る設計方法において、上記分散型遺伝的アルゴリズムを適用するために用いられる移住は、近傍重み付け移住、特に、近傍重み付け1個体移住であることが好ましい。
【0031】
上記の構成によれば、上記分散型遺伝的アルゴリズムにおける解の収束時間を更に短縮することができる。
【0032】
なお、上記何れかの設計方法を用いた設計工程を含んでいる平面アンテナの製造方法、及び、上記何れかの設計方法により設計された平面アンテナ(平面アンテナを折り曲げて得られるアンテナを含む)も本発明の範疇に含まれる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、従来の設計方法よりも良好なアンテナ特性を有する平面アンテナを設計し得る。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】(a)は、候補アンテナの構成方法を示す図であり、(b)は、(a)に示す構成方法により構成される候補アンテナの一例を示す図である。
【図2】(a)は、候補アンテナの他の構成方法を示す図であり、(b)は、(a)に示す構成方法により構成される候補アンテナの一例を示す図である。
【図3】図4に示す探索方法において探索対象とする候補アンテナの構成方法を示す図である。
【図4】図3に示す構成方法により構成される候補アンテナの中から最良アンテナを探索する探索方法を示すフローチャートである。
【図5】図4に示す探索方法により探索された最良アンテナの具体例を示す図である。
【図6】図5に示す最良アンテナの実装例を示す写真である。
【図7】数値計算によって得られた、図5に示す最良アンテナのVSWR特性と、実測によって得られた、図6に示す実装体のVSWR特性とを示すグラフである。
【図8】図4に示す探索方法を実施する過程で得られる、各世代集合において最良評価値をもつ候補アンテナの最悪VSWR(高周波側動作帯域及び低周波側動作帯域におけるVSWRの最大値)を示すグラフである。
【図9】(a)は、放射素子及び地板の最適形状を、遺伝的アルゴリズムを用いて探索する場合に用いられる候補アンテナの構成方法を示した図である。(b)は、(a)に示す構成方法により構成された候補アンテナの中から遺伝的アルゴリズムを用いて探索された最良アンテナを例示した図である。(c)は、放射素子の最適形状のみを遺伝的アルゴリズムを用いて探索する場合に用いられる候補アンテナの構成方法を示した図である。(d)は、(c)に示す構成方法により構成された候補アンテナの中から遺伝的アルゴリズムを用いて探索された最良アンテナを例示した図である。
【図10】図9(a)に示す構成方法により構成された候補アンテナの中から遺伝的アルゴリズムを用いて最良アンテナを探索する過程、及び、図9(c)に示す構成方法により構成された候補アンテナの中から遺伝的アルゴリズムを用いて最良アンテナを探索する過程で得られる、各世代集合における最良評価値を示すグラフである。
【図11】図12に示す探索方法において探索対象とする候補アンテナの構成方法を示す図である。
【図12】図11に示す構成方法により構成される候補アンテナの中から、分散型遺伝的アルゴリズムを用いて最良アンテナを探索する探索方法を示すフローチャートである。
【図13】図12に示す移住ステップの第1の具体例(ランダム移住)を示す説明図である。
【図14】図12に示す移住ステップの第2の具体例(近傍ランダム移住)を示す説明図である。
【図15】図12に示す移住ステップの第3の具体例(近傍重み付き移住)を示す説明図である。
【図16】図11に示す5つの状態の各々について、20世代目で得られた最良アンテナのVSWR特性を示すグラフである。
【図17】1世代目から30世代目までの各世代における最良評価値(最小評価値)を示すグラフである。
【図18】1世代目から30世代目までの各世代における評価値の標準偏差を示したグラフである。(a)は、θ=0°のものであり、(b)は、θ=30°のものであり、(c)は、θ=45°のものであり、(d)は、θ=60°のものであり、(e)は、θ=90°のものである。
【図19】1世代目から30世代目までの各世代における評価値の標準偏差を示したグラフである。(a)は、θ=0°のものであり、(b)は、θ=30°のものであり、(c)は、θ=45°のものであり、(d)は、θ=60°のものであり、(e)は、θ=90°のものである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
〔第1の実施形態〕
本発明の第1の実施形態(以下、「本実施形態」とも記載)に係る設計方法は、放射素子及び地板を備えた平面アンテナの設計方法であり、候補アンテナ群の中から最良のVSWR特性をもつ最良アンテナを探索するものである。候補アンテナ群は、アンテナ形成領域を覆う平面導体(導体箔又は導体板)から、該アンテナ形成領域を分割することにより得られるブロックのうちの幾つかを覆う部分を欠損させた平面アンテナから構成される。また、最良アンテナを探索するアルゴリズムとしては、遺伝的アルゴリズムが用いられる。
【0036】
(候補アンテナ)
まず、最良アンテナの探索対象となる候補アンテナ群について、図1〜図2を参照して説明する。
【0037】
図1(a)は、候補アンテナの構成方法を例示する図である。図1(a)に示す構成方法は、正方形状のアンテナ形成領域10を5×5個のブロックに分割したうえで、上側の2×5個のブロックを放射素子形成領域11とし、下側の2×5個のブロックを地板形成領域12とするものである。
【0038】
図1(a)に示す構成方法により構成される候補アンテナは、放射形成領域11及び地板形成領域12を覆う平面導体から、欠損ブロックを覆う部分を欠損させることにより得られる平面アンテナである。図1(a)に示す構成方法においては、放射素子形成領域11に属する9個のブロック1〜9、及び、地板形成領域12に属する9個のブロック10〜18の各々について、そのブロックを欠損ブロックとするか否かを決定することによって1つの候補アンテナが定まる。したがって、図1(a)に示す構成方法によって、218個(約28万個)の候補アンテナが構成される。
【0039】
なお、放射素子形成領域11に属するブロックP、及び、地板形成領域12に属するブロックQは、それぞれ、同軸線路が接続されるブロック(以下「給電ブロック」と記載)であり、欠損ブロックとすることが禁止されている。
【0040】
図1(b)は、図1(a)に示す構成方法により構成される候補アンテナの一例を示す図である。図1(b)に示す候補アンテナ10’は、放射素子形成領域11を覆う平面導体(例えば、銅箔)から欠損ブロック4,7を覆う部分を欠損させることによって得られる放射素子11’と、地板形成領域12を覆う平面導体(例えば、銅箔)から欠損ブロック15を覆う部分を欠損させることよって得られる地板12’とを備えた平面アンテナである。候補アンテナ10’の実装は、例えば、放射素子11’と地板12’とを誘電体基板(例えば、ポリイミドフィルム)上に形成し、更に、給電ブロックP,Qに同軸線路を接続することによって行われる。
【0041】
図1(a)に示す構成方法により構成される各候補アンテナは、例えば、18ビットのビット列(b1,b2,…,b18)によって表現することができる。ここで、biは、ブロックiが欠損ブロックであるか否かを示すビットであり、ブロックiが欠損ブロックであるときに値0を取り、そうでないときに値1を取る。この表現方法を用いた場合、図1(b)に示した候補アンテナは、ビット列(1,1,1,0,1,1,0,1,1,1,1,1,1,1,0,1,1,1)によって表現される。
【0042】
図1(a)に示す構成方法により構成される候補アンテナの数は、上述したとおり、218個に及ぶ。したがって、全探索により真の最良アンテナを特定することは実質的に不可能である。そこで、本実施形態に係る設計方法においては、上述したビット列を染色体とする遺伝的アルゴリズムを用いて最良アンテナを探索する。評価関数の具体例など、遺伝的アルゴリズムを用いた最良アンテナの探索方法の詳細については、参照する図面を代えて後述する。
【0043】
なお、候補アンテナの構成方法は、図1(a)に示す構成方法に限定されない。例えば、放射素子形成領域11と地板形成領域12との間に挟まれたギャップ領域13に、整合パターンや短絡部に相当するブロックを構成できるよう、図2(a)に示す構成方法を用いてもよい。
【0044】
