広巾延伸フィルム用消音スプリッター
【課題】 1軸延伸された広巾延伸フィルムを長さ方向(タテ方向)にスプリットして、広巾スプリットウェブを製造するためのスプリッター(割繊具)に関し、スプリット工程における消音効果が大きく、また、スプリット時に生じる欠点としての小割れの発生を少なく、スプリットテンションを小さくできてスプリット性も良い、広巾延伸フィルム用スプリッターを提供する。
【解決手段】 断面が多角形の多角柱からなる回転体であって、この多角形の稜線部に多数の刃がネジ山状に形成され、断面が多角形の棒状体の稜線部がラセン状に捻れて形成されていることを特徴とする、広巾延伸フィルム用消音スプリッター。
【解決手段】 断面が多角形の多角柱からなる回転体であって、この多角形の稜線部に多数の刃がネジ山状に形成され、断面が多角形の棒状体の稜線部がラセン状に捻れて形成されていることを特徴とする、広巾延伸フィルム用消音スプリッター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1軸延伸された広巾延伸フィルムを長さ方向(タテ方向)にスプリットして、広巾スプリットウェブを製造するためのスプリッター(割繊具)に関し、特に、スプリット工程における消音効果が高く、また、スプリット時に生じる欠点としての小割れの発生を少なくし、スプリットテンションも少なくできてスプリット性の良い、広巾延伸フィルム用消音スプリッターに関する。
【背景技術】
【0002】
広巾延伸フィルムを網状に割繊(スプリット)して、広幅スプリットウェブ(広巾網状体)を製造することは、この網状体を拡幅して経緯積層した経緯直交不織布の原料として量産されている。このようなスプリッターの代表的なものとして、断面が多角形の棒状体(多角柱体)の稜線部に多数のネジ山状の刃を設け、この棒状体の高速回転する周上に広巾延伸フィルムを走行させてスプリットさせる方式が、スプリット性が良いことから多く採用されている。このような断面が多角形の棒状体を高速回転する周上に広巾フィルムを走行させると、広巾フィルムとスプリッターの平面部(隣接する稜線部との間)間でフィルムが叩かれて、ハタメキが生じ大きな音が発生する。近年、環境条件が厳しくなり、この製造過程で生じる騒音を解消することが重要な技術的課題となってきた。この騒音の解決手段として、多角柱体の平面部(隣接する稜線部との間)に凸状の受け部材を設けて、それによりハタメキを小さくして、音を小さくするスプリッターが提案されている(特開平5−111907)。しかし、この方式においても、ハタメキは完全には無くならず、また、刃と凸状の受け部材との間に溝が形成されるため、その溝で音が反響し、消音効果も限定的であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−117907号公報(第1頁、第1、5図)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記問題点を除くためになされたものであって、その目的とするところは、広巾延伸フィルムのスプリットにおける消音効果の大きいスプリッターを提案することにある。また本発明は、スプリッター上での広巾フィルムのハタメキを抑え、製造される網状体に入る欠陥としての小割れを少なくすることにある。また本発明は、小さなスプリットテンションでもスプリットできるスプリッターを提供することにある。さらに本発明は、長時間スプリットしても切り粉としての樹脂の粉末の蓄積が少ないスプリッターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は背景技術で述べた従来技術の問題点を克服するために行われたもので、本発明の製造装置としての特徴を下記に示す。本発明は、断面が多角形の多角柱からなる回転体であって、この多角形の稜線部に多数の刃がネジ山状に形成され、断面が多角形の棒状体の稜線部がラセン状に捻れて形成されていることを特徴とする、広巾延伸フィルム用消音スプリッターに関する。また本発明は、前記ラセン角度が2度以上であって60度以下である、前記広巾延伸フィルム用消音スプリッターに関する。また本発明は、前記断面の多角形が、5−10角形である、前記広巾延伸フィルム用消音スプリッターに関する。また本発明は、前記稜線部の刃を形成している部分の頂点部が、2−12mmの平行部を有する、前記広巾延伸フィルム用消音スプリッターに関する。また本発明は、前記稜線部の刃を形成している部分の少なくとも片方の端部において、多角形面に垂直方向に切り込み部を有する、前記広巾延伸フィルム用消音スプリッターに関する。また本発明は、前記稜線部のネジ状に形成された刃が、前記スプリッターの中心部より左右に左向き、右向きと異なる方向に形成されている、前記広巾延伸フィルム用消音スプリッターに関する。また本発明は、前記棒状体の稜線部に設けられているラセン状の捻れが、前記スプリッターの中心部より左右に左向き、右向きと異なる方向に形成されている、前記広巾延伸フィルム用消音スプリッターに関する。さらに本発明は、前記多角柱の隣接する稜線の間に突起部が形成されている、前記広巾延伸フィルム用消音スプリッターに関する。
