説明

床材の表面層の摩滅の判定方法

【課題】広い範囲の床面に適用される床材の表面層の摩滅を簡易に、かつ、高精度に判定できる床材の表面層の摩滅の判定方法を提供すること。
【解決手段】特定の波長の光を照射すると、照射した光と異なる特定の波長の可視光を出光する添加剤を表面層1の上層11に含有した床材Fを敷設し、この床材Fの表面に前記特定の波長の光を照射し、前記照射した光と異なる特定の波長の可視光の出光を検知することによって、床材Fの表面層1の上層11の摩滅を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床材の表面層の摩滅の判定方法に関し、特に、床材の表面層の摩滅を簡易に、かつ、高精度に判定できるようにした床材の表面層の摩滅の判定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
店舗、公共施設、マンションの通路等の床面には、意匠性や歩行性を向上するため、合成樹脂製の長尺の床材やタイルタイプの床材が敷設されている。
これらの床材は、歩行者がスリップして転倒することを防止するため、床材の表面層に凹凸を形成したり、骨材を散在固定する等の表面処理を施すことによって、防滑性を付与するようにしている。
【0003】
しかしながら、これらの表面処理は、歩行者が歩行すること等によって、防滑性を付与した表面層が摩滅し、徐々に防滑性が失われる。
【0004】
この状況を放置しておくと、防滑性が減衰し、転倒事故等が発生するおそれがあるため、通常、対象建造物の管理者が、定期的に床材の表面層の摩滅状態を目視で点検するようにしている。
【0005】
しかしながら、床材の表面層の摩滅は、床材の全面で均一に起こることはなく、歩行者の通行量が多い場所等で局部的に起こるため、床材の表面層の摩滅を点検する場合には、様々な場所を点検しなければならず、床材の表面層の摩滅状態の程度が目視では把握しにくいことも相俟って、非常に手間がかかるだけでなく、見落としが生じやすいという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の床材の表面層の摩滅の判定方法の有する問題点に鑑み、広い範囲の床面に適用される床材の表面層の摩滅を簡易に、かつ、高精度に判定できる床材の表面層の摩滅の判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の床材の表面層の摩滅の判定方法は、特定の波長の光を照射すると、照射した光と異なる特定の波長の可視光を出光する添加剤を表面層に含有した床材を敷設し、該床材の表面に前記特定の波長の光を照射し、前記照射した光と異なる特定の波長の可視光の出光を検知することによって、前記床材の表面層の摩滅を判定することを特徴とする。
【0008】
この場合において、凹凸を形成及び/又は骨材を散在固定した表面層と、裏打ち層とを備えた床材を敷設することができる。
【0009】
また、表面層が、特定の波長の光を照射すると、照射した光と異なる特定の波長の可視光を出光する添加剤を含有した上層と、前記添加剤を含有しない上層の下に積層した下層とからなる床材を敷設するようにしたり、特定の波長の光を照射すると、照射した光と異なる特定の波長の可視光を出光する添加剤を含有しない上層と、前記添加剤を含有した上層の下に積層した下層とからなる床材を敷設するようにすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の床材の表面層の摩滅の判定方法によれば、特定の波長の光を照射すると、照射した光と異なる特定の波長の可視光を出光する添加剤を表面層に含有した床材を敷設し、該床材の表面に前記特定の波長の光を照射し、前記照射した光と異なる特定の波長の可視光の出光を検知することによって、前記床材の表面層の摩滅を判定するようにすることにより、広い範囲の床面に適用される床材の表面層の摩滅を、目視等によって、簡易に、かつ、高精度に判定し、防滑性が減衰した床材の場所を特定することができる。
そして、防滑性が減衰した床材を新しい床材に更新することができる(この場合、タイルタイプの床材の場合は、防滑性が減衰した床材を部分的に更新することができる)ため、常に十分な防滑性のある床面を提供することができ、店舗、公共施設、マンションの通路等の安全性を維持することができる。
【0011】
また、凹凸を形成及び/又は骨材を散在固定した表面層と、裏打ち層とを備えた床材を敷設することにより、表面処理を施すことによって防滑性を付与するようにした床材を用いて、床材の表面層の摩滅の判定を行うことができる。
