説明

床材

【課題】冬季でも接触冷感を感じ難く、施工性及び使用性に配慮した本実加工が施された床材が得られるようにする。
【解決手段】化粧層2、表面補強層3、硬質発泡体層4及び裏面補強層5が順に積層一体化され、木口端面1aに雌雄実部10,14を有する本実加工が施された床仕上材1と、この床仕上材1の裏面に積層一体化された断熱層層20とを備えた床材Aで、化粧層2は表面に微細な凹凸部2aを有する樹脂化粧シート又は塗膜材からなり、表面及び裏面補強層3,5は、湿気硬化型樹脂又は反応型樹脂が充填された無機質繊維シートからなり、床仕上材1の木口端面1aに本実加工が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床材に関し、特に接触冷感を感じ難い床材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、遮音を目的として防音性能に優れるとともに、人が歩行しても「ふかふか」せずに歩行感のよい床材として、特許文献1に示されるものが提案されている。この特許文献1の床材は、硬質板状体を表面層とし、それに硬質発泡体及び軟質発泡体が積層された床材であって、上記硬質発泡体に長軸を略厚み方向に配向した気泡が形成されているものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−266545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、この特許文献1に示される床材をマンションのコンクリートスラブに直貼りした場合、表面の厚さ1〜5mmの硬質板状体が単板や合板であると、季節変動による湿気により、床材が変形する可能性がある。
【0005】
そして、硬質板状体として、樹脂板や繊維強化合成樹脂板を用いた場合は、単板や合板等のように季節変動による湿気により床材の変形は生じないものの、特に冬季に手や足で接触した場合、表面の硬さや冷たさ(いわゆる接触冷感)を感じるという問題があった。
【0006】
さらに、図6(a)に示すように、この特許文献1の床材Bに対し、従来の床材に適用されるのと同様の雌実部10及び雄実部14を有する本実加工を施した場合、雌実部10における雌実凸部12が発泡体で構成されることとなり、その雌実凸部12の強度は弱くなる。そのため、雌実部10に対し、隣接する床材Bの雄実部14を嵌合して両床材B,Bを施工した状態で、図6(b)に示すように、両床材B,B同士の接合部(雌実部10と雄実部14との嵌合部)付近を踏みつけたとき、雌実部10の雌実凸部12によって雄実部14を支持することが困難で、特に裏側(下側)の雌実凸部12が変形し易くなり、その結果、接合部に段差が発生するという問題があった。
【0007】
他方、発泡体基材の表面に化粧シートを積層一体化したいわゆるクッションフロアが上市されており、このクッションフロアは、冷たく冷えた状態においても、素手や素足で接触したときに冷感を感じ難いという特長がある。しかし、クッションフロアは床面表面に家具を置いたり、重いものを引きずったりすると、床面が傷付くという問題がある。
【0008】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、冬季でも接触冷感を感じ難く、施工性及び施工後の使用に配慮した本実加工を備えることのできる接触冷感を感じ難い床材が得られるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明では、表面側から裏面側に向かって化粧層、表面補強層、硬質発泡体層及び裏面補強層が順に積層一体化されてなり、木口端面に雌実部及び雄実部を有していて該雌実部及び雄実部が他の床材の雄実部及び雌実部に嵌合可能な本実加工が施されている床仕上材と、この床仕上材の裏面に積層一体化された断熱層とを備えた床材が対象である。
【0010】
そして、上記化粧層は、表面に微細な凹凸部を有する樹脂化粧シート又は塗膜材からなる。
【0011】
また、上記表面補強層及び裏面補強層は、湿気硬化性樹脂又は反応性樹脂が充填された無機質繊維シートからなることを特徴とする。
【0012】
この請求項1の発明では、床材における床仕上材は、硬質発泡体層の表裏両面側に、湿気硬化型樹脂又は反応型樹脂が充填された無機質繊維シートからなる表面補強層及び裏面補強層が積層一体化されたものであるので、季節変動による湿気により床材が変形し難い。
