平面スピーカ
【課題】コイルの剥離や損傷を防ぎつつ製造が容易な平面スピーカを提供する。
【解決手段】コイル30U,30Lに流れる電流の振幅がプラスとなると、コイル30U周辺の磁界が強まる一方、コイル30L周辺の磁界が弱まり、強磁性体である振動体10は磁石20U側へ変位する。コイル30U,30Lに流れる電流の振幅がマイナスとなると、コイル30L周辺の磁界が強まる一方、コイル30U周辺の磁界が弱まり、強磁性体である振動体10は磁石20L側へ変位する。コイルは磁石20U,20Lの表面に配置され、振動体10と共に振動しないため、コイルの剥離や損傷などがない。また、コイルは外側に面しておらず人間や物に接触するおそれがないため、コイルを保護する被膜を必要とせず、製造に手間がかかることがない。
【解決手段】コイル30U,30Lに流れる電流の振幅がプラスとなると、コイル30U周辺の磁界が強まる一方、コイル30L周辺の磁界が弱まり、強磁性体である振動体10は磁石20U側へ変位する。コイル30U,30Lに流れる電流の振幅がマイナスとなると、コイル30L周辺の磁界が強まる一方、コイル30U周辺の磁界が弱まり、強磁性体である振動体10は磁石20L側へ変位する。コイルは磁石20U,20Lの表面に配置され、振動体10と共に振動しないため、コイルの剥離や損傷などがない。また、コイルは外側に面しておらず人間や物に接触するおそれがないため、コイルを保護する被膜を必要とせず、製造に手間がかかることがない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面スピーカに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示された平面スピーカは、振動膜と複数の永久磁石を有しており、振動膜の両面には渦巻き状で面状のコイルが複数配置されている。また、コイルと永久磁石は対向しており、コイルに電流が流されると振動膜上においてコイルが配置されている面と垂直方向に力が働いて振動膜が変位する。そして、コイルに音響信号を供給すると、音響信号に応じてコイルに流れる電流が変化し、これに応じて振動膜に働く力も変化することとなり、振動膜が振動して音響信号に応じた音声がスピーカから発生する。
【0003】
【特許文献1】特開2001−333493号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
振動膜にコイルが配置されているスピーカにおいては、コイルに電流が流れると熱が発生し、また、コイルが振動膜と共に激しく振動して力を受けるため、振動膜とコイルとの接着力が弱いとコイルが振動膜から剥離するおそれがある。そこで特許文献1に開示された平面スピーカでは、コイルを覆うように被膜が設けられており、この被膜によりコイルは振動膜に押さえつけられ、コイルが振動膜から剥離するのが阻止されている。
しかしながら、振動膜に対して被膜を設けるようにすると、製造の際には被膜を設ける手間がかかることとなる。
【0005】
本発明は、上述した背景の下になされたものであり、コイルの剥離や損傷を防ぎつつ製造が容易な平面スピーカを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために本発明は、板状で一方の面から他方の面へ貫通する孔を有する第1磁石と、板状で一方の面から他方の面へ貫通する孔を有し、前記第1磁石と対向および離間して配置された第2磁石と、面状で可撓性を有し、前記第1磁石と前記第2磁石との間に支持された振動体と、前記第1磁石のうち前記振動体と対向している面上に配置された面状の第1コイルと、前記第2磁石のうち前記振動体と対向している面上に配置された面状の第2コイルとを有し、前記第1磁石において前記第1コイルが配置された面側の極と前記第2磁石において前記第2コイルが配置された面側の極は同種の極である平面スピーカを提供する。
【0007】
また、本発明は、板状で一方の面から他方の面へ貫通する孔を有する第1磁石と、板状で一方の面から他方の面へ貫通する孔を有し、前記第1磁石と対向および離間して変位可能に支持された第2磁石と、面状で可撓性を有し、前記第2磁石の孔を塞ぐ振動体と、前記第1磁石のうち前記振動体と対向している面上に配置された面状の第1コイルと、前記第2磁石のうち前記振動体と対向している面上に配置された面状の第2コイルとを有し、前記第1磁石において前記第1コイルが配置された面側の極と前記第2磁石において前記第2コイルが配置された面側の極は同種の極である平面スピーカを提供する。
【0008】
上記構成においては、前記第1磁石と前記第2磁石は円環形状であり、前記第1コイルと前記第2コイルは渦状に配線されて、内周側と外周側とで配線方向が逆であってもよい。
また、上記構成においては、前記第1磁石と前記第2磁石は円環形状であって板状の両面で外周側から内周側に向けてN極とS極とが交互に位置し、前記第1コイルは、前記第1磁石のN極上とS極上とで配線方向が逆であり、前記第2コイルは、前記第2磁石のN極上とS極上とで配線方向が逆であってもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、コイルの剥離や損傷を防ぎつつ製造が容易な平面スピーカを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
[第1実施形態]
図1は、本発明の一実施形態に係る平面スピーカ1の外観を模式的に示した図、図2は、平面スピーカ1の断面を模式的に示した図である。図に示したように平面スピーカ1は、振動体10、ダンパ15、磁石20U,20L、コイル30U,30Lが配線されるフィルム35、保持部40U,40Lとを備えている。
なお、図中の各構成要素の寸法は、構成要素の形状を容易に理解できるように実際の寸法とは異ならせてある。
【0011】
(平面スピーカ1の各部の構成)
まず、磁石20U,20Lは永久磁石であり、板状で円環の形状となっている。そして、磁石20U,20Lは、一方の面側がN極で、N極と反対側の面側がS極となっている。
振動体10は、薄い膜状のプラスチックの表面に強磁性体を膜状に塗布したものであり、形状は円形となっている。なお、振動体10は上記のものに限定されず、強磁性体の金属を薄い膜状にしたものであってもよい。
ダンパ15は、振動体10を支持するための部材であって、弾性を有する素材を円環の形状にしたものである。ダンパ15は、力が掛かると変形し、掛かっていた力がなくなると元の形状に戻る。
【0012】
フィルム35は、プラスチックを薄い膜状にしたものであり、コイル30U,30Lの土台となるものである。フィルム35は円環の形状をしており、内径は磁石20U,20Lの内径と同じで、外径も磁石20U,20Lの外径と同じとなっている。
【0013】
コイル30U,30Lは、導電性を有する金属をフィルム35の表面に渦巻き状に薄く配線したものである。
図3(a)はフィルム35をコイル30Uが配線された側から見た模式図であり、この図に示したようにコイル30Uは、外側から内側に向けて反時計回り(左回り)に配線パターンが設けられ、音響信号が入力される入力端31A,31Bを配線パターンの両端部に有しており、フィルム35の内周と外周との間の所定部分に達すると、配線パターンの向きが反対の時計方向(右回り)となっている。
また、図3(b)はフィルム35をコイル30Lが配線された側から見た模式図であり、この図に示したようにコイル30Lは、外側から内側に向けて時計回り(右回り)に配線パターンが設けられ、音響信号が入力される入力端32A,32Bを配線パターンの両端部に有しており、フィルム35の内周と外周との間の所定部分に達すると、配線パターンの向きが反対の反時計方向(左回り)となっている。
なお、本実施形態においては、コイル30U,30Lにおいて配線パターンの向きが反対となる位置は、フィルム35の径方向の中点の位置となっている。
【0014】
保持部40U,40Lは、磁石20U,20Lを固定するための部材であり、絶縁性を有する非磁性体(例えばプラスチック)で形成されている。
保持部40U,40Lは円筒の形状であって、2つある円形の開口部の一方は縁部分が円筒の径方向(円形の開口部の中心方向)へ円環状に張り出しており、一方の開口部の径が他方の開口部の径より小さくなっている(以下の説明においては、保持部40Lにおいて径の小さい側の開口部を第1開口部、径の大きい側の開口部を第2開口部と称し、保持部40Uにおいて径の小さい側の開口部を第3開口部、径の大きい側の開口部を第4開口部と称する)。
また、保持部40Lは、音響信号が入力される端子40LAと端子40LBとを有しており、保持部40Uは、音響信号が入力される端子40UA、端子40UBを有している。
【0015】
