説明

床下構造物の据付方法

【課題】床下構造物である島基礎、盤ベース、およびケーブル収納体の施工に要する期間を短縮し、建屋の建設工期を短縮することが可能な床下構造物の据付方法を提供する。
【解決手段】床面上に設置される盤1を支持するための島基礎5および盤ベース4と、ケーブル収納体3とを床下に据え付ける床下構造物の据付方法において、複数の島基礎5と盤ベース4とケーブル収納体3については、据付工程前に予めブロック13aとして一体化したものを用いる。据付工程は、床底面部8にブロック13aを吊込治具9により吊り下げて設置する工程と、このブロック13aを吊り下げた状態で床底面部8にコンクリートを打設する工程を有する。さらに、据付工程では、ブロック13aの島基礎5を吊込治具9により吊り下げつつ、一部の島基礎5については、床底面部8に配置した支持架台10を介して支持されるようにし、この状態で床底面部8にコンクリートを打設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建屋の床下構造物の据付方法に関し、より詳細には、発電所や製造プラントの中央制御室など、二重床を有する建屋の床下構造物の据付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発電所や製造プラントなどのプラントでは、コスト削減などのために、建設の工期短縮が求められている。建設工程のうち、長い日数を要し、施工期間の決定に大きな影響を与える工程をクリティカル工程と称する。このクリティカル工程は、建屋の構成や配置に応じて増加することがある。
【0003】
例えば、新規に計画される原子力発電所では、高耐震化への要求から、近年は原子炉建屋を複合建屋とする傾向にある。この場合、原子炉建屋の上層部に中央制御室が配置されるのが一般的である。原子炉建屋の建設にあたり、原子炉建屋を複合建屋とすることにより、単独建屋を建設する場合のクリティカル工程に加えて、中央制御室の建設工程もクリティカル工程となる。一方、原子力発電所の建設においては、ますますの工期短縮を求められる状況が今後も続くと考えられる。
【0004】
以上の背景より、原子炉建屋が複合建屋である原子力発電所の工期短縮を実現する上では、中央制御室の工期短縮は必要不可欠な要素となっている。
【0005】
原子力発電所の中央制御室には、制御盤や監視盤、計算機盤など、100面近くに上る各種の盤が床面上に設置される。中央制御室の床は、フリーアクセスフロアと呼ばれる二重床となっており、上部床と下部床を構成する躯体スラブとの間に空間を有する。この空間には、ケーブル収納体であるケーブルトレイや電線管が布設され、ケーブルや電線が収納される。
【0006】
中央制御室の各盤は、躯体スラブ上に構築された架台上に設置される。この架台の構造や形状には数パターンの実例があるが、代表的なものとして、独立基礎(以下、「島基礎」とも称する)と呼ばれる箱型コンクリート製のものが挙げられる。この島基礎の上に、盤ベースと呼ばれる鋼製の部材を溶接固定し、その盤ベースに盤をボルトで緊結し、固定する。盤ベースの機能は、盤の位置およびレベル(盤の設置面の高さ)の調整である。例えば、100面近くの盤を設置するためには、500基近い島基礎と、100基近い盤ベースが必要となる。
【0007】
このように、中央制御室には、島基礎(独立基礎)、盤ベース、およびケーブル収納体が床下構造物として構築される。床下構造物の据付方法としては、例えば、特許文献3、4に記載されている技術が知られている。
【0008】
従来から、ある対象物の基礎となる構造物(床下構造物)は、一般的に、同一または類似の形状の構造物が多数配置されるという特徴があり、プレキャストコンクリート製とし、現場での構築作業を低減または削減するということが行われている。例えば、特許文献2に記載されているプレキャストコンクリート基礎の構造は、連続した壁状の立ち上げ部と、当該立ち上げ部の下部に少なくとも2以上の独立したベース部を一体に形成したものとを、モルタル等で形成した上面が一定のレベルを保った受け体に載置する。さらに、隣り合うプレキャストコンクリート基礎同士を緊結した上で、プレキャストコンクリート基礎相互間および基礎ベースコンクリート部を構成する部分のうちベース部以外の部分にコンクリートを充填するというものである。
