説明

広域型学習指導者支援教育用複合システム

【課題】 本発明は、広域に分散する地域において、時間と場所に縛られずにインターネットコミュニティサイトで指導者間の情報交換等を行える、同期・非同期双方対応可能なシステムを提供する。
【解決手段】 学習指導に関する情報を非同期のサーバから供給し、さらに教育コンテンツをインターネット上の非同期のサーバを介して、情報提供者と情報閲覧者間、または同じ情報を同時に表示している情報閲覧者同士、あるいは教育コンテンツ・学習教材の作成者とその使用者間、および同じ教育コンテンツ・学習教材の使用者同士がインターネット上の同期のサーバで、指導を受けたり、意見交換を同時におこなうとともに、非同期のサーバを介して指導者のトレーニング用学習コンテンツを提供する統合プラットフォームにより広域に分散した指導者の学習に最適な複合的システムを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広域に分散する地域において、時間と場所に縛られずにインターネットコミュニティサイトで指導者間の情報交換等を行える、同期・非同期双方対応可能なシステムを提供するものである。
【背景技術】
【0002】
広域な地域に分散する小学校や中学校においては、2002年に導入された小学校および中学校「総合的な学習の時間」や2011年に導入予定の小学校「英語」などのように、これまで教員が未経験な新規の教育課程が導入される場合があり、その場合には、学校毎あるいは教員個々が独自に、教材作成や指導方法の確立をおこなわなければならない。しかし、このような新規の教育課程には教科指導用の資料が少なく、例えば、小学校「英語」の場合においては、小学生に対する英語教育は中学校・高等学校の英語教育とは異なった視点や学習観が必要になるため、教材作成や指導方法などについて、同じ課題や関心を持つ教員間で情報交換を行う必要がでてきている。
【0003】
これまでの新規な教育課程の導入においては、指導者(教員)は一定時刻の一定場所に集まり研修会という方法で情報交換をおこない教育方法を習得してきた。しかし、一定時刻、一定場所、多人数という研修会では、指導者として得たい新規課程に関する指導情報を十分に得ることは難しく、遠隔地においても情報交換が可能なコミュニティサイトの構築が必要となっていた。
【0004】
また、教材作成や指導方法の確立をおこなうためには情報収集が必要であるが、そのツールとして、近年はインターネットを利用する情報システムが利用されるようになってきているが、情報交換を行う手段としては課題が多い。
【0005】
さらに、教育技法の共有化を行うために、新規に開発された教育コンテンツをデータベースとして構築し、非同期の形で指導者に提供する情報システム(特許文献1)があるが、教育コンテンツ作成者や使用者とインターネット上で同期的に直接指導や会話を行えるシステムとはなっていない。また、学習教材をインターネットで提供するシステム(特許文献2、特許文献3)においては、学習教材を使用する者がインターネット学習教材を使用しながら、同期してインターネット上で指導を受けられるシステムとはなっていない。
【特許文献1】特願平11−365672公報
【特許文献2】特願2000−386741公報
【特許文献3】特願2002−185743公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
学習指導に関する情報を非同期のサーバから供給し、さらに教育コンテンツをインターネット上の非同期のサーバを介して、情報提供者と情報閲覧者間、または同じ情報を同時に表示している情報閲覧者同士、あるいは教育コンテンツ・学習教材の作成者とその使用者間、および同じ教育コンテンツ・学習教材の使用者同士がインターネット上の同期のサーバで、指導を受けたり、意見交換を同時におこなうとともに、非同期のサーバを介して指導者のトレーニング用学習コンテンツを提供する統合プラットフォームにより広域に分散した指導者の学習に最適な複合的システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するため、請求項1に記載の広域型学習指導者支援教育用複合システムは、同期・非同期双方対応可能な通信システム及び教材プラットフォーム機能を統合した非同期サーバ、同期サーバ,学習管理サーバを備えたことを特徴としている。
このことにより、使用者同士がインターネット上の同期のサーバで、指導を受けたり、意見交換を同時におこなうことが可能になる。
【0008】
前記プラットフォーム機能は、学習指導データベースや教育コンテンツ・学習教材などの学習指導に関する情報を非同期のサーバから供給し、それらの情報を同期・非同期で通信しながらの教材の共同開発を可能にする機能を具備している。
【0009】
