説明

床の構造

【課題】非導電性材料からなる床に対する有効適切な静電気対策手法を提供する。
【解決手段】非導電性材料からなる床材を敷き並べることによって形成される床の構造であって、床材相互間に導電板を設置してその上面を床面に露出せしめ、導電板にアース線を接続する。長尺帯状の樹脂成形板からなるデッキ材2を隙間をあけて敷き並べることによってデッキ1を形成し、帯板状の導電板6をデッキ材の側面に取り付けてその上縁部を床面に露出せしめるとともにデッキ材にアース線8を接続し、デッキ上を通行する通行者が導電板を踏みながら通行可能とする。導電板を少なくともデッキに設置されている導電体(たとえばデッキの周縁部に設置されている金属製の手摺や金属製のドアノブ等)の近傍位置に設置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建物における床の構造に関わり、特に建物の屋上や内外に設置されるデッキに適用して好適な床の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建物の屋上や建物内外にデッキを設けることが多い。
周知のように、この種のデッキとしては長尺帯板状の木材からなるデッキ材を若干の隙間をあけて敷き並べた木造のデッキ(つまり、いわゆるウッドデッキ)が最も一般的であるが、最近においては木材を模した合成樹脂製の人工木材をデッキ材として使用することも多い。
【0003】
ところが、合成樹脂製の人工木材からなるデッキ材は一般にポリプロピレン等の非導電性樹脂を主成分とするものであることから、そのようなデッキ材により施工したデッキ上を人が通行すると摩擦により静電気が激しく発生して通行者に帯電し、金属製の手摺りやドアノブ等に触れた瞬間に不快な放電ショックが生じることがある。
【0004】
そのような静電気の発生とそれによる放電ショックを防止するためには、デッキ材の素材として帯電防止効果のある各種の導電性樹脂、たとえば特許文献1に示されるような制電性樹脂組成物や特許文献2に示されるような帯電防止性樹脂組成物を用いるか、あるいは特許文献3に示されるような導電性床シートをデッキ材の表面に敷設することにより、デッキに導電性を付与して人体への帯電を防止し、人体からの除電を行うことが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−183529号公報
【特許文献2】特開2008−239635号公報
【特許文献3】特公平5−42799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1〜3に示されるような素材は半導体工場のような高度の静電気対策が要求される場合には好適に採用可能であるが、そのような特殊な素材を汎用の建設資材であるデッキ材に適用することは現実的ではない。
すなわち、現時点で多用されている一般的な人工木材からなるデッキ材は廃プラスチックを再生利用した安価なものが主流であるから、これに代えて特許文献1や特許文献2に示されるような特殊かつ高価な樹脂組成物をデッキ材の素材として適用することは現実的ではない。
また、特許文献3に示されるような特殊なシート材をデッキ材の表面に敷設することはデッキとしての本来の機能と意匠を大きく損なってしまうから、やはり現実的ではない。
【0007】
なお、人工木材からなるデッキ材を用いて施工されている既存のデッキに対する静電気対策が必要となった場合、現時点では帯電防止剤をスプレーするか、導電性マットを敷き込むといった対策を取るしかないが、前者は一時的な効果しかないし、後者は上記の導電性シートを敷設する場合と同様にデッキとしての機能と意匠を損なうものでしかなく、いずれも有効ではない。
【0008】
そして、以上のことは人工木材を用いて施工したデッキの場合のみならず、床材が非導電性であるために静電気が発生し易い床全般に共通する問題でもあるので、この種の床に対する有効適切な静電気対策手法の確立が望まれているのが実情である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記事情に鑑み、請求項1記載の発明は、非導電性材料からなる床材が敷き並べられて形成されてなる床の構造であって、前記床材相互間に導電板が設置されて該導電板の上面が床面に露出せしめられ、該導電板にアース線が接続されてなることを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の床の構造であって、前記床材は長尺帯状の樹脂成形板からなるデッキ材であって、該デッキ材が隙間をあけて敷き並べられることによって前記床としてのデッキが形成され、前記導電板が帯板状とされて該導電板が前記デッキ材の側面に取り付けられて該導電板の上縁部が床面に露出せしめられた状態で前記デッキ材間の隙間内に配設されて前記デッキ上を通行する通行者が前記導電板を踏みながら通行可能に構成されてなることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の床の構造であって、前記導電板が少なくとも前記デッキに設置されている導電体の近傍位置に設置されてなることを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の床の構造であって、前記導電体は前記デッキの周縁部に設置されている金属製の手摺や金属製のドアノブであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、アース線を接続した導電板を床材の間に設置してその導電板の上面を床面に露出させておくことにより、床面を人が通行した際には通行者が自ずと導電板を踏みつけることになり、それにより人体が導電板を介して大地に対してアースされることになるから、床材との摩擦により発生する静電気の人体への帯電が自ずと生じ難くなるし、仮に帯電したとしても導電板を踏みつけた時点で確実かつ速やかに除電されてしまい、不快な放電ショックが生じることを未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の床の構造をデッキに適用した場合の実施形態を示す概略構成図である。
【図2】同、要部拡大断面図である。
【図3】同、デッキ全体の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1〜図3に本発明の床の構造をデッキ1に適用した場合の実施形態を示す。
本実施形態のデッキ1は、木材を模した合成樹脂からなる長尺帯板状のデッキ材2を図1に示すように若干の隙間をあけて敷き並べることで形成されるもので、建物の屋上や内外に様々な用途(たとえば庭園や遊覧、休憩等のためのスペースとして、あるいは渡り廊下のような通路として)で設けられるものである。
【0016】
但し、本実施形態ではデッキ材2がポリプロピレンを主成分とする非導電性の人工木材であることから、静電気に対して無対策であると上述したようにデッキ1上を人が通行することで静電気が激しく発生して通行者に帯電してしまい、通行者がデッキ1の周囲に設けられている金属製の手摺3(図3参照)や、デッキ1に通じる出入口に設置されている扉4(同)の金属製のドアノブに触れた瞬間に不快な放電ショックが生じることから、本実施形態のデッキ1はそれを防止するために以下の対策が講じられている。
【0017】
すなわち、本実施形態のデッキ1は、通常のウッドデッキと同様に幅寸法がたとえば100mm程度のデッキ材2を根太材5上に若干の隙間を確保しつつ敷き並べることで施工されるのであるが、図1に示すように1枚おきのデッキ材2の両側面にそれぞれ導電板6が取り付けられていて、各デッキ板2を敷き並べた状態では図2に示すように各デッキ材2間の隙間内にそれぞれ導電板6が配設されるようになっており、かつ各導電板6の上面がデッキ1の表面(つまり床面)とほぼ面一となってそこに露出するようにされている。
【0018】
本実施形態における導電板6は良導電性金属材料による帯板状のもの(たとえばアルミニニウムFB-25、2t)で、図1に示すようにデッキ材2の両側面に対してビス7により固定されているとともに、いずれかのビス7には同時にアース線8がネジ止めされていて、そのアース線8により隣接する導電板6どうしが電気的に接続され、かつそのアース線8の一端が最終的に図3に示すように適宜のアース個所に対して電気的に接続されることにより、全ての導電板6が大地に対して接地されたものとなっている。
【0019】
上記のように、各デッキ材2間の隙間に導電板6を配設してその上面をデッキ1の床面に露出させておくことにより、デッキ1上を通行したりデッキ1上に立つ通行者は図2に示しているように少なくともいずれか1枚の導電板6を自ずと踏みつけることになり、したがって人体は常に靴底(裸足であれば足裏)を介して導電板6に接触してアース線8を介して大地にアースされることになるから、デッキ材2との摩擦により生じる静電気が人体に帯電し難くなるし、仮に帯電したとしても導電板6を踏みつけた時点で速やかにかつ確実に除電されてしまい、したがって金属製の手摺3や扉4のドアノブに触れても不快な放電ショックが生じることがない。
【0020】
実験によれば、電気抵抗値が通常程度の靴を履いた状態で無対策のデッキ上を通行した場合には人体への帯電電圧は0.02〜0.10kV程度にもなり、特に0.05kV以上になると手摺やドアノブに触れた瞬間に放電ショックが生じるが、上記の対策を施したデッキ1上を通行した場合は帯電電圧はゼロであって放電が生じることもないことが確認できた。
【0021】
なお、図示例のように1枚おきのデッキ材2の両側面にそれぞれ導電板6を取り付ける(2枚の導電板6を取り付けたデッキ材2と導電板6を取り付けていないデッキ材2を交互に敷き並べる)ことに代えて、全てのデッキ材2の片方の側面に導電板6を1枚づつ取り付けることによっても、上記と同様にデッキ材6間の全ての隙間に導電板6を配設することができる。
いずれにしても、導電板6はデッキ1上を通行したりデッキ1上に立つ人に常に踏まれ得ることが必要であるから、それが可能なようにデッキ1全体の平面形状やデッキ材2の形状・寸法、相互間隔等に応じて適正位置に適正間隔で設置しておけば良い。
