広い表面積を有する医療器具用のコーティング
本明細書においては、治療薬を患者の生体組織に送達するための埋め込み型医療器具、およびそのような医療器具を製作するための方法を説明する。特に、血管内ステントなどの埋め込み型医療器具は、少なくとも1つのコーティング組成物を含む、露出した管腔外面および露出した管腔内面または露出した側面を備えるコーティングを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書においては、治療薬を患者の生体組織に送達するための埋め込み型医療器具、およびそのような医療器具を製作するための方法について説明する。特に、いくつかの実施形態は、表面積の大きなコーティングを有する、血管内ステントなどの埋め込み型医療器具を対象とし、このコーティングは、露出した管腔外面および露出した管腔内面または露出した側面を有する少なくとも1つのコーティング組成物を含む。
【背景技術】
【0002】
治療薬を入れた医療器具は、これまでに患者の生体組織の治療に関して成功を収めてきた。例えば、再狭窄を予防するための治療薬を含有するコーティングが施されている血管内ステントは、再狭窄の発生を低減するのに成功してきた。いくつかの場合において、再狭窄の低減を改善するために、コーティングから生体組織に送達される治療薬の量を増やすことが望ましいことがある。
【0003】
生体組織に送達される治療薬の量を増やす一方法は、コーティング内に装填される治療薬の量を増やすことである。しかしながら、治療薬の放出を制御することなど、大量の治療薬を含有するコーティングにはいくつかの難題が伴う。特に、コーティング中の治療薬の量がさらに多いと、コーティングから治療薬が放出される速度が速すぎ、それによって治療薬の望ましい持続放出ではなく、「爆発的放出」効果を生じる可能性がある。
【0004】
医療器具コーティングに含まれ、生体組織に送達される治療薬の量を増やす他の方法は、組織に対し露出されるコーティングの表面積を増やすことである。一般に、コーティング組成物がステントなどの医療器具の表面に配置されるときに、コーティングの露出した表面積は、コーティングが配置される医療器具の表面積に一般的には等しい。したがって、医療器具表面の表面積が、コーティングの露出した表面積を制約する。
【0005】
コーティングの露出した表面積を増やす一方法は、医療器具の表面から材料を除去して、コーティングが配置され得る表面積を増やすことである。しかしながら、医療器具から材料を除去すると、医療器具の構造的完全性に悪影響を及ぼす可能性がある。例えば、ステントのストラット中に孔ができると、ステント・ストラットの構造的完全性が損なわれ、ストラットが弱まる可能性がある。ストラットが弱くなると、ステントは適切な拡張をしなくなるか、または埋め込まれた後に、つぶれて、体腔の再閉塞を引き起こすおそれがある。
【0006】
そこで、治療薬を生体組織に送達するために露出した表面積を増やしたコーティングを有する医療器具が必要である。さらに、医療器具の構造的完全性に悪影響を及ぼさない露出した表面積を増やしたそのような医療器具コーティングを形成する方法が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記した問題を解決することができる医療器具用のコーティングを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
これらおよび他の目的は、本明細書で説明されているコーティングおよび医療器具によって達成される。本明細書で説明されるのは、治療薬を患者に送達するために露出した表面積を増やしたコーティングを備える、血管内ステントなどの医療器具である。コーティングの露出した表面積を増やすことで、より多くの量の治療薬をコーティングから放出制御しつつ送達することができ、したがって、治療薬の望ましくない、早すぎる、または急速な放出を回避することができる。さらに、本明細書で説明されているコーティングは、医療器具の構造的完全性を損なうことなく上記目的を達成することができる。
【0009】
いくつかの実施形態は、管腔外面(abluminal surface)および管腔外面の反対側にある管腔内面(luminal surface)を有するステント側壁構造と、管腔外面の少なくとも一部に配置されたコーティング組成物からなるコーティングを有する埋め込み可能なステントを含む。コーティングは、露出した管腔外面(exposed abluminal surface)および露出した管腔内面(exposed luminal surface)または露出した側面を有する。露出した表面は、他の材料によって覆われない表面である。
【0010】
いくつかの実施形態は、ステント側壁構造を有する埋め込み可能な血管内ステントを含み、このステント側壁構造はステント側壁構造内に複数のストラットおよび複数の開口部を備える。少なくとも1つのストラットは、管腔外面および管腔外面の反対側にある管腔内面を有する。コーティング組成物からなるコーティングは、コーティングが露出した管腔外面および露出した管腔内面、または露出した側面を有するようにストラットの管腔外面の少なくとも一部に直接配置される。コーティング組成物は、生体安定性ポリマーと抗再狭窄薬を含む。
【0011】
他の実施形態は、管腔外面および管腔外面の反対側にある管腔内面を有するステント側壁構造と、ステント側壁構造の管腔外面の少なくとも一部に配置されたコーティングとを有する埋め込み可能なステントを含む。コーティングは、ステント側壁構造の管腔外面の少なくとも一部に配置された第1のコーティング組成物と、第1のコーティング組成物上に配置された第2のコーティング組成物とを含む。コーティングは、露出した管腔外面および露出した管腔内面または露出した側面を有する。
【0012】
さらに他の実施形態は、ステント側壁構造を有する埋め込み可能な血管内ステントを含み、このステント側壁構造はステント側壁構造内に複数のストラットおよび複数の開口部を備える。少なくとも1つのストラットは、管腔外面および管腔外面の反対側にある管腔内面を有する。コーティングは、ストラットの管腔外面の少なくとも一部の上に配置される。コーティングは、ストラットの管腔外面の少なくとも一部に直接配置された、第1の生体安定性ポリマーを含む第1のコーティング組成物と、第1のコーティング組成物上に直接配置された第2のコーティング組成物を含む。第2のコーティング組成物は、第2の生体安定性ポリマーと抗再狭窄薬を含む。コーティングは、露出した管腔外面および露出した管腔内面または露出した側面を有する。
【0013】
本明細書で説明されている他の実施形態は、管腔外面および管腔外面の反対側にある管腔内面を有するステント側壁構造、および管腔外面の少なくとも一部に配置されたコーティングを有する埋め込み可能なステントを含む。コーティングは、管腔外面の少なくとも一部に配置された第1のコーティング組成物、第1のコーティング組成物上に配置された第2のコーティング組成物、および第2のコーティング組成物上に配置された第3のコーティング組成物を含む。コーティングは、露出した管腔外面および露出した管腔内面または露出した側面を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本明細書で説明されている実施形態で使用するのに適しているステントの1実施例を示す図。
【図2A】ステント・ストラットの一部の上にコーティング組成物が配置されている実施形態を示す断面図。
【図2B】ステント・ストラットの一部の上にコーティング組成物が配置されている実施形態を示す断面図。
【図2C】ステント・ストラットの一部の上にコーティング組成物が配置されている実施形態を示す断面図。
【図2D】ステント・ストラットの一部の上にコーティング組成物が配置されている実施形態を示す断面図。
【図2E】ステント・ストラットの一部の上にコーティング組成物が配置されている実施形態を示す断面図。
【図2F】ステント・ストラットの一部の上にコーティング組成物が配置されている実施形態を示す断面図。
【図3A】ステント・ストラットの一部の上に2つのコーティング組成物が配置されている実施形態を示す断面図。
【図3B】ステント・ストラットの一部の上に2つのコーティング組成物が配置されている実施形態を示す断面図。
【図3C】ステント・ストラットの一部の上に2つのコーティング組成物が配置されている実施形態を示す断面図。
【図3D】ステント・ストラットの一部の上に2つのコーティング組成物が配置されている実施形態を示す断面図。
【図3E】ステント・ストラットの一部の上に2つのコーティング組成物が配置されている実施形態を示す断面図。
【図4A】ステント・ストラットの一部の上に3つのコーティング組成物が配置されている実施形態を示す断面図。
【図4B】ステント・ストラットの一部の上に3つのコーティング組成物が配置されている実施形態を示す断面図。
【図4C】ステント・ストラットの一部の上に3つのコーティング組成物が配置されている実施形態を示す断面図。
【図5】ストラットの一部にそって広がるコーティングを有するステント・ストラットの一部を示す斜視図。
【図6】ステント・ストラットの表面の一部に配置されているコーティングを有する他のステント・ストラットを示す斜視図。
【図7】コーティングが配置されているステントの管腔外面の部分の鏡像を形成するコーティングを有するステントを示す斜視図。
【図8A】ステント・ストラットの一部の上にコーティング組成物が配置されている追加の実施形態を示す断面図。
【図8B】ステント・ストラットの一部の上にコーティング組成物が配置されている追加の実施形態を示す断面図。
【図8C】ステント・ストラットの一部の上にコーティング組成物が配置されている追加の実施形態を示す断面図。
【図8D】ステント・ストラットの一部の上にコーティング組成物が配置されている追加の実施形態を示す断面図。
【図8E】ステント・ストラットの一部の上にコーティング組成物が配置されている追加の実施形態を示す断面図。
【図8F】ステント・ストラットの一部の上にコーティング組成物が配置されている追加の実施形態を示す断面図。
【図8G】ステント・ストラットの一部の上にコーティング組成物が配置されている追加の実施形態を示す断面図。
【図8H】ステント・ストラットの一部の上にコーティング組成物が配置されている追加の実施形態を示す断面図。
【図9A】本明細書で説明されている方法によりコーティング医療器具を製作するための方法を示す図。
【図9B】本明細書で説明されている方法によりコーティング医療器具を製作するための方法を示す図。
【図10A】本明細書で説明されている方法によりコーティング医療器具を製作するための他の方法を示す図。
【図10B】本明細書で説明されている方法によりコーティング医療器具を製作するための他の方法を示す図。
【図10C】本明細書で説明されている方法によりコーティング医療器具を製作するための他の方法を示す図。
【図11A】本明細書で説明されている方法によりコーティング医療器具を製作するためのさらに他の方法を示す図。
【図11B】本明細書で説明されている方法によりコーティング医療器具を製作するためのさらに他の方法を示す図。
【図11C】本明細書で説明されている方法によりコーティング医療器具を製作するためのさらに他の方法を示す図。
【図11D】本明細書で説明されている方法によりコーティング医療器具を製作するためのさらに他の方法を示す図。
【図12A】本明細書で説明されている方法によりコーティング医療器具を製作するためのさらに他の方法を示す図。
【図12B】本明細書で説明されている方法によりコーティング医療器具を製作するためのさらに他の方法を示す図。
【図12C】本明細書で説明されている方法によりコーティング医療器具を製作するためのさらに他の方法を示す図。
【図12D】本明細書で説明されている方法によりコーティング医療器具を製作するためのさらに他の方法を示す図。
【図13A】本明細書で説明されている方法によりコーティング医療器具を製作するための他の方法を示す図。
【図13B】本明細書で説明されている方法によりコーティング医療器具を製作するための他の方法を示す図。
【図13C】本明細書で説明されている方法によりコーティング医療器具を製作するための他の方法を示す図。
【図13D】本明細書で説明されている方法によりコーティング医療器具を製作するための他の方法を示す図。
【図13E】本明細書で説明されている方法によりコーティング医療器具を製作するための他の方法を示す図。
【図14A】本明細書で説明されている方法によりコーティング医療器具を製作するためのさらに他の方法を示す図。
【図14B】本明細書で説明されている方法によりコーティング医療器具を製作するためのさらに他の方法を示す図。
【図14C】本明細書で説明されている方法によりコーティング医療器具を製作するためのさらに他の方法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書で説明されている実施形態のコーティングは、表面を有する任意の医療器具に関連して使用することができる。図1は、本明細書で説明されている実施形態で使用するのに適している医療器具の1実施例を示している。この図は、第1の側面22と、対向する第2の側面(図示されていない)とを有する側壁20からなる埋め込み可能な血管内ステント10を示している。第1の側壁表面22は、ステントが埋め込まれるときに体腔壁に面する外側の面、すなわち管腔外側壁表面、あるいは、体腔壁から離れて体腔の中心に向かう内側の面、すなわち管腔内側壁表面とすることができる。ステント10はまた、側壁20に複数のストラット30および少なくとも1つの開口部40を有する。一般的に、開口部40は、隣接するストラット30の間に配置される。好適なステント側壁構造は、複数のストラットと開口部を有し、少なくとも1つのストラットは、コーティング組成物が配置されるステントの管腔外面の一部をなす管腔外面を備え、ストラットは、ステントの管腔内面の一部をなす、ストラットの管腔外面の反対側にある管腔内面を備える。ステント側壁構造内に開口部を有するステントでは、いくつかの実施形態において、ステントに施されるコーティングは、側壁ステント構造内の開口部が温存されるように、例えば、開口部全体または一部がコーティング材料で閉塞されることのないように、ステントの表面に適合することが好ましい。
【0016】
図2Aは、ステント・ストラット50の一部の上に、コーティング組成物62からなるコーティング60が配置されている1実施形態の断面図である。ステント・ストラット50は、管腔外面52と管腔内面54を有する。この実施形態では、コーティング60は、ステント・ストラット50の管腔外面52上に配置される。コーティングは、ポリマー、金属、金属酸化物、セラミック酸化物、不活性炭素、またはこれらの組合せなどのコーティング材料64と、治療薬66とからなるコーティング組成物62を含む。また、コーティング材料64は、ストラット50を形成する材料と同じであっても、異なっていてもよい。コーティング組成物62は、管腔内壁に向かう露出した管腔外面68、内腔の中心に向かう露出した管腔内面69、および露出した側面65を有する。
【0017】
治療薬の放出元とすることができる、露出した管腔外面、例えば、体腔に面するコーティングの表面のみを有するコーティングとは異なり、本明細書で説明されているコーティングは、治療薬66の放出元とすることができる、露出した管腔内面69、例えば、内腔の中心に向かうコーティングの表面、または露出した側面65、例えば、管腔外面または管腔内面に対して直交する、または管腔外面または管腔内面に対して角度をなす表面も含む。図2Aに示されているコーティングの実施形態は、露出した管腔外面68、露出した管腔内面69、および2つの露出した側面65を有する。したがって、図2Aに示されている実施形態では、治療薬は、表面68,69からだけでなく、表面65からも放出され得る。治療薬の放出元とすることができる表面積を増やすことで、コーティング中の放出可能な治療薬の量を増やし、コーティング中に未使用のまま残る治療薬の量を減らすことができる。
【0018】
図2Aに示されているように、体腔の中心に向かって、体腔壁から離れる面であるストラットの管腔内面54は、コーティング60を実質的に含まない。本明細書で使用されているように、「コーティングを実質的に含まない」という文言は、コーティングは表面上に意図的に配置されることはないということを意味する。代替の実施形態では、コーティングは、管腔内面だけでなく管腔外面にも配置され得る。管腔内面に配置されているコーティングは、管腔外面に配置されているコーティングと同じであっても、異なっていてもよい。例えば、管腔外面に配置されているコーティングは、血管壁に対して露出されるか、または血管壁に導入され得る治療薬を備えるコーティング組成物を含むことができる。管腔内面に配置されているコーティングは、血流に対して露出されるか、または血流に導入され得る治療薬または表面を備えるコーティング組成物を含むことができる。他の実施形態では、管腔内面に配置されているコーティングは、治療薬なしのコーティング組成物を含むことができる。他の実施形態では、コーティングは、管腔内面に配置され得るが、管腔外面は、いかなるコーティングをも実質的に含まない。
【0019】
図2Bは、露出した管腔外面68、露出した管腔内面69、および2つの露出した側面65を有するコーティング組成物62からなるコーティング60の他の実施形態を示している。コーティング60は、コーティング組成物64および治療薬66も含む。図2Aに示されている実施形態とは異なり、この実施形態では、ストラット50は、管腔外面52を越えて延びる部分58を備える。コーティング組成物62は、伸長部分58上に配置される。
【0020】
図2Cおよび2Dに示されている実施形態は、それぞれ、図2Aおよび2Bに示されている実施形態と類似している。しかしながら、図2Cおよび2Dに示されているコーティング60では、治療薬66は、コーティング組成物62全体わたって分散されていない。代わりに、治療薬66は、コーティング組成物62の露出した管腔外面68、露出した管腔内面69、および露出した側面65に、またはその近くに配置される。
【0021】
図2A〜2Dに示されている実施形態では、コーティング組成物62は、ストラット表面上に直接、つまり、ストラット表面に物理的に接触して配置される。図2Eおよび2Fは、コーティング組成物62がストラット50の表面52上に直接配置されていない2つの実施形態を示している。代わりに、接着剤またはストラット表面へのコーティング組成物の接着を強化する他の材料などの介在する材料56が、コーティング組成物62とストラット表面52との間に配置される。
【0022】
図3A〜3Eは、第1および第2のコーティング組成物からなるコーティングがステント・ストラット表面上に配置されている実施形態の断面図である。図3Aでは、コーティング160は、ステント・ストラット150の管腔外面152の少なくとも一部に配置される第1のコーティング組成物170からなる。第2のコーティング組成物162は、第1のコーティング組成物170上に配置される。第2のコーティング組成物162は、露出した管腔外面168、露出した管腔内面169、および露出した側面165を有する。第1のコーティング組成物170は、ポリマー、金属、金属酸化物、セラミック酸化物、不活性炭素、またはこれらの組合せなどの第1のコーティング材料172からなる。第2のコーティング組成物162は、ポリマー、金属、金属酸化物、セラミック酸化物、不活性炭素、またはこれらの組合せなどの第2のコーティング材料164からなる。第1のコーティング組成物170は、第2のコーティング組成物162と同じであっても、異なっていてもよい。さらに、第1または第2のコーティング材料172,164は、ストラット150を形成する材料と同じであっても、異なっていてもよい。図3Aに示されているように、第2のコーティング組成物162は治療薬166も含む。いくつかの実施形態では、第1のコーティング組成物170は、第2のコーティング組成物162の治療薬166と同じであるか、または異なる治療薬も含み得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、第1のコーティング組成物は、第2のコーティング組成物の蒸着に先立って、管腔外面上に配置されたときに第1の露出した管腔外面の面積を有し、第2のコーティング組成物は、第1のコーティング組成物上に配置されたときに第2の露出した管腔外面の面積を有し、第2の露出した管腔外面の面積は、第1の露出した管腔外面の面積より広い。
【0024】
図3Bは、コーティング160が第1および第2のコーティング組成物170,162からなることを除き、図2Bに示されているのと似た他の実施形態を示している。特に、図3Bでは、コーティング160は、管腔外面152を越えて延びるステント・ストラット150の一部158に配置される第1のコーティング組成物170からなる。第2のコーティング組成物162は、第1のコーティング組成物170上に配置され、この第2のコーティング組成物162は、露出した管腔外面168、露出した管腔内面169、および露出した側面165を有する。
【0025】
図3Cに示されている実施形態は、図3Aに示されているものと類似している。しかしながら、図3Cに示されているコーティング160では、治療薬166は、第2のコーティング組成物162全体わたって分散されていない。代わりに、治療薬166は、第2のコーティング組成物162の露出した管腔外面168、露出した管腔内面169、および露出した側面165に、またはその近くに配置される。
【0026】