【0013】
また、床仕上材表面の化粧層が、表面に微細な凹凸部を有する樹脂化粧シート又は塗膜材からなるので、この表面の微細な凹凸部により、素足又は素手の接触面積が減ることなり、同じ基材を用いた床材であっても、特に冬季に手や足で接触したときに、接触冷感(表面の硬さや冷たさ)が感じ難くなる。
【0014】
また、床仕上材は、上記硬質発泡体からなる硬質発泡体層の表裏面側に、樹脂が充填された無機質繊維シートからなる表面補強層及び裏面補強層が積層一体化され、その床仕上材の木口端面に雌実部及び雄実部が設けられているので、その雌実部は雌実凸部の強度が増大したものとなる。そのため、隣接する床材同士を床仕上材の木口端面の雌雄実部で実接合して施工したとき、両床材同士の接合部(雌実部と雄実部との嵌合部)付近を踏みつけて断熱層が圧縮変形したとしても、雌実部における表裏両側の雌実凸部が雄実部を確実に支持し、その雌実部の両雌実凸部が変形することなく、両床材の床仕上材が同じ高さで沈むようになり、両床材の接合部に段差が発生することはなく、施工性及び施工後の使用性が向上する。
【0015】
また、上記床仕上材は、硬質発泡体層の表裏面側に、湿気硬化型樹脂又は反応型樹脂が充填された無機質繊維シートからなる表面補強層及び裏面補強層とが積層一体化されたものであるので、床材の寸法安定性が向上する。
【0016】
請求項2の発明では、請求項1の床材において、上記硬質発泡体層の表裏部分には、厚さ0.2〜0.5mm、比重0.7〜1.1の高比重層が形成され、これら高比重層が木口端面における雌実部の雌実凸部の一部を構成している一方、雄実部は高比重層以外の部分で構成されていることを特徴とする。
【0017】
この請求項2の発明では、床仕上材における硬質発泡体層の表裏部分に高比重層が形成され、これら高比重層で雌実部の雌実凸部の一部が構成されているので、その雌実部の雌実凸部の強度が高比重層によってさらに増大し、上記雌実部の雌実凸部の変形を確実に抑制して、施工性及び施工後の使用性の向上をより一層確実に図ることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、請求項1の発明の床材によると、床仕上材の裏面に断熱層が積層一体化され、床仕上材は、硬質発泡体層の表裏面側に、湿気硬化型樹脂又は反応型樹脂が充填された無機質繊維シートからなる表面補強層及び裏面補強層が積層一体化されたものとし、その床仕上材の木口端面に雌実部及び雄実部が設けられ、床仕上材表面には、表面に微細な凹凸部を有する樹脂化粧シートからなる表面層を設けたことにより、その化粧層表面の微細な凹凸部により、素足又は素手の接触面積が減ることなり、冬季に手や足で接触したときの接触冷感を感じ難くすることができる。また、床仕上材の木口端面における雌実部の表裏の雌実凸部の強度を表面補強層及び裏面補強層によって増大確保することができ、隣接する床材同士を床仕上材の木口端面の雌雄実部で実接合して施工し、両床材同士の接合部付近を踏みつけても、両床材の接合部に段差の発生を防止し、施工性及び施工後の使用性の向上を図ることができる。
【0019】
請求項2の発明によると、床仕上材における硬質発泡体層の表裏部分に高比重層を形成し、これら高比重層で雌実部の雌実凸部の一部を構成したことにより、その雌実部の雌実凸部の強度が高比重層によってより一層増大し、施工性及び施工後の使用性の向上を確実に図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は本発明の実施形態に係る床材の拡大断面図である。
【図2】図2は床材の変形例を示す図1相当図である。
【図3】図3は表面化粧層の拡大断面図である。
【図4】図4は床材同士を実接合して施工した状態を示す断面図である。
【図5】図5は実施例及び比較例に対する各種試験の結果を示す図である。
【図6】図6は従来の床材示す図4相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0022】
図1は本発明の実施形態に係る床材Aを示し、この床材Aは床仕上材1と、この床仕上材1の裏面に積層一体化された断熱層20とを備えた、総厚3mm〜12mmのものとされている。
【0023】