【0022】
また、上記実施形態では導電板6の上面を床面レベルに揃える(床面と面一とする)ことで靴底あるいは足裏に接触させるようにし、通常はそれで十分であるが、必要であれば導電板6の上縁部を床面上にわずかに(たとえば1〜2mm程度)突出させた状態で露出させることでも良い。
但し、その場合には通行者が導電板6に躓いたり引っ掛ってしまってデッキ本来の使用勝手に支障を来すことがないように考慮すべきであり、少なくとも導電板6の上縁部や角部は曲面加工を施すなどして十分に滑らかな仕上げとしておくことが好ましい。
【0023】
また、上記実施形態はデッキ1の周囲に設けられている金属製の手摺3や、デッキ1への出入口に設置されている扉4の金属製のドアノブ等の導電体に触れた際の不快な放電ショックを防止することを主たる目的としており、そのため図3に示すように手摺3や扉4の近傍位置、つまり手摺3やドアノブに接触する可能性のある外周部の領域にのみ導電板6(図3においては太線で示している)を設置するものとし、通常はそれで十分な静電気対策となる。
但し、手摺3やドアノブ以外にも放電ショックが生じる懸念のある導電体が設置されている場合や、周縁部以外でも放電ショックが生じる懸念がある場合には、そのような領域の周囲の床面にも同様に導電板6を設置しておくと良く、必要であればデッキ1の全体に対して全面的に導電板6を設置することでも勿論良い。
【0024】
さらに、本発明は上記実施形態のような人工木材からなるデッキ材2を用いたデッキ1に適用することに限らず、非導電性の床材を敷き並べて形成されるために静電気対策が必要とされるような床全般に同様に適用できるものである。
たとえば、非導電性の人工石材からなるブロックを敷き並べて施工される人工石造の床に対しても同様の問題が生じる場合があるので、その場合は床材としての人工石材ブロック間に導電板6を挟み込んでそれが常に踏まれる位置に設置しておくことのみで、上記実施形態のデッキの場合と同様に機能し同様の効果が得られるものとなる。
【0025】
勿論、本発明は非導電性材料による床を新築する場合に適用するのみならず、静電気対策が必要とされた既存床を改修するための手法としても適用できるものであり、その場合、既存の床材を一時的に取り外してその側面に導電板6およびアース線8を取り付けたうえで復旧すれば良い。
特に既存床が上記実施形態のようなデッキ1である場合には、既存のデッキ材2を1枚づつ根太材5から取り外し、その側面に導電板6およびアース線8をビス7により取り付けて再び根太材5に取り付ければ良いから、それにより容易にしかもデッキ材2を傷つけることなく改修が可能である。
なお、デッキ材2を取り外すことなく、床上あるいは床下からの作業によってデッキ材2間の隙間に導電板6を差し込んで適宜固定したり係止することが可能な場合には、床材を取り外す必要もないからより簡易に改修が可能である。
【0026】
いずれにしても、本発明の床の構造は極めて容易にかつローコストで施工することが可能であるから、本発明は非導電性材料からなる床材を敷き並べて形成される新設の床の構造として、またそのような構造で形成されている既存の床に対する改修手法として最適である。
【符号の説明】
【0027】
1 デッキ(床)
2 デッキ材(床材)
3 手摺
4 扉
5 根太材
6 導電板
7 ビス
8 アース線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非導電性材料からなる床材が敷き並べられて形成されてなる床の構造であって、
前記床材相互間に導電板が設置されて該導電板の上面が床面に露出せしめられ、該導電板にアース線が接続されてなることを特徴とする床の構造。
【請求項2】
請求項1記載の床の構造であって、
前記床材は長尺帯状の樹脂成形板からなるデッキ材であって、該デッキ材が隙間をあけて敷き並べられることによって前記床としてのデッキが形成され、前記導電板が帯板状とされて該導電板が前記デッキ材の側面に取り付けられて該導電板の上縁部が床面に露出せしめられた状態で前記デッキ材間の隙間内に配設されて前記デッキ上を通行する通行者が前記導電板を踏みながら通行可能に構成されてなることを特徴とする床の構造。
【請求項3】
請求項2記載の床の構造であって、
前記導電板が少なくとも前記デッキに設置されている導電体の近傍位置に設置されてなることを特徴とする床の構造。
【請求項4】
請求項3記載の床の構造であって、
前記導電体は前記デッキの周縁部に設置されている金属製の手摺や金属製のドアノブであることを特徴とする床の構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−158918(P2012−158918A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19508(P2011−19508)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】