平面光導波回路型光可変減衰器
0〜10dB程度の範囲の任意の光減衰量と30dB以上の光減衰量とが得られる小型で省電力の平面光波回路型光可変減衰器を提供する。 マッハツェンダ光干渉計回路30の入力光導波路1a,1bと出力光導波路1dの少なくとも一方の光導波路1a,1b、1dの長手方向の途中部に光導波路1a,1b、1dと交わる方向で前記光導波路層3に形成されたスリット12と、スリット12内の一部に入れられた屈折率整合剤13を光導波路1a,1b、1dの伝搬光の通り道を含む位置と伝搬光の通り道から待避する位置とに移動させる整合剤移動手段16a,16bとを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信分野等に適用される平面光導波回路型光可変減衰器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光通信等に適用されている光可変減衰器の一つの例として、平面光導波回路型光可変減衰器がある。この平面光導波回路型光可変減衰器は、シリコン等の基板上に光導波路層を形成して成り、光導波路層は、コアとクラッドとを有する(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
図10(a)はマッハツェンダ光干渉計回路30を用いた平面光導波回路型光可変減衰器の構成を表す平面図であり、図10(b)は、図10(a)のVIII−VIII断面図である。図10(b)に示すように、シリコン等の基板7上に光導波路層3が形成されており、光導波路層3はコア(光導波路)1と、コア1を覆うクラッド2により形成されている。図10(a)に示す平面光導波回路型光可変減衰器において、コア1はマッハツェンダ光干渉計回路30を形成している。
【0004】
このマッハツェンダ光干渉計回路30は、少なくとも1本(ここでは2本)の入力光導波路1a,1bと、該入力光導波路1a,1bから入力された光の分岐を行う光分岐部21aと、少なくとも1本(ここでは2本)の出力光導波路1c,1dと、該出力光導波路1c,1dの入力側に設けられて光の結合を行う光結合部21bと、光結合部21bと光分岐部21aとを接続する2本の接続光導波路1e,1fとを有して該2本の接続導波路1e,1fが互いに間隔を介して並設されている。
【0005】
この図に示すマッハツェンダ光干渉計回路30において、光分岐部21aと光結合部21bは、それぞれ、並設された2本のコア1が近接されて形成されており、光分岐部21aと光結合部21bは2×2方向性光結合器により形成されている。
【0006】
また、図10の(a)に示す光回路装置は、マッハツェンダ光干渉計回路30の2本の接続光導波路1e,1fにそれぞれ、接続光導波路1e,1fを伝搬する伝搬光の位相を調整する位相調整手段8a,8a’を形成している。これらの位相調整手段8a,8a’は、例えば薄膜ヒータ9a,9a’により形成されて、クラッド2の上側に設けられている。
【0007】
位相調整手段8a,8a’と、これらの位相調整手段8a,8a’の形成領域の下部に形成されている位相部接続光導波路1s,1tとにより位相シフタが形成されている。なお、図中、符号23は薄膜ヒータ9a,9a’への給電用電極を示している。位相調整手段8a,8a’は同一構成を有しており、例えば位相調整手段8aのみを作動させることにより、以下のような動作が行われる。
【0008】
つまり、図10の平面光導波回路型光可変減衰器において、位相調整手段8aである薄膜ヒータ9aにより位相部接続光導波路1sの温度が局所的に可変制御されると、この温度が可変制御された側の位相部接続光導波路1sの屈折率が変化し、変化させた部分のコア1の実効屈折率が変化する。これは、石英系ガラス等の屈折率が温度により変化する現象である熱光学効果を利用するものであり、上記効果によって、屈折率が変化したコアを伝搬する光の位相が変化する。このことによって、位相部接続光導波路1sを伝搬する伝搬光と位相部接続光導波路1tを伝搬する伝搬光との間に位相差が発生し、接続光導波路1e,1fを伝搬する伝搬光は互いに位相差を有することになる。
【0009】
つまり、上記位相調整手段8aである薄膜ヒータ9aの発熱による熱光学効果により、加熱された位相部接続光導波路1sの実効光導波路長が変化し、実効光導波路長が変化したコアを伝搬する光の位相が変化することで、マッハツェンダ光干渉計回路30の光透過率を変化させることができる。そのため、図10(a)に示す光回路装置は、光透過率や光分岐比が可変可能な光導波路型干渉計となり、光可変減衰器の機能を得ることができる。なお、位相調整手段8a’は、例えば位相調整手段8aが故障したとき等の予備として設けられている。
【0010】
この平面光導波回路型光可変減衰器において、コア1を形成する石英系ガラスの屈折率の温度係数dn/dTは、10−5(1/℃)程度なので、例えば5mmの長さにわたってコア1の温度を20℃上昇させると、コア1の実効的な光路長が1μm程度変化する。
【0011】
図11の特性線aは、図10に示す平面光波回路型光可変減衰器における、投入電力と挿入損失との関係を示す特性線である。この特性線aにより、約430mWの投入電力に対して約10dBの光減衰量が得られ、520mWの投入電力に対しては22.5dBの最大光減衰量が得られていることがわかる。また、図11の特性線bは、図10に示す平面光波回路型光可変減衰器における、投入電力と挿入損失の(TE偏波とTM偏波の)偏波による差(PDL:偏波依存性損失)との関係を示す特性線である。特性線aと特性線bから、約10dBの光減衰量の時の挿入損失の偏波による差は約−2dBであることがわかる。
【0012】
このような光可変減衰器は、例えば光通信システムの基幹網などにおける光波長多重伝送(WDM)システムにおいて用いられる。WDMシステムにおいては、複数の波長光を同時に増幅する希土類添加光ファイバーアンプが用いられているが、光増幅効率には波長特性があるため、波長による光強度の差が生じてしまう。また、伝送経路の途中で特定の波長光のみを分離したり、挿入したりといったことが行われるため、そこでも波長による光強度の差が生じてしまう。
【0013】
そこで、波長による光強度差を精度良く、かつ、ダイナミックに均一化するために、光可変減衰器が用いられる。このような波長による光強度差は0〜10dB程度であるため、光可変減衰器に通常求められる光減衰量の範囲は0〜10dB程度である。
【0014】
【非特許文献1】「可変光減衰器の開発」住本ら、昭和電線レビュー、Vol.52、No.1(2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところで、上記WDMシステムにおいては、通信装置のメンテナンス時や特定のチャネルのみを休止する場合等において、例えば30dB以上といった大きな光減衰量が必要となる場合がある。ただし、このような大きな光減衰量での使用時は高精度な光減衰量の制御は求められてはいない。そのため、0〜10dB程度の光減衰量範囲において任意の光減衰量が高精度に得られ、かつ、30dB以上といった大きな光減衰量が得られる平面光波回路型光可変減衰器が求められていた。
【0016】
しかしながら、上記マッハツェンダ光干渉計回路30を使用した平面光波回路型光可変減衰器では、通常の使用時に求められる光減衰量の範囲である0〜10dB程度は十分実現できるが、30dB以上の大きな光減衰量を得ることは困難であった。つまり、マッハツェンダ光干渉計回路30は、干渉を用いて光減衰量を得ているため、30dB以上といった高い光減衰量を得ることは困難であり、安定して得られる最大光減衰量としては、20dB程度が限度であった。
【0017】
そこで、上記問題を解決するために、つまり、例えば30dB以上といった大きな最大光減衰量を得られる構成として、例えば従来例の平面光波回路型光可変減衰器を例えば2つ縦続接続し、2つの平面光波回路型光可変減衰器の光減衰量の和を持って全体としての光減衰量とする構成も考えられる。
【0018】
しかしながら、この構成により上記最大光減衰量を得るには、2つの平面光波回路型光可変減衰器の両方を最大光減衰量に設定することになるため、従来例の平面光波回路型光可変減衰器において最大光減衰量を得るための電力の2倍の電力を要する。したがって、通信装置のメンテナンス時等、光通信が行われていない光線路用の光可変減衰器にて最大電力が必要となることとなり、電力の無駄が多いという問題があり、実用的でなかった。
【0019】
また、上記構成の平面光導波回路型光可変減衰器は、従来の平面光波回路型光可変減衰器を2つ縦列接続するために、回路サイズが約2倍になってしまうという問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決するために、本発明は次のような構成をもって課題を解決するための手段としている。
すなわち、本発明の第1の態様は、基板と、該基板上に形成されたコアとクラッドとを有する光導波路層とを有し、前記コアにおいて、少なくとも1本の入力光導波路と、前記入力光導波路から入力された光の分岐を行う光分岐部と、少なくとも1本の出力光導波路と、前記出力光導波路の入力側に設けられた光結合部と、前記光結合部と前記光分岐部とを接続し且つ互いに間隔を介して並設される2本の接続光導波路とを有するマッハツェンダ光干渉計回路と、2本の前記接続光導波路の少なくとも一方に設けられて伝搬光の位相を可変可能に調整する位相調整手段と、前記光入力導波路と前記光出力導波路の少なくとも一方の光導波路の長手方向途中部に該光導波路と交わる方向で前記光導波路層に形成されたスリットと、前記スリット内の一部に入れられて前記コアの屈折率に近似した屈折率を持つ液状の屈折率整合剤と、前記光入力導波路と前記光出力導波路の少なくとも一方の前記光導波路における伝搬光の通り道を含む位置と該伝搬光の通り道から外れた位置とのいずれかに前記屈折率整合剤をスリット内で移動させる整合剤移動手段とを有する構成をもって課題を解決する手段としている。
【0021】
また、本発明の第2の態様は、上記第1の態様の構成に加え、2本の前記接続光導波路のそれぞれに設けられる前記位相調整手段は、2本の前記接続光導波路を伝搬する伝搬光の位相の偏波差の変化率を互いに異ならせて位相制御する位相制御手段である構成をもって課題を解決する手段としている。
【0022】
さらに、本発明の第3の態様は、上記第1または第2の態様の構成に加え、2本の前記接続光導波路のそれぞれに設けられる前記位相調整手段は、2本の前記接続光導波路の複屈折率の変化率を互いに異ならせる複屈折率調整手段である構成をもって課題を解決する手段としている。
【0023】
さらに、本発明の第4の態様は、上記第3の態様の構成に加え、2本の前記前記接続光導波路の少なくとも一方に設けられる前記位相調整手段の形成部位から間隔をおいて、前記位相調整手段による位相調整の際に前記接続光導波路に付与される応力を解放または増加させるための応力調整部を設けた構成をもって課題を解決する手段としている。
【0024】
また、本発明の第5の態様は、上記第4の態様の構成に加え、前記応力調整部は、前記位相調整手段による位相調整の際に前記接続光導波路に付与される前記応力を解放する自由空間であって、前記位相調整手段から間隔をおいて前記光導波路層に形成されている構成をもって課題を解決する手段としている。
【0025】
さらに、本発明の第6の態様は、上記第1乃至第4の態様のいずれか一つの構成に加え、2本の前記接続光導波路にはそれぞれ加熱手段を有する前記位相調整手段が設けられており、少なくとも一方の前記位相調整手段の形成部位から間隔をおいた領域には前記加熱手段により前記接続光導波路に加えられる熱の拡散を抑制する断熱手段が形成されている構成をもって課題を解決する手段としている。
【0026】
さらに、本発明の第7の態様は、上記第5の態様の構成に加え、前記位相調整手段の形成部位を挟む両側の前記光導波路層のうち前記接続光導波路から間隔をおいた領域には、前記光導波路層の一部を除去してなる光導波路除去部が前記自由空間として前記接続光導波路の長手方向に沿って形成されている構成をもって課題を解決する手段としている。
【0027】
さらに、本発明の第8の態様は、上記第7の態様の構成に加え、2本の前記接続光導波路にはそれぞれ前記位相調整手段が設けられており、一方の前記接続光導波路から第1の距離をおいて形成された前記光導波路除去部と、他方の前記接続光導波路から前記第1の距離とは異なる第2の距離をおいて形成された別の前記光除去部とを有した構成をもって課題を解決する手段としている。
【0028】
さらに、本発明の第9の態様は、上記第6の態様の構成に加え、前記断熱手段は、前記接続光導波路と間隔を介した領域で該接続光導波路の長手方向に沿って前記光導波路層が除去されてなる光導波路層除去部である構成をもって課題を解決する手段としている。
【0029】
さらに、本発明の第10の態様は、上記第7の態様の構成に加え、互いに並設された2本の前記接続光導波路のうちの一方が第1の接続光導波路、他方が第2の接続光導波路であり、前記第1の接続光導波路には前記位相調整手段である第1、第4の位相調整手段が長手方向に間隔をおいて順に形成され、前記第2の接続光導波路には前記位相調整手段である第3、第2の位相調整手段が長手方向に間隔をおいて順に形成され、前記第1の位相調整手段は前記第3の位相調整手段と同一構成であり、前記第2の位相調整手段は前記第4の位相調整手段が同一構成であり、前記第1の位相調整手段の側方には第1の距離をおいて第1の凹部が前記光導波路層除去部として形成され、前記第3の位相調整手段の側方には前記第1の距離と実質的に等しい第3の距離をおいて第3の凹部が前記光導波路層除去部として形成され、前記第2の位相調整手段の側方には前記第1の距離とは異なる第2の距離をおいて第2の凹部が前記光導波路層除去部として形成され、前記第4の位相調整手段の側方には前記第2の距離と実質的に等しい第4の距離をおいて第4の凹部が前記光導波路層除去部として形成されている構成をもって課題を解決する手段としている。
【0030】
さらに、本発明の第11の態様は、上記第7乃至第10の態様のいずれか一つの構成に加え、前記光導波路層除去部は、前記光導波路層の表面から前記基板の表面に至るまで除去されて形成されている構成をもって課題を解決する手段としている。
【0031】
さらに、本発明の第12の態様は、上記第11の態様の構成に加え、前記基板には、前記光導波路層除去部の下部に連続して基板除去部が形成されている構成をもって課題を解決する手段としている。
【0032】
さらに、本発明の第13の態様は、上記第12の態様の構成に加え、前記基板除去部は、前記光導波路層除去部の下部よりも幅が広い部分を有する凹状の断面形状を有する構成をもって課題を解決する手段としている。
【0033】
さらに、本発明の第14の態様は、上記第1乃至第13の態様のいずれか一つの構成に加え、前記整合剤移動手段は、前記スリットの少なくとも一部の周囲に設けられた薄膜ヒータを有する構成をもって課題を解決する手段としている。
【0034】
さらに、本発明の第15の態様は、上記第1乃至第14の態様のいずれか一つの構成に加え、前記位相調整手段は、前記接続光導波路上に設けられた薄膜ヒータを有する構成をもって課題を解決する手段としている。
【0035】
さらに、本発明の第16の態様は、上記第1乃至第15の態様のいずれか一つの構成に加え、前記光導波路層は石英系ガラスからなる構成をもって課題を解決する手段としている。
【0036】
さらに、本発明の第17の態様は、上記第1乃至第16の態様のいずれか一つの構成に加え、前記基板はシリコン基板である構成をもって課題を解決する手段としている。
【0037】
さらに、本発明の第18の態様は、上記第1乃至第17の態様のいずれか一つの構成に加え、前記スリットは、ガラス板により封止されている構成をもって課題を解決する手段としている。
【0038】
さらに、本発明の第19の態様は、上記第18の態様の構成に加え、前記ガラス板は、接着剤によって前記スリットの周りの前記光導波路層に接着されている構成をもって課題を解決する手段としている。
【0039】
さらに、本発明の第20の態様は、上記第18の態様の構成に加え、前記ガラス板は、低融点ガラスによって前記スリットの周りの前記光導波路層に接合されている構成をもって課題を解決する手段としている。
【0040】
さらに、本発明の第21の態様は、上記第18の態様の構成に加え、前記ガラス板と前記光導波路層の間には金属膜が介在し、前記金属膜を構成する金属の拡散によって前記ガラス板と前記光導波路層は接合されている構成をもって課題を解決する手段としている。
【0041】
さらに、本発明の第22の態様は、上記第21の態様の構成に加え、前記金属膜は、銅と銅合金のいずれかからなる構成をもって課題を解決する手段としている。
【0042】
さらに、本発明の第23の態様は、上記第1乃至第22の態様のいずれか一つの構成に加え、前記スリットには、前記屈折率整合剤と共に不活性ガスが封入されている構成をもって課題を解決する手段としている。
【発明の効果】
【0043】
上述したように本発明によれば、光導波路層のコアにより形成したマッハツェンダ光干渉計回路の出力又は入力光導波路の長手方向の途中部に交差するスリットの中に液状の屈折率整合剤を入れる。
【0044】
そして、その途中部を含む位置に屈折率整合剤を移動させた状態で、マッハツェンダ光干渉計回路の位相調整を行うことにより、例えば0〜10dBといった範囲内で高精度な光減衰量を得ることができる。これは、屈折率整合剤が、光導波路層のコアの屈折率と同一か近似した値の屈折率を有するからである。
【0045】