【0009】
また、プレキャストコンクリート製とした基礎は、一般的に、上部に据え付けられる対象物との緊結を目的としたアンカーボルトまたはこれに類する機能を持つ部材(以下、「アンカーボルト等」と称する)を一体化して製作することが多い。例えば、特許文献3に記載の建設方法は、機器基礎ブロックを現場工事と並行して作成しておき、床コンクリート打設前に、設定用架台にこの基礎ブロックを載せて位置設定を行い、しかるのちに床コンクリートを打設するというものであり、当該基礎ブロック上部には、機器を緊結するためのボルトまたは埋め込み金物が埋め込まれている。
【0010】
現場での構築作業を低減または削減するためには、基礎構造物のプレキャストコンクリート化およびアンカーボルト等との一体化が有効であることは疑いのないところである。しかし、アンカーボルト等は、一般に、非常に高い精度で据え付ける必要がある。従来は、プレキャストコンクリート基礎を、強固な受け体の上に据え付けることが多い。この場合は、求められる精度においてプレキャストコンクリート基礎を据え付けることは、難しくない。一方、プレキャストコンクリート基礎をあまり強固でない受け台の上に据え付ける場合、例えば特許文献3に記載の技術のように床コンクリート打設前にプレキャストコンクリート製の基礎ブロックを据え付けるような場合には、仮に基礎ブロックにアンカーボルト等を一体化した場合でも、床コンクリートが硬化した後、再度アンカーボルト等の位置を調整することは避けられない。これは、コンクリート打設により床下面の型枠がたわむことに由来するものであり、支保工を用いずに床コンクリートを打設する鉄骨構造の場合などに顕著となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−85123号公報
【特許文献2】特開平10−88584号公報
【特許文献3】特開昭62−121237号公報
【特許文献4】特開昭59−158831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述したように、膨大な数におよぶ島基礎および盤ベースの施工には、従来、かなりの期間を要している。また、上部床と躯体スラブとの間の空間に布設するケーブル収納体の据付物量も多く、施工にかなりの期間を要している。
【0013】
したがって、クリティカル工程である中央制御室の建設工期の短縮には、床下構造物の施工期間を短縮することが必須の条件である。床下構造物のうち、島基礎やケーブル収納体の施工に関しては、工期短縮に関する技術がこれまでにいくつか提案されている(例えば、特許文献3、4)。しかし、盤ベースも含めた施工に関するものは、先例が見当たらない。
【0014】
本発明の目的は、床下構造物である島基礎、盤ベース、およびケーブル収納体の施工に要する期間を短縮し、建屋の建設工期を短縮することが可能な床下構造物の据付方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記課題を解決するために、次のような床下構造物の据付方法を提供する。
【0016】
床面上に設置される盤を支持するための複数の島基礎および盤ベースと、配線を布設するためのケーブル収納体とを床下に据え付ける床下構造物の据付方法において、プレキャスト製作した複数の前記島基礎と、前記盤ベースと、前記ケーブル収納体については、据付工程前に予めブロックとして一体化したものを用いる。前記据付工程は、予め据付の下準備がされた床底面部に前記ブロックを吊込治具により吊り下げて設置する工程と、この前記ブロックを吊り下げた状態で前記床底面部にコンクリートを打設する工程を有する。
【0017】
