床暖房パネル
【課題】 ベースパネル間に段差が生じるのを防止することができて、床暖房パネルを気温の変動に制約を受けることなく施工することができ、生産管理や在庫管理を簡略化できるようにすること。
【解決手段】 折りたたみ可能に連結配置される複数のベースパネル12a,12bに温水パイプ14を張設する。この温水パイプ14を折たたみラインL1と交差してベースパネル12a,12b間に延長する。そして、前記折りたたみラインL1と交差する温水パイプ14を複数本とするとともに、それらの複数本の温水パイプ14の前記交差方向を相反する方向とする。
【解決手段】 折りたたみ可能に連結配置される複数のベースパネル12a,12bに温水パイプ14を張設する。この温水パイプ14を折たたみラインL1と交差してベースパネル12a,12b間に延長する。そして、前記折りたたみラインL1と交差する温水パイプ14を複数本とするとともに、それらの複数本の温水パイプ14の前記交差方向を相反する方向とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、暖房媒体を熱源パイプに通して暖房を行うようにした床暖房パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、床暖房パネルは、温水を通すための温水パイプが張設された複数のベースパネルを連結して構成し、それらベースパネルの表面には金属製の放熱シートが貼着されている。そして、隣接するベースパネル間を折たたみラインとして折りたたむことができるようになっている。このような床暖房パネルは、運搬や保管するときに折りたたまれ、施工するときに折たたみ状態から展開されて住宅の床面に敷設される。
【0003】
この種の折たたみ可能な床暖房パネルは、可撓性を有する温水パイプが折たたみラインを渡って一方のベースパネルから他方のベースパネルへと連続的に配管されていることから、床暖房パネルが折りたたまれると、温水パイプが折たたみラインで折れ曲がったり、挫屈したり、潰れたりするという欠点がある。そのため、これらの欠点を解消する床暖房パネルとして、特許文献1に示すものが知られている。すなわち、図17に示すように、この床暖房パネル51は、ベースパネル54の表面に配管溝52が形成されて、温水パイプ53がこの配管溝52に嵌め込まれている。そして、折たたみラインLを渡る複数本の温水パイプ53は、その渡り部分53aが折たたみラインLと一致する位置に所定の長さを持って直線的に配管されるとともに、渡り部分53aの両端部が同じ方向に傾斜されている。
【特許文献1】特開2003−227620号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、前記従来の特許文献1における床暖房パネル51においては、複数本の温水パイプ53の渡り部分53aの両端部の傾斜方向が同一方向である。このため、温水パイプ53の伸縮方向が同一方向となる。従って、図18に示す模式図から明らかなように、例えば、夏季に生産した床暖房パネルを施工せずに、冬季まで保管したり、逆に冬季に生産したものを夏季まで保管したりすると、渡り部分53a及びその両端部の傾斜部分の収縮や、伸長によりベースパネル54間に段差Qを生じ、施工に支障をきたすことがある。また、このようにベースパネル54間に段差Qが生じると、ベースパネル54の表面に貼着された放熱シートが折りたたみラインLの部分で破れたり、同部分でシワにより盛り上がって平坦度が低下したりすることもある。
【0005】
従って、床暖房パネルの施工時期は、その床暖房パネルが製造されたときの気温とあまり差がない気温の時期に限られてしまい、生産管理や在庫管理に制約を受けてしまう原因となった。
【0006】
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、ベースパネル間に段差が生じるのを防止することができて、床暖房パネルを気温の変動に制約を受けることなく施工することができ、生産管理や在庫管理を簡略化できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の目的を達成するために、請求項1に記載の発明においては、折りたたみ可能に連結配置される複数のベースパネルに熱源パイプを張設するとともに、この熱源パイプを折たたみラインと交差してベースパネル間に延長した床暖房パネルにおいて、前記折りたたみラインと交差する熱源パイプを複数本とするとともに、それらの複数本の熱源パイプの前記交差方向を相反する方向としたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明においては、請求項1に記載の発明において、相反する方向に延びる各熱源パイプが各方向同数であることを特徴とする。