また、スリット内の屈折率整合剤を出力又は入力光導波路の伝搬光の通り道から待避させることにより、出力又は入力光導波路における光減衰量を例えば35dB以上と、非常に高くすることができる。
スリット内での整合剤の移動は小電力で可能であり、また、スリットは平面光導波回路型光可変減衰器に比べて小型化が可能なので、小型な装置で且つ小電力で大きな光減衰量を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1(a)は、本発明に係る平面光導波回路型光可変減衰器の第1実施形態例を示す要部構成図、図1(b)は、図1(a)のI−I線断面図、図1(c)は図1(a)のII−II線断面図である。
【図2】図2(a)〜図2(e)は、本発明に係る第1実施形態例の平面光導波回路型光可変減衰器の製造工程を図1のI−I線断面にて示す説明図である。
【図3】図3(a)〜図3(f)は、本発明に係る第1実施形態例の平面光導波回路型光可変減衰器の製造工程を図1(a)のII−II線断面にて示す説明図である。
【図4】図4(a)は、本発明に係る第1実施形態例の平面光導波回路型光可変減衰器を図1に示す状態と異なる動作状態を示す平面図、図4(b)は、図4(a)のII−II線から見た断面図である。
【図5】図5は、本発明に係る第1実施形態例の平面光導波回路型光可変減衰器において図1に示す状態における挿入損失およびPDLと第1の位相シフタへの電力投入量の関係を示すグラフである。
【図6】図6は、本発明に係る平面光導波回路型光可変減衰器の第2実施形態例を模式的な平面図により示す要部構成図である。
【図7】図7(a)は図6のIII−III線断面図、図7(b)は図6のIV−IV線断面図、図7(c)は図6のV−V線断面図である。
【図8】図8は、本発明に係る平面光導波回路型光可変減衰器の第3実施形態例の光シャッター部の屈折率整合剤の他の状態を示す断面図である。
【図9】図9(a)〜図9(h)は、本発明に係る第3実施形態例の平面光導波回路型光可変減衰器における光シャッター部の製造工程を示す断面図である。
【図10】図10(a)は、従来の平面光導波回路型光可変減衰器を示す要部説明図、図10(b)は、図10(a)のVI−VI線断面図である。
【図11】図11は、図10に示す従来の平面光導波回路型光可変減衰器における位相シフタへの電力投入量と挿入損失およびPDLとの関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0047】
1:コア(光導波路)
1a,1b:入力光導波路
1c,1d:出力光導波路
1e,1f:接続光導波路
2:クラッド
3:光導波路層
4:基板除去部
5:光導波路層除去部
7:基板
8a,8a’,8b,8b’:位相調整手段
9a,9a’,9b,9b’,16a,16b:薄膜ヒータ
11a,11b:整合剤移動手段
12:スリット
13:屈折率整合剤
14:気体
21a:光分岐部
21b:光結合部
30:マッハツェンダ光干渉計回路
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、本実施形態例の説明において、従来例と同一名称部分には同一符号を付し、その重複説明は省略または簡略化する。
【0049】
(第1の実施の形態)
第1実施形態例の平面光波回路型光可変減衰器は、図1(a)の平面図に示すように、コア1により形成されたマッハツェンダ光干渉計回路30と、位相調整手段8a,8a’と、光シャッター部50とを有して構成されている。
【0050】
本実施形態例において、マッハツェンダ光干渉計回路30の回路構成は、図10(a)に示した従来のマッハツェンダ光干渉計回路30とほぼ同様に構成されているが、本実施形態例では、マッハツェンダ光干渉計回路30の出力光導波路1dを出力光導波路1cよりも例えば2mm長く形成している。そして、出力光導波路1dの長手方向途中部に、出力光導波路1dと交わる方向にスリット12を形成し、このスリット12と、スリット12内に設けた屈折率整合剤13と、スリット12内で屈折率整合剤13を出力光導波路1dの伝搬光の通り道を含む位置と該伝搬光の通り道から待避する位置とに移動させる整合剤移動手段11a,11bとを有する光シャッター部50を設けている。
【0051】
屈折率整合剤13は、スリット12内の一部に設けられており、コア1の屈折率に近似した(ここでは、ほぼ等しい)屈折率を持つ液状のシリコン系オイルからなる。スリット12には屈折率整合剤13と共に、不活性ガスである窒素ガスからなる気体14が封入されている。また、整合剤移動手段11a,11bは薄膜ヒータ16a,16bにより形成されており、この薄膜ヒータ16a,16bがスリット12を取り囲むように略コの字型に形成されている。
【0052】
なお、図1(a)の図中、符号26,27は光入力部、28,29は光出力部をそれぞれ示す。本実施形態例において、前記マッハツェンダ光干渉計回路30の光分岐部21aと光結合部21aは互いに等しい長さに形成されており、光分岐部21aと光結合部21bの結合効率ηは、いずれも、波長1.55μmの光に対して50%になるように設定されている。
【0053】
また、接続光導波路1e,1fは互いに等しい長さに形成されており、接続光導波路1e,1fはそれぞれ長手方向に長さ5mmの直線部を有して、これらの直線部は250μm間隔で平行に配設されている。接続光導波路1e,1fの直線部には、それぞれ、図10(a)に示した従来例と同様に、薄膜ヒータ9a,9a’により形成された位相調整手段8a,8a’が形成されている。
【0054】
図1(b)には、図1(a)のI−I線断面図が示されており、図1(a)、(b)に示すように、位相調整手段8a,8a’の形成部位を挟む両側の光導波路層3には、接続光導波路1e,1fと間隔を介した領域で、接続光導波路1e,1fの長手方向に沿って光導波路層3の表面から基板7の表面に向かって厚み方向に除去されて、光導波路層除去部5が形成されている。この光導波路層除去部5は、光導波路層3が基板7の表面に至るまで除去されて形成されており、位相部接続光導波路1s,1tから間隔をおいて、位相部接続光導波路1s,1tと平行に形成されている。
【0055】
光導波路除去部5は、位相調整手段8a,8a’により位相調整を行った際に接続光導波路1e,1fに付与される応力を、解放する構成と成しており、接続光導波路1e,1fは、この応力解放の自由空間に間隔を介して接するように配置されている。
【0056】
なお、一般に、熱光学効果を用いた位相シフタでは、基板に垂直な方向は光導波路層の熱膨張による応力が十分に解放され、基板に水平な方向は光導波路層の熱膨張による応力が十分に解放されないため、異方性の内部応力が新たに発生し、この異方性の応力により光導波路層の複屈折率がさらに増大する。そのため、光導波回路内に存在する2つの偏波光であるTE偏波光とTM偏波光とで位相シフタ部における位相変化量が異なってしまい、接続光導波路1e,1fを伝搬してきた光の位相差によって決定される光減衰量の差、PDLが発生してしまう。
【0057】
そこで、本実施形態例では、上記応力を解放する光導波路除去部5を設けることにより、接続光導波路1e,1fの形成領域およびその近傍の光導波路層3の複屈折の増大を抑制している。
【0058】
また、光導波路層除去部5は、加熱手段である薄膜ヒータ9a,9a’により接続光導波路1e,1fに加えられる熱が位相調整手段8a,8a’の近傍領域よりも外側に伝わることを抑制する断熱手段としても機能する。この構成により、位相調整手段8a,8a’を形成する薄膜ヒータ9a,9a’の熱は、位相部接続光導波路1s,1tに効率的に伝わるように構成されている。なお、薄膜ヒータ9a,9a’には、例えば図10(a)に示した給電用配線23と同様の給電用配線(図示せず)が接続されている。
【0059】
図1(a)に示すように、前記スリット12の長辺は出力光導波路1dの光軸と45度の交差角θを成しており、幅30μm、長さ250μmに形成されている。なお、図1(a)では、出力光導波路1dにおいて、スリット12に伝搬光を入力する側に形成されている領域を1y、スリット12から伝搬光を出力する側に形成されている領域を1zで示している。図1(c)には、図1(a)のII−II断面図が示されており、スリット12は光導波路層3の表面から基板7の表面にかけて、深さ40μmに形成されている。
【0060】
また、スリット12はホウ珪酸ガラスの板からなる蓋15により封止されており、蓋15は接着剤(図示せず)により上部クラッド層2上に接着されている。図1(a)に示すように、前記整合剤移動手段11a,11bを形成する薄膜ヒータ16a,16bは、スリット12近傍の上部クラッド層2上に形成され、スリット12の長手方向両端部付近に、スリット12を取り囲むようにコ字形状に形成されている。スリット12と出力光導波路1dは、薄膜ヒータ16a寄りの交差部24で交差している。薄膜ヒータ16a,16bには、図示されていない給電用配線が接続されている。
【0061】
次に、本実施形態例による光可変減衰器の製造方法について、図面を用いて説明する。
図2および図3は、本実施形態例の平面光導波路型光可変減衰器の製造方法を説明する説明図である。なお、図2は、平面光導波回路型光可変減衰器の製造工程ごとの状態を、図1(a)におけるI−I線から見た断面図により示しており、図3は、平面光導波回路型光可変減衰器の製造工程ごとの状態を、図1(a)におけるII−II線から見た断面図により示している。
【0062】
まず、図2(a)、図3(a)に示すように、シリコン基板7上に火炎加水分解堆積法(FHD法)を用いて膜厚20μmの下部クラッド層2a及び膜厚6μmのコア1の層を成膜する。この際、コア1の層の屈折率が下部クラッド層2aの屈折率より0.8%高くなるように、コア1の層にGeO2を添加する。
【0063】
次に、図2(b)、図3(b)に示すように、フォトリソグラフィーとドライエッチングにより、幅6.5μmのコア1の光導波回路をパターニング形成する。コア1の光導波回路は、図1(a)に示すように形成する。
【0064】
なお、図2(b)は図1(a)のI−I線による切断面で示されているので、コア1は接続光導波路1e,1fの直線部の位相部接続光導波路1s,1tの断面が示されており、図3(b)は図1(a)のII−II線による断面で示されているので、コア1は交差部24に相当する部分における出力光導波路1dの断面が示されている。
【0065】
次に、図2(c)、図3(c)に示すように、FHD法を用いて膜厚20μmの上部クラッド層2bを形成し、コア1の光導波回路をクラッド2内に埋め込んで光導波路層3を形成する。
【0066】
次に、図2(d)、図3(d)及び図1(a)に示すように、スパッタ法とリフトオフ法を用いて、接続光導波路1e,1fのそれぞれの直線部(位相部接続光導波路1s,1t)に対応する光導波路層3の上面と、スリット12の長手方向両端部をコの字型に取り囲む形状に相当する部分に、Ta製の薄膜ヒータ9a,9a’,16a,16bを設ける。
【0067】
薄膜ヒータ9a,9a’は長さ5mm、幅10μm、膜厚1.0μmに形成され、薄膜ヒータ16a,16bは、スリット12の長辺方向の長さが140μm、短辺方向の長さが110μm、幅20μm、膜厚1.0μmに形成される。
【0068】
次に、上記薄膜ヒータ9a,9a’,16a,16bの作製方法と同様の方法で、Ti/Ni/Auの3層から成る給電用配線(図示せず)を形成する。つぎに、薄膜ヒータと給電用配線を保護し、絶縁するためのSiO2からなる絶縁膜(図示せず)をスパッタ法により基板表面全体に形成する。
【0069】
次に、図2(e)及び図1(a)、(b)に示すように、位相調整手段8a,8a’を形成する薄膜ヒータ9a,9a’の形成部位を挟む両側の光導波路層3に光導波路層除去部5を形成する。この光導波路層除去部5は、接続光導波路1e,1fの直線部の長手方向に沿って平行に間隔を介した領域を光導波路層3表面から基板7表面に至るまでドライエッチングにより除去して形成する。光導波路層除去部5の寸法は、例えば長さ5mm、幅100μmとする。
【0070】
この光導波路層除去部5の形成により、接続光導波路1e,1fの直線部を含む光導波路層3(3a,3b)の幅Waを20μmとなるようにする。また、同時に、図3の(e)及び図1(a)、(c)に示すように、スリット12に相当する領域の光導波路層も同様に除去し、スリット12と成す。スリット12は幅30μm、長さ250μmとし、薄膜ヒータ16a寄りのスリット端から50μmの位置にて出力光導波路1dと交差するようにし、交差部24と成す。
【0071】
次に、図3(f)及び図1(a)、(c)に示すように,スリット12に屈折率整合剤13を注入する。この屈折率整合剤13は例えばスリット12の第3の薄膜ヒータ16a側が約半分満たされる量だけ注入し、交差部24が屈折率整合剤13で満たされる状態とする。その後、気体14である窒素ガス雰囲気中でスリット12上に蓋15を接着剤にて貼り付けて封止し、光シャッター部50と成す。
【0072】
次に、第1実施形態例の光可変減衰器の駆動方法について説明する。まず、一方の入力光導波路1aの光入力部26から信号光を入射し、光分岐部21aで分岐した後、接続光導波路1e,1fを伝搬させ、光結合部21bで結合させて出力光導波路1dに伝搬させると、この伝搬光は、出力光導波路1dの途中部に設けられたスリット12を通って光出力端29側へと伝搬する。
【0073】
このとき、図1(a)に示すように、スリット12内の屈折率整合剤13が出力光導波路1dの伝搬光の通り道を含む位置にある状態においては、交差部24は、コア1と屈折率がほぼ等しい屈折率整合剤13にて満たされているため、交差部24を通過する際の信号光の損失は非常に小さく、例えば約0.2dBである。つまり、出力光導波路1dにおいて、スリット12の領域1y側からスリット12の交差部24に入射した信号光はスリット壁面にてほとんど反射されることなく、領域1z側へと伝搬する。屈折率整合剤13の屈折率は、例えば上部クラッド層2の屈折率より高くなっている。
【0074】
したがって、この場合は、光シャッター部50側の光減衰量は殆ど無く、マッハツェンダ光干渉計回路30に形成された位相調整手段8a,8a’による位相調整によって、0〜10dB程度の範囲において任意の光減衰量を得ることができる。つまり、例えば薄膜ヒータ9aに通電・加熱することにより、発熱による熱光学効果によって位相部接続光導波路1sの実効光導波路長を変化させて位相部接続光導波路1sを伝搬する光の位相を変化させることで、マッハツェンダ光干渉計回路30の光透過率を変化させることにより、従来の光可変減衰器とほぼ同様に、0〜10dB程度の範囲において任意の光減衰量を得ることができる。
【0075】
なお、図1(a)、(b)に示した状態においては、光シャッター部50の薄膜ヒータ16a,16bは共に無給電であるが、スリット12中の屈折率整合剤13は交差部24に保持されている。これは、狭いスリット12中に気体と液体が封入された状態においては、液体は表面張力のためスリット12の片端に保持される性質があるためである。
【0076】
一方、薄膜ヒータ16aに給電して加熱すると、スリット12の薄膜ヒータ16a側における屈折率整合剤13の表面張力が低下するため、スリット12の長手方向に沿ってスリット12の屈折率整合剤13の表面張力に勾配が発生する。狭いスリット12中の液体は表面張力の高い方向へ、気体14は表面張力の低い方向へと移動する性質があるため、このような表面張力の勾配が発生すると、液状の屈折率整合剤13は加熱されていない薄膜ヒータ16b側、つまり、出力光導波路1dの伝搬光の通り道から待避する位置に移動する。そして、交差部24は気体14で満たされる。
【0077】
また、上記のようにして屈折率整合剤13が完全に薄膜ヒータ16b側に移動した後、薄膜ヒータ16aへの給電を中止すると、発生していた表面張力の勾配は喪失するが、前述した通り、スリット12中の屈折率整合剤13は毛細管力によって薄膜ヒータ16b側のスリット12端に保持される。この時の状態を、図4(a)の平面図と図4(b)の断面図に示す。なお、図4(b)は図4(a)の光シャッター部50のII−II線断面図である。
【0078】
図4(a)、(b)の状態、すなわち交差部24が気体14で満たされた状態においては、出力光導波路1dの領域1y側からスリット12の交差部24に入射した信号光はスリット壁面にて全反射され、領域1z側へはほとんど伝搬することなく、クラッド2へ放射される。この場合、出力光導波路1dの領域1y側から交差部24を通過して領域1z側へと伝搬する信号光の損失は、約35dB以上と非常に大きい。
【0079】
したがって、第1実施形態例の光可変減衰器は、マッハツェンダ光干渉計回路30の位相調整手段8a,8a’を駆動することなく、かつ、光シャッター部50の薄膜ヒータ16a,16bにも給電することなく、全くの無給電状態で約35dB以上という大きな光減衰量が得られることになる。
【0080】
また、マッハツェンダ光干渉計回路30の位相調整手段8a,8a’を駆動することにより、例えばマッハツェンダ光干渉計回路30における光減衰量を20dBに設定すれば、光可変減衰器の光減衰量として約55dB以上という非常に大きな光減衰量を得ることができる。
【0081】
以下に、実際に作製した光可変減衰器を用いて光減衰特性を測定した結果を示す。この測定にあたっては、波長1.55μmのレーザダイオードからの光を入力光導波路1aの光入力部26から入射し、出力光導波路1dの光出力部29から出射された光の挿入損失を測定した。測定はTE偏波光とTM偏波光の両方を用いてそれぞれ独立に行った。
【0082】
