説明

床形成用マットと該マットを用いた床構造

【課題】本発明は歩行材たるコンクリートマットで可燃性の発泡合成樹脂マットを完全に覆う構造を確実に形成でき、施工が容易で端材発生が少なく低廉に施工できる床形成用マットと該マットを用いた床構造を提供する。
【解決手段】方形のコンクリートマット2の下面に方形の発泡合成樹脂マット3を接着剤層4を介し一体に貼り合わせ、上記コンクリートマット2の四辺を上記発泡合成樹脂マット3の四辺から張り出して張り出し縁5を形成した床形成用マット1と、該床形成用マット1を用いた床構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は屋上又はバルコニー又はベランダ又はテラス等の床形成用マットに関する。又この床形成用マット群で覆工した上記屋上又はバルコニー又はベランダ又はテラス等の床構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は屋上又はバルコニー又はベランダ又はテラス等の床下地に塗布防水層又はシート防水層を施し、該防水層の上面にネットを置き敷きし、該ネットの上面に発泡合成樹脂シートを密接して置き敷きし、該発泡合成樹脂シートの上面にコンクリートマットを置き敷きした床構造を開示している。
【0003】
【特許文献1】特許3056474号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の発明によれば、歩行床材たるコンクリートマットに歩行荷重が加わった時に、防水層の上面の溜まり水が発泡合成樹脂シートの継ぎ目とコンクリートマットの継ぎ目を通し湧出するのを上記ネットにより分散し、所謂コンクリートマット上面への浮き水の現象を有効に防止することができる。又ネットにより形成された誘水間隙を通して溜まり水の排出を良好に促すことができる。
【0005】
然しながら、上記床構造の工事に際してはコンクリートマットと発泡合成樹脂シートの置き敷き位置の個別割り出しが必要であり、加えて個別に敷設する作業が必要で施工に多大な手間を要するばかりか、多量の端材を発生する問題点を有し工費アップを招いている。
【0006】
特に隣接するコンクリートマット相互の継ぎ目の直下に可燃性の発泡合成樹脂マットが存在するので、建築基準上必要な可燃材(可燃性の発泡合成樹脂マット)を不燃材(コンクリートマット)で覆い隠蔽する目的が確実に達成し難い問題点を有している。
【0007】
又防水層上の溜まり水はコンクリートマットと発泡合成樹脂シートの界面に自由に浸入し、この雨水がコンクリートマットに歩行荷重が加わった時にコンクリートマットの継ぎ目から浮き水となって歩行面に湧出する問題点を有している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記諸問題点を解決する屋上又はバルコニー又はベランダ又はテラス等の床形成用マットと、該マットを用いた床構造を提供するものである。
【0009】
本発明に係る床形成用マットは、方形のコンクリートマット等の歩行材マットの下面に方形の発泡合成樹脂マットを接着剤層を介し一体に貼り合わせ、上記歩行材マットの四辺を上記発泡合成樹脂マットの四辺から張り出して張り出し縁を形成した構造を有する。
【0010】
又上記床形成用マット群で施工面を覆工し、該覆工により隣接する床形成用マットの歩行材マット四辺の張り出し縁を互いに突き合わせ、該突き合わせにより隣接する床形成用マットの発泡合成樹脂マット四辺間に連通空隙を形成した床構造にする。
【0011】
上記歩行材マットの張り出し縁の突き合わせ界面は自由接触面とする。
【0012】
上記歩行材マットの張り出し縁に、隣接する歩行材マットの張り出し縁と連結する連結手段を設け、該連結手段による歩行材マット間の連結を介して発泡合成樹脂マット相互を連結し、よって床形成用マット間を連結する構成とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、歩行材マット四辺の継ぎ目(突き合わせ線)の直下に可燃性の発泡合成樹脂マットが存在せず、該発泡合成樹脂マットを歩行材マットで完全に隠蔽する構造が確実に形成でき、可燃材を不燃材で覆わねばならない建築基準に適切に応えることができる。
【0014】
又本発明によれば、歩行材マットによって現場施工時の敷設位置の割り出しを行うことができ、隣接する発泡合成樹脂マットの側面が突き合わされて歩行材マットの突き合わせ線間に間隙を生成する問題を確実に解消することができ、これにより現場施工を容易にし、端材の発生を最小限に止めることができる。
【0015】
又本発明によれば、防水層上の雨水は上記連通間隙内に受容して排水を促すことができ、歩行荷重による浮き水を有効に防止することができる。
【0016】
この場合、発泡合成樹脂マットと歩行材マットの重ね合わせ面間を接着する接着剤層の存在により、防水層上の雨水が両マット間の界面に浸入し、歩行材マットの継ぎ目から浮き水となる現象も有効に防止できる。
【0017】
本発明によれば、施工手間を低減し、工期短縮と工費削減目的を有効に達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下本発明を実施するための最良の形態を図1乃至図8に基づき説明する。
