説明

床ずれ防止用パッド

【課題】身体の特定部位に貼付することが可能で、軟質ポリマーフォーム単層に比べて、体圧分散性及び変形回復力に優れ、体圧によって潰れ難く、床ずれ防止性が顕著に改善されたポリマーフォーム製床ずれ防止用パッドを提供する。
【解決手段】25%圧縮時の硬さが30〜310N/314cmの軟質ポリマーフォームからなる軟質発泡体層と、25%圧縮時の硬さが310N/314cm超過、4600N/314cm以下の硬質ポリマーフォームからなる硬質発泡体層との少なくとも2層を有するポリマーフォーム積層体、及び該ポリマーフォーム積層体の片面または両面に配置された皮膚貼付用粘着剤層を有する床ずれ防止用パッド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床ずれ防止用パッドに関し、さらに詳しくは、病気や老衰、怪我等により寝たきりになった人の床ずれ(褥瘡)に対処するために、体の下に敷いたり、体にあてがったりして使用する床ずれ防止用パッドに関する。本発明の床ずれ防止用パッドは、身体の長時間圧迫される部位に直接貼付して使用することができる。
【背景技術】
【0002】
床ずれ(褥瘡)は、身体の特定の部位が長時間圧迫されることにより血流が悪くなり、酸素や栄養が供給されず、次第に該部分の皮膚や筋肉が崩れていく状態をいう。床ずれを予防するために、エアーマットレスやポリマーフォーム製マットレスなどの体圧分散寝具が用いられているが、それだけでは十分に対処できない場合が多い。何故ならば、床ずれは、仙骨、尾てい骨、大転子部、肩甲骨だけではなく、例えば、かかと、くるぶし、ひじなどの骨が突出している部位、さらには、ひざの内側、耳などにもできやすいからである。
【0003】
床ずれ防止のために、これらの特定部位をクッション材で保護する方法が採用されているが、クッション材の固定が困難であったり、複雑な形状に加工したクッション材を使用する必要があったりするという問題があった。
【0004】
そのため、身体の長時間圧迫される部位に貼付することができる床ずれ防止用パッドが開発されている。床ずれ防止用パッドとしては、例えば、軟質ポリマーフォームからなる単層のパッドが用いられている。より具体的に、感圧接着層、該感圧接着層に貼着した半連続気泡の可撓性重合体フォーム層(すなわち、軟質ポリマーフォーム層)、及び該軟質ポリマーフォーム層の反対側に貼着した水非浸透性の可撓性重合体フィルムとから構成された外科用バンデージが提案されている(例えば、特許文献1参照)。感圧接着剤としては、ゴム系粘着剤が用いられている。このような軟質ポリマーフォーム層を備えた床ずれ防止用パッドを、所定の大きさと形状に裁断して、身体の長時間圧迫される部位に貼付すると、その部位の体圧が分散されて、床ずれの発生を防止することができる。該床ずれ防止用パッドは、貼付操作が簡単である。
【0005】
しかし、軟質ポリマーフォーム単層は、クッション性に優れているものの、僅かの体圧でも潰れ易いため、突出した骨との接触により潰れて、その部位に発赤、さらには床ずれを起こす場合があった。また、軟質ポリマーフォーム単層が体圧で潰れると、そのエッジ部に接触する身体の部位が擦れて、発赤、さらには床ずれを起こす場合があった。
【0006】
軟質ポリマーフォームに代えて、硬質ポリマーフォームを用いると、クッション性が低下するため、床ずれ防止効果が低下し、使用感も悪くなる。
【特許文献1】特開昭52−16895号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、身体の特定部位に貼付することが可能で、軟質ポリマーフォーム単層に比べて、体圧分散性及び変形回復力に優れ、体圧によって潰れ難く、床ずれ防止性が顕著に改善されたポリマーフォーム製床ずれ防止用パッドを提供することである。
【0008】
本発明の他の課題は、上記諸特性に加えて、皮膚刺激性が少なく、長時間の貼付によっても貼付部位に皮膚炎を発生し難い床ずれ防止用パッドを提供することにある。
【0009】
本発明者らは、前記課題を達成するために鋭意研究した結果、床ずれ防止用パッドの支持体を、従来の軟質ポリマーフォーム単層に代えて、軟質ポリマーフォーム(以下、単に「軟質フォーム」という)からなる軟質発泡体層と硬質ポリマーフォーム(以下、単に「硬質フォーム」という)からなる硬質発泡体層とを組み合わせたポリマーフォーム積層体(以下、単に「フォーム積層体」という)とし、その片面または両面上に皮膚貼付用粘着剤層を配置した床ずれ防止用パッドに想到した。