なお、保持部40U,40Lの内径は、磁石20U,20Lが円筒の中空部分に収まるように磁石20U,20Lの外径より若干大きくなっている。
また、径が小さい方の第1,第3開口部については、開口部の直径は磁石20U,20Lの外径より小さくなっており、中空部分に収められた磁石20U,20Lが円環状に張り出した部分で支えられるようになっている。
また、保持部40Lの中心軸に沿った方向の長さは、保持部40Uの中心軸に沿った方向の長さより長くなっている。
【0016】
(平面スピーカ1の全体構成)
平面スピーカ1においては、コイル30Lが配線されたフィルム35が磁石20LのN極側に接着されている。そして、この磁石20Lが保持部40Lの第2開口部側からS極側を第1開口部に向けて保持部40Lに収められており、磁石20LのS極側が第1開口部の円環状に張り出した部分に接着されている。また、コイル30Lの入力端32Aはリード線(図示略)を介して端子40LAに接続されており、入力端32Bはリード線(図示略)を介して端子40LBに接続されている。
【0017】
また、平面スピーカ1においては、ダンパ15の内周側の縁部分に振動体10が接着されており、このダンパ15の外周側の縁部分が保持部40Lの内周面に接着され、磁石20Lとコイル30Lより上方に位置している。
【0018】
一方、コイル30Uが配置されたフィルム35は、磁石20UのN極側に接着されている。そして、この磁石20Uは保持部40Uの第4開口部側からS極側を第3開口部に向けて保持部40Uに収められており、磁石20UのS極側が第3開口部の円環状に張り出した部分に接着されている。また、コイル30Uの入力端31Aは、リード線(図示略)を介して端子40UAに接続されており、入力端31Bは、リード線(図示略)を介して端子40UBに接続されている。
【0019】
そして、保持部40Uの第4開口部側の端部と、保持部40Lの第2開口部側の端部とが接着されており、平面スピーカ1においては、磁石20UのN極と磁石20LのN極とが対向し、この2つのN極の間の中間位置に振動体10が位置している。
また、平面スピーカ1においては、コイル30Uはコイル30Lと対向するため、コイル30Uとコイル30Lとを磁石20UのS極側から見ると、その配線パターンの向きは両方とも同じとなっている。
【0020】
(平面スピーカ1の動作)
次に、平面スピーカ1の動作について図4〜図6を用いて説明する。
なお、以下の説明においては、図4に示した音響信号が入力された場合を例にして動作の説明を行う。また、図5,図6は平面スピーカ1の作用を説明するための模式図であって、コイル30U,30Lの部分を拡大した図であり、コイルの配線の断面中に「・」が記載されたものは図面の裏から表に向かって電流が流れていることを意味し、コイルの配線の断面中に「×」が記載されたものは図面の表から裏に向かって電流が流れていることを意味するものとする。また、図中の二点鎖線上の矢印は、コイルに電流が流れたことにより発生する磁界の方向を表している。
【0021】
図4に示した信号が平面スピーカ1の端子40LA,40LBおよび端子40UA,40UBに供給された場合、まず、音響信号の振幅が0の時点においては、コイル30U,30Lのいずれにも電流が流れず、各コイルの周囲には右ネジの法則による磁界が発生しないため、ここでは、強磁性体である振動体10は、ダンパ15に支持されて磁石20Uと磁石20Lとの中間に位置している。
【0022】
次に、コイル30U,30Lに供給される音響信号の振幅がプラスとなると、コイル30Uにおいては、入力端31Aから入力端31Bの方向へ電流が流れ、コイル30Lにおいては、入力端32Aから入力端32Bの方向へ電流が流れ、図5において二点鎖線で示したように、各コイルの周囲においては右ネジの法則に従って同心円状に磁界が発生する。
【0023】
ここで、図5に示したように、コイル30Uのうち磁石20UのS極側から見て配線パターンが時計回りとなっている部分(コイルの配線の断面中に「×」が記載されている部分)では、磁石20Uの磁界の方向と同じ方向に磁界が発生する。また、コイル30Uのうち磁石20UのS極側から見て配線パターンが反時計回りとなっている部分(コイルの配線の断面中に「・」が記載されている部分)でも、磁石20Uの磁界の方向と同じ方向に磁界が発生する。即ち、コイル30Uにおいては磁石20Uの磁界と同じ方向の磁界が発生するため、コイル30Uに電流が流れていない場合と比較すると、磁石20U側の磁界は強くなる。
【0024】
一方、図5に示したように、コイル30Lのうち磁石20UのS極側から見て配線パターンが時計回りとなっている部分(コイルの配線の断面中に「×」が記載されている部分)では、磁石20Lの磁界の方向と反対方向に磁界が発生する。また、コイル30Lにおいては、磁石20UのS極側から見て配線パターンが反時計回りとなっている部分(コイルの配線の断面中に「・」が記載されている部分)でも、磁石20Lの磁界の方向と反対方向に磁界が発生する。
コイル30Lにおいては磁石20Lと反対方向の磁界が発生するため、コイル30Lに電流が流れていない場合と比較すると、磁石20L側の磁界は弱くなる。
【0025】
このように、コイル30U,30Lに流れる電流の振幅がプラスとなると、振動体10から見て磁石20U側の磁界が強まると共に磁石20L側の磁界が弱まるため、強磁性体である振動体10は磁界が強い磁石20U側へ変位する。
【0026】
次に、コイル30U,30Lに供給される音響信号の振幅がマイナスとなると、コイル30Uにおいては、入力端31Bから入力端31Aの方向へ電流が流れ、コイル30Lにおいては、入力端32Bから入力端32Aの方向へ電流が流れ、図6において二点鎖線で示したように、コイルの周囲においては右ネジの法則に従って同心円状に磁界が発生する。
【0027】
ここで、図6に示したように、コイル30Uのうち磁石20UのS極側から見て配線パターンが時計回りとなっている部分(コイルの配線の断面中に「・」が記載されている部分)では、磁石20Uの磁界の方向と反対方向に磁界が発生する。また、コイル30Uのうち磁石20UのS極側から見て配線パターンが反時計回りとなっている部分(コイルの配線の断面中に「×」が記載されている部分)でも、磁石20Uの磁界の方向と反対方向に磁界が発生する。
即ち、コイル30Uにおいては磁石20Uの磁界と反対方向の磁界が発生するため、コイル30Uに電流が流れていない場合と比較すると、磁石20U側の磁界は弱くなる。
【0028】
一方、図6に示したように、コイル30Lのうち磁石20UのS極側から見て配線パターンが時計回りとなっている部分(コイルの配線の断面中に「・」が記載されている部分)では、磁石20Lの磁界の方向と同じ方向に磁界が発生する。また、コイル30Lのうち磁石20UのS極側から見て配線パターンが反時計回りとなっている部分(コイルの配線の断面中に「×」が記載されている部分)でも、磁石20Lの磁界の方向と同じ方向に磁界が発生する。即ち、コイル30Lにおいては磁石20Lの磁界と同じ方向の磁界が発生するため、コイル30Lに電流が流れていない場合と比較すると、磁石20L側の磁界は強くなる。
【0029】
このように、コイル30U,30Lに流れる電流の振幅がマイナスとなると、振動体10から見て磁石20U側の磁界が弱まると共に磁石20L側の磁界が強まるため、強磁性体である振動体10は磁界が強い磁石20L側へ変位する。
【0030】
このように本実施形態に係る平面スピーカ1においては、音響信号の振幅の正負に応じてコイル周囲に発生する磁界の方向が変化し、各コイルの磁界の方向に応じて振動体10が上下に変位する。なお、各コイル周囲に生じる磁界の強さは、各コイルに流れる電流の大きさによって変化し、磁界の強さに応じて振動体10の変位量も変化する。振動体10の変位方向と変位量は音響信号の振幅に対応したものとなるため、振動体10は音響信号の振幅に応じて振動し、その振動状態(振動数、振幅、位相)に応じた音が振動体10から発生する。そして、発生した音は円環の形状をした磁石20U,20Lの穴を通って平面スピーカ1の外部に放射される。
【0031】
本実施形態によれば、コイル30U,30Lは振動せず外部から力を受けないため、振動によるコイルの剥離や損傷などがない。また、コイルは外側に面しておらず人間や物に接触するおそれがないため、保護のためにコイルを被膜する必要がなく、製造に手間がかかることがない。
【0032】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る平面スピーカ1Aについて説明する。
本発明の第2実施形態に係る平面スピーカ1Aは、外観は第1実施形態の平面スピーカ1と同じとなっているが、振動体10を磁石20Lに接着し、磁石20Lを変位させて音を発生させる点で第1実施形態の平面スピーカ1と相違している。
【0033】