上記床仕上材1は、表面側から裏面側に向かって化粧層2、表面補強層3、硬質発泡体層4及び裏面補強層5が順に積層一体化されてなる総厚2mm〜6mmのもので、その裏面は平面又は略平面とされていて、従来のような溝(裏溝)が形成されていない。また、床仕上材1の四周の木口端面1aには、雌実部10及び雄実部14を有する本実加工が施され、この雌実部10(又は雄実部14)は他の床材Aにおける床仕上材1の同様の雄実部14(又は雌実部10)に嵌合可能とされ、両者を嵌合して実結合することで、多数枚の床材A,A,…が施工されるようになっている。
【0024】
(硬質発泡体層)
上記床仕上材1の硬質発泡体層4となる硬質発泡体としては、熱可塑性樹脂と、粉末状充填剤と、化学発泡剤とが混合されて1.8〜3.0倍に発泡した、全体比重0.3〜0.7の発泡体が使用される。
【0025】
一般に、熱可塑性樹脂及び粉末状充填剤のみでは、切削加工による熱で軟化するので、木口端面1aに対する本実加工は難しいが、この実施形態による配合により均一に分散された樹脂が均一に発泡されるとともに、切削加工による熱軟化が発生し難くなる。さらに、硬質発泡体層4の表裏面に表面補強層3及び裏面補強層5が積層され、これらが後述の如く湿気硬化型樹脂又は反応型樹脂が充填された無機質繊維シートからなるため、熱による軟化が生じた場合においても、本実加工を行うことができる。
【0026】
具体的に、上記熱可塑性樹脂としては、発泡可能な熱可塑性樹脂、例えば低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ランダムポリプロピレン、ホモポリプロピレン、ブロック状ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、エラストマー系樹脂やラテックス系樹脂、及び、これらの共重合体等が挙げられ、単独で用いられいても併用されてもよい。
【0027】
さらに好ましくは、特にオレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂やポリエチレンテレフタレート系樹脂を用いる場合は、再生された樹脂を使用するのが好ましい。従って、カーボン等の顔料を適量添加することで着色してもよい。
【0028】
熱に対する寸法安定性と強度とを考慮すると、特にポリスチレン系樹脂が好適に用いられる。しかし、ポリスチレン系樹脂のみでは柔軟性に劣るため、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系等の樹脂が添加される。後述するエラストマー系樹脂やゴム系樹脂等により柔軟性を付与させることができるため、必須ではないが、30重量部を超えると、熱軟化し易くなるため切削加工性に劣り、好ましくない。
【0029】
さらに、発泡体に適度な靭性を付与するために、エラストマー系樹脂、ゴム系樹脂やラテックス系樹脂が適宜混合されて使用される。これらの樹脂が5重量部に満たないと、靭性に劣り、衝撃で基材表面が凹んだ場合に戻り難くなる。つまり、破壊され易くなる。また、25重量部を超えると、熱軟化し易くなるため、切削加工性に劣り好ましくない。
【0030】
上記粉末状充填剤としては、無機微粉末、各種クレイ、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム(タルク)、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等を配合することができる。粉末状充填剤の添加量が5重量部に満たないと、切削加工が行い難くなる一方、添加量が15重量部を超えて多くなり過ぎると、均一に発泡するのが難しくなるだけでなく、切削抵抗が大きくなるため、いずれも好ましくない。樹脂の硬度に応じて切削適正が良好となるよう粉末状充填剤の添加量を適宜調整する。
【0031】
その他、成形体である発泡体の剛性や遮音性能を失わない程度に公知の各種添加剤を添加してもよい。例えば、発泡剤の分解温度を下げるための発泡助剤、成形性を高めるための脂肪酸金属石鹸やオレフィン系ワックス等の滑剤、軽量化のための木粉、耐熱安定剤、耐候安定剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、帯電防止剤等を必要に応じて添加してもよい。
【0032】