【0010】
本発明の床ずれ防止用パッドは、前記のフォーム積層体を支持体として使用しているため、軟質フォーム単層のものに比べて、体圧分散性及び変形回復力に優れ、体圧によって潰れ難い。そのため、軟質フォーム単層品に比べて、潰れたエッジ部と身体の所定部位との接触摩擦が軽減される。
【0011】
本発明の床ずれ防止用パッドは、硬質発泡体層を軟質発泡体層と積層しているため、硬質フォーム単層品に比べて、硬質フォーム層のクッション性が良好であり、硬質フォーム層側で身体の所定部位に貼付することができる。そのため、本発明の床ずれ防止用パッドは、患者の状態に応じて、貼付する側を選択することができる。本発明は、これらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、25%圧縮時の硬さが30〜310N/314cmの軟質ポリマーフォームからなる軟質発泡体層と、25%圧縮時の硬さが310N/314cm超過、4600N/314cm以下の硬質ポリマーフォームからなる硬質発泡体層との少なくとも2層を有するポリマーフォーム積層体、及び該ポリマーフォーム積層体の片面または両面に配置された皮膚貼付用粘着剤層を有する床ずれ防止用パッドが提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の床ずれ防止用パッドは、ポリマーフォームからなる支持体を、軟質発泡体層と硬質発泡体層とを含む積層体としているため、体圧分散性と変形回復力が良好であり、長期の使用によっても床ずれ防止性に優れている。本発明の床ずれ防止用パッドは、例えば、皮膚への貼付側を低刺激性のアクリル系粘着剤層とすることにより、体圧分散性や変形回復力が良好であることに加えて、皮膚刺激性をさらに少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明で使用する軟質フォームは、25%圧縮時の硬さが前記範囲の軟質発泡体であれば、その材質は特に限定されないが、通常は、軟質ポリウレタンフォーム(軟質PUフォーム)であることが好ましい。同様に、本発明で使用する硬質フォームは、25%圧縮時の硬さが前記範囲の硬質発泡体であれば、その材質は特に限定されないが、通常は、硬質ポリウレタンフォーム(硬質PUフォーム)であることが好ましい。
【0015】
ポリウレタンフォームを構成するポリウレタンは、一般に、ポリイソシアネートや活性水素化合物(ポリオール等)を主成分とする組成物の反応生成物として得られる。
【0016】
主なポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(ピュアMDI)、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、ナフタリンジイソシアネート(NDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水添キシリレンジイソシアネート(水添XDI)、ジシクロへキシルジイソシアネート(水添MDI)などが挙げられる。
【0017】
ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、及びその他のポリオールがある。ポリエーテルポリオールとしては、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)、これらの変性体などが挙げられる。ポリエステルポリオールには、縮合系ポリエステルポリオール、ラクトン系ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールなどがある。縮合系ポリエステルポリオールは、二塩基酸(アジピン酸など)とグリコール(エチレングリコール、1,4−ブタンジオールなど)やトリオール(トリメチロールプロパンなど)との縮合脱水反応によって製造される。ラクトン系ポリエステルポリオールは、多価アルコールを開始剤とし、ε−カプロラクタムの開環重合によって得られる。ポリカーボネートポリオールは、グリコールとカーボネート(エチレンカーボネートなど)との反応により得られる。
【0018】
ポリウレタンの製造には、副資材として、鎖延長剤、架橋剤、発泡剤、界面活性剤、着色剤、離型剤などが用いられる。ポリウレタンフォームは、気泡状物質であり、ポリイソシアネート、ポリオール、及び発泡剤を使用して発泡成型する方法により得ることができる。