図7は、本発明の第2実施形態に係る平面スピーカ1Aの断面を模式的に示した図である。なお、以下の説明においては、平面スピーカ1Aにおいて第1実施形態と同じ部分については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0034】
保持部41Lは、円筒の形状であって、絶縁性を有する非磁性体(例えばプラスチック)で形成されている。保持部41Lと第1実施形態の保持部40Lとを比較すると、保持部40Lが、円形の開口部の一方に円環状に張り出した部分を有しているのに対し、保持部41Lは、この部分を備えていない点で相違している。
【0035】
支持部材50は、磁石20Uを支持するための部材であって円環の形状となっている。支持部材50は、絶縁性を有する非磁性体(例えばプラスチック)で形成されており、内径は磁石20Uの外径より若干大きく、外径は保持部40Uの内径より若干小さくなっている。
【0036】
フィルム35に配線されるコイル30LAは、図8に示したようにコイル30Lと配線パターンの向きが逆となっており、フィルム35をコイル30LAが配置されている側から見ると、外側から内側に向けて反時計回り(左回り)に配線パターンが設けられ、フィルム35の内周と外周との間の所定部分に達すると、配線パターンの向きが反対の時計方向(右回り)となっている。
【0037】
(平面スピーカ1Aの全体構成)
平面スピーカ1Aにおいては、コイル30LAが配置されたフィルム35が磁石20LのN極側に接着されており、この磁石20Lがダンパ15の内周側に接着されている。また、振動体10が、円環の形状をした磁石20Lの穴を塞ぐようにして磁石20Lに接着されている。なお、本実施形態においては、振動体10は非磁性であり軽量で剛性があるものが好ましい。
そして、ダンパ15が接着された磁石20Lは保持部41Lの内側に収められ、ダンパ15の外周側が保持部41Lに固着されている。なお、コイル30LAの入力端32Aはリード線(図示略)を介して端子40LAに接続されており、入力端32Bはリード線(図示略)を介して端子40LBに接続されている。
【0038】
一方、コイル30Uが配置されたフィルム35は、磁石20UのN極側に接着されており、この磁石20Uは支持部材50の内周側に接着されている。
そして、支持部材50が接着された磁石20Uは、保持部40Uの第4開口部側からS極側を第3開口部に向けて保持部40Uに収められ、S極側が第3開口部の円環状に張り出した部分に接着されている。なお、コイル30Uの入力端31Aは、リード線(図示略)を介して端子40UAに接続されており、入力端31Bは、リード線(図示略)を介して端子40UBに接続されている。
【0039】
そして、保持部40Uの第4開口部側の端部と、保持部40Lの一方の開口部側の端部とが接着され、平面スピーカ1Aにおいては、磁石20UのN極と磁石20LのN極とが対向して位置している。また、平面スピーカ1Aにおいては、コイル30Uはコイル30LAと対向し、コイル30Uとコイル30LAとを磁石20UのS極側から見ると、その配線パターンの向きは互いに逆向きとなっている。
【0040】
なお、平面スピーカ1Aにおいては、磁石20Lはダンパ15により保持部41Lの内側に支持され、このダンパ15の弾性により上下に変位可能となっている。
また、平面スピーカ1Aにおいては磁石20UのN極と磁石20LのN極とが対向しているため、磁石20Lは磁石20Uと反発し、反発力とダンパ15が磁石20Lを支持する力とが釣り合う場所に位置する。
【0041】
(平面スピーカ1Aの動作)
次に、平面スピーカ1Aの動作について、図9,図10を用いて説明する。
なお、以下の説明においては、図4に示した音響信号が入力された場合を例にして動作の説明を行う。また、図9,図10は平面スピーカ1Aの作用を説明するための図であって、コイル30U,30LAの部分を拡大した図であり、コイルの配線の断面中に「・」が記載されたものは図面の裏から表に向かって電流が流れていることを意味し、コイル断面中に「×」が記載されたものは図面の表から裏に向かって電流が流れていることを意味するものとする。また、図中の二点鎖線上の矢印は、コイルに電流が流れたことにより発生する磁界の方向を表している。
【0042】
図4に示した信号が入力端31A,31Bおよび入力端端子32A,32Bに供給された場合、まず、音響信号の振幅が0の時点においては、コイル30U,30LAのいずれにも電流が流れず、各コイルの周囲には右ネジの法則による磁界が発生しないため、ここでは、磁石20Lは磁石20Uと反発し、反発力とダンパ15が磁石20Lを支持する力とが釣り合う位置で磁石20Lは静止している。
【0043】
次に、コイル30U,30LAに供給される音響信号の振幅がプラスとなると、コイル30Uにおいては、入力端31Aから入力端31Bの方向へ電流が流れ、コイル30LAにおいては、入力端32Aから入力端32Bの方向へ電流が流れ、図9において二点鎖線で示したように、コイルの周囲においては右ネジの法則に従って同心円状に磁界が発生する。
【0044】
ここで、図9に示したように、コイル30Uのうち磁石20UのS極側から見て配線パターンが時計回りとなっている部分(コイルの配線の断面中に「×」が記載されている部分)では、磁石20Uの磁界の方向と同じ方向に磁界が発生する。また、コイル30Uのうち磁石20UのS極側から見て配線パターンが反時計回りとなっている部分(コイルの配線の断面中に「・」が記載されている部分)でも、磁石20Uの磁界の方向と同じ方向に磁界が発生する。即ち、コイル30Uにおいては磁石20Uの磁界と同じ方向の磁界が発生するため、コイル30Uに電流が流れていない場合と比較すると、磁石20U側の磁界は強くなる。
【0045】
一方、図9に示したように、コイル30LAのうち磁石20UのS極側から見て配線パターンが時計回りとなっている部分(コイルの配線の断面中に「・」が記載されている部分)では、磁石20Lの磁界の方向と同じ方向に磁界が発生する。また、コイル30LAのうち磁石20UのS極側から見て配線パターンが反時計回りとなっている部分(コイルの配線の断面中に「×」が記載されている部分)でも、磁石20Lの磁界の方向と同じ方向に磁界が発生する。即ち、コイル30LAにおいては磁石20Lの磁界と同じ方向の磁界が発生するため、コイル30Uに電流が流れていない場合と比較すると、磁石20L側の磁界は強くなる。
【0046】
このように、コイル30U,30LAに流れる電流の振幅がプラスとなると、コイル30U周辺の磁界が強まると共にコイル30LA周辺の磁界も強まり、磁石20Lと磁石20Uとの間で反発する力が強くなるため、変位可能となっている磁石20Lは磁石20Uと反対の方向へ振動体10と共に変位する。
【0047】
次に、コイル30U,30Lに供給される音響信号の振幅がマイナスとなると、コイル30Uにおいては、入力端31Bから入力端31Aの方向へ電流が流れ、コイル30LAにおいては、入力端32Bから入力端32Aの方向へ電流が流れ、図10において二点鎖線で示したように、コイルの周囲においては右ネジの法則に従って同心円状に磁界が発生する。
【0048】
ここで、図10に示したように、コイル30Uのうち磁石20UのS極側から見て配線パターンが時計回りとなっている部分(コイルの配線の断面中に「・」が記載されている部分)では、磁石20Uの磁界の方向と反対方向に磁界が発生する。また、コイル30Uのうち磁石20UのS極側から見て配線パターンが反時計回りとなっている部分(コイルの配線の断面中に「×」が記載されている部分)でも、磁石20Uの磁界の方向と反対方向に磁界が発生する。即ち、コイル30Uにおいては磁石20Uの磁界と反対方向の磁界が発生するため、コイル30Uに電流が流れていない場合と比較すると、磁石20U側の磁界は弱くなる。
【0049】
また、図10に示したように、コイル30LAのうち磁石20UのS極側から見て配線パターンが時計回りとなっている部分(コイルの配線の断面中に「×」が記載されている部分)では、磁石20Lの磁界の方向と反対方向に磁界が発生する。また、コイル30LAのうち磁石20UのS極側から見て配線パターンが反時計回りとなっている部分(コイルの配線の断面中に「・」が記載されている部分)でも、磁石20Lの磁界の方向と反対方向に磁界が発生する。即ち、コイル30LAにおいては磁石20Lの磁界の方向と反対方向の磁界が発生するため、コイル30LAに電流が流れていない場合と比較すると、磁石20L側の磁界は弱くなる。
【0050】
このように、コイル30U,30LAに流れる電流の振幅がマイナスとなると、コイル30U周辺の磁界が弱まると共にコイル30LA周辺の磁界も弱まり、磁石20Lが磁石20Uに対して反発する力が弱くなるため、ダンパ15の弾性力で引き戻されて磁石20Lは振動体10と共に磁石20Uの方向へ変位する。