まず、図1の状態、即ち交差部24が屈折率整合剤13によって満たされている状態において、無給電状態での挿入損失を測定したところ、TE偏波の挿入損失は1.21dB、TM偏波の挿入損失は1.22dBであった。これは従来の光可変減衰器における挿入損失に比べて0.2dB程度高い値であり、スリット12による損失増加であるとわかる。
【0083】
次に、位相調整手段8aにのみ電力を供給し、電力供給量を0〜80mWの範囲で変化させた。この時の電力供給量と挿入損失の関係を図5の特性線aに示し、電力供給量に対するTE偏波光とTM偏波光の挿入損失の差(PDL)の関係を図5の特性線bに示す。
【0084】
図5の特性線aに示すように、電力供給量の増加に応じて挿入損失が増加しており、約72mWにおいて最大の挿入損失25.0dBが得られている。このとき、電力投入量が0mWの状態である初期状態における挿入損失との差である光減衰量は最大約23.8dBであることがわかる。また、初期状態から約10dBの光減衰量、即ち約11.2dBの挿入損失が得られている電力供給量が約58mWまでの範囲の範囲において、図5の特性線bに示すように、PDLは約0.5dB以下と良好なPDL特性が得られている。
【0085】
次に、位相調整手段8aへの電力供給を中止し、薄膜ヒータ16aに給電加熱して、図4(a)、(b)に示したように、屈折率整合剤13を薄膜ヒータ16b側に移動させ、交差部24を気体14で満たした後、薄膜ヒータ16aへの給電を中止した。
【0086】
薄膜ヒータ16aへの給電中止後、全くの無給電状態となった後も、屈折率整合剤13は毛細管力によって第4の薄膜ヒータ16b側のスリット端に保持されていた。そして、このときの挿入損失を測定したところ、41.5dBであった。このとき、初期状態における挿入損失との差である光減衰量は40dB以上の高い値が得られていることがわかる。
【0087】
さらに、交差部24が気体14で満たされた状態のまま、位相調整手段8aにのみ約72mWの電力を供給し、挿入損失を測定したところ、65.3dBが得られた。このとき、初期状態における挿入損失との差である光減衰量は約60dB以上と非常に高い値が得られていることがわかる。
【0088】
第1実施形態例によれば、以上のように、接続光導波路1e,1f近傍に光導波路層除去部5を形成したマッハツェンダ光干渉計回路30と、接続光導波路1e,1fに形成した位相調整手段8a,8a’と、光シャッター部50とを適宜機能させることによって、0〜10dB程度の光減衰量範囲において、任意の光減衰量が、TE偏波光とTM偏波光の挿入損失差の小さい状態で高精度に得られ、かつ、給電状態で60dB以上、無給電状態で40dB以上といった大きな光減衰量が得られる光可変減衰器を実現できる。
【0089】
(第2の実施の形態)
次に、本発明に係る平面光導波回路型光可変減衰器光可変減衰器の第2実施形態例について説明する。第2実施形態例は、図6に示す平面構成を有している。また、図7(a)には、図6のIII−III線断面図を示し、図7(b)には、図6のIV−IV線断面図を示し、図7(c)には、図6のV−V線断面図を示す。
【0090】
図6に示すように、第2実施形態例において、光分岐部21aと光結合部21bは分岐比が1対1であるY分岐器により形成されている。なお、分岐比が1対1であるY分岐器は2×2方向性結合器に比べて分岐比の波長依存性が小さい特性を有する。
【0091】
また、第2実施形態例では、互いに並設された接続光導波路1e,1fの一方が第1の接続光導波路1eと成して他方が第2の接続光導波路1fと成しており、これら第1と第2の接続光導波路1e,1fにはそれぞれ長手方向に間隔を介して2つずつ位相調整手段8a,8b’,8a’,8bが形成されている。第1の接続光導波路1eの入力側寄りには第1の位相調整手段8aが形成されて出力側寄りには第4の位相調整手段8b’が形成され、第2の接続光導波路1fの入力側寄りには第3の位相調整手段8a’が形成されて出力側寄りには第2の位相調整手段8bが形成されている。
【0092】
第1の位相調整手段8a、第3の位相調整手段8a’、第2の位相調整手段8b、第4の位相調整手段8b’は全て同一構成と成し、これらの位相調整手段8a,8a’,8b,8b’は第1実施形態例に設けられた位相調整手段8a,8a’と同様に構成され、薄膜ヒータ9a,9b’,9a’,9bを有している。
【0093】
第1の位相調整手段8aと該第1の位相調整手段8aに幅方向で隣り合う光導波路層除去部5(5a)との距離と、第3の位相調整手段8a’と該第3の位相調整手段8a’に幅方向で隣り合う光導波路層除去部5(5a)との距離とは互いに等しい第1設定距離D1に形成されている。つまり、図7(a)に示す光導波路層3a,3bの幅は互いに等しく形成されている。
【0094】
また、第2の位相調整手段8bと該第2の位相調整手段8bに幅方向で隣り合う光導波路層除去部5(5b)との距離と第4の位相調整手段8b’と該第4の位相調整手段8b’に幅方向で隣り合う光導波路層除去部5(5b)との距離とは互いに等しい第2設定距離D2に形成されており、該第2設定距離D2と前記第1設定距離D1は互いに異なる距離に形成されている。つまり、図7(b)に示す光導波路層3a’,3b’の幅は互いに等しく形成されており、これらの幅は図7(a)に示した光導波路層3a,3bの幅と異なっている。
【0095】
このように、光導波路層3a,3bの幅を異ならせることにより、位相調整手段8a,8bにより位相調整を行った際に、接続光導波路1e,1fに付与される応力の解放量が異なるようにしている。これにより、応力により発生する接続光導波路1e,1fの複屈折率が異なり、また、複屈折率により決まる伝搬光の位相の偏波差(TE偏波光の位相とTM偏波光の位相との差)の変化率が異なるようになる。
【0096】
また、図7(a)、(b)に示すように、第2実施形態例において、光導波路層除去部5の下部に対向する基板7の表面部位には基板7の上層の一部を除去した基板除去部4が形成されており、この基板除去部4は、光導波路層除去部5の下部を該光導波路層除去部5の対向面間隔よりも広げる方向に切り込んだ断面矩形状の凹部と成している。この凹部は、光導波路層除去部5の下部の幅50μmより20μm広い70μmの幅を有し、深さが10μm、長さが5mmである。
【0097】
基板除去部4の形成は、例えば光導波路層除去部5の形成後に光導波回路型光可変減衰器チップをKOH水溶液に浸し、KOHのシリコン基板に対する異方性エッチングを利用してシリコン基板7をエッチングすることにより行われている。基板除去部4は図7(c)に示すようにスリット12側にも形成されている。
【0098】
さらに、第2実施形態例において、スリット12内には、その一部に屈折率整合剤13が入れられ、さらに不活性ガスであるアルゴンガスの気体14が封入されており、蓋15の接着(接合)は低融点ガラスを用いたガラスシールにより行われている。アルゴンガスの適用と、低融点ガラスを用いた蓋15のガラスシールの適用により、薄膜ヒータ16a,16bによる加熱によって屈折率整合剤13をより信頼性良く移動可能となり、シャッター部50の信頼性をより高めることができる。
【0099】
第2実施形態例の上記以外の構成は、第1実施形態例と同様であり、また、製造方法も第1実施形態例と同様である。
【0100】
前記の如く、熱光学効果を用いた位相シフタでは、一般に、基板に垂直な方向は光導波路層の熱膨張による応力が十分に解放され、基板に水平な方向は光導波路層の熱膨張による応力が十分に解放されないため、異方性の内部応力が新たに発生し、この異方性の応力により複屈折率がさらに増大し、第1の接続光導波路1eを伝搬してきた光と第2の接続光導波路1fを伝搬してきた光との間のTM偏波光における位相差とTE偏波光における位相差との差によって決定される光減衰量の差、PDLが発生してしまう。
【0101】
第2実施形態例では、第1の位相調整手段8aと該第1の位相調整手段8aに隣り合う光導波路層除去部5(5a)との距離を第1設定距離D1に形成し、第2の位相調整手段8bと該第2の位相調整手段8bに隣り合う光導波路層除去部5(5b)との距離を前記第1の設定距離と異なる第2設定距離D2に形成することで、以下の効果を奏することができる。
【0102】
つまり、第2実施形態例では、第1の位相調整手段8aが形成された部分の接続光導波路1eと第2の位相調整手段8bが形成された部分の接続光導波路1fにおける加熱時の応力の異方性を互いに異なるようにすることができるので、位相調整量に対する複屈折率の変化率を第1の位相調整手段8aが形成された部分の第1の接続光導波路1eと第2の位相調整手段8bが形成された部分の第2の接続光導波路1fとで異なるようにできる。
【0103】
そこで、第2実施形態例において、第1の位相調整手段8a(第1の位相シフタ)と第2の位相調整手段8b(第2の位相シフタ)を同時に駆動し、第1の位相調整手段8aが形成された部分の第1の接続光導波路1eと、第2の位相調整手段8bが形成された部分の第2の接続光導波路1fにおいて発生する複屈折率が等しくなるように電力を制御することによって、第1の接続光導波路1eと第2の接続光導波路1fを伝搬してきた光の位相差がTE偏波光とTM偏波光で等しくなるようにすることができる。すなわち、原理的にPDLをゼロにすることができる。
【0104】
なお、上記構成によるPDLの低減効果については、特願2003−111370に詳しく述べられている。
【0105】
第2実施形態例による平面光導波回路型光可変減衰器において、交差部24が屈折率整合剤13によって満たされている状態において、無給電状態での挿入損失を測定したところ、TE偏波の挿入損失は1.3dB、TM偏波の挿入損失は1.32dBであった。
【0106】
次に、交差部24が屈折率整合剤13によって満たされている状態において、第2実施形態例の光減衰量が、5、10、15、20dBの各設定光減衰量となるように第1の位相シフタと第2の位相シフタに電力供給し(第1と第2の位相調整手段8a,8bに電力供給し)、このときの設定光減衰量に対する実際に測定された挿入損失とPDLの関係を求めた。この結果を表1に示す。
【0107】
【表1】
【0108】
表1から明らかなように、約20dBの光減衰量までの範囲においてPDLが±0.11dB以下と小さく抑えられていることがわかる。
【0109】
次に、第1と第2の位相調整手段8a,8bへの電力供給を中止し、薄膜ヒータ16aに給電加熱して、屈折率整合剤13を薄膜ヒータ16b側に移動させ、交差部24が気体14で満たされた後、薄膜ヒータ16aへの給電を中止した。なお、第1実施形態例と同様に、薄膜ヒータ16aへの給電中止により全くの無給電状態となった後も、屈折率整合剤13は毛細管力によって薄膜ヒータ16b側のスリット12端に保持されていた。
【0110】
このときの挿入損失を測定したところ、37.7dBであった。つまり、このとき、初期状態における挿入損失との差である光減衰量は、36dB以上の高い値となっていることがわかる。
【0111】
さらに、交差部24が気体14で満たされた状態のまま、第1および第2の位相調整手段8(8a,8b)にそれぞれ79.30mW、44.10mWの電力を供給し、挿入損失を測定したところ、57.7dBだった。つまり、このとき、初期状態における挿入損失との差である光減衰量は、約56dB以上と非常に高い値となった。また、このときのPDLは0.5dBと低かった。
【0112】
以上のように、第2実施形態例によれば、0〜20dB程度の光減衰量範囲において任意の光減衰量が高精度、かつ、低PDLで得られ、かつ、給電状態で56dBb以上、無給電状態で36dB以上といった大きな光減衰量が得られる光可変減衰器を実現できる。
【0113】
(第3の実施の形態)
次に、本発明に係る平面光導波回路型光可変減衰器の第3実施形態例について説明する。第3実施形態例の構成は、上記第2実施形態例とほぼ同様であり、図8に、第3実施形態例における光シャッター部50の断面構成が示されている。この図8は、図6のV−V線断面に相当する。第3実施形態例が上記第2実施形態例と異なる第1の点は、光シャッター部50の蓋15の接合が銅薄膜の拡散接合によって行われていることである。第3実施形態例が上記第2実施形態例と異なる第2の点は、スリット12と連結された液体注入溝43を有し、蓋15の接合後に液体注入溝43を通じて屈折率整合剤13を注入した点である。
【0114】
第3実施形態例では、光導波路層3および薄膜ヒータ16a,16b上に形成された絶縁膜42上の蓋15との接合面に、銅製の金属薄膜41aを形成し、この金属薄膜41aと、蓋15の接合面に形成された銅製の金属薄膜41bとの間で拡散接合を行い、蓋15を接合している。金属薄膜の拡散接合では金属原子の拡散による接合が行われるため、より強固な接合を行うことができ、また、固相反応で接合することから、接合時の位置ずれ等の問題が無く、より高精度に蓋15の封止を行うことができる。
【0115】
また、金属薄膜41a,41bとして銅を用いることで、光導波路やヒータ、給電配線等の特性に悪影響を与えない程度の温度範囲(例えば250℃〜600℃程度)で拡散接合が可能となり、かつ、使用時の接合部温度範囲(例えば0℃〜100℃程度)で再結晶等が起こらず、高い長期信頼性を得ることができる。
【0116】
図9は、第3実施形態例の平面光導波回路型光可変減衰器の製造工程を断面図により示す図であり、この断面は、図6のV−V線断面に相当する。第3実施形態例においても、図9の(a)〜(d)に示すように、薄膜ヒータ16a,16bの形成および給電用配線(図示せず)の形成までは、第1および第2実施形態例と同様に行う。
【0117】
次に、図9の(e)に示すように、スパッタ法を用いてSiO2からなる絶縁膜42を形成し、絶縁膜42上の蓋15との接合面に銅製の金属薄膜41aをスパッタ法とリフトオフ法によって形成する。金属薄膜41aの膜厚は3μmとする。この際、金属薄膜41aと絶縁膜42との密着性を向上させるため、金属薄膜41aと絶縁膜42との間に、膜厚0.1μmのクロム膜(図示せず)を形成している。
【0118】
次に、図9の(f)に示すように、スリット12に相当する領域の光導波路層3を除去し、スリット12と成す。次に、図9の(g)に示すように、絶縁膜42上に形成した金属薄膜41aと同様の金属薄膜41bを形成し、蓋15に液体注入溝43を形成する。蓋15を用いてスリット12に蓋をし、10kgf/mm程度の圧力で蓋15を押さえながら、不活性ガス雰囲気中または真空中において500℃で2時間程度保持し、金属薄膜41aと金属薄膜41bを拡散接合させる。
【0119】
この際、薄膜ヒータ16a,16b、給電用配線(図示せず)、コア1(1d)等の影響により、絶縁膜42の表面にできる凹凸は、拡散接合時の金属薄膜の変形によって平坦化され、金属薄膜41a,41bの形成部分全体が接合される。最後に、アルゴン雰囲気中で図9の(g)に示す液体注入溝43を通じて、図9の(h)に示すようにスリット12の半分程度が満たされる量の屈折率整合剤13を注入し、接着剤44にて液体注入溝43を封止する。
【0120】
第3実施形態例の平面光導波回路型光可変減衰器において、光学特性の測定を行ったところ、第2実施形態例と同様に、0〜20dB程度の光減衰量が0.2dB以下の低PDLで高精度に得られ、また、給電状態で56dB以上、無給電状態で36dB以上の大きな光減衰量が得られた。
【0121】
以上のように、第3実施形態例によれば、0〜20dB程度の光減衰量が高精度で得られ、かつ、0.2dB以下の低PDLが得られ、また、給電状態で55dB以上、無給電状態で35dB以上の大きな光減衰量が得られる光可変減衰器が高い信頼性で得られる。
【0122】
(その他の実施の形態)
本発明は、上記各実施形態例に限定されることはなく様々な実施の態様を採り得る。例えば、上記各実施形態例では、石英系光導波回路としたが、本発明の平面光導波回路型光可変減衰器は、ポリマーや半導体など種々の材料を用いた光導波路により形成されるものであり、光導波回路を形成する材料は、必要な光損失値、信頼性、コスト等を鑑みて適宜選択されるものであり、光導波回路の寸法も適宜設定されるものである。
【0123】
また、上記各実施形態例では、本発明においては,基板7としてシリコン基板を用いたが、基板7は、石英ガラス、結晶化ガラスなどのガラス材料や、炭化珪素、窒化珪素、アルミナ等のセラミックスなど種々の基板材料を用いることができ、放熱性、光導波路層3へ及ぼす応力などの観点から適宜選択すればよい。
【0124】
また、上記各実施形態例では、薄膜ヒータ9a,9a’,16a,16bをTa膜により形成したが、薄膜ヒータ9a,9a’,16a,16bを形成する材料は特に限定されるものでなく、適宜設定されるものであり、Ni、Cr、TaNx(Xは0〜1.0)、Au、Pt、Wや、これらの合金など種々の薄膜ヒータ材料を用いることができる。つまり、薄膜ヒータの形成材料は、必要な抵抗値、信頼性等を鑑みて適宜選択すればよい。
【0125】
さらに、上記各実施形態例においては、屈折率整合剤13としてシリコン系オイルを用いたが、屈折率整合剤13はコア1の屈折率に近似した屈折率をもつ液状の屈折率整合剤であればよく、その材料は適宜設定されるものである。
【0126】
さらに、上記各実施形態例では、スリット12の封止にガラス製の蓋15を用いたが、蓋15は、石英ガラス、結晶化ガラスなどのガラス材料や、炭化珪素、窒化珪素、アルミナ等のセラミックス、シリコンなどの単結晶材料、樹脂材料、金属材料など種々の材料のものを適用することができるものであり、蓋15の形成材料は、導波路膜との接合強度や基板7との熱膨張率差、求められる信頼性等を鑑みて適宜選択すればよい。
【0127】