図3Dは、第1および第2のコーティング組成物170,162からなるコーティング160を伴う1実施形態を示しており、第1のコーティング組成物170は、管腔外面174および管腔内面176とともに2つの側面178を有している。第2のコーティング組成物162は、第1のコーティング組成物170の管腔外面174、管腔内面176、および2つの側面178上に配置される。第2のコーティング組成物は、露出した管腔外面168、露出した管腔内面169、および露出した側面165を有する。
【0027】
図3A〜3Dは、ステント・ストラット150の管腔外面152上に直接配置された第1のコーティング組成物170および第1のコーティング組成物170上に直接配置された第2のコーティング組成物162を示しているが、他の実施形態では、介在する材料を、第1のコーティング組成物162とストラット150の管腔外面152との間に配置することができ、したがって、第1のコーティング組成物は、ステントの管腔外面上に直接配置されることはない。代わりに、介在する材料は、第1のコーティング組成物162と第2のコーティング組成物170との間に配置することができ、したがって、第1のコーティング組成物は、第2のコーティング組成物上に直接配置されることはない。図3Eは、図2Eおよび2Fに示されている、接着剤などの介在する材料156が2つのコーティング組成物の間に配置されている、第1および第2のコーティング組成物170,162からなるコーティング160を示している。
【0028】
医療器具の管腔外面上に配置されているコーティングは、医療器具の表面の少なくとも一部に配置されている第1のコーティング組成物、第1のコーティング組成物上に配置されている第2のコーティング組成物、および第2のコーティング組成物の露出した表面上に配置される治療薬を含む第3のコーティング組成物も含むことができ、第3のコーティング組成物は、図4A〜4Cに示されているように、露出した管腔外面および露出した管腔内面を有する。
【0029】
図4Aは、管腔外面252、管腔内面254、およびコーティング260を有するステント・ストラット250を示している。コーティング260は、ステント・ストラット250の管腔外面252の少なくとも一部に配置される第1のコーティング組成物280からなる。第2のコーティング組成物270は、第1のコーティング組成物280上に配置され、第3のコーティング組成物262は、第2のコーティング組成物270上に配置される。第3のコーティング組成物262は、露出した管腔外面268、露出した管腔内面269、および露出した側面265を有する。第1のコーティング組成物280は、ポリマー、金属、金属酸化物、セラミック酸化物、不活性炭素、またはこれらの組合せなどの第1のコーティング材料282を含む。第2のコーティング組成物270は、ポリマー、金属、金属酸化物、セラミック酸化物、不活性炭素、またはこれらの組合せなどの第2のコーティング材料272からなる。第3のコーティング組成物262は、ポリマー、金属、金属酸化物、セラミック酸化物、不活性炭素、またはこれらの組合せなどの第3のコーティング材料264からなる。第1、第2、または第3のコーティング組成物280,270,262は、同じ、または異なる材料を含んでいてもよい。さらに、第1、第2、または第3のコーティング材料282,272,264は、ストラット250を形成する材料と同じであっても、異なっていてもよい。図4Aに示されているように、第3のコーティング組成物262は、治療薬266も含む。いくつかの実施形態では、第1または第2のコーティング組成物280,270は、第3のコーティング組成物262の治療薬266と同じであるか、または異なる、治療薬も含み得る。
【0030】
図4Bは、3つのコーティング組成物を含むコーティングを示している。コーティング260は、管腔外面252を越えて延びるステント・ストラット250の一部258に直接配置されている第1のコーティング組成物280を含む。第2のコーティング組成物270は、第1のコーティング組成物280上に配置され、第3のコーティング組成物262は、第2のコーティング組成物270上に配置される。第3のコーティング組成物262は、露出した管腔外面268、露出した管腔内面269、および露出した側面265、さらにはその中に配置される治療薬266を有する。
【0031】
図4Aおよび4Bは、第2のコーティング組成物上に直接配置されている第3のコーティング組成物と、第1のコーティング組成物上に直接配置されている第2のコーティング組成物とを示しているが、第3および第2のコーティング組成物は、第2および第1のコーティング組成物上に直接配置される必要はない。図4Cは、介在する材料256が第1のコーティング組成物280と第2のコーティング組成物270との間に配置されている第1、第2、および第3のコーティング組成物280,270,262からなるコーティング260を示している。他の実施形態では、介在する材料は、第1のコーティング組成物280とストラット250の管腔外面252との間に配置され得る。
【0032】
断面図である図2A〜2F、3A〜3E、および4A〜4Cに示されている実施形態と比較すると、図5では、コーティング60がストラット50の長さにそって延びる図2Aのものと似たコーティングの斜視図を示している。ストラット50は、管腔外面52と管腔内面54を有する。コーティング60は、ストラットの管腔外面52上に配置される。上述の図に示されているようなコーティングは、この構成でストラット上に配置することも可能である。コーティング60は、露出した管腔外面68、露出した管腔内面69、および露出した側面65、さらには治療薬66を有するコーティング組成物62からなる。
【0033】
図6は、コーティング360が、ステント・ストラット350の管腔外面352のいくつかの部分上に配置されているコーティング組成物362を含む他の実施形態の斜視図である。コーティング360は、露出した管腔外面368、露出した管腔内面369、および露出した側面365を有する。コーティング組成物362は、コーティング材料364および治療薬366を含む。ステント・ストラットの一部分に配置されているコーティング組成物は、この図では同じであるけれども、このようなコーティング組成物は異なっていてもよい。また、追加のコーティング組成物を、ステント・ストラットの管腔内面上に配置することも可能である。
【0034】
いくつかの実施形態では、ステント表面の一部に配置されているコーティングは、ステント表面の部分の鏡像とすることができる。例えば、図7は、コーティング460がステントの管腔外面452の一部分に配置されているステント410の一部を示す斜視図である。コーティング460は、コーティング材料464および治療薬466を含むコーティング組成物462を含む。コーティング組成物462は、露出した管腔外面468、露出した管腔内面469、および露出した側面467を有する。コーティング組成物の管腔外面468および管腔内面469は、コーティング460が配置されている管腔外面452の部分の鏡像である。コーティングは、表面上に配置される前に表面の鏡像の形で事前に形成され得る。
【0035】
いくつかの実施形態では、コーティングは、図2に示されているような「T」字型の断面、または図8Aに示されているような逆「T」字型の断面を持つことができる。図8Aは、露出した管腔外面502および露出した側面504を有するコーティング500を示している。他の実施形態では、コーティングの断面は、変更された「T」字型とすることが可能である。例えば、図8Bに示されているように、コーティング510の断面は、丸められた縁516と湾曲面517を伴う露出した管腔外面512、露出した管腔内面513、および露出した側面514を有するものとしてよい。図8Cに示されている実施形態では、コーティング520は、「T」の露出した管腔外面522、露出した管腔内面524、および露出した側面526が長く延びた隆起部528を持つ他の修正「T」字型の断面を有する。長く延びた隆起部は、コーティングの露出した表面積をさらに増やす。
【0036】
さらに他の実施形態では、コーティングの断面を他の形状とすることが可能である。他の好適な形状は、図8D〜図8Hに示されている。図8Dは、露出した管腔外面532、露出した管腔内面534、および露出した側面536を有する「I」字型のコーティング530の断面を示している。図8Eは、「V」字型のコーティング540の断面を示している。コーティングは、露出した管腔外面542および露出した管腔内面544を有する。図8Fは、露出した管腔外面552および露出した側面554を有する、「E」を90°回転させた形状であるコーティング550の断面を示している。図8Gは、露出した管腔外面562および露出した側面564を有する、「U」字型の形状であるコーティング560の断面を示している。図8Hは、露出した管腔外面572および露出した管腔内面564を持つコーティング570の三角形の形の断面を示している。
【0037】
コーティングはどのような厚さであってもよい。いくつかの実施形態では、コーティングは、約5マイクロメートルから約40マイクロメートルまでの厚さを有することができる。好ましくは、コーティングは、約5マイクロメートルから約15マイクロメートルまでの厚さを有する。いくつかの場合において、組み込む治療薬を増やすためには比較的厚いコーティングが好ましい。本明細書で説明されている実施形態のコーティングは、コーティング組成物の複数の層を含むことができる。例えば、コーティングは、異なるコーティング組成物の複数の層または同じコーティング組成物の複数の層を含むことが可能である。
【0038】
本明細書で説明されているコーティング組成物はまた、複数の微細孔を含んでいてもよい。微細孔は、一方のコーティング組成物の表面から他方のコーティング組成物の表面または医療器具の表面へと広がるようにできる。微細孔は、限定はしないが、流路、中空の通路または極微導管、球体または半球体を含む任意の形状とすることができる。加えて、微細孔は、任意の寸法または一連の複数の寸法を有するものとすることができる。いくつかの場合において、微細孔は、ミクロ細孔またはナノ細孔であってもよい。微細孔はまた、コーティング組成物全体にわたって分配されるか、またはコーティング組成物の露出した表面の近くなど、コーティング組成物の特定の領域内に配置され得る。いくつかの実施形態では、微細孔は、コーティング組成物の露出した管腔外面および露出した管腔内面の近くに配置される。また、微細孔は、ランダムに分配されるか、またはあるパターンに従って分配され得る。いくつかの実施形態では、コーティング組成物が少なくとも1つの治療薬も含み、治療薬をそれらの微細孔の少なくとも一部に、または全部に配置することができる。
A.医療器具
本明細書で説明されている実施形態に適している医療器具は、当業者に知られている、医療目的に適う任意のステントを含む。好適なステントとしては、例えば、自己拡張式ステントおよびバルーン拡張式ステントなどの血管ステントが挙げられる。自己拡張式ステントの例は、ウォルステン(Wallsten)に発行された米国特許第4,655,771号および第4,954,126号、ならびにウォルステンら(Wallsten et al.)に発行された米国特許第5,061,275号に示されている。適切なバルーン拡張式ステントの例は、ピンチャシクら(Pinchasik et al.)に発行された米国特許第5,449,373号に示されている。好ましい実施形態では、好適なステントは、Expressステントである。より好ましくは、Expressステントは、Express(商標)ステントまたはExpress2(商標)ステント(ボストンサイエンティフィックインコーポレイティッド(Boston Scientific,Inc.)[米国マサチューセッツ州ナティック(Natick)所在])である。
【0039】
好適なステントのフレームワークは、当技術分野で知られているようなさまざまな方法を通じて形成され得る。フレームワークは、溶接されるか、成形されるか、レーザー切断されるか、電気鋳造されるか、または連続構造を形成するように巻かれるか、または編んでまとめられた長繊維または繊維からなるものとすることができる。
【0040】
本明細書で説明されている実施形態に適している医療器具は、金属、セラミック、ポリマー、もしくは複合材料、またはこれらの組合せから製作することができる。いくつかの場合において、医療器具は、非ポリマー材料で作ることが可能である。好ましくは、これらの材料は生体適合性のある材料である。金属材料がより好ましい。好適な金属材料として、チタンをベースとする金属および合金(ニチノール、ニッケルチタン合金、熱記憶合金材料など)、ステンレス鋼、タンタル、ニッケルクロム、またはElgiloy(登録商標)およびPhynox(登録商標)などのコバルトクロムニッケル合金を含むいくつかのコバルト合金、PERSS(Platinum EnRiched Stainless Steel、白金富化ステンレス鋼)、およびニオブが挙げられる。金属材料は、国際公開第94/16646号で開示されているようなクラッド長繊維複合材料をも含む。
【0041】
好適なセラミック材料としては、限定はしないが、チタン、ハフニウム、イリジウム、クロム、アルミニウム、およびジルコニウムなどの遷移元素の酸化物、炭化物、または窒化物が挙げられる。シリカなどのシリコンベースの材料も使用できる。
【0042】
医療器具を形成するのに適しているポリマーは、生体安定性を有するものとすることができる。また、ポリマーは、生体分解性を有するものとすることもできる。好適なポリマーとしては、限定はしないが、スチレンイソブチレンスチレン、ポリエーテルオキシド(polyetheroxides)、ポリビニルアルコール、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリアミド、ポリ−2−ヒドロキシブチレート、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸グリコール酸共重合体、Teflon(登録商標)が挙げられる。
【0043】
本明細書で説明されている実施形態において医療器具を形成するために使用され得るポリマーとしては、限定はしないが、イソブチレン系ポリマー(isobutylene−based polymer)、ポリスチレン系ポリマー(polystyrene−based polymer)、ポリアクリレートおよびポリアクリレート誘導体、ビニル酢酸系のポリマーおよびその共重合体、ポリウレタンおよびその共重合体、シリコーンおよびその共重合体、エチレン酢酸ビニル、ポリエチレンテレフタレート、熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、セルロース誘導体、ポリアミド、ポリエステル、ポリスルホン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリカーボネート、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、アクリル、ポリ乳酸−ポリエチレンオキシド共重合体、セルロース、コラーゲン、およびキチンが挙げられる。
【0044】
医療器具用の材料として有用な他のポリマーとしては、限定はしないが、ダクロンポリエステル、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピレン、ポリアルキレンオキサレート、ポリシロキサン、ナイロン、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリシアノアクリレート、ポリホスファゼン、ポリ(アミノ酸)、エチレングリコールIジメタクリレート、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリテトラフルオロエチレンポリ(HEMA)、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリカーボネート、ポリ(γ−ヒドロキシブチレート)、ポリジオキサノン、ポリ(γ−エチルグルタミン酸塩)、ポリイミノカーボネート、ポリ(オルトエステル)、ポリアンハイドライド、アルギン酸塩、デキストラン、綿、ポリウレタン、またはこれらの誘導体化したもの、つまり、例えば付着部位または架橋基、例えばRGDを含むように修飾された、タンパク質、核酸、および同様の物質などの細胞および分子の付着を可能にしつつ構造的完全性を保持するポリマーが挙げられる。
B.コーティング材料および介在材料
本明細書で説明されているコーティング組成物は、限定はしないが、ポリマー、金属酸化物、セラミック酸化物、金属、不活性炭素、またはこれらの組合せなどの任意のコーティング材料からなるものとしてよい。これに加えて、コーティング組成物は、放射線不透過性を有し、および/またはMRI適合性を有するものとすることができる。上述のように、本明細書で説明されているコーティング組成物は、同じ1つまたは複数の材料、あるいは異なる1つまたは複数の材料からなるものとしてよい。
(ポリマー)
本明細書で説明されているコーティング組成物で使用するのに有用なポリマーは、特に医療器具を体内に挿入または埋め込む際に生体適合性があるものであるべきであり、また生体組織に刺激をもたらさないものである。好適なポリマーは、生体安定性を有するか、または代わりに、生体分解性を有するものとしてよい。このようなポリマーの例としては、限定はしないが、ポリウレタン、ポリイソブチレンとその共重合体、シリコーン、およびポリエステルが挙げられる。他の好適なポリマーとして、ポリオレフィン、ポリイソブチレン、エチレン−αオレフィン共重合体、アクリルポリマーおよび共重合体、ポリ塩化ビニルなどのハロゲン化ビニルポリマーおよび共重合体、ポリビニルメチルエーテルなどのポリビニルエーテル、ポリフッ化ビニリデンおよびポリ塩化ビニリデンなどのポリハロゲン化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルケトン、ポリスチレンなどのポリビニル芳香族化合物、ポリ酢酸ビニルなどのポリビニルエステル、ビニル単量体の共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体などのビニル単量体とオレフィンの共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ABS樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、Nylon 66およびポリカプロラクトンなどのポリアミド、アルキド樹脂、ポリカーボネート、ポリオキシエチレン、ポリイミド、ポリエーテル、エポキシ樹脂、ポリウレタン、レーヨントリアセテート、セルロース、酢酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、セロファン、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロース、セルロースエーテル、カルボキシメチルセルロース、コラーゲン、キチン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、およびポリ乳酸−ポリエチレンオキシド共重合体が挙げられる。
【0045】
