説明

平面型光導波路センサ測定装置

【課題】平面型光導波路センサチップを用いた計測において、液だめ部品の組立て、溶媒の滴下、液だめ部品の分解、溶媒の廃棄の一連の作業を自動化すること。
【解決手段】平面型光導波路センサチップSをそのセンサ面Saから溶媒が自重で落下する向きに支持する支持部22と、支持部22に支持された平面型光導波路センサチップSの裏面Sbに対向して設けられ、平面型光導波路センサチップSへレーザ光Lを照射するレーザーダイオード32及び平面型光導波路センサチップS内を伝播したレーザ光Lの強度を測定するフォトダイオード33を有する読取機器30と、支持部22に支持された平面型光導波路センサチップSのセンサ面Saを含む領域にウェルWを着脱可能に供給する液だめ部品供給機構60と、平面型光導波路センサチップSのセンサ面Saに溶媒Mを供給する溶媒供給装置70とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、臨床検査や環境計測に使用されるバイオケミカルセンサ等について所定の計測を行う平面型光導波路センサ測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
小型で高感度なバイオケミカルセンサとしてはグレーティングカプラ及び生体分子認識機能及び情報変換機能を有するセンシング膜を備え、光導波路層表面に生じるエバネッセント波を利用した平面光導波路型バイオケミカルセンサが提案されている。
【0003】
例えば、基板上にゾル−ゲル法により膜厚620nmの酸化シリコン膜からなる光導波路層を形成し、この導波路層の両端にグレーティングを形成した構造の蛍光免疫センサが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、基板表面の両端付近にグレーティングを形成し、このグレーティングを含む前記基板表面に光導波路層を形成した構造の平面光導波路型バイオケミカルセンサが開示されている。この光導波路層は、スパッタ法やCVD法で形成された窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化タンタル等、もしくはイオン交換法により作製されたガラス膜であることが好ましいことが記載されている(例えば、特許文献2,3参照)。
【0005】
一方、ガラス基板主面に生体分子認識機能及び情報変換機能を有するセンシング膜を形成し、基板内に光を伝播させ、前記センシング膜との界面で反射させる光導波路センサが提案されている。特に、許容する入射角範囲の拡大が可能で、かつ高い感度を維持しつつ、光導波路層における光強度の減衰が抑制されている(例えば、特許文献4参照)。
【0006】
このような平面光導波路型バイオケミカルセンサによる測定を行う場合には、光学的なセンシング機能を具備した平面型光導波路センサ測定装置を用いる。このような測定装置では、光導波路型バイオケミカルセンサのセンシング機能を有する箇所へ溶媒を配置することで測定を行うことができる。平面光導波路型バイオケミカルセンサへ溶媒を定量的に配置するには、センサチップを水平に支持し、このセンサチップ上に一定量の液だめ部品(例えば、筒状)を配置し、この液だめ部品内に溶媒を滴下する。このとき、センサチップと液だめ部品の間に予め粘着テープ等の接続材を施し、溶媒の漏れを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−285851号公報
【特許文献2】特開平9−61346号公報
【特許文献3】特許第3236199号公報
【特許文献4】特開2006−208359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような測定装置では、次のような問題があった。すなわち、測定前の液だめ部品の組立て作業に粘着テープを用いるため、自動化が難しく、作業者が手作業で測定・分解を行っていた。このため、溶媒として検体を用いた測定や液だめ部品の分解に際し、作業者が溶媒に接触する可能性があった。
【0009】
そこで、平面型光導波路センサチップを用いた計測においては、液だめ部品の組立て、溶媒の滴下、液だめ部品の分解、溶媒の廃棄の一連の作業を自動化する平面型光導波路センサ測定装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
センサチップのセンサ面から溶媒が自重で落下する向きに、センサチップを支持する支持部と、この支持部に支持されたセンサチップの前記センサ面の裏面に対向して設けられ、前記センサチップへレーザ光を照射する発光部及び前記センサチップ内を伝播したレーザ光の強度を測定する受光部を有する読取機器と、前記支持部に支持されたセンサチップのセンサ面を含む領域に液だめ部品を着脱可能に供給する液だめ部品供給機構と、前記センサチップのセンサ面に溶媒を供給する溶媒供給機構とを備えた。
【0011】
センサチップをそのセンサ面を鉛直方向に沿って支持する支持部と、この支持部に支持されたセンサチップの前記センサ面の裏面に対向して設けられ、前記センサチップへレーザ光を照射する発光部及び前記センサチップ内を伝播したレーザ光の強度を測定する受光部を有する読取機器と、前記支持部に支持されたセンサチップのセンサ面を含む領域に液だめ部品を着脱可能に供給する液だめ部品供給機構と、前記センサチップのセンサ面に溶媒を供給する溶媒供給機構とを備えた。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】一実施の形態に係る平面型光導波路センサ測定装置の構成を示す説明図。