【0012】
また、表面層が、特定の波長の光を照射すると、照射した光と異なる特定の波長の可視光を出光する添加剤を含有した上層と、前記添加剤を含有しない上層の下に積層した下層とからなる床材を敷設するようにすることにより、前記照射した光と異なる特定の波長の可視光の出光があれば、上層が摩滅していないと判定し、一方、出光が少なかったり、出光しなくなれば、上層が摩滅したと判定することができる。
また、表面層が、特定の波長の光を照射すると、照射した光と異なる特定の波長の可視光を出光する添加剤を含有しない上層と、前記添加剤を含有した上層の下に積層した下層とからなる床材を敷設するようにすることにより、前記照射した光と異なる特定の波長の可視光の出光がないならば、上層が摩滅していないと判定し、一方、出光があれば、上層が摩滅したと判定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の床材の表面層の摩滅の判定方法の実施の形態を説明する。
【0014】
この床材の表面層の摩滅の判定方法は、店舗、公共施設、マンションの通路等の広い範囲の床面に適用される床材の表面層の摩滅を簡易に、かつ、高精度に判定できるようにしたもので、特定の波長の光を照射すると、照射した光と異なる特定の波長の可視光を出光する添加剤を表面層に含有した床材を敷設し、この床材の表面に前記特定の波長の光を照射し、前記照射した光と異なる特定の波長の可視光の出光を検知することによって、前記床材の表面層の摩滅を判定するようにしたものである。
【0015】
この場合、前記照射した光と異なる特定の波長の可視光の出光の検知は、目視によって行うことができるが、このほか、デジタルカメラ等で撮影した画像をカラーアナライザ等を用いて解析することによって、より高精度な分析を行うこともできる。
【0016】
これにより、例えば、広い範囲の床面に適用される床材の表面層の摩滅を、簡易に、かつ、高精度に判定し、防滑性が減衰した床材の場所を特定することができる。
そして、防滑性が減衰した床材を新しい床材に更新することができる(この場合、タイルタイプの床材の場合は、防滑性が減衰した床材を部分的に更新することができる)ため、常に十分な防滑性のある床面を提供することができ、店舗、公共施設、マンションの通路等の安全性を維持することができる。
【0017】
この場合において、特定の波長の光を照射すると、照射した光と異なる特定の波長の可視光を出光する添加剤としては、紫外線(ブラックライト)を照射すると蛍光を出光する無機系又は有機機系の顔料又は染料等が知られるが、成形時の熱履歴による劣化等を考慮すると無機系顔料が好適に使用できる。
【0018】
紫外線(ブラックライト)を照射すると蛍光を出光する物質としては、蛍石(主成分:フッ化カルシウム)、方解石(主成分:炭酸カルシウム)、石膏(主成分:硫酸カルシウム)、燐灰ウラン石(化学組成:Ca(UO(PO・10−12HO)、燐灰石(化学組成:Ca(PO(F,Cl,OH))、灰重石(化学組成:タングステン酸カルシウム)、ジルコン(化学組成:ZrSiO)、玉滴石(オパールの一種)等が知られており、これらの微粉砕物又は精製処理物の一種又は二種以上の混合物を無機系顔料として好適に使用できる。
【0019】
床材には、必要に応じて、凹凸を形成及び/又は骨材を散在固定した表面層と、裏打ち層とを備えた床材を用いることができる。
さらに、表面層と裏打ち層との間に、寸法精度や切裂き強度を保持するためのガラス繊維補強層、床材の全体の厚みを調整するための厚み調整層等の中間層を備えるようにすることもできる。
【0020】
ここで、床材の表面層は、1層で構成するほか、上層及び下層の2層又は3層以上で構成することもでき、2層又は3層以上で構成する場合には、各層間での色調や模様の調和をとるようにしておくことが望ましい。色調や模様の調和がとれていないと、表面層に凹凸を形成した床材の場合、表面層の上層が摩滅すると、下層の色相や模様が表面に現れることになり、美観が損なわれることになる。
【0021】
床材の表面層を上層と下層の2層で構成する場合、上層の厚みは、適宜設定することができ、設定した上層の厚みによって表面層がどの程度摩滅したか、つまり摩滅量を判定することもできる。通常、防滑性を向上させるために形成させるエンボス加工や骨材による表面の凹凸は0.1〜1mm程度であるので、上層の厚みは0.05〜0.7mm程度が好ましい。上層の厚みは、表面の凹凸が摩滅して減少しても防滑性が保持できる程度、つまり表面の凹凸の高低差の1/2〜2/3程度が好ましい。