いくつかの実施形態では、疎水性ポリマーが使用可能である。好適な疎水性ポリマーまたは単量体の例として、限定はしないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(1−ブテン)、ポリ(2−ブテン)、ポリ(1−ペンテン)、ポリ(2−ペンテン)、ポリ(3−メチル−1−ペンテン)、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、ポリ(イソプレン)、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ヘキサジエン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、2つまたはそれ以上のポリオレフィンのブレンド、および2つまたはそれ以上の異なる不飽和単量体から調製されたランダムおよびブロック共重合体などのポリオレフィン、ポリ(スチレン)、スチレン−イソブチレン共重合体、ポリ(2−メチルスチレン)、約20モル%未満のアクリロニトリルを有するスチレン−アクリロニトリル共重合体、およびスチレン−2,2,3,3,−テトラフルオロプロピル−メタクリレート共重合体(styrene−2,2,3,3,−tetrafluoropropyl methacrylate copolymers)などのスチレンポリマー、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)、クロロトリフルオロエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリ(ヘキサフルオロプロピレン)、ポリ(テトラフルオロエチレン)、テトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポリ(トリフルオロエチレン)、ポリ(フッ化ビニル)、およびポリ(フッ化ビニリデン)などのハロゲン化炭化水素ポリマー、ポリ(酪酸ビニル)、ポリ(デカン酸ビニル)、ポリ(ドデカン酸ビニル)、ポリ(ヘキサデカン酸ビニル)、ポリ(ヘキサン酸ビニル)、ポリ(プロピオン酸ビニル)、ポリ(オクタン酸ビニル)、ポリ(ヘプタフルオロイソプロポキシエチレン)、ポリ(ヘプタフルオロイソプロポキシプロピレン)、およびポリ(メタクリロニトリル)などのビニルポリマー、ポリ(n−ブチルアセテート)、ポリ(エチルアクリレート)、ポリ(1−クロロジフルオロメチル)テトラフルオロエチルアクリレート、ポリジ(クロロフルオロメチル)フルオロメチルアクリレート、ポリ(1,1−ジヒドロヘプタフルオロブチルアクリレート)、ポリ(1,1−ジヒドロペンタフルオロイソプロピルアクリレート)、ポリ(1,1−ジヒドロペンタデカフルオロオクチルアクリレート)、ポリ(ヘプタフルオロイソプロピルアクリレート)、ポリ5−(ヘプタフルオロイソプロポキシ)ペンチルアクリレート、ポリ11−(ヘプタフルオロイソプロポキシ)ウンデシルアクリレート、ポリ2−(ヘプタフルオロプロポキシ)エチルアクリレート、およびポリ(ノナフルオロイソブチルアクリレート)などのアクリルポリマー、ポリ(ベンジルメタクリレート)、ポリ(n−ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(t−ブチルメタクリレート)、ポリ(t−ブチルアミノエチルメタクリレート)、ポリ(ドデシルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(2−エチルヘキシルメタクリレート)、ポリ(n−ヘキシルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(n−プロピルメタクリレート)、ポリ(オクタデシルメタクリレート)、ポリ(1,1−ジヒドロペンタデカフルオロオクチルメタクリレート)、ポリ(ヘプタフルオロイソプロピルメタクリレート)、ポリ(ヘプタデカフルオロオクチルメタクリレート)、ポリ(1−ヒドロテトラフルオロエチルメタクリレート)、ポリ(1,1−ジヒドロテトラフルオロプロピル・メタクリレート)、ポリ(1−ヒドロヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート)、およびポリ(t−ノナフルオロブチルメタクリレート)などのメタクリル酸ポリマー、ポリ(エチレンテレフタレート)、およびポリ(ブチレンテレフタレート)などのポリエステル、ポリウレタンおよびシロキサン−ウレタン共重合体などの縮合系ポリマー、ポリオルガノシロキサン、つまり、Ra SiO 4−a/2(式中、Rは一価の置換または非置換炭化水素基であり、aの値は1または2である)で表される、シロキサン基を繰り返すことによって特徴付けられるポリマー、およびゴムなどの天然の疎水性ポリマーが挙げられる。
【0046】
代替の実施形態では、親水性ポリマーが使用可能である。好適な親水性ポリマーまたは単量体の例として、限定はしないが、(メタ)アクリル酸、またはアルカリ金属もしくはそのアンモニウム塩、(メタ)アクリルアミド、メチレンビスアクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸グリコール酸、マレイン酸およびフマル酸またはこれらの不飽和二塩基酸の半エステルなどの不飽和二塩基酸あるいはアルカリ金属またはこれら二塩基酸または半エステルのアンモニウム塩が添加されたポリマー、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、またはアルカリ金属もしくはこれらのアンモニウム塩などの不飽和スルホン酸が添加されたポリマー、および2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートおよび2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0047】
ポリビニルアルコールも、親水性ポリマーの1例である。ポリビニルアルコールは、ヒドロキシル、アミド、カルボキシル、アミノ、アンモニウム、またはスルホニル(−SO3)などの複数の親水基を含むことが可能である。親水性ポリマーとしては、さらに、限定はしないが、デンプン、多糖類、および関連するセルロースポリマー、ポリエチレンオキシドなどのポリアルキレングリコールおよび酸化物、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、およびこれらの酸およびアルキレングリコールなどの多価アルコールから誘導された部分エステルなどの重合エチレン性不飽和カルボン酸、アクリルアミドから誘導されたホモ重合体および共重合体、およびビニルピロリドンのホモ重合体および共重合体が挙げられる。
【0048】
追加の好適なポリマーとして、限定はしないが、一般に熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン、ポリイソブチレン、エチレン−αオレフィン共重合体、アクリルポリマーおよび共重合体、ポリ塩化ビニルなどのハロゲン化ビニルポリマーおよび共重合体、ポリビニルメチルエーテルなどのポリビニルエーテル、ポリフッ化ビニリデンおよびポリ塩化ビニリデンなどのポリハロゲン化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルケトン、ポリスチレンなどのポリビニル芳香族化合物、ポリ酢酸ビニルなどのポリビニルエステル、ビニル単量体の共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体などのビニル単量体とオレフィンの共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)、エチレン酢酸ビニル共重合体、Nylon 66およびポリカプロラクトンなどのポリアミド、アルキド樹脂、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリイミド、ポリエーテル、ポリエーテルブロックアミド、エポキシ樹脂、レーヨントリアセテート、セルロース、酢酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、セロファン、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロース、セルロースエーテル、カルボキシメチルセルロース、コラーゲン、キチン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸−ポリエチレンオキシド共重合体、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン)ゴム、フッ素重合体、フルオロシリコーン、ポリエチレングリコール、多糖類、リン脂質、および前記の組合せが挙げられる。いくつかの実施形態では、好ましいポリマーとしては、限定はしないが、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸グリコール酸、スチレン−イソブチレン−スチレン共重合体、またはこれらの組合せが挙げられる。
(金属またはセラミック酸化物)
いくつかの実施形態では、コーティング組成物は、金属酸化物および/またはセラミック酸化物を含むことができる。金属酸化物またはセラミック酸化物の例として、限定はしないが、酸化白金、酸化タンタル、酸化チタン、酸化タンタル、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化イリジウム、酸化ニオブ、酸化ジルコニウム、酸化タングステン、酸化ロジウム、酸化ルテニウム、二酸化ケイ素などのシリコーン酸化物、またはこれらの組合せが挙げられる。好ましい金属酸化物およびセラミック酸化物としては、酸化イリジウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、またはこれらの組合せが挙げられる。
(金属)
いくつかの実施形態では、コーティング組成物は、金属を含むことができる。好適な金属としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、金属合金、および半金属が挙げられる。金属の例として、限定はしないが、チタン、スカンジウム、ステンレス鋼、タンタル、ニッケル、ケイ素、クロム、コバルト、クロミウム、マンガン、鉄、白金、イリジウム、ニオブ、バナジウム、ジルコニウム、タングステン、ロジウム、ルテニウム、金、銅、亜鉛、イットリウム、モリブデン、テクネチウム、パラジウム、カドミウム、ハフニウム、レニウム、およびこれらの組合せが挙げられる。いくつかの実施形態では、好ましい金属として、限定はしないが、白金、タンタル、マグネシウム、またはこれらの組合せが挙げられる。
(炭素)
他の実施形態では、コーティング組成物は、不活性炭素を含むことができる。不活性炭素の好適な形態としては、限定はしないが、熱分解炭素および多孔質ガラス状炭素を挙げることができる。多孔質炭素の使用は、血栓症を防止し、内皮細胞成長を促進するのに役立ち得る。
【0049】
コーティング材料は、コーティング組成物の少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、少なくとも20重量%、少なくとも30重量%、少なくとも40重量%、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、少なくとも97重量%、少なくとも99重量%またはそれ以上を含み得る。コーティング組成物がポリマーを含むいくつかの実施形態では、ポリマーはコーティング組成物の約60重量%から約99重量%である。コーティング組成物が金属酸化物またはセラミック酸化物を含むいくつかの実施形態では、金属酸化物またはセラミック酸化物はコーティング組成物の約0.1重量%から約5重量%である。コーティング組成物が金属を含むいくつかの実施形態では、金属はコーティング組成物の約0.1重量%から約20重量%である。コーティング組成物が炭素を含むいくつかの実施形態では、炭素はコーティング組成物の約0.1重量%から約50重量%である。
【0050】
いくつかの実施形態では、露出した管腔外面を有するコーティング組成物は、ポリマーを含まないか、またはポリマーを実質的に含まない。本明細書で使用されている「ポリマーを実質的に含まない」という文言は、第1のコーティング組成物に含まれるいかなるポリマーも、第1のコーティング組成物の50重量%未満であることを意味する。そのような実施形態では、コーティング組成物は、上述の金属酸化物、セラミック酸化物、金属、または炭素のうちのいずれかを含むことができる。
(介在材料)
それに加えて、本明細書で説明されているいくつかの実施形態は、介在材料を含む。好適な介在材料は、コーティング組成物を他のコーティング組成物または医療器具の表面に接着する能力を高める。介在材料としては、限定はしないが、接着剤またはテクスチャード加工材料が挙げられる。好適な接着剤としては、限定はしないが、パラリエンCが挙げられる。好適なテクスチャード加工材料は、コーティング組成物の接着を改善するきめを有する材料であり、酸化イリジウム、酸化ジルコニウム、酸化白金、酸化チタン、酸化タンタル、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ニオブ、酸化タングステン、酸化ロジウム、酸化ルテニウム、酸化ケイ素、またはこれらの組合せからなるものとすることができる。テクスチャーは、限定はしないが、レーザー穿孔、マイクロ・ブラスト加工、薄膜のスパッタ・コーティング、物理的気相成長、化学エッチング、およびマイクロ・コンタクト・プリンティングおよびフォトリソグラフィーなどの標準的なリソグラフィー技術を含む、当技術分野で知られている任意の方法によって形成することが可能である。
C.治療薬
本明細書で使用されているような「治療薬」という用語は、薬物、遺伝物質、および生物由来物質を包含するものであり、「生物学的活性物質」と入れ換えて使用することができる。「遺伝物質」という用語は、限定はしないが、ウイルス・ベクターおよび非ウイルス・ベクターを含む、人体に挿入されることが意図されている、後述の有用なタンパク質をエンコードするDNA/RNAを含む、DNAまたはRNAを意味する。
【0051】
「生物由来物質」という用語は、細胞、酵母、細菌、タンパク質、ペプチド、サイトカイン、およびホルモンを包含する。ペプチドおよびタンパク質の例としては、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、形質転換増殖因子(TGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、上皮成長因子(EGF)、軟骨成長因子(CGF)、神経成長因子(NGF)、ケラチノサイト成長因子(KGF)、骨格成長因子(SGF)、骨芽細胞由来成長因子(BDGF)、肝細胞成長因子(HGF)、インスリン様成長因子(IGF)、サイトカイン増殖因子(CGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、低酸素誘導因子−1(HIF−1)、幹細胞由来因子(SDF)、幹細胞因子(SCF)、内皮細胞増殖用添加物(ECGS)、顆粒球マクロファージ・コロニー刺激因子(GM−CSF)、増殖分化因子(GDF)、インテグリン修飾因子(IMF)、カルモジュリン(CaM)、チミジン・キナーゼ(TK)、腫瘍壊死因子(TNF)、成長ホルモン(GH)、骨形態形成タンパク質(BMP)(例えば、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6(Vgr−1)、BMP−7(PO−1)、BMP−8、BMP−9、BMP−10、BMP−11、BMP−12、BMP−14、BMP−15、BMP−16、など)、マトリクス・メタロプロテイナーゼ(MMP)、マトリクス・メタロプロテイナーゼの組織阻害剤(TIMP)、サイトカイン、インターロイキン(例えば、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−15など)、リンホカイン、インターフェロン、インテグリン、コラーゲン(すべての種類)、エラスチン、フィブリリン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、グリコサミノグリカン、プロテオグリカン、トランスフェリン、サイトタクチン、細胞接着ドメイン(例えば、RGD)、およびテネイシンが挙げられる。現在好ましいBMPは、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7である。これらの二量体タンパク質は、ホモ二量体、ヘテロ二量体、またはこれらの組合せとして、単独で、または他の分子と併せて形成され得る。細胞は、ヒト由来のもの(自系または同種異系)であるか、または必要ならば注目するタンパク質を移植部位に送達するために遺伝子操作された動物由来(異種)とすることができる。送達媒体は、細胞機能および生存能力を維持するために必要に応じて調製され得る。細胞には、前駆細胞(例えば、内皮前駆細胞)、幹細胞(例えば、間葉細胞、造血細胞、神経細胞)、間質細胞、実質細胞、未分化細胞、線維芽細胞、マクロファージ、および衛星細胞がある。
【0052】
他の好適な治療薬としては以下のものがある。
・ ヘパリン、ヘパリン誘導体類、ウロキナーゼ、およびPPack(デキストロフェニルアラニンプロリンアルギニンクロロメチルケトン)などの抗血栓症薬、
・ エノキサプリン、アンジオペプチン、または平滑筋細胞増殖を阻害できるモノクローナル抗体、ヒルジン、アセチルサリチル酸、タクロリムス、エベロリムス、ピメクロリムス、シロリムス、ゾタロリムス、アムロジピン、およびドキサゾシンなどの抗増殖剤、
・ グルココルチコイド、ベータメタゾン、デキサメタゾン、プレドニゾロン、コルチコステロン、ブデゾニド、エストロゲン、スルファサラジン、ロシグリタゾン、ミコフェノール酸、およびメサラミンなどの抗炎症薬、
・ パクリタキセル、5−フルオロウラシル、シスプラチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エポチロン、メトトレキサート、アザチオプリン、アドリアマイシンおよびムタマイシン、エンドスタチン、アンギオスタチンおよびチミジンキナーゼ阻害薬、クラドリビン、タクソールおよびそのアナログもしくは誘導体、パクリタキセル、さらにはその誘導体、類似体、またはタンパク質に結合されたパクリタキセル、例えば、Abraxane(商標)などの、抗悪性腫瘍/抗増殖/抗有糸分裂薬、
・ リドカイン、ブピバカイン、およびロピバカインなどの麻酔薬、
・ D−Phe−Pro−Argクロロメチルケトン、RGDペプチド含有化合物、ヘパリン、抗トロンビン化合物、血小板受容体拮抗薬、抗トロンビン抗体、抗血小板受容体抗体、アスピリン(アスピリンは鎮痛薬、解熱剤、および抗炎症薬にも分類される)、ジピリダモール、プロタミン、ヒルジン、プロスタグランジン阻害薬、血小板阻害薬、トラピジルまたはリプロスチンなどの抗血小板薬、およびマダニ抗血小板ペプチドなどの抗凝血薬、
・ 細胞増殖を阻害し、ある種の癌細胞にアポトーシスを誘発するRNAまたはDNA代謝産物としても分類される5−アザシチジンなどのDNA脱メチル化薬、
・ 増殖因子、血管内皮細胞増殖因子(VEGF、すべての種類がVEGF−2を含む)、成長因子受容体、転写活性化因子、および翻訳促進因子などの血管細胞増殖促進物剤、
・ 抗増殖剤、増殖因子阻害剤、増殖因子受容体拮抗薬、転写抑制因子、翻訳抑制因子、複製阻害剤、阻害抗体、増殖因子に対する抗体、増殖因子と細胞毒素からなる二官能性分子、抗体と細胞毒素からなる二官能性分子などの血管細胞増殖阻害剤、
・ コレステロール降下薬、血管拡張剤、および内因性血管作動機構に干渉する薬剤、
・ プロブコールなどの抗酸化薬、
・ ペニシリン、セフォキシチン、オキサシリン、トブラナイシン(tobranycin)、ダウノマイシン、マイトサイシン(mitocycin)などの抗生物質製剤、
・ 酸性および塩基性線維芽細胞増殖因子、エストラジオール(E2)、エストリオール(E3)、および17−ベータエストラジオールを含むエストロゲンなどの血管新生物質、
・ ジゴキシン、ベータ・ブロッカー、カプトプリルおよびエナロプリルを含むアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、スタチン、および関連化合物などの心不全治療薬、
・ シロリムス(ラパマイシン)またはエベロリムスなどのマクロライド、
・ 塩化アラゲブリウム(ALT−711)を含むAGE分解剤。
【0053】
他の治療薬としては、ニトログリセリン、亜酸化窒素、一酸化窒素、抗生物質、アスピリン、ジギタリス、エストロゲン、エストラジオール、および配糖体が挙げられる。好ましい治療薬としては、ステロイド、ビタミン、および再狭窄抑制薬などの抗増殖薬が挙げられる。好ましい再狭窄抑制薬としては、Taxol(登録商標)、パクリタキセル(つまり、パクリタキセル、パクリタキセル類似体、またはパクリタキセル誘導体、およびこれらの混合物)などの微小管安定化薬が挙げられる。例えば、本明細書で説明されている実施形態で使用するのに適している誘導体としては、2’−スクシニル−タクソール、2’−スクシニル−タクソールトリエタノールアミン、2’−グルタリル−タクソール、2’−グルタリル−タクソールトリエタノールアミン塩、N−(ジメチルアミノエチル)グルタミンとの2’−O−エステル、およびN−(ジメチルアミノエチル)グルダミド塩酸塩との2’−O−エステルが挙げられる。
【0054】
他の好ましい治療薬としては、タクロリムス、ハロフギノン、ゲルダナマイシンなどのHSP90熱ショックタンパク質の阻害薬、エポチロンDなどの微小管安定化薬、クリスタゾール(cliostazole)などのホスホジエステラーゼ阻害薬、Barkct阻害薬、ホスホランバン阻害薬、およびSerca2遺伝子/タンパク質が挙げられる。さらに他の好ましい実施形態では、治療薬は、エリスロマイシン、アンフォテリシン、ラパマイシン、アドリアマイシンなどの抗生物質である。
【0055】
好ましい実施形態では、治療薬として、ダウノマイシン、マイトサイシン(mitocycin)、デキサメタゾン、エベロリムス、タクロリムス、ゾタロリムス、ヘパリン、アスピリン、ワルファリン、チクロピジン、サルサラート、ジフルニサル、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナブメトン、プリオキシカム(prioxicam)、ナプロキセン、ジクロフェナク、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、エトドラク、ケトロラク、オキサプロジン、セルコキシブ(celcoxib)、塩化アラゲブリウム、またはこれらの組合せが挙げられる。
【0056】
治療薬は、当業者によく知られている方法によって合成することができる。代替として、化学薬品および製薬会社から治療薬を購入することもできる。
いくつかの実施形態では、治療薬は、コーティング組成物の少なくとも1重量%、少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも20重量%、少なくとも30重量%、少なくとも40重量%またはそれ以上を含む。一般的には、15%未満の重量であれば、ポリマー・マトリクスを通じての拡散により薬剤が体内に溶出することが可能である。15〜20%の範囲の重量であれば、拡散は速くなるが、それは、薬剤がすでに溶出されている薬剤によって残された空隙を通じて拡散できるからである。好ましくは、治療薬は、コーティング組成物の1重量%から30重量%までの範囲である。いくつかの実施形態では、治療薬は、コーティング組成物の約15重量%である。
D.コーティングを作製する方法
