説明

平面型放電管

【課題】 放電空間内の空気とガスの置換工程において、より給排気効率を向上させるとともに、放電空間内の洗浄を容易にすることが可能な平面型放電管を提供する。
【解決手段】 一対の給排気管60a、60bを一側壁面53bに設けたので、一方の給排気管60aに不活性ガスボンベ72を接続し、他方の給排気管60bに真空ポンプ74を接続し、放電空間54内へこの不活性ガスを所定の時間だけ流入・排出することによって、放電空間54内にあるゴミや塵を容易に外部へ押し出すことができる。また、放電空間54内のガス置換工程において、2本の給排気管60a、60bに給排気用の配管を並列に接続させて実施することができる。即ち、従来のような一本の給排気管に接続してガス置換を行う場合と比較すると、給排気の流路面積がおよそ2倍になるために、約半分の時間で置換できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明用ランプ等に使用される平面型放電管に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の平面型放電管は、一対の平行配置された透明なガラス基板を所定間隔をおいて周囲を封着部材で封着して内部に放電空間を形成し、一対のガラス基板の外面あるいは内面に一対の電極を設け、放電空間内に放電ガスを封入して製造する。したがって、平面型放電管の製造過程では、放電空間内部の空気を排気し、その後、放電ガスを封入するという作業が必要となる。
【0003】
このため、平面型放電管には、放電空間内部と真空ポンプおよびガスボンベとをつなぐための給排気管が設けられている。この給排気管は、空気の排気および放電ガスの給気が行われた後に封着される。特許文献1には、このような製造工程が開示されている。
【0004】
以下に前記給排気の工程について簡単に説明する。給排気管の他端部にはゴム製の配管の一端部を接続する。そして、この配管の他端に連結された真空ポンプ(図示略)を駆動させて、放電空間内の空気を外部に吸い出し、真空状態とする。その後、配管の他端部を不活性ガス供給部(図示略)に接続し、給排気管を介してアルゴン及びネオン等の放電ガスとしての不活性ガスを放電空間内に供給する。この後、給排気管の先端部分をバーナで焼き切ることにより密閉され、放電空間内には不活性ガスが封入される。
【0005】
一方、従来の給排気管は、一対の誘電体平板表面には設けらず、互いに対向する一対の誘電体平板を互いに連結する側壁に設けられている。これは、誘電体平板の表面側に設けると、表面側に給排気管の封止部が凸部となるため、平面型放電管を取り扱う上で非常に邪魔になり、破損することが多かった。また、平面型放電管の薄型化を図る際の妨げになるという問題があった。したがって、平面型放電管の薄さを利用した灯具等の開発においては、平面型放電管の側壁に給排気管を設けるようにすることが提案されている。
【0006】
図7は従来の平面型放電管51の一例である。一対のガラス基板52a、52bで封着部材である枠ガラス53を挟持することにより放電空間54が形成されている。前記「互いに対向する一対の誘電体平板を互いに連結する側壁」とは、この枠ガラス53の側壁部(外周面)に相当する。
また、一対のガラス基板52a、52bの外面に一対の透明電極55,56が配置されている。この枠ガラス53の側端部に給排気口62が設けられ、その給排気口62に給排気管60が放電空間54と連通するようにして設けられている。
【0007】
図8は、従来の平面型放電管の側壁に給排気管を設けた場合の部分拡大断面図である。図8(a)は、前記給排気管60を接続した部分の拡大断面図である。なお、図8(a)、(b)及び(c)では、透明電極及び蛍光体膜を省略して図示してある。上述のように、ガラス枠53の側壁部に給排気口62が設けられ、その給排気口62に給排気管60が放電空間54と連通するように設けるので、必然的に、給排気管60の外径は放電距離d以下となる。即ち、放電距離dは0.5〜2mm程度であるので、給排気管60の内径は、最大でも1mm程度となる。このため、給排気管60の内径が小さいため、流体抵抗が大きく、給排気に多大な時間を要するという問題があった。
【0008】