図1(a)に示す構成方法においては、放射素子形成領域11と地板形成領域12との間に挟まれた5つのブロックG1〜G5を欠損ブロックとするのに対して、図2(b)に示す構成方法においては、給電ブロックPと給電ブロックQとに挟まれた1つのブロックGのみを欠損ブロックとする。したがって、図2(a)に示す構成方法によれば、222個(約419万個)の候補アンテナが構成される。
【0045】
図2(a)に示す構成方法により構成される候補アンテナの一例を図2(b)に示す。図2(b)に示す候補アンテナ10’は、放射素子形成領域11を覆う平面導体から欠損ブロック4,7を覆う部分を欠損させることによって得られる放射素子11’と、地板形成領域12を覆う平面導体から欠損ブロック19を覆う部分を欠損させることよって得られる地板12’とに加えて、ブロック11を覆う整合パターン13aと、ブロック13を覆う短絡部13bとを備えている。
【0046】
なお、本実施形態においては、頂点を介して隣接する2つのブロック(例えば、図2(b)におけるブロック6とブロック11)は、互いに離間している(導体として別体)ものとし、辺を介して隣接する2つのブロック(例えば、図2(b)におけるブロック9とブロック13)は、互いに接触している(導体として一体)ものとしている。ブロック11が整合パターン13aとして機能し、ブロック13が短絡部13bとして機能するのは、このためである。
【0047】
図2(a)に示す構成方法により構成される候補アンテナは、例えば、22ビットのビット列(b1,b2,…,b22)によって表現することができる。この表現方法を用いた場合、図2(b)に示した候補アンテナは、ビット列(1,1,1,0,1,1,0,1,1,0,1,0,1,1,1,1,1,1,0,1,1,1)によって表現される。
【0048】
図2(a)に示す構成方法により構成される候補アンテナの中には、図2(b)に示す候補アンテナ10’のように、アンテナ特性の向上に寄与する整合パターン13aや短絡部13bを備えたものが含まれる。すなわち、候補アンテナの多様性が増している。このため、図2(a)に示す構成方法により構成される候補アンテナの中から最良アンテナを探索する方が、図1(a)に示す構成方法により構成される候補アンテナの中から最良アンテナを探索するよりも、より良い評価値をもつ最良アンテナを得ることができる。
【0049】
(遺伝的アルゴリズムを用いた最良アンテナの探索方法)
次に、遺伝的アルゴリズムを用いた最良アンテナの探索方法について、図3〜図4を参照して説明する。図3は、図4に示す探索方法において探索対象とする候補アンテナの構成方法を示す図であり、図4は、図3に示す構成方法により構成される候補アンテナの中から、遺伝的アルゴリズムを用いて最良アンテナを探索する探索方法を示すフローチャートである。
【0050】
図3に示す構成方法においては、20mm×40mmのアンテナ形成領域10を10×20個のブロックに分割したうえで、上側の3×20個のブロックを放射素子形成領域11とし、下側の6×20個のブロックを地板形成領域12としている。欠損ブロックとすることが予め定められたブロックは、放射素子形成領域11に属する給電ブロックPと地板形成領域12に属する給電ブロックQとに挟まれたブロックGのみである。
【0051】
図3に示す構成方法によれば、2197個(約2×1059個)の候補アンテナを構成することができ、各候補アンテナは、197ビットのビット列(b1,b2,…,b197)によって表現される。図4に示す探索方法においては、このように構成された2197個の候補アンテナの中から最良アンテナが探索される。
【0052】
図4に示す探索方法においては、最良アンテナとして、無線LANに用いられる2つの帯域、すなわち、2.4GHz以上2.5GHz以下の帯域(以下「低周波側動作帯域」と記載)と5.15GHz以上5.85GHz以下(以下「高周波側動作帯域」と記載)とにおいて最良のVSWR特性をもつアンテナを探索する。このため、遺伝的アルゴリズムの適用に際して用いる評価関数を以下のように定める。
【0053】
すなわち、低周波側動作帯域におけるVSWRの最大値(最悪値)をv1、高周波側動作帯域におけるVSWRの最大値(最悪値)をv2として、評価関数を重み付き平均α1×v1+α2×v2により定義する。α1及びα2は、重み係数(和α1+α2が1となる正の定数)であり、例えば、α1=0.6,α2=0.4である。このように、重み係数α1を重み係数α2以上としている(より好ましくは、本例のように、重み係数α1を重み係数α2よりも大きくする)のは、通常、低周波側ほどインピーダンス整合が図り難いためである。
【0054】
遺伝的アルゴリズムを用いた最良アンテナの探索は、図4に示すように、初期集団設定ステップS1、収束判定ステップS2、交叉ステップS3、突然変異ステップS4、選択ステップS5、及び最適解出力ステップS6により構成される。各ステップの処理内容について説明すれば、以下のとおりである。
【0055】
≪初期集団設定ステップS1≫
初期集団設定ステップS1においては、N個の候補アンテナをランダムに選択し(Nは2197以下の自然数)、選択されたN個の候補アンテナからなる第1世代集団X1を構成する。具体的には、20個の候補アンテナをランダムに選択し、選択された20個の候補アンテナからなる第1世代集団X1を構成する。
【0056】
初期集団設定ステップS1における候補アンテナの選択は、全ての(2197個の)候補アンテナの中からランダムに行ってもよいし、全ての候補アンテナのうち、所定の条件を満たす候補アンテナの中からランダムに行ってもよいが、ここでは後者の方法を採用する。具体的は、欠損率が0.3(30%)である候補アンテナの中から20個の候補アンテナをランダムに選択する。ここで、欠損率とは、全ブロックのうち欠損ブロックが占める割合のことを指す。欠損率が0.3の候補アンテナとは、すなわち、200個のブロックのうち60個のブロックが欠損した候補アンテナのことに他ならない。
【0057】
≪収束判定ステップS2≫
収束判定ステップS2においては、まず、初期集団設定ステップS1又は選択ステップS5にて構成された第i世代集団Xiに属するN個の候補アンテナの各々について、上述した評価関数の値(以下「評価値」と記載)を計算する。具体的には、第i世代集団Xiに属するN個の候補アンテナの各々について、(1)数値シミュレーションによって低周波側動作帯域及び高周波側動作帯域におけるVSWRを算出し、(2)低周波側動作帯域及び高周波側動作帯域におけるVSWRの最大値v1及びv2を求め、(3)評価値α1×v1+α2×v2を得る。
【0058】
続いて、第i世代集団Xiに属するN個の候補アンテナの評価値のうち、最小の評価値(以下「最小評価値」と記載)が予め定められた閾値未満であるか否か判定する。そして、最小評価値が上記閾値未満である場合には、最適解出力ステップS5に進んで最小評価値を与える候補アンテナを最良アンテナとする。一方、最小評価値が上記閾値以上である場合には、後述する交叉ステップS3に進む。
【0059】
なお、最小評価値が閾値未満であるか否かを判定する代わりに、平均評価値が閾値未満であるか否かを判定してもよいし、最小評価値又は平均評価値の減少率が閾値未満になる世代が一定以上続いているか否かを判定してもよい。
【0060】
≪交叉ステップS3≫
交叉ステップS3においては、まず、第i世代集団Xiに属するN個の候補アンテナの中から、M対(2M個)の候補アンテナをランダムに選択する。具体的には、第i世代集団Xiに属する20個の候補アンテナの中から、8対(16個)の候補アンテナをランダムに選択する(交叉確率=16/20=0.8)。
【0061】
続いて、選択されたM対の候補アンテナの各々から、その染色体(ビット列)の一部を交叉させることによって1対の新たな候補アンテナを生成する。交叉法としては、1点交叉法を用いてもよいし、多点交叉法を用いてもよいし、一様交叉法を用いてもよいが、ここでは一点交叉法を用いる。
【0062】
≪突然変異ステップS4≫
突然変異ステップS4においては、まず、交叉ステップS3にて生成された2M個の候補アンテナを第i世代集団Xiに属するN個の候補アンテナに加えたN+2M個の候補アンテナの中から、L個の候補アンテナをランダムに選択する。具体的には、交叉ステップS3にて生成された16個の候補アンテナを第i世代集団Xiに属する20個の候補アンテナに加えた36個の候補アンテナの中から、5個の候補アンテナをランダムに選択する(個体突然変異率=5/36=0.14)。
【0063】
続いて、選択されたL個の候補アンテナの各々について、その染色体に突然変異を生じさせる。具体的には、197ビットのビット列である染色体(b1,b2,…,b197)の中から3つのビットをランダムに選択し、選択された3つのビットの値をそれぞれ反転させる(染色体突然変異率≒3/200=0.015)。
