説明

床吹出し空調装置

【課題】床下差圧の均一化を図ることが可能な床吹出し空調装置を提供する。
【解決手段】室12の下部に設けられ全面に多数の給気孔を有する床部材14と、床部材14の上面に設けられた通気性タイルカーペットもしくは穴明きタイルカーペット16と、または、床部材と床仕上材を貫通して取付けられた床吹出し口と、床部材14の下部に形成される給気チャンバー18と、給気チャンバー18の端部に設けられ、給気チャンバー18内に空調空気を吹き出す吹出口20とを備え、給気チャンバー18内に吹き出された空調空気を床部材14および通気性タイルカーペットもしくは穴明きタイルカーペット16を通じて、または、床部材と床仕上材を貫通して取付けられた床吹出し口を通じて室内に供給する床吹出し方式の空調装置10であって、吹出口20の前面に、この近傍の有効開口面積を狭める抵抗帯22を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床下から通気性タイルカーペットおよび床吹出し口を通じて空調空気を室内に供給する床吹出し空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、床下から空調空気を室内に供給する床吹出し空調装置が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1のような空調装置では、図7(1)に示すように、全面に多数の給気孔(不図示)を有する床部材1下の隅側端部の吹出口2から二重床3の内部に空調用の気流4を片側吹き出し方式で吹き込み、床部材1からその上の通気性タイルカーペット5または穴明きタイルカーペットを通じて空調空気を室内に供給する。この場合、図7(2)に示すように、二重床3の内部の気流4は壁面に沿って流れ、当該気流部分の圧力は高くなる傾向にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−264638号公報
【特許文献2】特開平10−170061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、全面床吹出し空調装置の場合においては、通気性タイルカーペットとして従来品よりも安価な軽量型タイルカーペットを用いた場合の床下差圧分布は、図7(3)に示すように、図7(2)と同様の傾向となることが本発明者らの研究によって明らかとなった。この場合、最大差圧が軽量型タイルカーペットの重量から計算される許容最大圧力に近くなり、軽量型タイルカーペットが床面から剥離するおそれがある。
【0006】
また、部分床吹出し空調装置の場合においても、床下差圧分布は図7(2)と同様の傾向となるため、床吹出し口の取付位置により吹出し風量の不均一な状態が発生するおそれがある。
【0007】
このように全面床吹出し空調装置の最大差圧が許容最大圧力に近い場合には、家具等により通気性のある床面が塞がれたり、床下にケーブルなどが敷設されると床下差圧がさらに増大することから、上限差圧(許容最大圧力)を超える事態が予想され、最悪の場合には軽量型タイルカーペットが床面から剥離するおそれがある。また、部分床吹出し空調装置の場合も、各個の床吹出し口から得られる風量が均一にならない事態が予想される。このため、床下差圧の均一化を図ることが可能な技術の開発が望まれていた。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、床下差圧の均一化を図ることが可能な床吹出し空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の請求項1に係る床吹出し空調装置は、室の下部に設けられ全面に多数の給気孔を有する床部材およびこの床部材の上面に設けられた通気性カーペットもしくは穴明きカーペットと、または、室の下部に設けられた床部材と床仕上材を貫通して取付けられた床吹出し口と、前記床部材の下部に形成される給気チャンバーと、前記給気チャンバーの端部に設けられ、前記給気チャンバー内に空調空気を吹き出す吹出口とを備え、前記給気チャンバー内に吹き出された空調空気を、前記全面に多数の給気孔を有する床部材およびこの床部材の上面に設けられた通気性カーペットもしくは穴明きカーペットを通じて、または、前記床部材と床仕上材を貫通して取付けられた床吹出し口を通じて室内に供給する床吹出し方式の空調装置であって、前記吹出口の前面に、前記吹出口近傍の有効開口面積を狭める抵抗帯を設けたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項2に係る床吹出し空調装置は、上述した請求項1において、前記吹出口を囲むように前記抵抗帯を配置したことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項3に係る床吹出し空調装置は、上述した請求項1または2において、前記抵抗帯の高さを前記給気チャンバー内部の高さの1/2〜2/3としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、室の下部に設けられ全面に多数の給気孔を有する床部材およびこの床部材の上面に設けられた通気性カーペットもしくは穴明きカーペットと、または、室の下部に設けられた床部材と床仕上材を貫通して取付けられた床吹出し口と、前記床部材の下部に形成される給気チャンバーと、前記給気チャンバーの端部に設けられ、前記給気チャンバー内に空調空気を吹き出す吹出口とを備え、前記給気チャンバー内に吹き出された空調空気を、前記全面に多数の給気孔を有する床部材およびこの床部材の上面に設けられた通気性カーペットもしくは穴明きカーペットを通じて、または、前記床部材と床仕上材を貫通して取付けられた床吹出し口を通じて室内に供給する床吹出し方式の空調装置であって、前記吹出口の前面に、前記吹出口近傍の有効開口面積を狭める抵抗帯を設けたので、抵抗帯は吹出口からの気流を妨げるように作用する。