その後、上記問題を解決するために、以下の発明が成され実施されている。即ち、図8(b)に示すように、ガラス基板52b外面において、枠ガラス53の側壁に対応する部位に突部52cを設けることにより、枠ガラス53の側壁の他の部位よりも肉厚となる肉厚部Nを設ける。そして、この肉厚部Nを利用して放電距離d以上の外径を有する給排気管60′を挿入可能とした給排気口62を設ける。このため、給排気管60を放電空間54に挿入可能となるように形成するようにした場合(図8(a)参照)に比べて、給排気管60′の外径(及び内径)を大きくすることができる。また、ガラス基板52aの内面とガラス基板52bの内面との間の距離にかかわらず取り付けることができる。従って、平面型放電管51の放電特性に影響を与えることなく、給排気管60′を平面型放電管51に取り付けることができる。このため、給排気管の流路面積が確保され、放電空間に対する空気及び放電ガスの給排気を円滑に行うことができる。
【0009】
また、前記と同様な目的として、次のような発明が成され実施されている。即ち、図8(c)に示すように、両ガラス基板52a,52b間にはそれらの内面における外周縁にそれぞれ対応すると共にそれらの間隔を一定に保持する中間支持枠64を介装するようにしている。そして中間支持枠64の外周縁部には当該中間支持枠64の他の部位よりも厚みを大きくした肉厚部、即ち突部Pを両ガラス基板52a,52bに干渉しないように設けるようにしている。この突部Pを利用して両ガラス基板52a,52b間の距離以上の外径を有する給排気管60′′を挿入可能とした給排気口62を設け、当該給排気口55に前記給排気管60′′Pを固定するようにした。このため、給排気管60′′の流路面積が確保され、放電空間に対する空気及び放電ガスの給排気を円滑に行うことができる。
【0010】
このように前述の平面型放電管には、互いに対向する一対の誘電体平板を互いに連結する側壁を介して、前記放電空間に連通した1本の給排気管を使用して、前記放電空間内の空気と放電ガスとを置換するようにしている。そして、給排気管の流路面積を拡大することによって、給排気効率を上昇するように給排気管の取付構造が見直されてきた。
【0011】
【特許文献1】特開2002−237256公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
一方、最近、従来よりも発光面積の広い平面型放電管の提供が望まれるようになってきている。具体的には従来はA6面積相当のものが主流であったが、最近では、この4倍のA3面積相当の平面型放電管の提供が望まれている。このような場合、従来よりも放電空間が大きくなるために、放電空間の給排気に要する時間が非常に増加している。したがって、従来よりも更なる給排気の効率上昇が望まれてきた。
【0013】
また、発光面積の広い平面型放電管においては、放電空間が大きいため、このような空気とガスの置換工程において、放電空間内に存在する塵やゴミ等を充分に排出できないという問題があった。放電空間内に塵やゴミ等が存在すると、放電状態が均等でなくなるため、発光面から一様に光を照射させることができなくなる。したがって、この空気とガスの置換工程あるいは放電空間の洗浄工程において、充分に塵やゴミ等を充分に排出し、放電空間内を洗浄する必要があった。
【0014】
そこで本発明は、放電空間内の空気とガスの置換工程において、従来よりも更に給排気効率を向上させるとともに、放電空間内の洗浄を容易にすることが可能な平面型放電管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するために、本発明のうちで請求項1に記載の平面型放電管は、
互いに対向する一対の誘電体平板を互いに連結する側壁を介して、放電空間に連通した給排気管を使用し、前記放電空間内の空気と放電ガスとを置換するようにした平面型放電管において、
前記給排気管を前記側壁に複数本設けた、
ことを特徴とする。
【0016】
ここで、前記「互いに対向する一対の誘電体平板を互いに連結する側壁を介して、放電空間に連通した給排気管を使用し前記放電空間内の空気と放電ガスとを置換するようにした平面型放電管」とは、前述の通り、前記側壁に設けられた給排気管を備えた従来の平面型放電管であって、特許文献1,2及び3に開示された従来技術を含むものである。
【0017】
また、請求項2に記載の平面型放電管は、請求項1に記載の平面型放電管に加えて、
表面形状が略正方形または略長方形を有する前記一対の誘電体平板を互いに連結する4つの側壁面のうちの一側壁の長さの垂直二等分線を対称線として、それぞれの側に第1の給排気管と第2の給排気管とが設けられ、