【0064】
≪選択ステップS5≫
選択ステップS5においては、上述したN+2M個の候補アンテナ(そのうちL個については突然変異が加えられている)の中からN個の候補アンテナを選択し、選択されたN個の候補アンテナからなる第i+1世代集団Xi+1を構成する。具体的には、上述した36個の候補アンテナ(そのうち5個については突然変異が加えられている)の中から20個の候補アンテナを選択し、選択された20個の候補アンテナからなる第i+1世代集団Xi+1を構成する。
【0065】
選択ステップS5における候補アンテナの選択は、エリート選択とランダム選択とを組み合わせて行われる。具体的には、36個の候補アンテナの中から、評価値の小さい(適応度の高い)10個の候補アンテナを選択し、更に、再度36個の候補アンテナの中からランダムに10個のアンテナを選択する。
【0066】
図4に示す探索方法により探索された最良アンテナ10’(より正確に言うと、真の最良アンテナではなく、真の最良アンテナに近いアンテナ特性を有する準最良アンテナ)の具体例を図5に示す。図4に示す選択方法により選択された最良アンテナ10’は、放射素子形成領域11に形成された放射素子11’と、地板形成領域12に形成された地板12’とに加え、ギャップ領域13に形成された整合パターン及び短絡部を含む。ギャップ領域13に含まれる13個の非欠損ブロックのうち、左から1番目、2番目、及び12番目のブロック(放射素子11’及び地板12’の少なくとも何れか一方と離間しているブロック)が整合パターンに該当し、その他のブロック(放射素子11’及び地板12’の両方と接触しているブロック)が短絡部に該当する。
【0067】
図5に示す最良アンテナ10’の実装写真を図6に示す。図6に示すように、最良アンテナ10’の実装体は、20mm×40mmの銅箔から欠損ブロックに相当する領域を除去したものをポリイミドフィルム上に積層し、給電ブロックP,Qに同軸線路を接続することによって実現される。
【0068】
図7は、数値シミュレーションによって得られた、図5に示すアンテナ10’のVSWR特性と、実測によって得られた、図6に示すアンテナ10’の実装体のVSWR特性とを示すグラフである。両者のグラフの間に良好な一致が見られる。また、図6に示すアンテナ10’の実装体は、低周波側動作帯域及び高周波側動作帯域の双方においてVSWR値が2を下回る極めて良好なVSWR特性を有していることが分かる。
【0069】
図8は、図4に示す探索方法を実施する過程で得られる、各世代集合において最良評価値をもつ候補アンテナの最悪VSWR(高周波側動作帯域及び低周波側動作帯域におけるVSWRの最大値)を示すグラフである。図8における「probability」は、初期集団設定ステップS1にて選択する候補アンテナ(第1世代集合に属する候補アンテナ)の欠損率を表す。初期集団設定ステップS1にて選択する候補アンテナの欠損率を0.2以上0.5とすれば、VSWRの最悪値が速やかに(15世代で十分に)収束することが見て取れる。
【0070】
(地板の最適化)
上述したように、本実施形態に係るアンテナの設計方法は、放射素子と地板とを備えた平面アンテナの設計方法であって、放射素子及び地板の両方の最適形状を、遺伝的アルゴリズムを用いて探索する点に特徴がある。これにより、放射素子の最適形状のみを遺伝的アルゴリズムを用いて探索するよりも、優れたアンテナ特性をもつ平面アンテナを実現することができる。最後に、このことを、図9〜図10を参照して確認する。
【0071】
図9(a)は、放射素子及び地板の両方の最適形状を、遺伝的アルゴリズムを用いて探索する場合に用いられる候補アンテナの構成方法を示した図である。図9(b)は、図9(a)に示す構成方法により構成された候補アンテナから遺伝的アルゴリズムにより探索された最良アンテナを例示した図である。
【0072】
一方、図9(c)は、放射素子の最適形状のみを遺伝的アルゴリズムを用いて探索する場合に用いられる候補アンテナの構成方法を示した図である。図9(d)は、図9(c)に示す構成方法により構成された候補アンテナから遺伝的アルゴリズムにより探索された最良アンテナを例示した図である。
【0073】
図9(a)に示す構成方法と図9(c)に示す構成方法との相違点は、図9(a)に示す構成方法では、地板形成領域12に属するブロックを欠損させることが許容されている(欠損のある地板を備えた平面アンテナが候補アンテナに含まれている)のに対し、図9(c)に示す構成方法では、地板形成領域12に属するブロックを欠損させることが禁止されている(欠損のある地板を備えた平面アンテナが候補アンテナに含まれない)点である。
【0074】
図10は、図9(a)に示す構成方法により構成される各平面アンテナを候補アンテナとした場合、及び、図9(c)に示す構成方法により構成される各平面アンテナを候補アンテナとした場合について、遺伝的アルゴリズムの実行過程で得られる各世代における最良評価値をプロットしたグラフである。図9(a)に示す構成方法により構成される各平面アンテナを候補アンテナとした場合、評価値が3程度となる最良アンテナを探索し得るのに対し、図9(c)に示す構成方法により構成される各平面アンテナを候補アンテナとした場合、評価値が6程度となる最良アンテナしか得られない。すなわち、図9(a)に示す構成方法により構成される各平面アンテナを候補アンテナとすることによって、図9(c)に示す構成方法により構成される各平面アンテナを候補アンテナとするよりも良好なVSWR特性を有する最良アンテナを得ることができる。
【0075】
なお、図10に示す結果を得るために、遺伝的アルゴリズムに係るパラメータは以下のように設定した。各世代の個体数=10、交叉対=4対、染色体突然変異率=0.015、個体突然変異率=5/18=0.28、ランダム選択される個体数=5個体。
【0076】
〔第2の実施形態〕
第1の実施形態に係る設計方法においては、最良アンテナを探索する遺伝的アルゴリズムとして単純型遺伝的アルゴリズムを用いたが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、単純型遺伝的アルゴリズムを用いて最良アンテナを探索する構成の代わりに、分散型遺伝的アルゴリズムを用いて最良アンテナを探索する構成を採用してもよい。以下、本発明の第2の実施形態(以下、「本実施形態」とも記載)に係る設計方法として、分散遺伝型アルゴリズムを用いた平面アンテナの設計方法について説明する。
【0077】
分散型遺伝的アルゴリズムを用いた最良アンテナの探索方法について、図11〜図12を参照して説明する。図11は、図12に示す探索方法において探索対象とする候補アンテナの構成方法を示す図であり、図12は、図11に示す構成方法により構成される候補アンテナの中から、分散型遺伝的アルゴリズムを用いて最良アンテナを探索する探索方法を示すフローチャートである。
【0078】
本実施形態において探索対象とする候補アンテナは、第1の実施形態において探索対象とした候補アンテナと同様である。すなわち、本実施形態において探索対象とする候補アンテナは、20mm×40mmのアンテナ形成領域10を覆う平面導体から欠損ブロックを覆う部分を欠損させることにより得られる平面アンテナである。
【0079】
アンテナ形成領域10は、図11の上段に示すように、10×20個のブロックに分割される。これらのブロックのうち、(1)上側の3×20個のブロックは、放射素子形成領域11を構成し、(2)下側の6×20個のブロックは、地板形成領域12を構成し、(3)放射素子形成領域11と地板形成領域12との間に挟まれた20個のブロックは、ギャップ領域13を構成する。放射素子形成領域11に属する給電ブロックPと地板形成領域12に属する給電ブロックQとは、欠損ブロックとしないことが予め定められたブロックであり、これらの給電ブロックP,Qに挟まれたブロックGは、欠損ブロックとすることが予め定められたブロックである。したがって、候補アンテナの個数は、2197個(約2×1059個)となり、各候補アンテナは、197ビットのビット列(b1,b2,…,b197)によって表現される。これらの点は、第1の実施形態と同様である。
【0080】
