説明

床材の敷設構造

【課題】目地隙間から露出するベース部材を外部から保護するとともに、床材の敷設作業を容易にすることができる床材の敷設構造を提供する。
【解決手段】ベース部材2の間に、不燃材料からなる、上方に突出する突条部31を有する短手方向断面略凸形状の連結部材3を介在し、この突条部31を、ベース部材2の上面に取り付けられた床化粧材1の間に形成された目地隙間4に嵌め込むようにしてベース部材2を連結させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のベース部材が連結されることにより、ベース部材の上面に取り付けられた平面視略四角形の床化粧材が隣同士で目地隙間を形成して床面に敷設される床材の敷設構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バルコニー、ベランダ、テラス及び屋上などのコンクリート床には、複数の床タイルが隣同士で目地隙間を形成するように敷設されている。床タイルの敷設において、目地隙間は、部材間に2〜8mm程度の幅であけられる継ぎ目であり、床タイルの熱膨張による挙動を緩和し、割り付け誤差を吸収し、下方への排水を促し、意匠性を向上させるために必要となる。しかし、目地隙間を設けることは、床タイルを正確な位置に割り付けたり、目地隙間を微調整したりするなど、熟練した技能が必要となるため、作業員の確保、作業の効率化、作業時間の短縮などを困難なものにしている。
【0003】
そこで、近年、敷設作業が容易な床タイルユニットが普及し、作業の効率化や、作業時間の短縮化が図られている。即ち、床タイルユニットは、隣接するベース部材の間に連結部材を介在させることにより、ベース部材の上面に取り付けられた床タイルの間に目地隙間が形成される。その結果、作業者は、熟練した技能を要することなく、床タイルの間に見栄えの良い目地隙間を形成させて床タイルを効率良く敷設することができる。
【0004】
このような床タイルユニットの普及に伴い、床タイルの連結についての工夫が多数提案されている(例えば、特許文献1及び特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−53552号公報
【特許文献2】特開2002−206329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された敷設構造にあっては、床タイルの目地隙間から下方のベース部材が露出しているため、火災時の炎や、煙草の火種などが目地隙間から侵入してベース部材を延焼させるおそれがある。特に、ベース部材は、加工が容易であることと、コンクリート床に対する傷を防ぐこととから、合成樹脂製であることが多く、炎や火種により燃焼しやすい。また、市場では、建築物に対する安全性が着目されており、建築基準法の認定を受けた床材の敷設構造が望まれている。しかし、従来の敷設構造では、ベース部材が燃焼しやすいため、認証を受けることが難しく、市場のニーズに応えることができない。
【0007】
また、特許文献2に記載された敷設構造にあっては、目地隙間側に張り出した係合部を嵌め合うことにより、目地隙間を隠して床材を連結するようにしている。しかし、床材を一枚一枚取り外すことができないため、例えば、破損した床材を部分的に交換することができない、など作業性に問題がある。
【0008】
本発明はかかる事情を鑑みてなされたものであり、ベース部材の間に、不燃材料からなる、上方に突出する突条部を有する短手方向断面略凸形状の連結部材を介在し、この突条部をベース部材の上面に取り付けられた床化粧材の間に形成された目地隙間に嵌め込むようにしてベース部材を連結させることにより、目地隙間から露出するベース部材を外部から遮断するとともに、床化粧材の敷設作業を容易にすることができる床材の敷設構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る床材の敷設構造は、複数のベース部材が連結されることにより、該ベース部材の上面に取り付けられた平面視略四角形の床化粧材が隣同士で目地隙間を形成して床面に敷設される床材の敷設構造において、複数の前記ベース部材は、その間に、不燃材料からなる、上方に突出する突条部を有する短手方向断面略凸形状の連結部材が介在され、前記突条部が前記目地隙間に嵌り込むように連結されることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る床材の敷設構造にあっては、ベース部材の間に、不燃材料からなる、上方に突出する突条部を有する短手方向断面略凸形状の連結部材を介在することにより、隣り合うベース部材の上面に取り付けられた床化粧材の間に目地隙間を形成させる。また、形成された目地隙間に連結部材の突条部を嵌め込むことにより、目地隙間から露出するベース部材を外部から遮断し、炎や火種などの侵入を防ぐ。