かつ、前記対称線から前記第1の給排気管の中心軸線までの距離をX,前記第2の給排気管の中心軸線までの距離をY、第1及び第2の給排気管の外径をD及び前記一側壁から見た放電空間の幅をBとして、
X≦(B−D)/2、Y≦(B−D)/2、Y≧X+2×D、とした、
ことを特徴とする。
【0018】
また、請求項3に記載の平面型放電管は、請求項1に記載の平面型放電管に加えて、
表面形状が略正方形または略長方形を有する前記一対の誘電体平板を互いに連結する4つの側壁面のうち、互いに対向する2つの側壁のそれぞれに第1の給排気管と第2の給排気管とを設けた、
ことを特徴とする。
【0019】
また、請求項4に記載の平面型放電管は、請求項3に記載の平面型放電管に加えて、
前記第1の給排気管と前記第2の給排気管とは、略正方形または略長方形を有する前記一対の誘電体平板の表面における2本の対角線の交点を対称点として、それぞれが互いに点対称な位置に設けられる、
ことを特徴とする。
【0020】
また、請求項5に記載の平面型放電管は、請求項1に記載の平面型放電管に加えて、
表面形状が略円形または略楕円形を有する前記一対の誘電体平板を互いに連結する側壁面上に、前記誘電体平板の表面形状である略円形または略楕円形の中心軸線と外形線とが交わる位置に相当する側壁面の2箇所のそれぞれに第1の給排気管と第2の給排気管とを設けた、
ことを特徴とする。
【0021】
また、請求項6に記載の平面型放電管は、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の平面型放電管に加えて、
前記放電空間内には、互いに平行に配置された複数の誘電体リブが配設されるとともに、
前記給排気管の中心軸線の延びる方向は、前記誘電体リブが互いに平行に延びる方向と同一方向である、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に記載の平面型放電管によれば、
前記給排気管を前記側壁に複数本設けたので、放電空間内のガス置換工程において、複数本の給排気管に給排気用の配管を並列に接続させて実施することができる。即ち、従来のような一本の給排気管に接続してガス置換を行う場合と比較すると、給排気の流路面積が複数本の開口面積分だけ増加するために、従来に比べ短時間で置換できる。
【0023】
また、例えば2本の給排気管を設けた場合には、一方の給排気管に例えばアルゴンや窒素ガス等の不活性ガスが充填されたボンベを配管を介して接続し、他方の給排気管に配管を介して吸引ポンプを接続し、放電空間内をこの不活性ガスを所定の時間だけ流入・排出することによって、放電空間内に存在するゴミや塵を外部へ押し出すことができるとともに、空気内に存在していた水蒸気も排出することができる。
【0024】
また、請求項2に記載の平面型放電管によれば、請求項1に記載の平面型放電管の効果に加えて、
表面形状が略正方形または略長方形を有する前記一対の誘電体平板を互いに連結する4つの側壁面のうちの一側壁の長さの垂直二等分線を対称線とし、かつ、前記対称線から前記第1の給排気管の中心軸線までの距離をX,前記第2の給排気管の中心軸線までの距離をY、第1及び第2の給排気管の外径をD及び前記一側壁から見た放電空間の幅をBとして、
X≦(B−D)/2、Y≦(B−D)/2、Y≧X+2×D、とした、それぞれの側に第1の給排気管と第2の給排気管とが設けられる。したがって、両給排気管は、それぞれ前記対称線から互いに反対の向きへ異なった距離に設けられているので、このように給排気管が設けられた平面型放電管2枚を、一対の給排気管が設けられた側壁同士を対向配置させるようした場合において、互いに給排気管の封止部が突き合わされることがなく、給排気管の突出長さ程度まで近づけて配置させることができる。
【0025】
また、請求項3に記載の平面型放電管によれば、請求項1に記載の平面型放電管の効果に加えて、
表面形状が略正方形または略長方形を有する前記一対の誘電体平板を互いに連結する4つの側壁面のうち、互いに対向する2つの側壁のそれぞれに第1の給排気管と第2の給排気管とを設けたので、アルゴンや窒素ガス等の不活性ガスを使用して放電空間内の洗浄を行う場合、不活性ガスの流れの状態が大きく屈曲することがないため、放電空間内によどみ領域を形成し難く、ゴミや塵が滞留しにくくなり、効率よく排出することができる。
【0026】
また、請求項4に記載の平面型放電管によれば、請求項3に記載の平面型放電管の効果に加えて、