本実施形態においては、広げた状態において最良のアンテナ特性を発揮する平面アンテナと同時に、折り曲げた状態において最良のアンテナ特性を発揮する平面アンテナを設計する。より具体的に言うと、アンテナ形成面10を広げたときに最良のアンテナ特性を発揮する平面アンテナと同時に、アンテナ形成面10を2本の直線L1〜L2で折り曲げたときに最良のアンテナ特性を発揮する4つの平面アンテナを設計する。図11の下段、一番左の断面図(AA’断面)は、アンテナ形成面10を広げた状態を示す。また、図11の下段、左から2番目、3番目、4番目、5番目の断面図(AA’断面)は、それぞれ、曲げ角θが30°、45°、60°、90°となるようにアンテナ形成面10を折り曲げた状態を示す。本実施形態においては、これら5つの状態の各々において最良のアンテナ特性を発揮する平面アンテナを同時に設計する。
【0081】
図12に示す探索方法においては、最良アンテナとして、以下の条件(1)〜(6)を満たす平面アンテナを探索する。(1)低周波側動作帯域(2.4GHz以上2.5GHz以下)において反射性が低い。(2)中間帯域(3GHz以上4.5GH以下)における遮断性が高い。(3)高周波側動作帯域(5.1GHz以上5.9GHz以下)において反射性が低い。(4)低周波側動作帯域の中心周波数(2.45GHz)において、最も無指向に近い面(xy平面、yz平面、zx平面の何れか)に関して、各方向の利得の標準偏差が小さい。(5)高周波側動作帯域の中心周波数(5.5GHz)において、最も無指向に近い面(xy平面、yz平面、zx平面の何れか)に関して、各方向の利得の標準偏差が小さい。(6)低周波側動作帯域の中心周波数において最も無指向に近い面と、高周波側動作帯域の中心周波数において最も無指向に近い面とが一致する。このため、分散型遺伝的アルゴリズムの適用に際して用いる評価関数を以下のように定める。
【0082】
すなわち、(a)低周波側動作帯域におけるVSWRの最大値(最悪値)をx1とする。(b)中間帯域におけるVSWRの最小値(最良値)をxiとし、xi<2のときはx2=2、2≦xi<3のときはx2=1、3≦xi<4のときはx2=0.5、4≦xiのときはx2=0.1とする。(c)高周波側動作帯域におけるVSWRの最大値(最悪値)をx3とする。(d)低周波側動作帯域の中心周波数において最も無指向に近い面に関して、各方向の利得の平均及び標準偏差をave(Gain)及びdev(Gain)として、x4=dev(Gain)/ave(Gain)とする。(e)高周波側動作帯域の中心周波数において最も無指向に近い面に関して、各方向の利得の平均及び標準偏差をave(Gain)及びdev(Gain)として、x5=dev(Gain)/ave(Gain)とする。(f)低周波側動作帯域の中心周波数において最も無指向に近い面と高周波側動作帯域の中心周波数において最も無指向に近い面とについて、両者が一致する場合には、x6=0とし、両者が一致しない場合には、x6=1とする。これら6つのパラメータx1〜x6は、それぞれ、上述した条件(1)〜(6)の充足度を示す指標である。そして、評価関数をこれら6つの指標x1〜x6の重み付き平均w1×x1+w2×x2+w3×x3+w4×x4+w5×x5+w6×x6により定義する。重み係数w1〜w6の値は任意であるが、本実施形態においては、w1=0.6、w2=1、w3=0.4、w4=1、w5=1、w6=1としている。
【0083】
分散型遺伝的アルゴリズムを用いた最良アンテナの探索は、図12に示すように、初期集団設定ステップS11、収束判定ステップS12、交叉ステップS13a〜e、突然変異ステップS14a〜e、選択ステップS15a〜e、世代判定ステップS16、移住ステップS17、及び最適解出力ステップS18により構成される。各ステップの処理内容について説明すれば、以下のとおりである。
【0084】
≪初期集団設定ステップS11≫
初期集団設定ステップS11においては、5つの島の各々について、N個の候補アンテナをランダムに選択し(Nは2197以下の自然数)、選択されたN個の候補アンテナからなる第1世代集団Xa1,Xb1,Xc1,Xd1,Xe1を構成する。具体的には、5つの島の各々について、9個の候補アンテナをランダムに選択し、選択された9個の候補アンテナからなる第1世代集団Xa1,Xb1,Xc1,Xd1,Xe1を構成する。
【0085】
初期集団設定ステップS1における候補アンテナの選択は、全ての(2197個の)候補アンテナの中からランダムに行ってもよいし、全ての候補アンテナのうち、所定の条件を満たす候補アンテナの中からランダムに行ってもよいが、ここでは後者の方法を採用する。具体的は、5つの島の各々について、欠損率が0.4(40%)である候補アンテナの中から9個の候補アンテナをランダムに選択する。
【0086】
≪収束判定ステップS12≫
収束判定ステップS12においては、まず、初期集団設定ステップS11又は選択ステップS15aにて構成された第i世代集団Xaiに属するN個の候補アンテナの各々について、上述した評価関数の値(以下「評価値」と記載)を計算する。具体的には、第i世代集団Xaiに属するN個の候補アンテナの各々について、数値シミュレーションによって上述した6つの指標x1〜x6を算出し、評価値w1×x1+w2×x2+w3×x3+w4×x4+w5×x5+w6×x6を得る。ここで、第i世代集団Xaiに属する候補アンテナの評価値の算出にあたっては、θ=0°であるものとして上述した6つの指標x1〜x6を算出する。同様に、第i世代集団Xbiに属するN個の候補アンテナの各々について、θ=30°として評価値を算出し、第i世代集団Xciに属するN個の候補アンテナの各々について、θ=45°として評価値を算出し、第i世代集団Xdiに属するN個の候補アンテナの各々について、θ=60°として評価値を算出し、第i世代集団Xeiに属するN個の候補アンテナの各々について、θ=90°として評価値を算出する。
【0087】
続いて、5つの島の各々について、最小評価値が予め定められた閾値未満であるか否かを判定する。そして、5つの島の全てにおいて最小評価値が閾値未満である場合には、最適解出力ステップS15に進み、各島において最小評価値を与える候補アンテナを、その島の最良アンテナとする。例えば、第1世代集団Xa1から進化した第1の島の最良アンテナは、広げた状態において最良のアンテナ特性を発揮する平面アンテナとなり、第1世代集団Xb1から進化した第2の島の最良アンテナは、30°折り曲げた状態で最良のアンテナ特性を発揮する平面アンテナとなる。一方、5つの島の何れかにおいて最小評価値が閾値以上である場合には、後述する交叉ステップS13a〜eに進む。
【0088】
≪交叉ステップS13a〜S13e≫
5つの島の各々に適用される交叉ステップS13a〜S13eは同様なので、ここでは、第1の島に対して適用される交叉ステップS13aについて説明する。
【0089】
交叉ステップS13aにおいては、まず、第i世代集団Xaiに属するN個の候補アンテナの中から、M対(2M個)の候補アンテナをランダムに選択する。具体的には、第i世代集団Xaiに属する5個の候補アンテナの中から、2対(4個)の候補アンテナをランダムに選択する(交叉確率=4/5=0.8)。
【0090】
続いて、選択されたM対の候補アンテナの各々から、その染色体(ビット列)の一部を交叉させることによって1対の新たな候補アンテナを生成する。交叉法としては、1点交叉法を用いてもよいし、多点交叉法を用いてもよいし、一様交叉法を用いてもよいが、ここでは一点交叉法を用いる。この交叉ステップS13aが完了した段階で、第i世代集団Xaiに属する候補アンテナの数はN+2M個(具体的には9個)になる。
【0091】
≪突然変異ステップS14a〜S14e≫
5つの島の各々に適用される突然変異ステップS14a〜S14eは同様なので、ここでは、第1の島に対して適用される突然変異ステップS14aについて説明する。
【0092】
突然変異ステップS14aにおいては、まず、交叉ステップS13aにて生成された2M個の候補アンテナの中から、L個の候補アンテナをランダムに選択する。具体的には、交叉ステップS13aにて生成された4個の候補アンテナの中から、1個の候補アンテナをランダムに選択する(個体突然変異率=1/4=0.25)。
【0093】
続いて、選択されたL個の候補アンテナの各々について、その染色体に突然変異を生じさせる。具体的には、197ビットのビット列である染色体(b1,b2,…,b197)の中から3つのビットをランダムに選択し、選択された3つのビットの値をそれぞれ反転させる(染色体突然変異率≒3/200=0.015)。
【0094】
≪選択ステップS15a〜S15e≫
5つの島の各々に適用される選択ステップS15a〜S15eは同様なので、ここでは、第1の島に対して適用される選択ステップS15aについて説明する。
【0095】