請求項3に記載の発明においては、請求項1または2に記載の発明において、熱源パイプをベースパネルに形成された配管溝に嵌め込んだことを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明においては、請求項3に記載の発明において、前記折りたたみラインと熱源パイプとの交差部における前記配管溝に、熱源パイプの変形を許容する開放部を形成したことを特徴とする。
【0010】
この発明では、複数本の熱源パイプの折りたたみラインに対する交差方向を相反する方向としているため、熱源パイプが伸縮したとしても、その伸縮方向が相互に反対方向になるため、ベースパネル間に気温の変化よる段差が生じることはない。よって、床暖房パネルをその生産時期と関係なく、施工することができる。
【0011】
また、熱源パイプが嵌め込まれた配管溝の折たたみラインを渡る箇所に、熱源パイプの変形を許容する開放部を形成すれば、床暖房パネルを谷折りにした状態において、熱源パイプは、開放部の両端で拘束されるとともに、開放部に収容されている部分での拘束がないため、開放部にある熱源パイプには捩れ力が付与される。これにより、熱源パイプがベースパネルの外側へ大きく湾曲するのが抑えられる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、床暖房パネルのベースパネル間に段差が生じるのを抑制することができて、床暖房パネルをその生産時期と関係なく、施工することができ、生産管理や在庫管理を簡素化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を具体化した実施形態について、図面を参照して説明する。この実施形態において、図1、図2に示すように、床暖房パネル11は、長方形をなす複数枚(実施形態では3枚)のベースパネル12a,12b,12cを備えている。各ベースパネル12a,12b,12cの表面には、複数の平行な蛇行状をなす配管溝13が形成され、その配管溝13内には可撓性を有する合成樹脂製の熱源パイプとしての温水パイプ14が嵌め込まれている。ベースパネル12a,12b,12cの表面全体には、熱伝導性に優れた金属薄膜、例えばアルミニウム合金の薄膜よりなる放熱シート15が配管溝13を塞いで温水パイプ14を覆うように貼着され、温水パイプ14からの熱が放熱シート15を介して床暖房パネル11全体に均一に伝わるようになっている。
【0014】
そして、この床暖房パネル11を住宅のフローリングの下側においてスラブ上に敷設した状態で、温水パイプ14内を温水が循環されることにより、フローリングが暖められて住宅の室内が暖房されるようになっている。
【0015】
床暖房パネル11は、ベースパネル12a,12b,12c間(本実施形態では2箇所)の折りたたみラインに沿って折りたたみ可能となっている。一方の折りたたみラインL1は、図示左側にあるベースパネル12aの表面と中間部にあるベースパネル12bとの表面が互いに接近し合う方向に折りたたまれる谷折りラインL1となっている。又、他方の折たたみラインL2は、中間部にあるベースパネル12bの裏面と図示右側にあるベースパネル12cとの裏面が互いに接近し合う方向に折りたたまれる山折りラインL2となっている。
【0016】
図示左側に位置するベースパネル12aと中間部に位置するベースパネル12bとは、放熱シート15をヒンジとして谷折りラインL1に沿って折りたたまれる。そのため、放熱シート15は、隣接するベースパネル12a,12b間に亘っており、谷折りラインL1上ではつながっている。一方、中間部に位置するベースパネル12bと図示右側に位置するベースパネル12cとは、両ベースパネル12b,12cの裏面に貼着された結合シート16によって連結されており、この結合シート16をヒンジとして山折りラインL2に沿って折りたたまれる。そのため、放熱シート15は山折りラインL2に沿って分断されている。
【0017】
次に、床暖房パネル11の谷折り部分の構成について図3、図4に示すように、床暖房パネル11の図示左側にあるベースパネル12a及び中間部にあるベースパネル12bの表面には、前記配管溝13が谷折りラインL1を交差して連続的に形成されている。ベースパネル12a,12bが展開されている状態において、平行な1組2条の2組の配管溝13が谷折りラインL1を傾斜して横切るとともに、各組の配管溝13は、他の組の配管溝13に対して相反する方向にほぼ同角度で傾斜している。
【0018】