【0006】
本発明は、広巾1軸延伸フィルムをスプリットして広巾網状ウェブを製造するためのスプリッターに関する。広巾延伸フィルムのスプリット工程は特に騒音が大きく、種々の減音手段が試みられているものの有効な手段がないのが現実である。広巾延伸フィルムとは、ここでは、騒音の発生が特に問題となる巾で、50mm以上、好ましくは200mm以上、最も好ましくは500mm以上であって、2,000mm以下のフィルムが実用的に最も重要である。したがって、10−25mm程度の通常の延伸テープにおけるスプリットは対象としない。
【0007】
本発明のスプリッターは、断面が多角形の多角柱からなる棒状体である。多角柱の稜線に多数のネジ状の刃が設けられており、その稜線の刃にフィルムが接触するため、スプリット性が良い。多角形は、5−10角形であることが好ましく、6−8角形であることがさらに好ましい。3角形や4角形では、スプリッターの高速回転における稜線と平面との高さの差が大きすぎ、振動が激しすぎて、スプリットウェブに割れが入りやすかった。また、また10角形を越えた形状では、スプリット性が悪く、また同一径のスプリッターでは、製造される網状体の枝の長さを長くすることが困難である。
【0008】
本発明におけるスプリッターは、スプリット工程において広巾延伸フィルとの接触角が一定以上である場合において効果を発する。接触角度は10度以上であって150度以下が好ましく、さらに好ましくは30以上であって90度以下である。10度未満では、音がこもることが無いので、騒音は小さいが、一定の枝の長さの網目を形成するためには回転数を大きくする必要があり、割れが入りやすくて実用的ではない。また150度を超えると、製品の広巾ウェブに摩擦による毛羽や粉が発生しやすく、割れも多くなる。本発明のスプリッターは、上記接触角度において消音効果も大きくなる。
【0009】
本発明のスプリッターにおいては、多角柱の稜線部がラセン状に捻れて形成されていることを特徴とする。稜線が捻れており、工程において広巾延伸フィルムとスプリッターが一定の接触角度を有するために、スプリッターの回転過程で広巾フィルムの幅方向の何れかの部分が必ず稜線に接しており、従来のように、スプリッターにおいてフィルムがハタメクことが少ない。このラセン角度は2度以上であって60度以下であることが好ましく、5度以上であって45度以下であることがさらに好ましい。このラセン角度は、フィルムの巾、スプリッターの径、多角柱における稜線の数、スプリッターの表面速度とフィルムの走行速度との比、フィルムとの接触角度などにより決められる。
【0010】
本発明のスプリッターの稜線部には、ネジ状に多数の刃が切られており、10mm当たり0.5本から20本の刃を有する。そのネジ角度は、1度未満で、1周して0.5−2mm程度進む微小角度である。そして、この稜線部の刃が形成されている部分は、2−12mmの平行部を有することが望ましい。
【0011】
また、本発明のスプリッターは、スプリッターの稜線部の刃を形成している部分の少なくとも片方の端部において、多角形面に垂直方向に切り込み部を有することができる。このような切り込み部を有することで、スプリット性が良くなり、低いテンションでスプリットすることができ、そのためフィルムに入る割れも少なくなる。
【0012】
本発明における稜線部にネジ山状に形成された刃は、スプリッターの中心部より左右に左向き、右向きと異なる方向に形成されているようにすることができる。このようにすることにより、製造された網状ウェブにおいて、幹が中心部より左右で異なる方向に走行しているウェブとすることができ、ターンロール等を網状ウェブが走行する際に偏って走行する弊害がなくなる。
【0013】
本発明のスプリッターの稜線部に設けられているラセン状の捻れは、スプリッターの中心部より左右に左向き、右向きと異なる方向に形成されている形態にすることができる。そうすることにより、スプリット工程中における広巾フィルムの一方方向へのイザリを防止でき、製品である広巾スプリットウェブに入る小割れも防止することができる。
【0014】