さらに、上記各実施形態例では、蓋15を接着剤や低融点ガラスシールによって接着したが、蓋15の基板7への接合方法は、陽極接合、拡散接合、熱圧着、半田付け等、種々の接合方法を適用することができ、蓋15の材料、導波路膜との接合強度、求められる信頼性等を鑑みて適宜選択すればよい。
【0128】
さらに、上記各実施形態例においては、気体14として窒素ガス又はアルゴンガスを用いたが、気体14はこれらのガスに限定されることはなく、不活性ガス等の特性の安定したガス材料であれば種々のガス材料を用いることができ、求められる信頼性、コスト等を鑑みて適宜選択すればよい。
【0129】
さらに、上記各実施形態例では、位相調整手段8a,8a’,8b,8b’の近傍に、光導波路除去部5や基板除去部4を形成し、接続光導波路1e,1fの位相調整手段形成領域の付与されている応力を解放する構成としたが、その逆に、位相調整手段の形成部位の光導波路に付与されている応力をさらに増加(付与)させる応力付与手段としてもよい。
【0130】
さらに、上記各実施形態例では、金属薄膜として銅を用いたが、接合可能温度、光導波路層やヒータ等の耐熱温度、使用温度等を考慮して、適宜材料を選択することができる。
【0131】
さらに、例えばPDLの抑制目標値が小さい場合等は、位相調整手段の形成部位の光導波路に付与されている応力を解放したり増加したりする手段を省略することもできる。この場合も、マッハツェンダ光干渉計回路30に形成した位相調整手段により例えば1〜10dBといった範囲で高精度に光減衰量を可変でき、かつ、光シャッター部50側の動作によって、35dB以上といった大きな光減衰量を得ることができる。
【0132】
さらに、第1〜第4の位相調整手段8a,8b,8a’,8b’の形成位置は、第2実施形態例における形成位置に限定されることはなく、第1、第4の位相調整手段8a,8b’が第1の接続光導波路1eに、第2、第3の位相調整手段8b,8a’が第2の接続光導波路1fに形成されていればよい。
【0133】
さらに、上記各実施形態例では、2本の接続光導波路1e,1fにそれぞれ位相調整手段を設けたが、位相調整手段は1本の接続光導波路にのみ設けてもよい。また、位相調整手段の配設数も、1つずつあるいは2つずつとするとは限らず、適宜設定されるものである。
【0134】
さらに、上記実施形態例では、光出力導波路と交差するようにスリット12を形成したが、スリット12は、光入力導波路と交差するように形成することもできる。
【0135】
上述したように本発明によれば、光導波路層のコアにより形成したマッハツェンダ光干渉計回路の位相調整を行うことにより、例えば0〜10dBといった範囲内で高精度な光減衰量を得ることができ、かつ、マッハツェンダ光干渉計回路の1本の出力光導波路の長手方向途中部交差させたスリット内の一部にコアの屈折率に近似した屈折率を持つ液状の屈折率整合剤を設けて、この屈折率整合剤を必要に応じてスリット内で出力光導波路の伝搬光の通り道から待避する位置に移動させることにより、例えば35dB以上の非常に高い光減衰量の状態とすることができる。
【0136】
また、本発明において、2本の接続光導波路にはそれぞれ位相調整手段が設けられており、これらの位相調整手段により位相調整を行った際の、接続光導波路を伝搬する伝搬光の位相の偏波差の変化率を互いに異なるようにした構成によれば、それぞれの接続光導波路を伝搬してきた伝搬光の位相の偏波差が互いに等しくなるように2つの位相調整手段を制御することにより、より高い光減衰量まで低PDLで高精度に制御することができる。
【0137】
さらに、本発明において、2本の接続光導波路にはそれぞれ位相調整手段が設けられており、これらの位相調整手段により位相調整を行った際の、接続光導波路の複屈折率の変化率を互いに異なるようにした構成によれば、それぞれの接続光導波路を伝搬してきた伝搬光の位相の偏波差が互いに等しくなるような複屈折率となるように2つの位相調整手段を制御することによって、より高い光減衰量まで低PDLで高精度に制御することができる。
【0138】
さらに、本発明において、少なくとも一方の接続光導波路の位相調整手段の形成部位近傍に、位相調整手段により位相調整を行った際に接続光導波路に付与される応力を解放または増加させる構成を設けて、位相調整手段により位相調整を行った際の接続光導波路の複屈折率の変化率を互いに異なるようにした構成によれば、上記応力を解放または増加させる構成によって、容易に接続光導波路の複屈折率の変化率を設定することができる。
【0139】
さらに、本発明において、少なくとも一方の接続光導波路の位相調整手段の形成部位は位相調整手段により位相調整を行った際に接続光導波路に付与される応力が解放される自由空間と間隔を介して接するように配置されている構成によれば、2つの位相調整手段によって位相調整を行った際の位相調整量に対する複屈折率の変化率を、応力解放によって互いに異なる値にすることができる。
【0140】
さらに、本発明において、2本の接続光導波路にはそれぞれ加熱手段により形成された位相調整手段が設けられており、少なくとも一方の位相調整手段の形成部位の近傍には加熱手段により接続光導波路に加えられる熱が位相調整手段の近傍領域よりも外側に伝わることを抑制する断熱手段が形成されている構成によれば、接続光導波路の位相調整手段形成領域を効率的に加熱することができ、消費電力の低減を図ることができる。
【0141】
さらに、本発明において、位相調整手段の形成部位を挟む両側の光導波路層は、接続光導波路と間隔を介した領域が該接続光導波路の長手方向に沿って光導波路層表面から基板表面に向かって除去されており、該光導波路層除去部が自由空間の応力解放の手段と成している構成によれば、光導波路層除去部により容易に、かつ、的確に自由空間の応力解放の手段を形成できる。
【0142】
さらに、本発明において、2本の接続光導波路にはそれぞれ位相調整手段が設けられており、一方の位相調整手段と該位相調整手段に隣り合う光導波路層除去部との距離と、他方の位相調整手段と該位相調整手段に隣り合う光導波路層除去部との距離とを互いに異なるように形成した構成によれば、一方の位相調整手段と他方の位相調整手段によりそれぞれ位相調整を行ったときの接続光導波路の複屈折の変化率の違いを的確に形成することができる。
【0143】
さらに、本発明において、位相調整手段の形成部位を挟む両側の光導波路層は、接続光導波路と間隔を介した領域が該接続光導波路の長手方向に沿って光導波路層表面から基板表面に向かって除去されており、該光導波路層除去部が断熱手段と成している構成によれば、光導波路除去部によって容易に、かつ、的確に断熱手段を形成でき、位相調整手段の形成領域を効率的に加熱することができる。
【0144】
さらに、互いに並設された接続光導波路の一方を第1の接続光導波路と成して他方を第2の接続光導波路と成し、これら第1と第2の接続光導波路にはそれぞれ長手方向に間隔を介して2つずつ位相調整手段を形成し、これらの位相調整手段と光導波路除去部との距離を第1、第2の設定距離に設定した構成によれば、第1と第2の設定距離を適宜設定することにより、伝搬光の光減衰量の偏波依存性をほぼ解消することができ、かつ、消費電力の低減を図ることができる。
【0145】
さらに、本発明において、光導波路層除去部は、光導波路層が光導波路層表面から基板表面に至るまで除去されて形成されている構成によれば、接続光導波路の位相調整手段形成領域の応力解放および断熱を効果的に行うことができる。
【0146】
さらに、本発明において、光導波路層除去部の下部に対向する基板表面部位に基板を除去した基板除去部が形成されている構成によれば、接続光導波路の位相調整手段形成領域の応力解放および断熱をより一層効果的に行うことができる。
【0147】
さらに、本発明において、基板除去部は、光導波路層除去部の下部を該光導波路層除去部の対向面間隔よりも広げる方向に切り込んだ断面矩形状の凹部とした構成によれば、接続光導波路の位相調整手段形成領域の応力解放および断熱をさらにより一層効果的に行うことができる。
【0148】
さらに、本発明において、整合剤移動手段はスリット近傍に設けられた薄膜ヒータとした構成によれば、容易に整合剤移動手段を形成でき、的確に屈折率整合剤の移動を行うことができる。
【0149】
さらに、本発明において、位相調整手段は接続光導波路上に設けられた薄膜ヒータとした構成によれば、容易に位相調整手段を形成でき、熱光学効果により容易に接続光導波路を伝搬する光の位相を変化させることができる。
【0150】
さらに、本発明において、光導波路層は石英系ガラスにより形成されている構成によれば、挿入損失が低く、信頼性の高い平面光導波回路型光可変減衰器を実現できる。
【0151】
さらに、本発明において、基板はシリコン基板とした構成によれば、放熱性が良く、接続光導波路の位相調整手段形成領域の応力解放が行いやすく、信頼性の高い平面光導波回路型光可変減衰器を実現できる。
【0152】
さらに、本発明において、スリットはガラス板により封止されている構成によれば、屈折率整合剤の移動状況を容易に確認でき、信頼性の高い平面光導波回路型光可変減衰器を実現できる。
【0153】
さらに、本発明において、ガラス板は接着剤によってスリットの周りの光導波路層に接着されている構成によれば、容易にスリットを封止することができる。
【0154】
さらに、本発明において、ガラス板は低融点ガラスによってスリットの周りの光導波路層に接合されている構成によれば、容易にスリットを封止することができるし、信頼性をより一層高くすることができる。
【0155】
さらに、本発明において、ガラス板は該ガラス板および光導波路層表面に形成された金属膜同士を拡散接合させることによって、光導波路層に接合されている構成によれば、さらに高い信頼性を得ることができる。
【0156】
さらに、本発明において、上記拡散接合によりガラス板を接合する構成において、金属膜は銅または銅合金とした構成によれば、光導波路特性に悪影響を与えずに高い信頼性で封止することができる。
【0157】
さらに、本発明において、スリットには屈折率整合剤と共に不活性ガスが封入されている構成によれば、より一層高い信頼性を得ることができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信分野等に適用される平面光導波回路型光可変減衰器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光通信等に適用されている光可変減衰器の一つの例として、平面光導波回路型光可変減衰器がある。この平面光導波回路型光可変減衰器は、シリコン等の基板上に光導波路層を形成して成り、光導波路層は、コアとクラッドとを有する(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
図10(a)はマッハツェンダ光干渉計回路30を用いた平面光導波回路型光可変減衰器の構成を表す平面図であり、図10(b)は、図10(a)のVIII−VIII断面図である。図10(b)に示すように、シリコン等の基板7上に光導波路層3が形成されており、光導波路層3はコア(光導波路)1と、コア1を覆うクラッド2により形成されている。図10(a)に示す平面光導波回路型光可変減衰器において、コア1はマッハツェンダ光干渉計回路30を形成している。
【0004】
このマッハツェンダ光干渉計回路30は、少なくとも1本(ここでは2本)の入力光導波路1a,1bと、該入力光導波路1a,1bから入力された光の分岐を行う光分岐部21aと、少なくとも1本(ここでは2本)の出力光導波路1c,1dと、該出力光導波路1c,1dの入力側に設けられて光の結合を行う光結合部21bと、光結合部21bと光分岐部21aとを接続する2本の接続光導波路1e,1fとを有して該2本の接続導波路1e,1fが互いに間隔を介して並設されている。
【0005】
この図に示すマッハツェンダ光干渉計回路30において、光分岐部21aと光結合部21bは、それぞれ、並設された2本のコア1が近接されて形成されており、光分岐部21aと光結合部21bは2×2方向性光結合器により形成されている。
【0006】
また、図10の(a)に示す光回路装置は、マッハツェンダ光干渉計回路30の2本の接続光導波路1e,1fにそれぞれ、接続光導波路1e,1fを伝搬する伝搬光の位相を調整する位相調整手段8a,8a’を形成している。これらの位相調整手段8a,8a’は、例えば薄膜ヒータ9a,9a’により形成されて、クラッド2の上側に設けられている。
【0007】
位相調整手段8a,8a’と、これらの位相調整手段8a,8a’の形成領域の下部に形成されている位相部接続光導波路1s,1tとにより位相シフタが形成されている。なお、図中、符号23は薄膜ヒータ9a,9a’への給電用電極を示している。位相調整手段8a,8a’は同一構成を有しており、例えば位相調整手段8aのみを作動させることにより、以下のような動作が行われる。
【0008】
つまり、図10の平面光導波回路型光可変減衰器において、位相調整手段8aである薄膜ヒータ9aにより位相部接続光導波路1sの温度が局所的に可変制御されると、この温度が可変制御された側の位相部接続光導波路1sの屈折率が変化し、変化させた部分のコア1の実効屈折率が変化する。これは、石英系ガラス等の屈折率が温度により変化する現象である熱光学効果を利用するものであり、上記効果によって、屈折率が変化したコアを伝搬する光の位相が変化する。このことによって、位相部接続光導波路1sを伝搬する伝搬光と位相部接続光導波路1tを伝搬する伝搬光との間に位相差が発生し、接続光導波路1e,1fを伝搬する伝搬光は互いに位相差を有することになる。
【0009】
つまり、上記位相調整手段8aである薄膜ヒータ9aの発熱による熱光学効果により、加熱された位相部接続光導波路1sの実効光導波路長が変化し、実効光導波路長が変化したコアを伝搬する光の位相が変化することで、マッハツェンダ光干渉計回路30の光透過率を変化させることができる。そのため、図10(a)に示す光回路装置は、光透過率や光分岐比が可変可能な光導波路型干渉計となり、光可変減衰器の機能を得ることができる。なお、位相調整手段8a’は、例えば位相調整手段8aが故障したとき等の予備として設けられている。
【0010】
この平面光導波回路型光可変減衰器において、コア1を形成する石英系ガラスの屈折率の温度係数dn/dTは、10−5(1/℃)程度なので、例えば5mmの長さにわたってコア1の温度を20℃上昇させると、コア1の実効的な光路長が1μm程度変化する。
【0011】
図11の特性線aは、図10に示す平面光波回路型光可変減衰器における、投入電力と挿入損失との関係を示す特性線である。この特性線aにより、約430mWの投入電力に対して約10dBの光減衰量が得られ、520mWの投入電力に対しては22.5dBの最大光減衰量が得られていることがわかる。また、図11の特性線bは、図10に示す平面光波回路型光可変減衰器における、投入電力と挿入損失の(TE偏波とTM偏波の)偏波による差(PDL:偏波依存性損失)との関係を示す特性線である。特性線aと特性線bから、約10dBの光減衰量の時の挿入損失の偏波による差は約−2dBであることがわかる。
【0012】
このような光可変減衰器は、例えば光通信システムの基幹網などにおける光波長多重伝送(WDM)システムにおいて用いられる。WDMシステムにおいては、複数の波長光を同時に増幅する希土類添加光ファイバーアンプが用いられているが、光増幅効率には波長特性があるため、波長による光強度の差が生じてしまう。また、伝送経路の途中で特定の波長光のみを分離したり、挿入したりといったことが行われるため、そこでも波長による光強度の差が生じてしまう。
【0013】
そこで、波長による光強度差を精度良く、かつ、ダイナミックに均一化するために、光可変減衰器が用いられる。このような波長による光強度差は0〜10dB程度であるため、光可変減衰器に通常求められる光減衰量の範囲は0〜10dB程度である。
【0014】
【非特許文献1】「可変光減衰器の開発」住本ら、昭和電線レビュー、Vol.52、No.1(2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところで、上記WDMシステムにおいては、通信装置のメンテナンス時や特定のチャネルのみを休止する場合等において、例えば30dB以上といった大きな光減衰量が必要となる場合がある。ただし、このような大きな光減衰量での使用時は高精度な光減衰量の制御は求められてはいない。そのため、0〜10dB程度の光減衰量範囲において任意の光減衰量が高精度に得られ、かつ、30dB以上といった大きな光減衰量が得られる平面光波回路型光可変減衰器が求められていた。
【0016】
しかしながら、上記マッハツェンダ光干渉計回路30を使用した平面光波回路型光可変減衰器では、通常の使用時に求められる光減衰量の範囲である0〜10dB程度は十分実現できるが、30dB以上の大きな光減衰量を得ることは困難であった。つまり、マッハツェンダ光干渉計回路30は、干渉を用いて光減衰量を得ているため、30dB以上といった高い光減衰量を得ることは困難であり、安定して得られる最大光減衰量としては、20dB程度が限度であった。
【0017】
そこで、上記問題を解決するために、つまり、例えば30dB以上といった大きな最大光減衰量を得られる構成として、例えば従来例の平面光波回路型光可変減衰器を例えば2つ縦続接続し、2つの平面光波回路型光可変減衰器の光減衰量の和を持って全体としての光減衰量とする構成も考えられる。
【0018】
しかしながら、この構成により上記最大光減衰量を得るには、2つの平面光波回路型光可変減衰器の両方を最大光減衰量に設定することになるため、従来例の平面光波回路型光可変減衰器において最大光減衰量を得るための電力の2倍の電力を要する。したがって、通信装置のメンテナンス時等、光通信が行われていない光線路用の光可変減衰器にて最大電力が必要となることとなり、電力の無駄が多いという問題があり、実用的でなかった。