前記ブロックは、前記ケーブル収納体が一体化されていなくてもよい。この場合には、コンクリートを打設する工程の後で、前記ケーブル収納体が一体化されていない前記ブロックに、前記ケーブル収納体を設置する工程を有する。
【0018】
さらに、前記据付工程では、前記ブロックの島基礎を前記吊込治具により吊り下げつつ、一部の島基礎については、前記床底面部に配置した支持架台を介して支持されるようにし、この状態で前記床底面部にコンクリートを打設する。
【0019】
好ましくは、前記床底面部の下部に支保工を設置し、この支保工のある位置に前記支持架台を配置して前記一部の島基礎を支持する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、現地(建屋の建設エリア)での盤ベースの設定作業がなくなるため、また、ケーブル収納体の現地での据付物量が軽減されるため、床下構造物の施工に要する期間を短縮でき、建屋の建設工期を大幅に短縮することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】原子力発電所の中央制御室の一部を示す俯瞰図。
【図2】従来の建屋の床工事作業フローの例を説明する図。
【図3】従来の建屋の床工事作業フローの別の例を説明する図。
【図4】本実施例による床下構造物の据付方法の作業フローを説明する図。
【図5】吊込治具による一体化ブロックの設置方法を説明する図。
【図6A】島基礎と盤ベースが一体化された一体化ブロックの例を示す図。
【図6B】島基礎と盤ベースが一体化された一体化ブロックの別の例を示す図。
【図6C】島基礎と盤ベースと1つのケーブル収納体が一体化された一体化ブロックの例を示す図。
【図6D】島基礎と盤ベースと1つのケーブル収納体が一体化された一体化ブロックの別の例を示す図。
【図6E】島基礎と盤ベースと2つのケーブル収納体が一体化された一体化ブロックの例を示す図。
【図6F】島基礎と盤ベースと2つのケーブル収納体が一体化された一体化ブロックの別の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明による床下構造物の据付方法では、プレキャスト(以下、「PCa」と表記する)製作した島基礎(独立基礎)、盤ベース、およびケーブル収納体を、あるまとまった数ごとに一体化してブロックとする。以下では、この一体化したブロックのことを「一体化ブロック」と称する。一体化ブロックは、予め製作しておいてから現地(建屋の建設エリア)に搬入し、床下構造物として設定する。工期短縮効果を高めるため、躯体スラブとなるコンクリートを打設する前に、一体化ブロックを搬入して設定する。コンクリートの重量により床底面部(例えば、床型枠または床SC鋼板等により形成される)がたわんで盤ベースの設置精度に影響を及ぼさないように、一部の島基礎は床底面部に配置した支持架台を介して配置し、残りの島基礎は吊込治具によって吊り下げる。支持架台を介して配置された一部の島基礎は、この支持架台によって支持されるが、残りの島基礎は、支持架台を介して支持されず、吊込治具によって吊り下げられているだけである。
【0023】
本発明によれば、従来の工法に比べ、大幅に工期を短縮することができる。
【0024】
まず、図2と図3を用いて、従来の床下構造物の据付方法を説明する。
【0025】
図2は、従来の建屋の床工事作業フローの例を説明する図である。ステップ1で、床鉄筋6を施工する。ステップ2で、床底面部の上にコンクリートを打設して躯体スラブ7を構築する。ステップ3で、躯体スラブ7の上に独立基礎の型枠を施工する。ステップ4で、独立基礎14のコンクリートを打設し、躯体スラブ7と独立基礎14を防塵塗装する。ステップ5で、独立基礎14に盤ベース4とケーブル収納体3を設定する。ステップ6で、独立基礎14の上に上部床2を施工する。ステップ7で、床上の設置物である盤1を搬入し、上部床2に設置する。
【0026】