【0051】
このように本実施形態に係る平面スピーカ1Aにおいては、音響信号の振幅の正負に応じてコイル周囲に発生する磁界の方向が変化し、各コイルの磁界の方向に応じて磁石20Lと共に振動体10が上下に変位する。
なお、各コイル周囲に生じる磁界の強さは、各コイルに流れる電流の大きさによって変化し、磁界の強さに応じて磁石20Lおよび振動体10の変位量も変化する。振動体10の変位方向と変位量は、音響信号の振幅に対応したものとなるため、振動体10は音響信号の振幅に応じて振動し、その振動状態(振動数、振幅、位相)に応じた音が振動体10から発生する。そして、発生した音は、円環の形状をした磁石20U,20Lの穴を通って平面スピーカ1Aの外部に放射される。
【0052】
本実施形態によれば、コイル30U,30LAは外部から力を受けないため、振動によるコイルの剥離や損傷などがない。また、コイルは外側に面しておらず人間や物に接触するおそれがないため、保護のためにコイルを被膜する必要がなく、製造に手間がかかることがない。
【0053】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、他の様々な形態で実施可能である。例えば、上述の実施形態を以下のように変形して本発明を実施してもよい。
【0054】
上述した第1実施形態においては、磁石20U,20Lの一方の面側がN極で他方の面側がS極となっているが、磁石を同心円状に並べて図11に示したように半径方向へN極とS極とが交互に並ぶようにしてもよい。
図11は、この変形例の断面を模式的に示した図である。なお、図11においては図面が繁雑になるのを防ぐために磁石20UA,20LAとコイル30UB,30LBと振動体10およびフィルム35のみを図示している。
この構成において磁石20UA側に配置するコイル30UBは、入力端31Aから入力端31Bへ電流を流したときの電流の向きが図11の向きとなるように配線し、磁石20LA側に配置するコイル30LBは、入力端32Aから入力端32Bへ電流を流したときの電流の向きが図11の向きとなるように配線する。
この構成においても、図11に示した方向に電流が流れると磁石20UA側の磁界が強くなる一方、磁石20LA側の磁界が弱くなり、振動体10は磁石20UA側へ変位する。また、図11に示したのと反対方向に電流が流れると磁石20UA側の磁界が弱くなる一方、磁石20LA側の磁界が強くなり、振動体10は磁石20LA側へ変位する。
【0055】
また、上述した第2実施形態においても、磁石20Uに替えて磁石20UAを用い、磁石20Lに替えて磁石20LAを用いてもよい。
図12は、この変形例の断面を模式的に示した図である。なお、図12においても図面が繁雑になるのを防ぐために磁石20UA,20LAとコイル30UC,30LCと振動体10およびフィルム35のみを図示している。
この構成において磁石20UA側に配置するコイル30UCは、入力端31Aから入力端31Bへ電流を流したときの電流の向きが図12の向きとなるように配線し、磁石20LA側に配置するコイル30LCは、入力端32Aから入力端32Bへ電流を流したときの電流の向きが図12の向きとなるように配線する。
この構成においても、図12に示した方向に電流が流れると磁石20UA側の磁界が強くなると共に磁石20LA側の磁界が強くなり、磁石20LAは振動体10と共に磁石20UAと反対側へ変位する。また、図12に示したのと反対方向に電流が流れると磁石20UA側の磁界が弱くなると共に磁石20LA側の磁界も弱くなり、磁石20LAは振動体10と共に磁石20UA側へ変位する。
【0056】
なお、図11および図12に示した構成においては、磁石においてコイルが配置されている側の面と反対側の面に磁石と同じ円環形状の鉄板を取り付けるようにしてもよい。
【0057】
上述した実施形態においては、平面スピーカ1,1Aを磁石20UのS極側から見た時の形状は円環の形状となっているが、中央部分に穴が開いているのであれば矩形や多角形など他の形状であってもよい。
【0058】
上述した第1実施形態においては、磁石20U,20Lの形状は円環の形状となっているが、各磁石を円板の形状とし、各コイルの配線パターンの隙間に磁石を貫通する穴を複数設けるようにしてもよい。この構成によれば、振動体10が外部に露出しないので振動体10が他の物に触れて破損する虞がなく、また、振動体10により発生した音が、この孔を通って外部に放射される。
【0059】
上述した第2実施形態においては、磁石20UのS極側から見たときの各コイルの配線パターンの向きを第1実施形態と同じとし、磁石20L側のコイルについては、磁石20U側のコイルに供給する音響信号と逆相の音響信号を供給するようにしてもよい。
また、第1実施形態においては、磁石20UのS極側から見たときの各コイルの配線パターンの向きを第2実施形態と同じとし、磁石20L側のコイルについては、磁石20U側のコイルに供給する音響信号と逆相の音響信号を供給するようにしてもよい。
【0060】
上述した実施形態においては音響信号が入力される端子は端子40UA,40UB,40LA,40LBの4つとなっているが、端子を2つとし、一方の端子を入力端31A,32Aに接続し、もう一方の端子を入力端31B,32Bと接続するようにしてもよい。
【0061】
上述した実施形態においては、コイル30U,30L,30LAは、配線の方向が内周側で外周側と逆となっているが、内周側で外周側と逆方向となっている配線部分を設けないようにしてもよい。
【0062】
上述した第1実施形態と第2実施形態においては、磁石20UのN極と磁石20LのN極とが対向しているが、磁石20UのS極と磁石20LのS極を対向させ、S極の表面にコイルを配置するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の一実施形態に係る平面スピーカ1の外観図である。
【図2】平面スピーカ1の断面図である。
【図3】コイル30U,30Lの配線パターンの模式図である。
【図4】平面スピーカ1に入力される音響信号を例示した図である。
【図5】平面スピーカ1の作用を説明するための図である。
【図6】平面スピーカ1の作用を説明するための図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る平面スピーカ1Aの断面図である。
【図8】コイル30LAの配線パターンの模式図である。
【図9】平面スピーカ1Aの作用を説明するための図である。
【図10】平面スピーカ1Aの作用を説明するための図である。
【図11】本発明の変形例に係る平面スピーカの断面の模式図である。
【図12】本発明の変形例に係る平面スピーカの断面の模式図である。
【符号の説明】
【0064】
1,1A・・・平面スピーカ、10・・・振動体、20U,20L、20UA,20LA・・・磁石、30U,30L,30LA,30UB,30LB,30UC,30LC・・・コイル、31A,31B,32A,32B・・・入力端、35・・・フィルム、40U,40L,41L・・・保持部、40UA,40UB,40LA,40LB・・・端子、50・・・支持部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面スピーカに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示された平面スピーカは、振動膜と複数の永久磁石を有しており、振動膜の両面には渦巻き状で面状のコイルが複数配置されている。また、コイルと永久磁石は対向しており、コイルに電流が流されると振動膜上においてコイルが配置されている面と垂直方向に力が働いて振動膜が変位する。そして、コイルに音響信号を供給すると、音響信号に応じてコイルに流れる電流が変化し、これに応じて振動膜に働く力も変化することとなり、振動膜が振動して音響信号に応じた音声がスピーカから発生する。
【0003】
【特許文献1】特開2001−333493号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
振動膜にコイルが配置されているスピーカにおいては、コイルに電流が流れると熱が発生し、また、コイルが振動膜と共に激しく振動して力を受けるため、振動膜とコイルとの接着力が弱いとコイルが振動膜から剥離するおそれがある。そこで特許文献1に開示された平面スピーカでは、コイルを覆うように被膜が設けられており、この被膜によりコイルは振動膜に押さえつけられ、コイルが振動膜から剥離するのが阻止されている。
しかしながら、振動膜に対して被膜を設けるようにすると、製造の際には被膜を設ける手間がかかることとなる。
【0005】