【0019】
また、上記構成の平面光導波回路型光可変減衰器は、従来の平面光波回路型光可変減衰器を2つ縦列接続するために、回路サイズが約2倍になってしまうという問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決するために、本発明は次のような構成をもって課題を解決するための手段としている。
すなわち、本発明の第1の態様は、基板と、該基板上に形成されたコアとクラッドとを有する光導波路層とを有し、前記コアにおいて、少なくとも1本の入力光導波路と、前記入力光導波路から入力された光の分岐を行う光分岐部と、少なくとも1本の出力光導波路と、前記出力光導波路の入力側に設けられた光結合部と、前記光結合部と前記光分岐部とを接続し且つ互いに間隔を介して並設される2本の接続光導波路とを有するマッハツェンダ光干渉計回路と、2本の前記接続光導波路の少なくとも一方に設けられて伝搬光の位相を可変可能に調整する位相調整手段と、前記光入力導波路と前記光出力導波路の少なくとも一方の光導波路の長手方向途中部に該光導波路と交わる方向で前記光導波路層に形成されたスリットと、前記スリット内の一部に入れられて前記コアの屈折率に近似した屈折率を持つ液状の屈折率整合剤と、前記光入力導波路と前記光出力導波路の少なくとも一方の前記光導波路における伝搬光の通り道を含む位置と該伝搬光の通り道から外れた位置とのいずれかに前記屈折率整合剤をスリット内で移動させる整合剤移動手段とを有する構成をもって課題を解決する手段としている。
【0021】
また、本発明の第2の態様は、上記第1の態様の構成に加え、2本の前記接続光導波路のそれぞれに設けられる前記位相調整手段は、2本の前記接続光導波路を伝搬する伝搬光の位相の偏波差の変化率を互いに異ならせて位相制御する位相制御手段である構成をもって課題を解決する手段としている。
【0022】
さらに、本発明の第3の態様は、上記第1または第2の態様の構成に加え、2本の前記接続光導波路のそれぞれに設けられる前記位相調整手段は、2本の前記接続光導波路の複屈折率の変化率を互いに異ならせる複屈折率調整手段である構成をもって課題を解決する手段としている。
【0023】
さらに、本発明の第4の態様は、上記第3の態様の構成に加え、2本の前記前記接続光導波路の少なくとも一方に設けられる前記位相調整手段の形成部位から間隔をおいて、前記位相調整手段による位相調整の際に前記接続光導波路に付与される応力を解放または増加させるための応力調整部を設けた構成をもって課題を解決する手段としている。
【0024】
また、本発明の第5の態様は、上記第4の態様の構成に加え、前記応力調整部は、前記位相調整手段による位相調整の際に前記接続光導波路に付与される前記応力を解放する自由空間であって、前記位相調整手段から間隔をおいて前記光導波路層に形成されている構成をもって課題を解決する手段としている。
【0025】
さらに、本発明の第6の態様は、上記第1乃至第4の態様のいずれか一つの構成に加え、2本の前記接続光導波路にはそれぞれ加熱手段を有する前記位相調整手段が設けられており、少なくとも一方の前記位相調整手段の形成部位から間隔をおいた領域には前記加熱手段により前記接続光導波路に加えられる熱の拡散を抑制する断熱手段が形成されている構成をもって課題を解決する手段としている。
【0026】
さらに、本発明の第7の態様は、上記第5の態様の構成に加え、前記位相調整手段の形成部位を挟む両側の前記光導波路層のうち前記接続光導波路から間隔をおいた領域には、前記光導波路層の一部を除去してなる光導波路除去部が前記自由空間として前記接続光導波路の長手方向に沿って形成されている構成をもって課題を解決する手段としている。
【0027】
さらに、本発明の第8の態様は、上記第7の態様の構成に加え、2本の前記接続光導波路にはそれぞれ前記位相調整手段が設けられており、一方の前記接続光導波路から第1の距離をおいて形成された前記光導波路除去部と、他方の前記接続光導波路から前記第1の距離とは異なる第2の距離をおいて形成された別の前記光除去部とを有した構成をもって課題を解決する手段としている。
【0028】
さらに、本発明の第9の態様は、上記第6の態様の構成に加え、前記断熱手段は、前記接続光導波路と間隔を介した領域で該接続光導波路の長手方向に沿って前記光導波路層が除去されてなる光導波路層除去部である構成をもって課題を解決する手段としている。
【0029】
さらに、本発明の第10の態様は、上記第7の態様の構成に加え、互いに並設された2本の前記接続光導波路のうちの一方が第1の接続光導波路、他方が第2の接続光導波路であり、前記第1の接続光導波路には前記位相調整手段である第1、第4の位相調整手段が長手方向に間隔をおいて順に形成され、前記第2の接続光導波路には前記位相調整手段である第3、第2の位相調整手段が長手方向に間隔をおいて順に形成され、前記第1の位相調整手段は前記第3の位相調整手段と同一構成であり、前記第2の位相調整手段は前記第4の位相調整手段が同一構成であり、前記第1の位相調整手段の側方には第1の距離をおいて第1の凹部が前記光導波路層除去部として形成され、前記第3の位相調整手段の側方には前記第1の距離と実質的に等しい第3の距離をおいて第3の凹部が前記光導波路層除去部として形成され、前記第2の位相調整手段の側方には前記第1の距離とは異なる第2の距離をおいて第2の凹部が前記光導波路層除去部として形成され、前記第4の位相調整手段の側方には前記第2の距離と実質的に等しい第4の距離をおいて第4の凹部が前記光導波路層除去部として形成されている構成をもって課題を解決する手段としている。
【0030】
さらに、本発明の第11の態様は、上記第7乃至第10の態様のいずれか一つの構成に加え、前記光導波路層除去部は、前記光導波路層の表面から前記基板の表面に至るまで除去されて形成されている構成をもって課題を解決する手段としている。
【0031】
さらに、本発明の第12の態様は、上記第11の態様の構成に加え、前記基板には、前記光導波路層除去部の下部に連続して基板除去部が形成されている構成をもって課題を解決する手段としている。
【0032】
さらに、本発明の第13の態様は、上記第12の態様の構成に加え、前記基板除去部は、前記光導波路層除去部の下部よりも幅が広い部分を有する凹状の断面形状を有する構成をもって課題を解決する手段としている。
【0033】
さらに、本発明の第14の態様は、上記第1乃至第13の態様のいずれか一つの構成に加え、前記整合剤移動手段は、前記スリットの少なくとも一部の周囲に設けられた薄膜ヒータを有する構成をもって課題を解決する手段としている。
【0034】
さらに、本発明の第15の態様は、上記第1乃至第14の態様のいずれか一つの構成に加え、前記位相調整手段は、前記接続光導波路上に設けられた薄膜ヒータを有する構成をもって課題を解決する手段としている。
【0035】
さらに、本発明の第16の態様は、上記第1乃至第15の態様のいずれか一つの構成に加え、前記光導波路層は石英系ガラスからなる構成をもって課題を解決する手段としている。
【0036】
さらに、本発明の第17の態様は、上記第1乃至第16の態様のいずれか一つの構成に加え、前記基板はシリコン基板である構成をもって課題を解決する手段としている。
【0037】
さらに、本発明の第18の態様は、上記第1乃至第17の態様のいずれか一つの構成に加え、前記スリットは、ガラス板により封止されている構成をもって課題を解決する手段としている。
【0038】
さらに、本発明の第19の態様は、上記第18の態様の構成に加え、前記ガラス板は、接着剤によって前記スリットの周りの前記光導波路層に接着されている構成をもって課題を解決する手段としている。
【0039】
さらに、本発明の第20の態様は、上記第18の態様の構成に加え、前記ガラス板は、低融点ガラスによって前記スリットの周りの前記光導波路層に接合されている構成をもって課題を解決する手段としている。
【0040】
さらに、本発明の第21の態様は、上記第18の態様の構成に加え、前記ガラス板と前記光導波路層の間には金属膜が介在し、前記金属膜を構成する金属の拡散によって前記ガラス板と前記光導波路層は接合されている構成をもって課題を解決する手段としている。
【0041】
さらに、本発明の第22の態様は、上記第21の態様の構成に加え、前記金属膜は、銅と銅合金のいずれかからなる構成をもって課題を解決する手段としている。
【0042】
さらに、本発明の第23の態様は、上記第1乃至第22の態様のいずれか一つの構成に加え、前記スリットには、前記屈折率整合剤と共に不活性ガスが封入されている構成をもって課題を解決する手段としている。
【発明の効果】
【0043】
上述したように本発明によれば、光導波路層のコアにより形成したマッハツェンダ光干渉計回路の出力又は入力光導波路の長手方向の途中部に交差するスリットの中に液状の屈折率整合剤を入れる。
【0044】
そして、その途中部を含む位置に屈折率整合剤を移動させた状態で、マッハツェンダ光干渉計回路の位相調整を行うことにより、例えば0〜10dBといった範囲内で高精度な光減衰量を得ることができる。これは、屈折率整合剤が、光導波路層のコアの屈折率と同一か近似した値の屈折率を有するからである。
【0045】
また、スリット内の屈折率整合剤を出力又は入力光導波路の伝搬光の通り道から待避させることにより、出力又は入力光導波路における光減衰量を例えば35dB以上と、非常に高くすることができる。
スリット内での整合剤の移動は小電力で可能であり、また、スリットは平面光導波回路型光可変減衰器に比べて小型化が可能なので、小型な装置で且つ小電力で大きな光減衰量を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1(a)は、本発明に係る平面光導波回路型光可変減衰器の第1実施形態例を示す要部構成図、図1(b)は、図1(a)のI−I線断面図、図1(c)は図1(a)のII−II線断面図である。
【図2】図2(a)〜図2(e)は、本発明に係る第1実施形態例の平面光導波回路型光可変減衰器の製造工程を図1のI−I線断面にて示す説明図である。
【図3】図3(a)〜図3(f)は、本発明に係る第1実施形態例の平面光導波回路型光可変減衰器の製造工程を図1(a)のII−II線断面にて示す説明図である。
【図4】図4(a)は、本発明に係る第1実施形態例の平面光導波回路型光可変減衰器を図1に示す状態と異なる動作状態を示す平面図、図4(b)は、図4(a)のII−II線から見た断面図である。
【図5】図5は、本発明に係る第1実施形態例の平面光導波回路型光可変減衰器において図1に示す状態における挿入損失およびPDLと第1の位相シフタへの電力投入量の関係を示すグラフである。
【図6】図6は、本発明に係る平面光導波回路型光可変減衰器の第2実施形態例を模式的な平面図により示す要部構成図である。
【図7】図7(a)は図6のIII−III線断面図、図7(b)は図6のIV−IV線断面図、図7(c)は図6のV−V線断面図である。
【図8】図8は、本発明に係る平面光導波回路型光可変減衰器の第3実施形態例の光シャッター部の屈折率整合剤の他の状態を示す断面図である。
【図9】図9(a)〜図9(h)は、本発明に係る第3実施形態例の平面光導波回路型光可変減衰器における光シャッター部の製造工程を示す断面図である。
【図10】図10(a)は、従来の平面光導波回路型光可変減衰器を示す要部説明図、図10(b)は、図10(a)のVI−VI線断面図である。
【図11】図11は、図10に示す従来の平面光導波回路型光可変減衰器における位相シフタへの電力投入量と挿入損失およびPDLとの関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0047】
1:コア(光導波路)
1a,1b:入力光導波路
1c,1d:出力光導波路
1e,1f:接続光導波路
2:クラッド
3:光導波路層
4:基板除去部
5:光導波路層除去部
7:基板
8a,8a’,8b,8b’:位相調整手段
9a,9a’,9b,9b’,16a,16b:薄膜ヒータ
11a,11b:整合剤移動手段
12:スリット
13:屈折率整合剤
14:気体
21a:光分岐部
21b:光結合部
30:マッハツェンダ光干渉計回路
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、本実施形態例の説明において、従来例と同一名称部分には同一符号を付し、その重複説明は省略または簡略化する。
【0049】
(第1の実施の形態)
第1実施形態例の平面光波回路型光可変減衰器は、図1(a)の平面図に示すように、コア1により形成されたマッハツェンダ光干渉計回路30と、位相調整手段8a,8a’と、光シャッター部50とを有して構成されている。
【0050】
本実施形態例において、マッハツェンダ光干渉計回路30の回路構成は、図10(a)に示した従来のマッハツェンダ光干渉計回路30とほぼ同様に構成されているが、本実施形態例では、マッハツェンダ光干渉計回路30の出力光導波路1dを出力光導波路1cよりも例えば2mm長く形成している。そして、出力光導波路1dの長手方向途中部に、出力光導波路1dと交わる方向にスリット12を形成し、このスリット12と、スリット12内に設けた屈折率整合剤13と、スリット12内で屈折率整合剤13を出力光導波路1dの伝搬光の通り道を含む位置と該伝搬光の通り道から待避する位置とに移動させる整合剤移動手段11a,11bとを有する光シャッター部50を設けている。
【0051】
屈折率整合剤13は、スリット12内の一部に設けられており、コア1の屈折率に近似した(ここでは、ほぼ等しい)屈折率を持つ液状のシリコン系オイルからなる。スリット12には屈折率整合剤13と共に、不活性ガスである窒素ガスからなる気体14が封入されている。また、整合剤移動手段11a,11bは薄膜ヒータ16a,16bにより形成されており、この薄膜ヒータ16a,16bがスリット12を取り囲むように略コの字型に形成されている。
【0052】
なお、図1(a)の図中、符号26,27は光入力部、28,29は光出力部をそれぞれ示す。本実施形態例において、前記マッハツェンダ光干渉計回路30の光分岐部21aと光結合部21aは互いに等しい長さに形成されており、光分岐部21aと光結合部21bの結合効率ηは、いずれも、波長1.55μmの光に対して50%になるように設定されている。
【0053】
また、接続光導波路1e,1fは互いに等しい長さに形成されており、接続光導波路1e,1fはそれぞれ長手方向に長さ5mmの直線部を有して、これらの直線部は250μm間隔で平行に配設されている。接続光導波路1e,1fの直線部には、それぞれ、図10(a)に示した従来例と同様に、薄膜ヒータ9a,9a’により形成された位相調整手段8a,8a’が形成されている。
【0054】
図1(b)には、図1(a)のI−I線断面図が示されており、図1(a)、(b)に示すように、位相調整手段8a,8a’の形成部位を挟む両側の光導波路層3には、接続光導波路1e,1fと間隔を介した領域で、接続光導波路1e,1fの長手方向に沿って光導波路層3の表面から基板7の表面に向かって厚み方向に除去されて、光導波路層除去部5が形成されている。この光導波路層除去部5は、光導波路層3が基板7の表面に至るまで除去されて形成されており、位相部接続光導波路1s,1tから間隔をおいて、位相部接続光導波路1s,1tと平行に形成されている。
【0055】
光導波路除去部5は、位相調整手段8a,8a’により位相調整を行った際に接続光導波路1e,1fに付与される応力を、解放する構成と成しており、接続光導波路1e,1fは、この応力解放の自由空間に間隔を介して接するように配置されている。
【0056】
なお、一般に、熱光学効果を用いた位相シフタでは、基板に垂直な方向は光導波路層の熱膨張による応力が十分に解放され、基板に水平な方向は光導波路層の熱膨張による応力が十分に解放されないため、異方性の内部応力が新たに発生し、この異方性の応力により光導波路層の複屈折率がさらに増大する。そのため、光導波回路内に存在する2つの偏波光であるTE偏波光とTM偏波光とで位相シフタ部における位相変化量が異なってしまい、接続光導波路1e,1fを伝搬してきた光の位相差によって決定される光減衰量の差、PDLが発生してしまう。
【0057】
そこで、本実施形態例では、上記応力を解放する光導波路除去部5を設けることにより、接続光導波路1e,1fの形成領域およびその近傍の光導波路層3の複屈折の増大を抑制している。
【0058】
また、光導波路層除去部5は、加熱手段である薄膜ヒータ9a,9a’により接続光導波路1e,1fに加えられる熱が位相調整手段8a,8a’の近傍領域よりも外側に伝わることを抑制する断熱手段としても機能する。この構成により、位相調整手段8a,8a’を形成する薄膜ヒータ9a,9a’の熱は、位相部接続光導波路1s,1tに効率的に伝わるように構成されている。なお、薄膜ヒータ9a,9a’には、例えば図10(a)に示した給電用配線23と同様の給電用配線(図示せず)が接続されている。
【0059】
図1(a)に示すように、前記スリット12の長辺は出力光導波路1dの光軸と45度の交差角θを成しており、幅30μm、長さ250μmに形成されている。なお、図1(a)では、出力光導波路1dにおいて、スリット12に伝搬光を入力する側に形成されている領域を1y、スリット12から伝搬光を出力する側に形成されている領域を1zで示している。図1(c)には、図1(a)のII−II断面図が示されており、スリット12は光導波路層3の表面から基板7の表面にかけて、深さ40μmに形成されている。
【0060】