図3も従来の建屋の床工事作業フローを説明する図である。図3に示した方法では、独立基礎を予めPCa製作してブロック化している。ステップ1で、床鉄筋6と支持架台10を施工する。ステップ2で、PCa製作した独立基礎15のブロックを支持架台10の上に設定する。ステップ3で、床底面部の上にコンクリートを打設して躯体スラブ7を構築し、躯体スラブ7と独立基礎15を防塵塗装する。ステップ4で、独立基礎15に盤ベース4とケーブル収納体3を設定する。ステップ5で、独立基礎15の上に上部床2を施工する。ステップ6で、床上の設置物である盤1を搬入し、上部床2に設置する。
【0027】
図2、3に示したような従来の床下構造物の据付方法では、特に盤ベース4とケーブル収納体3の設定(図2のステップ5、図3のステップ4)に時間がかかっていた。これは、コンクリートの打設後に、盤ベース4の据付レベルの調整が必要だからである。
【0028】
以下、本発明の実施例を説明する。本実施例では、原子力発電所の中央制御室を建屋の例として取り上げ、本発明による床下構造物の据付方法を中央制御室の床工事作業に適用した例について説明する。
【0029】
図1は、原子力発電所の中央制御室の一部を示す俯瞰図である。図1では、床の断面と床上の設置物(盤1)と柱を示しており、壁と天井は図示していない。
【0030】
中央制御室の床は、フリーアクセスフロアと呼ばれる二重床となっており、上部床2と下部床を構成する躯体スラブ7との間に空間を有する。この空間には、ケーブル収納体3が布設される。ケーブル収納体3は、ケーブルトレイや電線管であり、電線や信号線などの各種ケーブルを格納する。
【0031】
制御盤や監視盤、計算機盤など、中央制御室の各種の盤1は、躯体スラブ7上に構築された架台上に設置される。この架台には、独立基礎と呼ばれる箱型の基礎を用いることができる。以下では、この独立基礎のことを島基礎5と称する。島基礎5の形状は、箱型に限らず、例えば、円柱形などでもよい。島基礎5の素材には、コンクリートを用いることができる。
【0032】
この島基礎5の上に、盤ベース4と呼ばれる鋼製部材を溶接で固定する。盤ベース4には、盤1をボルトで緊結して固定する。盤ベース4は、盤1の位置およびレベル(盤1の設置面の高さ)を調整する機能を有する。このため、盤ベース4の据付レベル(据付高さ)は、高い精度での施工が要求される。
【0033】
下部床は、床底面部8の上に床鉄筋6を配筋して据付の下準備をし、コンクリートを打設して躯体スラブ7を構築することにより形成される。床底面部8には、例えば、スラブ型枠またはスラブSC鋼板等を用いることができる。
【0034】
図4は、本実施例による床下構造物の据付方法の作業フローを説明する図である。図4では、床鉄筋6の配筋から盤1の据付までの、現地(建屋の建設エリア)での作業フローを示す。
【0035】
なお、現地での作業に入る前に、予め、PCa製作した島基礎5、盤ベース4、およびケーブル収納体3を、あるまとまった数ごとに一体化し、一体化ブロックを1個または複数個製作しておく。1つの一体化ブロックを形成する島基礎5、盤ベース4、およびケーブル収納体3の数は、盤1の数や大きさ、現地の広さなど、建設時の条件に応じて決めることができる。通常は、複数基の島基礎5と、複数基の盤ベース4と、これらの近傍に設置されるケーブル収納体3を一体化する。予め製作した一体化ブロックは、現地に搬入され、床下構造物の構築に用いられる。
【0036】
一体化ブロックは、少なくとも島基礎5と盤ベース4が一体化されていればよい。すなわち、一体化ブロックには、島基礎5、盤ベース4、およびケーブル収納体3が一体化されたものの他に、ケーブル収納体3を含まずに島基礎5と盤ベース4だけが一体化されたものがあってもよい。また、すべての一体化ブロックに対し、島基礎5、盤ベース4、およびケーブル収納体3が一体化されていてもよい。
【0037】
図6A〜図6Fは、一体化ブロックの例を示す図である。一体化ブロックが吊込治具9により保持されている状態を示している。一体化ブロックにおいて、島基礎5と盤ベース4は、例えば溶接接合によって接合されている。また、一体化ブロックの盤ベース4と吊込治具9は、ボルトで締結されている。盤ベース4には、盤を固定するためのボルト孔が設けられているので、このボルト孔を吊込治具9との締結に利用してもよく、吊込専用のボルト孔を盤ベース4に設けて、これを締結に利用してもよい。