最も好適な例としては、ポリスチレン樹脂を100重量部と、ポリエチレン又はポリプロピレン樹脂を0〜30重量部と、粉末状充填剤を5〜15重量部と、スチレン系ゴムを5〜25重量部と、化学発泡剤を0.1〜3重量部とを混合し、1.8〜3.0倍に発泡させ、厚さ1.75〜5.75mm、全体比重0.3〜0.7の硬質発泡体を押し出し成形する。この押し出し成形により、図1に示すように、硬質発泡体層4の表裏部分に厚さ0.2〜0.5mm、比重0.7〜1.1の高比重層7,7が形成されるように成形される。
【0033】
(表面補強層及び裏面補強層)
上記表面補強層3及び裏面補強層5として、湿気硬化型樹脂又は反応型樹脂が充填された無機質繊維シートが用いられている。
【0034】
表面補強層3と裏面補強層5とに、種類や厚みの異なる無機質繊維シートや種類の異なる充填樹脂を使用することもできるが、バランスを考慮し、表面補強層3と裏面補強層5とに無機質繊維シートを使用し、さらに同じ樹脂を充填させることが好ましい。
【0035】
具体的には、ガラス繊維、炭素繊維等を用い、これらの繊維がバインダーにより結合されている無機質繊維シートを使用する。バインダーとしては、ポリビニルアルコール、アクリル系樹脂等の熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂等の熱硬化性樹脂が用いられており、所定の目付け量とシート形状とが保持される程度にシート成形が保持されていればよい。
【0036】
無機質繊維シートを使う効果は、硬質発泡体層4やその他樹脂の温度による寸法変化を抑えるとともに、切削加工による床仕上材1の振動を抑え、高精度な本実加工を可能にする役割がある。従って、ある程度の強度が必要であり、目付け量が80〜150g/m、好ましくは100〜120g/m程度の無機質繊維シートが使用される。目付け量が80g/mに満たない場合は、寸法変化を抑える効果が弱く、目付け量が150g/mを超えると、床材Aとしての剛性が高くなりすぎるために、好ましくない。
【0037】
さらに、床仕上材1に靭性を付与するために、上記無機質シートに加えて、PP、PE、PET等の樹脂繊維シートを積層したハイブリッド不織布を使用してもよい。この場合、無機質繊維シートは目付け量が80〜150g/m、好ましくは100〜120g/m程度であればよく、これら無機質繊維シートに加えて、目付け量が30〜150g/m程度の樹脂繊維シートを積層し、これらの積層物全体を充填するように湿気硬化型樹脂又は反応型樹脂を充填すればよい。
【0038】
また、湿気硬化型樹脂又は反応型樹脂としては、ウレタン系接着剤、反応型PURホットメルト接着剤、エポキシ系接着剤等の、水分を含まず熱硬化の必要がない接着剤が好適に用いられる。特に、適度な充填性及び靭性を有しているPURホットメルト接着剤が最も好ましい。上記無機質繊維シートを完全に充填する程度に塗布・充填・固化される。
【0039】
具体的には、硬質発泡体の表面をプラズマ処理やコロナ放電等により表面改質処理し、この表面に湿気硬化型樹脂又は反応型樹脂を塗布し、さらにこの表面に無機質シート状物を載置し、さらにロールプレス等で圧締することで表面補強層3及び裏面補強層5が設けられる。
【0040】
(化粧層)
上記化粧層2としては、厚さ0.1mm〜0.6mmの表面に微細な凹凸部2aを有する樹脂化粧シート又は塗膜材が使用される。
【0041】
具体的には、図3(a)に示すように、シート表面に1〜200μm程度の凹凸深さを有するシボ付け加工(エンボス加工)を行ってもよいし(特開2008−238601号公報参照)、図3(b)に示すように、塗膜厚みよりも大きな粒径の粒状物(顔料、樹脂ビーズ等)を含む塗膜を設けることにより凹凸部2aを実現してもよい。表面の微細な凹凸部2aにより、素足又は素手の接触面積が減るため、同じ基材を用いた床材であっても、接触冷感を感じ難くなる。
【0042】
好ましくは、予め表面塗装を施したオレフィン系樹脂、塩ビ系樹脂等の樹脂化粧シートを積層一体化し、化粧層2とするのが望ましい。
【0043】
化粧層2は、湿気硬化型樹脂又は反応型樹脂により硬質発泡体層4の表面に貼着一体化される。特にPURホットメルト接着剤が最も好適に用いられる。
【0044】
このとき、化粧層2は、表面補強層3の表面のみに設けられていてもよいし、図2に示すように、木口端面1aにおいて、雌実部10における表面側の雌実凸部12先端面及び雄実部14における表面側の雄実切欠き16底面に至る部分まで化粧層2が設けられていてもよい。