また、スリット12はホウ珪酸ガラスの板からなる蓋15により封止されており、蓋15は接着剤(図示せず)により上部クラッド層2上に接着されている。図1(a)に示すように、前記整合剤移動手段11a,11bを形成する薄膜ヒータ16a,16bは、スリット12近傍の上部クラッド層2上に形成され、スリット12の長手方向両端部付近に、スリット12を取り囲むようにコ字形状に形成されている。スリット12と出力光導波路1dは、薄膜ヒータ16a寄りの交差部24で交差している。薄膜ヒータ16a,16bには、図示されていない給電用配線が接続されている。
【0061】
次に、本実施形態例による光可変減衰器の製造方法について、図面を用いて説明する。
図2および図3は、本実施形態例の平面光導波路型光可変減衰器の製造方法を説明する説明図である。なお、図2は、平面光導波回路型光可変減衰器の製造工程ごとの状態を、図1(a)におけるI−I線から見た断面図により示しており、図3は、平面光導波回路型光可変減衰器の製造工程ごとの状態を、図1(a)におけるII−II線から見た断面図により示している。
【0062】
まず、図2(a)、図3(a)に示すように、シリコン基板7上に火炎加水分解堆積法(FHD法)を用いて膜厚20μmの下部クラッド層2a及び膜厚6μmのコア1の層を成膜する。この際、コア1の層の屈折率が下部クラッド層2aの屈折率より0.8%高くなるように、コア1の層にGeO2を添加する。
【0063】
次に、図2(b)、図3(b)に示すように、フォトリソグラフィーとドライエッチングにより、幅6.5μmのコア1の光導波回路をパターニング形成する。コア1の光導波回路は、図1(a)に示すように形成する。
【0064】
なお、図2(b)は図1(a)のI−I線による切断面で示されているので、コア1は接続光導波路1e,1fの直線部の位相部接続光導波路1s,1tの断面が示されており、図3(b)は図1(a)のII−II線による断面で示されているので、コア1は交差部24に相当する部分における出力光導波路1dの断面が示されている。
【0065】
次に、図2(c)、図3(c)に示すように、FHD法を用いて膜厚20μmの上部クラッド層2bを形成し、コア1の光導波回路をクラッド2内に埋め込んで光導波路層3を形成する。
【0066】
次に、図2(d)、図3(d)及び図1(a)に示すように、スパッタ法とリフトオフ法を用いて、接続光導波路1e,1fのそれぞれの直線部(位相部接続光導波路1s,1t)に対応する光導波路層3の上面と、スリット12の長手方向両端部をコの字型に取り囲む形状に相当する部分に、Ta製の薄膜ヒータ9a,9a’,16a,16bを設ける。
【0067】
薄膜ヒータ9a,9a’は長さ5mm、幅10μm、膜厚1.0μmに形成され、薄膜ヒータ16a,16bは、スリット12の長辺方向の長さが140μm、短辺方向の長さが110μm、幅20μm、膜厚1.0μmに形成される。
【0068】
次に、上記薄膜ヒータ9a,9a’,16a,16bの作製方法と同様の方法で、Ti/Ni/Auの3層から成る給電用配線(図示せず)を形成する。つぎに、薄膜ヒータと給電用配線を保護し、絶縁するためのSiO2からなる絶縁膜(図示せず)をスパッタ法により基板表面全体に形成する。
【0069】
次に、図2(e)及び図1(a)、(b)に示すように、位相調整手段8a,8a’を形成する薄膜ヒータ9a,9a’の形成部位を挟む両側の光導波路層3に光導波路層除去部5を形成する。この光導波路層除去部5は、接続光導波路1e,1fの直線部の長手方向に沿って平行に間隔を介した領域を光導波路層3表面から基板7表面に至るまでドライエッチングにより除去して形成する。光導波路層除去部5の寸法は、例えば長さ5mm、幅100μmとする。
【0070】
この光導波路層除去部5の形成により、接続光導波路1e,1fの直線部を含む光導波路層3(3a,3b)の幅Waを20μmとなるようにする。また、同時に、図3の(e)及び図1(a)、(c)に示すように、スリット12に相当する領域の光導波路層も同様に除去し、スリット12と成す。スリット12は幅30μm、長さ250μmとし、薄膜ヒータ16a寄りのスリット端から50μmの位置にて出力光導波路1dと交差するようにし、交差部24と成す。
【0071】
次に、図3(f)及び図1(a)、(c)に示すように,スリット12に屈折率整合剤13を注入する。この屈折率整合剤13は例えばスリット12の第3の薄膜ヒータ16a側が約半分満たされる量だけ注入し、交差部24が屈折率整合剤13で満たされる状態とする。その後、気体14である窒素ガス雰囲気中でスリット12上に蓋15を接着剤にて貼り付けて封止し、光シャッター部50と成す。
【0072】
次に、第1実施形態例の光可変減衰器の駆動方法について説明する。まず、一方の入力光導波路1aの光入力部26から信号光を入射し、光分岐部21aで分岐した後、接続光導波路1e,1fを伝搬させ、光結合部21bで結合させて出力光導波路1dに伝搬させると、この伝搬光は、出力光導波路1dの途中部に設けられたスリット12を通って光出力端29側へと伝搬する。
【0073】
このとき、図1(a)に示すように、スリット12内の屈折率整合剤13が出力光導波路1dの伝搬光の通り道を含む位置にある状態においては、交差部24は、コア1と屈折率がほぼ等しい屈折率整合剤13にて満たされているため、交差部24を通過する際の信号光の損失は非常に小さく、例えば約0.2dBである。つまり、出力光導波路1dにおいて、スリット12の領域1y側からスリット12の交差部24に入射した信号光はスリット壁面にてほとんど反射されることなく、領域1z側へと伝搬する。屈折率整合剤13の屈折率は、例えば上部クラッド層2の屈折率より高くなっている。
【0074】
したがって、この場合は、光シャッター部50側の光減衰量は殆ど無く、マッハツェンダ光干渉計回路30に形成された位相調整手段8a,8a’による位相調整によって、0〜10dB程度の範囲において任意の光減衰量を得ることができる。つまり、例えば薄膜ヒータ9aに通電・加熱することにより、発熱による熱光学効果によって位相部接続光導波路1sの実効光導波路長を変化させて位相部接続光導波路1sを伝搬する光の位相を変化させることで、マッハツェンダ光干渉計回路30の光透過率を変化させることにより、従来の光可変減衰器とほぼ同様に、0〜10dB程度の範囲において任意の光減衰量を得ることができる。
【0075】
なお、図1(a)、(b)に示した状態においては、光シャッター部50の薄膜ヒータ16a,16bは共に無給電であるが、スリット12中の屈折率整合剤13は交差部24に保持されている。これは、狭いスリット12中に気体と液体が封入された状態においては、液体は表面張力のためスリット12の片端に保持される性質があるためである。
【0076】
一方、薄膜ヒータ16aに給電して加熱すると、スリット12の薄膜ヒータ16a側における屈折率整合剤13の表面張力が低下するため、スリット12の長手方向に沿ってスリット12の屈折率整合剤13の表面張力に勾配が発生する。狭いスリット12中の液体は表面張力の高い方向へ、気体14は表面張力の低い方向へと移動する性質があるため、このような表面張力の勾配が発生すると、液状の屈折率整合剤13は加熱されていない薄膜ヒータ16b側、つまり、出力光導波路1dの伝搬光の通り道から待避する位置に移動する。そして、交差部24は気体14で満たされる。
【0077】
また、上記のようにして屈折率整合剤13が完全に薄膜ヒータ16b側に移動した後、薄膜ヒータ16aへの給電を中止すると、発生していた表面張力の勾配は喪失するが、前述した通り、スリット12中の屈折率整合剤13は毛細管力によって薄膜ヒータ16b側のスリット12端に保持される。この時の状態を、図4(a)の平面図と図4(b)の断面図に示す。なお、図4(b)は図4(a)の光シャッター部50のII−II線断面図である。
【0078】
図4(a)、(b)の状態、すなわち交差部24が気体14で満たされた状態においては、出力光導波路1dの領域1y側からスリット12の交差部24に入射した信号光はスリット壁面にて全反射され、領域1z側へはほとんど伝搬することなく、クラッド2へ放射される。この場合、出力光導波路1dの領域1y側から交差部24を通過して領域1z側へと伝搬する信号光の損失は、約35dB以上と非常に大きい。
【0079】
したがって、第1実施形態例の光可変減衰器は、マッハツェンダ光干渉計回路30の位相調整手段8a,8a’を駆動することなく、かつ、光シャッター部50の薄膜ヒータ16a,16bにも給電することなく、全くの無給電状態で約35dB以上という大きな光減衰量が得られることになる。
【0080】
また、マッハツェンダ光干渉計回路30の位相調整手段8a,8a’を駆動することにより、例えばマッハツェンダ光干渉計回路30における光減衰量を20dBに設定すれば、光可変減衰器の光減衰量として約55dB以上という非常に大きな光減衰量を得ることができる。
【0081】
以下に、実際に作製した光可変減衰器を用いて光減衰特性を測定した結果を示す。この測定にあたっては、波長1.55μmのレーザダイオードからの光を入力光導波路1aの光入力部26から入射し、出力光導波路1dの光出力部29から出射された光の挿入損失を測定した。測定はTE偏波光とTM偏波光の両方を用いてそれぞれ独立に行った。
【0082】
まず、図1の状態、即ち交差部24が屈折率整合剤13によって満たされている状態において、無給電状態での挿入損失を測定したところ、TE偏波の挿入損失は1.21dB、TM偏波の挿入損失は1.22dBであった。これは従来の光可変減衰器における挿入損失に比べて0.2dB程度高い値であり、スリット12による損失増加であるとわかる。
【0083】
次に、位相調整手段8aにのみ電力を供給し、電力供給量を0〜80mWの範囲で変化させた。この時の電力供給量と挿入損失の関係を図5の特性線aに示し、電力供給量に対するTE偏波光とTM偏波光の挿入損失の差(PDL)の関係を図5の特性線bに示す。
【0084】
図5の特性線aに示すように、電力供給量の増加に応じて挿入損失が増加しており、約72mWにおいて最大の挿入損失25.0dBが得られている。このとき、電力投入量が0mWの状態である初期状態における挿入損失との差である光減衰量は最大約23.8dBであることがわかる。また、初期状態から約10dBの光減衰量、即ち約11.2dBの挿入損失が得られている電力供給量が約58mWまでの範囲の範囲において、図5の特性線bに示すように、PDLは約0.5dB以下と良好なPDL特性が得られている。
【0085】
次に、位相調整手段8aへの電力供給を中止し、薄膜ヒータ16aに給電加熱して、図4(a)、(b)に示したように、屈折率整合剤13を薄膜ヒータ16b側に移動させ、交差部24を気体14で満たした後、薄膜ヒータ16aへの給電を中止した。
【0086】
薄膜ヒータ16aへの給電中止後、全くの無給電状態となった後も、屈折率整合剤13は毛細管力によって第4の薄膜ヒータ16b側のスリット端に保持されていた。そして、このときの挿入損失を測定したところ、41.5dBであった。このとき、初期状態における挿入損失との差である光減衰量は40dB以上の高い値が得られていることがわかる。
【0087】
さらに、交差部24が気体14で満たされた状態のまま、位相調整手段8aにのみ約72mWの電力を供給し、挿入損失を測定したところ、65.3dBが得られた。このとき、初期状態における挿入損失との差である光減衰量は約60dB以上と非常に高い値が得られていることがわかる。
【0088】
第1実施形態例によれば、以上のように、接続光導波路1e,1f近傍に光導波路層除去部5を形成したマッハツェンダ光干渉計回路30と、接続光導波路1e,1fに形成した位相調整手段8a,8a’と、光シャッター部50とを適宜機能させることによって、0〜10dB程度の光減衰量範囲において、任意の光減衰量が、TE偏波光とTM偏波光の挿入損失差の小さい状態で高精度に得られ、かつ、給電状態で60dB以上、無給電状態で40dB以上といった大きな光減衰量が得られる光可変減衰器を実現できる。
【0089】
(第2の実施の形態)
次に、本発明に係る平面光導波回路型光可変減衰器光可変減衰器の第2実施形態例について説明する。第2実施形態例は、図6に示す平面構成を有している。また、図7(a)には、図6のIII−III線断面図を示し、図7(b)には、図6のIV−IV線断面図を示し、図7(c)には、図6のV−V線断面図を示す。
【0090】
図6に示すように、第2実施形態例において、光分岐部21aと光結合部21bは分岐比が1対1であるY分岐器により形成されている。なお、分岐比が1対1であるY分岐器は2×2方向性結合器に比べて分岐比の波長依存性が小さい特性を有する。
【0091】
また、第2実施形態例では、互いに並設された接続光導波路1e,1fの一方が第1の接続光導波路1eと成して他方が第2の接続光導波路1fと成しており、これら第1と第2の接続光導波路1e,1fにはそれぞれ長手方向に間隔を介して2つずつ位相調整手段8a,8b’,8a’,8bが形成されている。第1の接続光導波路1eの入力側寄りには第1の位相調整手段8aが形成されて出力側寄りには第4の位相調整手段8b’が形成され、第2の接続光導波路1fの入力側寄りには第3の位相調整手段8a’が形成されて出力側寄りには第2の位相調整手段8bが形成されている。
【0092】
第1の位相調整手段8a、第3の位相調整手段8a’、第2の位相調整手段8b、第4の位相調整手段8b’は全て同一構成と成し、これらの位相調整手段8a,8a’,8b,8b’は第1実施形態例に設けられた位相調整手段8a,8a’と同様に構成され、薄膜ヒータ9a,9b’,9a’,9bを有している。
【0093】
第1の位相調整手段8aと該第1の位相調整手段8aに幅方向で隣り合う光導波路層除去部5(5a)との距離と、第3の位相調整手段8a’と該第3の位相調整手段8a’に幅方向で隣り合う光導波路層除去部5(5a)との距離とは互いに等しい第1設定距離D1に形成されている。つまり、図7(a)に示す光導波路層3a,3bの幅は互いに等しく形成されている。
【0094】
また、第2の位相調整手段8bと該第2の位相調整手段8bに幅方向で隣り合う光導波路層除去部5(5b)との距離と第4の位相調整手段8b’と該第4の位相調整手段8b’に幅方向で隣り合う光導波路層除去部5(5b)との距離とは互いに等しい第2設定距離D2に形成されており、該第2設定距離D2と前記第1設定距離D1は互いに異なる距離に形成されている。つまり、図7(b)に示す光導波路層3a’,3b’の幅は互いに等しく形成されており、これらの幅は図7(a)に示した光導波路層3a,3bの幅と異なっている。
【0095】
このように、光導波路層3a,3bの幅を異ならせることにより、位相調整手段8a,8bにより位相調整を行った際に、接続光導波路1e,1fに付与される応力の解放量が異なるようにしている。これにより、応力により発生する接続光導波路1e,1fの複屈折率が異なり、また、複屈折率により決まる伝搬光の位相の偏波差(TE偏波光の位相とTM偏波光の位相との差)の変化率が異なるようになる。
【0096】
また、図7(a)、(b)に示すように、第2実施形態例において、光導波路層除去部5の下部に対向する基板7の表面部位には基板7の上層の一部を除去した基板除去部4が形成されており、この基板除去部4は、光導波路層除去部5の下部を該光導波路層除去部5の対向面間隔よりも広げる方向に切り込んだ断面矩形状の凹部と成している。この凹部は、光導波路層除去部5の下部の幅50μmより20μm広い70μmの幅を有し、深さが10μm、長さが5mmである。
【0097】
基板除去部4の形成は、例えば光導波路層除去部5の形成後に光導波回路型光可変減衰器チップをKOH水溶液に浸し、KOHのシリコン基板に対する異方性エッチングを利用してシリコン基板7をエッチングすることにより行われている。基板除去部4は図7(c)に示すようにスリット12側にも形成されている。
【0098】
さらに、第2実施形態例において、スリット12内には、その一部に屈折率整合剤13が入れられ、さらに不活性ガスであるアルゴンガスの気体14が封入されており、蓋15の接着(接合)は低融点ガラスを用いたガラスシールにより行われている。アルゴンガスの適用と、低融点ガラスを用いた蓋15のガラスシールの適用により、薄膜ヒータ16a,16bによる加熱によって屈折率整合剤13をより信頼性良く移動可能となり、シャッター部50の信頼性をより高めることができる。
【0099】
第2実施形態例の上記以外の構成は、第1実施形態例と同様であり、また、製造方法も第1実施形態例と同様である。
【0100】
前記の如く、熱光学効果を用いた位相シフタでは、一般に、基板に垂直な方向は光導波路層の熱膨張による応力が十分に解放され、基板に水平な方向は光導波路層の熱膨張による応力が十分に解放されないため、異方性の内部応力が新たに発生し、この異方性の応力により複屈折率がさらに増大し、第1の接続光導波路1eを伝搬してきた光と第2の接続光導波路1fを伝搬してきた光との間のTM偏波光における位相差とTE偏波光における位相差との差によって決定される光減衰量の差、PDLが発生してしまう。
【0101】
第2実施形態例では、第1の位相調整手段8aと該第1の位相調整手段8aに隣り合う光導波路層除去部5(5a)との距離を第1設定距離D1に形成し、第2の位相調整手段8bと該第2の位相調整手段8bに隣り合う光導波路層除去部5(5b)との距離を前記第1の設定距離と異なる第2設定距離D2に形成することで、以下の効果を奏することができる。
【0102】
つまり、第2実施形態例では、第1の位相調整手段8aが形成された部分の接続光導波路1eと第2の位相調整手段8bが形成された部分の接続光導波路1fにおける加熱時の応力の異方性を互いに異なるようにすることができるので、位相調整量に対する複屈折率の変化率を第1の位相調整手段8aが形成された部分の第1の接続光導波路1eと第2の位相調整手段8bが形成された部分の第2の接続光導波路1fとで異なるようにできる。
