説明

床材

【課題】 本発明は、光沢性の高い高光沢部と光沢性の低い低光沢部を有し、且つ長期間の使用によって前記高光沢部及び低光沢部の外観が変化しにくい床材を提供する。
【解決手段】 本発明の床材1は、床材本体4の表面に凸部7と凹部8が形成され、前記凸部7の天面7aが粗面状に形成され、且つ前記凹部8の底面8aが鏡面状に形成されている。床材本体4の表面にメカニカルエンボス加工を施すことによって、前記凸部7の天面7aが、粗面状に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光沢差の凹凸模様が表面に形成された床材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンボス加工を施すことによって、表面に凹凸模様が形成された床材は公知である。
例えば、特許文献1には、化粧材表面に形成された複数の凹陥部の底面が微細凹凸形状に形成され、該微細凹凸形状は、少なくとも2種類の互いに異なる光沢差を有するエンボス化粧材が開示されている。
上記エンボス化粧材は、凹陥部の底面の光沢が抑えられ、更に、凹陥部の底面に光沢差を有するので、質感があり、特に、木目柄を現す場合に効果的である。
【特許文献1】特開平11−254898号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1の化粧材は、床材として使用した場合、全体的な光沢性が徐々に消失し、経時的に化粧材全体が艶消し調の外観となるという問題点がある。
具体的には、床材の表面は、足裏などで踏まれるので、微細な傷が付きやすい。床材の表面に凹凸が形成されている場合、その凸部の天面は突出部分であるため、凸部の天面に足裏などが接触する一方で、その凹部の底面は凹んだ部分であるため、凹部の底面には足裏などが接触し難い。このため、凹凸が表面に形成されている床材を長期間使用していると、凸部の表面は次第に傷が付いて粗面化していくが、凹部の底面は余り変わらない。
従って、特許文献1のように、凹陥部の底面に微細凹凸形状を形成している床材を長期間使用すると、凹陥部の底面は余り変わらないが、凸部の天面の光沢が徐々に消失していくため、床材の表面全体が粗面化して艶消し調の外観に変わっていく。このため、使用当初の床材の外観を維持できず、床材の外観がくすんだ感じに見えるという問題点がある。
【0004】
本発明の目的は、光沢性の高い高光沢部と光沢性の低い低光沢部を有し、且つ使用によって前記高光沢部及び低光沢部の外観が変化しにくい床材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の床材は、床材本体の表面に凸部と凹部が形成され、前記凸部の天面が粗面状に形成され、且つ前記凹部の底面が鏡面状に形成されていることを特徴とする。
【0006】
上記床材は、凸部の天面が粗面状に形成されているので、凸部の天面は光沢性が低い(低光沢部)。また、上記床材は、凹部の底面が鏡面状に形成されているので、凹部の底面は光沢性が高い(高光沢部)。
かかる低光沢部と高光沢部を有する上記床材は、両部の光沢差によって、凸部及び凹部で形作られる模様が鮮明に現われる。このため、上記床材は、模様がくっきりと見える良好な外観を有する。
さらに、上記床材は、凸部と凹部の高低差によって、その境界部分にコントラストが生じるため、上記光沢差がより強調される。特に、凹部の縁周辺は、凸部の影で暗く見えるのに対して、凹部の中央部は、光の反射によって明るく見えるため、光沢差がより強調される。
【0007】
さらに、上記床材を長期間使用した場合には、凸部の天面が傷付く一方で、凹部の底面は傷付き難い。
上記床材は、凸部の天面が粗面状に形成されているので、長期の使用によって凸部の天面が傷付いても、凸部の天面は光沢が低いままである。一方、上記床材は、傷付き難い凹部の底面が鏡面状に形成されているので、長期間使用しても、凹部の底面の光沢性を維持できる。
従って、上記床材は、長期間使用しても外観が変化し難く、使用当初と同様に、模様がくっきりと見える良好な外観を長期間維持できる。
【0008】