【0011】
更にまた、本発明に係る床材の敷設構造は、前記ベース部材は、上面に複数の前記床化粧材が取り付けられる場合、隣接する前記床化粧材の隙間から露出する前記上面の部分が、不燃材料からなる保護材によって隠されるようにしてある構成であってもよい。
【0012】
本発明に係る床材の敷設構造にあっては、ベース部材の上面に複数の床化粧材が取り付けられる場合、隣接する床化粧材の隙間から露出するベース部材の上面部分を不燃材料からなる保護材によって覆い隠すことにより、床化粧材の隙間から露出するベース部材の上面部分を外部から遮断し、炎や火種などの侵入を防ぐ。
【発明の効果】
【0013】
本発明にあっては、従来の床タイルユニットによる敷設作業の容易性を確保しつつ、目地隙間から露出するベース部材を外部から遮断して炎や火種の浸入を防ぐことができ、安全性の高い製品が求められている市場のニーズに応えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る床材の敷設構造を示す分解斜視図である。
【図2】図1の床材の敷設構造におけるベース部材の連結を説明する斜視図である。
【図3】図1の床材の敷設構造における連結部材の配置を説明する平面図である。
【図4】図1と異なる、床材の敷設構造におけるベース部材の連結を説明する斜視図である。
【図5】図4の床材の敷設構造を示す斜視図である。
【図6】図5の床材の敷設構造のA−A断面図である。
【図7】ベース部材の上面に複数の床化粧材が取り付けられた場合における床材の敷設構造を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施の形態1.
本発明に係る床材の敷設構造について、実施の形態を示す図面に基づいて以下説明する。床材の敷設構造は、図1に示すように、平面視略四角形の床化粧材1と、床化粧材1を下から支持するベース部材2と、複数のベース部材2を連結するための連結部材3とを備える。
【0016】
床化粧材1は、不燃材料で形成されている。不燃材料は、建築基準法で定める技術的基準に適合する不燃性を持つ材料であり、陶磁器質、石、ガラス、コンクリートなどの材料が含まれる。特に、陶磁器質は、耐熱性、耐候性に優れ、変色や変形が少ないため、床化粧材1の材料として好ましい。
【0017】
また、床化粧材1は、平面視四角形のタイル状に形成され、床上面となる表面10と、表面10の周縁から垂下する端面11と、ベース部材2と対向する裏面12とを備える。表面10は、水に濡れても滑ることがないように細かな凹凸が付けられており、無地、様々な模様又は色彩が付されている。また、表面10から端面11にかけての周縁部分は、不陸などでの床化粧材1の角浮きをなくし、躓きを防ぐため、面取りがなされている(図示せず)。また、端面11は、敷設された際、隣接する別の床化粧材1の側面11との間に目地隙間4を形成する。
【0018】
ベース部材2は、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成樹脂で形成されている。ベース部材2は、床化粧材1を取り付けるための取付面20と、取付面20の周縁から垂下する端面21と、底面22と、底面22から下方に突出する脚部23とを備える。取付面20は、ベース部材2の上面であり、床化粧材1と平面視で同形同大となるように形成され、床化粧材1が取り付けられる。端面21は、連結された際、隣接する別のベース部材2の端面21との間に目地隙間4を形成する。底面22は、床上面を歩く歩行者が帯電しないように一面にカーボン繊維が貼り付けられている。脚部23は、底面22から複数突出し、ベース部材2の周縁より僅かに内側寄りであり、且つ、この周縁に沿うように所定の間隔をあけて底面22から下方に突出している。なお、本発明において、床化粧材1の間に形成された目地隙間と、ベース部材2の間に形成された目地隙間とは、連続して一体的なものとして捉えており、区別することなく「目地隙間4」と表す。
【0019】
連結部材3は、上述する床化粧材1と同様に不燃材料で形成されている。不燃材料は、建築基準法で定める技術的基準に適合する不燃性を持つ材料である。連結部材3は、上面30と、上面30から突出する突条部31と、上面30に形成された複数の取付孔32と、底面33とを備える。連結部材3は、平面視L字状、平面視I字状など、様々な形態に形成されたものが準備されているが、実施の形態1では、平面視L字状の連結部材3を一例として説明する。