すなわち、各配管溝13と谷折りラインL1との交差部である各配管溝13の谷折りラインL1を渡る箇所には、同谷折りラインL1に対して斜交する各2条の傾斜角度が相反する斜交部17が2組形成されている。この斜交部17は、隣接するベースパネル12a〜12c間に亘って形成された開放部13aを有している。ここでの開放部13aは、底壁を有するようにベースパネル12a〜12cの表面を凹設したものである。配管溝13に開放部13aを設けたのは、この開放部13aにおいて配管溝13による温水パイプ14の拘束性を無くすためである。つまり、温水パイプ14は、谷折りラインL1付近における渡り部分14aの開放部13aの部分では配管溝13による拘束を受けておらず、開放部13aの両端にある第1エンド部E1及び第2エンド部E2によってパイプ拘束部が構成されている。
【0019】
各配管溝13において開放部13aの一端部に位置する第1エンド部E1と、開放部13a他端部に位置する第2エンド部E2とは、谷折りラインL1の延長方向に位置をずらして配置されている。この配置関係により、図5に示すように、床暖房パネル11を谷折りすると、両ベースパネル12a,12bの表面が互いに接近する方向へ谷折りラインL1を中心として相対的に回転するとき、配管溝13によって両エンド部E1,E2間にある拘束されていない温水パイプ14の渡り部分14aに捩り力が付与される。
【0020】
次に、床暖房パネル11の山折り部分の構成について、図6、図7、図8に基づいて説明する。同図において、既に説明した床暖房パネル11の谷折り部分と同じ構成については、同一符号を付すとともに説明を省略する。山折りラインL2上に位置する各ベースパネル12b,12cの開放部13aの底壁全体は抜けている。すなわち、各ベースパネル12b,12cの開放部13a全体が貫通した孔となっている。そして、床暖房パネル11の右側にあるベースパネル12a及び中間部にあるベースパネル12bの表面には、前記配管溝13が山折りラインL2を交差して連続的に形成されている。ベースパネル12a,12bが展開されている状態において、平行な2条2組の配管溝13が山折りラインL2に対して相反する方向に傾斜している。
【0021】
上記のように構成された床暖房パネル11は、谷折りラインL1と山折りラインL2とに沿って折りたたまれた状態で保管されたり、運搬されたりする。
すなわち、図9に示すように、展開した状態にある床暖房パネル11を谷折りラインL1に沿って折りたたむと、図10に示すように、放熱シート15をヒンジとして両ベースパネル12a,12bの表面が互いに接近する方向へ相対的に回動される。これにより、配管溝13における開放部13aが2つに割れるとともに、開放部13aに収容されている温水パイプ14の渡り部分14aが浮き上がる。つまり、ベースパネル12a,12bの相対回動により、1本の温水パイプ14に対する両エンド部E1,E2が接近する。このとき、温水パイプ14は両エンド部E1,E2によって拘束されているため、温水パイプ14の両エンド部E1,E2間の部分は捩られながら浮き上がる。そして、図11に示すように、割れた開放部13a同士は、床暖房パネル11の厚み方向から見て互いに向き合い、それによって形成される空間部Sに温水パイプ14の渡り部分14aが収容される。
【0022】
ここで、図12は、床暖房パネル11が展開されている状態のベースパネル12a,12bの配管溝13を実線で示し、床暖房パネル11を谷折りした後に、他方のベースパネル12bの上側にある一方のベースパネル12aの配管溝13を太線で示した図である。なお、この図では理解しやすくするために、温水パイプ14、配管溝13の一部、及び放熱シート15を省略している。
【0023】
図12、図13に示すように、展開された状態にある床暖房パネル11において、各配管溝13における開放部13aの各エンド部E1,E2は、谷折りラインL1から離れた位置に配置されている。そのため、床暖房パネル11を折りたたむと、両エンド部E1,E2は、両ベースパネル12a,12bの端面よりも内側に位置することとなる。そのため、両ベースパネル12a,12bの端面から温水パイプ14の渡り部分14aが張り出すことはない。
【0024】
また、展開した状態にある床暖房パネル11を山折りラインL2に沿って折りたたむと、図14に示すように、結合シート16をヒンジとして両ベースパネル12b,12cの裏面が互いに接近する方向へ相対的に回動される。これにより、図15,図16に示すように、開放部13aが2つに割れるとともに、開放部13aに収容されている各温水パイプ14の渡り部分14aが開放部13aの側縁によって形成された凹部に係入される。
【0025】