【図2】同平面型光導波路センサ測定装置に組み込まれた支持部を示す正面図。
【図3】同平面型光導波路センサ測定装置に用いられるウェルを示す斜視図。
【図4】同平面型光導波路センサ測定装置に組み込まれた読取機器を上方から示す説明図。
【図5】同平面型光導波路センサ測定装置を用いて測定を行う工程を示す説明図。
【図6】同平面型光導波路センサ測定装置を用いて測定を行う工程を示す説明図。
【図7】同平面型光導波路センサ測定装置を用いて測定を行う工程を示す説明図。
【図8】同平面型光導波路センサ測定装置を用いて測定を行う工程を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は一実施の形態に係る平面型光導波路センサ測定装置10の構成を示す説明図、図2は平面型光導波路センサ測定装置10に組み込まれた支持部を示す正面図、図3は平面型光導波路センサ測定装置10に用いられるウェル(液だめ部品)Wを示す斜視図、平面型光導波路センサ測定装置10に組み込まれた読取機器30を上方から示す説明図である。なお、Sは平面型光導波路センサ、Saはセンサ面、Sbは裏面を示している。また、Mは溶媒を示している。
【0014】
平面型光導波路センサ測定装置10は、架台11と、この架台11上に設置されたセンサ測定器20と、外部圧力機構50と、ウェル供給機構(液だめ部品供給機構)60と、溶媒供給装置70とを備えている。なお、架台11上には使用済みの平面型光導波路センサSの回収箱12と、使用済みのウェルWの回収箱13が設置されている。
【0015】
センサ測定装置20は、直方体状の支持台21を備えている。支持台21の正面には、凹状の支持部22が形成され、平面型光導波路センサSをその面を鉛直方向に沿って設置できるように構成されている。なお、支持部22は、平面型光導波路センサSのセンサ面を鉛直方向に沿った向きに支持すると記載したが、溶媒が自重で落下する向きであれば、鉛直方向に限られるものではない。
【0016】
支持部22の下方には、測定済の溶媒Mを回収する溶媒回収部23が形成されている。溶媒回収部23は、落下した溶媒Mを受ける受け部24と、この受け部24に接続された廃液処理部25と、この廃液処理部25を減圧して廃液を回収するバキュームポンプ26とを備えている。
【0017】
支持台21には、読取機器30が設けられている。図4に示すように、読取機器30には、平面型光導波路センサSのセンサ面Saの裏面Sbに対向して配置された光学ガラス31と、光学ガラス31を介して平面型光導波路センサSへレーザ光を照射するレーザダイオード(発光部)32と、平面型光導波路センサS内を伝播したレーザ光L′の強度を光学ガラス31を介して測定するフォトダイオード(受光部)33と、光学ガラス31に設けられ、平面型光導波路センサSを吸引する吸引孔34と、この吸引孔34に減圧力を供給するポンプ35とを備えている。また、図4中39はレーザダイオード32及びフォトダイオード33の制御を行うとともに計測を行う計測部を示している。
【0018】
支持台21には、測定前の平面型光導波路センサSを供給するチップ供給機構40が隣接して配置されている。また、測定後の平面型光導波路センサSをピン46を突き出して排出するチップ排出機構45が配置されている。
【0019】
外部圧力機構50は、架台11上に設けられた直線ガイド51と、この直線ガイド51上を図1中矢印H方向に往復動するスライダ52と、このスライダ52上に設けられた直線ガイド53と、この直線ガイド53上を図1中矢印H方向に自由往復するウェル供給機構60とを備えている。なお、ウェル供給機構60とスライダ52との間には圧縮バネ54が設けられている。スライダ52の図1中右方向への移動により、ウェルWと平面型光導波路センサSとが当接すると、圧縮バネ54が圧縮され、その弾性力によりウェルWが平面型光導波路センサSに弾性的に押圧される。
【0020】
ウェル供給機構60は、ウェルWを支持する支持台61aを有する機構本体61と、この機構本体61に設けられたウェルWを吸着する吸着する吸着機構62と、ウェルWを機構本体61から離脱させるための突出ピン機構63とを備えている。
【0021】
溶媒供給装置70は、位置決めを行うロボット機構71と、このロボット機構71により位置決めされるとともに、溶媒をウェルWに滴下するノズル72とを備えている。
【0022】
ウェルWは、直方体状の筐体であり、黒色で光を透過もしくは反射や散乱を防ぐ材質の樹脂部品により形成されている。なお、Waは開口部、Wbは開口部Waに設けられ液漏れを防止する密閉材、Wcは溶媒送液窓を示している。なお、溶媒送液窓は二点鎖線Wdに示すように上部に設けても良い。
【0023】
このような平面型光導波路センサ測定装置10によれば、次のようにして測定を行う。すなわち、チップ供給機構40により、測定前の平面型光導波路センサSを支持台21に供給する。同時に、ポンプ35を作動させ、吸引孔34に吸引力を発生させる。一方、吸着機構62を作動させ、使用前のウェルWを支持台61aに吸着させる。
【0024】