【0022】
そして、表面層を上層及び下層の2層又は3層以上で構成する場合には、当該表面層を、特定の波長の光を照射すると、照射した光と異なる特定の波長の可視光を出光する添加剤を含有した上層と、前記添加剤を含有しない上層の下に積層した下層とで構成することができる。
この場合、上層及び下層は、例えば、以下の構成とすることができる。
上層:表面の保護層(ウレタン樹脂等の透明合成樹脂塗料層)に蛍光を出光する顔料(又は染料)を添加、又は多層押出による着色意匠層に蛍光を出光する顔料(又は染料)を添加する。
また、この上層は、2層以上の複数層で形成してもよい。例えば、上層を上層(上層)と上層(下層)からなる2層構造で形成して、上層(上層)の厚みを0.1mmとして蛍光を出光する顔料(又は染料)(特定波長の光を照射したときに出光する光の波長を波長Aとする。)を含有させ、上層(下層)の厚みを0.1mmとして、波長Aとは異なる波長の蛍光を出光する顔料(又は染料)(同じく出光する光の波長を波長Bとする。)を含有させた場合は、以下のように床材の摩滅量と安全性を判定することができる。
つまり、表面層の摩滅量が0.1mm未満のときに、特定波長の光を床材表面に照射すると、波長Aの光が出光して床材の防滑性が充分で、安全であることが判定できる。また、摩滅量が0.1mmを超えて0.2mm未満であるときは、特定波長の光を床材表面に照射すると、波長Aの光は出光せず、波長Bの光が出光して床材表面の摩滅が進行して床材の交換時期が近いことがわかる。さらに、表面層の摩滅が0.2mmを超えると、特定波長の光を床材表面に照射しても波長A及び波長Bのいずれの光も出光せず、表面層が防滑性を保持できない程度に摩滅し、直ちに床材を交換しなければならないことを示す。 下層:上記と同一の材料及び製法で、蛍光を出光する顔料(又は染料)を添加しない(ただし、上層とは異なる蛍光を出光する顔料(又は染料)を添加することを排除しない。)。
これにより、前記照射した光と異なる特定の波長の可視光の出光があれば、上層が摩滅していないと判定し、一方、出光が少なかったり、出光しなくなれば、上層が摩滅したと判定することができる。
【0023】
また、表面層を、特定の波長の光を照射すると、照射した光と異なる特定の波長の可視光を出光する添加剤を含有しない上層と、前記添加剤を含有した上層の下に積層した下層とで構成することができる。
この場合、上層及び下層は、例えば、以下の構成とすることができる。
上層:下層の蛍光を出光する顔料(又は染料)を励起する波長の光線を遮蔽する必要がある。当該波長の光線を遮蔽する顔料、染料、紫外線吸収剤等を配合することが望ましい。下層の意匠を外観としてみせたい場合は、上層を紫外線吸収剤を3重量部程度含有させた透明層とすることもできる。
なお、上層には蛍光を出光する顔料(又は染料)を添加しない(ただし、下層とは異なる蛍光を出光する顔料(又は染料)を添加することを排除しない。)。
下層:蛍光を出光する顔料(又は染料)を添加する。上層が透明な層である場合は着色した意匠層とすることができる。なお、下層を多層構成とし、下層の最も表面側の層に蛍光を出光する顔料(又は染料)を添加してもよい。
これにより、前記照射した光と異なる特定の波長の可視光の出光がないならば、上層が摩滅していないと判定し、一方、出光があれば、上層が摩滅したと判定することができる。
【実施例1】
【0024】
図1に示すように、表面層1の下層用12の塩化ビニル樹脂及び裏打ち層2用の塩化ビニル樹脂を共押出成形で二層に成形する(表面層1の下層12の厚み:1mm、裏打ち層1mm、以下の実施例2〜6も同じ)。このとき、成形体が冷却されて完全固化する前にエンボスロールで表面層1の下層12側に凹凸(段差0.5mm、実施例2〜5も同じ)を形成する。そして、蛍光を出光する無機系顔料を1重量部添加したウレタン系塗料を下層12の上に塗布して加熱硬化させて表面層1の上層11(表面層1の上層11の厚み:0.2mm、実施例2〜6も同じ)を形成する。
この床材Fは、照射した光と異なる特定の波長の可視光の出光があれば、上層11が摩滅していないと判定し、一方、出光が少なかったり、出光しなくなれば、上層11が摩滅したと判定することができる。
【実施例2】
【0025】
図2に示すように、表面層1の下層用12の蛍光を出光する無機系顔料を1重量部添加した塩化ビニル樹脂及び裏打ち層2用の塩化ビニル樹脂を共押出成形で二層に成形する。このとき、成形体が冷却されて完全固化する前にエンボスロールで表面層1の下層12側に凹凸を形成する。そして、(隠蔽性のある)顔料を1重量部添加したウレタン系塗料を下層12の上に塗布して加熱硬化させて表面層1の上層11を形成する。