又、床暖房パネル11を山折りする場合、谷折りの場合と同様に各ベースパネル12b,12cにある配管溝13の第1エンド部E1と第2エンド部E2において、温水パイプ14の渡り部分14aに捩り力が付与される。そのため、湾曲している温水パイプ14の渡り部分14aが外側へ膨らもうとするのがこの捩り力により抑えられ、温水パイプ14が山折りラインL2における両ベースパネル12b,12cの端面から張り出すことはない。
【0026】
また、この床暖房パネル11の保管や運搬等に際して、気温が変化した場合、温水パイプ14は伸縮するが、この場合、この温水パイプ14は、折りたたみラインL1,L2に対して、相反する方向に交差しているため、伸縮方向が相反する方向になり、各ベースパネル12a〜12c間に図18に示すような段差Qが生じることを抑止できる。
【0027】
従って、本実施形態によれば以下のような効果を得ることができる。
(1) 温水パイプ14が、折りたたみラインL1,L2に対して、相反する方向に交差しているため、気温の変化によって、温水パイプ14が伸縮した場合、各ベースパネル12a〜12c間に段差Qが生じるのを防止できる。従って、製造された床暖房パネル11を気温が大きく変化する季節まで放置あるいは保管することができ、このため、生産管理や在庫管理の制約を軽減して、それらの管理に自在性を持たせることができ、その管理が簡単になる。
【0028】
(2)各ベースパネル12a,12bの谷折りラインL1又は山折りラインL2付近の配管溝13の開放部13aにおいては、温水パイプ14の渡り部分14aが拘束されていない。そのため、床暖房パネル11を谷折り或いは山折りするときに、温水パイプ14の渡り部分14aに捩り力が付与される。そして、この捩りによって温水パイプ14の湾曲を抑えることができ、温水パイプ14が両ベースパネル12a,12bの端面から突出するのを防止ることができる。従って、床暖房パネル11を搬送するときや保管するときなどに、温水パイプ14の渡り部分14aが床面に擦れたりして損傷の原因となるのを防止することができる。しかも、温水パイプ14の渡り部分14aに捩り力が付与されることにより、温水パイプ14が挫屈したり、潰れたりするのを防止することもでき、温水パイプ14にこれらの挫屈等の形状が記憶定着することを防止できる。
【0029】
(変更例)
本発明の実施形態は以下のように変更してもよい。
・前記実施形態では、谷折りラインL1又は山折りラインL2に対して斜めに交差するように温水パイプ14を2組としたが、1組または3組以上に変更すること。
【0030】
・ ベースパネルの枚数を2枚または4枚以上とすること。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】第1実施形態における床暖房パネルの展開図。
【図2】床暖房パネルを拡大して示す断面図。
【図3】谷折りラインの一部を拡大して示すベースパネルの展開図。
【図4】谷折りラインの一部を拡大して示すベースパネルの斜視図。
【図5】床暖房パネルを谷折りしている途中の状態を示す斜視図。
【図6】山折りラインの一部を拡大して示すベースパネルの展開図。
【図7】山折りラインの一部を拡大して示すベースパネルの斜視図。
【図8】ベースパネルの一部を拡大して示す斜視図。
【図9】図3に示すA−A断面図であって、床暖房パネルを展開した状態の断面図。
【図10】床暖房パネルを谷折りする途中の断面図。
【図11】床暖房パネルの谷折りが完了した状態を示す断面図。
【図12】床暖房パネルを谷折りする前と後の状態を示す説明図。
【図13】図12のB−B断面図。
【図14】床暖房パネルを山折りする途中の斜視図。
【図15】床暖房パネルの山折りが完了した状態を示す斜視図。
【図16】図15とは異なる角度から見た床暖房パネルの斜視図。
【図17】従来技術における床暖房パネルの展開図。
【図18】従来技術における段差の形成状態を示す模式図。
【符号の説明】
【0032】
L1…谷折りライン(折たたみライン)、L2…山折りライン(折たたみライン)、Q…段差、11…床暖房パネル、12a,12b,12c…ベースパネル、13…配管溝、13a…開放部、14…温水パイプ(熱源パイプ)、15…放熱シート。
【技術分野】
【0001】
この発明は、暖房媒体を熱源パイプに通して暖房を行うようにした床暖房パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、床暖房パネルは、温水を通すための温水パイプが張設された複数のベースパネルを連結して構成し、それらベースパネルの表面には金属製の放熱シートが貼着されている。そして、隣接するベースパネル間を折たたみラインとして折りたたむことができるようになっている。このような床暖房パネルは、運搬や保管するときに折りたたまれ、施工するときに折たたみ状態から展開されて住宅の床面に敷設される。
【0003】