好ましい床材は、上記凸部の天面の表面粗さ(Ra)が5μm〜15μmであり、凹部の底面の表面粗さ(Ra)が6μm以下である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の床材は、凸部の天面が低光沢部となり且つ凹部の底面が高光沢部となるため、両部の光沢差によって、凸部及び凹部で形作られる模様が鮮明に現われる。本発明の床材は、長期間使用しても、前記光沢差による鮮明な模様が消失し難いので、長期間に亘って、使用当初の外観を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、本発明の実施形態を図面を参照しつつ詳述する。
図1は、本発明の床材の一実施形態の部分断面図である。なお、各図において、実際の寸法とは異なっていることに留意されたい。
【0011】
図1に於いて、1は、床材本体4と、該床材本体4の表面に形成された凸部7及び凹部8と、を有する床材を示す。
凸部7及び凹部8は、床材本体4の表面に、例えばメカニカルエンボス加工を施すことによって形成されている。
この凸部7の天面7a(突出した頂となっている面)は、粗面状に形成されており、凹部8の底面8a(凹んだ底となっている面)は、鏡面状に形成されている。
以下、各構成要素毎に分説しつつ、本発明の床材1について説明する。
【0012】
床材本体4は、床材として機能し得るシート状物であって表面に凹凸模様を付与できるシート状物であれば特に限定されず、従来公知の構成を採用できる。
床材本体4は、通常、基材層と、基材層の表面に設けられる樹脂層と、を有する。
具体的には、床材本体4は、例えば、基材層2と、該基材層2の表面側に設けられた樹脂層3と、該樹脂層3の表面に設けられた印刷層5と、該印刷層5の表面に設けられた保護層6と、がこの順で積層された積層体からなる。
【0013】
上記基材層2は、床材1の寸法安定性を付与し、下地に対する密着性を向上させる目的等で設けられる層である。
基材層2としては、例えば、織布や不織布などの布類;難燃紙などの紙類;合成樹脂シート;木質板、石膏ボードなどの無機質板、金属板などの板類;などが挙げられる。
織布や不織布などの布類の材質は、特に限定されず、セルロース系繊維、ポリエステル系繊維などの合成樹脂繊維;ガラス繊維などの無機繊維;ジュートなどの天然繊維などが挙げられる。
【0014】
基材層2は、1層でも良いし、複層でもよい。
好ましくは、図1に示すように、基材層2は複層で構成される。
好ましい基材層2は、第1基材21と第2基材22を有する。この第1基材21と第2基材22の間には、両者を接合するための接着層23が設けられている。
第1基材21及び第2基材22は、上記で例示した布類、紙類などを適宜選択して用いることができる。
【0015】
第1基材21としては、熱的安定性及び機械的安定性に優れ、柔軟性のある織布又は不織布を用いることが好ましい。例えば、第1基材21としては、ガラス繊維などの無機繊維、ポリエステル系繊維などの合成樹脂繊維などからなる不織布又は織布を用いることができる。かかる第1基材21は、主として床材1の寸法安定性に寄与する。また、ガラス繊維不織布又はガラス繊維織布は強度に優れるので、ガラス繊維不織布又はガラス繊維織布を第1基材21として用いることにより、エンボス版の押圧時に樹脂層3の裏面が支えられ、シャープな凸部7及び凹部8を形成できる。
【0016】
一方、第2基材22としては、熱収縮性シートを用いることが好ましい。該熱収縮性シートとは、樹脂層3などを硬化させるために加熱した際に、この加熱温度において収縮しうるシートを言う。該熱収縮の方向性は、熱収縮性シートの面内の2軸方向(面内の一方向及び該一方向に対して面内で直交する方向)である。
該熱収縮性シートとしては、例えば、樹脂層3などの加熱温度において熱収縮し得る合成繊維を用いた不織布又は織布、樹脂層3などの加熱温度において熱収縮し得る合成樹脂シートなどを用いることができる。中でも、熱収縮性シートとしては、熱収縮し得る合成繊維を用いた熱収縮性不織布又は織布が好ましい。かかる第2基材22は、樹脂層3などを硬化させる際の熱によって、面内の中心側に向かって熱収縮する。該第2基材22の収縮力によって、硬化時に樹脂層3が収縮する収縮力を打ち消すことができ、樹脂層3の上反りを規制できる。従って、製造時及び経時的にも反りが生じ難く、寸法安定性に優れた平坦状の床材1を提供できる。