本発明における多角柱からなるスプリッターの隣接する稜線部の間に、突起部が形成された形状とすることもできる。稜線部が形成するラセン角度が大きい場合、スプリットされる広巾フィルムがスプリッター上で波打って走行し、小割れが入りやすくなるが、その場合でも、このような突起物があることで、波打を防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のスプリッターは、断面が多角形の角柱体であり、稜線部がラセン状に捻れており、角柱体の面には溝が形成されていないことを構造上の特徴とする。このように本発明のスプリッターには溝がないため、音がこもることがなく、広巾延伸フィルムがスプリッター上でハタメクことが無いため、スプリットする際に発生する騒音を少なくできることに特徴がある。また、稜線部に形成された刃は、フィルムが入ってくる方向に対して斜め方向に切り立っていることより、切れが良く、小さいテンションでスプリットできる効果や、延伸倍率が低いなどの理由でスプリット性が良くないフィルムもスプリットできる効果がある。また、このようにハタメキがなく、小さいスプリットテンションであることより、もう一つの問題点である小割れの発生頻度を小さくすることができる。さらに、スプリッターを長時間運転していると、刃に切り粉としての樹脂の粉末が蓄積してスプリットを妨げるが、本発明のスプリッターは、稜線が斜めであるため、切り粉が抜けやすく、切り粉が蓄積しにくいという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のスプリッターの正面図。
【図2】図1のA−A線における断面図。
【図3】本発明のスプリッター−の稜線上に設けられた刃を示す図1のC−C線上の断面図。
【図4】本発明のスプリッター−の稜線上に設けられた刃の1個を示す図1のA−A線上の断面図。
【図5】A図は、本発明スプリッターの1個の刃の平面図で、B図は従来スプリッターの1個の刃の平面図。
【図6】本発明スプリッターの1個の刃の他の例を示す平面図。
【図7】本発明のスプリッターにより広巾フィルムをスプリットする工程を示す断面図。
【図8】本発明のスプリッターにより広巾延伸フィルムがスプリットされた網状ウェブを示す概念図。
【図9】本発明のスプリッターに設けられてネジ状の刃がスプリッターの中央部より左右で逆向きのネジ状の刃であることを示すスプリッターの正面図。
【図10】本発明のスプリッターに設けられて稜線部のラセン状の捻れが、スプリッターの中央部より左右で逆向きに捻れていることを示すスプリッターの正面図。
【図11】本発明のスプリッターの多角柱における隣接する稜線部間に突起部が形成されている例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明のスプリッターを示す正面図である。スプリッター1は、断面が多角形の多角柱であり、稜線部2a、2b、2c、・・・と、2つの稜線部間の平面部3a、3b、3c、・・・からなる。稜線部2の数は、多角形の頂点の数であり、図では6角形であるので、稜線部の数も6である。平面部3の数も同様である。本発明においては、その多角形の稜線部2が多角柱の軸方向の中心線C−Cに対して、角度Ψでラセン状に捻れていることを特徴とする。スプリッター1のA−A方向の断面図は、図2に示すように多角形(この図では6角形)であり、対角線上の長さはRである。稜線部2上には、ネジ山状に刃4が切られている。図1では、煩雑なため、1つの稜線部のみに刃4を示したが、全ての稜線部が刃4を有する。その刃4のC−C線上の断面の一部を拡大して図3に示した。稜線部2において、深さhで切り込まれ、刃4が形成される。このスプリッター1の軸の両端部は、軸受等に回転可能に取り付けられる取付端子5a、5bを有し、この部分で強制駆動されて回転する。
【0018】
図4は、本発明のスプリッター−の稜線上に設けられた刃4の1個を示す図1のA−A線上の断面図で示し、頂点部で長さmのフラット部5形成している例を示す。この4図の左端は、平面部3の延長線上に刃が切られている例を示す。図の右端では、刃はスプリッターの軸芯方向に角度αで切り込みが設けられている例を示す。
【0019】
図5のA図は、本発明スプリッターの1個の刃の平面図で、B図は、従来のスプリッターで捻れ角度Ψがゼロである場合の平面図を参考のため示した。本発明における刃4の頂点P1と平面部3の交点部m1、n1が作る三角形(図の斜線部)は、平面部3の延長線上にある。スプリット工程で、広巾延伸フィルムの入ってくる方向Fに対して、図5のAでは、フィルムはまずP1とm1を結ぶ線上で接するので、スプリットテンションが小さくなり、フィルムの切れが良くスプリット性が良い。それに対して、従来方式である、図5のB図は、フィルムはQ1、x1、y1が作る三角形の面積で受け、線で受ける訳ではないので、スプリット性が良いとは云えない。
【0020】
図6は、フィルムの進行方向Fに対して図4のP2部が当たる方向にスプリッターをセットした場合の他の例を示す平面図である。この図の場合は、フィルムはまずこの頂点P2の点に当たるので、図5のA図より切れがよく、スプリット性が良い。
【0021】