この種の折たたみ可能な床暖房パネルは、可撓性を有する温水パイプが折たたみラインを渡って一方のベースパネルから他方のベースパネルへと連続的に配管されていることから、床暖房パネルが折りたたまれると、温水パイプが折たたみラインで折れ曲がったり、挫屈したり、潰れたりするという欠点がある。そのため、これらの欠点を解消する床暖房パネルとして、特許文献1に示すものが知られている。すなわち、図17に示すように、この床暖房パネル51は、ベースパネル54の表面に配管溝52が形成されて、温水パイプ53がこの配管溝52に嵌め込まれている。そして、折たたみラインLを渡る複数本の温水パイプ53は、その渡り部分53aが折たたみラインLと一致する位置に所定の長さを持って直線的に配管されるとともに、渡り部分53aの両端部が同じ方向に傾斜されている。
【特許文献1】特開2003−227620号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、前記従来の特許文献1における床暖房パネル51においては、複数本の温水パイプ53の渡り部分53aの両端部の傾斜方向が同一方向である。このため、温水パイプ53の伸縮方向が同一方向となる。従って、図18に示す模式図から明らかなように、例えば、夏季に生産した床暖房パネルを施工せずに、冬季まで保管したり、逆に冬季に生産したものを夏季まで保管したりすると、渡り部分53a及びその両端部の傾斜部分の収縮や、伸長によりベースパネル54間に段差Qを生じ、施工に支障をきたすことがある。また、このようにベースパネル54間に段差Qが生じると、ベースパネル54の表面に貼着された放熱シートが折りたたみラインLの部分で破れたり、同部分でシワにより盛り上がって平坦度が低下したりすることもある。
【0005】
従って、床暖房パネルの施工時期は、その床暖房パネルが製造されたときの気温とあまり差がない気温の時期に限られてしまい、生産管理や在庫管理に制約を受けてしまう原因となった。
【0006】
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、ベースパネル間に段差が生じるのを防止することができて、床暖房パネルを気温の変動に制約を受けることなく施工することができ、生産管理や在庫管理を簡略化できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の目的を達成するために、請求項1に記載の発明においては、折りたたみ可能に連結配置される複数のベースパネルに熱源パイプを張設するとともに、この熱源パイプを折たたみラインと交差してベースパネル間に延長した床暖房パネルにおいて、前記折りたたみラインと交差する熱源パイプを複数本とするとともに、それらの複数本の熱源パイプの前記交差方向を相反する方向としたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明においては、請求項1に記載の発明において、相反する方向に延びる各熱源パイプが各方向同数であることを特徴とする。
請求項3に記載の発明においては、請求項1または2に記載の発明において、熱源パイプをベースパネルに形成された配管溝に嵌め込んだことを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明においては、請求項3に記載の発明において、前記折りたたみラインと熱源パイプとの交差部における前記配管溝に、熱源パイプの変形を許容する開放部を形成したことを特徴とする。
【0010】
この発明では、複数本の熱源パイプの折りたたみラインに対する交差方向を相反する方向としているため、熱源パイプが伸縮したとしても、その伸縮方向が相互に反対方向になるため、ベースパネル間に気温の変化よる段差が生じることはない。よって、床暖房パネルをその生産時期と関係なく、施工することができる。
【0011】
また、熱源パイプが嵌め込まれた配管溝の折たたみラインを渡る箇所に、熱源パイプの変形を許容する開放部を形成すれば、床暖房パネルを谷折りにした状態において、熱源パイプは、開放部の両端で拘束されるとともに、開放部に収容されている部分での拘束がないため、開放部にある熱源パイプには捩れ力が付与される。これにより、熱源パイプがベースパネルの外側へ大きく湾曲するのが抑えられる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、床暖房パネルのベースパネル間に段差が生じるのを抑制することができて、床暖房パネルをその生産時期と関係なく、施工することができ、生産管理や在庫管理を簡素化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を具体化した実施形態について、図面を参照して説明する。