【0045】
そして、上記床仕上材1において、表面の化粧層2と表面補強層3と硬質発泡体層4の表側の高比重層7との合計である総厚さが1mm以内であることが望ましい。この厚さが1mmを越えると、床材Aに手や足が接触したときに表面の硬さや冷たさを感じ易くなってくる。
【0046】
(本実加工)
上記床仕上材1の木口端面1aに設けられる本実加工は切削加工によるものである。例えば床仕上材1(床材A)の幅方向(又は長さ方向)に対向する一方の木口端面1aに雌実部10が、また他方の木口端面1aに雄実部14がそれぞれ形成されている。雌実部10は、木口端面1aの厚さ方向の中間部を断面矩形状に切り欠くことにより、雌実凹条11(凹溝)と、切り欠いた際に残った部分で雌実凹条11の溝壁部分を構成する1対の雌実凸部12,12とからなる。一方、雄実部14は、木口端面1aの厚さ方向の表裏隅角部を中間部を残してそれぞれ断面矩形状に切り欠くことにより、切り欠いた際に残った部分からなる雄実凸条15と、切欠き部により構成される1対の雄実切欠き16,16とからなる。雄実凸条15は断面が先細りテーパ形状のもので、その厚さは雌実凹条11の溝幅よりも少し小さく形成されており、実結合時には、この雄実凸条15が雌実凹条11に嵌合される(図4(a)参照)。
【0047】
そして、上記硬質発泡体層4の表裏部分の高比重層7,7がそれぞれ木口端面1aにおける雌実部10の雌実凸部12,12の一部を構成しており、換言すれば雌実部10の各雌実凸部12に高比重層7が含まれている。一方、雄実部14は高比重層7,7に雄実切欠きが形成されていて、雄実凸条15は高比重層7,7以外の表裏中間部分で構成されている。
【0048】
総厚2mm〜6mmの床仕上材1の木口端面1aに本実加工が施されるには、高精度な切削加工が求められる。そのため、この実施形態では、表面補強層3及び裏面補強層5により雌実部10(特に雌実凸部12,12)を補強し、切削加工する際の切削時の摩擦熱によって床仕上材1が溶融してバリが発生することもなく、高精度な本実加工を可能にしている。
【0049】
(断熱層)
一方、上記床仕上材1の裏面に積層一体化された断熱層20は、比重0.1〜0.4、厚さ1mm〜6mmの樹脂発泡体又は樹脂不織布からなるものである。これら樹脂発泡体や樹脂不織布は周知のものを使用することができ、樹脂発泡体としては、例えばポリエチレン発泡体等からなる。
【0050】
また、この樹脂発泡体又は樹脂不織布の、床仕上材1裏面に対する積層一体化は、反応性PURホットメルト樹脂等による接着により行われる。
【0051】
(床材の製造方法)
次に、上記床材Aを製造する2つの製造方法について説明する。尚、この製造方法については、部分的に前述している。
【0052】
<製造方法1>
まず、ポリスチレン樹脂を100重量部と、ポリエチレン又はポリプロピレン樹脂を0〜30重量部と、粉末状充填剤を5〜15重量部と、スチレン系ゴムを5〜25重量部と、化学発泡剤を0.1〜3重量部とを混合し、1.8〜3.0倍に発泡させて、厚さ1.75〜5.75mm、全体比重0.3〜0.7の硬質発泡体を形成する。
【0053】
上記硬質発泡体の表裏面にそれぞれプラズマ処理やコロナ処理等の改質処理を施した後、その硬質発泡体の表面に湿気硬化型樹脂又は反応型樹脂を塗布し、無機質繊維シートを載置してロールプレス等で圧締することで、表面に表面補強層3を設けるとともに、硬質発泡体の裏面に湿気硬化型樹脂又は反応型樹脂を塗布し、無機質繊維シートを載置してロールプレス等で圧締することで、裏面に裏面補強層5を設ける。
【0054】
そして、上記表面補強層3及び裏面補強層5が設けられた床仕上げの硬質発泡体の四周木口端面1aに切削加工により雌実部10及び雄実部14を有する本実加工を施す。
【0055】
次いで、上記表面補強層3の全体及び木口端面1aの雌雄実部10,14の一部に至るまで湿気硬化型樹脂又は反応型樹脂をロール塗布した後、直ちに、その塗装の施された表面に雌雄実部10,14の一部に至るまで、表面に微細凹凸部を有する表面化粧シートをラッピングマシン等により貼着一体化する。
【0056】
さらに、裏面補強層5の表面(床仕上材1裏側の下面)に湿気硬化型樹脂又は反応型樹脂を塗布して、比重0.1〜0.4、厚さ1mm〜6mmの樹脂発泡体からなる断熱層20を積層一体化することにより、総厚3mm〜12mmの床材Aとする。