また、前記プラットフォームには、コミュニティ全体への公開情報と非公開情報を詳細に設定できる機能およびチャット、ビデオチャット、プレゼンテーション提示、教材データベースストア利用などの方法により利用者同士が同時に意見交換を行うSNS(Social Networking Service)の機能を統合している。
【0010】
本発明により、インターネットを介して、システム管理者の非同期サーバの記録媒体に記録された学習指導データベースおよび教育コンテンツ・学習教材などの情報に利用者がアクセスしながら、情報提供者と情報閲覧者間、または同じ情報を同時に表示している情報閲覧者同士または教育コンテンツ・学習教材の作成者とその使用者間、および同じ教育コンテンツ・学習教材の使用者同士がシステム管理者の同期サーバに接続することにより、学習指導データベースや教育コンテンツ・学習教材などの情報を共有しながら、学習指導方法を確立することができる。
【0011】
また、前記非同期サーバは、逐次、学習指導データベースや教育コンテンツ・学習教材などの学習情報を学習者本人および学習コミュニティにフィードバックするe−Learning機能を具備することにより、利用者の総体的な学習指導能力を向上させることができる。
【0012】
本発明の広域型学習指導者支援教育用複合システムの利用者は、音声マイクおよび/またはカメラを接続したパーソナルコンピューターからインターネットを介して、非同期サーバおよび同期サーバへの接続を選択あるいは同時に行う方法によって、トレーニング教材の開発および蓄積を、同じ課題や関心を持つ指導者間で情報交換や共同開発を行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、新規な教育課程のための準備を必要とする指導者が、インターネットを通じ、同じ課題や関心を持った指導者間の情報交換を時間と場所に縛られずに行う事が可能となる。さらに、指導者が集まって研修などを行う必要が無くなるため、とりわけ広大な地域に分散する教員においては、時間と労力の負担を軽減できる大きな効果を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について添付の図面に基づいて説明する。
【0015】
<同期通信と非同期通信の統合>
クライアント400は、非同期サーバ100と同期サーバ200に対してインターネット回線を通じて接続される。
【0016】
非同期サーバ100は、クライアント400で実行されるWebブラウザ412に対し、HTTP通信を利用してWebページを提供する。クライアント400がWebページにアクセスする際は、クライアント400を利用するユーザーが入力するログインおよびパスワードを非同期サーバ100に送信する。非同期サーバ100には事前にID情報を登録されており、クライアント400から送信されたログイン情報と比較した結果、一致した場合にはクライアント400に対してアクセスするためのセッション情報を発行する。クライアント400がセッション情報を付加してHTTP通信を非同期サーバ100に対して行うことで、非同期サーバ100はID情報に応じたページ情報をクライアント400に対して送信する。
【0017】
同期サーバ200は、クライアント400で実行されるチャットアプリケーション411から、TCP通信を利用して受け取るログイン情報を保持する。同期サーバ200には複数のチャットアプリケーション411からのログイン情報を保持しておく機能を有することで、現在ログインしているチャットアプリケーション411の一覧を非同期サーバ100へ提供する。
【0018】
同期サーバ200は、非同期サーバ100からのHTTP通信を介して、同期サーバ200に保持されているチャットアプリケーション411のログイン情報を非同期サーバ100へ送信する機能と、非同期サーバ100から同期サーバ200へチャットアプリケーション411を起動する命令を実行させる機能を有する。これらの機能を実現するために、HTTP上ではJSONを用いた通信を行なう。
【0019】
チャットアプリケーション411は同期サーバ200とのTCP通信を介して、他のクライアント400上で実行されるチャットアプリケーション411同士でリアルタイム通信を行うことができる。非同期サーバ100から同期サーバ200に対して、相手先のチャットアプリケーション411を指定した発信情報を送信すると、同期サーバ200は相手先のチャットアプリケーション411に対して発信情報を送信する。発信情報を受け取ったチャットアプリケーション411は、同期サーバ200に対して受信完了通知を送信する。
【0020】
チャットアプリケーション411には音声の入出力を行うためのヘッドセット401と映像の入力を行うためのUSBカメラ402をクライアント400のクライアントコンピューターを通じて接続される。チャットアプリケーション411に入力される音声と映像は、クライアント400と他のクライアント400間をRTP通信(UDPによる通信)を用いて送受信する。チャットアプリケーション411同士の通信はVPNを通して行われる。
【0021】