【0019】
軟質PUフォームは、クッション性、通気性などが良好である。軟質PUフォームは、加工面からスラブフォームとモールドフォームに大別される。この軟質PUフォームは、一般に、使用するポリオールによってポリエステルフォームとポリエーテルフォームに大別されるが、25%圧縮時の硬さが所定の範囲であれば、特に限定されない。スラブフォームは、各成分をポンプで計量し、ミキシングヘッドで混合して原液を調製し、そして、該原液をコンベアまたは蓋のない型に吐出し、発泡成型することにより得ることができる。スラブフォームは、切断加工して用いられることが多い。モールドフォームは、金型内に所定の配合原料を注入し、発泡成型することにより得ることができる。
【0020】
硬質PUフォームは、多くの場合、独立気泡構造を有しているが、25%圧縮時の硬さが所定の範囲であれば、その気泡構造は特に限定されない。硬質PUフォームも、スラブ方式またはモールド方式により製造することができる。
【0021】
本発明で使用する軟質フォームは、4.9N荷重時を元厚とし、200mmφの円板にて100mm/minの速度で75%前圧縮をし、そして、25%圧縮時20秒後の硬さ(単位=N)を測定した時に、通常、30〜310N/314cm、好ましくは40〜300N/314cm、より好ましくは50〜260N/314cm、特に好ましくは55〜250N/314cmの硬さを示すものである。
【0022】
本発明で使用する硬質フォームは、4.9N荷重時を元厚とし、200mmφの円板にて100mm/minの速度で75%前圧縮をし、そして、25%圧縮時20秒後の硬さ(単位=N)を測定した時に、通常、310N/314cm超過、4600N/314cm以下、好ましくは350〜4500N/314cm、より好ましくは370〜4200N/314cm、特に好ましくは400〜4100N/314cmの硬さを示すものである。
【0023】
ポリマーフォームの硬さの測定法は、JIS K6400に準じて、4.9N荷重時を元厚とし、200mmφの円板にて50×390×390mmのサイズの被験サンプルを100mm/minの速度で75%前圧縮し、そして、25%圧縮時20秒後の硬さを測定する方法である。
【0024】
軟質フォームの硬さが低すぎると、フォーム積層体からなる床ずれ防止用パッドの体圧分散性、貼り心地、褥瘡防止性が低下傾向を示す。硬質フォームの硬さが高すぎると、床ずれ防止用パッドの貼り心地が悪くなり、体圧分散性が低下したり、皮膚刺激性が増大するおそれがある。
【0025】
硬質フォームの硬さが低すぎると、体圧分散性が低下し、褥瘡防止性も低下傾向を示す。硬質フォームの硬さが高すぎると、体圧分散性や貼り心地が低下傾向を示し、皮膚刺激性が大きくなる傾向を示し、褥瘡防止性も低下する。
【0026】
本発明の床ずれ防止用パッドを構成するフォーム積層体の層構成は、軟質フォームからなる軟質発泡体層と硬質フォームからなる硬質発泡体層の少なくとも2層を有する多層構成のものであれば特に限定されないが、以下の層構成が代表的なものである。
【0027】
1)軟質フォーム/硬質フォーム、
2)軟質フォーム/硬質フォーム/軟質フォーム、
3)硬質フォーム/軟質フォーム/硬質フォーム。
これらの中でも、「軟質フォーム/硬質フォーム」の2層構成が好ましい。
【0028】
各発泡体層の厚みは、適宜選択することができるが、体圧分散性、貼り心地、皮膚刺激性、及び褥瘡防止性の各性能を高度にバランスさせる観点から、軟質発泡体層の厚みを好ましくは5〜80mm、より好ましくは10〜60mmとし、硬質発泡体層の厚みを好ましくは5〜80mm、より好ましくは5〜60mmとすることが望ましい。
【0029】
軟質発泡体層の厚みが薄すぎると、床ずれ防止用パッドの軟質発泡体層が体圧によって潰れてしまい易く、適度のクッション性及び体圧分散性が得られない。軟質発泡体層の厚みが厚すぎると、床ずれ防止用パッドの貼付中に違和感を生じ、また、体位を変換し難くなる。
【0030】
硬質発泡体層の厚みが薄すぎると、適度な体圧分散性が得られず、また、出っ張った骨に接触し、そこが床ずれを起こし易くなる。硬質発泡体層の厚みが厚すぎると、床ずれ防止用パッドの貼付中に違和感を生じ、かつ、体位を変換し難くなる。
【0031】
軟質発泡体層と硬質発泡体層の合計厚みは、好ましくは10〜150mm、より好ましくは15〜100mm、多くの場合、20〜80mm程度で良好な結果を得ることができる。発泡体層の全層の厚みが薄すぎると、十分な体圧分散性が得られ難いことに加えて、出っ張った骨にぶつかると、そこで床ずれを起こし易くなる。発泡体層の全層の厚みが厚すぎると、床ずれ防止用パッドの貼付中に違和感を生じ、かつ、体位を変換し難くなる。