【0019】
本発明は特許文献1における上記諸問題点を解決する屋上又はバルコニー又はベランダ又はテラス等の床下地面を覆工する床形成用マット1と、該マット1を用いた床構造を提供するものである。
【0020】
図1,図2に示すように、本発明に係る床形成用マット1は、方形の発泡合成樹脂マット3の上面に方形のコンクリートマット2等の歩行材マットの下面を重ね合わせ、該重ね合わせ面において合成樹脂系接着剤層4を介し一体に貼り合わせた複合マットから成る。即ち、歩行材マットたるコンクリートマット2と断熱材たる発泡合成樹脂マット3とを接着剤層4を介して貼り合わせた複合マットから成る。以下コンクリートマット2を歩行材マットと読み替えることができる。
【0021】
上記歩行材マットとしては無機質系、木質系、金属系の板材、これらの複合板を含む。以下セメントと各種骨材の混練物で成形したコンクリートマット2を歩行材マットの代表例として説明する。
【0022】
上記コンクリートマット2の四辺を上記発泡合成樹脂マット3の四辺から張り出して張り出し縁5を形成し、該張り出し縁5相互を突き合わせつつ施工面7に置き敷きし覆工する構成を有する。
【0023】
例えば上記コンクリートマット2の四辺の張り出し縁5の張り出し寸法は1〜10mmとする。従ってコンクリートマット2の張り出し縁5の突き合わせ時における発泡合成樹脂マット3の四辺の側面11間に形成される間隙は2〜20mmとする。
【0024】
又上記コンクリートマット2とはセメントを硬化材とするマットであり、セメントを硬化媒体とし各種鉱物質材を骨材として用いたものを含む。骨材としては砂や石の粒子、鉱滓、補強繊維類、焼却灰等を使用できる。
【0025】
上記コンクリートマット2は上面と下面が平面であり、該マット2の上面には縦又は/及び横方向の目地溝8を形成し、該目地溝8で多数の小ブロック9を画成する。
【0026】
上記目地溝8をコンクリートマット2の厚みの二分の一以下にし、目地溝8底部の連結を歩行荷重によって割れを生ずる割れ誘発目地溝にし、該コンクリートマット2の下面に合成樹脂系の接着剤層4を介して発泡合成樹脂マット3を貼り付ける。上記コンクリートマット2と発泡合成樹脂マット3とは、その重合面の全面を上記接着剤層4を介して貼り合わせ、割れを生じても上記両マット2,3は一体貼り合わせ状態を維持する。
【0027】
例えば上記コンクリートマット2の厚みを20mm、発泡合成樹脂マット3の厚みを40mmにする等、コンクリートマット2の厚みを発泡合成樹脂マット3の厚みより充分に薄肉にする。
【0028】
図3乃至図5に示すように、上記床形成用マット1群で屋上又はバルコニー又はベランダ又はテラス等の床下地(施工面)7を覆工する。該覆工によって隣接する床形成用マット1のコンクリートマット2四辺の張り出し縁5、即ちコンクリートマット2の張り出し縁5の四側面10を互いに突き合わせ、該突き合わせにより隣接する床形成用マット1の発泡合成樹脂マット3四辺間(四側面11間)に連通空隙6を有する床構造を形成する。よって歩行材(コンクリートマット2)と床下地7間に断熱材層(発泡合成樹脂マット3の集合層)を形成する。
【0029】
上記コンクリートマット2の張り出し縁5の突き合わせ界面は自由接触面とする。ここに突き合わせとは隣接する張り出し縁5の側面10を当接状態に配置した場合と、僅かな間隙を介し近接配置した状態を含む。
【0030】
図3に示すように、上記連通空隙6は隣接する床形成用マット1において形成され、コンクリートマット2の張り出し縁5によって床全面に格子状の連通空隙6を形成し、該連通空隙6によってコンクリートマット2の張り出し縁5の突き合わせを保証すると共に、コンクリートマット2の張り出し縁5の突き合わせ線の直下に発泡合成樹脂マット3を存在させずにコンクリートマット2(不燃材)にて発泡合成樹脂マット3(可燃材)を完全に隠蔽する構成にする。
【0031】
同時に連通空隙6内に床下地7上面に施された防水層12上の雨水を受容し、コンクリートマット2の上面に加わる歩行圧によるその継ぎ目からの浮き水を防止する。
【0032】
又コンクリートマット2と発泡合成樹脂マット3間は合成樹脂系接着剤層4を介して貼り合わされており、防水層12上の雨水が該貼り合わせ界面に浸入することが無く、上記歩行圧により界面に浸入した雨水がコンクリートマット2の表面に浮き水となって滲出する現象を解消できる。
【0033】
上記床下地(施工面)7はセメントモルタル(コンクリートを含む)又は木質材や無機材や金属材から成るパネル等であり、該床下地7の上面には防水層12を施し、該防水層12の上面に上記床形成用マット1を発泡合成樹脂マット3を以って置き敷きする。防水層12の上面に押えモルタル層を形成する場合には、該押えモルタル層を介して防水層12上に床形成用マット1を置き敷きする。
【0034】
図4,図8は防水層12の上面(押えモルタル層の上面)に下記のようにネット13を敷設し、該ネット13の上面に上記床形成用マット1を発泡合成樹脂マット3を以って置き敷きし床構造を形成した場合を示している。
【0035】