【0103】
そこで、第2実施形態例において、第1の位相調整手段8a(第1の位相シフタ)と第2の位相調整手段8b(第2の位相シフタ)を同時に駆動し、第1の位相調整手段8aが形成された部分の第1の接続光導波路1eと、第2の位相調整手段8bが形成された部分の第2の接続光導波路1fにおいて発生する複屈折率が等しくなるように電力を制御することによって、第1の接続光導波路1eと第2の接続光導波路1fを伝搬してきた光の位相差がTE偏波光とTM偏波光で等しくなるようにすることができる。すなわち、原理的にPDLをゼロにすることができる。
【0104】
なお、上記構成によるPDLの低減効果については、特願2003−111370に詳しく述べられている。
【0105】
第2実施形態例による平面光導波回路型光可変減衰器において、交差部24が屈折率整合剤13によって満たされている状態において、無給電状態での挿入損失を測定したところ、TE偏波の挿入損失は1.3dB、TM偏波の挿入損失は1.32dBであった。
【0106】
次に、交差部24が屈折率整合剤13によって満たされている状態において、第2実施形態例の光減衰量が、5、10、15、20dBの各設定光減衰量となるように第1の位相シフタと第2の位相シフタに電力供給し(第1と第2の位相調整手段8a,8bに電力供給し)、このときの設定光減衰量に対する実際に測定された挿入損失とPDLの関係を求めた。この結果を表1に示す。
【0107】
【表1】
【0108】
表1から明らかなように、約20dBの光減衰量までの範囲においてPDLが±0.11dB以下と小さく抑えられていることがわかる。
【0109】
次に、第1と第2の位相調整手段8a,8bへの電力供給を中止し、薄膜ヒータ16aに給電加熱して、屈折率整合剤13を薄膜ヒータ16b側に移動させ、交差部24が気体14で満たされた後、薄膜ヒータ16aへの給電を中止した。なお、第1実施形態例と同様に、薄膜ヒータ16aへの給電中止により全くの無給電状態となった後も、屈折率整合剤13は毛細管力によって薄膜ヒータ16b側のスリット12端に保持されていた。
【0110】
このときの挿入損失を測定したところ、37.7dBであった。つまり、このとき、初期状態における挿入損失との差である光減衰量は、36dB以上の高い値となっていることがわかる。
【0111】
さらに、交差部24が気体14で満たされた状態のまま、第1および第2の位相調整手段8(8a,8b)にそれぞれ79.30mW、44.10mWの電力を供給し、挿入損失を測定したところ、57.7dBだった。つまり、このとき、初期状態における挿入損失との差である光減衰量は、約56dB以上と非常に高い値となった。また、このときのPDLは0.5dBと低かった。
【0112】
以上のように、第2実施形態例によれば、0〜20dB程度の光減衰量範囲において任意の光減衰量が高精度、かつ、低PDLで得られ、かつ、給電状態で56dBb以上、無給電状態で36dB以上といった大きな光減衰量が得られる光可変減衰器を実現できる。
【0113】
(第3の実施の形態)
次に、本発明に係る平面光導波回路型光可変減衰器の第3実施形態例について説明する。第3実施形態例の構成は、上記第2実施形態例とほぼ同様であり、図8に、第3実施形態例における光シャッター部50の断面構成が示されている。この図8は、図6のV−V線断面に相当する。第3実施形態例が上記第2実施形態例と異なる第1の点は、光シャッター部50の蓋15の接合が銅薄膜の拡散接合によって行われていることである。第3実施形態例が上記第2実施形態例と異なる第2の点は、スリット12と連結された液体注入溝43を有し、蓋15の接合後に液体注入溝43を通じて屈折率整合剤13を注入した点である。
【0114】
第3実施形態例では、光導波路層3および薄膜ヒータ16a,16b上に形成された絶縁膜42上の蓋15との接合面に、銅製の金属薄膜41aを形成し、この金属薄膜41aと、蓋15の接合面に形成された銅製の金属薄膜41bとの間で拡散接合を行い、蓋15を接合している。金属薄膜の拡散接合では金属原子の拡散による接合が行われるため、より強固な接合を行うことができ、また、固相反応で接合することから、接合時の位置ずれ等の問題が無く、より高精度に蓋15の封止を行うことができる。
【0115】
また、金属薄膜41a,41bとして銅を用いることで、光導波路やヒータ、給電配線等の特性に悪影響を与えない程度の温度範囲(例えば250℃〜600℃程度)で拡散接合が可能となり、かつ、使用時の接合部温度範囲(例えば0℃〜100℃程度)で再結晶等が起こらず、高い長期信頼性を得ることができる。
【0116】
図9は、第3実施形態例の平面光導波回路型光可変減衰器の製造工程を断面図により示す図であり、この断面は、図6のV−V線断面に相当する。第3実施形態例においても、図9の(a)〜(d)に示すように、薄膜ヒータ16a,16bの形成および給電用配線(図示せず)の形成までは、第1および第2実施形態例と同様に行う。
【0117】
次に、図9の(e)に示すように、スパッタ法を用いてSiO2からなる絶縁膜42を形成し、絶縁膜42上の蓋15との接合面に銅製の金属薄膜41aをスパッタ法とリフトオフ法によって形成する。金属薄膜41aの膜厚は3μmとする。この際、金属薄膜41aと絶縁膜42との密着性を向上させるため、金属薄膜41aと絶縁膜42との間に、膜厚0.1μmのクロム膜(図示せず)を形成している。
【0118】
次に、図9の(f)に示すように、スリット12に相当する領域の光導波路層3を除去し、スリット12と成す。次に、図9の(g)に示すように、絶縁膜42上に形成した金属薄膜41aと同様の金属薄膜41bを形成し、蓋15に液体注入溝43を形成する。蓋15を用いてスリット12に蓋をし、10kgf/mm程度の圧力で蓋15を押さえながら、不活性ガス雰囲気中または真空中において500℃で2時間程度保持し、金属薄膜41aと金属薄膜41bを拡散接合させる。
【0119】
この際、薄膜ヒータ16a,16b、給電用配線(図示せず)、コア1(1d)等の影響により、絶縁膜42の表面にできる凹凸は、拡散接合時の金属薄膜の変形によって平坦化され、金属薄膜41a,41bの形成部分全体が接合される。最後に、アルゴン雰囲気中で図9の(g)に示す液体注入溝43を通じて、図9の(h)に示すようにスリット12の半分程度が満たされる量の屈折率整合剤13を注入し、接着剤44にて液体注入溝43を封止する。
【0120】
第3実施形態例の平面光導波回路型光可変減衰器において、光学特性の測定を行ったところ、第2実施形態例と同様に、0〜20dB程度の光減衰量が0.2dB以下の低PDLで高精度に得られ、また、給電状態で56dB以上、無給電状態で36dB以上の大きな光減衰量が得られた。
【0121】
以上のように、第3実施形態例によれば、0〜20dB程度の光減衰量が高精度で得られ、かつ、0.2dB以下の低PDLが得られ、また、給電状態で55dB以上、無給電状態で35dB以上の大きな光減衰量が得られる光可変減衰器が高い信頼性で得られる。
【0122】
(その他の実施の形態)
本発明は、上記各実施形態例に限定されることはなく様々な実施の態様を採り得る。例えば、上記各実施形態例では、石英系光導波回路としたが、本発明の平面光導波回路型光可変減衰器は、ポリマーや半導体など種々の材料を用いた光導波路により形成されるものであり、光導波回路を形成する材料は、必要な光損失値、信頼性、コスト等を鑑みて適宜選択されるものであり、光導波回路の寸法も適宜設定されるものである。
【0123】
また、上記各実施形態例では、本発明においては,基板7としてシリコン基板を用いたが、基板7は、石英ガラス、結晶化ガラスなどのガラス材料や、炭化珪素、窒化珪素、アルミナ等のセラミックスなど種々の基板材料を用いることができ、放熱性、光導波路層3へ及ぼす応力などの観点から適宜選択すればよい。
【0124】
また、上記各実施形態例では、薄膜ヒータ9a,9a’,16a,16bをTa膜により形成したが、薄膜ヒータ9a,9a’,16a,16bを形成する材料は特に限定されるものでなく、適宜設定されるものであり、Ni、Cr、TaNx(Xは0〜1.0)、Au、Pt、Wや、これらの合金など種々の薄膜ヒータ材料を用いることができる。つまり、薄膜ヒータの形成材料は、必要な抵抗値、信頼性等を鑑みて適宜選択すればよい。
【0125】
さらに、上記各実施形態例においては、屈折率整合剤13としてシリコン系オイルを用いたが、屈折率整合剤13はコア1の屈折率に近似した屈折率をもつ液状の屈折率整合剤であればよく、その材料は適宜設定されるものである。
【0126】
さらに、上記各実施形態例では、スリット12の封止にガラス製の蓋15を用いたが、蓋15は、石英ガラス、結晶化ガラスなどのガラス材料や、炭化珪素、窒化珪素、アルミナ等のセラミックス、シリコンなどの単結晶材料、樹脂材料、金属材料など種々の材料のものを適用することができるものであり、蓋15の形成材料は、導波路膜との接合強度や基板7との熱膨張率差、求められる信頼性等を鑑みて適宜選択すればよい。
【0127】
さらに、上記各実施形態例では、蓋15を接着剤や低融点ガラスシールによって接着したが、蓋15の基板7への接合方法は、陽極接合、拡散接合、熱圧着、半田付け等、種々の接合方法を適用することができ、蓋15の材料、導波路膜との接合強度、求められる信頼性等を鑑みて適宜選択すればよい。
【0128】
さらに、上記各実施形態例においては、気体14として窒素ガス又はアルゴンガスを用いたが、気体14はこれらのガスに限定されることはなく、不活性ガス等の特性の安定したガス材料であれば種々のガス材料を用いることができ、求められる信頼性、コスト等を鑑みて適宜選択すればよい。
【0129】
さらに、上記各実施形態例では、位相調整手段8a,8a’,8b,8b’の近傍に、光導波路除去部5や基板除去部4を形成し、接続光導波路1e,1fの位相調整手段形成領域の付与されている応力を解放する構成としたが、その逆に、位相調整手段の形成部位の光導波路に付与されている応力をさらに増加(付与)させる応力付与手段としてもよい。
【0130】
さらに、上記各実施形態例では、金属薄膜として銅を用いたが、接合可能温度、光導波路層やヒータ等の耐熱温度、使用温度等を考慮して、適宜材料を選択することができる。
【0131】
さらに、例えばPDLの抑制目標値が小さい場合等は、位相調整手段の形成部位の光導波路に付与されている応力を解放したり増加したりする手段を省略することもできる。この場合も、マッハツェンダ光干渉計回路30に形成した位相調整手段により例えば1〜10dBといった範囲で高精度に光減衰量を可変でき、かつ、光シャッター部50側の動作によって、35dB以上といった大きな光減衰量を得ることができる。
【0132】
さらに、第1〜第4の位相調整手段8a,8b,8a’,8b’の形成位置は、第2実施形態例における形成位置に限定されることはなく、第1、第4の位相調整手段8a,8b’が第1の接続光導波路1eに、第2、第3の位相調整手段8b,8a’が第2の接続光導波路1fに形成されていればよい。
【0133】
さらに、上記各実施形態例では、2本の接続光導波路1e,1fにそれぞれ位相調整手段を設けたが、位相調整手段は1本の接続光導波路にのみ設けてもよい。また、位相調整手段の配設数も、1つずつあるいは2つずつとするとは限らず、適宜設定されるものである。
【0134】
さらに、上記実施形態例では、光出力導波路と交差するようにスリット12を形成したが、スリット12は、光入力導波路と交差するように形成することもできる。
【0135】
上述したように本発明によれば、光導波路層のコアにより形成したマッハツェンダ光干渉計回路の位相調整を行うことにより、例えば0〜10dBといった範囲内で高精度な光減衰量を得ることができ、かつ、マッハツェンダ光干渉計回路の1本の出力光導波路の長手方向途中部交差させたスリット内の一部にコアの屈折率に近似した屈折率を持つ液状の屈折率整合剤を設けて、この屈折率整合剤を必要に応じてスリット内で出力光導波路の伝搬光の通り道から待避する位置に移動させることにより、例えば35dB以上の非常に高い光減衰量の状態とすることができる。
【0136】
また、本発明において、2本の接続光導波路にはそれぞれ位相調整手段が設けられており、これらの位相調整手段により位相調整を行った際の、接続光導波路を伝搬する伝搬光の位相の偏波差の変化率を互いに異なるようにした構成によれば、それぞれの接続光導波路を伝搬してきた伝搬光の位相の偏波差が互いに等しくなるように2つの位相調整手段を制御することにより、より高い光減衰量まで低PDLで高精度に制御することができる。
【0137】
さらに、本発明において、2本の接続光導波路にはそれぞれ位相調整手段が設けられており、これらの位相調整手段により位相調整を行った際の、接続光導波路の複屈折率の変化率を互いに異なるようにした構成によれば、それぞれの接続光導波路を伝搬してきた伝搬光の位相の偏波差が互いに等しくなるような複屈折率となるように2つの位相調整手段を制御することによって、より高い光減衰量まで低PDLで高精度に制御することができる。
【0138】
さらに、本発明において、少なくとも一方の接続光導波路の位相調整手段の形成部位近傍に、位相調整手段により位相調整を行った際に接続光導波路に付与される応力を解放または増加させる構成を設けて、位相調整手段により位相調整を行った際の接続光導波路の複屈折率の変化率を互いに異なるようにした構成によれば、上記応力を解放または増加させる構成によって、容易に接続光導波路の複屈折率の変化率を設定することができる。
【0139】
さらに、本発明において、少なくとも一方の接続光導波路の位相調整手段の形成部位は位相調整手段により位相調整を行った際に接続光導波路に付与される応力が解放される自由空間と間隔を介して接するように配置されている構成によれば、2つの位相調整手段によって位相調整を行った際の位相調整量に対する複屈折率の変化率を、応力解放によって互いに異なる値にすることができる。
【0140】
さらに、本発明において、2本の接続光導波路にはそれぞれ加熱手段により形成された位相調整手段が設けられており、少なくとも一方の位相調整手段の形成部位の近傍には加熱手段により接続光導波路に加えられる熱が位相調整手段の近傍領域よりも外側に伝わることを抑制する断熱手段が形成されている構成によれば、接続光導波路の位相調整手段形成領域を効率的に加熱することができ、消費電力の低減を図ることができる。
【0141】
さらに、本発明において、位相調整手段の形成部位を挟む両側の光導波路層は、接続光導波路と間隔を介した領域が該接続光導波路の長手方向に沿って光導波路層表面から基板表面に向かって除去されており、該光導波路層除去部が自由空間の応力解放の手段と成している構成によれば、光導波路層除去部により容易に、かつ、的確に自由空間の応力解放の手段を形成できる。
【0142】
さらに、本発明において、2本の接続光導波路にはそれぞれ位相調整手段が設けられており、一方の位相調整手段と該位相調整手段に隣り合う光導波路層除去部との距離と、他方の位相調整手段と該位相調整手段に隣り合う光導波路層除去部との距離とを互いに異なるように形成した構成によれば、一方の位相調整手段と他方の位相調整手段によりそれぞれ位相調整を行ったときの接続光導波路の複屈折の変化率の違いを的確に形成することができる。
【0143】
さらに、本発明において、位相調整手段の形成部位を挟む両側の光導波路層は、接続光導波路と間隔を介した領域が該接続光導波路の長手方向に沿って光導波路層表面から基板表面に向かって除去されており、該光導波路層除去部が断熱手段と成している構成によれば、光導波路除去部によって容易に、かつ、的確に断熱手段を形成でき、位相調整手段の形成領域を効率的に加熱することができる。
【0144】
さらに、互いに並設された接続光導波路の一方を第1の接続光導波路と成して他方を第2の接続光導波路と成し、これら第1と第2の接続光導波路にはそれぞれ長手方向に間隔を介して2つずつ位相調整手段を形成し、これらの位相調整手段と光導波路除去部との距離を第1、第2の設定距離に設定した構成によれば、第1と第2の設定距離を適宜設定することにより、伝搬光の光減衰量の偏波依存性をほぼ解消することができ、かつ、消費電力の低減を図ることができる。
【0145】
さらに、本発明において、光導波路層除去部は、光導波路層が光導波路層表面から基板表面に至るまで除去されて形成されている構成によれば、接続光導波路の位相調整手段形成領域の応力解放および断熱を効果的に行うことができる。
【0146】
さらに、本発明において、光導波路層除去部の下部に対向する基板表面部位に基板を除去した基板除去部が形成されている構成によれば、接続光導波路の位相調整手段形成領域の応力解放および断熱をより一層効果的に行うことができる。
【0147】
さらに、本発明において、基板除去部は、光導波路層除去部の下部を該光導波路層除去部の対向面間隔よりも広げる方向に切り込んだ断面矩形状の凹部とした構成によれば、接続光導波路の位相調整手段形成領域の応力解放および断熱をさらにより一層効果的に行うことができる。
【0148】
さらに、本発明において、整合剤移動手段はスリット近傍に設けられた薄膜ヒータとした構成によれば、容易に整合剤移動手段を形成でき、的確に屈折率整合剤の移動を行うことができる。
【0149】
さらに、本発明において、位相調整手段は接続光導波路上に設けられた薄膜ヒータとした構成によれば、容易に位相調整手段を形成でき、熱光学効果により容易に接続光導波路を伝搬する光の位相を変化させることができる。
【0150】