次に、図5に示すように、スライダ52の図1中矢印H1方向への移動させ、ウェルWを平面型光導波路センサSに押圧させる。この際、平面型光導波路センサSのセンサ面SaとウェルWの開口部Waとが、それぞれの中心位置で位置決めされる。そして、ウェルWが平面型光導波路センサSに当接されると、圧縮バネ54が圧縮される。その弾性力によりウェルWが平面型光導波路センサSに弾性的に押圧され、開口部WaのパッキンWbにより液密状態で平面型光導波路センサSのセンサ面Saに接触する。これにより、一時的な液だめ機構が生ずる。この状態で、溶媒供給装置70からノズル72を溶媒送液窓Wcに位置決めし、所定量の溶媒を滴下する。
【0025】
この状態で、読取機器30を作動させる。レーザダイオード32からレーザ光Lを光導波路型バイオケミカルセンサチップSの裏面Sb側に入射すると、そのレーザ光Lは平面型光導波路センサS内で回折・屈折等を繰り返しながら、光導波路層内を伝播する。この際、光導波路層で伝播する光のエバネッセント波はセンシング膜の界面での屈折時にそのセンシング膜における検体中の生体分子のバイオケミカル反応に基づく変化(例えば吸光度変化)に応じて吸収される。
【0026】
光導波路層を伝播した光は、平面型光導波路センサSの裏面Sbから出射され、フォトダイオード33で受光される。受光したレーザ光強度は、センシング膜が生体分子とバイオケミカル反応をなさない時に受光した光強度(初期光強度)に比べて低下した値になり、その低下率から生体分子の量を検出することが可能になる。
【0027】
読取機器30による検出が終了すると、スライダ52を図6中矢印H2方向に移動させ、ウェルWと平面型光導波路センサSが離間させる。これにより、溶媒Mが落下し、受け部24によって受けられる。廃液処理部25はバキュームポンプ26により減圧されているため、溶媒Mは廃液処理部25に吸収され、処理される。
【0028】
次に、ポンプ35の作動を停止させ、吸引孔34による平面型光導波路センサSに対する吸引力を停止する。そして、図7及び図8に示すように、チップ排出機構45により、平面型光導波路センサSを排出する。平面型光導波路センサSは回収箱12に回収される。一方、吸着機構62を停止させ、ウェルWに対する吸着力を停止する。そして、突出ピン機構63により、ウェルWを排出する。ウェルWは回収箱13に回収される。
【0029】
このように構成された平面型光導波路センサ測定装置10は、平面型光導波路センサSをそのセンサ面Saが鉛直方向となるように支持し、溶媒Mを保持するウェルWを押圧して測定するようにしているので、ウェルWと平面型光導波路センサSとを粘着テープ等で結合する必要がなく、また、溶媒Mを自重による落下によって測定位置から簡単に排出させ、そのまま廃棄することができる。このため、装置の自動化が容易であるとともに、作業者が溶媒Mに触れることを防止できる。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0031】
10…平面型光導波路センサ測定装置、12,13…回収箱、20…センサ測定器、21…支持台、22…支持部、23…溶媒回収部、30…読取機器、34…吸引孔、40…チップ供給機構、45…チップ排出機構、50…外部圧力機構、60…ウェル供給機構、70…溶媒供給装置、S…平面型光導波路センサ、W…ウェル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサチップのセンサ面から溶媒が自重で落下する向きに、センサチップを支持する支持部と、
この支持部に支持されたセンサチップの前記センサ面の裏面に対向して設けられ、前記センサチップへレーザ光を照射する発光部及び前記センサチップ内を伝播したレーザ光の強度を測定する受光部を有する読取機器と、
前記支持部に支持されたセンサチップのセンサ面を含む領域に液だめ部品を着脱可能に供給する液だめ部品供給機構と、
前記センサチップのセンサ面に溶媒を供給する溶媒供給機構とを備えていることを特徴とする平面型光導波路センサ測定装置。
【請求項2】
センサチップをそのセンサ面を鉛直方向に沿って支持する支持部と、
この支持部に支持されたセンサチップの前記センサ面の裏面に対向して設けられ、前記センサチップへレーザ光を照射する発光部及び前記センサチップ内を伝播したレーザ光の強度を測定する受光部を有する読取機器と、
前記支持部に支持されたセンサチップのセンサ面を含む領域に液だめ部品を着脱可能に供給する液だめ部品供給機構と、
前記センサチップのセンサ面に溶媒を供給する溶媒供給機構とを備えていることを特徴とする平面型光導波路センサ測定装置。
【請求項3】
前記液だめ部品供給機構は、前記液だめ部品を前記センサチップ側に押圧する外部圧力機構を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の平面型光導波路センサ測定装置。
【請求項4】
前記液だめ部品には、前記溶媒供給機構から溶媒を供給するための溶媒送液窓が設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の平面型光導波路センサ測定装置。
【請求項5】
前記液だめ部品は、光の散乱を防止する材質で形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の平面型光導波路センサ測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−68166(P2012−68166A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214353(P2010−214353)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】