本発明は、上述した背景の下になされたものであり、コイルの剥離や損傷を防ぎつつ製造が容易な平面スピーカを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために本発明は、板状で一方の面から他方の面へ貫通する孔を有する第1磁石と、板状で一方の面から他方の面へ貫通する孔を有し、前記第1磁石と対向および離間して配置された第2磁石と、面状で可撓性を有し、前記第1磁石と前記第2磁石との間に支持された振動体と、前記第1磁石のうち前記振動体と対向している面上に配置された面状の第1コイルと、前記第2磁石のうち前記振動体と対向している面上に配置された面状の第2コイルとを有し、前記第1磁石において前記第1コイルが配置された面側の極と前記第2磁石において前記第2コイルが配置された面側の極は同種の極である平面スピーカを提供する。
【0007】
また、本発明は、板状で一方の面から他方の面へ貫通する孔を有する第1磁石と、板状で一方の面から他方の面へ貫通する孔を有し、前記第1磁石と対向および離間して変位可能に支持された第2磁石と、面状で可撓性を有し、前記第2磁石の孔を塞ぐ振動体と、前記第1磁石のうち前記振動体と対向している面上に配置された面状の第1コイルと、前記第2磁石のうち前記振動体と対向している面上に配置された面状の第2コイルとを有し、前記第1磁石において前記第1コイルが配置された面側の極と前記第2磁石において前記第2コイルが配置された面側の極は同種の極である平面スピーカを提供する。
【0008】
上記構成においては、前記第1磁石と前記第2磁石は円環形状であり、前記第1コイルと前記第2コイルは渦状に配線されて、内周側と外周側とで配線方向が逆であってもよい。
また、上記構成においては、前記第1磁石と前記第2磁石は円環形状であって板状の両面で外周側から内周側に向けてN極とS極とが交互に位置し、前記第1コイルは、前記第1磁石のN極上とS極上とで配線方向が逆であり、前記第2コイルは、前記第2磁石のN極上とS極上とで配線方向が逆であってもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、コイルの剥離や損傷を防ぎつつ製造が容易な平面スピーカを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
[第1実施形態]
図1は、本発明の一実施形態に係る平面スピーカ1の外観を模式的に示した図、図2は、平面スピーカ1の断面を模式的に示した図である。図に示したように平面スピーカ1は、振動体10、ダンパ15、磁石20U,20L、コイル30U,30Lが配線されるフィルム35、保持部40U,40Lとを備えている。
なお、図中の各構成要素の寸法は、構成要素の形状を容易に理解できるように実際の寸法とは異ならせてある。
【0011】
(平面スピーカ1の各部の構成)
まず、磁石20U,20Lは永久磁石であり、板状で円環の形状となっている。そして、磁石20U,20Lは、一方の面側がN極で、N極と反対側の面側がS極となっている。
振動体10は、薄い膜状のプラスチックの表面に強磁性体を膜状に塗布したものであり、形状は円形となっている。なお、振動体10は上記のものに限定されず、強磁性体の金属を薄い膜状にしたものであってもよい。
ダンパ15は、振動体10を支持するための部材であって、弾性を有する素材を円環の形状にしたものである。ダンパ15は、力が掛かると変形し、掛かっていた力がなくなると元の形状に戻る。
【0012】
フィルム35は、プラスチックを薄い膜状にしたものであり、コイル30U,30Lの土台となるものである。フィルム35は円環の形状をしており、内径は磁石20U,20Lの内径と同じで、外径も磁石20U,20Lの外径と同じとなっている。
【0013】
コイル30U,30Lは、導電性を有する金属をフィルム35の表面に渦巻き状に薄く配線したものである。
図3(a)はフィルム35をコイル30Uが配線された側から見た模式図であり、この図に示したようにコイル30Uは、外側から内側に向けて反時計回り(左回り)に配線パターンが設けられ、音響信号が入力される入力端31A,31Bを配線パターンの両端部に有しており、フィルム35の内周と外周との間の所定部分に達すると、配線パターンの向きが反対の時計方向(右回り)となっている。
また、図3(b)はフィルム35をコイル30Lが配線された側から見た模式図であり、この図に示したようにコイル30Lは、外側から内側に向けて時計回り(右回り)に配線パターンが設けられ、音響信号が入力される入力端32A,32Bを配線パターンの両端部に有しており、フィルム35の内周と外周との間の所定部分に達すると、配線パターンの向きが反対の反時計方向(左回り)となっている。
なお、本実施形態においては、コイル30U,30Lにおいて配線パターンの向きが反対となる位置は、フィルム35の径方向の中点の位置となっている。
【0014】
保持部40U,40Lは、磁石20U,20Lを固定するための部材であり、絶縁性を有する非磁性体(例えばプラスチック)で形成されている。
保持部40U,40Lは円筒の形状であって、2つある円形の開口部の一方は縁部分が円筒の径方向(円形の開口部の中心方向)へ円環状に張り出しており、一方の開口部の径が他方の開口部の径より小さくなっている(以下の説明においては、保持部40Lにおいて径の小さい側の開口部を第1開口部、径の大きい側の開口部を第2開口部と称し、保持部40Uにおいて径の小さい側の開口部を第3開口部、径の大きい側の開口部を第4開口部と称する)。
また、保持部40Lは、音響信号が入力される端子40LAと端子40LBとを有しており、保持部40Uは、音響信号が入力される端子40UA、端子40UBを有している。
【0015】
なお、保持部40U,40Lの内径は、磁石20U,20Lが円筒の中空部分に収まるように磁石20U,20Lの外径より若干大きくなっている。
また、径が小さい方の第1,第3開口部については、開口部の直径は磁石20U,20Lの外径より小さくなっており、中空部分に収められた磁石20U,20Lが円環状に張り出した部分で支えられるようになっている。
また、保持部40Lの中心軸に沿った方向の長さは、保持部40Uの中心軸に沿った方向の長さより長くなっている。
【0016】
(平面スピーカ1の全体構成)
平面スピーカ1においては、コイル30Lが配線されたフィルム35が磁石20LのN極側に接着されている。そして、この磁石20Lが保持部40Lの第2開口部側からS極側を第1開口部に向けて保持部40Lに収められており、磁石20LのS極側が第1開口部の円環状に張り出した部分に接着されている。また、コイル30Lの入力端32Aはリード線(図示略)を介して端子40LAに接続されており、入力端32Bはリード線(図示略)を介して端子40LBに接続されている。
【0017】
また、平面スピーカ1においては、ダンパ15の内周側の縁部分に振動体10が接着されており、このダンパ15の外周側の縁部分が保持部40Lの内周面に接着され、磁石20Lとコイル30Lより上方に位置している。
【0018】
一方、コイル30Uが配置されたフィルム35は、磁石20UのN極側に接着されている。そして、この磁石20Uは保持部40Uの第4開口部側からS極側を第3開口部に向けて保持部40Uに収められており、磁石20UのS極側が第3開口部の円環状に張り出した部分に接着されている。また、コイル30Uの入力端31Aは、リード線(図示略)を介して端子40UAに接続されており、入力端31Bは、リード線(図示略)を介して端子40UBに接続されている。
【0019】
そして、保持部40Uの第4開口部側の端部と、保持部40Lの第2開口部側の端部とが接着されており、平面スピーカ1においては、磁石20UのN極と磁石20LのN極とが対向し、この2つのN極の間の中間位置に振動体10が位置している。
また、平面スピーカ1においては、コイル30Uはコイル30Lと対向するため、コイル30Uとコイル30Lとを磁石20UのS極側から見ると、その配線パターンの向きは両方とも同じとなっている。
【0020】
(平面スピーカ1の動作)
次に、平面スピーカ1の動作について図4〜図6を用いて説明する。
なお、以下の説明においては、図4に示した音響信号が入力された場合を例にして動作の説明を行う。また、図5,図6は平面スピーカ1の作用を説明するための模式図であって、コイル30U,30Lの部分を拡大した図であり、コイルの配線の断面中に「・」が記載されたものは図面の裏から表に向かって電流が流れていることを意味し、コイルの配線の断面中に「×」が記載されたものは図面の表から裏に向かって電流が流れていることを意味するものとする。また、図中の二点鎖線上の矢印は、コイルに電流が流れたことにより発生する磁界の方向を表している。
【0021】