この実施形態において、図1、図2に示すように、床暖房パネル11は、長方形をなす複数枚(実施形態では3枚)のベースパネル12a,12b,12cを備えている。各ベースパネル12a,12b,12cの表面には、複数の平行な蛇行状をなす配管溝13が形成され、その配管溝13内には可撓性を有する合成樹脂製の熱源パイプとしての温水パイプ14が嵌め込まれている。ベースパネル12a,12b,12cの表面全体には、熱伝導性に優れた金属薄膜、例えばアルミニウム合金の薄膜よりなる放熱シート15が配管溝13を塞いで温水パイプ14を覆うように貼着され、温水パイプ14からの熱が放熱シート15を介して床暖房パネル11全体に均一に伝わるようになっている。
【0014】
そして、この床暖房パネル11を住宅のフローリングの下側においてスラブ上に敷設した状態で、温水パイプ14内を温水が循環されることにより、フローリングが暖められて住宅の室内が暖房されるようになっている。
【0015】
床暖房パネル11は、ベースパネル12a,12b,12c間(本実施形態では2箇所)の折りたたみラインに沿って折りたたみ可能となっている。一方の折りたたみラインL1は、図示左側にあるベースパネル12aの表面と中間部にあるベースパネル12bとの表面が互いに接近し合う方向に折りたたまれる谷折りラインL1となっている。又、他方の折たたみラインL2は、中間部にあるベースパネル12bの裏面と図示右側にあるベースパネル12cとの裏面が互いに接近し合う方向に折りたたまれる山折りラインL2となっている。
【0016】
図示左側に位置するベースパネル12aと中間部に位置するベースパネル12bとは、放熱シート15をヒンジとして谷折りラインL1に沿って折りたたまれる。そのため、放熱シート15は、隣接するベースパネル12a,12b間に亘っており、谷折りラインL1上ではつながっている。一方、中間部に位置するベースパネル12bと図示右側に位置するベースパネル12cとは、両ベースパネル12b,12cの裏面に貼着された結合シート16によって連結されており、この結合シート16をヒンジとして山折りラインL2に沿って折りたたまれる。そのため、放熱シート15は山折りラインL2に沿って分断されている。
【0017】
次に、床暖房パネル11の谷折り部分の構成について図3、図4に示すように、床暖房パネル11の図示左側にあるベースパネル12a及び中間部にあるベースパネル12bの表面には、前記配管溝13が谷折りラインL1を交差して連続的に形成されている。ベースパネル12a,12bが展開されている状態において、平行な1組2条の2組の配管溝13が谷折りラインL1を傾斜して横切るとともに、各組の配管溝13は、他の組の配管溝13に対して相反する方向にほぼ同角度で傾斜している。
【0018】
すなわち、各配管溝13と谷折りラインL1との交差部である各配管溝13の谷折りラインL1を渡る箇所には、同谷折りラインL1に対して斜交する各2条の傾斜角度が相反する斜交部17が2組形成されている。この斜交部17は、隣接するベースパネル12a〜12c間に亘って形成された開放部13aを有している。ここでの開放部13aは、底壁を有するようにベースパネル12a〜12cの表面を凹設したものである。配管溝13に開放部13aを設けたのは、この開放部13aにおいて配管溝13による温水パイプ14の拘束性を無くすためである。つまり、温水パイプ14は、谷折りラインL1付近における渡り部分14aの開放部13aの部分では配管溝13による拘束を受けておらず、開放部13aの両端にある第1エンド部E1及び第2エンド部E2によってパイプ拘束部が構成されている。
【0019】
各配管溝13において開放部13aの一端部に位置する第1エンド部E1と、開放部13a他端部に位置する第2エンド部E2とは、谷折りラインL1の延長方向に位置をずらして配置されている。この配置関係により、図5に示すように、床暖房パネル11を谷折りすると、両ベースパネル12a,12bの表面が互いに接近する方向へ谷折りラインL1を中心として相対的に回転するとき、配管溝13によって両エンド部E1,E2間にある拘束されていない温水パイプ14の渡り部分14aに捩り力が付与される。
【0020】
次に、床暖房パネル11の山折り部分の構成について、図6、図7、図8に基づいて説明する。同図において、既に説明した床暖房パネル11の谷折り部分と同じ構成については、同一符号を付すとともに説明を省略する。山折りラインL2上に位置する各ベースパネル12b,12cの開放部13aの底壁全体は抜けている。すなわち、各ベースパネル12b,12cの開放部13a全体が貫通した孔となっている。そして、床暖房パネル11の右側にあるベースパネル12a及び中間部にあるベースパネル12bの表面には、前記配管溝13が山折りラインL2を交差して連続的に形成されている。ベースパネル12a,12bが展開されている状態において、平行な2条2組の配管溝13が山折りラインL2に対して相反する方向に傾斜している。