【0020】
突条部31は、上面30の平面視短手方向中央位置から垂直に立ち上がり、その立ち上がりが上面30の平面視長手方向に沿って連続することによりレール状をなしている。また、突条部31は、平面視L字状をなす上面30に沿って2方向に形成されたレール状となっており、この2本のレールが上面30のコーナ部付近で交わって十字状をなしている。また、突条部31は、図1に示すように、その高さ寸法Aが少なくともベース部材2の厚み寸法B以上となるように形成されている。また、突条部31は、その幅寸法(図示せず)が目地隙間4にぴたりと嵌り込む寸法となるように形成されている。また、連結部材3は、突条部31を備えることにより、平面視短手方向に沿って切断したときの側面視断面形状が略凸形状となる。
【0021】
取付孔32は、以下のように形成されている(図3参照)。取付孔32は、平面視長手方向に寸法Cの間隔をあけて複数形成されている。また、複数の取付孔32は、突条部31を挟むようにして平行に形成され、平行する間隔が寸法Dとなっている。また、複数の取付孔32は、上面30のコーナ部付近において、十字状をなす突条部31に仕切られるように寸法Eの間隔をあけて形成されている。また、複数の取付孔32は、上面30の平面視長手方向の端からコーナ部寄りに寸法Fの間隔をあけて形成されている。また、複数の取付孔32は、上面30のコーナ角から内側寄りに寸法Gの間隔をあけて形成されている。なお、寸法Cと、寸法Dと、寸法Eと、寸法Fと寸法Gとの合計寸法とは、4つとも同じ値となるように形成されている。
【0022】
また、連結部材3は、全体が以下のように形成されている。連結部材3は、長手方向の長さ寸法Hが床化粧材1の一辺の長さと等しくなるに形成されている。また、連結部材3は、その厚みがベース部材2の脚部23の高さ寸法以上となるように形成されている。
【0023】
このように、床材の敷設構造は、複数の部材により構成されている。以下、これらの部材を用いた床材の敷設方法について説明する。
【0024】
(床材の組み立て)
ベース部材2は、取付面20に接着剤が塗布され、この取付面20に一枚の床化粧材1が貼り付けられる。このとき、床化粧材1は、端面11がベース部材2の端面21と揃うように取り付けられる。ベース部材2は、床化粧材1が取り付けられることにより、取付面20が床化粧材1によって覆い隠される一方、取付面20以外の部分(例えば端面21など)が露出した状態となる。
【0025】
(床材の敷設)
連結部材3は、図3に示すように、コンクリート床上に規則正しく配置され、隣接する別の連結部材3とで、突条部31により囲まれた平面視四角形状の凹空間を形成する。ベース部材2は、図2に示すように、床化粧材1が取り付けられた状態で連結部材3の凹空間に導かれ、脚部23が連結部材3の凹空間内に存在する取付孔32にそれぞれ挿入される。このとき、ベース部材2は、全ての脚部23が一つの連結部材3の取付孔32に挿入されるのでなく、連結部材3の上面30のコーナ部から離れた位置にある脚部23については、隣接する別の連結部材3の取付孔32に挿入されることとなる。ベース部材2は、全体が連結部材3の凹空間にぴたりと嵌り込む。
【0026】
そして、同様の作業を繰り返すことにより、床化粧材1がコンクリート床全体に敷きつめられたとき、ベース部材2は、コンクリート床に規則正しく配置された状態で連結部材3により連結固定される。また、ベース部材2は、図6に示すように、端面21が、隣接する別のベース部材2の端面21と対向して目地隙間4を形成し、この目地隙間4に連結部材3の突条部31が嵌り込み、少なくとも端面21が突条部31により隠される。また、隣接する4つのベース部材2(図示せず)は、間に十字状の目地隙間4を形成し、この目地隙間4に、連結部材3の上面30のコーナ部付近において十字状をなす突条部31が嵌り込む。なお、コンクリート床のレイアウトの関係から、目地隙間4に連結部材3の突条部31が嵌り込んでいない部分については、突条部31の代わりとなる部材(図示せず)を目地隙間4に嵌め込むことにより調整する。
【0027】
床材の敷設構造は、上述する方法で敷設されることにより、以下の作用効果を奏する。ベース部材2は、コンクリート床に規則正しく配置された連結部材3によって位置が規制されることにより、コンクリート床上に規則正しく敷設される。また、ベース部材2に取り付けられた床化粧材1が規則正しく敷設される。また、目地隙間4が少なくとも床化粧材1の間で規則正しく形成される。その結果、床材の敷設作業が容易となる。
【0028】