図7は、本発明のスプリッターにより広巾フィルムをスプリットする工程を断面図で示す。広巾延伸フィルム11は、導入ニップロール12a、12bでニップされてスプリッター1へ導かれる。広巾延伸フィルム11は、スプリッターと接触角θで走行しており、スプリッター1は、フィルムの走行速度の2〜5倍の表面速度で回転している。広巾延伸フィルム1は、導入ニップロール12a、12bと引取ニップロール13a、13bとの速度差でスプリットテンションが与えられ、そのスプリットテンションで広巾延伸フィルムは、広巾スプリットウェブ14となる。
【0022】
図8は、本発明のスプリッターにより広巾延伸フィルムがスプリットされた広巾スプリットウェブ21を横方向に拡幅した状態を概念図で示す。広巾スプリットウェブ21は、幹部22と枝部23より構成されている。本発明で問題にする小割れとは、スプリッター上での広巾延伸フィルムのハタメキ等で枝部23がつながって切断することによって、拡幅した際、小割れ部24となる。本発明では、この小割れ部24の発生を少なくできる特徴がある。
【0023】
図9は、本発明のスプリッター31に設けられてネジ状の刃がスプリッター21の中央部より左方向のネジ状の刃32aと右方向のネジ状の刃32bと逆向きのネジ状の刃である例を示す概念図である。この図ではネジ状の刃の角度αと−αをわかりやすいように大きく示したが、実際は前述のように微小角度である。このネジ状に切られた刃の方向で、図8に示した幹部22の傾きの方向が定まる。このように左右対称にねじ切られていることで、広巾スプリットウェブは、ウェブの中央部から左右に幹の傾きが異なるウェブとすることができる。
【0024】
図10は、本発明のスプリッターに設けられて稜線部のラセン状の捻れが、スプリッターの中央部より左右で逆向きに捻れていることをスプリッターの正面図で示す。スプリッター41は、その中央部で互いに逆向きのラセン角を有する稜線部42a、42bを有する。それぞれの稜線部42a、42b上に設けられているネジ状の刃の向きは、同一方向であってもよいし、図9で示したように互いに逆向きとすることもできる。
【0025】
図11は、本発明のスプリッター51の多角柱における隣接する稜線部52a、52b、52c、・・・の間に突起部53a、53b、53c、・・・が形成されている例をスプリッターの断面図で示す。このような突起部32があることにより、稜線部42が形成するラセン角が大きくても、走行するフィルムに波打が入らず、そのため小割れが入ることの少ないスプリッターとすることができた。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明のスプリッターは、広巾延伸フィルムのスプリットに使用され、広巾スプリットウェブの経緯積層不織布等の生産に利用される。
【符号の説明】
【0027】
1:スプリッター、 2:稜線部、 3:平面部、 4:刃、 5a、5b:取付端子。11:広巾延伸フィルム、 12a、12b:導入ニップロール、
13a、13b:引取ニップロール、 14:広巾スプリットウェブ。
21:広巾スプリットウェブ、 22:幹部、 23:枝部、 24:小割れ部。
31:スプリッター、 32a、32b:互いに逆向きのネジ状の刃。
41:スプリッター、 42a、42b:互いに逆向きのラセン角を有する稜線部。
51:スプリッター、 52a、52b、52c:稜線部、
53a、53b、53c:突起部
【技術分野】
【0001】
本発明は、1軸延伸された広巾延伸フィルムを長さ方向(タテ方向)にスプリットして、広巾スプリットウェブを製造するためのスプリッター(割繊具)に関し、特に、スプリット工程における消音効果が高く、また、スプリット時に生じる欠点としての小割れの発生を少なくし、スプリットテンションも少なくできてスプリット性の良い、広巾延伸フィルム用消音スプリッターに関する。
【背景技術】
【0002】
広巾延伸フィルムを網状に割繊(スプリット)して、広幅スプリットウェブ(広巾網状体)を製造することは、この網状体を拡幅して経緯積層した経緯直交不織布の原料として量産されている。このようなスプリッターの代表的なものとして、断面が多角形の棒状体(多角柱体)の稜線部に多数のネジ山状の刃を設け、この棒状体の高速回転する周上に広巾延伸フィルムを走行させてスプリットさせる方式が、スプリット性が良いことから多く採用されている。このような断面が多角形の棒状体を高速回転する周上に広巾フィルムを走行させると、広巾フィルムとスプリッターの平面部(隣接する稜線部との間)間でフィルムが叩かれて、ハタメキが生じ大きな音が発生する。近年、環境条件が厳しくなり、この製造過程で生じる騒音を解消することが重要な技術的課題となってきた。