選択ステップS15aにおいては、上述したN+2M個の候補アンテナ(そのうちL個については突然変異が加えられている)の中からN個の候補アンテナを選択し、選択されたN個の候補アンテナからなる第i+1世代集団Xi+1を構成する。具体的には、上述した9個の候補アンテナ(そのうち1個については突然変異が加えられている)の中から5個の候補アンテナを選択し、選択された5個の候補アンテナからなる第i+1世代集団Xi+1を構成する。
【0096】
選択ステップS15aにおける候補アンテナの選択は、エリート選択により行なわれる。具体的には、9個の候補アンテナの中から、評価値の小さい(適応度の高い)5個の候補アンテナを選択する。
【0097】
≪世代判定ステップS16及び移住ステップS17≫
5つの島について、交叉・突然変異・選択の各ステップが完了すると、移住ステップS17が実行される。ただし、移住ステップS17は、世代数iが4の倍数のとき(世代判定ステップS16においてYES)にのみ実行される。移住ステップS17は、一口に言うと、各島の最優良遺伝子(最も評価値の低い遺伝子)を島間で交換する処理である。移住ステップS17の具体例については、参照する図面を代えて後述する。
【0098】
(移住ステップの具体例)
図12に示した探索方法に含まれる移住ステップS17の3つの具体例について、図13〜15を参照して説明する。図13〜図15に示す3つの具体例の何れを用いた場合であっても、図11に示す5つの状態の各々において最良のアンテナ特性を発揮する平面アンテナを同時に設計することができる。
【0099】
《ランダム移住》
図13は、移住ステップS17の第1の具体例を示す説明図である。なお、本明細書においては、図13に示す移住方法ことを、「ランダム移住」又は「R」とも記載する。
【0100】
ランダム移住においては、まず、各島における最優良遺伝子g1,g2,g3,g4,g5を特定し、これら最優良遺伝子からなる第1配列を作成する。図13において、1番左の列に縦に並んだ5つの黒塗りボックスは、この第1配列の初期状態を表している。1番上の黒塗りボックスに記載されたg1は、最優良遺伝子g1が、第1配列の第1の島(θ=0°)に対応する要素であることを意味している。上から2番目以降の黒塗りボックスに記載された数値も同様のことを意味している。
【0101】
また、ランダム移住においては、第1配列の初期状態を保存するために、第2配列を利用する。図13において、1番左の列に縦に並んだ5つの白抜きボックスは、この第2配列を表している。1番上の白抜きボックスに記載されたg1は、第1配列の第1の島(θ=0°)に対応する要素(第1の島の最優良遺伝子g1)が第2配列の第1の島(θ=0°)に対応する要素にコピーされたことを意味している。上から2番目以降の黒塗りボックスに記載された数値も同様のことを示している。
【0102】
ランダム移住における最優良遺伝子の交換は、以下のように実現される。すなわち、第1の島(θ=0°)の最優良遺伝子g1を、第1の島を除く4つの島(θ=30°、45°、60°、90°)のうち、どの島の最優良遺伝子と交換するかを乱数によって選択する。例えば、図13に示すように、乱数によって第4の島(θ=60°)が選ばれた場合、第1配列の第1の島(θ=0°)に対応する要素に、第2配列の第4の島(θ=60°)に対応する要素g4がコピーされると共に、第1配列の第4の島(θ=60°)に対応する要素に、第2配列の第1の島(θ=0°)に対応する要素g1がコピーされる。図13において、左から2番目の列に縦並んだ黒塗りボックス及び白抜きボックスは、この処理が完了した時点での第1配列及び第2配列の状態を示している。
【0103】
次に、第2の島(θ=30°)の最優良遺伝子g2を、第2の島を除く4つの島(θ=0°、45°、60°、90°)のうち、どの島の最優良遺伝子と交換するかを乱数によって選択する。例えば、図13に示すように、乱数によって第3の島(θ=45°)が選ばれた場合、第1配列の第2の島(θ=30°)に対応する要素に、第2配列の第3の島(θ=45°)に対応する要素g3がコピーされると共に、第1配列の第3の島(θ=45°)に対応する要素に、第2配列の第2の島(θ=30°)に対応する要素g2がコピーされる。図13において、左から3番目の列に縦並んだ黒塗りボックス及び白抜きボックスは、この処理が完了した時点での第1配列及び第2配列の状態を示している。
【0104】
次に、第3の島(θ=45°)の最優良遺伝子g3を、第3の島を除く4つの島(θ=0°、30°、60°、90°)のうち、どの島の最優良遺伝子と交換するかを乱数によって選択する。例えば、図13に示すように、乱数によって第1の島(θ=0°)が選ばれた場合、第1配列の第3の島(θ=45°)に対応する要素に、第2配列の第1の島(θ=0°)に対応する要素g1がコピーされると共に、第1配列の第1の島(θ=0°)に対応する要素に、第2配列の第3の島(θ=45°)に対応する要素g3がコピーされる。図13において、左から4番目の列に縦並んだ黒塗りボックス及び白抜きボックスは、この処理が完了した時点での第1配列及び第2配列の状態を示している。
【0105】
次に、第4の島(θ=60°)の最優良遺伝子g4を、第4の島を除く4つの島(θ=0°、30°、45°、90°)のうち、どの島の最優良遺伝子と交換するかを乱数によって選択する。例えば、図13に示すように、乱数によって第1の島(θ=0°)が選ばれた場合、第1配列の第4の島(θ=60°)に対応する要素に、第2配列の第1の島(θ=0°)に対応する要素g1がコピーされると共に、第1配列の第1の島(θ=0°)に対応する要素に、第2配列の第4の島(θ=60°)に対応する要素g4がコピーされる。図13において、左から5番目の列に縦並んだ黒塗りボックス及び白抜きボックスは、この処理が完了した時点での第1配列及び第2配列の状態を示している。
【0106】
最後に、第5の島(θ=90°)の最優良遺伝子g5を、第5の島を除く4つの島(θ=0°、30°、45°、60°)のうち、どの島の最優良遺伝子と交換するかを乱数によって選択する。例えば、図13に示すように、乱数によって第3の島(θ=45°)が選ばれた場合、第1配列の第5の島(θ=90°)に対応する要素に、第2配列の第3の島(θ=45°)に対応する要素g3がコピーされると共に、第1配列の第3の島(θ=45°)に対応する要素に、第2配列の第5の島(θ=90°)に対応する要素g5がコピーされる。図13において、左から6番目の列に縦並んだ黒塗りボックス及び白抜きボックスは、この処理が完了した時点での第1配列及び第2配列の状態を示している。
【0107】
このようにして、最優良遺伝子の交換パターンが一意に定まる。図13に示した例では、(1)第1の島の最優良遺伝子g1を第4の島の最優良遺伝子g4に置き換え、(2)第2の島の最優良遺伝子g2を第3の島の最優良遺伝子g3に置き換え、(3)第3の島の最優良遺伝子g3を第5の島の最優良遺伝子g5に置き換え、(4)第4の島の最優良遺伝子g4を第1の島の最優良遺伝子g1に置き換え、(5)第5の島の最優良遺伝子g5を第3の島の最優良遺伝子g3に置き換えることになる。
【0108】
《近傍ランダム移住》
図14は、移住ステップS17の第1の具体例を示す説明図である。なお、本明細書においては、図14に示す移住方法ことを、「近傍ランダム移住」又は「N&R」とも記載する。
【0109】
近傍ランダム移住においては、まず、各島における最優良遺伝子g1,g2,g3,g4,g5を特定し、これら最優良遺伝子からなる第1配列を作成する。図14において、1番左の列に縦に並んだ5つの黒塗りボックスは、この第1配列の初期状態を表している。1番上の黒塗りボックスに記載されたg1は、最優良遺伝子g1が、第1配列の第1の島(θ=0°)に対応する要素であることを意味している。上から2番目以降の黒塗りボックスに記載された数値も同様のことを意味している。
【0110】
また、近傍ランダム移住においては、第1配列の初期状態を保存するために、第2配列を利用する。図14において、1番左の列に縦に並んだ5つの白抜きボックスは、この第2配列を表している。1番上の白抜きボックスに記載されたg1は、第1配列の第1の島(θ=0°)に対応する要素(第1の島の最優良遺伝子g1)が第2配列の第1の島(θ=0°)に対応する要素にコピーされたことを意味している。上から2番目以降の黒塗りボックスに記載された数値も同様のことを示している。
【0111】