前記第1の給排気管と前記第2の給排気管とは、略正方形または略長方形を有する前記一対の誘電体平板の表面における2本の対角線の交点を対称点として、それぞれが互いに点対称な位置に設けられるので、アルゴンや窒素ガス等の不活性ガスを使用して放電空間内の洗浄を行う場合、放電空間に滞留する不活性ガスの通過距離を大きくすることができ、請求項3に記載の発明の効果をより顕著にすることができる。
【0027】
また、請求項5に記載の平面型放電管によれば、請求項1に記載の平面型放電管の効果に加えて、
表面形状が略円形または略楕円形を有する前記一対の誘電体平板を互いに連結する側壁面上に、前記誘電体平板の表面形状である略円形または略楕円形の中心軸線と外形線とが交わる位置に相当する側壁面の2箇所のそれぞれに第1の給排気管と第2の給排気管とを設けたので、アルゴンや窒素ガス等の不活性ガスを使用して放電空間内の洗浄を行う場合、放電空間の周縁部も略円形または略楕円形上に滑らかな曲線部を描いているため、不活性ガスの流れの状態が大きく屈曲することがなく、放電空間内によどみ領域が極めて形成され難く、ゴミや塵が滞留しにくくなり、効率よく排出することができる。
【0028】
また、請求項6に記載の平面型放電管によれば、請求項1〜5のいずれかに記載の平面型放電管の効果に加えて、
前記給排気管の中心軸線の延びる方向は、放電空間内に平行配置された複数の誘電体リブの延びる方向と同一方向であるので、アルゴンや窒素ガス等の不活性ガスを使用して放電空間内の洗浄を行う場合、一方の給排気管から供給される不活性ガスの流れを前記誘電体リブが妨げることなく、他方の給排気管に滑らかに排出される。したがって、効率よく、ゴミや塵を排出することができる。
【0029】
以上の発明の平面型放電管によって、放電空間内の空気とガスの置換工程において、より給排気効率を向上させるとともに、放電空間内の洗浄を容易にすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
図1〜図6は、本発明の実施形態を示す。なお、従来の平面型放電管と構成部分が同様のものは、同じ符号を付けて示している。本実施形態の平面型放電管の基本的構造は、従来の平面型放電管と同様である。即ち、一対の平行配置された透明なガラス基板(誘電体平板に相当する)を所定間隔をおいて周囲を封着部材で封着して内部に放電空間を形成し、一対のガラス基板の外面あるいは内面に一対の電極を設け、放電空間内に放電ガスを封入して製造する。したがって、本実施形態の平面型放電管の製造過程においても、従来と同様に放電空間内部の空気を排気し、その後、放電ガスを封入するという作業が必要となる。このため、本実施形態の平面型放電管においても、放電空間内部と真空ポンプおよびガスボンベとをつなぐための給排気管が設けられている。この給排気管は、空気の排気および放電ガスの給気が行われた後に封着される。なお、図1〜図6には、一対のガラス基板52a、52bの外面あるいは内面に一対の薄膜状の電極(例えばITO等の透明電極)が設けられるが、本図はこれを省略して図示してある。また、放電空間内に面した誘電体平板の内面に形成された蛍光体膜も省略している。
【0031】
(第1の実施形態)
図1に第1の実施形態の平面型放電管71を示す。図1(a)は表面形状が長方形をした平面型放電管71の平面図、(b)は(a)のF−F断面図である。封着部材として形成された枠ガラス53によって、平行配置された誘電体平板としての両ガラス基板52a、52bの外周が封着され放電空間54が形成されている。放電空間54内には、複数の誘電体リブ65が平面型放電管71の長手方向に延びるように平行配置されている。この平面型放電管71の一側壁面53bには、一対の給排気管60a、60bが、平面型放電管の中心線63を挟むようにして両側に一つずつ、放電空間54と連通するようにして設けられている。但し、前記中心線から給排気管60aの中心線までの距離Xと、前記中心線から給排気管60bの中心線までの距離Yとは異なっており、両給排気管60a、60bは、中心線63に対して互いに対称となる位置には設けられていない。また、給排気管60a、60bの当該給排気管の延びる方向は、前記誘電体リブ65の長手方向に延びる方向と一致している。なお、両給排気管60a、60bの取付部の断面(E−E断面)は、従来と同じような形状(図8(b)参照)となっている。
【0032】
図2に平面型放電管71を複数並列配置した場合の状態を示す。2つの平面型放電管71の一側壁面53b同士を対向させて配置した場合、給排気管63aと63bは図2のように、相手方の給排気管の封止部に干渉することなく配置される。図中の距離Aは、給排気管60a、60bの長さL(図3参照)よりも若干大きくなる。