【0032】
軟質発泡体層と硬質発泡体層との厚み比は、好ましくは10:90〜90:10、より好ましくは15:85〜85:15、特に好ましくは20:80〜80:20である。軟質発泡体層と硬質発泡体層との厚み比を上記範囲とすることにより、両者の特性を発揮させることが容易となる。
【0033】
軟質発泡体層と硬質発泡体層との積層法は、特に限定されないが、例えば、接着剤を用いた積層法、熱融着による積層法などが挙げられる。接着剤を用いた積層法としては、(1)エラストマーをベースにしたホットメルト接着剤により発泡体層同士を貼り合せる方法、(2)支持体をポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム等とし、粘着剤層をアクリル系、ゴム系、シリコン系、ウレタン系とする両面粘着テープ若しくはフィルムにより、発泡体層を互いに貼り合せる方法、(3)アクリル系、エポキシ系、シアノアクリレート系の接着剤により発泡体層同士を貼り合せる方法などがある。熱融着による積層法としては、各発泡体層の接合面に熱風を吹きつけて加熱溶融させた後,ローラで圧着して発泡体層同士を一体化させる接合方法がある。
【0034】
本発明の床ずれ防止用パッドは、軟質発泡体層と硬質発泡体層とを有するフォーム積層体の片面または両面に皮膚貼付用粘着剤層を配置した構造を有するものである。皮膚貼付用粘着剤層は、粘着剤をフォーム積層体の表面に直接塗布する方法によって形成してもよいが、粘着剤の発泡体層内への浸透を防ぐには、両面粘着テープをフォーム積層体の表面に貼り合わせる方法を採用することが好ましい。また、皮膚貼付用粘着剤層の上に剥離材層を配置し、使用時に剥離材を除去して身体の所定箇所に貼付することが好ましい。
【0035】
皮膚貼付用粘着剤層は、アクリル系、ゴム系、シリコーン系、ウレタン系等の一般的な粘着剤を用いて形成することができるが、皮膚刺激性を少なくする観点から、アクリル系粘着剤を用いて形成することが好ましい。両面粘着テープのフォーム積層体側の粘着剤層は、特に限定されず、アクリル系、ゴム系、シリコーン系、ウレタン系等の一般的な粘着剤を用いて形成することができるが、アクリル系粘着剤を用いて形成することが好ましい。
【0036】
アクリル系粘着剤は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分単量体とする単量体または単量体混合物を(共)重合して得られるアクリル系粘着剤である。このようなアクリル系粘着剤としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、これと共重合可能な官能性モノマー及び/またはビニルエステルモノマーとの共重合体を挙げることができる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、炭素数4〜12のものが好ましい。官能性モノマーは、通常、0〜30重量%、好ましくは1〜10重量%の割合で使用される。官能性モノマーの具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、2−ヒドロキシエチルアクリル酸などが例示される。ビニルエステルモノマーは、通常、0〜40重量%、好ましくは2〜30重量%の割合で使用される。ビニルエステルモノマーの具体例としては、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、ラウリン酸ビニルなどが挙げられる。
【0037】
安定した皮膚粘着性、高透湿性、角質剥離量低減、及び剥離時の皮膚の痛みの軽減の点からは、コモノマーとして、(メタ)アクリル酸アルコキシポリアルキレングリコールエステルと、水酸基またはカルボキシル基含有モノマーとを併用して得られるアクリル系共重合体を粘着剤成分とするアクリル系粘着剤が特に好ましい。具体的に、好ましいアクリル系粘着剤としては、炭素数4〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル50〜97.5重量%、好ましくは70〜95重量%、(メタ)アクリル酸アルコキシポリアルキレングリコールエステル2〜49.5重量%、好ましくは4〜29重量%、及び水酸基またはカルボキシル基含有モノマー0.5〜15重量%、好ましくは1〜10重量%の共重合体を挙げることができる。この共重合体は、さらに、0〜30重量%程度の範囲内で、共重合可能なその他のビニルモノマーを共重合したものであってもよい。