【0038】
図6Aは、2列の島基礎5とその上に配置された盤ベース4が一体化された一体化ブロックの例であり、一体化ブロックは吊込治具9により保持されている。
【0039】
図6Bは、4列の島基礎5とその上に配置された盤ベース4が一体化された一体化ブロックの例であり、一体化ブロックは2段に重ねられた吊込治具9により保持されている。
【0040】
図6Cに示す一体化ブロックは、2列の島基礎5と、その上に配置された盤ベース4と、1つのケーブル収納体3が一体化された一体化ブロックの例である。ケーブル収納体3は、一方の列の島基礎5に設置されている。図6Aと同様に、一体化ブロックは、吊込治具9により保持されている。
【0041】
図6Dに示す一体化ブロックは、4列の島基礎5と、その上に配置された盤ベース4と、1つのケーブル収納体3が一体化された一体化ブロックの例である。ケーブル収納体3は、一端の列の島基礎5に設置されている。図6Bと同様に、一体化ブロックは、2段に重ねられた吊込治具9により保持されている。
【0042】
図6Eに示す一体化ブロックは、2列の島基礎5と、その上に配置された盤ベース4と、2つのケーブル収納体3が一体化された一体化ブロックの例である。ケーブル収納体3は、両方の列の島基礎5に設置されている。図6Aと同様に、一体化ブロックは、吊込治具9により保持されている。
【0043】
図6Fに示す一体化ブロックは、4列の島基礎5と、その上に配置された盤ベース4と、2つのケーブル収納体3が一体化された一体化ブロックの例である。ケーブル収納体3は、両端の列の島基礎5に設置されている。図6Bと同様に、一体化ブロックは、2段に重ねられた吊込治具9により保持されている。
【0044】
図6A〜図6Fに示した一体化ブロックにおいて、四隅にある島基礎は、床底面部8に配置した支持架台を介して支持される島基礎5aであり、その他の島基礎は、吊込治具9から吊り下げられる島基礎5bである。吊込治具9から吊り下げられる島基礎5bは、支持架台を介して支持されず、吊込治具9によって吊り下げられているだけである。支持架台を介して支持される島基礎5aと吊込治具9から吊り下げられる島基礎5bについては、後で説明する。
【0045】
図6A〜図6Fに示した一体化ブロックはあくまで一例であり、一体化ブロックに一体化される島基礎5、盤ベース4、およびケーブル収納体3の数や配置、一体化ブロックの形状などは、任意に定めることができる。
【0046】
以下、図4を用いて、現地での作業フローを説明する。
【0047】
ステップ1では、床鉄筋6と支持架台10を床底面部8の上に配筋し、据付の下準備をする。床底面部8には、スラブ型枠またはスラブSC鋼板等を用いる。
【0048】
ステップ2では、吊込治具9により、一体化ブロック13a、13bを設置する。一体化ブロック13aは、島基礎5、盤ベース4、およびケーブル収納体3が一体化されており、一体化ブロック13bは、島基礎5、および盤ベース4のみが一体化されている。一体化ブロック13a、13bは、吊込治具9に吊り下げられ、揚重機によって所定の位置に設定される。吊込治具9は、レベル保持用治具を兼ねており、一体化ブロック13a、13bの位置を定めるとともに、盤ベース4の据付レベルの精度を確保する。
【0049】
本発明による据付方法では、躯体スラブ7となるコンクリートの打設前に盤ベース4を設置するため、コンクリート打設によって据付精度が狂わないようにすることが必要である。吊込治具9は、盤ベース4の据付精度が狂わないようにするためのレベル保持用治具の役割も兼ねている。吊込治具9には、例えばH形鋼などの鋼材を用いることができる。
【0050】
ここで、図5を用いて、一体化ブロックの設置方法について詳しく説明する。図5は、吊込治具9による一体化ブロックの設置方法を説明する図であり、図4のステップ2に示した図を横方向(紙面の左右方向)から見た立面図である。すなわち、図5の切断線AA’における断面図が、図4のステップ2に示した図である。