【0033】
図3に、2つの平面型放電管71,71の一側壁53bを対向配置させた部分の詳細を示す。通常、給排気管60a、60bは一側壁面53bに垂直に設けられるが、多少傾いて取り付けられることもある。したがって、給排気管60a、60bの外径をD、一方の平面型放電管71の給排気管60aの外周側面と、他方の平面型放電管71の給排気管60bの外周側面との距離をZとした場合、Zを少なくとも給排気管外径以上の距離とすることによって、多少傾いて給排気管60a、60bが設けられても互いに干渉されないように考慮している。このことから、Z=Y−X−D≧Dとなるので、
Y≧X+2×D ・・・・(式1)
となる。
また、給排気管60a、60bは、放電空間54内と連通するように設ける必要があることから、放電空間54内の横幅B内に設けられる。即ち、次式が成立する。
X≦(B−D)/2 ・・・(式2)
Y≦(B−D)/2 ・・・(式3)
したがって(式1)、(式2)及び(式3)を同時に満たすような一側壁面53bの位置に一対の給排気管60a、60bを設けている。
【0034】
〈放電空間の洗浄方法〉
図4(a)は平面型放電管71の放電空間54内を洗浄する場合の配管系統図である。給排気管60aには、配管およびバルブ73aを介して不活性ガスボンベ72が接続されている。ここでは不活性ガスをアルゴンガスとしているが、これに限定されることはなく、窒素ガス、ヘリウムガス等の他の不活性ガスでも良い。一方、給排気管60bには、配管およびバルブ73bを介して、真空ポンプ74が接続されている。
【0035】
バルブ73aを閉とし、真空ポンプ74を稼働させバルブ73bを開とすると、平面型放電管71の放電空間54内に存在した空気が排出される。次にバルブ73aを利用して放電空間54内が僅かに負圧となるように、バルブ73aの開度を調節しながら、不活性ガスボンベ72のアルゴンガスを供給して、所定時間だけ、真空ポンプ74を稼働させる。したがって、アルゴンガスによって放電空間54内が洗浄され、ゴミや塵などが排出される。
【0036】
〈放電空間のガス置換方法〉
図4(b)は平面型放電管71の放電空間54内のガス置換を行う場合の配管系統図である。給排気管60a、60bには、それぞれ並列に配管が接続され、分岐点Pにおいて、一方がバルブ75aを介してキセノンガスボンベ76へ接続され、もう一方がバルブ75bを介して真空ポンプ74に接続されている。バルブ75aを閉とし、バルブ75bを開として真空ポンプ74を稼働させて、平面型放電管71の放電空間54内の空気(あるいはその他のガス)を真空排気する。その後バルブ75bを閉とし、バルブ75aを開として放電空間54内が所定圧力となるまで、キセンノンガスを供給する。なお、放電ガスはキセノンだけに限定されず、ネオン等でも良いし、これらの混合ガスでも良い。
【0037】
(第1の実施形態の効果)
以下に第1の実施形態の及ぼす効果を列記する。
(1)一対の給排気管(60a、60b)を一側壁面(53b)に設けたので、放電空間(54)内のガス置換工程において、2本の給排気管(60a、60b)に給排気用の配管を並列に接続させて実施することができる。即ち、従来のような一本の給排気管に接続してガス置換を行う場合と比較すると、給排気の流路面積がおよそ2倍になるために、約半分の時間で置換できる。
【0038】
(2)一対の給排気管(60a、60b)を一側壁面(53b)に設け、一方の給排気管(60a)に不活性ガスボンベ(72)をバルブ(73a)を介して接続し、他方の給排気管(60b)にバルブ(73b)を介して真空ポンプ(74)を接続し、放電空間(54)内をこの不活性ガスを所定の時間だけ流入・排出することによって、放電空間(54)内に存在するゴミや塵を外部へ押し出すことができるとともに、空気内に存在していた水蒸気も排出することができる。
【0039】
(3)表面形状が長方形の平面型放電管(71)の一側壁面(53b)に、一側壁の長さの垂直二等分線(63)を対称線として、この対称線から第1の給排気管の中心軸線までの距離をX,第2の給排気管の中心軸線までの距離をY、第1及び第2の給排気管の外径をD及び前記一側壁から見た放電空間の幅をBとしたとき、X≦(B−D)/2、Y≦(B−D)/2、Y≧X+2×D、となるそれぞれの側に一本ずつ給排気管が設けられる。したがって、両給排気管(60a、60b)は、それぞれ前記対称線(63)から互いに反対の向きへ異なった距離に設けられているので、この平面型放電管(71)2枚を、一対の給排気管(60a、60b)が設けられた一側壁(53b)同士を突き合わせて並べた場合(図2、図3参照)、互いに給排気管の封止部が突き合わされることがなく、給排気管の突出長さL程度まで近づけて配置させることが可能となる。