本明細書では、さらに、コーティング医療器具を製作する方法が説明される。本明細書で説明されている方法は、コーティング組成物が露出した管腔外面および露出した管腔内面または露出した側面を有するように医療器具の表面の少なくとも一部にコーティング組成物を蒸着する工程を含む。
【0057】
いくつかの実施形態では、コーティング医療器具は、医療器具の表面の少なくとも一部にコーティング組成物を配置し、コーティング組成物の一部を除去することによって形成することができ、したがって、コーティング組成物は、露出した管腔外面および露出した管腔内面を有する。
【0058】
図9Aは、コーティング医療器具を製作する方法の1実施形態を示している。図9Aに示されているように、コーティング組成物600は、医療器具612の表面610の一部に直接配置される。次いで、コーティング組成物の一部が、図9Bに示されているように除去され、医療器具612の表面610上に配置されているコーティング組成物600は、露出した管腔外面620、露出した管腔内面622、および露出した側面624を有することになる。
【0059】
本明細書で説明されているコーティングは、二次材料またはマスキング材料を血管間ステントなどの医療器具の表面の少なくとも一部に配置することによって形成することも可能である。次いで、コーティング組成物は、医療器具の表面の少なくとも一部に配置され、また二次材料またはマスキング材料の一部に配置される。二次材料またはマスキング材料は、コーティング組成物が露出した管腔外面、露出した管腔内面、および露出した側面を有するように除去される。このような方法は、図10A〜10Cに示されている。図10Aは、医療器具712の表面710の一部に配置されている二次材料またはマスキング材料730を示している。次いで、コーティング組成物700が、図10Bに示されているように、医療器具712上に配置される。図10Cに示されているように、コーティング組成物が、医療器具712上に配置された後、二次材料またはマスキング材料730を除去することができ、これにより、コーティング組成物700は、露出した管腔外面720、露出した管腔内面722、および露出した側面724を有する。いくつかの方法において、二次材料をコーティング組成物と混合することができ、その場合、コーティング組成物と二次材料は、医療器具の表面に同時に配置できる。
【0060】
上記の方法は、介在材料を医療器具の表面の少なくとも一部の上に配置する工程をさらに含み得る。介在材料は、二次材料またはマスキング材料が医療器具の表面の少なくとも一部に配置された後に、医療器具の表面上に配置することが可能である。次いで、コーティング組成物を介在材料の少なくとも一部、および二次材料またはマスキング材料上に配置することができる。次いで、二次材料またはマスキング材料を除去できる。
【0061】
本明細書で説明されている、医療器具、好ましくは、埋め込み可能なステントをコーティングする方法は、第1のコーティング組成物を管腔外面の少なくとも一部に配置する工程と、第2のコーティング組成物を、第2のコーティング組成物が露出した管腔外面と露出した管腔内面または露出した側面を有するように第1のコーティング組成物上に配置する工程とを含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明されている埋め込み可能なステントをコーティングする方法は、図11A〜11Dに示されているように、第1のコーティング組成物を管腔外面の少なくとも一部に配置する工程と、第1のコーティング組成物の少なくとも一部を除去する工程と、第2のコーティング組成物を第1のコーティング組成物上に配置する工程と、第2のコーティング組成物が露出した管腔外面および露出した管腔内面を有するように第2のコーティング組成物の少なくとも一部を除去する工程とを含む。
【0063】
図11Aに示されているように、第1のコーティング組成物800は、医療器具812の表面810の一部に配置される。次いで、第1のコーティング組成物800の一部が、図11Bに示されているように除去される。第1のコーティング組成物800の少なくとも一部が、医療器具812の表面810の少なくとも一部から除去された後、第2のコーティング組成物820が、図11Cに示されているように第1のコーティング組成物800上に配置される。第2のコーティング組成物820は、第1のコーティング組成物800上に配置された後、必要ならば、第2のコーティング組成物820は、図11Dに示されているように第2のコーティング組成物820が露出した管腔外面822、露出した管腔内面824、および露出した側面826を有するように除去される。
【0064】
本明細書で説明されている方法の他の実施形態が図12A〜12Dに示されているが、これは、図12Aに示されているように、二次材料またはマスキング材料900を医療器具920の管腔外面910の一部の上に配置する工程を含む。この実施形態は、図10A〜10Cに関連して説明されているものと類似している。しかしながら、この実施形態は、2つのコーティング組成物を伴う。第1のコーティング組成物930は、二次材料900の間で、図12Bに示されているように、医療器具920の管腔外面910の少なくとも一部に配置され得る。次いで、第2のコーティング組成物940は、図12Cに示されているように、第1のコーティング組成物930の少なくとも一部、および二次材料またはマスキング材料900の少なくとも一部に配置することができる。二次材料またはマスキング材料900は、図12Dに示されているように、第2のコーティング組成物940が露出した管腔外面950、露出した管腔内面960、および露出した側面970を有するように除去することができる。
【0065】
上記の方法は、第2のコーティング組成物を第1のコーティング組成物上に配置する前に、介在材料を第1のコーティング組成物上に配置する工程をさらに含み得る。代わりに、上記の方法は、介在材料が医療器具の表面と第1のコーティング組成物との間に入るように、第1のコーティング組成物を医療器具に配置する前に、介在材料を医療器具の表面に配置する工程をさらに含み得る。
【0066】
本明細書で説明されている、医療器具、好ましくは、埋め込み可能なステントをコーティングする方法は、さらに、第1のコーティング組成物を管腔外面の少なくとも一部に配置する工程と、第2のコーティング組成物を第1のコーティング組成物上に配置する工程と、第3のコーティング組成物を、第3のコーティング組成物が露出した管腔外面と露出した管腔内面または露出した側面を有するように第2のコーティング組成物上に配置する工程とを含む。図13A〜13Eは、このような1実施形態を示している。図13Aに示されているように、この方法は第1のコーティング組成物1000を、ステント・ストラット1020の管腔外面1010の少なくとも一部に配置する工程を含む。第1のコーティング組成物1000の少なくとも一部は、図13Bに示されているように、除去され得る。次いで、第2のコーティング組成物1030が、図13Cに示されているように、第1のコーティング組成物1000上に配置され得る。第2のコーティング組成物1030の少なくとも一部は、図13Dに示されているように除去され、次いで、第3のコーティング組成物は、図13Eに示されているように、第3のコーティング組成物1040が露出した管腔外面1050、露出した管腔内面1060、および露出した側面1070を有するように第2のコーティング組成物1030上に配置され得る。このような方法から作られるコーティングの実施形態は、図4Aに示されている。
【0067】
いくつかの実施形態では、図14A〜14Cに示されているような埋め込み可能なステントをコーティングする方法は、第1のコーティング組成物をステント・ストラットの管腔外面の少なくとも一部に配置する工程と、第2のコーティング組成物を第1のコーティング組成物上に配置する工程とを含み、第1のコーティング組成物の少なくとも一部の上に配置された後、第2のコーティング組成物は、露出した管腔外面および露出した管腔内面または露出した側面を有し、第2のコーティング組成物は、ステントに適合するように事前に加工されている。好ましくは、事前に加工された第2のコーティング組成物は、ステントに適合するように事前に加工される。図14Aは、ステント・ストラット1120の管腔外面1110の少なくとも一部に配置された第1のコーティング組成物1100を示している。図14Bは、事前に加工された第2のコーティング組成物1130を示している。図14Cは、第1のコーティング組成物1100上に配置された事前に加工された第2のコーティング組成物1130を示しており、第1のコーティング組成物1100の少なくとも一部に配置された後、第2のコーティング組成物1130は、露出した管腔外面1140、露出した管腔内面1150、および露出した側面1160を有する。
【0068】
コーティング組成物は、当技術分野で知られている技術のいずれかによって医療器具上に配置できる。好適な方法としては、限定はしないが、ディッピング、噴霧、塗装、電気メッキ、蒸発、プラズマ気相蒸着、陰極アーク蒸着、スパッタリング、イオン注入、静電気を使用した方法、電気メッキ、電気化学的方法、ロール・コーティング、選択的液滴蒸着、イオン液滴蒸着、ドロップ・オン・デマンド法、または上記の組合せが挙げられる。
【0069】
コーティング組成物が露出した管腔外面および露出した管腔内面または露出した側面を有するようにコーティング組成物の少なくとも一部を除去する作業は、当技術分野で知られている任意の方法によって行うことができる。これらの方法としては、限定はしないが、レーザー切断、ドリル穴開け、または化学エッチングが挙げられる。
【0070】
二次材料またはマスキング材料は、コーティング組成物が露出した管腔外面および露出した管腔内面を有するように除去できる限りどのような材料であってもよい。例えば、二次材料またはマスキング材料は、コーティング組成物に比べて電気化学的活性が強いものであるか、または二次材料またはマスキング材料は、コーティング組成物に比べて可溶性が高いものとすることが可能である。好適な二次材料またはマスキング材料は、金属またはポリマーを含む。
【0071】
二次材料またはマスキング材料を除去する技術としては、限定はしないが、溶解、脱合金、または陽極酸化処理工程が挙げられる。二次材料またはマスキング材料は、脱合金処理工程によってコーティング組成物から除去できる。この方法では、第1のコーティング組成物および二次材料またはマスキング材料は、二次材料またはマスキング材料を除去する酸に曝される。したがって、コーティング組成物は、好ましくは、酸に曝されたときに溶解しない物質であるが、二次金属またはマスキング材料は、溶解する物質である。
【0072】
代わりに、二次材料またはマスキング材料を陽極処理法で除去できる。例えば、銀は、最大15%までの硝酸を入れた稀硝酸浴槽を使用して陽極処理法により除去できるが、ただし、陽極はメッキされたステントであり、陰極は白金である。最大10VDCまでの電圧を電極間に印加することができる。槽の化学的性質、温度、印加電圧、および処理時間を変化させることで、コーティング層の幾何学的形状、分布、および深さを変えることが可能である。他の実施例では、Technic Envirostrip Ag 10〜20A/929cm2(1平方フィート)をステンレス鋼製陰極とともに使用できる。
【0073】
上記の実施形態のいずれかにおいて、コーティング組成物は、複数の微細孔を備えることができる。微細孔は、当業者に知られている任意の手段によって形成され得る。微細孔を形成する好適な方法としては、反応性プラズマまたはイオン衝撃の使用を伴うマイクロラフィング法、電解質エッチング、サンド・ブラスティング、レーザー・エッチング、および化学エッチングが挙げられる。微細孔は、コーティングの露出した表面の近くなどに、あるパターンで配置され得るか、または微細孔は、本明細書で説明されているコーティング全体にわたって形成され得る。それに加えて、微細孔は、使用されるコーティング材料によっては、コーティング材料中に自然に存在している場合がある。例えば、コーティング組成物として適している、ある種のカーボンおよびポリマーは、微細孔を含む。
【0074】
加えて、上記の実施形態のいずれかにおいて、コーティング組成物のいずれかは、少なくとも1つの治療薬を含むことができる。いくつかの実施形態では、治療薬は、微細孔内に配置される。治療薬を微細孔内に配置しやすくするために、その後微細孔内に治療薬を配置するために使用される有機溶媒または水性溶媒中に治療薬を溶解または懸濁することによって、治療薬の溶液または懸濁液を形成することが可能である。
【0075】
本明細書で説明されている医療器具およびステントは、任意の適切な医学的手技のために使用することができる。医療器具の送達は、当業者によく知られている方法を使用して行える。
【0076】
本明細書に記載した説明は、いくつかの実施形態の個別の態様の単一の例示として意図されている説明されている特定の実施形態により範囲を制限されないものとする。本明細書で説明されている方法、組成物、および器具は、単独で、または本明細書で説明されている他の任意の(複数の)特徴と組み合わせて、本明細書で説明されているいかなる特徴をも備えることができる。実際、本明細書に示され、説明されているものに加えて、さまざまな修正形態が、当業者にとっては通常の実験だけで前記の説明および付属の図面から明らかであろう。このような修正形態および同等の形態は、付属の請求項の範囲内にあることが意図されている。
【0077】
本明細書で言及されているすべての刊行物、特許、および特許出願は、それぞれの個別の刊行物、特許、または特許出願が、本願明細書に援用されることが特に、また個別に指示されている場合と同じ程度にその全体が本願明細書に援用される。本明細書でなされている参照の引用または説明は、そのような参照が従来技術のものであることを認めたと解釈されないものとする。
【技術分野】
【0001】
本明細書においては、治療薬を患者の生体組織に送達するための埋め込み型医療器具、およびそのような医療器具を製作するための方法について説明する。特に、いくつかの実施形態は、表面積の大きなコーティングを有する、血管内ステントなどの埋め込み型医療器具を対象とし、このコーティングは、露出した管腔外面および露出した管腔内面または露出した側面を有する少なくとも1つのコーティング組成物を含む。
【背景技術】
【0002】
治療薬を入れた医療器具は、これまでに患者の生体組織の治療に関して成功を収めてきた。例えば、再狭窄を予防するための治療薬を含有するコーティングが施されている血管内ステントは、再狭窄の発生を低減するのに成功してきた。いくつかの場合において、再狭窄の低減を改善するために、コーティングから生体組織に送達される治療薬の量を増やすことが望ましいことがある。
【0003】
生体組織に送達される治療薬の量を増やす一方法は、コーティング内に装填される治療薬の量を増やすことである。しかしながら、治療薬の放出を制御することなど、大量の治療薬を含有するコーティングにはいくつかの難題が伴う。特に、コーティング中の治療薬の量がさらに多いと、コーティングから治療薬が放出される速度が速すぎ、それによって治療薬の望ましい持続放出ではなく、「爆発的放出」効果を生じる可能性がある。
【0004】
医療器具コーティングに含まれ、生体組織に送達される治療薬の量を増やす他の方法は、組織に対し露出されるコーティングの表面積を増やすことである。一般に、コーティング組成物がステントなどの医療器具の表面に配置されるときに、コーティングの露出した表面積は、コーティングが配置される医療器具の表面積に一般的には等しい。したがって、医療器具表面の表面積が、コーティングの露出した表面積を制約する。
【0005】
コーティングの露出した表面積を増やす一方法は、医療器具の表面から材料を除去して、コーティングが配置され得る表面積を増やすことである。しかしながら、医療器具から材料を除去すると、医療器具の構造的完全性に悪影響を及ぼす可能性がある。例えば、ステントのストラット中に孔ができると、ステント・ストラットの構造的完全性が損なわれ、ストラットが弱まる可能性がある。ストラットが弱くなると、ステントは適切な拡張をしなくなるか、または埋め込まれた後に、つぶれて、体腔の再閉塞を引き起こすおそれがある。
【0006】
そこで、治療薬を生体組織に送達するために露出した表面積を増やしたコーティングを有する医療器具が必要である。さらに、医療器具の構造的完全性に悪影響を及ぼさない露出した表面積を増やしたそのような医療器具コーティングを形成する方法が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記した問題を解決することができる医療器具用のコーティングを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
これらおよび他の目的は、本明細書で説明されているコーティングおよび医療器具によって達成される。本明細書で説明されるのは、治療薬を患者に送達するために露出した表面積を増やしたコーティングを備える、血管内ステントなどの医療器具である。コーティングの露出した表面積を増やすことで、より多くの量の治療薬をコーティングから放出制御しつつ送達することができ、したがって、治療薬の望ましくない、早すぎる、または急速な放出を回避することができる。さらに、本明細書で説明されているコーティングは、医療器具の構造的完全性を損なうことなく上記目的を達成することができる。
【0009】
いくつかの実施形態は、管腔外面(abluminal surface)および管腔外面の反対側にある管腔内面(luminal surface)を有するステント側壁構造と、管腔外面の少なくとも一部に配置されたコーティング組成物からなるコーティングを有する埋め込み可能なステントを含む。コーティングは、露出した管腔外面(exposed abluminal surface)および露出した管腔内面(exposed luminal surface)または露出した側面を有する。露出した表面は、他の材料によって覆われない表面である。
【0010】
いくつかの実施形態は、ステント側壁構造を有する埋め込み可能な血管内ステントを含み、このステント側壁構造はステント側壁構造内に複数のストラットおよび複数の開口部を備える。少なくとも1つのストラットは、管腔外面および管腔外面の反対側にある管腔内面を有する。コーティング組成物からなるコーティングは、コーティングが露出した管腔外面および露出した管腔内面、または露出した側面を有するようにストラットの管腔外面の少なくとも一部に直接配置される。コーティング組成物は、生体安定性ポリマーと抗再狭窄薬を含む。
【0011】
他の実施形態は、管腔外面および管腔外面の反対側にある管腔内面を有するステント側壁構造と、ステント側壁構造の管腔外面の少なくとも一部に配置されたコーティングとを有する埋め込み可能なステントを含む。コーティングは、ステント側壁構造の管腔外面の少なくとも一部に配置された第1のコーティング組成物と、第1のコーティング組成物上に配置された第2のコーティング組成物とを含む。コーティングは、露出した管腔外面および露出した管腔内面または露出した側面を有する。
【0012】
さらに他の実施形態は、ステント側壁構造を有する埋め込み可能な血管内ステントを含み、このステント側壁構造はステント側壁構造内に複数のストラットおよび複数の開口部を備える。少なくとも1つのストラットは、管腔外面および管腔外面の反対側にある管腔内面を有する。コーティングは、ストラットの管腔外面の少なくとも一部の上に配置される。コーティングは、ストラットの管腔外面の少なくとも一部に直接配置された、第1の生体安定性ポリマーを含む第1のコーティング組成物と、第1のコーティング組成物上に直接配置された第2のコーティング組成物を含む。第2のコーティング組成物は、第2の生体安定性ポリマーと抗再狭窄薬を含む。コーティングは、露出した管腔外面および露出した管腔内面または露出した側面を有する。
【0013】
本明細書で説明されている他の実施形態は、管腔外面および管腔外面の反対側にある管腔内面を有するステント側壁構造、および管腔外面の少なくとも一部に配置されたコーティングを有する埋め込み可能なステントを含む。コーティングは、管腔外面の少なくとも一部に配置された第1のコーティング組成物、第1のコーティング組成物上に配置された第2のコーティング組成物、および第2のコーティング組成物上に配置された第3のコーティング組成物を含む。コーティングは、露出した管腔外面および露出した管腔内面または露出した側面を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本明細書で説明されている実施形態で使用するのに適しているステントの1実施例を示す図。
【図2A】ステント・ストラットの一部の上にコーティング組成物が配置されている実施形態を示す断面図。
【図2B】ステント・ストラットの一部の上にコーティング組成物が配置されている実施形態を示す断面図。
【図2C】ステント・ストラットの一部の上にコーティング組成物が配置されている実施形態を示す断面図。
【図2D】ステント・ストラットの一部の上にコーティング組成物が配置されている実施形態を示す断面図。
【図2E】ステント・ストラットの一部の上にコーティング組成物が配置されている実施形態を示す断面図。
【図2F】ステント・ストラットの一部の上にコーティング組成物が配置されている実施形態を示す断面図。
【図3A】ステント・ストラットの一部の上に2つのコーティング組成物が配置されている実施形態を示す断面図。
【図3B】ステント・ストラットの一部の上に2つのコーティング組成物が配置されている実施形態を示す断面図。
【図3C】ステント・ストラットの一部の上に2つのコーティング組成物が配置されている実施形態を示す断面図。