図4に示した信号が平面スピーカ1の端子40LA,40LBおよび端子40UA,40UBに供給された場合、まず、音響信号の振幅が0の時点においては、コイル30U,30Lのいずれにも電流が流れず、各コイルの周囲には右ネジの法則による磁界が発生しないため、ここでは、強磁性体である振動体10は、ダンパ15に支持されて磁石20Uと磁石20Lとの中間に位置している。
【0022】
次に、コイル30U,30Lに供給される音響信号の振幅がプラスとなると、コイル30Uにおいては、入力端31Aから入力端31Bの方向へ電流が流れ、コイル30Lにおいては、入力端32Aから入力端32Bの方向へ電流が流れ、図5において二点鎖線で示したように、各コイルの周囲においては右ネジの法則に従って同心円状に磁界が発生する。
【0023】
ここで、図5に示したように、コイル30Uのうち磁石20UのS極側から見て配線パターンが時計回りとなっている部分(コイルの配線の断面中に「×」が記載されている部分)では、磁石20Uの磁界の方向と同じ方向に磁界が発生する。また、コイル30Uのうち磁石20UのS極側から見て配線パターンが反時計回りとなっている部分(コイルの配線の断面中に「・」が記載されている部分)でも、磁石20Uの磁界の方向と同じ方向に磁界が発生する。即ち、コイル30Uにおいては磁石20Uの磁界と同じ方向の磁界が発生するため、コイル30Uに電流が流れていない場合と比較すると、磁石20U側の磁界は強くなる。
【0024】
一方、図5に示したように、コイル30Lのうち磁石20UのS極側から見て配線パターンが時計回りとなっている部分(コイルの配線の断面中に「×」が記載されている部分)では、磁石20Lの磁界の方向と反対方向に磁界が発生する。また、コイル30Lにおいては、磁石20UのS極側から見て配線パターンが反時計回りとなっている部分(コイルの配線の断面中に「・」が記載されている部分)でも、磁石20Lの磁界の方向と反対方向に磁界が発生する。
コイル30Lにおいては磁石20Lと反対方向の磁界が発生するため、コイル30Lに電流が流れていない場合と比較すると、磁石20L側の磁界は弱くなる。
【0025】
このように、コイル30U,30Lに流れる電流の振幅がプラスとなると、振動体10から見て磁石20U側の磁界が強まると共に磁石20L側の磁界が弱まるため、強磁性体である振動体10は磁界が強い磁石20U側へ変位する。
【0026】
次に、コイル30U,30Lに供給される音響信号の振幅がマイナスとなると、コイル30Uにおいては、入力端31Bから入力端31Aの方向へ電流が流れ、コイル30Lにおいては、入力端32Bから入力端32Aの方向へ電流が流れ、図6において二点鎖線で示したように、コイルの周囲においては右ネジの法則に従って同心円状に磁界が発生する。
【0027】
ここで、図6に示したように、コイル30Uのうち磁石20UのS極側から見て配線パターンが時計回りとなっている部分(コイルの配線の断面中に「・」が記載されている部分)では、磁石20Uの磁界の方向と反対方向に磁界が発生する。また、コイル30Uのうち磁石20UのS極側から見て配線パターンが反時計回りとなっている部分(コイルの配線の断面中に「×」が記載されている部分)でも、磁石20Uの磁界の方向と反対方向に磁界が発生する。
即ち、コイル30Uにおいては磁石20Uの磁界と反対方向の磁界が発生するため、コイル30Uに電流が流れていない場合と比較すると、磁石20U側の磁界は弱くなる。
【0028】
一方、図6に示したように、コイル30Lのうち磁石20UのS極側から見て配線パターンが時計回りとなっている部分(コイルの配線の断面中に「・」が記載されている部分)では、磁石20Lの磁界の方向と同じ方向に磁界が発生する。また、コイル30Lのうち磁石20UのS極側から見て配線パターンが反時計回りとなっている部分(コイルの配線の断面中に「×」が記載されている部分)でも、磁石20Lの磁界の方向と同じ方向に磁界が発生する。即ち、コイル30Lにおいては磁石20Lの磁界と同じ方向の磁界が発生するため、コイル30Lに電流が流れていない場合と比較すると、磁石20L側の磁界は強くなる。
【0029】
このように、コイル30U,30Lに流れる電流の振幅がマイナスとなると、振動体10から見て磁石20U側の磁界が弱まると共に磁石20L側の磁界が強まるため、強磁性体である振動体10は磁界が強い磁石20L側へ変位する。
【0030】
このように本実施形態に係る平面スピーカ1においては、音響信号の振幅の正負に応じてコイル周囲に発生する磁界の方向が変化し、各コイルの磁界の方向に応じて振動体10が上下に変位する。なお、各コイル周囲に生じる磁界の強さは、各コイルに流れる電流の大きさによって変化し、磁界の強さに応じて振動体10の変位量も変化する。振動体10の変位方向と変位量は音響信号の振幅に対応したものとなるため、振動体10は音響信号の振幅に応じて振動し、その振動状態(振動数、振幅、位相)に応じた音が振動体10から発生する。そして、発生した音は円環の形状をした磁石20U,20Lの穴を通って平面スピーカ1の外部に放射される。
【0031】
本実施形態によれば、コイル30U,30Lは振動せず外部から力を受けないため、振動によるコイルの剥離や損傷などがない。また、コイルは外側に面しておらず人間や物に接触するおそれがないため、保護のためにコイルを被膜する必要がなく、製造に手間がかかることがない。
【0032】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る平面スピーカ1Aについて説明する。
本発明の第2実施形態に係る平面スピーカ1Aは、外観は第1実施形態の平面スピーカ1と同じとなっているが、振動体10を磁石20Lに接着し、磁石20Lを変位させて音を発生させる点で第1実施形態の平面スピーカ1と相違している。
【0033】
図7は、本発明の第2実施形態に係る平面スピーカ1Aの断面を模式的に示した図である。なお、以下の説明においては、平面スピーカ1Aにおいて第1実施形態と同じ部分については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0034】
保持部41Lは、円筒の形状であって、絶縁性を有する非磁性体(例えばプラスチック)で形成されている。保持部41Lと第1実施形態の保持部40Lとを比較すると、保持部40Lが、円形の開口部の一方に円環状に張り出した部分を有しているのに対し、保持部41Lは、この部分を備えていない点で相違している。
【0035】
支持部材50は、磁石20Uを支持するための部材であって円環の形状となっている。支持部材50は、絶縁性を有する非磁性体(例えばプラスチック)で形成されており、内径は磁石20Uの外径より若干大きく、外径は保持部40Uの内径より若干小さくなっている。
【0036】
フィルム35に配線されるコイル30LAは、図8に示したようにコイル30Lと配線パターンの向きが逆となっており、フィルム35をコイル30LAが配置されている側から見ると、外側から内側に向けて反時計回り(左回り)に配線パターンが設けられ、フィルム35の内周と外周との間の所定部分に達すると、配線パターンの向きが反対の時計方向(右回り)となっている。
【0037】
(平面スピーカ1Aの全体構成)
平面スピーカ1Aにおいては、コイル30LAが配置されたフィルム35が磁石20LのN極側に接着されており、この磁石20Lがダンパ15の内周側に接着されている。また、振動体10が、円環の形状をした磁石20Lの穴を塞ぐようにして磁石20Lに接着されている。なお、本実施形態においては、振動体10は非磁性であり軽量で剛性があるものが好ましい。
そして、ダンパ15が接着された磁石20Lは保持部41Lの内側に収められ、ダンパ15の外周側が保持部41Lに固着されている。なお、コイル30LAの入力端32Aはリード線(図示略)を介して端子40LAに接続されており、入力端32Bはリード線(図示略)を介して端子40LBに接続されている。
【0038】
一方、コイル30Uが配置されたフィルム35は、磁石20UのN極側に接着されており、この磁石20Uは支持部材50の内周側に接着されている。
そして、支持部材50が接着された磁石20Uは、保持部40Uの第4開口部側からS極側を第3開口部に向けて保持部40Uに収められ、S極側が第3開口部の円環状に張り出した部分に接着されている。なお、コイル30Uの入力端31Aは、リード線(図示略)を介して端子40UAに接続されており、入力端31Bは、リード線(図示略)を介して端子40UBに接続されている。
【0039】
そして、保持部40Uの第4開口部側の端部と、保持部40Lの一方の開口部側の端部とが接着され、平面スピーカ1Aにおいては、磁石20UのN極と磁石20LのN極とが対向して位置している。また、平面スピーカ1Aにおいては、コイル30Uはコイル30LAと対向し、コイル30Uとコイル30LAとを磁石20UのS極側から見ると、その配線パターンの向きは互いに逆向きとなっている。