この騒音の解決手段として、多角柱体の平面部(隣接する稜線部との間)に凸状の受け部材を設けて、それによりハタメキを小さくして、音を小さくするスプリッターが提案されている(特開平5−111907)。しかし、この方式においても、ハタメキは完全には無くならず、また、刃と凸状の受け部材との間に溝が形成されるため、その溝で音が反響し、消音効果も限定的であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−117907号公報(第1頁、第1、5図)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記問題点を除くためになされたものであって、その目的とするところは、広巾延伸フィルムのスプリットにおける消音効果の大きいスプリッターを提案することにある。また本発明は、スプリッター上での広巾フィルムのハタメキを抑え、製造される網状体に入る欠陥としての小割れを少なくすることにある。また本発明は、小さなスプリットテンションでもスプリットできるスプリッターを提供することにある。さらに本発明は、長時間スプリットしても切り粉としての樹脂の粉末の蓄積が少ないスプリッターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は背景技術で述べた従来技術の問題点を克服するために行われたもので、本発明の製造装置としての特徴を下記に示す。本発明は、断面が多角形の多角柱からなる回転体であって、この多角形の稜線部に多数の刃がネジ山状に形成され、断面が多角形の棒状体の稜線部がラセン状に捻れて形成されていることを特徴とする、広巾延伸フィルム用消音スプリッターに関する。また本発明は、前記ラセン角度が2度以上であって60度以下である、前記広巾延伸フィルム用消音スプリッターに関する。また本発明は、前記断面の多角形が、5−10角形である、前記広巾延伸フィルム用消音スプリッターに関する。また本発明は、前記稜線部の刃を形成している部分の頂点部が、2−12mmの平行部を有する、前記広巾延伸フィルム用消音スプリッターに関する。また本発明は、前記稜線部の刃を形成している部分の少なくとも片方の端部において、多角形面に垂直方向に切り込み部を有する、前記広巾延伸フィルム用消音スプリッターに関する。また本発明は、前記稜線部のネジ状に形成された刃が、前記スプリッターの中心部より左右に左向き、右向きと異なる方向に形成されている、前記広巾延伸フィルム用消音スプリッターに関する。また本発明は、前記棒状体の稜線部に設けられているラセン状の捻れが、前記スプリッターの中心部より左右に左向き、右向きと異なる方向に形成されている、前記広巾延伸フィルム用消音スプリッターに関する。さらに本発明は、前記多角柱の隣接する稜線の間に突起部が形成されている、前記広巾延伸フィルム用消音スプリッターに関する。
【0006】
本発明は、広巾1軸延伸フィルムをスプリットして広巾網状ウェブを製造するためのスプリッターに関する。広巾延伸フィルムのスプリット工程は特に騒音が大きく、種々の減音手段が試みられているものの有効な手段がないのが現実である。広巾延伸フィルムとは、ここでは、騒音の発生が特に問題となる巾で、50mm以上、好ましくは200mm以上、最も好ましくは500mm以上であって、2,000mm以下のフィルムが実用的に最も重要である。したがって、10−25mm程度の通常の延伸テープにおけるスプリットは対象としない。
【0007】
本発明のスプリッターは、断面が多角形の多角柱からなる棒状体である。多角柱の稜線に多数のネジ状の刃が設けられており、その稜線の刃にフィルムが接触するため、スプリット性が良い。多角形は、5−10角形であることが好ましく、6−8角形であることがさらに好ましい。3角形や4角形では、スプリッターの高速回転における稜線と平面との高さの差が大きすぎ、振動が激しすぎて、スプリットウェブに割れが入りやすかった。また、また10角形を越えた形状では、スプリット性が悪く、また同一径のスプリッターでは、製造される網状体の枝の長さを長くすることが困難である。
【0008】
本発明におけるスプリッターは、スプリット工程において広巾延伸フィルとの接触角が一定以上である場合において効果を発する。接触角度は10度以上であって150度以下が好ましく、さらに好ましくは30以上であって90度以下である。10度未満では、音がこもることが無いので、騒音は小さいが、一定の枝の長さの網目を形成するためには回転数を大きくする必要があり、割れが入りやすくて実用的ではない。また150度を超えると、製品の広巾ウェブに摩擦による毛羽や粉が発生しやすく、割れも多くなる。本発明のスプリッターは、上記接触角度において消音効果も大きくなる。
【0009】