この床材Fは、照射した光と異なる特定の波長の可視光の出光がないならば、上層11が摩滅していないと判定し、一方、出光があれば、上層11が摩滅したと判定することができる(実施例3〜6も同じ)。
【実施例3】
【0026】
蛍光を出光する無機系顔料を1重量部添加した塩化ビニル樹脂のペレットを裏打ち層(塩化ビニル製)上に散布し、加熱プレス(エンボス加工)により凹凸を形成しながら一体化させることで表面層の下層を形成し、その後、紫外線吸収剤を3重量部添加したウレタン系塗料を下層の上に塗布して加熱硬化させて表面層の上層を形成する。
【実施例4】
【0027】
表面層の下層用の塩化ビニル樹脂及び裏打ち層用の塩化ビニル樹脂を共押出成形で二層に成形する。このとき、成形体が冷却されて完全固化する前にエンボスロールで表面層の下層側に凹凸を形成する。そして、蛍光を出光する有機系顔料を1重量部添加したウレタン系塗料を下層の上に塗布して加熱硬化させて表面層の上層を形成する。
【実施例5】
【0028】
蛍光を出光する無機系顔料を1重量部を含有した表面層の上層用の塩化ビニル樹脂、下層用の塩化ビニル樹脂及び裏打ち層用の塩化ビニル樹脂を共押出成形で三層に成形し、上層側にエンボスロールによって凹凸を形成する。
【実施例6】
【0029】
実施例2の構成で押出成形したもの(エンボスロールによる凹凸はなし)の表面に、実施例2のウレタン塗料に平均粒子径0.2mmのガラスビーズ13を0.5重量部を添加して、上層11を形成する(図3参照)。
【0030】
以上、本発明の床材の表面層の摩滅の判定方法について、複数の実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の床材の表面層の摩滅の判定方法は、広い範囲の床面に適用される床材の表面層の摩滅を簡易に、かつ、高精度に判定できるという特性を有していることから、店舗、公共施設、マンションの通路等の床面に適用される床材の表面層の摩滅の判定の用途に好適に用いることができるほか、広く一般の床材の表面層の摩滅の判定の用途にも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の床材の表面層の摩滅の判定方法に使用する床材の実施例1を示す説明図である。
【図2】本発明の床材の表面層の摩滅の判定方法に使用する床材の実施例2を示す説明図である。
【図3】本発明の床材の表面層の摩滅の判定方法に使用する床材の実施例6を示す説明図である。
【符号の説明】
【0033】
F 床材
1 表面層
11 上層
12 下層
13 ガラスビーズ
2 裏打ち層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の波長の光を照射すると、照射した光と異なる特定の波長の可視光を出光する添加剤を表面層に含有した床材を敷設し、該床材の表面に前記特定の波長の光を照射し、前記照射した光と異なる特定の波長の可視光の出光を検知することによって、前記床材の表面層の摩滅を判定することを特徴とする床材の表面層の摩滅の判定方法。
【請求項2】
凹凸を形成及び/又は骨材を散在固定した表面層と、裏打ち層とを備えた床材を敷設することを特徴とする請求項1記載の床材の表面層の摩滅の判定方法。
【請求項3】
表面層が、特定の波長の光を照射すると、照射した光と異なる特定の波長の可視光を出光する添加剤を含有した上層と、前記添加剤を含有しない上層の下に積層した下層とからなる床材を敷設することを特徴とする請求項2記載の床材の表面層の摩滅の判定方法。
【請求項4】
表面層が、特定の波長の光を照射すると、照射した光と異なる特定の波長の可視光を出光する添加剤を含有しない上層と、前記添加剤を含有した上層の下に積層した下層とからなる床材を敷設することを特徴とする請求項2記載の床材の表面層の摩滅の判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−84834(P2009−84834A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−253978(P2007−253978)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000108719)タキロン株式会社 (421)
【Fターム(参考)】