【0017】
上記接着層23は、第1基材21及び第2基材22を接合し、一体化できる接着剤としての機能を有していれば特に限定されず、例えば、従来公知の樹脂を用いることができる。該接着層23の樹脂としては、ポリエチレンを用いることが好ましい。ポリエチレンは、比較的柔軟であり、第1基材21と第2基材22のズレ防止効果に優れているからである。
【0018】
なお、基材層2は、上記第1基材21及び第2基材22を有する複層構造に限定されず、様々に変更できる。例えば、上記第2基材22の裏面に、更に、バッキング層が設けられていてもよい(図示せず)。該バッキング層としては、特に限定されず、例えば、塩化ビニル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−アクリル酢酸エチル共重合樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン樹脂等の合成樹脂、オレフィン系等の熱可塑性エラストマー、アクリロニトリル−ブタンジエンゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、スチレン−ブタンジエンゴムなどのゴム系などのシート若しくは発泡シート又はこれらの積層シートなどを例示できる。
【0019】
樹脂層3は、発泡されていてもよいし、無発泡でもよい。樹脂層3を構成する樹脂成分としては、塩化ビニル系樹脂(PVC);エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレンとα−オレフィンの共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸アルキル共重合体などのエチレン共重合体;ポリプロピレン、ポリエチレンなどのオレフィン系樹脂;アクリル系樹脂;6,6ナイロンなどのポリアミド系樹脂などの樹脂(エラストマーを含む)の1種単独で、又は2種以上の混合物などを例示できる。
中でも、樹脂層3の樹脂成分としては、塩化ビニル系樹脂が好ましい。該塩化ビニル系樹脂は、ペーストタイプでもよいし、サスペンションタイプでもよい。
【0020】
樹脂層3を発泡させる場合には、樹脂層3を構成する樹脂組成物に各種発泡剤が配合される。該発泡剤としては、特に限定されず、アゾ化合物、ヒドラジド化合物、ニトロソ化合物などの化学発泡剤;炭酸ガス、ブタンガス、フロンガスなどのガス発泡剤;などを用いることができる。なお、化学発泡剤には、必要に応じて、酸化亜鉛などの発泡助剤を添加してもよい。
また、樹脂層3を構成する樹脂組成物には、樹脂の種類に応じて、各種添加剤を配合してもよい。該添加剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの金属水和酸化物などの難燃剤;炭酸カルシウム、酸化カルシウム、炭酸バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、クレー、タルク、マイカ等の充填材;ジ−2−エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート、ジヘキシルフタレート、ジイソノニルフタレート、リン酸エステル系、塩素化パラフィン、トリメリット酸エステルなどの可塑剤;ステアリン酸カルシウム、無機塩、有機スズ化合物などの安定剤;滑剤;酸化防止剤;顔料などの着色剤;などが挙げられる。
【0021】
樹脂層3を発泡させる場合、その発泡倍率は、特に限定されないが、好ましくは2倍〜10倍であり、より好ましくは3倍〜6倍である。樹脂層3の発泡倍率が余りに低いと、床材1のクッション性が低下し、一方、樹脂層3の発泡倍率が余りに高いと、キャスター走行性が悪く、荷重による凹みの復元性が悪くなるからである。
【0022】
また、樹脂層3の厚みは、特に限定されないが、樹脂層3が発泡されている場合の厚みは、好ましくは1.0mm〜6.0mmであり、より好ましくは1.2mm〜3.5mmである。樹脂層3の厚みが余りに薄いと、比較的深い凹部8を形成することが困難となり、一方、樹脂層3の厚みが余りに厚いと、キャスター走行性が悪くなるからである。