チャットアプリケーション411とWebブラウザ412はcallto命令を用いてWebブラウザ412の起動時にチャットアプリケーション411を起動させる。calltoはアプリケーション411のインストール時に410に設定する。
【0022】
これにより、非同期サーバ100から指定されたチャットアプリケーション411への通信を同一システム上で行うことを可能とすることで、クライアント400のユーザーに対して、同一画面上の操作で非同期Webページと同期通信を利用することを可能とするとともに,VPNを用いた安全な通信環境を提供することも可能としている。
【0023】
<非同期通信とLMSの統合>
各クライアント400は、インターネット回線を通じて非同期サーバ100経由でLMSサーバ300に接続される。
【0024】
クライアント400がログイン状態のとき,ログイン情報がクライアント400のWebページ上のLMSリンク413への接続要求を通してLMSサーバ300に送信されると,LMSサーバ300はあらかじめ一覧として有しているログイン情報と照合し,一致している場合にログインを許可する。一致する情報がない場合は、非同期サーバ100からのログイン情報に基づきLMSサーバ300はユーザー情報を作成し、LMSサーバ300に対してセッションを発行する。これにより非同期サーバ100にログインしているユーザーは再認証なしにLMSにログインすることが可能となり、非同期通信とLMSの統合をおこなう。
【0025】
また、LMSサーバ300はクライアント400に対して問題作成機能を提供する。LMSリンク413を通してLMSサーバ300にログイン認証を行ったユーザーは,LMSサーバ300とクライアント400との間のHTTP通信により教材作成を行いその結果をLMSサーバ300上に保存することが可能となる。LMSサーバ300はその結果を非同期サーバ100に対してXMLを用いて教材一覧情報を送信する。非同期サーバ100は受信したXMLを基にリンク集を作成する。LMSリンク413を通してLMSサーバ300にログイン認証を行ったユーザーは,Webブラウザ412に表示されるリンクを通してLMSサーバ300から送信されるHTTPをLMSリンク413に表示することで問題に解答することができる。LMSリンク413で問題を解答した結果はLMSサーバ300上に保存され,非同期サーバ100に対してXMLを用いて結果一覧を送信する。これにより非同期サーバ100にログインしているユーザーはLMSサーバ300に再ログインすることなくLMSサーバ300上で問題を作成・解答及び非同期通信Webブラウザ412およびLMSリンク413上で問題一覧の確認、あるいはユーザー自身の成績管理が可能となる。
【0026】
本システムは、非同期通信機能および同期通信機能に加え学習プラットフオーム機能(LMS)の3つの機能を統合させている(図9)。本システムは、▲1▼非同期通信としての文字ベースによるコミュニケーション、▲2▼同期通信としての音声・動画による通信、ホワイトボードによるコミュニケーション、▲3▼音声会議システム、▲4▼ファイル共有、▲5▼学習プラットフオーム(LMS)の利用を可能とする実施形態となる。この実施形態により、教育機関あるいは企業において、学校内あるいは社内のコミュニケーションが通信を介して行うことができ、また、学会および研究会など同じ目的を持つ研究者間で情報交換を目的としたデータベースの構築を図ることができる。さらに、それらのデータベースを用いることにより遠隔地での学習や教育が可能になる。本システムの運用として、具体的には、▲1▼画像や文章を見ながら音声で遠隔会議や打合せを行う。▲2▼学生に非同期通信で課題を出し同期通信で確認を行うなどの方法で遠隔教育を行う。▲3▼クイズや教材を共同で作成しその学習のフィードバックを得ながら改良する。などの方法が取られる。
【実施例】
【0027】
<小学校英語支援コミュニティサイト>
本システムを用いた実施例としては、小学校英語指導に目的を限定したSNS(Socical Networking Service)と英語教育者用e−Learningトレーニング教材提供を連携させるシステムがある。それにより、「未経験の領域」である小学校英語教育の担当者の総合的な教育能力向上を目指す。SNSを教育機関で利用可能な高度なシステムとして実現するため、同期、非同期双方対応可能な通信システム及び教材プラットフォーム機能を統合した新たに開発するシステムである。具体的には、(1)チャット、ビデオチャット、教材データベースストアなどの機能を既存のSNSと統合。(2)教材プラットフオーム機能は、同期・非同期で通信しながらの教材の共同開発が可能。(3)コミュニティ全体への公開情報を詳細に設定できる機能を付加し、児童のコミュニティへの広範囲な参加を可能とする。(4)英語教育者用e−Learningトレーニング教材は、Learning Management System(LMS)サーバからWebを経由して提供される。(5)SNSとの連携をさせることにより、逐次学習情報を学習本人及び学習コミュニティにフィードバックできる。