【0051】
一体化ブロック13aは、島基礎5a、島基礎5b、盤ベース4、およびケーブル収納体からなるが、図5ではケーブル収納体の図示を省略している。島基礎5aは、床底面部8に配置した支持架台10を介して支持される島基礎であり、島基礎5bは、吊込治具9から吊り下げられる島基礎である。
【0052】
図5では、支持架台10、支保工11、およびPC鋼棒12も図示している。支持架台10は、床底面部8に固定され、一体化ブロック13aを支持する。支保工11は、床底面部8の変形を抑制するために、床底面部8の下部に設置される。PC鋼棒12は、吊込治具9に設けられ、レベル保持用治具を兼ねる吊込治具9のたわみを抑制する緊張材の役割を果たす。なお、吊込治具9のたわみ強度を高めることができるものであれば、PC鋼棒12の代わりに他の緊張材を用いてもよく、例えば、炭素繊維製の緊張材を用いてもよい。
【0053】
従来、島基礎は、すべて床底面部8から支持をとるのが一般的である。本発明による据付方法では、一体化ブロック13a、13bを形成する島基礎のうち、一部の島基礎5aだけを床底面部8から支持架台10を介して支持し、残りの島基礎5bは吊込治具9から吊り下げる。本実施例では、図5に示すように、支持架台10を介して支持される島基礎5aは、一体化ブロック13a(13b)の端部にある島基礎であり、吊込治具9から吊り下げられる島基礎5bは、一体化ブロック13a(13b)の中間部にある島基礎である。
【0054】
さらに、床底面部8に固定されて一体化ブロック13a、13bを支持する支持架台10は、床底面部8の下部に設置した支保工11により支持される。これにより、床底面部8のうち、支持架台10を介して一体化ブロック13a、13bを支持する箇所(島基礎5aの直下の位置)は支保工11で支えられ、かつ島基礎5bが吊込治具9に吊り下げられる構造となることで、床底面部8がコンクリートの重量により変形した場合でも、島基礎5a、島基礎5b、および盤ベース4の据付レベルが影響を受けないようにすることができる。
【0055】
なお、支持架台10を介して支持される島基礎5aと吊込治具9から吊り下げられる島基礎5bの位置と数は、図5の例に限るものではなく、盤ベース4の据付レベルを一定に保つことができるような位置と数であれば、どのようなものであってもよい。
【0056】
例えば、一体化ブロック13a、13bの中央部にある1つまたは複数の島基礎が支持架台10によって支持され、残りの島基礎が吊込治具9から吊り下げられてもよい。また、例えば、一体化ブロック13a、13bの中央部と端部にある島基礎が支持架台10によって支持され、残りの島基礎が吊込治具9から吊り下げられてもよい。
【0057】
また、例えば、一体化ブロック13a、13bの島基礎が規則的に一定数おきで支持架台10によって支持され、残りの島基礎が吊込治具9から吊り下げられてもよい。また、一体化ブロック13a、13bの島基礎が不規則に不定数(一定でない数)おきで支持架台10によって支持され、残りの島基礎が吊込治具9から吊り下げられてもよい。このようにして、支持架台10を介して支持される島基礎5aを適度に分散させて配置してもよい。
【0058】
このように、支持架台10を介して支持される島基礎5aの位置や数は、盤ベース4の据付レベルを一定に保つことができるように、任意に定めることができる。
【0059】
好ましくは、吊込治具9から吊り下げられる島基礎5bの数は、支持架台10を介して支持される島基礎5aの数よりも多いほうがよい。より詳細には、島基礎5bの数は多いほどよく、島基礎5aの数は少ないほどよい。島基礎5aの数が少ないと、支持架台10の数も少なくなり、支持架台10を設置するための期間を短縮することができる。さらには、支持架台10を支持する支保工11の数も少なくなるので、支保工11を設置するための期間も短縮することができる。このように、島基礎5aの数を少なくすることで、工期を短縮することができる。
【0060】