なお、樹脂層3が無発泡の場合の樹脂層3の厚みは、上記発泡された樹脂層3の厚みよりも、その発泡倍率に相当する割合で薄くなる。
【0023】
印刷層5は、所望のデザインが印刷された層である。
印刷層5は、樹脂層3の表面に直接インキを印刷して形成してもよいし、別途形成した印刷シートを樹脂層3に貼り合わせてもよいし、別途形成した印刷転写シートの印刷部を樹脂層3の表面に転写してもよい。
印刷層5は、発泡されていてもよいし、無発泡でもよい。印刷層5を発泡させる場合、その発泡倍率は、好ましくは1.2倍〜3.0倍であり、より好ましくは1.8倍〜2.5倍である。印刷層5の発泡倍率が余りに低いと、実質的に無発泡状態と変わりがなく、一方、印刷層5の発泡倍率が余りに高いと、摩耗し易くなる上、シャープな凸部7及び凹部8の形成が困難となるからである。
【0024】
また、印刷層5の厚みは、特に限定されないが、無発泡の場合には、好ましくは0.03mm〜0.06mmである。
【0025】
保護層6は、印刷層5の表面を保護するための薄層である。該保護層6は、裏面に設けられた印刷層5を透視するため、透光性を有する(透明又は半透明)。保護層6は、無発泡であることが好ましい。保護層6が発泡されていると、保護層6の表面の光沢性が低下するからである。
保護層6を構成する樹脂成分としては、特に限定されず、塩化ビニル系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレンとα−オレフィンの共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸アルキル共重合体などのエチレン共重合体;ポリプロピレン、ポリエチレンなどのオレフィン系樹脂;アクリル系樹脂;6,6ナイロンなどのポリアミド系樹脂などの樹脂(エラストマーを含む)の1種単独で、又は2種以上の混合物などを用いることができる。保護層6は、上記樹脂成分を含む樹脂組成物を、公知の印刷法又はコーティング法によって印刷層5の表面に塗工することにより形成できる。
【0026】
保護層6の厚みは、特に限定されないが、好ましくは150μm〜200μmである。保護層6の厚みが余りに薄いと、印刷層5の表面保護機能を十分に発揮せず、一方、保護層6の厚みが余りに厚いと、床材1の触感が硬くなるからである。
なお、本発明の床材1は、床材本体4が、基材層2、樹脂層3、印刷層5及び保護層6がこの順で積層された積層体に限られず、様々な態様に変更できる。例えば、樹脂層3の裏面に印刷層5を設けても良い。この場合、表面側から印刷層5を視認するため、前記樹脂層3は透光性を有するように形成される。また、床材本体1は、保護層6を有しない積層体でもよい。
【0027】
凸部7及び凹部8は、例えば、床材本体4の表面にメカニカルエンボス版を押圧することにより形成されている。凸部7及び凹部8の平面視形状は、特に限定されず、任意である。本発明の床材1は、凸部7と凹部8の光沢差によって、凸部7及び凹部8で形作られる模様が鮮明に現われる。このため、床材1のデザインを考慮して、凸部7及び凹部8の平面視形状は任意に形成される。
凸部7の平面視形状は、足裏などによって床材1の表面に荷重が加わった際、該足裏が凹部8の底面8aに接触しないように、荷重を支えられる幅を有する形状が好ましい。
なお、上記層構成からなる床材本体4の場合には、保護層6の表面に凸部7及び凹部8に起因した凹凸模様が形成されている。
【0028】
上記凸部7と凹部8の高低差(凸部7の天面7aから凹部8の底面8aまでの深さ)は、好ましくは30μm〜150μmであり、より好ましくは50μm〜100μmである。この高低差が小さすぎると、凹部8が歩行やキャスター走行などにより傷付き易くなると共に光沢差の強調効果が低下する。また、この高低差が大きすぎると、歩行に支障が生じたり、キャスター走行性が低下する虞があり、さらに、光の向きによっては、凸部7に起因する影が凹部8全体に映り易く、その結果、光沢差による模様の強調効果が低下する場合があるからである。
また、床材本体4の表面における凸部7の占める面積と凹部8の占める面積の比は、好ましくは10:90〜90:10であり、より好ましくは30:70〜70:30である。凹部8の占める面積が広すぎると凹部8が傷付き易くなり、一方、狭すぎると高光沢部の範囲が狭くなりすぎるからである。