【0057】
<製造方法2>
まず、ポリスチレン樹脂を100重量部と、ポリエチレン又はポリプロピレン樹脂を0〜30重量部と、粉末状充填剤を5〜15重量部と、スチレン系ゴムを5〜25重量部と、化学発泡剤を0.1〜3重量部とを混合し、1.8〜3.0倍に発泡させて、厚さ1.75〜5.75mm、全体比重0.3〜0.7の硬質発泡体を形成する。
【0058】
また、上記硬質発泡体の表裏面にプラズマ処理やコロナ処理等の改質処理を施した後、その硬質発泡体の表面に湿気硬化型樹脂又は反応型樹脂を塗布し、無機質繊維シートを載置してロールプレス等で圧締することで、表面に表面補強層3を設けるとともに、硬質発泡体の裏面に湿気硬化型樹脂又は反応型樹脂を塗布し、無機質繊維シートを載置してロールプレス等で圧締することで、裏面に裏面補強層5を設ける。
【0059】
以上までは上記製造方法1と同じである。その後、上記表面補強層3の表面に湿気硬化型樹脂又は反応型樹脂を塗布した後、直ちに、表面に微細凹凸部を有する表面化粧シートを貼着又は塗膜材を塗布して一体化する。
【0060】
続いて、上記表面補強層3及び裏面補強層5が設けられた硬質発泡体の四周木口端面1aに切削加工により雌実部10及び雄実部14を有する本実加工を施す。
【0061】
さらに、製造方法1と同様に、裏面補強層5の表面(床仕上材1裏側の下面)に湿気硬化型樹脂又は反応型樹脂を塗布して、比重0.1〜0.4、厚さ1mm〜6mmの樹脂発泡体からなる断熱層20を積層一体化することにより、総厚3mm〜12mmの床材Aとする。
【0062】
これら製造方法1,2のいずれにおいても、上記床材Aを容易に製造することができる。
【0063】
したがって、この実施形態においては、床材Aにおける床仕上材1は、熱可塑性樹脂、粉末状充填剤及び化学発泡剤が混合されて発泡した硬質発泡体からなる硬質発泡体層4の表裏面側に、湿気硬化型樹脂又は反応型樹脂が充填された無機質繊維シートからなる表面補強層3及び裏面補強層5が積層一体化されたものであるので、季節変動による湿気により床材Aが変形し難くなる。
【0064】
また、床仕上材1表面の化粧層2が、表面に微細な凹凸部2aを有する厚さ0.1mm〜0.6mmの樹脂化粧シート又は塗膜材からなるので、この表面の微細な凹凸部2aにより、素足又は素手の接触面積が減ることなり、同じ基材を用いた床材であっても、特に冬季に手や足で接触したときに、接触冷感(表面の硬さや冷たさ)を感じ難くなる。
【0065】
また、床仕上材1は、熱可塑性樹脂、粉末状充填剤及び化学発泡剤が混合されて発泡された硬質発泡体からなる硬質発泡体層4の表裏面側に、湿気硬化型樹脂又は反応型樹脂が充填された無機質繊維シートからなる表面補強層3及び裏面補強層5が積層一体化されたものであり、その床仕上材1の木口端面1aに雌実部10及び雄実部14が切削加工により設けられているので、その雌実部10は表裏両側の雌実凸部12,12の強度が増大したものとなっている。そのため、図4(a)に示すように、隣接する床材A,A同士を床仕上材1の木口端面1aの雌雄実部10,14で実接合して施工したとき、図4(b)に示すように、両床材A,A同士の接合部(雌実部10と雄実部14との嵌合部)付近を踏みつけて断熱層20が圧縮変形したとしても、雌実部10の雌実凸部12,12が雄実部14の雄実凸条15を上下方向に確実に支持し、その雌実部10の裏側の雌実凸部12が下側に変形したり(図示の如く雄実部14側である図で左側の床材Aに荷重が加わった場合)、上側の雌実凸部12が上側に変形したり(雌実部10側である図で右側の床材Aに荷重が加わった場合)することはなく、両床材Aの床仕上材1が図で仮想線の位置から同じ高さで沈むようになり、両床材A,Aの接合部に段差が発生することはない。このことで、床材Aの施工性が向上するとともに、その施工後の歩行感も優れたものとなって使用性が向上する。
【0066】
しかも、上記硬質発泡体層4の表裏部分には、厚さ0.2〜0.5mm、比重0.7〜1.1の高比重層7,7が形成され、これら高比重層7,7が木口端面1aにおける雌実部10の雌実凸部12,12の一部を構成している一方、雄実部14は高比重層7,7以外の部分で構成されているので、その雌実部10の雌実凸部12,12の強度が高比重層7,7によってより一層増大し、上記雌実部10の雌実凸部12の変形を確実に抑制して、施工性及び施工後の使用性の向上を確実に図ることができる。