【0040】
なお、平面スピーカ1Aにおいては、磁石20Lはダンパ15により保持部41Lの内側に支持され、このダンパ15の弾性により上下に変位可能となっている。
また、平面スピーカ1Aにおいては磁石20UのN極と磁石20LのN極とが対向しているため、磁石20Lは磁石20Uと反発し、反発力とダンパ15が磁石20Lを支持する力とが釣り合う場所に位置する。
【0041】
(平面スピーカ1Aの動作)
次に、平面スピーカ1Aの動作について、図9,図10を用いて説明する。
なお、以下の説明においては、図4に示した音響信号が入力された場合を例にして動作の説明を行う。また、図9,図10は平面スピーカ1Aの作用を説明するための図であって、コイル30U,30LAの部分を拡大した図であり、コイルの配線の断面中に「・」が記載されたものは図面の裏から表に向かって電流が流れていることを意味し、コイル断面中に「×」が記載されたものは図面の表から裏に向かって電流が流れていることを意味するものとする。また、図中の二点鎖線上の矢印は、コイルに電流が流れたことにより発生する磁界の方向を表している。
【0042】
図4に示した信号が入力端31A,31Bおよび入力端端子32A,32Bに供給された場合、まず、音響信号の振幅が0の時点においては、コイル30U,30LAのいずれにも電流が流れず、各コイルの周囲には右ネジの法則による磁界が発生しないため、ここでは、磁石20Lは磁石20Uと反発し、反発力とダンパ15が磁石20Lを支持する力とが釣り合う位置で磁石20Lは静止している。
【0043】
次に、コイル30U,30LAに供給される音響信号の振幅がプラスとなると、コイル30Uにおいては、入力端31Aから入力端31Bの方向へ電流が流れ、コイル30LAにおいては、入力端32Aから入力端32Bの方向へ電流が流れ、図9において二点鎖線で示したように、コイルの周囲においては右ネジの法則に従って同心円状に磁界が発生する。
【0044】
ここで、図9に示したように、コイル30Uのうち磁石20UのS極側から見て配線パターンが時計回りとなっている部分(コイルの配線の断面中に「×」が記載されている部分)では、磁石20Uの磁界の方向と同じ方向に磁界が発生する。また、コイル30Uのうち磁石20UのS極側から見て配線パターンが反時計回りとなっている部分(コイルの配線の断面中に「・」が記載されている部分)でも、磁石20Uの磁界の方向と同じ方向に磁界が発生する。即ち、コイル30Uにおいては磁石20Uの磁界と同じ方向の磁界が発生するため、コイル30Uに電流が流れていない場合と比較すると、磁石20U側の磁界は強くなる。
【0045】
一方、図9に示したように、コイル30LAのうち磁石20UのS極側から見て配線パターンが時計回りとなっている部分(コイルの配線の断面中に「・」が記載されている部分)では、磁石20Lの磁界の方向と同じ方向に磁界が発生する。また、コイル30LAのうち磁石20UのS極側から見て配線パターンが反時計回りとなっている部分(コイルの配線の断面中に「×」が記載されている部分)でも、磁石20Lの磁界の方向と同じ方向に磁界が発生する。即ち、コイル30LAにおいては磁石20Lの磁界と同じ方向の磁界が発生するため、コイル30Uに電流が流れていない場合と比較すると、磁石20L側の磁界は強くなる。
【0046】
このように、コイル30U,30LAに流れる電流の振幅がプラスとなると、コイル30U周辺の磁界が強まると共にコイル30LA周辺の磁界も強まり、磁石20Lと磁石20Uとの間で反発する力が強くなるため、変位可能となっている磁石20Lは磁石20Uと反対の方向へ振動体10と共に変位する。
【0047】
次に、コイル30U,30Lに供給される音響信号の振幅がマイナスとなると、コイル30Uにおいては、入力端31Bから入力端31Aの方向へ電流が流れ、コイル30LAにおいては、入力端32Bから入力端32Aの方向へ電流が流れ、図10において二点鎖線で示したように、コイルの周囲においては右ネジの法則に従って同心円状に磁界が発生する。
【0048】
ここで、図10に示したように、コイル30Uのうち磁石20UのS極側から見て配線パターンが時計回りとなっている部分(コイルの配線の断面中に「・」が記載されている部分)では、磁石20Uの磁界の方向と反対方向に磁界が発生する。また、コイル30Uのうち磁石20UのS極側から見て配線パターンが反時計回りとなっている部分(コイルの配線の断面中に「×」が記載されている部分)でも、磁石20Uの磁界の方向と反対方向に磁界が発生する。即ち、コイル30Uにおいては磁石20Uの磁界と反対方向の磁界が発生するため、コイル30Uに電流が流れていない場合と比較すると、磁石20U側の磁界は弱くなる。
【0049】
また、図10に示したように、コイル30LAのうち磁石20UのS極側から見て配線パターンが時計回りとなっている部分(コイルの配線の断面中に「×」が記載されている部分)では、磁石20Lの磁界の方向と反対方向に磁界が発生する。また、コイル30LAのうち磁石20UのS極側から見て配線パターンが反時計回りとなっている部分(コイルの配線の断面中に「・」が記載されている部分)でも、磁石20Lの磁界の方向と反対方向に磁界が発生する。即ち、コイル30LAにおいては磁石20Lの磁界の方向と反対方向の磁界が発生するため、コイル30LAに電流が流れていない場合と比較すると、磁石20L側の磁界は弱くなる。
【0050】
このように、コイル30U,30LAに流れる電流の振幅がマイナスとなると、コイル30U周辺の磁界が弱まると共にコイル30LA周辺の磁界も弱まり、磁石20Lが磁石20Uに対して反発する力が弱くなるため、ダンパ15の弾性力で引き戻されて磁石20Lは振動体10と共に磁石20Uの方向へ変位する。
【0051】
このように本実施形態に係る平面スピーカ1Aにおいては、音響信号の振幅の正負に応じてコイル周囲に発生する磁界の方向が変化し、各コイルの磁界の方向に応じて磁石20Lと共に振動体10が上下に変位する。
なお、各コイル周囲に生じる磁界の強さは、各コイルに流れる電流の大きさによって変化し、磁界の強さに応じて磁石20Lおよび振動体10の変位量も変化する。振動体10の変位方向と変位量は、音響信号の振幅に対応したものとなるため、振動体10は音響信号の振幅に応じて振動し、その振動状態(振動数、振幅、位相)に応じた音が振動体10から発生する。そして、発生した音は、円環の形状をした磁石20U,20Lの穴を通って平面スピーカ1Aの外部に放射される。
【0052】
本実施形態によれば、コイル30U,30LAは外部から力を受けないため、振動によるコイルの剥離や損傷などがない。また、コイルは外側に面しておらず人間や物に接触するおそれがないため、保護のためにコイルを被膜する必要がなく、製造に手間がかかることがない。
【0053】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、他の様々な形態で実施可能である。例えば、上述の実施形態を以下のように変形して本発明を実施してもよい。
【0054】
上述した第1実施形態においては、磁石20U,20Lの一方の面側がN極で他方の面側がS極となっているが、磁石を同心円状に並べて図11に示したように半径方向へN極とS極とが交互に並ぶようにしてもよい。
図11は、この変形例の断面を模式的に示した図である。なお、図11においては図面が繁雑になるのを防ぐために磁石20UA,20LAとコイル30UB,30LBと振動体10およびフィルム35のみを図示している。
この構成において磁石20UA側に配置するコイル30UBは、入力端31Aから入力端31Bへ電流を流したときの電流の向きが図11の向きとなるように配線し、磁石20LA側に配置するコイル30LBは、入力端32Aから入力端32Bへ電流を流したときの電流の向きが図11の向きとなるように配線する。
この構成においても、図11に示した方向に電流が流れると磁石20UA側の磁界が強くなる一方、磁石20LA側の磁界が弱くなり、振動体10は磁石20UA側へ変位する。また、図11に示したのと反対方向に電流が流れると磁石20UA側の磁界が弱くなる一方、磁石20LA側の磁界が強くなり、振動体10は磁石20LA側へ変位する。
【0055】
また、上述した第2実施形態においても、磁石20Uに替えて磁石20UAを用い、磁石20Lに替えて磁石20LAを用いてもよい。
図12は、この変形例の断面を模式的に示した図である。なお、図12においても図面が繁雑になるのを防ぐために磁石20UA,20LAとコイル30UC,30LCと振動体10およびフィルム35のみを図示している。
この構成において磁石20UA側に配置するコイル30UCは、入力端31Aから入力端31Bへ電流を流したときの電流の向きが図12の向きとなるように配線し、磁石20LA側に配置するコイル30LCは、入力端32Aから入力端32Bへ電流を流したときの電流の向きが図12の向きとなるように配線する。