【0029】
凸部7の天面7aは、粗面状に形成されている。凸部7の天面7aが粗面状に形成されているとは、天面7aの表面自体が微細な凹凸形状に形成されている場合、及び、天面7aの表面に微粒子が添着されている場合を含む。このように凸部7の天面7aが、粗面状に形成されていることにより、凸部7の天面7aにおいて光が乱反射し、凸部7の天面7aは光沢性が低くなっている。従って、この凸部7の天面7aは、床材1の低光沢部を構成している。
凸部7の天面7aの表面粗さは、特に限定されないが、粗過ぎると光の反射方向によっては高い光沢を有するように見える場合があり、一方、細かすぎると鏡面状と殆ど変わらなくなる場合がある。このような観点から、凸部7の天面7aの表面粗さ(JIS B 0601に準拠した中心線平均粗さ(Ra))は、好ましくは5μm〜15μmであり、より好ましくは6μm〜10μmである。もっとも、凸部7の天面7aの表面粗さ(Ra)は、15μmを超えていてもよい。
【0030】
一方、凹部8の底面8aは、鏡面状に形成されている。凹部8の底面8aが鏡面状に形成されているとは、底面8aの表面に実質的に凹凸形状を有さず、斜め方向から底面8aに入射した光の殆どが、入射角とほぼ同じ反射角で反射しうる状態を含む。このように凹部8の底面8aが、鏡面状に形成されていることにより、凹部8の底面8aにおいて光が良好に反射して、凹部8の底面8aは光沢性が高くなっている。従って、この凹部8の底面8aは、床材1の高光沢部を構成している。
なお、凹部8の底面8aは、鏡面状に形成されているが、現実的には極めて微細なレベルで凹凸を有する。該凹部8の底面8aの表面粗さ(JIS B 0601に準拠した中心線平均粗さ(Ra))は、6μm以下であり、好ましくは1μm〜6μmであり、より好ましくは2μm〜4μmである。
また、凸部7の天面7aの表面粗さ(Ra)と凹部8の底面8aの表面粗さ(Ra)の差(凸部7のRa−凹部8のRa)は、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上である。
【0031】
上記床材1は、例えば、下記の方法に従って製造することができる。
まず、床材本体4の表面に凹凸模様を形成するためのエンボス版の作製から説明する。
エンボス版は、ロール状でもよいし、平板状でもよい。通常、連続生産に適するので、エンボス版としては、エンボスロールが用いられる。
図2は、エンボス版の作製工程の手順を表した参考図である。
同図(a)において、91は、エンボス版を示す。エンボス版は、通常、鉄、銅、合金などの金属製である。また、エンボス版91としてエンボスロールを用いる場合には、金属製の筒状体である。
【0032】
該エンボス版91の表面は、研磨加工によって、鏡面状に仕上げられる(同図(b))。
次に、エンボス版91の表面に、レジスト液92を塗工し、その上からマスクパターン93を貼り付ける(同図(c))。マスクパターン93には、形成したい凸部及び凹部に対応した画像が印刷されている。
【0033】
マスクパターン93の上から、紫外線照射などの手段で焼き付けて現像を行う(同図(d))。該現像によって、エンボス版91の表面にレジスト感光膜94が形成される。
次に、レジスト感光膜94の上から腐食液95を流し、レジスト感光膜94で被覆されていないエンボス版91の表面を浸食する(同図(e))。
腐食液95をきれいに除去した後、エンボス版91の表面に、マスクパターン93に従った凹凸形状が形成される。なお、エンボス版91の表面に形成された凹状部は、床材1の凸部7に対応し、エンボス版91の表面に形成された凸状部は、床材1の凹部8に対応する。
【0034】
次に、レジスト感光膜94がエンボス版91の表面に付着している状態で、エンボス版91の表面からサンドブラスト加工を行う(同図(f))。該サンドブラスト加工によって、エンボス版91の凹状部の底面91aは、粗面状となる。なお、エンボス版91の凸状部の表面91bは、レジスト感光膜94で被覆されているので、サンドブラスト加工をしても、エンボス版91の凸状部の表面91bは、鏡面状のままである。
最後に、レジスト感光膜94を除去することにより、本発明の床材形成用のエンボス版を得ることができる(同図(g))。
【0035】