本発明のスプリッターにおいては、多角柱の稜線部がラセン状に捻れて形成されていることを特徴とする。稜線が捻れており、工程において広巾延伸フィルムとスプリッターが一定の接触角度を有するために、スプリッターの回転過程で広巾フィルムの幅方向の何れかの部分が必ず稜線に接しており、従来のように、スプリッターにおいてフィルムがハタメクことが少ない。このラセン角度は2度以上であって60度以下であることが好ましく、5度以上であって45度以下であることがさらに好ましい。このラセン角度は、フィルムの巾、スプリッターの径、多角柱における稜線の数、スプリッターの表面速度とフィルムの走行速度との比、フィルムとの接触角度などにより決められる。
【0010】
本発明のスプリッターの稜線部には、ネジ状に多数の刃が切られており、10mm当たり0.5本から20本の刃を有する。そのネジ角度は、1度未満で、1周して0.5−2mm程度進む微小角度である。そして、この稜線部の刃が形成されている部分は、2−12mmの平行部を有することが望ましい。
【0011】
また、本発明のスプリッターは、スプリッターの稜線部の刃を形成している部分の少なくとも片方の端部において、多角形面に垂直方向に切り込み部を有することができる。このような切り込み部を有することで、スプリット性が良くなり、低いテンションでスプリットすることができ、そのためフィルムに入る割れも少なくなる。
【0012】
本発明における稜線部にネジ山状に形成された刃は、スプリッターの中心部より左右に左向き、右向きと異なる方向に形成されているようにすることができる。このようにすることにより、製造された網状ウェブにおいて、幹が中心部より左右で異なる方向に走行しているウェブとすることができ、ターンロール等を網状ウェブが走行する際に偏って走行する弊害がなくなる。
【0013】
本発明のスプリッターの稜線部に設けられているラセン状の捻れは、スプリッターの中心部より左右に左向き、右向きと異なる方向に形成されている形態にすることができる。そうすることにより、スプリット工程中における広巾フィルムの一方方向へのイザリを防止でき、製品である広巾スプリットウェブに入る小割れも防止することができる。
【0014】
本発明における多角柱からなるスプリッターの隣接する稜線部の間に、突起部が形成された形状とすることもできる。稜線部が形成するラセン角度が大きい場合、スプリットされる広巾フィルムがスプリッター上で波打って走行し、小割れが入りやすくなるが、その場合でも、このような突起物があることで、波打を防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のスプリッターは、断面が多角形の角柱体であり、稜線部がラセン状に捻れており、角柱体の面には溝が形成されていないことを構造上の特徴とする。このように本発明のスプリッターには溝がないため、音がこもることがなく、広巾延伸フィルムがスプリッター上でハタメクことが無いため、スプリットする際に発生する騒音を少なくできることに特徴がある。また、稜線部に形成された刃は、フィルムが入ってくる方向に対して斜め方向に切り立っていることより、切れが良く、小さいテンションでスプリットできる効果や、延伸倍率が低いなどの理由でスプリット性が良くないフィルムもスプリットできる効果がある。また、このようにハタメキがなく、小さいスプリットテンションであることより、もう一つの問題点である小割れの発生頻度を小さくすることができる。さらに、スプリッターを長時間運転していると、刃に切り粉としての樹脂の粉末が蓄積してスプリットを妨げるが、本発明のスプリッターは、稜線が斜めであるため、切り粉が抜けやすく、切り粉が蓄積しにくいという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のスプリッターの正面図。
【図2】図1のA−A線における断面図。
【図3】本発明のスプリッター−の稜線上に設けられた刃を示す図1のC−C線上の断面図。
【図4】本発明のスプリッター−の稜線上に設けられた刃の1個を示す図1のA−A線上の断面図。
【図5】A図は、本発明スプリッターの1個の刃の平面図で、B図は従来スプリッターの1個の刃の平面図。
【図6】本発明スプリッターの1個の刃の他の例を示す平面図。
【図7】本発明のスプリッターにより広巾フィルムをスプリットする工程を示す断面図。
【図8】本発明のスプリッターにより広巾延伸フィルムがスプリットされた網状ウェブを示す概念図。
【図9】本発明のスプリッターに設けられてネジ状の刃がスプリッターの中央部より左右で逆向きのネジ状の刃であることを示すスプリッターの正面図。
【図10】本発明のスプリッターに設けられて稜線部のラセン状の捻れが、スプリッターの中央部より左右で逆向きに捻れていることを示すスプリッターの正面図。