この構成においても、図12に示した方向に電流が流れると磁石20UA側の磁界が強くなると共に磁石20LA側の磁界が強くなり、磁石20LAは振動体10と共に磁石20UAと反対側へ変位する。また、図12に示したのと反対方向に電流が流れると磁石20UA側の磁界が弱くなると共に磁石20LA側の磁界も弱くなり、磁石20LAは振動体10と共に磁石20UA側へ変位する。
【0056】
なお、図11および図12に示した構成においては、磁石においてコイルが配置されている側の面と反対側の面に磁石と同じ円環形状の鉄板を取り付けるようにしてもよい。
【0057】
上述した実施形態においては、平面スピーカ1,1Aを磁石20UのS極側から見た時の形状は円環の形状となっているが、中央部分に穴が開いているのであれば矩形や多角形など他の形状であってもよい。
【0058】
上述した第1実施形態においては、磁石20U,20Lの形状は円環の形状となっているが、各磁石を円板の形状とし、各コイルの配線パターンの隙間に磁石を貫通する穴を複数設けるようにしてもよい。この構成によれば、振動体10が外部に露出しないので振動体10が他の物に触れて破損する虞がなく、また、振動体10により発生した音が、この孔を通って外部に放射される。
【0059】
上述した第2実施形態においては、磁石20UのS極側から見たときの各コイルの配線パターンの向きを第1実施形態と同じとし、磁石20L側のコイルについては、磁石20U側のコイルに供給する音響信号と逆相の音響信号を供給するようにしてもよい。
また、第1実施形態においては、磁石20UのS極側から見たときの各コイルの配線パターンの向きを第2実施形態と同じとし、磁石20L側のコイルについては、磁石20U側のコイルに供給する音響信号と逆相の音響信号を供給するようにしてもよい。
【0060】
上述した実施形態においては音響信号が入力される端子は端子40UA,40UB,40LA,40LBの4つとなっているが、端子を2つとし、一方の端子を入力端31A,32Aに接続し、もう一方の端子を入力端31B,32Bと接続するようにしてもよい。
【0061】
上述した実施形態においては、コイル30U,30L,30LAは、配線の方向が内周側で外周側と逆となっているが、内周側で外周側と逆方向となっている配線部分を設けないようにしてもよい。
【0062】
上述した第1実施形態と第2実施形態においては、磁石20UのN極と磁石20LのN極とが対向しているが、磁石20UのS極と磁石20LのS極を対向させ、S極の表面にコイルを配置するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の一実施形態に係る平面スピーカ1の外観図である。
【図2】平面スピーカ1の断面図である。
【図3】コイル30U,30Lの配線パターンの模式図である。
【図4】平面スピーカ1に入力される音響信号を例示した図である。
【図5】平面スピーカ1の作用を説明するための図である。
【図6】平面スピーカ1の作用を説明するための図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る平面スピーカ1Aの断面図である。
【図8】コイル30LAの配線パターンの模式図である。
【図9】平面スピーカ1Aの作用を説明するための図である。
【図10】平面スピーカ1Aの作用を説明するための図である。
【図11】本発明の変形例に係る平面スピーカの断面の模式図である。
【図12】本発明の変形例に係る平面スピーカの断面の模式図である。
【符号の説明】
【0064】
1,1A・・・平面スピーカ、10・・・振動体、20U,20L、20UA,20LA・・・磁石、30U,30L,30LA,30UB,30LB,30UC,30LC・・・コイル、31A,31B,32A,32B・・・入力端、35・・・フィルム、40U,40L,41L・・・保持部、40UA,40UB,40LA,40LB・・・端子、50・・・支持部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状で一方の面から他方の面へ貫通する孔を有する第1磁石と、
板状で一方の面から他方の面へ貫通する孔を有し、前記第1磁石と対向および離間して配置された第2磁石と、
面状で可撓性を有し、前記第1磁石と前記第2磁石との間に支持された振動体と、
前記第1磁石のうち前記振動体と対向している面上に配置された面状の第1コイルと、
前記第2磁石のうち前記振動体と対向している面上に配置された面状の第2コイルと
を有し、
前記第1磁石において前記第1コイルが配置された面側の極と前記第2磁石において前記第2コイルが配置された面側の極は同種の極である平面スピーカ。
【請求項2】
板状で一方の面から他方の面へ貫通する孔を有する第1磁石と、
板状で一方の面から他方の面へ貫通する孔を有し、前記第1磁石と対向および離間して変位可能に支持された第2磁石と、
面状で可撓性を有し、前記第2磁石の孔を塞ぐ振動体と、
前記第1磁石のうち前記振動体と対向している面上に配置された面状の第1コイルと、
前記第2磁石のうち前記振動体と対向している面上に配置された面状の第2コイルと
を有し、
前記第1磁石において前記第1コイルが配置された面側の極と前記第2磁石において前記第2コイルが配置された面側の極は同種の極である平面スピーカ。
【請求項3】
前記第1磁石と前記第2磁石は円環形状であり、
前記第1コイルと前記第2コイルは渦状に配線されて、内周側と外周側とで配線方向が逆であること
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の平面スピーカ。
【請求項4】
前記第1磁石と前記第2磁石は円環形状であって板状の両面で外周側から内周側に向けてN極とS極とが交互に位置し、
前記第1コイルは、前記第1磁石のN極上とS極上とで配線方向が逆であり、
前記第2コイルは、前記第2磁石のN極上とS極上とで配線方向が逆であること
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の平面スピーカ。
【請求項1】
板状で一方の面から他方の面へ貫通する孔を有する第1磁石と、
板状で一方の面から他方の面へ貫通する孔を有し、前記第1磁石と対向および離間して配置された第2磁石と、
面状で可撓性を有し、前記第1磁石と前記第2磁石との間に支持された振動体と、
前記第1磁石のうち前記振動体と対向している面上に配置された面状の第1コイルと、
前記第2磁石のうち前記振動体と対向している面上に配置された面状の第2コイルと
を有し、
前記第1磁石において前記第1コイルが配置された面側の極と前記第2磁石において前記第2コイルが配置された面側の極は同種の極である平面スピーカ。
【請求項2】
板状で一方の面から他方の面へ貫通する孔を有する第1磁石と、
板状で一方の面から他方の面へ貫通する孔を有し、前記第1磁石と対向および離間して変位可能に支持された第2磁石と、
面状で可撓性を有し、前記第2磁石の孔を塞ぐ振動体と、
前記第1磁石のうち前記振動体と対向している面上に配置された面状の第1コイルと、
前記第2磁石のうち前記振動体と対向している面上に配置された面状の第2コイルと
を有し、
前記第1磁石において前記第1コイルが配置された面側の極と前記第2磁石において前記第2コイルが配置された面側の極は同種の極である平面スピーカ。
【請求項3】
前記第1磁石と前記第2磁石は円環形状であり、
前記第1コイルと前記第2コイルは渦状に配線されて、内周側と外周側とで配線方向が逆であること
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の平面スピーカ。
【請求項4】
前記第1磁石と前記第2磁石は円環形状であって板状の両面で外周側から内周側に向けてN極とS極とが交互に位置し、
前記第1コイルは、前記第1磁石のN極上とS極上とで配線方向が逆であり、
前記第2コイルは、前記第2磁石のN極上とS極上とで配線方向が逆であること
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の平面スピーカ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−278517(P2009−278517A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−129507(P2008−129507)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】
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