【0021】
上記のように構成された床暖房パネル11は、谷折りラインL1と山折りラインL2とに沿って折りたたまれた状態で保管されたり、運搬されたりする。
すなわち、図9に示すように、展開した状態にある床暖房パネル11を谷折りラインL1に沿って折りたたむと、図10に示すように、放熱シート15をヒンジとして両ベースパネル12a,12bの表面が互いに接近する方向へ相対的に回動される。これにより、配管溝13における開放部13aが2つに割れるとともに、開放部13aに収容されている温水パイプ14の渡り部分14aが浮き上がる。つまり、ベースパネル12a,12bの相対回動により、1本の温水パイプ14に対する両エンド部E1,E2が接近する。このとき、温水パイプ14は両エンド部E1,E2によって拘束されているため、温水パイプ14の両エンド部E1,E2間の部分は捩られながら浮き上がる。そして、図11に示すように、割れた開放部13a同士は、床暖房パネル11の厚み方向から見て互いに向き合い、それによって形成される空間部Sに温水パイプ14の渡り部分14aが収容される。
【0022】
ここで、図12は、床暖房パネル11が展開されている状態のベースパネル12a,12bの配管溝13を実線で示し、床暖房パネル11を谷折りした後に、他方のベースパネル12bの上側にある一方のベースパネル12aの配管溝13を太線で示した図である。なお、この図では理解しやすくするために、温水パイプ14、配管溝13の一部、及び放熱シート15を省略している。
【0023】
図12、図13に示すように、展開された状態にある床暖房パネル11において、各配管溝13における開放部13aの各エンド部E1,E2は、谷折りラインL1から離れた位置に配置されている。そのため、床暖房パネル11を折りたたむと、両エンド部E1,E2は、両ベースパネル12a,12bの端面よりも内側に位置することとなる。そのため、両ベースパネル12a,12bの端面から温水パイプ14の渡り部分14aが張り出すことはない。
【0024】
また、展開した状態にある床暖房パネル11を山折りラインL2に沿って折りたたむと、図14に示すように、結合シート16をヒンジとして両ベースパネル12b,12cの裏面が互いに接近する方向へ相対的に回動される。これにより、図15,図16に示すように、開放部13aが2つに割れるとともに、開放部13aに収容されている各温水パイプ14の渡り部分14aが開放部13aの側縁によって形成された凹部に係入される。
【0025】
又、床暖房パネル11を山折りする場合、谷折りの場合と同様に各ベースパネル12b,12cにある配管溝13の第1エンド部E1と第2エンド部E2において、温水パイプ14の渡り部分14aに捩り力が付与される。そのため、湾曲している温水パイプ14の渡り部分14aが外側へ膨らもうとするのがこの捩り力により抑えられ、温水パイプ14が山折りラインL2における両ベースパネル12b,12cの端面から張り出すことはない。
【0026】
また、この床暖房パネル11の保管や運搬等に際して、気温が変化した場合、温水パイプ14は伸縮するが、この場合、この温水パイプ14は、折りたたみラインL1,L2に対して、相反する方向に交差しているため、伸縮方向が相反する方向になり、各ベースパネル12a〜12c間に図18に示すような段差Qが生じることを抑止できる。
【0027】
従って、本実施形態によれば以下のような効果を得ることができる。
(1) 温水パイプ14が、折りたたみラインL1,L2に対して、相反する方向に交差しているため、気温の変化によって、温水パイプ14が伸縮した場合、各ベースパネル12a〜12c間に段差Qが生じるのを防止できる。従って、製造された床暖房パネル11を気温が大きく変化する季節まで放置あるいは保管することができ、このため、生産管理や在庫管理の制約を軽減して、それらの管理に自在性を持たせることができ、その管理が簡単になる。
【0028】
(2)各ベースパネル12a,12bの谷折りラインL1又は山折りラインL2付近の配管溝13の開放部13aにおいては、温水パイプ14の渡り部分14aが拘束されていない。そのため、床暖房パネル11を谷折り或いは山折りするときに、温水パイプ14の渡り部分14aに捩り力が付与される。そして、この捩りによって温水パイプ14の湾曲を抑えることができ、温水パイプ14が両ベースパネル12a,12bの端面から突出するのを防止ることができる。従って、床暖房パネル11を搬送するときや保管するときなどに、温水パイプ14の渡り部分14aが床面に擦れたりして損傷の原因となるのを防止することができる。しかも、温水パイプ14の渡り部分14aに捩り力が付与されることにより、温水パイプ14が挫屈したり、潰れたりするのを防止することもでき、温水パイプ14にこれらの挫屈等の形状が記憶定着することを防止できる。