また、目地隙間4に連結部材3の突条部31が嵌り込むことにより、目地隙間4から露出するベース部材2が外部から遮断され、延焼に弱いベース部材2を炎や火種から守る。その結果、床材の敷設構造として安全性が向上する。
【0029】
また、ベース部材2の脚部23を、接着剤を用いることなく、連結部材3の取付孔32に挿入するようにしていることから、脚部23を取付孔32から上方に引き抜くだけでベース部材2を取り外すことができる。
また、連結部材3を不燃性且つ弾性素材にすることにより、床化粧材1の熱膨張による挙動が緩和される。
また、連結部材3の各部分の寸法Cと、寸法Dと、寸法Eと、FとGとの合計寸法とを等しい関係にしてあることにより、少なくとも、図3に示すように連結部材3が配置された場合、連結部材3により連結されたベース部材2及び床化粧材1が隙間なく敷設される。
また、ベース部材2は、2つの連結部材3を跨ぐようにして脚部23が取付孔32に挿入されることにより、連結部材3が互いの位置がずれることがないように固定される。
【0030】
実施の形態2.
上述した実施の形態1においては、平面視L字状の連結部材3を介在して、ベース部材2を連結する一例を説明した。しかし、本発明は、これに限定されるものでなく、コンクリート床のレイアウトに応じて、平面視I字状の連結部材3を介在させてベース部材2を連結するようにしてもよい。
なお、具体的な内容については、上述する実施の形態1とほぼ同様であるから、対応する箇所に同一の符号を付し、新たな図4及び5を参照することを条件としてその説明を省略する。
【0031】
実施の形態3.
上述した実施の形態においては、ベース部材2に床化粧材1が一枚取り付けられた一例を説明した。しかし、本発明は、これに限定されるものでなく、ベース部材2に複数の床化粧材1が取り付けられる形態であってもよい(図7参照)。
【0032】
かかる形態においては、複数の床化粧材1の間に生じた隙間5(例えば、化粧用隙間)からベース部材2の取付面20が露出する。そこで、ベース部材2は、隙間5の下方に相当する位置に凹部24が形成され、この凹部24に不燃材料からなる保護材6が嵌め込まれる。その結果、ベース部材2は、隙間5から露出することなく、外部から遮断される。
【0033】
なお、その他の構造及び敷設方法については、上述する実施の形態と同様であるから、対応する箇所に同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0034】
また、上述した実施の形態においては、ベース部材2と床化粧材1とが、接着剤により接着固定される一例を説明した。しかし、本発明は、これに限定されるものでなく、例えば、融着、釘、ネジ又は雌雄連結部により固定するようにしてもよい。
また、上述した実施の形態においては、床化粧材1の間に形成された目地隙間4まで突条部31が嵌り込んでいない一例を説明した。しかし、本発明は、これに限定されるものでなく、突条部31が、床化粧材1の間に形成された目地隙間4の位置まで嵌り込むようにしてもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 床化粧材
10 表面
11 端面
12 裏面
2 ベース部材
20 取付面
21 端面
22 底面
23 脚部
3 連結部材
30 上面
31 突条部
32 取付孔
33 底面
4 目地隙間
5 隙間
6 保護材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のベース部材が連結されることにより、該ベース部材の上面に取り付けられた平面視略四角形の床化粧材が隣同士で目地隙間を形成して床面に敷設される床材の敷設構造において、
複数の前記ベース部材は、その間に、不燃材料からなる、上方に突出する突条部を有する短手方向断面略凸形状の連結部材が介在され、前記突条部が前記目地隙間に嵌り込むように連結されることを特徴とする床材の敷設構造。
【請求項2】
前記ベース部材は、上面に複数の前記床化粧材が取り付けられる場合、隣接する前記床化粧材の隙間から露出する前記上面の部分が、不燃材料からなる保護材によって隠されるようにしてあることを特徴とする請求項1に記載の床材の敷設構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−52392(P2012−52392A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197653(P2010−197653)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】