このため、給気チャンバー壁面に沿って流れる気流の勢いが弱められ、抵抗帯から下流の給気チャンバー内の気流分布が均一化される。したがって、床下差圧の均一化を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明に係る床吹出し空調装置の実施例1を示す平断面図である。
【図2】図2は、図1のA−A線に沿った断面図である。
【図3】図3は、本発明に係る床吹出し空調装置の実施例2を示す平断面図である。
【図4】図4は、図3のB−B線に沿った断面図である。
【図5】図5は、抵抗帯の配置レイアウトを示す平断面図である。
【図6】図6は、従来と本発明の床下差圧分布を示す平断面図である。
【図7】図7は、従来の全面床吹出し空調装置の床下差圧分布を示す平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係る床吹出し空調装置の実施の形態(実施例1および2)を図面に基づいて詳細に説明する。ここで、実施例1は、全面床吹出し方式の空調装置の場合、実施例2は、部分床吹出し方式の空調装置の場合である。なお、これら実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【0015】
[実施例1]
まず、実施例1(全面床吹出し方式の空調装置)を説明する。
図1および図2に示すように、本発明の実施例1に係る床吹出し空調装置10は、全面床吹出し方式の空調装置であり、室12の下部に設けられ、全面に多数の給気孔(不図示)を有する床部材14と、床部材14の上面に設けられた通気性タイルカーペットまたは穴明きタイルカーペット16(通気性カーペットまたは穴明きカーペット)と、床部材14の下部に二重床として形成される直方体状の給気チャンバー18とを備えている。
【0016】
給気チャンバー18の隅側端部には、ファン(不図示)から送り込まれる空調空気を給気チャンバー18内に片側吹き出し方式で吹き出す吹出口20が設けてある。給気チャンバー18内に吹き出された空調空気は、床部材14および通気性タイルカーペットまたは穴明きタイルカーペット16を通じて室12内に供給されるようになっている。
【0017】
吹出口20の前面には、この近傍の有効開口面積を狭める棒状の抵抗帯22が室幅全体にわたって直線状に配置してある。ここで、抵抗帯22の高さhは、給気チャンバー18内部の高さHの1/2〜2/3程度とすることが好ましい。
【0018】
抵抗帯22が吹出口20からの気流を妨げるので、給気チャンバー18壁面に沿って流れる気流の勢いが弱められ、抵抗帯22から下流の給気チャンバー18内の気流分布が均一化される。これにより、床下差圧の均一化を図ることが可能である。
【0019】
また、抵抗帯22を設けることで気流が均一化し、最大風速が下がることで床下の最大差圧を下げることができる。これにより、軽量型の通気性タイルカーペットまたは穴明きタイルカーペット16などが床部材14から剥離することを防止できる。さらに、床面からの吹出風量のばらつきが抑制されて気流が均等となるので、室内に快適な空調環境を作り出すことができる。
【0020】
また、この抵抗帯22は、図5に示すように、吹出口20の前面を囲むように配置することもできる。例えば、吹出口20の前方にDだけ離れた場所に、抵抗帯22aを室の幅方向に配置するとともに、吹出口20の開口端から外方にLだけ離れた場所(吹出口幅よりもLだけ長くした場所)に、抵抗帯22bを室の奥行き方向に配置してもよい。この場合、Dは0.5〜1m程度、Lは1m以上とするのが好適である。
【0021】
図6は、抵抗帯を室幅全体にわたって直線状に設けた本発明(図1の構成に相当)の床下差圧分布と、抵抗帯を設けない従来方式の床下差圧分布を比較したものである。この図6に示すように、抵抗帯を設けない従来方式では、壁際が高圧の偏った差圧分布となっている。これに対し、本発明の場合は、従来方式の場合よりも差圧分布の均一化が図られる結果、最大差圧が低下することが判る。
【0022】
このように、片側吹き出し方式のような場合でも床下差圧のばらつきを抑制することで、床下差圧の均一化を図ることが可能である。また、最大差圧が低下するので軽量型の通気性タイルカーペットなどが床部材から剥離することを防止できる。さらに、床面からの吹出風量のばらつきが抑制されて気流が均等となるので、室内に快適な空調環境を作り出すことができる。
【0023】
[実施例2]
次に、実施例2(部分床吹出し方式の空調装置)を説明する。