吊込治具9は、吊込治具9から吊り下げられる島基礎5bの重量によって過分なたわみを生じないような構造や部材断面とする。これにより、盤ベース4のレベル保持用治具を兼ねている吊込治具9は、盤ベース4の据付レベルを確保することができる。なお、特に吊込治具9のたわみが問題となるような場合は、PC鋼棒12により吊込治具9にプレストレスを与えることで、島基礎5bを吊り下げる前に、吊込治具9にたわみを抑制する応力を与えておいてもよい。吊込治具9は、盤ベース4の水平方向の位置確保機能、盤ベース4の据付レベル(据付高さ)確保機能、および揚重機による一体化ブロック13a、13bの吊込時の治具機能の3つの機能を有する。
【0061】
なお、中央制御室(建屋)に設置される盤1も、数面の盤1からなるブロックを構成しており、相隣り会う盤1同士はボルトにより緊結されるのが一般的である。したがって、盤1からなるブロックの範囲と一体化ブロック13a、13bの範囲を同じくするのが好ましい。
【0062】
支保工11は、床底面部8の変形が微小で盤ベース4の据付精度への影響が少ないと判断できる場合には、必ずしも設置しなくてもよい。
【0063】
また、一体化ブロック13aを形成するケーブル収納体3に充分な剛性を持たせた上で、吊込治具9の機能を兼用させてもよい。この場合、仮設部材を減らすことができ、より合理的な据付方法とすることができる。
【0064】
図4に戻って、現地での作業フローの説明を続ける。
【0065】
ステップ3において、床底面部8にコンクリートを打設し、躯体スラブ7を形成する。このとき、コンクリートの重量により床底面部8は変形する。しかし、本実施例での据付方法では、吊込治具9によって一体化ブロック13a、13bの島基礎5bを吊り下げているので(図5を参照)、据付レベルを保持することができ、盤ベース4の設置精度は確保されている。したがって、コンクリートの打設後に、盤ベース4の据付レベルの調整は不要である。なお、吊込治具9は、コンクリートの打設完了まで存置し、コンクリートが硬化して盤ベース4の据付レベルが定まった後に撤去する。
【0066】
さらに、コンクリートの硬化後に、躯体スラブ7の表面および島基礎5の表面に防塵塗装を施す。
【0067】
ステップ4において、島基礎5と盤ベース4のみが一体化されている一体化ブロック13b(すなわち、ケーブル収納体3が一体化されていない一体化ブロック13b)に、ケーブル収納体3を設定する。
【0068】
従来では、このタイミングで、すべての盤ベース4とすべてのケーブル収納体3を設定していた。しかし、本発明による据付方法では、一体化ブロック13bに一体化されていないケーブル収納体3だけを設定すればよいため、大幅な工期短縮が可能である。
【0069】
すべての一体化ブロックに対し、島基礎5、盤ベース4、およびケーブル収納体3が一体化されている場合、すなわち、島基礎5、および盤ベース4のみが一体化されている一体化ブロック13bがない場合は、ステップ5の工程を省略することができる。
【0070】
ステップ5では、島基礎5の上にフリーアクセスフロアの上部床2を施工する。
【0071】
ステップ6では、盤1の搬入と上部床2への据付を行う。
【0072】
なお、上述の実施例では、原子力発電所の中央制御室を建屋の例として取り上げたが、本発明は、火力発電所など原子力発電所以外の発電所や製造プラントなど、各種のプラントにも適用できる。さらに、中央制御室に限らず、例えばプロセス計算機室など、ある程度まとまった数量の島基礎が構築される建屋の床下構造物の据付方法にも適用可能である。
【符号の説明】
【0073】
1…盤、2…上部床、3…ケーブル収納体、4…盤ベース、5…島基礎、5a…支持架台を介して支持される島基礎、5b…吊込治具から吊り下げられる島基礎、6…床鉄筋、7…躯体スラブ、8…床底面部、9…吊込治具、10…支持架台、11…支保工、12…PC鋼棒、13a…一体化ブロック、13b…一体化ブロック、14…独立基礎、15…PCa製作した独立基礎。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面上に設置される盤を支持するための複数の島基礎および盤ベースと、配線を布設するためのケーブル収納体とを床下に据え付ける床下構造物の据付方法において、