【0029】
(変更例)
本発明の実施形態は以下のように変更してもよい。
・前記実施形態では、谷折りラインL1又は山折りラインL2に対して斜めに交差するように温水パイプ14を2組としたが、1組または3組以上に変更すること。
【0030】
・ ベースパネルの枚数を2枚または4枚以上とすること。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】第1実施形態における床暖房パネルの展開図。
【図2】床暖房パネルを拡大して示す断面図。
【図3】谷折りラインの一部を拡大して示すベースパネルの展開図。
【図4】谷折りラインの一部を拡大して示すベースパネルの斜視図。
【図5】床暖房パネルを谷折りしている途中の状態を示す斜視図。
【図6】山折りラインの一部を拡大して示すベースパネルの展開図。
【図7】山折りラインの一部を拡大して示すベースパネルの斜視図。
【図8】ベースパネルの一部を拡大して示す斜視図。
【図9】図3に示すA−A断面図であって、床暖房パネルを展開した状態の断面図。
【図10】床暖房パネルを谷折りする途中の断面図。
【図11】床暖房パネルの谷折りが完了した状態を示す断面図。
【図12】床暖房パネルを谷折りする前と後の状態を示す説明図。
【図13】図12のB−B断面図。
【図14】床暖房パネルを山折りする途中の斜視図。
【図15】床暖房パネルの山折りが完了した状態を示す斜視図。
【図16】図15とは異なる角度から見た床暖房パネルの斜視図。
【図17】従来技術における床暖房パネルの展開図。
【図18】従来技術における段差の形成状態を示す模式図。
【符号の説明】
【0032】
L1…谷折りライン(折たたみライン)、L2…山折りライン(折たたみライン)、Q…段差、11…床暖房パネル、12a,12b,12c…ベースパネル、13…配管溝、13a…開放部、14…温水パイプ(熱源パイプ)、15…放熱シート。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
折りたたみ可能に連結配置される複数のベースパネルに熱源パイプを張設するとともに、この熱源パイプを折たたみラインと交差してベースパネル間に延長した床暖房パネルにおいて、
前記折りたたみラインと交差する熱源パイプを複数本とするとともに、それらの複数本の熱源パイプの前記交差方向を相反する方向としたことを特徴とする床暖房パネル。
【請求項2】
相反する方向に延びる各熱源パイプが各方向同数であることを特徴とする請求項1に記載の床暖房パネル。
【請求項3】
熱源パイプをベースパネルに形成された配管溝に嵌め込んだことを特徴とする請求項1または2に記載の床暖房パネル。
【請求項4】
前記折りたたみラインと熱源パイプとの交差部における前記配管溝に、熱源パイプの変形を許容する開放部を形成したことを特徴とする請求項3に記載の床暖房パネル。
【請求項1】
折りたたみ可能に連結配置される複数のベースパネルに熱源パイプを張設するとともに、この熱源パイプを折たたみラインと交差してベースパネル間に延長した床暖房パネルにおいて、
前記折りたたみラインと交差する熱源パイプを複数本とするとともに、それらの複数本の熱源パイプの前記交差方向を相反する方向としたことを特徴とする床暖房パネル。
【請求項2】
相反する方向に延びる各熱源パイプが各方向同数であることを特徴とする請求項1に記載の床暖房パネル。
【請求項3】
熱源パイプをベースパネルに形成された配管溝に嵌め込んだことを特徴とする請求項1または2に記載の床暖房パネル。
【請求項4】
前記折りたたみラインと熱源パイプとの交差部における前記配管溝に、熱源パイプの変形を許容する開放部を形成したことを特徴とする請求項3に記載の床暖房パネル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2006−292332(P2006−292332A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−117091(P2005−117091)
【出願日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】
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