【0040】
(4)給排気管(60a、60b)の中心軸線の延びる方向は、放電空間(54)内に平行配置された複数の誘電体リブ(62)の延びる方向と同一方向であるので、アルゴン等の不活性ガスを使用して放電空間(54)内の洗浄を行う場合、一方の給排気管(60a)から供給される不活性ガスの流れを誘電体リブ(62)が妨げることなく、他方の給排気管(60b)に滑らかに排出される。したがって、流体抵抗を増加させることないので、効率よく、ゴミや塵を排出することが可能となる。
【0041】
(第2の実施形態)
図5に第2の実施形態の平面型放電管を示す。図5(a)は表面形状が長方形をした平面型放電管81の平面図、(b)は(a)のF−F断面図である。封着部材として形成された枠ガラス53によって、平行配置された誘電体平板としての両ガラス基板52a、52bの外周が封着され放電空間54が形成されている。放電空間内には、複数の誘電体リブ65が平面型放電管81の長手方向に延びるように平行配置されている。この平面型放電管81の一側壁面53bの中心軸63と交わる交点上には給排気管60bが設けられ、この一側壁面53bに対向する側の一側壁面53aの中心軸63と交わる交点上には給排気管60aが設けられている。また、給排気管60a、60bの延びる方向は、前記誘電体リブ62の長手方向に延びる方向と一致している。なお、両給排気管60a、60bの取付部の断面(E−E断面)は、従来と同じような形状(図8(b)参照)となっている。
【0042】
(第2の実施形態の別例)
また、図5(a)に示すように、平面型放電管81の表面(長方形)における2本の対角線が交わる交点Gを対称点として、各々の給排気管63a、63bを側壁面53a、53bの点対称となる位置に設けることができる(例えば、破線で示してある給排気管63a′、63b′)。
【0043】
(第2の実施形態及びその別例の効果)
第2の実施形態及びその別例の及ぼす効果は、前記(1)(2)及び(4)に記載の効果に加えて、次のような効果を奏する。
(5)表面形状が長方形した平面型放電管(81)の互いに対向する前記側壁(53a、53b)のそれぞれに一対の給排気管(60a、60b)を一本ずつ設けたので、アルゴン等の不活性ガスを使用して放電空間(4)内の洗浄を行う場合、不活性ガスの流れの状態が大きく屈曲することがないため、放電空間(54)内によどみ領域を形成し難く、ゴミや塵が滞留しにくくなり、効率よく排出することが可能になる。
【0044】
(6)一対の給排気管(60a、60b)は、平面型放電管(81)の表面における2本の対角線の交点(G)を対称点として、互いに点対称な側壁の位置のそれぞれに一本ずつ設けられている。このような構造とすることにより、不活性ガスの流れる経路が短絡し難くなり、滞留距離が平均的に長くなるため、上記(5)の効果をより顕著にすることができる。
【0045】
(他の応用例等)
なお、本発明は上記の実施形態に限定するものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で様々な応用が可能である。また、前記実施形態では、表面形状を長方形としているが、用途に応じて正方形としても良いし、三角形や円形等としても良い。図6には、表面形状が楕円の平面型放電管91を示しており、周枠53としての側壁面上にあって、中心線(長径)62と交わる交点上に、それぞれ一対の給排気管60a、60bが設けられている。このような形状においても、上記(1)(2)(4)(5)及び(6)と同様な効果を奏する。特に、表面形状が円形や楕円形の場合には、放電空間54内の周縁部も円形や楕円形上に滑らかな曲線部を描いているため、不活性ガスの流れの状態がほとんど屈曲することがなく、放電空間54内によどみ領域が極めて形成され難く、ゴミや塵が滞留しにくくなり、効率よく排出することができる。
【0046】
また、長方形、正方形は他の多角形において、少なくとも一つの給排気管を、平面型放電管の角の部分を切り取り、その切り取り空間内に給排気管の先端が収まるようにして設けても良い。
【0047】