【図3D】ステント・ストラットの一部の上に2つのコーティング組成物が配置されている実施形態を示す断面図。
【図3E】ステント・ストラットの一部の上に2つのコーティング組成物が配置されている実施形態を示す断面図。
【図4A】ステント・ストラットの一部の上に3つのコーティング組成物が配置されている実施形態を示す断面図。
【図4B】ステント・ストラットの一部の上に3つのコーティング組成物が配置されている実施形態を示す断面図。
【図4C】ステント・ストラットの一部の上に3つのコーティング組成物が配置されている実施形態を示す断面図。
【図5】ストラットの一部にそって広がるコーティングを有するステント・ストラットの一部を示す斜視図。
【図6】ステント・ストラットの表面の一部に配置されているコーティングを有する他のステント・ストラットを示す斜視図。
【図7】コーティングが配置されているステントの管腔外面の部分の鏡像を形成するコーティングを有するステントを示す斜視図。
【図8A】ステント・ストラットの一部の上にコーティング組成物が配置されている追加の実施形態を示す断面図。
【図8B】ステント・ストラットの一部の上にコーティング組成物が配置されている追加の実施形態を示す断面図。
【図8C】ステント・ストラットの一部の上にコーティング組成物が配置されている追加の実施形態を示す断面図。
【図8D】ステント・ストラットの一部の上にコーティング組成物が配置されている追加の実施形態を示す断面図。
【図8E】ステント・ストラットの一部の上にコーティング組成物が配置されている追加の実施形態を示す断面図。
【図8F】ステント・ストラットの一部の上にコーティング組成物が配置されている追加の実施形態を示す断面図。
【図8G】ステント・ストラットの一部の上にコーティング組成物が配置されている追加の実施形態を示す断面図。
【図8H】ステント・ストラットの一部の上にコーティング組成物が配置されている追加の実施形態を示す断面図。
【図9A】本明細書で説明されている方法によりコーティング医療器具を製作するための方法を示す図。
【図9B】本明細書で説明されている方法によりコーティング医療器具を製作するための方法を示す図。
【図10A】本明細書で説明されている方法によりコーティング医療器具を製作するための他の方法を示す図。
【図10B】本明細書で説明されている方法によりコーティング医療器具を製作するための他の方法を示す図。
【図10C】本明細書で説明されている方法によりコーティング医療器具を製作するための他の方法を示す図。
【図11A】本明細書で説明されている方法によりコーティング医療器具を製作するためのさらに他の方法を示す図。
【図11B】本明細書で説明されている方法によりコーティング医療器具を製作するためのさらに他の方法を示す図。
【図11C】本明細書で説明されている方法によりコーティング医療器具を製作するためのさらに他の方法を示す図。
【図11D】本明細書で説明されている方法によりコーティング医療器具を製作するためのさらに他の方法を示す図。
【図12A】本明細書で説明されている方法によりコーティング医療器具を製作するためのさらに他の方法を示す図。
【図12B】本明細書で説明されている方法によりコーティング医療器具を製作するためのさらに他の方法を示す図。
【図12C】本明細書で説明されている方法によりコーティング医療器具を製作するためのさらに他の方法を示す図。
【図12D】本明細書で説明されている方法によりコーティング医療器具を製作するためのさらに他の方法を示す図。
【図13A】本明細書で説明されている方法によりコーティング医療器具を製作するための他の方法を示す図。
【図13B】本明細書で説明されている方法によりコーティング医療器具を製作するための他の方法を示す図。
【図13C】本明細書で説明されている方法によりコーティング医療器具を製作するための他の方法を示す図。
【図13D】本明細書で説明されている方法によりコーティング医療器具を製作するための他の方法を示す図。
【図13E】本明細書で説明されている方法によりコーティング医療器具を製作するための他の方法を示す図。
【図14A】本明細書で説明されている方法によりコーティング医療器具を製作するためのさらに他の方法を示す図。
【図14B】本明細書で説明されている方法によりコーティング医療器具を製作するためのさらに他の方法を示す図。
【図14C】本明細書で説明されている方法によりコーティング医療器具を製作するためのさらに他の方法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書で説明されている実施形態のコーティングは、表面を有する任意の医療器具に関連して使用することができる。図1は、本明細書で説明されている実施形態で使用するのに適している医療器具の1実施例を示している。この図は、第1の側面22と、対向する第2の側面(図示されていない)とを有する側壁20からなる埋め込み可能な血管内ステント10を示している。第1の側壁表面22は、ステントが埋め込まれるときに体腔壁に面する外側の面、すなわち管腔外側壁表面、あるいは、体腔壁から離れて体腔の中心に向かう内側の面、すなわち管腔内側壁表面とすることができる。ステント10はまた、側壁20に複数のストラット30および少なくとも1つの開口部40を有する。一般的に、開口部40は、隣接するストラット30の間に配置される。好適なステント側壁構造は、複数のストラットと開口部を有し、少なくとも1つのストラットは、コーティング組成物が配置されるステントの管腔外面の一部をなす管腔外面を備え、ストラットは、ステントの管腔内面の一部をなす、ストラットの管腔外面の反対側にある管腔内面を備える。ステント側壁構造内に開口部を有するステントでは、いくつかの実施形態において、ステントに施されるコーティングは、側壁ステント構造内の開口部が温存されるように、例えば、開口部全体または一部がコーティング材料で閉塞されることのないように、ステントの表面に適合することが好ましい。
【0016】
図2Aは、ステント・ストラット50の一部の上に、コーティング組成物62からなるコーティング60が配置されている1実施形態の断面図である。ステント・ストラット50は、管腔外面52と管腔内面54を有する。この実施形態では、コーティング60は、ステント・ストラット50の管腔外面52上に配置される。コーティングは、ポリマー、金属、金属酸化物、セラミック酸化物、不活性炭素、またはこれらの組合せなどのコーティング材料64と、治療薬66とからなるコーティング組成物62を含む。また、コーティング材料64は、ストラット50を形成する材料と同じであっても、異なっていてもよい。コーティング組成物62は、管腔内壁に向かう露出した管腔外面68、内腔の中心に向かう露出した管腔内面69、および露出した側面65を有する。
【0017】
治療薬の放出元とすることができる、露出した管腔外面、例えば、体腔に面するコーティングの表面のみを有するコーティングとは異なり、本明細書で説明されているコーティングは、治療薬66の放出元とすることができる、露出した管腔内面69、例えば、内腔の中心に向かうコーティングの表面、または露出した側面65、例えば、管腔外面または管腔内面に対して直交する、または管腔外面または管腔内面に対して角度をなす表面も含む。図2Aに示されているコーティングの実施形態は、露出した管腔外面68、露出した管腔内面69、および2つの露出した側面65を有する。したがって、図2Aに示されている実施形態では、治療薬は、表面68,69からだけでなく、表面65からも放出され得る。治療薬の放出元とすることができる表面積を増やすことで、コーティング中の放出可能な治療薬の量を増やし、コーティング中に未使用のまま残る治療薬の量を減らすことができる。
【0018】
図2Aに示されているように、体腔の中心に向かって、体腔壁から離れる面であるストラットの管腔内面54は、コーティング60を実質的に含まない。本明細書で使用されているように、「コーティングを実質的に含まない」という文言は、コーティングは表面上に意図的に配置されることはないということを意味する。代替の実施形態では、コーティングは、管腔内面だけでなく管腔外面にも配置され得る。管腔内面に配置されているコーティングは、管腔外面に配置されているコーティングと同じであっても、異なっていてもよい。例えば、管腔外面に配置されているコーティングは、血管壁に対して露出されるか、または血管壁に導入され得る治療薬を備えるコーティング組成物を含むことができる。管腔内面に配置されているコーティングは、血流に対して露出されるか、または血流に導入され得る治療薬または表面を備えるコーティング組成物を含むことができる。他の実施形態では、管腔内面に配置されているコーティングは、治療薬なしのコーティング組成物を含むことができる。他の実施形態では、コーティングは、管腔内面に配置され得るが、管腔外面は、いかなるコーティングをも実質的に含まない。
【0019】
図2Bは、露出した管腔外面68、露出した管腔内面69、および2つの露出した側面65を有するコーティング組成物62からなるコーティング60の他の実施形態を示している。コーティング60は、コーティング組成物64および治療薬66も含む。図2Aに示されている実施形態とは異なり、この実施形態では、ストラット50は、管腔外面52を越えて延びる部分58を備える。コーティング組成物62は、伸長部分58上に配置される。
【0020】
図2Cおよび2Dに示されている実施形態は、それぞれ、図2Aおよび2Bに示されている実施形態と類似している。しかしながら、図2Cおよび2Dに示されているコーティング60では、治療薬66は、コーティング組成物62全体わたって分散されていない。代わりに、治療薬66は、コーティング組成物62の露出した管腔外面68、露出した管腔内面69、および露出した側面65に、またはその近くに配置される。
【0021】
図2A〜2Dに示されている実施形態では、コーティング組成物62は、ストラット表面上に直接、つまり、ストラット表面に物理的に接触して配置される。図2Eおよび2Fは、コーティング組成物62がストラット50の表面52上に直接配置されていない2つの実施形態を示している。代わりに、接着剤またはストラット表面へのコーティング組成物の接着を強化する他の材料などの介在する材料56が、コーティング組成物62とストラット表面52との間に配置される。
【0022】
図3A〜3Eは、第1および第2のコーティング組成物からなるコーティングがステント・ストラット表面上に配置されている実施形態の断面図である。図3Aでは、コーティング160は、ステント・ストラット150の管腔外面152の少なくとも一部に配置される第1のコーティング組成物170からなる。第2のコーティング組成物162は、第1のコーティング組成物170上に配置される。第2のコーティング組成物162は、露出した管腔外面168、露出した管腔内面169、および露出した側面165を有する。第1のコーティング組成物170は、ポリマー、金属、金属酸化物、セラミック酸化物、不活性炭素、またはこれらの組合せなどの第1のコーティング材料172からなる。第2のコーティング組成物162は、ポリマー、金属、金属酸化物、セラミック酸化物、不活性炭素、またはこれらの組合せなどの第2のコーティング材料164からなる。第1のコーティング組成物170は、第2のコーティング組成物162と同じであっても、異なっていてもよい。さらに、第1または第2のコーティング材料172,164は、ストラット150を形成する材料と同じであっても、異なっていてもよい。図3Aに示されているように、第2のコーティング組成物162は治療薬166も含む。いくつかの実施形態では、第1のコーティング組成物170は、第2のコーティング組成物162の治療薬166と同じであるか、または異なる治療薬も含み得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、第1のコーティング組成物は、第2のコーティング組成物の蒸着に先立って、管腔外面上に配置されたときに第1の露出した管腔外面の面積を有し、第2のコーティング組成物は、第1のコーティング組成物上に配置されたときに第2の露出した管腔外面の面積を有し、第2の露出した管腔外面の面積は、第1の露出した管腔外面の面積より広い。
【0024】
図3Bは、コーティング160が第1および第2のコーティング組成物170,162からなることを除き、図2Bに示されているのと似た他の実施形態を示している。特に、図3Bでは、コーティング160は、管腔外面152を越えて延びるステント・ストラット150の一部158に配置される第1のコーティング組成物170からなる。第2のコーティング組成物162は、第1のコーティング組成物170上に配置され、この第2のコーティング組成物162は、露出した管腔外面168、露出した管腔内面169、および露出した側面165を有する。
【0025】
図3Cに示されている実施形態は、図3Aに示されているものと類似している。しかしながら、図3Cに示されているコーティング160では、治療薬166は、第2のコーティング組成物162全体わたって分散されていない。代わりに、治療薬166は、第2のコーティング組成物162の露出した管腔外面168、露出した管腔内面169、および露出した側面165に、またはその近くに配置される。
【0026】
図3Dは、第1および第2のコーティング組成物170,162からなるコーティング160を伴う1実施形態を示しており、第1のコーティング組成物170は、管腔外面174および管腔内面176とともに2つの側面178を有している。第2のコーティング組成物162は、第1のコーティング組成物170の管腔外面174、管腔内面176、および2つの側面178上に配置される。第2のコーティング組成物は、露出した管腔外面168、露出した管腔内面169、および露出した側面165を有する。
【0027】
図3A〜3Dは、ステント・ストラット150の管腔外面152上に直接配置された第1のコーティング組成物170および第1のコーティング組成物170上に直接配置された第2のコーティング組成物162を示しているが、他の実施形態では、介在する材料を、第1のコーティング組成物162とストラット150の管腔外面152との間に配置することができ、したがって、第1のコーティング組成物は、ステントの管腔外面上に直接配置されることはない。代わりに、介在する材料は、第1のコーティング組成物162と第2のコーティング組成物170との間に配置することができ、したがって、第1のコーティング組成物は、第2のコーティング組成物上に直接配置されることはない。図3Eは、図2Eおよび2Fに示されている、接着剤などの介在する材料156が2つのコーティング組成物の間に配置されている、第1および第2のコーティング組成物170,162からなるコーティング160を示している。
【0028】
医療器具の管腔外面上に配置されているコーティングは、医療器具の表面の少なくとも一部に配置されている第1のコーティング組成物、第1のコーティング組成物上に配置されている第2のコーティング組成物、および第2のコーティング組成物の露出した表面上に配置される治療薬を含む第3のコーティング組成物も含むことができ、第3のコーティング組成物は、図4A〜4Cに示されているように、露出した管腔外面および露出した管腔内面を有する。
【0029】
図4Aは、管腔外面252、管腔内面254、およびコーティング260を有するステント・ストラット250を示している。コーティング260は、ステント・ストラット250の管腔外面252の少なくとも一部に配置される第1のコーティング組成物280からなる。第2のコーティング組成物270は、第1のコーティング組成物280上に配置され、第3のコーティング組成物262は、第2のコーティング組成物270上に配置される。第3のコーティング組成物262は、露出した管腔外面268、露出した管腔内面269、および露出した側面265を有する。第1のコーティング組成物280は、ポリマー、金属、金属酸化物、セラミック酸化物、不活性炭素、またはこれらの組合せなどの第1のコーティング材料282を含む。第2のコーティング組成物270は、ポリマー、金属、金属酸化物、セラミック酸化物、不活性炭素、またはこれらの組合せなどの第2のコーティング材料272からなる。第3のコーティング組成物262は、ポリマー、金属、金属酸化物、セラミック酸化物、不活性炭素、またはこれらの組合せなどの第3のコーティング材料264からなる。第1、第2、または第3のコーティング組成物280,270,262は、同じ、または異なる材料を含んでいてもよい。さらに、第1、第2、または第3のコーティング材料282,272,264は、ストラット250を形成する材料と同じであっても、異なっていてもよい。図4Aに示されているように、第3のコーティング組成物262は、治療薬266も含む。いくつかの実施形態では、第1または第2のコーティング組成物280,270は、第3のコーティング組成物262の治療薬266と同じであるか、または異なる、治療薬も含み得る。
【0030】
図4Bは、3つのコーティング組成物を含むコーティングを示している。コーティング260は、管腔外面252を越えて延びるステント・ストラット250の一部258に直接配置されている第1のコーティング組成物280を含む。第2のコーティング組成物270は、第1のコーティング組成物280上に配置され、第3のコーティング組成物262は、第2のコーティング組成物270上に配置される。第3のコーティング組成物262は、露出した管腔外面268、露出した管腔内面269、および露出した側面265、さらにはその中に配置される治療薬266を有する。
【0031】
図4Aおよび4Bは、第2のコーティング組成物上に直接配置されている第3のコーティング組成物と、第1のコーティング組成物上に直接配置されている第2のコーティング組成物とを示しているが、第3および第2のコーティング組成物は、第2および第1のコーティング組成物上に直接配置される必要はない。図4Cは、介在する材料256が第1のコーティング組成物280と第2のコーティング組成物270との間に配置されている第1、第2、および第3のコーティング組成物280,270,262からなるコーティング260を示している。他の実施形態では、介在する材料は、第1のコーティング組成物280とストラット250の管腔外面252との間に配置され得る。
【0032】
断面図である図2A〜2F、3A〜3E、および4A〜4Cに示されている実施形態と比較すると、図5では、コーティング60がストラット50の長さにそって延びる図2Aのものと似たコーティングの斜視図を示している。ストラット50は、管腔外面52と管腔内面54を有する。コーティング60は、ストラットの管腔外面52上に配置される。上述の図に示されているようなコーティングは、この構成でストラット上に配置することも可能である。コーティング60は、露出した管腔外面68、露出した管腔内面69、および露出した側面65、さらには治療薬66を有するコーティング組成物62からなる。
【0033】
図6は、コーティング360が、ステント・ストラット350の管腔外面352のいくつかの部分上に配置されているコーティング組成物362を含む他の実施形態の斜視図である。コーティング360は、露出した管腔外面368、露出した管腔内面369、および露出した側面365を有する。コーティング組成物362は、コーティング材料364および治療薬366を含む。ステント・ストラットの一部分に配置されているコーティング組成物は、この図では同じであるけれども、このようなコーティング組成物は異なっていてもよい。また、追加のコーティング組成物を、ステント・ストラットの管腔内面上に配置することも可能である。
【0034】
いくつかの実施形態では、ステント表面の一部に配置されているコーティングは、ステント表面の部分の鏡像とすることができる。例えば、図7は、コーティング460がステントの管腔外面452の一部分に配置されているステント410の一部を示す斜視図である。コーティング460は、コーティング材料464および治療薬466を含むコーティング組成物462を含む。コーティング組成物462は、露出した管腔外面468、露出した管腔内面469、および露出した側面467を有する。コーティング組成物の管腔外面468および管腔内面469は、コーティング460が配置されている管腔外面452の部分の鏡像である。コーティングは、表面上に配置される前に表面の鏡像の形で事前に形成され得る。
【0035】
いくつかの実施形態では、コーティングは、図2に示されているような「T」字型の断面、または図8Aに示されているような逆「T」字型の断面を持つことができる。図8Aは、露出した管腔外面502および露出した側面504を有するコーティング500を示している。他の実施形態では、コーティングの断面は、変更された「T」字型とすることが可能である。例えば、図8Bに示されているように、コーティング510の断面は、丸められた縁516と湾曲面517を伴う露出した管腔外面512、露出した管腔内面513、および露出した側面514を有するものとしてよい。図8Cに示されている実施形態では、コーティング520は、「T」の露出した管腔外面522、露出した管腔内面524、および露出した側面526が長く延びた隆起部528を持つ他の修正「T」字型の断面を有する。長く延びた隆起部は、コーティングの露出した表面積をさらに増やす。
【0036】