図3および図4に示すように、本発明の実施例2に係る床吹出し空調装置23は、部分床吹出し方式の空調装置であり、室12の下部に設けられた床部材24と、床部材24の上面に設けられた床仕上材25と、床部材24と床仕上材25を貫通して取付けられた床吹出し口26とで構成されている。床部材24の下部には二重床として形成される直方体状の給気チャンバー18が設けられている。
【0024】
給気チャンバー18の隅側端部には、ファン(不図示)から送り込まれる空調空気を給気チャンバー18内に片側吹き出し方式で吹き出す吹出口20が設けてある。給気チャンバー18内に吹き出された空調空気は、床部材24および床仕上材25を貫通して取付けられた床吹出し口26を通じて室12内に供給されるようになっている。
【0025】
吹出口20の前面には、この近傍の有効開口面積を狭める棒状の抵抗帯22が室幅全体にわたって直線状に配置してある。ここで、抵抗帯22の高さhは、上記の実施例1と同様に、給気チャンバー18内部の高さHの1/2〜2/3程度とすることが好ましい。また、この抵抗帯22は、図5に示すように、吹出口20の前面を囲むように配置することもできる。
【0026】
上記の実施例1と同様に、抵抗帯22が吹出口20からの気流を妨げるので、給気チャンバー18壁面に沿って流れる気流の勢いが弱められ、抵抗帯22から下流の給気チャンバー18内の気流分布が均一化される。これにより、床下差圧の均一化を図ることが可能である。
【0027】
また、抵抗帯22を設けることで給気チャンバー18の気流分布が均一化され、床吹出し口26から吹出す気流が均等となることから、部分床吹出し空調装置23の各所に配置された床吹出し口26個々での吹出し風量の調整用装置が不要となり、室内に快適な空調環境を作り出すことができる。
【0028】
以上説明したように、本発明によれば、室の下部に設けられ全面に多数の給気孔を有する床部材およびこの床部材の上面に設けられた通気性カーペットもしくは穴明きカーペットと、または、室の下部に設けられた床部材と床仕上材を貫通して取付けられた床吹出し口と、前記床部材の下部に形成される給気チャンバーと、前記給気チャンバーの端部に設けられ、前記給気チャンバー内に空調空気を吹き出す吹出口とを備え、前記給気チャンバー内に吹き出された空調空気を、前記全面に多数の給気孔を有する床部材およびこの床部材の上面に設けられた通気性カーペットもしくは穴明きカーペットを通じて、または、前記床部材と床仕上材を貫通して取付けられた床吹出し口を通じて室内に供給する床吹出し方式の空調装置であって、前記吹出口の前面に、前記吹出口近傍の有効開口面積を狭める抵抗帯を設けたので、抵抗帯は吹出口からの気流を妨げるように作用する。このため、給気チャンバー壁面に沿って流れる気流の勢いが弱められ、抵抗帯から下流の給気チャンバー内の気流分布が均一化される。したがって、床下差圧の均一化を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
以上のように、本発明に係る床吹出し空調装置は、床下から通気性タイルカーペットや穴明きタイルカーペットもしくは床吹出し口などを通じて空調空気を室内に供給する空調装置に有用であり、特に、床下差圧の均一化を図るのに適している。
【符号の説明】
【0030】
10 全面床吹出し空調装置
12 室
14 床部材
16 通気性タイルカーペットまたは穴明きタイルカーペット(通気性カーペットまたは穴明きカーペット)
18 給気チャンバー
20 吹出口
22,22a,22b 抵抗帯
23 部分床吹出し空調装置
24 床部材
25 床仕上材
26 床吹出し口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室の下部に設けられ全面に多数の給気孔を有する床部材およびこの床部材の上面に設けられた通気性カーペットもしくは穴明きカーペットと、または、室の下部に設けられた床部材と床仕上材を貫通して取付けられた床吹出し口と、前記床部材の下部に形成される給気チャンバーと、前記給気チャンバーの端部に設けられ、前記給気チャンバー内に空調空気を吹き出す吹出口とを備え、前記給気チャンバー内に吹き出された空調空気を、前記全面に多数の給気孔を有する床部材およびこの床部材の上面に設けられた通気性カーペットもしくは穴明きカーペットを通じて、または、前記床部材と床仕上材を貫通して取付けられた床吹出し口を通じて室内に供給する床吹出し方式の空調装置であって、
前記吹出口の前面に、前記吹出口近傍の有効開口面積を狭める抵抗帯を設けたことを特徴とする床吹出し空調装置。
【請求項2】
前記吹出口を囲むように前記抵抗帯を配置したことを特徴とする請求項1に記載の床吹出し空調装置。
【請求項3】
前記抵抗帯の高さを前記給気チャンバー内部の高さの1/2〜2/3としたことを特徴とする請求項1または2に記載の床吹出し空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−251675(P2012−251675A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122570(P2011−122570)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【出願人】(390031978)株式会社テクネット (5)
【Fターム(参考)】