また、前記実施形態では、放電空間内に複数の誘電体リブを設けているが、従来(図7参照)のように誘電体リブを設けない場合に対しても本発明の範囲に含まれる。また、誘電体リブは、長手方向に平行配置されることに限定されず、様々な形状、配置をした誘電体リブとしても良い。
【0048】
また、前記実施形態では、図8(b)に示されるような給排気管の取付構造を採用しているが、これに限定されることはなく、図8(a)あるいは図8(c)に示される構造にしても良い。このような構造を各実施形態に採用した場合でも、前記(1)〜(6)と同様な効果を奏する。
【0049】
また、前記実施形態では、給排気管を2本設けているが、これに限定することなく、2本以上の複数本としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】(a)は第1の実施形態の平面型放電管の平面図、(b)は前記平面型放電管のF−F断面図である。
【図2】第1の実施形態の平面型放電管を複数、並列配設した図である。
【図3】第1の実施形態の平面型放電管を複数、並列配設した場合の一部詳細図である。
【図4】(a)は第1の実施形態の平面型放電管の放電空間内を洗浄するための配管系統図、(b)は第1の実施形態の平面型放電管の放電空間内のガスを置換するための配管系統図である。
【図5】(a)は第2の実施形態の平面型放電管の平面図、(b)は前記平面型放電管のF−F断面図である。
【図6】(a)は応用例の一つである平面型放電管の平面図、(b)は前記平面型放電管のF−F断面図である。
【図7】(a)は従来の平面型放電管の斜視図、(b)は前記平面型放電管の平面図、(c)は前記平面型放電管のX−X断面図である。
【図8】従来の平面型放電管における給排気管取付部の詳細断面図である。
【符号の説明】
【0051】
51,71,81・・・平面型放電管、52a、52b・・・ガラス基板、53・・・周枠、53a、53b・・・一側面壁、60,60a、60b・・・給排気管、62・・・誘電体リブ、72・・・不活性ガスボンベ、73a、73b、75a、75b・・・バルブ、74・・・真空ポンプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する一対の誘電体平板を互いに連結する側壁を介して、放電空間に連通した給排気管を使用し、前記放電空間内の空気と放電ガスとを置換するようにした平面型放電管において、
前記給排気管を前記側壁に複数本設けた、
ことを特徴とする平面型放電管。
【請求項2】
表面形状が略正方形または略長方形を有する前記一対の誘電体平板を互いに連結する4つの側壁面のうちの一側壁の長さの垂直二等分線を対称線として、それぞれの側に第1の給排気管と第2の給排気管とが設けられ、
かつ、前記対称線から前記第1の給排気管の中心軸線までの距離をX,前記第2の給排気管の中心軸線までの距離をY、第1及び第2の給排気管の外径をD及び前記一側壁から見た放電空間の幅をBとして、
X≦(B−D)/2、Y≦(B−D)/2、Y≧X+2×D、とした、
ことを特徴とする請求項1に記載の平面型放電管。
【請求項3】
表面形状が略正方形または略長方形を有する前記一対の誘電体平板を互いに連結する4つの側壁面のうち、互いに対向する2つの側壁のそれぞれに第1の給排気管と第2の給排気管とを設けた、
ことを特徴とする請求項1に記載の平面型放電管。
【請求項4】
前記第1の給排気管と前記第2の給排気管とは、略正方形または略長方形を有する前記一対の誘電体平板の表面における2本の対角線の交点を対称点として、それぞれが互いに点対称な位置に設けられる、
ことを特徴とする請求項3に記載の平面型放電管。
【請求項5】
表面形状が略円形または略楕円形を有する前記一対の誘電体平板を互いに連結する側壁面であって、前記誘電体平板の表面形状である略円形または略楕円形の中心軸線と外形線とが交わる位置に相当する側壁面の2箇所のそれぞれに第1の給排気管と第2の給排気管とを設けた、
ことを特徴とする請求項1に記載の平面型放電管。
【請求項6】
前記放電空間内には、互いに平行に配置された複数の誘電体リブが配設されるとともに、
前記給排気管の中心軸線の延びる方向は、前記誘電体リブが互いに平行に延びる方向と同一方向である、
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の平面型放電管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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