【0038】
炭素数4〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸イソノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸イソオクチル、メタクリル酸イソノニル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ドデシルなどを挙げることができる。これらの中でも、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸イソオクチル、及びアクリル酸イソノニルが好ましい。これらの(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0039】
(メタ)アクリル酸アルコキシポリアルキレングリコールエステルは、下記の式(1)
【0040】
【化1】

【0041】
(式中、R1 及びR2 は、それぞれ独立に水素原子またはメチル基で、R3 は、炭素数1〜20のアルキル基で、nは、2〜12の整数である。)で表される(メタ)アクリル酸エステル系モノマーである。
【0042】
この式(1)で表されるモノマーの具体例としては、例えば、アクリル酸メトキシジエチレングリコール、メタクリル酸メトキシジエチレングリコール、アクリル酸メトキシジプロピレングリコール、メタクリル酸メトキシジプロピレングリコール、アクリル酸エトキシジエチレングリコール、メタクリル酸エトキシジエチレングリコール、アクリル酸エトキシジプロピレングリコール、メタクリル酸エトキシジプロピレングリコール、アクリル酸メトキシトリエチレングリコール、メタクリル酸メトキシトリエチレングリコール、アクリル酸メトキシトリプロピレングリコール、メタクリル酸メトキシトリプロピレングリコール、アクリル酸メトキシポリエチレングリコール、メタクリル酸メトキシポリエチレングリコール、アクリル酸メトキシポリプロピレングリコール、メタクリル酸メトキシポリプロピレングリコールなどが挙げられる。
【0043】
水酸基またはカルボキシル基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル及び(メタ)アクリル酸カルボキシアルキルエステルを挙げることができる。これらのモノマーの具体例としては、例えば、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−カルボキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸2−カルボキシプロピル、アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−カルボキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、アクリル酸4−カルボキシブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−カルボキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−カルボキシプロピル、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−カルボキシプロピル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸4−カルボキシブチルなどが挙げられる。
【0044】
また、水酸基またはカルボキシル基含有モノマーとしては、式(2)
【0045】
【化2】

【0046】
(式中、R4 及びR5 は、それぞれ独立に水素原子またはメチル基で、mは、2〜12の整数である。)
で表される(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール及び(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコールなどの水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、及び、式(3)
【0047】
【化3】

【0048】