近傍ランダム移住における最優良遺伝子の交換は、以下のように実現される。すなわち、第1の島(θ=0°)の最優良遺伝子g1を、第1の島(θ=0°)に隣接する唯一の島である第2の島(θ=30°)の最優良遺伝子g2と交換する。具体的には、第1配列の第1の島(θ=0°)に対応する要素に、第2配列の第2の島(θ=30°)に対応する要素g2がコピーされると共に、第1配列の第2の島(θ=30°)に対応する要素に、第2配列の第1の島(θ=0°)に対応する要素g1がコピーされる。図14において、左から2番目の列に縦並んだ黒塗りボックス及び白抜きボックスは、この処理が完了した時点での第1配列及び第2配列の状態を示している。
【0112】
次に、第2の島(θ=30°)の最優良遺伝子g2を、第2の島に隣接する2つの島(θ=0°、45°)のうち、どちらの島の最優良遺伝子と交換するかを乱数によって選択する。例えば、図14に示すように、乱数によって第3の島(θ=45°)が選ばれた場合、第1配列の第2の島(θ=30°)に対応する要素に、第2配列の第3の島(θ=45°)に対応する要素g3がコピーされると共に、第1配列の第3の島(θ=45°)に対応する要素に、第2配列の第2の島(θ=30°)に対応する要素g2がコピーされる。図14において、左から3番目の列に縦並んだ黒塗りボックス及び白抜きボックスは、この処理が完了した時点での第1配列及び第2配列の状態を示している。
【0113】
次に、第3の島(θ=45°)の最優良遺伝子g3を、第3の島に隣接する2つの島(θ=30°、60°)のうち、どちらの島の最優良遺伝子と交換するかを乱数によって選択する。例えば、図14に示すように、乱数によって第4の島(θ=60°)が選ばれた場合、第1配列の第3の島(θ=45°)に対応する要素に、第2配列の第4の島(θ=60°)に対応する要素g4がコピーされると共に、第1配列の第4の島(θ=60°)に対応する要素に、第2配列の第3の島(θ=45°)に対応する要素g3がコピーされる。図14において、左から4番目の列に縦並んだ黒塗りボックス及び白抜きボックスは、この処理が完了した時点での第1配列及び第2配列の状態を示している。
【0114】
次に、第4の島(θ=60°)の最優良遺伝子g4を、第4の島に隣接する2つの島(θ=45°、90°)のうち、どちらの島の最優良遺伝子と交換するかを乱数によって選択する。例えば、図14に示すように、乱数によって第5の島(θ=90°)が選ばれた場合、第1配列の第4の島(θ=60°)に対応する要素に、第2配列の第5の島(θ=90°)に対応する要素g5がコピーされると共に、第1配列の第5の島(θ=90°)に対応する要素に、第2配列の第4の島(θ=60°)に対応する要素g4がコピーされる。図14において、左から5番目の列に縦並んだ黒塗りボックス及び白抜きボックスは、この処理が完了した時点での第1配列及び第2配列の状態を示している。
【0115】
最後に、第5の島(θ=90°)の最優良遺伝子g5を、第1の島(θ=0°)に隣接する唯一の島である第4の島(θ=60°)の最優良遺伝子g4と交換する。具体的には、第1配列の第5の島(θ=90°)に対応する要素に、第2配列の第4の島(θ=60°)に対応する要素g4がコピーされると共に、第1配列の第4の島(θ=60°)に対応する要素に、第2配列の第5の島(θ=90°)に対応する要素g5がコピーされる。図14において、左から6番目の列に縦並んだ黒塗りボックス及び白抜きボックスは、この処理が完了した時点での第1配列及び第2配列の状態を示している。
【0116】
このようにして、最優良遺伝子の交換パターンが一意に定まる。図14に示した例では、(1)第1の島の最優良遺伝子g1を第2の島の最優良遺伝子g2に置き換え、(2)第2の島の最優良遺伝子g2を第3の島の最優良遺伝子g3に置き換え、(3)第3の島の最優良遺伝子g3を第5の島の最優良遺伝子g5に置き換え、(4)第4の島の最優良遺伝子g4を第5の島の最優良遺伝子g5に置き換え、(5)第5の島の最優良遺伝子g5を第4の島の最優良遺伝子g4に置き換えることになる。
【0117】
《近傍重み付け移住》
図15は、移住ステップS17の第3の具体例を示す説明図である。なお、本明細書においては、図15に示す移住方法ことを「近傍重み付け移住」又は「N&W」とも記載する。
【0118】
近傍重み付け移住においては、まず、各島における最優良遺伝子g1,g2,g3,g4,g5を特定し、これらの最優良遺伝子からなる第1配列を作成する。図15において、1番左の列に縦に並んだ5つの黒塗りボックスは、この第1配列の初期状態を表している。1番上の黒塗りボックスに記載されたg1は、最優良遺伝子g1が、第1配列の第1の島(θ=0°)に対応する要素であることを意味している。上から2番目以降の黒塗りボックスに記載された数値も同様のことを意味している。
【0119】
また、近傍重み付け移住においては、第1配列の初期状態を保存するために、第2配列を利用する。図15において、1番左の列に縦に並んだ5つの白抜きボックスは、この第2配列を表している。1番上の白抜きボックスに記載されたg1は、第1配列の第1の島(θ=0°)に対応する要素(第1の島の最優良遺伝子g1)が第2配列の第1の島(θ=0°)に対応する要素にコピーされたことを意味している。上から2番目以降の黒塗りボックスに記載された数値も同様のことを示している。
【0120】
更に、近傍重み付け移住においては、各島に属する遺伝子(候補アンテナ)の評価値の平均値(以下、「平均評価値」とも記載)を算出する。図15に示した例においては、第1の島(θ=0°)の平均評価値を5.7、第2の島(θ=30°)の平均評価値を8.3、第3の島(θ=45°)の平均評価値を6.1、第4の島(θ=60°)の平均評価値を4.9、第5の島(θ=90°)の平均評価値を3.8としている。
【0121】
近傍重み付け移住における最優良遺伝子の交換は、以下のように実現される。すなわち、第1の島(θ=0°)の平均評価値を、第1の島(θ=0°)に隣接する唯一の島である第2の島(θ=30°)の平均評価値とを比較する。そして、(1)第1の島(θ=0°)の平均評価値が、第2の島(θ=30°)の平均評価値よりも小さい場合、第2配列の第1の島(θ=0°)に対応する要素を、第1配列の第2の島(θ=30°)に対応する要素とすると共に、第2配列の第2の島(θ=30°)に対応する要素を、第1配列の第1の島(θ=0°)に対応する要素とする。また、(2)第1の島(θ=0°)の平均評価値が、第2の島(θ=30°)の平均評価値よりも大きい場合、このような交換は行なわない。図15においては、(1)のケースを例示している。
【0122】
次に、第2の島(θ=30°)の平均評価値を、第2の島(θ=30°)に隣接する2つの島(θ=0°、45°)の平均評価値とを比較する。そして、(1)第2の島(θ=30°)の平均評価値が、第1の島(θ=0°)の平均評価値よりも小さく、かつ、第3の島(θ=45°)の平均評価値よりも大きい場合、第2配列の第2の島(θ=30°)に対応する要素を、第1配列の第1の島(θ=0°)に対応する要素とすると共に、第2配列の第1の島(θ=0°)に対応する要素を、第1配列の第2の島(θ=30°)に対応する要素とする。また、(2)第2の島(θ=30°)の平均評価値が、第3の島(θ=45°)の平均評価値よりも小さく、かつ、第1の島(θ=0°)の平均評価値よりも大きい場合、第2配列の第2の島(θ=30°)に対応する要素を、第1配列の第3の島(θ=45°)に対応する要素とすると共に、第2配列の第3の島(θ=45°)に対応する要素を、第1配列の第2の島(θ=30°)に対応する要素とする。また、(3)第2の島(θ=30°)の平均評価値が、第1の島(θ=0°)の平均評価値よりも大きく、かつ、第3の島(θ=45°)の平均評価値よりも大きい場合、このような交換を行なわない。また、(4)第2の島(θ=30°)の平均評価値が、第1の島(θ=0°)の平均評価値よりも小さく、かつ、第3の島(θ=45°)の平均評価値よりも小さい場合、第1の島(θ=0°)の平均評価値と第3の島(θ=45°)の平均評価値とを比較し、平均評価値が大きい方の島を選択する。そして、第2配列の第2の島(θ=30°)に対応する要素を、第1配列の選択された島に対応する要素とすると共に、第2配列の選択された島に対応する要素を、第1配列の第2の島(θ=30°)に対応する要素とする。図15においては、(3)のケースを例示している。
【0123】