さらに、本発明において、光導波路層は石英系ガラスにより形成されている構成によれば、挿入損失が低く、信頼性の高い平面光導波回路型光可変減衰器を実現できる。
【0151】
さらに、本発明において、基板はシリコン基板とした構成によれば、放熱性が良く、接続光導波路の位相調整手段形成領域の応力解放が行いやすく、信頼性の高い平面光導波回路型光可変減衰器を実現できる。
【0152】
さらに、本発明において、スリットはガラス板により封止されている構成によれば、屈折率整合剤の移動状況を容易に確認でき、信頼性の高い平面光導波回路型光可変減衰器を実現できる。
【0153】
さらに、本発明において、ガラス板は接着剤によってスリットの周りの光導波路層に接着されている構成によれば、容易にスリットを封止することができる。
【0154】
さらに、本発明において、ガラス板は低融点ガラスによってスリットの周りの光導波路層に接合されている構成によれば、容易にスリットを封止することができるし、信頼性をより一層高くすることができる。
【0155】
さらに、本発明において、ガラス板は該ガラス板および光導波路層表面に形成された金属膜同士を拡散接合させることによって、光導波路層に接合されている構成によれば、さらに高い信頼性を得ることができる。
【0156】
さらに、本発明において、上記拡散接合によりガラス板を接合する構成において、金属膜は銅または銅合金とした構成によれば、光導波路特性に悪影響を与えずに高い信頼性で封止することができる。
【0157】
さらに、本発明において、スリットには屈折率整合剤と共に不活性ガスが封入されている構成によれば、より一層高い信頼性を得ることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、該基板上に形成されたコアとクラッドとを有する光導波路層とを有し、
前記コアにおいて、少なくとも1本の入力光導波路と、前記入力光導波路から入力された光の分岐を行う光分岐部と、少なくとも1本の出力光導波路と、前記出力光導波路の入力側に設けられた光結合部と、前記光結合部と前記光分岐部とを接続し且つ互いに間隔を介して並設される2本の接続光導波路とを有するマッハツェンダ光干渉計回路と、
2本の前記接続光導波路の少なくとも一方に設けられて伝搬光の位相を可変可能に調整する位相調整手段と、
前記光入力導波路と前記光出力導波路の少なくとも一方の光導波路の長手方向途中部に該光導波路と交わる方向で前記光導波路層に形成されたスリットと、
前記スリット内の一部に入れられて前記コアの屈折率に近似した屈折率を持つ液状の屈折率整合剤と、
前記光入力導波路と前記光出力導波路の少なくとも一方の前記光導波路における伝搬光の通り道を含む位置と該伝搬光の通り道から外れた位置とのいずれかに前記屈折率整合剤をスリット内で移動させる整合剤移動手段と
を有することを特徴とする平面光導波回路型光可変減衰器。
【請求項2】
2本の前記接続光導波路のそれぞれに設けられる前記位相調整手段は、2本の前記接続光導波路を伝搬する伝搬光の位相の偏波差の変化率を互いに異ならせて位相制御する位相制御手段であることを特徴とする請求項1に記載の平面光導波路回路型光可変減衰器。
【請求項3】
2本の前記接続光導波路のそれぞれに設けられる前記位相調整手段は、2本の前記接続光導波路の複屈折率の変化率を互いに異ならせる複屈折率調整手段であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の平面光導波回路型光可変減衰器。
【請求項4】
2本の前記前記接続光導波路の少なくとも一方に設けられる前記位相調整手段の形成部位から間隔をおいて、前記位相調整手段による位相調整の際に前記接続光導波路に付与される応力を解放または増加させるための応力調整部を設けたことを特徴とする請求項3記載の平面光導波回路型光可変減衰器。
【請求項5】
前記応力調整部は、前記位相調整手段による位相調整の際に前記接続光導波路に付与される前記応力を解放する自由空間であって、前記位相調整手段から間隔をおいて前記光導波路層に形成されていることを特徴とする請求項4の記載の平面光導波回路型光可変減衰器。
【請求項6】
2本の前記接続光導波路にはそれぞれ加熱手段を有する前記位相調整手段が設けられており、少なくとも一方の前記位相調整手段の形成部位から間隔をおいた領域には前記加熱手段により前記接続光導波路に加えられる熱の拡散を抑制する断熱手段が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の平面光導波回路型光可変減衰器。
【請求項7】
前記位相調整手段の形成部位を挟む両側の前記光導波路層のうち前記接続光導波路から間隔をおいた領域には、前記光導波路層の一部を除去してなる光導波路除去部が前記自由空間として前記接続光導波路の長手方向に沿って形成されていることを特徴とする請求項5記載の平面光導波回路型光可変減衰器。
【請求項8】
2本の前記接続光導波路にはそれぞれ前記位相調整手段が設けられており、一方の前記接続光導波路から第1の距離をおいて形成された前記光導波路除去部と、他方の前記接続光導波路から前記第1の距離とは異なる第2の距離をおいて形成された別の前記光除去部とを有することを特徴とする請求項7記載の平面光導波回路型光可変減衰器。
【請求項9】
前記断熱手段は、前記接続光導波路と間隔を介した領域で該接続光導波路の長手方向に沿って前記光導波路層が除去されてなる光導波路層除去部であることを特徴とする請求項6記載の平面光導波回路型光可変減衰器。
【請求項10】
互いに並設された2本の前記接続光導波路のうちの一方が第1の接続光導波路、他方が第2の接続光導波路であり、
前記第1の接続光導波路には、前記位相調整手段である第1、第4の位相調整手段が長手方向に間隔をおいて順に形成され、
前記第2の接続光導波路には、前記位相調整手段である第3、第2の位相調整手段が長手方向に間隔をおいて順に形成され、
前記第1の位相調整手段は前記第3の位相調整手段と同一構成であり、
前記第2の位相調整手段は前記第4の位相調整手段が同一構成であり、
前記第1の位相調整手段の側方には第1の距離をおいて第1の凹部が前記光導波路層除去部として形成され、
前記第3の位相調整手段の側方には前記第1の距離と実質的に等しい第3の距離をおいて第3の凹部が前記光導波路層除去部として形成され、
前記第2の位相調整手段の側方には前記第1の距離とは異なる第2の距離をおいて第2の凹部が前記光導波路層除去部として形成され、
前記第4の位相調整手段の側方には前記第2の距離と実質的に等しい第4の距離をおいて第4の凹部が前記光導波路層除去部として形成されている
ことを特徴とする請求項7記載の平面光導波回路型光可変減衰器。
【請求項11】
前記光導波路層除去部は、前記光導波路層の表面から前記基板の表面に至るまで除去されて形成されていることを特徴とする請求項7乃至請求項10のいずれかに記載の平面光導波回路型光可変減衰器。
【請求項12】
前記基板には、前記光導波路層除去部の下部に連続して基板除去部が形成されていることを特徴とする請求項11記載の平面光導波回路型光可変減衰器。
【請求項13】
前記基板除去部は、前記光導波路層除去部の下部よりも幅が広い部分を有する凹状の断面形状を有することを特徴とする請求項12記載の平面光導波回路型光可変減衰器。
【請求項14】
前記整合剤移動手段は、前記スリットの少なくとも一部の周囲に設けられた薄膜ヒータを有することを特徴とする請求項1乃至請求項13のいずれかに記載の平面光導波回路型光可変減衰器。
【請求項15】
前記位相調整手段は、前記接続光導波路上に設けられた薄膜ヒータを有することを特徴とする請求項1乃至請求項14のいずれかに記載の平面光導波回路型光可変減衰器。
【請求項16】
前記光導波路層は、石英系ガラスからなることを特徴とする請求項1乃至請求項15のいずれかに記載の平面光導波回路型光可変減衰器。
【請求項17】
前記基板は、シリコン基板であることを特徴とする請求項1乃至請求項16のいずれかに記載の平面光導波回路型光可変減衰器。
【請求項18】
前記スリットは、ガラス板により封止されていることを特徴とする請求項1乃至請求項17のいずれかに記載の平面光導波回路型光可変減衰器。
【請求項19】
前記ガラス板は、接着剤によって前記スリットの周りの前記光導波路層に接着されていることを特徴とする請求項18記載の平面光導波回路型光可変減衰器。
【請求項20】
前記ガラス板は、低融点ガラスによって前記スリットの周りの前記光導波路層に接合されていることを特徴とする請求項18記載の平面光導波回路型光可変減衰器。
【請求項21】
前記ガラス板と前記光導波路層の間には金属膜が介在し、前記金属膜を構成する金属の拡散によって前記ガラス板と前記光導波路層は接合されていることを特徴とする請求項18記載の平面光導波回路型光可変減衰器。
【請求項22】
前記金属膜は、銅と銅合金のいずれかからなることを特徴とする請求項21記載の平面光導波回路型光可変減衰器。
【請求項23】
前記スリットには、前記屈折率整合剤と共に不活性ガスが封入されていることを特徴とする請求項1乃至請求項22のいずれかに記載の平面光導波回路型光可変減衰器。
【請求項1】
基板と、該基板上に形成されたコアとクラッドとを有する光導波路層とを有し、
前記コアにおいて、少なくとも1本の入力光導波路と、前記入力光導波路から入力された光の分岐を行う光分岐部と、少なくとも1本の出力光導波路と、前記出力光導波路の入力側に設けられた光結合部と、前記光結合部と前記光分岐部とを接続し且つ互いに間隔を介して並設される2本の接続光導波路とを有するマッハツェンダ光干渉計回路と、
2本の前記接続光導波路の少なくとも一方に設けられて伝搬光の位相を可変可能に調整する位相調整手段と、
前記光入力導波路と前記光出力導波路の少なくとも一方の光導波路の長手方向途中部に該光導波路と交わる方向で前記光導波路層に形成されたスリットと、
前記スリット内の一部に入れられて前記コアの屈折率に近似した屈折率を持つ液状の屈折率整合剤と、
前記光入力導波路と前記光出力導波路の少なくとも一方の前記光導波路における伝搬光の通り道を含む位置と該伝搬光の通り道から外れた位置とのいずれかに前記屈折率整合剤をスリット内で移動させる整合剤移動手段と
を有することを特徴とする平面光導波回路型光可変減衰器。
【請求項2】
2本の前記接続光導波路のそれぞれに設けられる前記位相調整手段は、2本の前記接続光導波路を伝搬する伝搬光の位相の偏波差の変化率を互いに異ならせて位相制御する位相制御手段であることを特徴とする請求項1に記載の平面光導波路回路型光可変減衰器。
【請求項3】
2本の前記接続光導波路のそれぞれに設けられる前記位相調整手段は、2本の前記接続光導波路の複屈折率の変化率を互いに異ならせる複屈折率調整手段であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の平面光導波回路型光可変減衰器。
【請求項4】
2本の前記前記接続光導波路の少なくとも一方に設けられる前記位相調整手段の形成部位から間隔をおいて、前記位相調整手段による位相調整の際に前記接続光導波路に付与される応力を解放または増加させるための応力調整部を設けたことを特徴とする請求項3記載の平面光導波回路型光可変減衰器。
【請求項5】
前記応力調整部は、前記位相調整手段による位相調整の際に前記接続光導波路に付与される前記応力を解放する自由空間であって、前記位相調整手段から間隔をおいて前記光導波路層に形成されていることを特徴とする請求項4の記載の平面光導波回路型光可変減衰器。
【請求項6】
2本の前記接続光導波路にはそれぞれ加熱手段を有する前記位相調整手段が設けられており、少なくとも一方の前記位相調整手段の形成部位から間隔をおいた領域には前記加熱手段により前記接続光導波路に加えられる熱の拡散を抑制する断熱手段が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の平面光導波回路型光可変減衰器。
【請求項7】
前記位相調整手段の形成部位を挟む両側の前記光導波路層のうち前記接続光導波路から間隔をおいた領域には、前記光導波路層の一部を除去してなる光導波路除去部が前記自由空間として前記接続光導波路の長手方向に沿って形成されていることを特徴とする請求項5記載の平面光導波回路型光可変減衰器。
【請求項8】
2本の前記接続光導波路にはそれぞれ前記位相調整手段が設けられており、一方の前記接続光導波路から第1の距離をおいて形成された前記光導波路除去部と、他方の前記接続光導波路から前記第1の距離とは異なる第2の距離をおいて形成された別の前記光除去部とを有することを特徴とする請求項7記載の平面光導波回路型光可変減衰器。
【請求項9】
前記断熱手段は、前記接続光導波路と間隔を介した領域で該接続光導波路の長手方向に沿って前記光導波路層が除去されてなる光導波路層除去部であることを特徴とする請求項6記載の平面光導波回路型光可変減衰器。
【請求項10】
互いに並設された2本の前記接続光導波路のうちの一方が第1の接続光導波路、他方が第2の接続光導波路であり、
前記第1の接続光導波路には、前記位相調整手段である第1、第4の位相調整手段が長手方向に間隔をおいて順に形成され、
前記第2の接続光導波路には、前記位相調整手段である第3、第2の位相調整手段が長手方向に間隔をおいて順に形成され、
前記第1の位相調整手段は前記第3の位相調整手段と同一構成であり、
前記第2の位相調整手段は前記第4の位相調整手段が同一構成であり、
前記第1の位相調整手段の側方には第1の距離をおいて第1の凹部が前記光導波路層除去部として形成され、
前記第3の位相調整手段の側方には前記第1の距離と実質的に等しい第3の距離をおいて第3の凹部が前記光導波路層除去部として形成され、
前記第2の位相調整手段の側方には前記第1の距離とは異なる第2の距離をおいて第2の凹部が前記光導波路層除去部として形成され、
前記第4の位相調整手段の側方には前記第2の距離と実質的に等しい第4の距離をおいて第4の凹部が前記光導波路層除去部として形成されている
ことを特徴とする請求項7記載の平面光導波回路型光可変減衰器。
【請求項11】
前記光導波路層除去部は、前記光導波路層の表面から前記基板の表面に至るまで除去されて形成されていることを特徴とする請求項7乃至請求項10のいずれかに記載の平面光導波回路型光可変減衰器。
【請求項12】
前記基板には、前記光導波路層除去部の下部に連続して基板除去部が形成されていることを特徴とする請求項11記載の平面光導波回路型光可変減衰器。
【請求項13】
前記基板除去部は、前記光導波路層除去部の下部よりも幅が広い部分を有する凹状の断面形状を有することを特徴とする請求項12記載の平面光導波回路型光可変減衰器。
【請求項14】
前記整合剤移動手段は、前記スリットの少なくとも一部の周囲に設けられた薄膜ヒータを有することを特徴とする請求項1乃至請求項13のいずれかに記載の平面光導波回路型光可変減衰器。
【請求項15】
前記位相調整手段は、前記接続光導波路上に設けられた薄膜ヒータを有することを特徴とする請求項1乃至請求項14のいずれかに記載の平面光導波回路型光可変減衰器。
【請求項16】
前記光導波路層は、石英系ガラスからなることを特徴とする請求項1乃至請求項15のいずれかに記載の平面光導波回路型光可変減衰器。
【請求項17】
前記基板は、シリコン基板であることを特徴とする請求項1乃至請求項16のいずれかに記載の平面光導波回路型光可変減衰器。
【請求項18】
前記スリットは、ガラス板により封止されていることを特徴とする請求項1乃至請求項17のいずれかに記載の平面光導波回路型光可変減衰器。
【請求項19】
前記ガラス板は、接着剤によって前記スリットの周りの前記光導波路層に接着されていることを特徴とする請求項18記載の平面光導波回路型光可変減衰器。
【請求項20】
前記ガラス板は、低融点ガラスによって前記スリットの周りの前記光導波路層に接合されていることを特徴とする請求項18記載の平面光導波回路型光可変減衰器。
【請求項21】
前記ガラス板と前記光導波路層の間には金属膜が介在し、前記金属膜を構成する金属の拡散によって前記ガラス板と前記光導波路層は接合されていることを特徴とする請求項18記載の平面光導波回路型光可変減衰器。
【請求項22】
前記金属膜は、銅と銅合金のいずれかからなることを特徴とする請求項21記載の平面光導波回路型光可変減衰器。
【請求項23】
前記スリットには、前記屈折率整合剤と共に不活性ガスが封入されていることを特徴とする請求項1乃至請求項22のいずれかに記載の平面光導波回路型光可変減衰器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【国際公開番号】WO2005/017611
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【発行日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−513187(P2005−513187)
【国際出願番号】PCT/JP2004/011700
【国際出願日】平成16年8月13日(2004.8.13)
【特許番号】特許第3977399号(P3977399)
【特許公報発行日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【発行日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【国際出願番号】PCT/JP2004/011700
【国際出願日】平成16年8月13日(2004.8.13)
【特許番号】特許第3977399号(P3977399)
【特許公報発行日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]