(式中、R6 は、水素原子またはメチル基であり、Xは、炭素数2以上の2価の有機基であって、酸素原子、窒素原子、硫黄原子などのヘテロ原子を含んでいてもよい。)
で表されるカルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを挙げることができる。
【0049】
式(3)において、Xの炭素数は、好ましくは2〜50、より好ましくは2〜30程度である。ヘテロ原子は、多くの場合、酸素原子である。Xの具体例としては、例えば、炭素数2以上の直鎖状または分岐状のアルキレン基、−R7 −OCO−R8 −(ただし、R7 及びR8 は、アルキレン基である)、−R9 −OCO−R10−OCO−R11−(ただし、R9 、R10、及びR11は、アルキレン基である)などを挙げることができる。
【0050】
式(3)で表されるカルボキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、例えば、アクリル酸2−カルボキシエチル、2−アクロイロキシエチルこはく酸、アクリル酸ω−カルボキシポリカプロラクトンなどが挙げられる。
【0051】
共重合可能なその他のビニルモノマーとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、アクリル酸トリデシル、メタクリル酸トリデシルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸などのカルボキシル基含有モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド及びその誘導体:アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有モノマー;酢酸ビニルなどのビニルエステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの不飽和ニトリル;スチレンなどのビニル芳香族化合物;などが挙げることができる。
【0052】
アクリル系粘着剤には、所望により、粘着剤に汎用の各種添加剤を添加することができる。また、アクリル系粘着剤には、架橋剤を添加することもできる。
【0053】
皮膚貼付用粘着剤層は、両面粘着テープにより構成され、該両面粘着テープの皮膚貼付側の粘着剤層が、炭素数4〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル50〜97.5重量%、(メタ)アクリル酸アルコキシポリアルキレングリコールエステル2〜49.5重量%、及び水酸基またはカルボキシ基含有モノマー0.5〜15重量%の共重合体からなるアクリル系粘着剤の層であることが好ましい。
【0054】
皮膚貼付用粘着剤層の表面は、通常、剥離材層により被覆しておき、使用時に該剥離材層を除去する。剥離材としては、シリコーン樹脂等の剥離性物質を紙基材に塗布した剥離紙、剥離シートなどが用いられる。フォーム積層体の両面に皮膚貼付用粘着剤層と剥離材層とを配置する場合には、フォーム積層体の所望の面で身体の所定箇所に貼付することができる。一方の皮膚貼付用粘着剤層により床ずれ防止用パッドを身体に貼付する場合には、他方の皮膚貼付用粘着剤層の上に配置された剥離材層が良好な滑り性を発揮して、衣服等との摩擦により床ずれ防止用パッドが脱落するのを防ぐことができる。
【0055】
フォーム積層体の片面に皮膚貼付用粘着剤層を配置し、他面には、プラスチックフィルム層を配置してもよい。プラスチックフィルム層を配置すれば、該プラスチックフィルムの滑り性が良好であるため、床ずれ防止用パッドの使用時に衣服等との摩擦による貼付部位からの脱落を抑制することができる。フォームとしてポリウレタンフォームを用いる場合には、プラスチックフィルムとして、ポリウレタン製フィルムを用いることが好ましい。
【0056】
本発明の床ずれ防止用パッドは、フォーム積層体を基材とするため、使用時に所望の大きさに裁断することができる。また、所定形状に製品化した床ずれ防止用パッドを使用することもできる。
【0057】
本発明の床ずれ防止用パッドは、フォーム積層体を基材として使用しているため、軟質フォーム単層のものに比べて、体圧分散性及び変形回復力に優れ、体圧によって潰れ難い。そのため、軟質フォーム単層品に比べて、潰れたエッジ部と身体の所定部位との接触摩擦が軽減される。
【0058】