【0067】
また、上記床仕上材1は、硬質発泡体層4の表裏面側に、湿気硬化型樹脂又は反応型樹脂が充填された無機質繊維シートからなる表面補強層3及び裏面補強層5とが積層一体化されたものであるので、床仕上材1(床材A)の寸法安定性が向上する。また、その床仕上材1の木口端面1aに上記雌実部10及び雄実部14を切削加工する際、切削時の摩擦熱により床仕上材1が溶融してバリが発生することはない。しかも、表面補強層3及び裏面補強層5により雌実部10(特に雌実凸部12,12)が補強されているので、切削加工による床仕上材1の振動が抑えられ、よって、木口端面1aに対する本実加工を精度よくかつ効率よく切削加工により設けることができる。
【実施例】
【0068】
次に、具体的に実施した実施例について説明する。
【0069】
(実施例1)
ポリスチレン樹脂を100重量部と、ポリエチレン樹脂を5重量部と、タルクを7重量部と、スチレン系ゴムを5重量部と、化学発泡剤を0.5重量部とを混合して2.0倍に発泡させ、押し出し成形することで、厚さ4.5mm、全体比重(みかけ比重)0.55の硬質発泡体を得た。この硬質発泡体では、表裏層にそれぞれ厚さ0.5mm、比重0.9の高比重層が形成されていた。
【0070】
こうして得られた硬質発泡体の表裏両面にコロナ処理を施した後、その表面に反応性PURホットメルト樹脂を50g/mロール塗布し、直ちに110g/mのガラスクロスを載置し、ロールプレスすることで、表面に表面補強層を設けた。表面補強層の厚みは0.1mmであった。
【0071】
続いて、この硬質発泡体の裏面に、上記表面補強層を設けるのと同様に、反応性PURホットメルト樹脂を50g/mロール塗布し、直ちに110g/mのガラスクロスを載置し、ロールプレスすることで、裏面に裏面補強層を設けた。裏面補強層の厚みは0.1mmであった。
【0072】
次に、上記表面補強層の表面に反応性PURホットメルト樹脂をロール塗布し、直ちに、表面に塗装の施されかつ1〜200μm程度の深さの凹凸部を有するエンボス加工された厚さ0.2mmのオレフィン系樹脂化粧シートをラッピングマシーンにより貼着一体化して化粧層を得た。
【0073】
続いて、表面補強層及び裏面補強層の設けられた硬質発泡体の四周木口端面に切削加工により本実加工を施した。
【0074】
さらに、裏面補強層の表面に反応性PURホットメルト樹脂をロール塗布し、この表面に厚さ4.5mm、比重0.1のポリエチレン発泡体(断熱層)を貼着一体化し、床材を得た。
【0075】
(実施例2)
実施例1において、硬質発泡体の表面に反応性PURホットメルト樹脂を100g/mロール塗布し、直ちに220g/mのガラスクロスを載置し、ロールプレスすることで、表面に表面補強層を設けた。すなわち、表面補強層におけるガラスクロスの目付量と反応性PURホットメルト樹脂の塗布量とを倍増させたものである。その他は実施例1と同じである。
【0076】
(比較例1)
実施例1において、硬質発泡体の表裏面に表面補強層を形成せず、その表面に化粧層を、また裏面に断熱層をそれぞれ積層一体化した。その他は実施例1と同じである。
【0077】
(比較例2)
実施例1において、化粧層となるオレフィン系樹脂化粧シート表面の凹凸部を有するエンボス加工をなくしたものである。その他は実施例1と同じである。
【0078】
(比較例3)
実施例1において、硬質発泡体の表面に反応性PURホットメルト樹脂を30g/mロール塗布し、直ちに55g/mのガラスクロスを載置し、ロールプレスすることで、表面に表面補強層を設けた。すなわち、表面補強層におけるガラスクロスの目付量と反応性PURホットメルト樹脂の塗布量とを半減させたものである。その他は実施例1と同じである。
【0079】
(比較例4)
実施例1において、硬質発泡体の表面に反応性PURホットメルト樹脂をロール塗布し、直ちにガラスクロスを載置し、ロールプレスすることで、表面に表面補強層を設けた。この表面補強層の表面に、両面コロナ放電処理を施した0.5mmのPET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂シートを積層し、その表面に実施例1と同じ微細エンボス付0.2mmオレフィンシートを積層一体化した。その他は実施例1と同じである。
【0080】
(比較例5)