【図11】本発明のスプリッターの多角柱における隣接する稜線部間に突起部が形成されている例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明のスプリッターを示す正面図である。スプリッター1は、断面が多角形の多角柱であり、稜線部2a、2b、2c、・・・と、2つの稜線部間の平面部3a、3b、3c、・・・からなる。稜線部2の数は、多角形の頂点の数であり、図では6角形であるので、稜線部の数も6である。平面部3の数も同様である。本発明においては、その多角形の稜線部2が多角柱の軸方向の中心線C−Cに対して、角度Ψでラセン状に捻れていることを特徴とする。スプリッター1のA−A方向の断面図は、図2に示すように多角形(この図では6角形)であり、対角線上の長さはRである。稜線部2上には、ネジ山状に刃4が切られている。図1では、煩雑なため、1つの稜線部のみに刃4を示したが、全ての稜線部が刃4を有する。その刃4のC−C線上の断面の一部を拡大して図3に示した。稜線部2において、深さhで切り込まれ、刃4が形成される。このスプリッター1の軸の両端部は、軸受等に回転可能に取り付けられる取付端子5a、5bを有し、この部分で強制駆動されて回転する。
【0018】
図4は、本発明のスプリッター−の稜線上に設けられた刃4の1個を示す図1のA−A線上の断面図で示し、頂点部で長さmのフラット部5形成している例を示す。この4図の左端は、平面部3の延長線上に刃が切られている例を示す。図の右端では、刃はスプリッターの軸芯方向に角度αで切り込みが設けられている例を示す。
【0019】
図5のA図は、本発明スプリッターの1個の刃の平面図で、B図は、従来のスプリッターで捻れ角度Ψがゼロである場合の平面図を参考のため示した。本発明における刃4の頂点P1と平面部3の交点部m1、n1が作る三角形(図の斜線部)は、平面部3の延長線上にある。スプリット工程で、広巾延伸フィルムの入ってくる方向Fに対して、図5のAでは、フィルムはまずP1とm1を結ぶ線上で接するので、スプリットテンションが小さくなり、フィルムの切れが良くスプリット性が良い。それに対して、従来方式である、図5のB図は、フィルムはQ1、x1、y1が作る三角形の面積で受け、線で受ける訳ではないので、スプリット性が良いとは云えない。
【0020】
図6は、フィルムの進行方向Fに対して図4のP2部が当たる方向にスプリッターをセットした場合の他の例を示す平面図である。この図の場合は、フィルムはまずこの頂点P2の点に当たるので、図5のA図より切れがよく、スプリット性が良い。
【0021】
図7は、本発明のスプリッターにより広巾フィルムをスプリットする工程を断面図で示す。広巾延伸フィルム11は、導入ニップロール12a、12bでニップされてスプリッター1へ導かれる。広巾延伸フィルム11は、スプリッターと接触角θで走行しており、スプリッター1は、フィルムの走行速度の2〜5倍の表面速度で回転している。広巾延伸フィルム1は、導入ニップロール12a、12bと引取ニップロール13a、13bとの速度差でスプリットテンションが与えられ、そのスプリットテンションで広巾延伸フィルムは、広巾スプリットウェブ14となる。
【0022】
図8は、本発明のスプリッターにより広巾延伸フィルムがスプリットされた広巾スプリットウェブ21を横方向に拡幅した状態を概念図で示す。広巾スプリットウェブ21は、幹部22と枝部23より構成されている。本発明で問題にする小割れとは、スプリッター上での広巾延伸フィルムのハタメキ等で枝部23がつながって切断することによって、拡幅した際、小割れ部24となる。本発明では、この小割れ部24の発生を少なくできる特徴がある。
【0023】
図9は、本発明のスプリッター31に設けられてネジ状の刃がスプリッター21の中央部より左方向のネジ状の刃32aと右方向のネジ状の刃32bと逆向きのネジ状の刃である例を示す概念図である。この図ではネジ状の刃の角度αと−αをわかりやすいように大きく示したが、実際は前述のように微小角度である。このネジ状に切られた刃の方向で、図8に示した幹部22の傾きの方向が定まる。このように左右対称にねじ切られていることで、広巾スプリットウェブは、ウェブの中央部から左右に幹の傾きが異なるウェブとすることができる。
【0024】
図10は、本発明のスプリッターに設けられて稜線部のラセン状の捻れが、スプリッターの中央部より左右で逆向きに捻れていることをスプリッターの正面図で示す。スプリッター41は、その中央部で互いに逆向きのラセン角を有する稜線部42a、42bを有する。それぞれの稜線部42a、42b上に設けられているネジ状の刃の向きは、同一方向であってもよいし、図9で示したように互いに逆向きとすることもできる。
【0025】