本発明の床ずれ防止用パッドは、硬質フォーム層を軟質フォーム層と積層しているため、硬質フォーム単層のものに比べて、硬質フォーム層のクッション性が良好であり、硬質フォーム層側で身体の所定部位に貼付することができる。そのため、本発明の床ずれ防止用パッドは、患者の状態に応じて、貼付する側を選択することができる。
【0059】
図1は、本発明の床ずれ防止用パッドの層構成の一例を示す断面図である。図1に示す床ずれ防止用パッド11は、フォーム積層体が軟質フォーム12と硬質フォーム13との積層体である。軟質フォーム12側の表面には、両面粘着テープが配置されており、貼付側には、両面粘着テープの低皮膚刺激性アクリル系粘着剤層16が配置され、その上には剥離材層17が配置されている。両面粘着テープのフォーム積層体側には、両面粘着テープの一方の粘着剤層15が配置されている。硬質フォーム13側の表面には、プラスチックフィルム14が配置されているが、このプラスチックフィルムは省略するか、前記と同じ両面粘着テープに置き換えることができる。
【0060】
図2には、本発明の床ずれ防止用パッドの層構成の他の一例を示す断面図である。図2に示す床ずれ防止用パッド21は、フォーム積層体が軟質フォーム22と硬質フォーム23との積層体である。硬質フォーム23側の表面には、両面粘着テープが配置されており、貼付側には、両面粘着テープの低皮膚刺激性アクリル系粘着剤層26が配置され、その上には剥離材層27が配置されている。両面粘着テープのフォーム積層体側には、両面粘着テープの一方の粘着剤層25が配置されている。軟質フォーム22側の表面には、プラスチックフィルム24が配置されているが、このプラスチックフィルムは省略するか、前記と同じ両面粘着テープに置き換えることができる。
【実施例】
【0061】
以下に実施例と比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。物性及び諸特性の測定法及び評価法は、以下のとおりである。
【0062】
(1)硬さ
フォームの硬さの測定法は、JIS K6400に準じて、4.9N荷重時を元厚とし、200mmφの円板にて50×390×390mmのサイズの被験サンプルを100mm/minの速度で75%前圧縮し、そして、25%圧縮時20秒後の硬さを測定した。
【0063】
(2)床ずれ防止用パッドの評価法
被験者10名に、縦10cm×横10cmの試料2枚を5cm間隔を空けて並べ、間隔を空けた部位が仙骨部になるように貼付し、毎日貼り替え、10日間の貼付試験を行った。本試験において、間隔を空けた仙骨部に30mmφで厚さ2mmのベークライト板を貼付した。貼付試験の結果は、以下の基準で評価した。
a)体圧分散性:フォームの押圧による皮膚表面の押跡や赤味変色の偏りを目視観察した。
A:体圧分散性に優れている、
B:体圧分散性が良好である、
C:体圧分散性がやや悪い、
D:体圧分散性が悪い。
【0064】
b)貼り心地
A:貼り心地が優れている、
B:貼り心地が良好である、
C:貼り心地がやや悪い、
D:貼り心地が悪い。
【0065】
c)床ずれ防止用パッド部の皮膚刺激性
A:皮膚刺激反応なし、
B:わずかな紅斑、
C:明らかな紅斑、
D:浮腫または水泡を伴う紅斑。
【0066】
d)仙骨部における発赤の発生
A:発赤なし、
B:わずかな発赤、
C:明らかな発赤。
【0067】
e)総合評価
AA:被験者全員に仙骨部での発赤がなく、体圧分散性、貼り心地、皮膚刺激性のすべてにわたって優れている、
A:被験者全員に仙骨部での発赤がなく、体圧分散性、貼り心地、皮膚刺激性のすべてにわたって良好である、
B:被験者全員に仙骨部での発赤がなかったが、体圧分散性、貼り心地、皮膚刺激性のいずれかが不満足な場合がある、
C:被験者の一部に仙骨部での発赤が見られたが、多くの被験者には発赤が見られず、体圧分散性、貼り心地、皮膚刺激性の多くが満足である、
D:被験者の一部または多くに仙骨部での発赤が見られ、体圧分散性、貼り心地、皮膚刺激性のいずれかが不満足である。
【0068】
[実施例1]
硬さが59N/314cmで、厚みが20mmの軟質フォーム〔(株)イノアック技術研究所製、品番EZQ−S〕と硬さが616N/314cmで、厚みが10mmの硬質ポリウレタンフォーム〔(株)イノアック技術研究所製、品番EZQ−S〕とを、接着剤〔ニチバン(株)製、商品名「両面テープ#822」〕を用いて貼り合わせて、フォーム積層体を作製した。このフォーム積層体の軟質ポリウレタンフォーム側の表面に、両面粘着テープを貼り合せて床ずれ防止用パッドを作製した。