プレキャスト製作した複数の前記島基礎と、前記盤ベースと、前記ケーブル収納体については、据付工程前に予めブロックとして一体化したものを用い、
前記据付工程は、予め据付の下準備がされた床底面部に前記ブロックを吊込治具により吊り下げて設置する工程と、
この前記ブロックを吊り下げた状態で前記床底面部にコンクリートを打設する工程を有する、
ことを特徴とする床下構造物の据付方法。
【請求項2】
前記据付工程では、前記ブロックの島基礎を前記吊込治具により吊り下げつつ、一部の島基礎については、前記床底面部に配置した支持架台を介して支持されるようにし、この状態で前記床底面部にコンクリートを打設する請求項1記載の床下構造物の据付方法。
【請求項3】
床面上に設置される盤を支持するための複数の島基礎および盤ベースと、配線を布設するためのケーブル収納体とを床下に据え付ける床下構造物の据付方法において、
プレキャスト製作した複数の前記島基礎と、前記盤ベースと、前記ケーブル収納体については、複数の前記島基礎と前記盤ベースとを据付工程前に予め第1ブロックとして一体化したものと、複数の前記島基礎と前記盤ベースと前記ケーブル収納体とを据付工程前に予め第2ブロックとして一体化したものを用い、
前記据付工程は、予め据付の下準備がされた床底面部に前記第1ブロックおよび前記第2ブロックを吊込治具により吊り下げて設置する工程と、
この前記第1ブロックおよび前記第2ブロックを吊り下げた状態で前記床底面部にコンクリートを打設する工程と、
前記第1ブロックに前記ケーブル収納体を設置する工程を有する、
ことを特徴とする床下構造物の据付方法。
【請求項4】
前記据付工程では、前記第1ブロックおよび前記第2ブロックの島基礎を前記吊込治具により吊り下げつつ、前記第1ブロックおよび前記第2ブロックの一部の島基礎については、前記床底面部に配置した支持架台を介して支持されるようにし、この状態で前記床底面部にコンクリートを打設する請求項3記載の床下構造物の据付方法。
【請求項5】
前記床底面部の下部に支保工を設置し、この支保工のある位置に前記支持架台を配置して前記一部の島基礎を支持する請求項2または4記載の床下構造物の据付方法。
【請求項6】
前記支持架台を介して支持される前記一部の島基礎の数は、前記支持架台を介して支持されない前記島基礎の数より少ない請求項2または4記載の床下構造物の据付方法。
【請求項7】
前記床底面部に打設したコンクリートの硬化後に、前記吊込治具を撤去する工程を有する請求項1から4のいずれか1項記載の床下構造物の据付方法。
【請求項8】
前記床底面部には、スラブ型枠またはスラブSC鋼板を用いる請求項1から4のいずれか1項記載の床下構造物の据付方法。
【請求項9】
前記吊込治具に緊張材を設ける請求項1から4のいずれか1項記載の床下構造物の据付方法。
【請求項10】
前記吊込治具に緊張材を設け、前記吊込治具によって前記ブロックを吊り下げる前に、前記緊張材により前記吊込治具にプレストレスを与える請求項1または2記載の床下構造物の据付方法。
【請求項11】
前記吊込治具に緊張材を設け、前記吊込治具によって前記第1ブロックおよび前記第2ブロックを吊り下げる前に、前記緊張材により前記吊込治具にプレストレスを与える請求項3または4記載の床下構造物の据付方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図6F】
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【公開番号】特開2012−177225(P2012−177225A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39276(P2011−39276)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】