さらに他の実施形態では、コーティングの断面を他の形状とすることが可能である。他の好適な形状は、図8D〜図8Hに示されている。図8Dは、露出した管腔外面532、露出した管腔内面534、および露出した側面536を有する「I」字型のコーティング530の断面を示している。図8Eは、「V」字型のコーティング540の断面を示している。コーティングは、露出した管腔外面542および露出した管腔内面544を有する。図8Fは、露出した管腔外面552および露出した側面554を有する、「E」を90°回転させた形状であるコーティング550の断面を示している。図8Gは、露出した管腔外面562および露出した側面564を有する、「U」字型の形状であるコーティング560の断面を示している。図8Hは、露出した管腔外面572および露出した管腔内面564を持つコーティング570の三角形の形の断面を示している。
【0037】
コーティングはどのような厚さであってもよい。いくつかの実施形態では、コーティングは、約5マイクロメートルから約40マイクロメートルまでの厚さを有することができる。好ましくは、コーティングは、約5マイクロメートルから約15マイクロメートルまでの厚さを有する。いくつかの場合において、組み込む治療薬を増やすためには比較的厚いコーティングが好ましい。本明細書で説明されている実施形態のコーティングは、コーティング組成物の複数の層を含むことができる。例えば、コーティングは、異なるコーティング組成物の複数の層または同じコーティング組成物の複数の層を含むことが可能である。
【0038】
本明細書で説明されているコーティング組成物はまた、複数の微細孔を含んでいてもよい。微細孔は、一方のコーティング組成物の表面から他方のコーティング組成物の表面または医療器具の表面へと広がるようにできる。微細孔は、限定はしないが、流路、中空の通路または極微導管、球体または半球体を含む任意の形状とすることができる。加えて、微細孔は、任意の寸法または一連の複数の寸法を有するものとすることができる。いくつかの場合において、微細孔は、ミクロ細孔またはナノ細孔であってもよい。微細孔はまた、コーティング組成物全体にわたって分配されるか、またはコーティング組成物の露出した表面の近くなど、コーティング組成物の特定の領域内に配置され得る。いくつかの実施形態では、微細孔は、コーティング組成物の露出した管腔外面および露出した管腔内面の近くに配置される。また、微細孔は、ランダムに分配されるか、またはあるパターンに従って分配され得る。いくつかの実施形態では、コーティング組成物が少なくとも1つの治療薬も含み、治療薬をそれらの微細孔の少なくとも一部に、または全部に配置することができる。
A.医療器具
本明細書で説明されている実施形態に適している医療器具は、当業者に知られている、医療目的に適う任意のステントを含む。好適なステントとしては、例えば、自己拡張式ステントおよびバルーン拡張式ステントなどの血管ステントが挙げられる。自己拡張式ステントの例は、ウォルステン(Wallsten)に発行された米国特許第4,655,771号および第4,954,126号、ならびにウォルステンら(Wallsten et al.)に発行された米国特許第5,061,275号に示されている。適切なバルーン拡張式ステントの例は、ピンチャシクら(Pinchasik et al.)に発行された米国特許第5,449,373号に示されている。好ましい実施形態では、好適なステントは、Expressステントである。より好ましくは、Expressステントは、Express(商標)ステントまたはExpress2(商標)ステント(ボストンサイエンティフィックインコーポレイティッド(Boston Scientific,Inc.)[米国マサチューセッツ州ナティック(Natick)所在])である。
【0039】
好適なステントのフレームワークは、当技術分野で知られているようなさまざまな方法を通じて形成され得る。フレームワークは、溶接されるか、成形されるか、レーザー切断されるか、電気鋳造されるか、または連続構造を形成するように巻かれるか、または編んでまとめられた長繊維または繊維からなるものとすることができる。
【0040】
本明細書で説明されている実施形態に適している医療器具は、金属、セラミック、ポリマー、もしくは複合材料、またはこれらの組合せから製作することができる。いくつかの場合において、医療器具は、非ポリマー材料で作ることが可能である。好ましくは、これらの材料は生体適合性のある材料である。金属材料がより好ましい。好適な金属材料として、チタンをベースとする金属および合金(ニチノール、ニッケルチタン合金、熱記憶合金材料など)、ステンレス鋼、タンタル、ニッケルクロム、またはElgiloy(登録商標)およびPhynox(登録商標)などのコバルトクロムニッケル合金を含むいくつかのコバルト合金、PERSS(Platinum EnRiched Stainless Steel、白金富化ステンレス鋼)、およびニオブが挙げられる。金属材料は、国際公開第94/16646号で開示されているようなクラッド長繊維複合材料をも含む。
【0041】
好適なセラミック材料としては、限定はしないが、チタン、ハフニウム、イリジウム、クロム、アルミニウム、およびジルコニウムなどの遷移元素の酸化物、炭化物、または窒化物が挙げられる。シリカなどのシリコンベースの材料も使用できる。
【0042】
医療器具を形成するのに適しているポリマーは、生体安定性を有するものとすることができる。また、ポリマーは、生体分解性を有するものとすることもできる。好適なポリマーとしては、限定はしないが、スチレンイソブチレンスチレン、ポリエーテルオキシド(polyetheroxides)、ポリビニルアルコール、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリアミド、ポリ−2−ヒドロキシブチレート、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸グリコール酸共重合体、Teflon(登録商標)が挙げられる。
【0043】
本明細書で説明されている実施形態において医療器具を形成するために使用され得るポリマーとしては、限定はしないが、イソブチレン系ポリマー(isobutylene−based polymer)、ポリスチレン系ポリマー(polystyrene−based polymer)、ポリアクリレートおよびポリアクリレート誘導体、ビニル酢酸系のポリマーおよびその共重合体、ポリウレタンおよびその共重合体、シリコーンおよびその共重合体、エチレン酢酸ビニル、ポリエチレンテレフタレート、熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、セルロース誘導体、ポリアミド、ポリエステル、ポリスルホン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリカーボネート、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、アクリル、ポリ乳酸−ポリエチレンオキシド共重合体、セルロース、コラーゲン、およびキチンが挙げられる。
【0044】
医療器具用の材料として有用な他のポリマーとしては、限定はしないが、ダクロンポリエステル、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピレン、ポリアルキレンオキサレート、ポリシロキサン、ナイロン、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリシアノアクリレート、ポリホスファゼン、ポリ(アミノ酸)、エチレングリコールIジメタクリレート、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリテトラフルオロエチレンポリ(HEMA)、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリカーボネート、ポリ(γ−ヒドロキシブチレート)、ポリジオキサノン、ポリ(γ−エチルグルタミン酸塩)、ポリイミノカーボネート、ポリ(オルトエステル)、ポリアンハイドライド、アルギン酸塩、デキストラン、綿、ポリウレタン、またはこれらの誘導体化したもの、つまり、例えば付着部位または架橋基、例えばRGDを含むように修飾された、タンパク質、核酸、および同様の物質などの細胞および分子の付着を可能にしつつ構造的完全性を保持するポリマーが挙げられる。
B.コーティング材料および介在材料
本明細書で説明されているコーティング組成物は、限定はしないが、ポリマー、金属酸化物、セラミック酸化物、金属、不活性炭素、またはこれらの組合せなどの任意のコーティング材料からなるものとしてよい。これに加えて、コーティング組成物は、放射線不透過性を有し、および/またはMRI適合性を有するものとすることができる。上述のように、本明細書で説明されているコーティング組成物は、同じ1つまたは複数の材料、あるいは異なる1つまたは複数の材料からなるものとしてよい。
(ポリマー)
本明細書で説明されているコーティング組成物で使用するのに有用なポリマーは、特に医療器具を体内に挿入または埋め込む際に生体適合性があるものであるべきであり、また生体組織に刺激をもたらさないものである。好適なポリマーは、生体安定性を有するか、または代わりに、生体分解性を有するものとしてよい。このようなポリマーの例としては、限定はしないが、ポリウレタン、ポリイソブチレンとその共重合体、シリコーン、およびポリエステルが挙げられる。他の好適なポリマーとして、ポリオレフィン、ポリイソブチレン、エチレン−αオレフィン共重合体、アクリルポリマーおよび共重合体、ポリ塩化ビニルなどのハロゲン化ビニルポリマーおよび共重合体、ポリビニルメチルエーテルなどのポリビニルエーテル、ポリフッ化ビニリデンおよびポリ塩化ビニリデンなどのポリハロゲン化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルケトン、ポリスチレンなどのポリビニル芳香族化合物、ポリ酢酸ビニルなどのポリビニルエステル、ビニル単量体の共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体などのビニル単量体とオレフィンの共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ABS樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、Nylon 66およびポリカプロラクトンなどのポリアミド、アルキド樹脂、ポリカーボネート、ポリオキシエチレン、ポリイミド、ポリエーテル、エポキシ樹脂、ポリウレタン、レーヨントリアセテート、セルロース、酢酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、セロファン、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロース、セルロースエーテル、カルボキシメチルセルロース、コラーゲン、キチン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、およびポリ乳酸−ポリエチレンオキシド共重合体が挙げられる。
【0045】
いくつかの実施形態では、疎水性ポリマーが使用可能である。好適な疎水性ポリマーまたは単量体の例として、限定はしないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(1−ブテン)、ポリ(2−ブテン)、ポリ(1−ペンテン)、ポリ(2−ペンテン)、ポリ(3−メチル−1−ペンテン)、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、ポリ(イソプレン)、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ヘキサジエン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、2つまたはそれ以上のポリオレフィンのブレンド、および2つまたはそれ以上の異なる不飽和単量体から調製されたランダムおよびブロック共重合体などのポリオレフィン、ポリ(スチレン)、スチレン−イソブチレン共重合体、ポリ(2−メチルスチレン)、約20モル%未満のアクリロニトリルを有するスチレン−アクリロニトリル共重合体、およびスチレン−2,2,3,3,−テトラフルオロプロピル−メタクリレート共重合体(styrene−2,2,3,3,−tetrafluoropropyl methacrylate copolymers)などのスチレンポリマー、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)、クロロトリフルオロエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリ(ヘキサフルオロプロピレン)、ポリ(テトラフルオロエチレン)、テトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポリ(トリフルオロエチレン)、ポリ(フッ化ビニル)、およびポリ(フッ化ビニリデン)などのハロゲン化炭化水素ポリマー、ポリ(酪酸ビニル)、ポリ(デカン酸ビニル)、ポリ(ドデカン酸ビニル)、ポリ(ヘキサデカン酸ビニル)、ポリ(ヘキサン酸ビニル)、ポリ(プロピオン酸ビニル)、ポリ(オクタン酸ビニル)、ポリ(ヘプタフルオロイソプロポキシエチレン)、ポリ(ヘプタフルオロイソプロポキシプロピレン)、およびポリ(メタクリロニトリル)などのビニルポリマー、ポリ(n−ブチルアセテート)、ポリ(エチルアクリレート)、ポリ(1−クロロジフルオロメチル)テトラフルオロエチルアクリレート、ポリジ(クロロフルオロメチル)フルオロメチルアクリレート、ポリ(1,1−ジヒドロヘプタフルオロブチルアクリレート)、ポリ(1,1−ジヒドロペンタフルオロイソプロピルアクリレート)、ポリ(1,1−ジヒドロペンタデカフルオロオクチルアクリレート)、ポリ(ヘプタフルオロイソプロピルアクリレート)、ポリ5−(ヘプタフルオロイソプロポキシ)ペンチルアクリレート、ポリ11−(ヘプタフルオロイソプロポキシ)ウンデシルアクリレート、ポリ2−(ヘプタフルオロプロポキシ)エチルアクリレート、およびポリ(ノナフルオロイソブチルアクリレート)などのアクリルポリマー、ポリ(ベンジルメタクリレート)、ポリ(n−ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(t−ブチルメタクリレート)、ポリ(t−ブチルアミノエチルメタクリレート)、ポリ(ドデシルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(2−エチルヘキシルメタクリレート)、ポリ(n−ヘキシルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(n−プロピルメタクリレート)、ポリ(オクタデシルメタクリレート)、ポリ(1,1−ジヒドロペンタデカフルオロオクチルメタクリレート)、ポリ(ヘプタフルオロイソプロピルメタクリレート)、ポリ(ヘプタデカフルオロオクチルメタクリレート)、ポリ(1−ヒドロテトラフルオロエチルメタクリレート)、ポリ(1,1−ジヒドロテトラフルオロプロピル・メタクリレート)、ポリ(1−ヒドロヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート)、およびポリ(t−ノナフルオロブチルメタクリレート)などのメタクリル酸ポリマー、ポリ(エチレンテレフタレート)、およびポリ(ブチレンテレフタレート)などのポリエステル、ポリウレタンおよびシロキサン−ウレタン共重合体などの縮合系ポリマー、ポリオルガノシロキサン、つまり、Ra SiO 4−a/2(式中、Rは一価の置換または非置換炭化水素基であり、aの値は1または2である)で表される、シロキサン基を繰り返すことによって特徴付けられるポリマー、およびゴムなどの天然の疎水性ポリマーが挙げられる。
【0046】
代替の実施形態では、親水性ポリマーが使用可能である。好適な親水性ポリマーまたは単量体の例として、限定はしないが、(メタ)アクリル酸、またはアルカリ金属もしくはそのアンモニウム塩、(メタ)アクリルアミド、メチレンビスアクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸グリコール酸、マレイン酸およびフマル酸またはこれらの不飽和二塩基酸の半エステルなどの不飽和二塩基酸あるいはアルカリ金属またはこれら二塩基酸または半エステルのアンモニウム塩が添加されたポリマー、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、またはアルカリ金属もしくはこれらのアンモニウム塩などの不飽和スルホン酸が添加されたポリマー、および2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートおよび2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0047】
ポリビニルアルコールも、親水性ポリマーの1例である。ポリビニルアルコールは、ヒドロキシル、アミド、カルボキシル、アミノ、アンモニウム、またはスルホニル(−SO3)などの複数の親水基を含むことが可能である。親水性ポリマーとしては、さらに、限定はしないが、デンプン、多糖類、および関連するセルロースポリマー、ポリエチレンオキシドなどのポリアルキレングリコールおよび酸化物、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、およびこれらの酸およびアルキレングリコールなどの多価アルコールから誘導された部分エステルなどの重合エチレン性不飽和カルボン酸、アクリルアミドから誘導されたホモ重合体および共重合体、およびビニルピロリドンのホモ重合体および共重合体が挙げられる。
【0048】
追加の好適なポリマーとして、限定はしないが、一般に熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン、ポリイソブチレン、エチレン−αオレフィン共重合体、アクリルポリマーおよび共重合体、ポリ塩化ビニルなどのハロゲン化ビニルポリマーおよび共重合体、ポリビニルメチルエーテルなどのポリビニルエーテル、ポリフッ化ビニリデンおよびポリ塩化ビニリデンなどのポリハロゲン化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルケトン、ポリスチレンなどのポリビニル芳香族化合物、ポリ酢酸ビニルなどのポリビニルエステル、ビニル単量体の共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体などのビニル単量体とオレフィンの共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)、エチレン酢酸ビニル共重合体、Nylon 66およびポリカプロラクトンなどのポリアミド、アルキド樹脂、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリイミド、ポリエーテル、ポリエーテルブロックアミド、エポキシ樹脂、レーヨントリアセテート、セルロース、酢酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、セロファン、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロース、セルロースエーテル、カルボキシメチルセルロース、コラーゲン、キチン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸−ポリエチレンオキシド共重合体、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン)ゴム、フッ素重合体、フルオロシリコーン、ポリエチレングリコール、多糖類、リン脂質、および前記の組合せが挙げられる。いくつかの実施形態では、好ましいポリマーとしては、限定はしないが、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸グリコール酸、スチレン−イソブチレン−スチレン共重合体、またはこれらの組合せが挙げられる。
(金属またはセラミック酸化物)
いくつかの実施形態では、コーティング組成物は、金属酸化物および/またはセラミック酸化物を含むことができる。金属酸化物またはセラミック酸化物の例として、限定はしないが、酸化白金、酸化タンタル、酸化チタン、酸化タンタル、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化イリジウム、酸化ニオブ、酸化ジルコニウム、酸化タングステン、酸化ロジウム、酸化ルテニウム、二酸化ケイ素などのシリコーン酸化物、またはこれらの組合せが挙げられる。好ましい金属酸化物およびセラミック酸化物としては、酸化イリジウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、またはこれらの組合せが挙げられる。
(金属)
いくつかの実施形態では、コーティング組成物は、金属を含むことができる。好適な金属としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、金属合金、および半金属が挙げられる。金属の例として、限定はしないが、チタン、スカンジウム、ステンレス鋼、タンタル、ニッケル、ケイ素、クロム、コバルト、クロミウム、マンガン、鉄、白金、イリジウム、ニオブ、バナジウム、ジルコニウム、タングステン、ロジウム、ルテニウム、金、銅、亜鉛、イットリウム、モリブデン、テクネチウム、パラジウム、カドミウム、ハフニウム、レニウム、およびこれらの組合せが挙げられる。いくつかの実施形態では、好ましい金属として、限定はしないが、白金、タンタル、マグネシウム、またはこれらの組合せが挙げられる。