図11は、本発明のスプリッター51の多角柱における隣接する稜線部52a、52b、52c、・・・の間に突起部53a、53b、53c、・・・が形成されている例をスプリッターの断面図で示す。このような突起部32があることにより、稜線部42が形成するラセン角が大きくても、走行するフィルムに波打が入らず、そのため小割れが入ることの少ないスプリッターとすることができた。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明のスプリッターは、広巾延伸フィルムのスプリットに使用され、広巾スプリットウェブの経緯積層不織布等の生産に利用される。
【符号の説明】
【0027】
1:スプリッター、 2:稜線部、 3:平面部、 4:刃、 5a、5b:取付端子。11:広巾延伸フィルム、 12a、12b:導入ニップロール、
13a、13b:引取ニップロール、 14:広巾スプリットウェブ。
21:広巾スプリットウェブ、 22:幹部、 23:枝部、 24:小割れ部。
31:スプリッター、 32a、32b:互いに逆向きのネジ状の刃。
41:スプリッター、 42a、42b:互いに逆向きのラセン角を有する稜線部。
51:スプリッター、 52a、52b、52c:稜線部、
53a、53b、53c:突起部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面が多角形の多角柱からなる回転体であって、
該多角形の稜線部に多数の刃がネジ山状に形成され、
該断面が多角形の棒状体の稜線部がラセン状に捻れて形成されている、
ことを特徴とする、広巾延伸フィルム用消音スプリッター。
【請求項2】
前記ラセン角度が2度以上であって60度以下である、請求項1の広巾延伸フィルム用消音スプリッター。
【請求項3】
前記断面の多角形が、5−10角形である、請求項1の広巾延伸フィルム用消音スプリッター。
【請求項4】
前記稜線部の刃を形成している部分の頂点部が、2−12mmの平行部を有する、請求項1の広巾延伸フィルム用消音スプリッター。
【請求項5】
前記稜線部の刃を形成している部分の少なくとも片方の端部において、多角形面に垂直方向に切り込み部を有する、請求項1の広巾延伸フィルム用消音スプリッター。
【請求項6】
前記稜線部のネジ状に形成された刃が、前記スプリッターの中心部より左右に左向き、右向きと異なる方向に形成されている、請求項1の広巾延伸フィルム用消音スプリッター。
【請求項7】
前記棒状体の稜線部に設けられているラセン状の捻れが、前記スプリッターの中心部より左右に左向き、右向きと異なる方向に形成されている、請求項1の広巾延伸フィルム用消音スプリッター。
【請求項8】
前記多角柱の隣接する稜線の間に突起部が形成されている、請求項1の広巾延伸フィルム用消音スプリッター。
【請求項1】
断面が多角形の多角柱からなる回転体であって、
該多角形の稜線部に多数の刃がネジ山状に形成され、
該断面が多角形の棒状体の稜線部がラセン状に捻れて形成されている、
ことを特徴とする、広巾延伸フィルム用消音スプリッター。
【請求項2】
前記ラセン角度が2度以上であって60度以下である、請求項1の広巾延伸フィルム用消音スプリッター。
【請求項3】
前記断面の多角形が、5−10角形である、請求項1の広巾延伸フィルム用消音スプリッター。
【請求項4】
前記稜線部の刃を形成している部分の頂点部が、2−12mmの平行部を有する、請求項1の広巾延伸フィルム用消音スプリッター。
【請求項5】
前記稜線部の刃を形成している部分の少なくとも片方の端部において、多角形面に垂直方向に切り込み部を有する、請求項1の広巾延伸フィルム用消音スプリッター。
【請求項6】
前記稜線部のネジ状に形成された刃が、前記スプリッターの中心部より左右に左向き、右向きと異なる方向に形成されている、請求項1の広巾延伸フィルム用消音スプリッター。
【請求項7】
前記棒状体の稜線部に設けられているラセン状の捻れが、前記スプリッターの中心部より左右に左向き、右向きと異なる方向に形成されている、請求項1の広巾延伸フィルム用消音スプリッター。
【請求項8】
前記多角柱の隣接する稜線の間に突起部が形成されている、請求項1の広巾延伸フィルム用消音スプリッター。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−194725(P2010−194725A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−38861(P2009−38861)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(000143488)株式会社高分子加工研究所 (12)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(000143488)株式会社高分子加工研究所 (12)
【Fターム(参考)】
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