実施例1において、硬質発泡体層の表面に反応性PURホットメルト樹脂をロール塗布し、直ちにガラスクロスを載置し、ロールプレスすることで、表面に表面補強層を設けた。この表面補強層の表面に比重0.75、厚さ1.0mmのMDF(中比重木質繊維板)をPURホットメルト接着剤で積層し、この表面に実施例1と同じ微細エンボス付0.2mmオレフィンシートを積層一体化した。その他は実施例1と同じである。
【0081】
(比較例6)
実施例1において、表面補強層及び裏面補強層の設けられた硬質発泡体の四周木口端面に切削加工により本実加工ではなく、木口端面の裏側半部を矩形状に切り欠いてなる雌実部と、表側半部を同様に矩形状に切り欠いてなる雄実部とからなる合決り加工を施した。そして、裏面補強層の表面に反応性PURホットメルト樹脂を介してポリエチレン発泡体を、硬質発泡体の雌雄実部とによって本実構造となるように貼着一体化し、床材を得た。その他は実施例1と同じである。
【0082】
以上の実施例及び比較例に対して施工試験、切削試験、冷感試験及び寸法安定性試験を行った。
【0083】
(施工試験)
幅150mm×長さ900mmに切削加工した実施例及び比較例の床材を、雌雄実嵌合させながら施工した。施工後、床面全体を歩行し、歩行感の確認を行った。
【0084】
(切削試験)
生産設備の実切削機械(テノーナー)を使用して、実際に切削加工を行った。回転鋸を使用して雌雄実部を床仕上材の両端面に施し、本実の外観観察及び加工精度の確認を行った。
【0085】
(冷感試験)
各実施例及び各比較例に係る、幅150mm×長さ900mmに切削加工した4枚の床材を並べて雌雄実部で嵌合させ、600×900mmの試験体を得た。この試験体を10℃に調整した環境室内で24時間養生し、この表面を素足及び素手で接触し、それぞれの冷感を官能評価した。
【0086】
(寸法安定性試験)
得られた床仕上材を80℃ドライヤーに投入し、24時間経過して取り出した後に直ちに寸法を測定した。投入前の寸法を1としたときの寸法の伸張率で評価した。
【0087】
以上の各試験の結果を図5に示す。
【0088】
これらの試験結果をみると、実施例は全ての試験において良好な結果を示しており、本願発明が有効であることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、床材の接合部で段差が発生せず、接触冷感を感じ難い点で、極めて有用であり、産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0090】
A 床材
1 床仕上材
1a 木口端面
2 化粧層
2a 凹凸部
3 表面補強層
4 硬質発泡体層
5 裏面補強層
7 高比重層
10 雌実部
11 雌実凹条
12 雌実凸部
14 雄実部
20 断熱層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面側から裏面側に向かって化粧層、表面補強層、硬質発泡体層及び裏面補強層が順に積層一体化されてなり、木口端面に雌実部及び雄実部を有していて該雌実部及び雄実部が他の床材の雄実部及び雌実部に嵌合可能な本実加工が施されている床仕上材と、
上記床仕上材の裏面に積層一体化された断熱層とを備えた床材であって、
上記化粧層は、表面に微細な凹凸部を有する樹脂化粧シート又は塗膜材からなり、
上記表面補強層及び裏面補強層は、湿気硬化性樹脂又は反応性樹脂が充填された無機質繊維シートからなることを特徴とする床材。
【請求項2】
請求項1において、
硬質発泡体層の表裏部分には、厚さ0.2〜0.5mm、比重0.7〜1.1の高比重層が形成され、
上記高比重層が木口端面における雌実部の雌実凸部の一部を構成している一方、雄実部は高比重層以外の部分で構成されていることを特徴とする床材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−52511(P2011−52511A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−205147(P2009−205147)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【出願人】(000204985)大建工業株式会社 (419)
【出願人】(000010065)フクビ化学工業株式会社 (150)
【Fターム(参考)】