再述すると、屋上又はバルコニー又はベランダ又はテラスの床下地7に塗布防水層12又はシート防水層12を施し、該防水層12の上面に直接又は間接的にネット13を置き敷きし、該ネット13の上面に多数の上記床形成用マット1を密接して置き敷きし、隣接する床形成用マット1のコンクリートマット2四辺の張り出し縁5、即ちコンクリートマット2四辺の四側面10を互いに突き合わせ、該突き合わせにより隣接する床形成用マット1の発泡合成樹脂マット3四辺間、即ち四側面11間に連通空隙6を形成した床構造にする。
【0036】
上記ネット13は経線19と緯線20を一体成形して成る合成樹脂ネットを用い、該経線19又は緯線20の一方を他方の表面から突出した構造にし、該線状突出部17を以って施工面7、即ち防水層12上面にネット13を敷設し、突出部17間に縦方向又は横方向の連通空隙18を形成し、該連通空隙18内に水溜まりを形成し、該ネット13の上面に上記床形成用マット1を発泡合成樹脂マット3を以って密集して置き敷きする。
【0037】
図6,図7に示すように、上記コンクリートマットの張り出し縁5には隣接する床形成用マット1間を連結する連結手段を設ける。
【0038】
上記連結手段の好ましい例示として、コンクリートマット2の対向する二辺又は四辺にマット1の上下面と側面10に開放せる半円の凹欠部14を設け、該凹欠部14内にコンクリートマット2と一体な連結リング15を設け、該連結リング15の半分を凹欠部14内に収容し、他の半分を側方へ突出し、コンクリートマット2の張り出し縁5相互の側面10が近接又は当接して突き合わせられた時に、連結リング15の突出した部分が互いに相手方の凹欠部14内に収容され、隣接する連結リング15,15が隣接する凹欠部14,14の合致により形成された穴内において略重なり合う状態を形成できるようにする。この重ね合わせられた連結リング15,15相互を線材で結縛するか、螺子等のピン16等にて連結し、隣接する床形成用マット1相互を連結する。
【0039】
即ち、上記コンクリートマット2の張り出し縁5に上記連結リング15に代表される連結手段を設け、該連結手段により隣接するコンクリートマット2の張り出し縁5相互を連結し、該連結手段によるコンクリートマット2間の連結を介して発泡合成樹脂マット3相互を連結し、よって床形成用マット1間を連結する構成とする。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】床形成用マットを一部切欠して示す平面図。
【図2】床形成用マットの断面図。
【図3】上記床形成用マットを用いた床構造の平面図。
【図4】上記床形成用マットを用いた床構造の断面図。
【図5】上記床構造における隣接する床形成用マットのコンクリートマットの突き合わせ状態と同発泡合成樹脂マットの四辺間に形成された連通空隙を拡大視する断面図。
【図6】上記床形成用マット間を連結する連結手段をコンクリートマットの四辺に設けた例を示す平面図。
【図7】Aは図6の連結手段を設けたコンクリートマットの断面図、Bは連結手段による連結部を拡大視する断面図。
【図8】Aは上記床構造に用いるネットの平面図、Bは同断面図。
【符号の説明】
【0041】
1…床形成用マット、2…コンクリートマット、3…発泡合成樹脂マット、4…接着剤層、5…張り出し縁、6…連通空隙、7…施工面、8…目地溝、9…小ブロック、10…コンクリートマットの側面、11…発泡合成樹脂マットの側面、12…防水層、13…ネット、14…凹欠部、15…連結リング、16…ピン、17…突出部、18…連通空隙、19…経線、20…緯線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
方形の歩行材マットの下面に方形の発泡合成樹脂マットを接着剤層を介し一体に貼り合わせ、上記歩行材マットの四辺を上記発泡合成樹脂マットの四辺から張り出して張り出し縁を形成したことを特徴とする床形成用マット。
【請求項2】
方形の歩行材マットの下面に方形の発泡合成樹脂マットを接着剤層を介して一体に貼り合わせ、上記歩行材マットの四辺を上記発泡合成樹脂マットの四辺から張り出して張り出し縁を形成して成る床形成用マットを用い、該床形成用マット群で施工面を覆工し、該覆工により隣接する床形成用マットの歩行材マット四辺の張り出し縁を互いに突き合わせ、該突き合わせにより隣接する床形成用マットの発泡合成樹脂マット四辺間に連通空隙を形成したことを特徴とする床構造。
【請求項3】
上記歩行材マットの張り出し縁の突き合わせ界面を自由接触面としたことを特徴とする請求項2記載の床構造
【請求項4】
上記歩行材マットの張り出し縁に、隣接する歩行材マットの張り出し縁と連結する連結手段を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の床形成用マットと該マットを用いた床構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−138678(P2010−138678A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−318892(P2008−318892)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【出願人】(591281459)マックストン株式会社 (25)
【Fターム(参考)】