次に、第3の島(θ=45°)の平均評価値を、第3の島(θ=45°)に隣接する2つの島(θ=30°、60°)の平均評価値とを比較する。そして、(1)第3の島(θ=45°)の平均評価値が、第2の島(θ=30°)の平均評価値よりも小さく、かつ、第4の島(θ=60°)の平均評価値よりも大きい場合、第2配列の第3の島(θ=45°)に対応する要素を、第1配列の第2の島(θ=30°)に対応する要素とすると共に、第2配列の第2の島(θ=30°)に対応する要素を、第1配列の第3の島(θ=45°)に対応する要素とする。また、(2)第3の島(θ=45°)の平均評価値が、第4の島(θ=60°)の平均評価値よりも小さく、かつ、第2の島(θ=30°)の平均評価値よりも大きい場合、第2配列の第3の島(θ=45°)に対応する要素を、第1配列の第4の島(θ=60°)に対応する要素とすると共に、第2配列の第4の島(θ=60°)に対応する要素を、第1配列の第3の島(θ=45°)に対応する要素とする。また、(3)第3の島(θ=45°)の平均評価値が、第2の島(θ=30°)の平均評価値よりも大きく、かつ、第4の島(θ=60°)の平均評価値よりも大きい場合、このような交換を行なわない。また、(4)第3の島(θ=45°)の平均評価値が、第2の島(θ=30°)の平均評価値よりも小さく、かつ、第4の島(θ=60°)の平均評価値よりも小さい場合、第2の島(θ=30°)の平均評価値と第4の島(θ=60°)の平均評価値とを比較し、平均評価値が大きい方の島を選択する。そして、第2配列の第3の島(θ=45°)に対応する要素を、第1配列の選択された島に対応する要素とすると共に、第2配列の選択された島に対応する要素を、第1配列の第3の島(θ=45°)に対応する要素とする。図15においては、(1)のケースを例示している。
【0124】
次に、第4の島(θ=60°)の平均評価値を、第4の島(θ=60°)に隣接する2つの島(θ=45°、90°)の平均評価値とを比較する。そして、(1)第4の島(θ=60°)の平均評価値が、第3の島(θ=45°)の平均評価値よりも小さく、かつ、第5の島(θ=90°)の平均評価値よりも大きい場合、第2配列の第4の島(θ=60°)に対応する要素を、第1配列の第3の島(θ=45°)に対応する要素とすると共に、第2配列の第3の島(θ=45°)に対応する要素を、第1配列の第4の島(θ=60°)に対応する要素とする。また、(2)第4の島(θ=60°)の平均評価値が、第5の島(θ=90°)の平均評価値よりも小さく、かつ、第3の島(θ=45°)の平均評価値よりも大きい場合、第2配列の第4の島(θ=60°)に対応する要素を、第1配列の第5の島(θ=90°)に対応する要素とすると共に、第2配列の第5の島(θ=90°)に対応する要素を、第1配列の第4の島(θ=60°)に対応する要素とする。また、(3)第4の島(θ=60°)の平均評価値が、第3の島(θ=45°)の平均評価値よりも大きく、かつ、第5の島(θ=90°)の平均評価値よりも大きい場合、このような交換を行なわない。また、(4)第4の島(θ=60°)の平均評価値が、第3の島(θ=45°)の平均評価値よりも小さく、かつ、第5の島(θ=90°)の平均評価値よりも小さい場合、第3の島(θ=45°)の平均評価値と第5の島(θ=90°)の平均評価値とを比較し、平均評価値が大きい方の島を選択する。そして、第2配列の第4の島(θ=60°)に対応する要素を、第1配列の選択された島に対応する要素とすると共に、第2配列の選択された島に対応する要素を、第1配列の第4の島(θ=60°)に対応する要素とする。図15においては、(1)のケースを例示している。
【0125】
最後に、第5の島(θ=90°)の平均評価値を、第5の島(θ=90°)に隣接する唯一の島である第4の島(θ=60°)の平均評価値とを比較する。そして、(1)第5の島(θ=90°)の平均評価値が、第4の島(θ=60°)の平均評価値よりも小さい場合、第2配列の第5の島(θ=90°)に対応する要素を、第1配列の第4の島(θ=60°)に対応する要素とすると共に、第2配列の第4の島(θ=60°)に対応する要素を、第1配列の第5の島(θ=90°)に対応する要素とする。また、(2)第5の島(θ=90°)の平均評価値が、第4の島(θ=60°)の平均評価値よりも大きい場合、このような交換は行なわない。図15においては、(1)のケースを例示している。
【0126】
このようにして、最優良遺伝子の交換パターンが一意に定まる。図15に示した例では、(1)第1の島の最優良遺伝子g1を第2の島の最優良遺伝子g2に置き換え、(2)第2の島の最優良遺伝子g2を第3の島の最優良遺伝子g3に置き換え、(3)第3の島の最優良遺伝子g3を第4の島の最優良遺伝子g4に置き換え、(4)第4の島の最優良遺伝子g4を第5の島の最優良遺伝子g5に置き換え、(5)第5の島の最優良遺伝子g5を第4の島の最優良遺伝子g4に置き換えることになる。
【0127】
なお、ここでは、各島において最も小さい(最も優れた)評価値を有する遺伝子(最優良遺伝子)を選択し、これを交換する構成(以下、この構成を「1個体移住」とも記載する)を例示したが、これに限定されるものではない。すなわち、各島において最も小さい(最も優れた)評価値を有する1つの遺伝子(最優良遺伝子)と次に小さい(次に優れた)評価値を有する1つの遺伝子(次優良遺伝子)とを選択し、これらをまとめて交換する構成(以下、この構成を「2個体移住」とも記載する)に変形してもよい。ランダム移住、近傍ランダム移住、及び近傍重み付け移住の何れにおいても、このような変形が可能である。
【0128】
(計算結果)
最後に、各種計算結果について、図16〜図19及び表1を参照して説明する。
【0129】
まず、図11に示す5つの状態の各々において最良のアンテナ特性を発揮する平面アンテナを、単純型遺伝的アルゴリズムを用いて探索した結果を、図16及び表1に示す。単純型遺伝的アルゴリズムの適用に際しては、上述した重み付き平均w1×x1+w2×x2+w3×x3+w4×x4+w5×x5+w6×x6を評価関数として用いた。
【0130】
図16は、20世代目で得られた最良アンテナのVSWR特性を示すグラフである。図11に示す5つの状態の何れにおいても、低周波側動作帯域(2.4GHz以上2.5GHz以下)及び高周波側動作帯域(5.1GHz以上5.9GHz以下)の各々においてVSWR値の谷が形成され、中間帯域(3GHz以上4.5GH以下)においてVSWR値の山が形成されていることが見て取れる。すなわち、低周波側動作帯域及び高周波側動作帯域において反射性が低く、中間帯域において遮断性の高いアンテナを実現できたことが分かる。
【0131】
表1は、20世代目で得られた最良アンテナの放射特性を示す表である。表1においては、低周波側動作帯域及び高周波側動作帯域の双方について、無指向面(最も無指向に近い面)と、無指向面における各方向の利得の標準偏差を表す指標x4とを示している。
【0132】
【表1】

【0133】
図11に示す5つの状態の何れにおいても、無指向に近い平面アンテナが実現されていることが見て取れる。特に、θ=0°,90°の場合、低周波側動作帯域で極めて無指向に近い平面アンテナが実現されていることが見て取れる。また、低周波側動作帯域と高周波側動作帯域とにおいて無指向面が一致しない場合、これら2つの帯域におけるアンテナ特性の両立を図るために実装上の工夫が必要になることがあるが、θ=0°,30°,90°の場合、低周波側動作帯域と高周波側動作帯域とにおいて無指向面とが一致しており、実装が容易な平面アンテナが実現されていることが分かる。
【0134】
次に、図11に示す5つの状態の各々において最良のアンテナ特性を発揮する平面アンテナを、分散型遺伝的アルゴリズムを用いて探索した結果を、図17〜図18及び表2〜表3に示す。分散型遺伝的アルゴリズムの適用に際しては、上述した重み付き平均w1×x1+w2×x2+w3×x3+w4×x4+w5×x5+w6×x6を評価関数として用いた。
【0135】
図17は、1世代目から30世代目までの各世代における最良評価値(最小評価値)を示すグラフである。ここでは、移住ステップS17にランダム移住を用いた場合(R)、近傍ランダム移住(N&R)を用いた場合、及び、近傍重み付き移住(N&W)を用いた場合の結果を示している。移住ステップS17に何れの移住方法を採用した場合であっても、30世代目までに最良評価値が十分に収束していることが見て取れる。
【0136】
図18は、1世代目から30世代目までの各世代における評価値の標準偏差を示したグラフである。(a)は、第1の島(θ=0°)のものであり、(b)は、第2の島(θ=30°)のものであり、(c)は、第3の島(θ=45°)のものであり、(d)は、第4の島(θ=60°)のものであり、(e)は、第5の島(θ=90°)のものである。ここでは、移住ステップS17にランダム移住を用いた場合(R)、及び、近傍重み付き移住(N&W)を用いた場合の結果を示している。
【0137】