【0069】
両面粘着テープの皮膚貼付用粘着剤は、イソノニルアクリレート/アクリル酸メトキシナノエチレングリコール/アクリル酸2−カルボキシエチル(83/15/2重量部)を共重合して得たアクリル系粘着剤100重量部に、架橋剤(三菱ガス化学社製、商品名「テトラッドX」)0.06重量部を添加した粘着剤1である。他面の粘着剤は、通常のアクリル系粘着剤である。層構成と評価結果を表1に示す。
【0070】
[実施例2〜16及び比較例1〜4]
軟質ポリウレタンフォーム及び硬質ポリウレタンフォームを表1及び表2に示すものに代えたこと以外は、実施例1と同様にして床ずれ防止用パッドを作製した。ただし、実施例10では、皮膚貼付用粘着剤として、イソノニルアクリレート/アクリル酸(96/4重量部)を共重合して得られたアクリル系粘着剤を用いた。他面の粘着剤も同じアクリル系粘着剤とした。使用したポリウレタンフォームは、いずれも(株)イノアック技術研究所の製品であり、それらの品番を示した。層構成及び評価結果を表1及び表2に示す。
【0071】
【表1】

【0072】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の床ずれ防止用パッドは、病気や老衰、怪我等により寝たきりになった人の床ずれ(褥瘡)に対処するために利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】図1は、本発明の床ずれ防止用パッドの層構成の一例を示す断面略図である。
【図2】図2は、本発明の床ずれ防止用パッドの層構成の他の一例を示す断面略図である。
【符号の説明】
【0075】
11: 床ずれ防止用パッド
12: 軟質フォーム
13: 硬質フォーム
14: プラスチックフィルム
15: 両面粘着テープの一方の粘着剤層
16: 両面粘着テープの低皮膚刺激性アクリル系粘着剤層
17: 剥離材層
21: 床ずれ防止用パッド
22: 軟質フォーム
23: 硬質フォーム
24: プラスチックフィルム
25: 両面粘着テープの一方の粘着剤層
26: 両面粘着テープの低皮膚刺激性アクリル系粘着剤層
27: 剥離材層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
25%圧縮時の硬さが30〜310N/314cmの軟質ポリマーフォームからなる軟質発泡体層と、25%圧縮時の硬さが310N/314cm超過、4600N/314cm以下の硬質ポリマーフォームからなる硬質発泡体層との少なくとも2層を有するポリマーフォーム積層体、及び該ポリマーフォーム積層体の片面または両面に配置された皮膚貼付用粘着剤層を有する床ずれ防止用パッド。
【請求項2】
軟質発泡体層の厚みが5〜80mm、硬質発泡体層の厚みが5〜80mm、これら発泡体層の合計厚みが10〜150mm、かつ、軟質発泡体層と硬質発泡体層との厚み比が10:90〜90:10である請求項1記載の床ずれ防止用パッド。
【請求項3】
皮膚貼付用粘着剤層の上に剥離材層がさらに配置されている請求項1または2記載の床ずれ防止用パッド。
【請求項4】
皮膚貼付用粘着剤層が、アクリル系粘着剤からなる層である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の床ずれ防止用パッド。
【請求項5】
アクリル系粘着剤が、炭素数4〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル50〜97.5重量%、(メタ)アクリル酸アルコキシポリアルキレングリコールエステル2〜49.5重量%、及び水酸基またはカルボキシ基含有モノマー0.5〜15重量%の共重合体からなるアクリル系粘着剤である請求項4記載の床ずれ防止用パッド。
【請求項6】
ポリマーフォーム積層体の片面に皮膚貼付用粘着剤層が配置され、他面には、プラスチックフィルム層が配置されている請求項1乃至5のいずれか1項に記載の床ずれ防止用パッド。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−54818(P2008−54818A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−233704(P2006−233704)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(000004020)ニチバン株式会社 (80)
【Fターム(参考)】