(炭素)
他の実施形態では、コーティング組成物は、不活性炭素を含むことができる。不活性炭素の好適な形態としては、限定はしないが、熱分解炭素および多孔質ガラス状炭素を挙げることができる。多孔質炭素の使用は、血栓症を防止し、内皮細胞成長を促進するのに役立ち得る。
【0049】
コーティング材料は、コーティング組成物の少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、少なくとも20重量%、少なくとも30重量%、少なくとも40重量%、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、少なくとも97重量%、少なくとも99重量%またはそれ以上を含み得る。コーティング組成物がポリマーを含むいくつかの実施形態では、ポリマーはコーティング組成物の約60重量%から約99重量%である。コーティング組成物が金属酸化物またはセラミック酸化物を含むいくつかの実施形態では、金属酸化物またはセラミック酸化物はコーティング組成物の約0.1重量%から約5重量%である。コーティング組成物が金属を含むいくつかの実施形態では、金属はコーティング組成物の約0.1重量%から約20重量%である。コーティング組成物が炭素を含むいくつかの実施形態では、炭素はコーティング組成物の約0.1重量%から約50重量%である。
【0050】
いくつかの実施形態では、露出した管腔外面を有するコーティング組成物は、ポリマーを含まないか、またはポリマーを実質的に含まない。本明細書で使用されている「ポリマーを実質的に含まない」という文言は、第1のコーティング組成物に含まれるいかなるポリマーも、第1のコーティング組成物の50重量%未満であることを意味する。そのような実施形態では、コーティング組成物は、上述の金属酸化物、セラミック酸化物、金属、または炭素のうちのいずれかを含むことができる。
(介在材料)
それに加えて、本明細書で説明されているいくつかの実施形態は、介在材料を含む。好適な介在材料は、コーティング組成物を他のコーティング組成物または医療器具の表面に接着する能力を高める。介在材料としては、限定はしないが、接着剤またはテクスチャード加工材料が挙げられる。好適な接着剤としては、限定はしないが、パラリエンCが挙げられる。好適なテクスチャード加工材料は、コーティング組成物の接着を改善するきめを有する材料であり、酸化イリジウム、酸化ジルコニウム、酸化白金、酸化チタン、酸化タンタル、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ニオブ、酸化タングステン、酸化ロジウム、酸化ルテニウム、酸化ケイ素、またはこれらの組合せからなるものとすることができる。テクスチャーは、限定はしないが、レーザー穿孔、マイクロ・ブラスト加工、薄膜のスパッタ・コーティング、物理的気相成長、化学エッチング、およびマイクロ・コンタクト・プリンティングおよびフォトリソグラフィーなどの標準的なリソグラフィー技術を含む、当技術分野で知られている任意の方法によって形成することが可能である。
C.治療薬
本明細書で使用されているような「治療薬」という用語は、薬物、遺伝物質、および生物由来物質を包含するものであり、「生物学的活性物質」と入れ換えて使用することができる。「遺伝物質」という用語は、限定はしないが、ウイルス・ベクターおよび非ウイルス・ベクターを含む、人体に挿入されることが意図されている、後述の有用なタンパク質をエンコードするDNA/RNAを含む、DNAまたはRNAを意味する。
【0051】
「生物由来物質」という用語は、細胞、酵母、細菌、タンパク質、ペプチド、サイトカイン、およびホルモンを包含する。ペプチドおよびタンパク質の例としては、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、形質転換増殖因子(TGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、上皮成長因子(EGF)、軟骨成長因子(CGF)、神経成長因子(NGF)、ケラチノサイト成長因子(KGF)、骨格成長因子(SGF)、骨芽細胞由来成長因子(BDGF)、肝細胞成長因子(HGF)、インスリン様成長因子(IGF)、サイトカイン増殖因子(CGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、低酸素誘導因子−1(HIF−1)、幹細胞由来因子(SDF)、幹細胞因子(SCF)、内皮細胞増殖用添加物(ECGS)、顆粒球マクロファージ・コロニー刺激因子(GM−CSF)、増殖分化因子(GDF)、インテグリン修飾因子(IMF)、カルモジュリン(CaM)、チミジン・キナーゼ(TK)、腫瘍壊死因子(TNF)、成長ホルモン(GH)、骨形態形成タンパク質(BMP)(例えば、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6(Vgr−1)、BMP−7(PO−1)、BMP−8、BMP−9、BMP−10、BMP−11、BMP−12、BMP−14、BMP−15、BMP−16、など)、マトリクス・メタロプロテイナーゼ(MMP)、マトリクス・メタロプロテイナーゼの組織阻害剤(TIMP)、サイトカイン、インターロイキン(例えば、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−15など)、リンホカイン、インターフェロン、インテグリン、コラーゲン(すべての種類)、エラスチン、フィブリリン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、グリコサミノグリカン、プロテオグリカン、トランスフェリン、サイトタクチン、細胞接着ドメイン(例えば、RGD)、およびテネイシンが挙げられる。現在好ましいBMPは、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7である。これらの二量体タンパク質は、ホモ二量体、ヘテロ二量体、またはこれらの組合せとして、単独で、または他の分子と併せて形成され得る。細胞は、ヒト由来のもの(自系または同種異系)であるか、または必要ならば注目するタンパク質を移植部位に送達するために遺伝子操作された動物由来(異種)とすることができる。送達媒体は、細胞機能および生存能力を維持するために必要に応じて調製され得る。細胞には、前駆細胞(例えば、内皮前駆細胞)、幹細胞(例えば、間葉細胞、造血細胞、神経細胞)、間質細胞、実質細胞、未分化細胞、線維芽細胞、マクロファージ、および衛星細胞がある。
【0052】
他の好適な治療薬としては以下のものがある。
・ ヘパリン、ヘパリン誘導体類、ウロキナーゼ、およびPPack(デキストロフェニルアラニンプロリンアルギニンクロロメチルケトン)などの抗血栓症薬、
・ エノキサプリン、アンジオペプチン、または平滑筋細胞増殖を阻害できるモノクローナル抗体、ヒルジン、アセチルサリチル酸、タクロリムス、エベロリムス、ピメクロリムス、シロリムス、ゾタロリムス、アムロジピン、およびドキサゾシンなどの抗増殖剤、
・ グルココルチコイド、ベータメタゾン、デキサメタゾン、プレドニゾロン、コルチコステロン、ブデゾニド、エストロゲン、スルファサラジン、ロシグリタゾン、ミコフェノール酸、およびメサラミンなどの抗炎症薬、
・ パクリタキセル、5−フルオロウラシル、シスプラチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エポチロン、メトトレキサート、アザチオプリン、アドリアマイシンおよびムタマイシン、エンドスタチン、アンギオスタチンおよびチミジンキナーゼ阻害薬、クラドリビン、タクソールおよびそのアナログもしくは誘導体、パクリタキセル、さらにはその誘導体、類似体、またはタンパク質に結合されたパクリタキセル、例えば、Abraxane(商標)などの、抗悪性腫瘍/抗増殖/抗有糸分裂薬、
・ リドカイン、ブピバカイン、およびロピバカインなどの麻酔薬、
・ D−Phe−Pro−Argクロロメチルケトン、RGDペプチド含有化合物、ヘパリン、抗トロンビン化合物、血小板受容体拮抗薬、抗トロンビン抗体、抗血小板受容体抗体、アスピリン(アスピリンは鎮痛薬、解熱剤、および抗炎症薬にも分類される)、ジピリダモール、プロタミン、ヒルジン、プロスタグランジン阻害薬、血小板阻害薬、トラピジルまたはリプロスチンなどの抗血小板薬、およびマダニ抗血小板ペプチドなどの抗凝血薬、
・ 細胞増殖を阻害し、ある種の癌細胞にアポトーシスを誘発するRNAまたはDNA代謝産物としても分類される5−アザシチジンなどのDNA脱メチル化薬、
・ 増殖因子、血管内皮細胞増殖因子(VEGF、すべての種類がVEGF−2を含む)、成長因子受容体、転写活性化因子、および翻訳促進因子などの血管細胞増殖促進物剤、
・ 抗増殖剤、増殖因子阻害剤、増殖因子受容体拮抗薬、転写抑制因子、翻訳抑制因子、複製阻害剤、阻害抗体、増殖因子に対する抗体、増殖因子と細胞毒素からなる二官能性分子、抗体と細胞毒素からなる二官能性分子などの血管細胞増殖阻害剤、
・ コレステロール降下薬、血管拡張剤、および内因性血管作動機構に干渉する薬剤、
・ プロブコールなどの抗酸化薬、
・ ペニシリン、セフォキシチン、オキサシリン、トブラナイシン(tobranycin)、ダウノマイシン、マイトサイシン(mitocycin)などの抗生物質製剤、
・ 酸性および塩基性線維芽細胞増殖因子、エストラジオール(E2)、エストリオール(E3)、および17−ベータエストラジオールを含むエストロゲンなどの血管新生物質、
・ ジゴキシン、ベータ・ブロッカー、カプトプリルおよびエナロプリルを含むアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、スタチン、および関連化合物などの心不全治療薬、
・ シロリムス(ラパマイシン)またはエベロリムスなどのマクロライド、
・ 塩化アラゲブリウム(ALT−711)を含むAGE分解剤。
【0053】
他の治療薬としては、ニトログリセリン、亜酸化窒素、一酸化窒素、抗生物質、アスピリン、ジギタリス、エストロゲン、エストラジオール、および配糖体が挙げられる。好ましい治療薬としては、ステロイド、ビタミン、および再狭窄抑制薬などの抗増殖薬が挙げられる。好ましい再狭窄抑制薬としては、Taxol(登録商標)、パクリタキセル(つまり、パクリタキセル、パクリタキセル類似体、またはパクリタキセル誘導体、およびこれらの混合物)などの微小管安定化薬が挙げられる。例えば、本明細書で説明されている実施形態で使用するのに適している誘導体としては、2’−スクシニル−タクソール、2’−スクシニル−タクソールトリエタノールアミン、2’−グルタリル−タクソール、2’−グルタリル−タクソールトリエタノールアミン塩、N−(ジメチルアミノエチル)グルタミンとの2’−O−エステル、およびN−(ジメチルアミノエチル)グルダミド塩酸塩との2’−O−エステルが挙げられる。
【0054】
他の好ましい治療薬としては、タクロリムス、ハロフギノン、ゲルダナマイシンなどのHSP90熱ショックタンパク質の阻害薬、エポチロンDなどの微小管安定化薬、クリスタゾール(cliostazole)などのホスホジエステラーゼ阻害薬、Barkct阻害薬、ホスホランバン阻害薬、およびSerca2遺伝子/タンパク質が挙げられる。さらに他の好ましい実施形態では、治療薬は、エリスロマイシン、アンフォテリシン、ラパマイシン、アドリアマイシンなどの抗生物質である。
【0055】
好ましい実施形態では、治療薬として、ダウノマイシン、マイトサイシン(mitocycin)、デキサメタゾン、エベロリムス、タクロリムス、ゾタロリムス、ヘパリン、アスピリン、ワルファリン、チクロピジン、サルサラート、ジフルニサル、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナブメトン、プリオキシカム(prioxicam)、ナプロキセン、ジクロフェナク、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、エトドラク、ケトロラク、オキサプロジン、セルコキシブ(celcoxib)、塩化アラゲブリウム、またはこれらの組合せが挙げられる。
【0056】
治療薬は、当業者によく知られている方法によって合成することができる。代替として、化学薬品および製薬会社から治療薬を購入することもできる。
いくつかの実施形態では、治療薬は、コーティング組成物の少なくとも1重量%、少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、少なくとも20重量%、少なくとも30重量%、少なくとも40重量%またはそれ以上を含む。一般的には、15%未満の重量であれば、ポリマー・マトリクスを通じての拡散により薬剤が体内に溶出することが可能である。15〜20%の範囲の重量であれば、拡散は速くなるが、それは、薬剤がすでに溶出されている薬剤によって残された空隙を通じて拡散できるからである。好ましくは、治療薬は、コーティング組成物の1重量%から30重量%までの範囲である。いくつかの実施形態では、治療薬は、コーティング組成物の約15重量%である。
D.コーティングを作製する方法
本明細書では、さらに、コーティング医療器具を製作する方法が説明される。本明細書で説明されている方法は、コーティング組成物が露出した管腔外面および露出した管腔内面または露出した側面を有するように医療器具の表面の少なくとも一部にコーティング組成物を蒸着する工程を含む。
【0057】
いくつかの実施形態では、コーティング医療器具は、医療器具の表面の少なくとも一部にコーティング組成物を配置し、コーティング組成物の一部を除去することによって形成することができ、したがって、コーティング組成物は、露出した管腔外面および露出した管腔内面を有する。
【0058】
図9Aは、コーティング医療器具を製作する方法の1実施形態を示している。図9Aに示されているように、コーティング組成物600は、医療器具612の表面610の一部に直接配置される。次いで、コーティング組成物の一部が、図9Bに示されているように除去され、医療器具612の表面610上に配置されているコーティング組成物600は、露出した管腔外面620、露出した管腔内面622、および露出した側面624を有することになる。
【0059】
本明細書で説明されているコーティングは、二次材料またはマスキング材料を血管間ステントなどの医療器具の表面の少なくとも一部に配置することによって形成することも可能である。次いで、コーティング組成物は、医療器具の表面の少なくとも一部に配置され、また二次材料またはマスキング材料の一部に配置される。二次材料またはマスキング材料は、コーティング組成物が露出した管腔外面、露出した管腔内面、および露出した側面を有するように除去される。このような方法は、図10A〜10Cに示されている。図10Aは、医療器具712の表面710の一部に配置されている二次材料またはマスキング材料730を示している。次いで、コーティング組成物700が、図10Bに示されているように、医療器具712上に配置される。図10Cに示されているように、コーティング組成物が、医療器具712上に配置された後、二次材料またはマスキング材料730を除去することができ、これにより、コーティング組成物700は、露出した管腔外面720、露出した管腔内面722、および露出した側面724を有する。いくつかの方法において、二次材料をコーティング組成物と混合することができ、その場合、コーティング組成物と二次材料は、医療器具の表面に同時に配置できる。
【0060】
上記の方法は、介在材料を医療器具の表面の少なくとも一部の上に配置する工程をさらに含み得る。介在材料は、二次材料またはマスキング材料が医療器具の表面の少なくとも一部に配置された後に、医療器具の表面上に配置することが可能である。次いで、コーティング組成物を介在材料の少なくとも一部、および二次材料またはマスキング材料上に配置することができる。次いで、二次材料またはマスキング材料を除去できる。
【0061】
本明細書で説明されている、医療器具、好ましくは、埋め込み可能なステントをコーティングする方法は、第1のコーティング組成物を管腔外面の少なくとも一部に配置する工程と、第2のコーティング組成物を、第2のコーティング組成物が露出した管腔外面と露出した管腔内面または露出した側面を有するように第1のコーティング組成物上に配置する工程とを含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明されている埋め込み可能なステントをコーティングする方法は、図11A〜11Dに示されているように、第1のコーティング組成物を管腔外面の少なくとも一部に配置する工程と、第1のコーティング組成物の少なくとも一部を除去する工程と、第2のコーティング組成物を第1のコーティング組成物上に配置する工程と、第2のコーティング組成物が露出した管腔外面および露出した管腔内面を有するように第2のコーティング組成物の少なくとも一部を除去する工程とを含む。
【0063】
図11Aに示されているように、第1のコーティング組成物800は、医療器具812の表面810の一部に配置される。次いで、第1のコーティング組成物800の一部が、図11Bに示されているように除去される。第1のコーティング組成物800の少なくとも一部が、医療器具812の表面810の少なくとも一部から除去された後、第2のコーティング組成物820が、図11Cに示されているように第1のコーティング組成物800上に配置される。第2のコーティング組成物820は、第1のコーティング組成物800上に配置された後、必要ならば、第2のコーティング組成物820は、図11Dに示されているように第2のコーティング組成物820が露出した管腔外面822、露出した管腔内面824、および露出した側面826を有するように除去される。
【0064】
本明細書で説明されている方法の他の実施形態が図12A〜12Dに示されているが、これは、図12Aに示されているように、二次材料またはマスキング材料900を医療器具920の管腔外面910の一部の上に配置する工程を含む。この実施形態は、図10A〜10Cに関連して説明されているものと類似している。しかしながら、この実施形態は、2つのコーティング組成物を伴う。第1のコーティング組成物930は、二次材料900の間で、図12Bに示されているように、医療器具920の管腔外面910の少なくとも一部に配置され得る。次いで、第2のコーティング組成物940は、図12Cに示されているように、第1のコーティング組成物930の少なくとも一部、および二次材料またはマスキング材料900の少なくとも一部に配置することができる。二次材料またはマスキング材料900は、図12Dに示されているように、第2のコーティング組成物940が露出した管腔外面950、露出した管腔内面960、および露出した側面970を有するように除去することができる。
【0065】
上記の方法は、第2のコーティング組成物を第1のコーティング組成物上に配置する前に、介在材料を第1のコーティング組成物上に配置する工程をさらに含み得る。代わりに、上記の方法は、介在材料が医療器具の表面と第1のコーティング組成物との間に入るように、第1のコーティング組成物を医療器具に配置する前に、介在材料を医療器具の表面に配置する工程をさらに含み得る。
【0066】
本明細書で説明されている、医療器具、好ましくは、埋め込み可能なステントをコーティングする方法は、さらに、第1のコーティング組成物を管腔外面の少なくとも一部に配置する工程と、第2のコーティング組成物を第1のコーティング組成物上に配置する工程と、第3のコーティング組成物を、第3のコーティング組成物が露出した管腔外面と露出した管腔内面または露出した側面を有するように第2のコーティング組成物上に配置する工程とを含む。図13A〜13Eは、このような1実施形態を示している。図13Aに示されているように、この方法は第1のコーティング組成物1000を、ステント・ストラット1020の管腔外面1010の少なくとも一部に配置する工程を含む。第1のコーティング組成物1000の少なくとも一部は、図13Bに示されているように、除去され得る。次いで、第2のコーティング組成物1030が、図13Cに示されているように、第1のコーティング組成物1000上に配置され得る。第2のコーティング組成物1030の少なくとも一部は、図13Dに示されているように除去され、次いで、第3のコーティング組成物は、図13Eに示されているように、第3のコーティング組成物1040が露出した管腔外面1050、露出した管腔内面1060、および露出した側面1070を有するように第2のコーティング組成物1030上に配置され得る。このような方法から作られるコーティングの実施形態は、図4Aに示されている。
【0067】
いくつかの実施形態では、図14A〜14Cに示されているような埋め込み可能なステントをコーティングする方法は、第1のコーティング組成物をステント・ストラットの管腔外面の少なくとも一部に配置する工程と、第2のコーティング組成物を第1のコーティング組成物上に配置する工程とを含み、第1のコーティング組成物の少なくとも一部の上に配置された後、第2のコーティング組成物は、露出した管腔外面および露出した管腔内面または露出した側面を有し、第2のコーティング組成物は、ステントに適合するように事前に加工されている。好ましくは、事前に加工された第2のコーティング組成物は、ステントに適合するように事前に加工される。図14Aは、ステント・ストラット1120の管腔外面1110の少なくとも一部に配置された第1のコーティング組成物1100を示している。図14Bは、事前に加工された第2のコーティング組成物1130を示している。図14Cは、第1のコーティング組成物1100上に配置された事前に加工された第2のコーティング組成物1130を示しており、第1のコーティング組成物1100の少なくとも一部に配置された後、第2のコーティング組成物1130は、露出した管腔外面1140、露出した管腔内面1150、および露出した側面1160を有する。