θ=45°の場合を除き、近傍重み付き移住(N&W)を用いた場合、評価値の標準偏差は、ランダム移住を用いた場合(R)と同等か、又は、ランダム移住を用いた場合(R)よりも速やかに0に収束することが見て取れる。したがって、収束の速さに関し、近傍重み付き移住(N&W)は、概ね、ランダム移住よりも優れた移住方法であることが確認できる。
【0138】
図19は、1世代目から30世代目までの各世代における評価値の標準偏差を示したグラフである。(a)は、第1の島(θ=0°)のものであり、(b)は、第2の島(θ=30°)のものであり、(c)は、第3の島(θ=45°)のものであり、(d)は、第4の島(θ=60°)のものであり、(e)は、第5の島(θ=90°)のものである。ここでは、近傍重み付き1個体移住を用いた場合(N&W1)、及び、近傍重み付け2個体移住(N&W2)を用いた場合の結果を示している。
【0139】
θ=30°の場合を除き、近傍重み付き2個体移住を用いた場合(N&W2)、評価値の標準偏差は、近傍重み付き1個体移住を用いた場合(N&W1)よりも速やかに0に収束することが見てとれる。したがって、収束の速さに関し、近傍重み付き2個体移住は、概ね、近傍重み付き1個体移住よりも優れた移住方法であることが見て取れる。
【0140】
〔付記事項〕
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。例えば、本実施形態においては、VSWR特性に応じた評価関数を用いているが、他のアンテナ特性に応じた評価関数、例えば、利得に応じた評価関数や指向性に応じた評価関数を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明は、フィルムアンテナ等の平面アンテナの設計方法として好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0142】
10 アンテナ形成領域
11 放射素子形成領域
12 地板形成領域
13 ギャップ領域
10’ 候補アンテナ
11‘ 放射素子
12’ 地板
13a 整合パターン
13b 短絡部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射素子及び地板を備えた平面アンテナの設計方法であって、
遺伝的アルゴリズムを用いて候補アンテナ群から最良のアンテナ特性を有する最良アンテナを探索する探索工程を含み、
上記候補アンテナ群は、上記放射素子が形成される放射素子形成領域と上記地板が形成される地板形成領域とを含むアンテナ形成領域を覆う平面導体から、該アンテナ形成領域を分割して得られる複数のブロックより選択された欠損ブロックを覆う部分を欠損させた平面アンテナにより構成される、
ことを特徴とする設計方法。
【請求項2】
上記複数のブロックには、上記放射素子形成領域と上記地板形成領域との間に介在するギャップ領域に属するブロックが含まれている、
ことを特徴とする請求項1に記載の設計方法。
【請求項3】
上記探索工程において、上記遺伝的アルゴリズムを適用するために用いられる初期集団は、上記複数のブロックに占める上記欠損ブロックの割合が同じ平面アンテナにより構成される、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の設計方法。
【請求項4】
上記初期集団を構成する平面アンテナにおいて、上記複数のブロックに占める上記欠損ブロックの割合は、0.2以上0.5以下である、
ことを特徴とする請求項3に記載の設計方法。
【請求項5】
上記探索工程において、上記遺伝的アルゴリズムを適用するために用いられる評価関数は、予め定められた2以上の動作帯域の各々におけるVSWRの最大値の重み付き平均である、
ことを特徴とする請求項1から4までの何れか1項に記載の設計方法。
【請求項6】
上記重み付き平均において、低周波側動作帯域におけるVSWRの最大値に係る重み係数は、高周波側動作帯域におけるVSWRの最大値に係る重み係数以上である、
ことを特徴とする請求項5に記載の設計方法。
【請求項7】
上記探索工程にて用いる遺伝的アルゴリズムは、単純型遺伝的アルゴリズムである、
ことを特徴とする請求項1から6までの何れか1項に記載の設計方法。
【請求項8】
上記探索工程にて用いる遺伝的アルゴリズムは、分散型遺伝的アルゴリズムである、
ことを特徴とする請求項1から3までの何れか1項に記載の設計方法。
【請求項9】
上記候補アンテナ群は、複数の島に分離されており、
上記複数の島の各々に属する平面アンテナに適用される評価関数は、他の島に属する平面アンテナとは異なる折り曲げ方で折り曲げた状態におけるアンテナ特性に応じたものである、
ことを特徴とする請求項8に記載の設計方法。
【請求項10】
上記評価関数は、予め定められた低周波側動作帯域におけるVSWRの最大値と正の相関をもつ指標と、予め定められた高周波側動作帯域におけるVSWRの最大値と正の相関をもつ指標と、上記低周波側動作帯域と上記高周波側動作帯域とに挟まれた中間帯域におけるVSWRの最小値と負の相関をもつ指標とに応じたものである、
ことを特徴とする請求項9に記載の設計方法。
【請求項11】
上記評価関数は、更に、上記低周波側動作帯域の中心周波数において最も無指向に近い面における各方向の利得の標準偏差と正の相関をもつ指標と、上記低周波側動作帯域の中心周波数において最も無指向に近い面における各方向の利得の標準偏差と正の相関をもつ指標とに応じたものである、
ことを特徴とする請求項10に記載の設計方法。
【請求項12】
上記評価関数は、更に、上記低周波側動作帯域の中心周波数において最も無指向に近い面と上記低周波側動作帯域の中心周波数において最も無指向に近い面とが一致したときに、これらの面が一致しないときよりも小さい値を取る指標に応じたものである、
ことを特徴とする請求項10又は11に記載の設計方法。
【請求項13】
上記探索工程において、上記分散型遺伝的アルゴリズムを適用するために用いられる移住は、折り曲げ角度が互いに隣接する島同士の間で行なわれる、
ことを特徴とする請求項9から12までの何れか1項に記載の設計方法。
【請求項14】
上記探索工程において、上記分散型遺伝的アルゴリズムを適用するために用いられる移住は、近傍重み付け移住である、
ことを特徴とする請求項13に記載の設計方法。
【請求項15】
上記探索工程において、上記分散型遺伝的アルゴリズムを適用するために用いられる移住は、近傍重み付け2個体移住である、
ことを特徴とする請求項14に記載の設計方法。
【請求項16】
放射素子及び地板を備えた平面アンテナの製造方法であって、
請求項1から13までの何れか1項に記載の設計方法を用いた設計工程を含んでいる、
ことを特徴とする平面アンテナの製造方法。
【請求項17】
放射素子及び地板を備えた平面アンテナであって、
上記放射及び上記地板は、遺伝的アルゴリズムを用いて候補アンテナ群から最良のアンテナ特性を有する最良アンテナを探索することにより得られたものであり、
上記候補アンテナ群は、上記放射素子が形成される放射素子形成領域と上記地板が形成される地板形成領域とを含むアンテナ形成領域を覆う平面導体から、該アンテナ形成領域を分割して得られる複数のブロックより選択された欠損ブロックを覆う部分を欠損させた平面アンテナにより構成される、
ことを特徴とする平面アンテナ。
【請求項18】
放射素子及び地板を備えた平面アンテナを折り曲げて得られるアンテナであって、
上記放射及び上記地板は、分散型遺伝的アルゴリズムを用いて候補アンテナ群から最良のアンテナ特性を有する最良アンテナを探索することにより得られたものであり、
上記候補アンテナ群は、複数の島に分離されており、該複数の島の各々は、上記放射素子が形成される放射素子形成領域と上記地板が形成される地板形成領域とを含むアンテナ形成領域を覆う平面導体から、該アンテナ形成領域を分割して得られる複数のブロックより選択された欠損ブロックを覆う部分を欠損させた平面アンテナにより構成され、
上記複数の島の各々に属する平面アンテナに適用される評価関数は、他の島に属する平面アンテナとは異なる折り曲げ方で折り曲げた状態におけるアンテナ特性に応じたものである、
ことを特徴とするアンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−66150(P2013−66150A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−38793(P2012−38793)
【出願日】平成24年2月24日(2012.2.24)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)