一つの実施形態においては、床材1は、長尺状に形成される。なお、長尺状とは、一方向に於ける長さが他方向に比して十分に長い形状を言い、例えば、一方向に於ける長さが他方向に於ける長さの10倍以上である。
【0036】
図3は、長尺状の床材の製造方法の各工程を表した参考図である。
まず、長尺基材29の上に、樹脂層を形成する樹脂組成物39を塗工する。長尺基材29としては、例えば、長尺状のガラス繊維不織布と長尺状の熱収縮性不織布の積層体を用いることができる。樹脂組成物39としては、例えば、発泡剤を含有し、主成分として例えばペースト塩化ビニルなどを含む組成物を用いることができる。
上記樹脂組成物39は、コータ11などを用いて平滑化される。
次に、これをヒーター12などの加熱装置に通して、樹脂組成物39をプリゲル化し、樹脂組成物39を安定化させる。
【0037】
上記プリゲル化した樹脂組成物39の表面に、所望のデザインが印刷によって表された印刷シート59を貼り合わせる。
上記印刷シート59は、図3に示すように、供給ロール13で送出され、離型紙を剥離した後、樹脂組成物39の表面に貼り合わされる。なお、剥離された離型紙は、回収ロール14に巻き取られる。
樹脂組成物39は、完全にゲル化していないため(プリゲル)、印刷シート59を樹脂組成物39の表面に容易に接着させることができる。
次に、印刷シート59の表面に、保護層を形成する樹脂組成物69を塗工する。該樹脂組成物69としては、主成分として例えばペースト塩化ビニルなどを含む組成物を用いることができる。前記樹脂組成物69は、コータ15などを用いて平滑化される。
【0038】
次に、前記樹脂組成物39などが積層された長尺基材29を、オーブン16などの加熱装置に通し、前記樹脂組成物39,69を完全にゲル化させると共に、樹脂組成物39を発泡させる。樹脂組成物39などが積層された長尺基材29の加熱温度及び時間は、発泡剤及び樹脂の種類などに応じて適宜設定されるが、通常、160〜220℃程度であり、加熱時間は、2〜5分程度である。
このようにして、長尺基材29上に、樹脂層、印刷層及び保護層が積層された床材本体長尺物19を得ることができる。
【0039】
前記床材本体長尺物19の保護層の表面に、メカニカルエンボス加工を施すことによって凸部及び凹部を形成する。メカニカルエンボス加工は、回転するエンボスロールの押圧又はエンボス板の押圧によって実施できる。一つの実施形態では、床材の形成に適していることから、エンボスロール17が用いられる。
エンボスロール17を押圧する際、鮮明な凹凸状を付与するため、床材本体長尺物19の表面部を少し加熱することが好ましい。
例えば、加熱されたエンボスロール17を用いて床材本体長尺物19の表面を押圧してもよいし、或いは、エンボスロール17にて押圧する直前に、別途の加熱装置を用いて、床材本体長尺物19の表面部を加熱してもよい。
該加熱温度は、床材本体を構成する樹脂成分に応じて適宜設定されるが、通常、130〜180℃程度である。
【0040】
エンボス加工によって表面にシャープな凸部及び凹部が形成される。このようにして得られた長尺状の床材は、通常、ロール18に巻き取られ、保管・搬送に供される。
【0041】
本発明の床材1は、凸部7の天面7aが低光沢部となり、且つ凹部8の底面8aが高光沢部となる。この両部の光沢差によって、上記床材1は、凸部7及び凹部8で形作られる模様が鮮明に現われる。従って、上記床材1は、模様がくっきりと見える良好な外観を有する。さらに、上記床材は、凸部7と凹部8の高低差によって、その境界部分にコントラストが生じるため、上記光沢差がより強調される。特に、凹部8の縁周辺は、凸部7に起因する影が映るために暗く見えるのに対して、凹部8の中央部は、光の反射によって明るく見えるため、上記光沢差がより強調され得る。
さらに、上記床材1を長期間使用した場合、凸部7の天面7aは傷付くが、凹部8の底面8aは傷付き難い。
上記床材1は、凸部7の天面7aが粗面状に形成されているので、長期の使用によって凸部7の天面7aが傷付いても、凸部7の天面7aは低光沢部のままである。一方、上記床材1は、傷付き難い凹部8の底面8aが鏡面状に形成されているので、長期間使用しても、凹部8の底面8aは高光沢部を維持できる。