【0068】
コーティング組成物は、当技術分野で知られている技術のいずれかによって医療器具上に配置できる。好適な方法としては、限定はしないが、ディッピング、噴霧、塗装、電気メッキ、蒸発、プラズマ気相蒸着、陰極アーク蒸着、スパッタリング、イオン注入、静電気を使用した方法、電気メッキ、電気化学的方法、ロール・コーティング、選択的液滴蒸着、イオン液滴蒸着、ドロップ・オン・デマンド法、または上記の組合せが挙げられる。
【0069】
コーティング組成物が露出した管腔外面および露出した管腔内面または露出した側面を有するようにコーティング組成物の少なくとも一部を除去する作業は、当技術分野で知られている任意の方法によって行うことができる。これらの方法としては、限定はしないが、レーザー切断、ドリル穴開け、または化学エッチングが挙げられる。
【0070】
二次材料またはマスキング材料は、コーティング組成物が露出した管腔外面および露出した管腔内面を有するように除去できる限りどのような材料であってもよい。例えば、二次材料またはマスキング材料は、コーティング組成物に比べて電気化学的活性が強いものであるか、または二次材料またはマスキング材料は、コーティング組成物に比べて可溶性が高いものとすることが可能である。好適な二次材料またはマスキング材料は、金属またはポリマーを含む。
【0071】
二次材料またはマスキング材料を除去する技術としては、限定はしないが、溶解、脱合金、または陽極酸化処理工程が挙げられる。二次材料またはマスキング材料は、脱合金処理工程によってコーティング組成物から除去できる。この方法では、第1のコーティング組成物および二次材料またはマスキング材料は、二次材料またはマスキング材料を除去する酸に曝される。したがって、コーティング組成物は、好ましくは、酸に曝されたときに溶解しない物質であるが、二次金属またはマスキング材料は、溶解する物質である。
【0072】
代わりに、二次材料またはマスキング材料を陽極処理法で除去できる。例えば、銀は、最大15%までの硝酸を入れた稀硝酸浴槽を使用して陽極処理法により除去できるが、ただし、陽極はメッキされたステントであり、陰極は白金である。最大10VDCまでの電圧を電極間に印加することができる。槽の化学的性質、温度、印加電圧、および処理時間を変化させることで、コーティング層の幾何学的形状、分布、および深さを変えることが可能である。他の実施例では、Technic Envirostrip Ag 10〜20A/929cm2(1平方フィート)をステンレス鋼製陰極とともに使用できる。
【0073】
上記の実施形態のいずれかにおいて、コーティング組成物は、複数の微細孔を備えることができる。微細孔は、当業者に知られている任意の手段によって形成され得る。微細孔を形成する好適な方法としては、反応性プラズマまたはイオン衝撃の使用を伴うマイクロラフィング法、電解質エッチング、サンド・ブラスティング、レーザー・エッチング、および化学エッチングが挙げられる。微細孔は、コーティングの露出した表面の近くなどに、あるパターンで配置され得るか、または微細孔は、本明細書で説明されているコーティング全体にわたって形成され得る。それに加えて、微細孔は、使用されるコーティング材料によっては、コーティング材料中に自然に存在している場合がある。例えば、コーティング組成物として適している、ある種のカーボンおよびポリマーは、微細孔を含む。
【0074】
加えて、上記の実施形態のいずれかにおいて、コーティング組成物のいずれかは、少なくとも1つの治療薬を含むことができる。いくつかの実施形態では、治療薬は、微細孔内に配置される。治療薬を微細孔内に配置しやすくするために、その後微細孔内に治療薬を配置するために使用される有機溶媒または水性溶媒中に治療薬を溶解または懸濁することによって、治療薬の溶液または懸濁液を形成することが可能である。
【0075】
本明細書で説明されている医療器具およびステントは、任意の適切な医学的手技のために使用することができる。医療器具の送達は、当業者によく知られている方法を使用して行える。
【0076】
本明細書に記載した説明は、いくつかの実施形態の個別の態様の単一の例示として意図されている説明されている特定の実施形態により範囲を制限されないものとする。本明細書で説明されている方法、組成物、および器具は、単独で、または本明細書で説明されている他の任意の(複数の)特徴と組み合わせて、本明細書で説明されているいかなる特徴をも備えることができる。実際、本明細書に示され、説明されているものに加えて、さまざまな修正形態が、当業者にとっては通常の実験だけで前記の説明および付属の図面から明らかであろう。このような修正形態および同等の形態は、付属の請求項の範囲内にあることが意図されている。
【0077】
本明細書で言及されているすべての刊行物、特許、および特許出願は、それぞれの個別の刊行物、特許、または特許出願が、本願明細書に援用されることが特に、また個別に指示されている場合と同じ程度にその全体が本願明細書に援用される。本明細書でなされている参照の引用または説明は、そのような参照が従来技術のものであることを認めたと解釈されないものとする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋め込み可能なステントであって、
(a)管腔外面および該管腔外面の反対側にある管腔内面を有するステント側壁構造と、
(b)前記管腔外面の少なくとも一部に配置されたコーティング組成物からなり、かつ、露出した管腔外面および露出した管腔内面を有するコーティングとを備える埋め込み可能なステント。
【請求項2】
前記コーティング組成物は、前記ステントの管腔外面上に直接配置される請求項1に記載のステント。
【請求項3】
前記コーティングは、前記ステントの管腔外面と前記コーティング組成物との間に配置されている接着剤をさらに含む請求項1に記載のステント。
【請求項4】
前記コーティング組成物は、治療薬を含む請求項1に記載のステント。
【請求項5】
前記治療薬は、抗血栓症薬、血管新生阻害薬、抗増殖剤、抗生物質、抗再狭窄剤、増殖因子、免疫抑制剤、および放射化学薬剤のいずれかを含む請求項4に記載のステント。
【請求項6】
前記治療薬は、パクリタキセルを含む請求項4に記載のステント。
【請求項7】
前記治療薬は、シロリムス、タクロリムス、ピメクロリムス、エベロリムス、およびゾタロリムスのいずれかを含む請求項4に記載のステント。
【請求項8】
前記コーティング組成物は、ポリマー、金属、金属酸化物、セラミック酸化物、不活性炭素、およびこれらの組合せのいずれかを含む請求項1に記載のステント。
【請求項9】
埋め込み可能な血管内ステントであって、
(a)複数のストラットおよび複数の開口部を備えるステント側壁構造であって、少なくとも1つのストラットは、管腔外面および該管腔外面の反対側にある管腔内面を備えるステント側壁構造と、
(b)前記ストラットの管腔外面の少なくとも一部に直接配置されて、生体安定性ポリマーおよび抗再狭窄剤を含むコーティング組成物からなるとともに、露出された管腔外面および露出された管腔内面を有するコーティングとを備える埋め込み可能な血管内ステント。
【請求項10】
埋め込み可能なステントであって、
(a)管腔外面および該管腔外面の反対側にある管腔内面を有するステント側壁構造と、
(b)前記管腔外面の少なくとも一部に配置されるコーティングであって、
(i)該管腔外面の少なくとも一部に配置される第1のコーティング組成物と、
(ii)前記第1のコーティング組成物上に配置された第2のコーティング組成物とからなるコーティングとを備え、
前記コーティングは、露出した管腔外面および露出した管腔内面を有する埋め込み可能なステント。
【請求項11】
前記第1のコーティング組成物は、前記管腔外面上に直接配置され、前記第2のコーティング組成物は、前記第1のコーティング組成物上に直接配置される請求項10に記載のステント。
【請求項12】
前記コーティングは、前記ステントの管腔外面と前記第1コーティング組成物との間に配置されている接着剤をさらに含む請求項10に記載のステント。
【請求項13】
前記ステントは、前記第1のコーティング組成物と前記第2のコーティング組成物との間に配置されている接着剤をさらに含む請求項12に記載のステント。
【請求項14】
前記第1のコーティング組成物と前記第2のコーティング組成物とは異なる請求項10に記載のステント。
【請求項15】
前記第1のコーティング組成物と前記第2のコーティング組成物とは同じである請求項10に記載のステント。
【請求項16】
前記第1のコーティング組成物は、前記管腔外面上に配置されたときに第1の露出した表面積を有し、前記第2のコーティング組成物は、前記第1のコーティング組成物上に配置されたときに第2の露出した表面積を有し、前記第2の露出した表面積は、前記第1の露出した表面積よりも広い請求項10に記載のステント。
【請求項17】
前記第1のコーティング組成物および前記第2のコーティング組成物のいずれか一方は、治療薬を含む請求項10に記載のステント。
【請求項18】
前記治療薬は、抗血栓症薬、血管新生阻害薬、抗増殖剤、抗生物質、抗再狭窄剤、増殖因子、免疫抑制剤、および放射化学薬剤のいずれかを含む請求項17に記載のステント。
【請求項19】
前記治療薬は、パクリタキセルを含む請求項17に記載のステント。
【請求項20】
前記治療薬は、シロリムス、タクロリムス、ピメクロリムス、エベロリムス、およびゾタロリムスのいずれかを含む請求項17に記載のステント。
【請求項21】
前記第1のコーティング組成物または前記第2のコーティング組成物は、ポリマー、金属、金属酸化物、セラミック酸化物、不活性炭素、およびこれらの組合せのいずれかを含む請求項10に記載のステント。
【請求項22】
埋め込み可能な血管内ステントであって、
(a)複数のストラットおよび複数の開口部を備えるステント側壁構造であって、少なくとも1つのストラットは、管腔外面および該管腔外面の反対側にある管腔内面を備えるステント側壁構造と、
(b)前記ストラットの管腔外面の少なくとも一部に配置されるコーティングであって、
(i)該ストラットの管腔外面の少なくとも一部に直接配置され、かつ、第1の生体安定性ポリマーからなる第1のコーティング組成物と、
(ii)前記第1のコーティング組成物上に直接配置され、かつ、第2の生体安定性ポリマーおよび抗再狭窄剤からなる第2のコーティング組成物とを含むコーティングとからなり、
前記コーティングは、露出した管腔外面および露出した管腔内面を有する埋め込み可能な血管内ステント。
【請求項23】
埋め込み可能なステントであって、
(a)管腔外面および該管腔外面の反対側にある管腔内面を有するステント側壁構造と、
(b)前記管腔外面の少なくとも一部に配置されるコーティングであって、
(i)該管腔外面の少なくとも一部に配置される第1のコーティング組成物と、
(ii)前記第1のコーティング組成物上に配置された第2のコーティング組成物と、
(iii)前記第2のコーティング組成物上に配置された第3のコーティング組成物とからなるコーティングとを備え、
前記コーティングは、露出した管腔外面および露出した管腔内面を有する埋め込み可能なステント。
【請求項24】
前記コーティングは、前記ステントの管腔外面と前記第1コーティング組成物との間に配置されている接着剤をさらに含む請求項23に記載のステント。
【請求項25】
前記コーティングは、前記第1のコーティング組成物と前記第2のコーティング組成物との間に配置されている接着剤をさらに含む請求項23に記載のステント。
【請求項26】
前記コーティング組成物のうちの少なくとも1つは、他の2つとは異なる請求項23に記載のステント。
【請求項27】
前記第1のコーティング組成物、前記第2のコーティング組成物、および前記第3のコーティング組成物のいずれかは、治療薬を含む請求項23に記載のステント。
【請求項28】
前記治療薬は、抗血栓症薬、血管新生阻害薬、抗増殖剤、抗生物質、抗再狭窄剤、増殖因子、免疫抑制剤、および放射化学薬剤のいずれかを含む請求項27に記載のステント。
【請求項29】
前記治療薬は、パクリタキセルを含む請求項27に記載のステント。
【請求項30】
前記治療薬は、シロリムス、タクロリムス、ピメクロリムス、エベロリムス、およびゾタロリムスのいずれかを含む請求項27に記載のステント。
【請求項1】
埋め込み可能なステントであって、
(a)管腔外面および該管腔外面の反対側にある管腔内面を有するステント側壁構造と、
(b)前記管腔外面の少なくとも一部に配置されたコーティング組成物からなり、かつ、露出した管腔外面および露出した管腔内面を有するコーティングとを備える埋め込み可能なステント。
【請求項2】
前記コーティング組成物は、前記ステントの管腔外面上に直接配置される請求項1に記載のステント。
【請求項3】
前記コーティングは、前記ステントの管腔外面と前記コーティング組成物との間に配置されている接着剤をさらに含む請求項1に記載のステント。
【請求項4】
前記コーティング組成物は、治療薬を含む請求項1に記載のステント。
【請求項5】
前記治療薬は、抗血栓症薬、血管新生阻害薬、抗増殖剤、抗生物質、抗再狭窄剤、増殖因子、免疫抑制剤、および放射化学薬剤のいずれかを含む請求項4に記載のステント。
【請求項6】
前記治療薬は、パクリタキセルを含む請求項4に記載のステント。
【請求項7】
前記治療薬は、シロリムス、タクロリムス、ピメクロリムス、エベロリムス、およびゾタロリムスのいずれかを含む請求項4に記載のステント。
【請求項8】
前記コーティング組成物は、ポリマー、金属、金属酸化物、セラミック酸化物、不活性炭素、およびこれらの組合せのいずれかを含む請求項1に記載のステント。
【請求項9】
埋め込み可能な血管内ステントであって、
(a)複数のストラットおよび複数の開口部を備えるステント側壁構造であって、少なくとも1つのストラットは、管腔外面および該管腔外面の反対側にある管腔内面を備えるステント側壁構造と、
(b)前記ストラットの管腔外面の少なくとも一部に直接配置されて、生体安定性ポリマーおよび抗再狭窄剤を含むコーティング組成物からなるとともに、露出された管腔外面および露出された管腔内面を有するコーティングとを備える埋め込み可能な血管内ステント。
【請求項10】
埋め込み可能なステントであって、
(a)管腔外面および該管腔外面の反対側にある管腔内面を有するステント側壁構造と、
(b)前記管腔外面の少なくとも一部に配置されるコーティングであって、
(i)該管腔外面の少なくとも一部に配置される第1のコーティング組成物と、
(ii)前記第1のコーティング組成物上に配置された第2のコーティング組成物とからなるコーティングとを備え、
前記コーティングは、露出した管腔外面および露出した管腔内面を有する埋め込み可能なステント。
【請求項11】
前記第1のコーティング組成物は、前記管腔外面上に直接配置され、前記第2のコーティング組成物は、前記第1のコーティング組成物上に直接配置される請求項10に記載のステント。
【請求項12】
前記コーティングは、前記ステントの管腔外面と前記第1コーティング組成物との間に配置されている接着剤をさらに含む請求項10に記載のステント。
【請求項13】
前記ステントは、前記第1のコーティング組成物と前記第2のコーティング組成物との間に配置されている接着剤をさらに含む請求項12に記載のステント。
【請求項14】
前記第1のコーティング組成物と前記第2のコーティング組成物とは異なる請求項10に記載のステント。
【請求項15】
前記第1のコーティング組成物と前記第2のコーティング組成物とは同じである請求項10に記載のステント。
【請求項16】
前記第1のコーティング組成物は、前記管腔外面上に配置されたときに第1の露出した表面積を有し、前記第2のコーティング組成物は、前記第1のコーティング組成物上に配置されたときに第2の露出した表面積を有し、前記第2の露出した表面積は、前記第1の露出した表面積よりも広い請求項10に記載のステント。
【請求項17】
前記第1のコーティング組成物および前記第2のコーティング組成物のいずれか一方は、治療薬を含む請求項10に記載のステント。
【請求項18】
前記治療薬は、抗血栓症薬、血管新生阻害薬、抗増殖剤、抗生物質、抗再狭窄剤、増殖因子、免疫抑制剤、および放射化学薬剤のいずれかを含む請求項17に記載のステント。
【請求項19】
前記治療薬は、パクリタキセルを含む請求項17に記載のステント。
【請求項20】
前記治療薬は、シロリムス、タクロリムス、ピメクロリムス、エベロリムス、およびゾタロリムスのいずれかを含む請求項17に記載のステント。
【請求項21】
前記第1のコーティング組成物または前記第2のコーティング組成物は、ポリマー、金属、金属酸化物、セラミック酸化物、不活性炭素、およびこれらの組合せのいずれかを含む請求項10に記載のステント。
【請求項22】
埋め込み可能な血管内ステントであって、
(a)複数のストラットおよび複数の開口部を備えるステント側壁構造であって、少なくとも1つのストラットは、管腔外面および該管腔外面の反対側にある管腔内面を備えるステント側壁構造と、
(b)前記ストラットの管腔外面の少なくとも一部に配置されるコーティングであって、
(i)該ストラットの管腔外面の少なくとも一部に直接配置され、かつ、第1の生体安定性ポリマーからなる第1のコーティング組成物と、
(ii)前記第1のコーティング組成物上に直接配置され、かつ、第2の生体安定性ポリマーおよび抗再狭窄剤からなる第2のコーティング組成物とを含むコーティングとからなり、
前記コーティングは、露出した管腔外面および露出した管腔内面を有する埋め込み可能な血管内ステント。
【請求項23】
埋め込み可能なステントであって、
(a)管腔外面および該管腔外面の反対側にある管腔内面を有するステント側壁構造と、
(b)前記管腔外面の少なくとも一部に配置されるコーティングであって、
(i)該管腔外面の少なくとも一部に配置される第1のコーティング組成物と、
(ii)前記第1のコーティング組成物上に配置された第2のコーティング組成物と、
(iii)前記第2のコーティング組成物上に配置された第3のコーティング組成物とからなるコーティングとを備え、
前記コーティングは、露出した管腔外面および露出した管腔内面を有する埋め込み可能なステント。
【請求項24】
前記コーティングは、前記ステントの管腔外面と前記第1コーティング組成物との間に配置されている接着剤をさらに含む請求項23に記載のステント。
【請求項25】
前記コーティングは、前記第1のコーティング組成物と前記第2のコーティング組成物との間に配置されている接着剤をさらに含む請求項23に記載のステント。
【請求項26】
前記コーティング組成物のうちの少なくとも1つは、他の2つとは異なる請求項23に記載のステント。
【請求項27】
前記第1のコーティング組成物、前記第2のコーティング組成物、および前記第3のコーティング組成物のいずれかは、治療薬を含む請求項23に記載のステント。
【請求項28】
前記治療薬は、抗血栓症薬、血管新生阻害薬、抗増殖剤、抗生物質、抗再狭窄剤、増殖因子、免疫抑制剤、および放射化学薬剤のいずれかを含む請求項27に記載のステント。
【請求項29】
前記治療薬は、パクリタキセルを含む請求項27に記載のステント。
【請求項30】
前記治療薬は、シロリムス、タクロリムス、ピメクロリムス、エベロリムス、およびゾタロリムスのいずれかを含む請求項27に記載のステント。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【図8F】
【図8G】
【図8H】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図13D】
【図13E】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【図8F】
【図8G】
【図8H】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図13D】
【図13E】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【公表番号】特表2010−535541(P2010−535541A)
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−519206(P2010−519206)
【出願日】平成20年7月22日(2008.7.22)
【国際出願番号】PCT/US2008/008900
【国際公開番号】WO2009/020520
【国際公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(500332814)ボストン サイエンティフィック リミテッド (627)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月22日(2008.7.22)
【国際出願番号】PCT/US2008/008900
【国際公開番号】WO2009/020520
【国際公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(500332814)ボストン サイエンティフィック リミテッド (627)
【Fターム(参考)】
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