【0028】
さらに、本システムは、主な機能として以下のものを具備している。▲1▼教材・指導方法事例集(SNS):目的に合わせて検索ができ、投稿も可能。▲2▼質問コーナー(SNS):指導方法や英語についての疑問など関係者が答えてくれる。▲3▼日記コーナー(SNS):いろいろな先生の実践の様子、経験談、研修会参加記などが分かる。▲4▼電子会議:電話機能、テレビ電話機能があり、ネット上で学校間、地域あるいは特定グループで会議ができる。▲5▼英語学習コーナー(e−Learning):単語や表現,発音をパソコン画面上で学べる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
非同期サーバと同期サーバに同時にインターネット上のWebで作業できるシステムによって、教育情報および教育コンテンツを作成者と使用者、使用者同士などで双方向対応可能なシステムにより、インターネットを活用した教育支援産業で利用可能な方法となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】システム全体図
【図2】クライアントの構成図
【図3】起動時フローチャート
【図4】起動している412一覧の取得フローチャート
【図5】412同士の会話の実行フローチャート
【図6】JSONのデータ例
【図7】JSONのデータ例
【図8】XMLのデータ例
【図9】統合機能
【符号の説明】
100 非同期サーバ
200 同期サーバ
300 LMSサーバ
400 クライアント
401 ヘッドセット
402 USBカメラ
410 クライアントコンピュータ
411 チャットアプリケーション
412 Webブラウザで閲覧する非同期サーバのWebページ
413 LMSのWebページ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同期・非同期双方対応可能な通信システム及び教材プラットフォーム機能を統合した非同期サーバ、同期サーバ,学習管理サーバを備えた広域型学習指導者支援教育用複合システム。
【請求項2】
前記プラットフォーム機能が、同期・非同期で通信しながらの教材の共同開発を可能にする機能を具備していることを特徴とする請求項1に記載の広域型学習指導者支援教育用複合システム。
【請求項3】
プラットフォーム機能において、コミュニティ全体への公開情報と非公開情報を詳細に設定できる機能およびチャット、ビデオチャット、プレゼンテーション提示、教材データベースストア利用などの方法により利用者同士が同時に意見交換を行うSNS(Social Networking Service)の機能を統合することを特徴とする請求項1および請求項2に記載の広域型学習指導者支援教育用複合システム。
【請求項4】
インターネットを介して、システム管理者の非同期サーバの記録媒体に記録された学習指導データベースおよび教育コンテンツ・学習教材などの情報に利用者がアクセスしながら、情報提供者と情報閲覧者間、または同じ情報を同時に表示している情報閲覧者同士または教育コンテンツ・学習教材の作成者とその使用者間、および同じ教育コンテンツ・学習教材の使用者同士がシステム管理者の同期サーバに接続することにより情報を共有することを特徴とする請求項1〜請求項3に記載の広域型学習指導者支援教育用複合システム。
【請求項5】
前記非同期サーバにおいて、逐次、学習指導データベースや教育コンテンツ・学習教材などの学習情報を学習者本人および学習コミュニティにフィードバックするe−Learning機能を具備することにより、利用者の総体的な学習指導能力を向上させることを特徴とする請求項1〜請求項4に記載の広域型学習指導者支援教育用複合システム。
【請求項6】
利用者が、音声マイクおよび/またはカメラを接続したパーソナルコンピューターからインターネットを介して、非同期サーバおよび同期サーバへの接続を選択あるいは同時に行う方法によって、トレーニング教材の開発および蓄積・共同開発を行うことを可能にする、あるいは情報・意見・ノウハウなどの情報交換または利用する事を可能にする請求項1〜請求項5に記載の広域型学習指導者支援教育用複合システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−231751(P2010−231751A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−101413(P2009−101413)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(505082419)国立大学法人北海道教育大学 (2)
【出願人】(000125369)学校法人東海大学 (352)
【出願人】(509110404)株式会社VERSION2 (1)
【Fターム(参考)】