従って、上記床材1は、長期間使用しても外観が変化し難く、使用当初の床材と同様に、模様がくっきりと見える良好な外観を長期間維持できる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例を示し、本発明を更に詳述する。ただし、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0043】
120g/mのガラスマット基材(オリベスト社製、商品名「WXT100C9」)の上に、下記樹脂組成物Aを塗工し、ナイフコータで厚み0.4mmとなるように平均化した。
次に、ヒーターを用いて、塗工した樹脂組成物Aの表面を、160〜180℃で1分間加熱し、樹脂組成物Aをプリゲル化した。
【0044】
他方、離型紙の上にインキをグラビア印刷することにより、離型紙の上に所望の絵柄が表された印刷シートを形成した。
【0045】
上記印刷シートを離型紙から剥離し、これを上記プリゲル化させた樹脂組成物Aの上に貼り合わせた。
さらに、この印刷シートの上に、下記樹脂組成物Bを塗工し、ナイフコータで厚み0.2mmとなるように平均化した。
次に、上記基材、樹脂組成物A、印刷シート及び樹脂組成物Bの積層体を、オーブンを用いて、180〜200℃で5分間加熱することにより、樹脂組成物A及びBを完全にゲル化させ、樹脂組成物Aを発泡させた(発泡倍率4倍)。
このようにして、基材、樹脂層、印刷層及び保護層が積層された床材本体を形成した。
【0046】
他方、サンドブラスト加工によって凹状部の底面が粗面状に形成され、且つ凸状部の表面が鏡面状に形成されたエンボスロールを準備した。
上記床材本体の表面を、ヒーターにて160℃に加熱した直後、上記エンボスロール(エンボスロールの表面温度は30℃〜40℃)を用い、上記床材本体の保護層の上を押圧して、メカニカルエンボス加工を行った。
得られた床材の表面には、エンボスロールに対応した凸部及び凹部(凹部の深さ0.05〜0.08mm)が形成されていた。
床材の表面を観察すると、床材の凸部の模様が艶消し状に見え、床材の凹部の模様が光っていた。
この床材の凸部及び凹部の表面粗さを測定したところ、凸部のRaは、10μmであり、凹部のRaは、2μmであった。
なお、凸部及び凹部の表面粗さ(Ra)は、JIS B 0601に準拠した方法で測定した。
【0047】
(樹脂組成物A)
PVC樹脂(ペーストレジン、平均重合度1200)…100質量部。
DOP…46質量部。
充填材…34質量部。
発泡剤…2.6質量部。
安定剤…0.42質量部。
その他…2.1質量部。
【0048】
(樹脂組成物B)
PVC樹脂(ペーストレジン、平均重合度1200)…100質量部。
DOP…60質量部。
安定剤…2.4質量部。
その他…0.45質量部。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の床材の一実施形態を示す一部省略断面図。
【図2】エンボス版の作製工程を示す参考図。
【図3】床材の製造方法の一実施形態を示す参考図。
【符号の説明】
【0050】
1…床材、2…基材層、21…第1基材、22…第2基材、3…樹脂層、4…床材本体、5…印刷層、6…保護層、7…凸部、7a…凸部の天面、8…凹部、8a…凹部の底面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床材本体の表面に、凸部と凹部が形成された床材であって、
前記凸部の天面が粗面状に形成され、且つ前記凹部の底面が鏡面状に形成されていることを特徴とする床材。
【請求項2】
前記凸部の天面の表面粗さ(Ra)が5μm〜15μmであり、凹部の底面の表面粗さ(Ra)が6μm以下である請求項1に記載の床材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−97169(P2009−97169A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−267510(P2007−267510)
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【出願人】(000222495)東リ株式会社 (94)
【Fターム(参考)】