説明

床用化粧材

【課題】本発明は、耐キャスター性に加え、耐傷性、耐衝撃性及び歩行感にも優れた、安定的に大量生産が可能な床用化粧材を提供する。
【解決手段】木質基材上に、化粧シートを積層してなる床用化粧材であって、
JIS K 6253の規定の従って、タイプDのデュロメーターを用いて前記化粧シート側から測定した場合の表面硬度が60未満である床用化粧材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床用化粧材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、戸建て住宅やマンション・アパート等の床材としては、例えば、厚さ6〜15mm程度のラワン合板等の木質基材上に、厚さ数百μmから数mm程度の天然木材をスライスしたすなわち突板を貼り合わせ、更に突板表面に塗装を施したものが広く使用されている。こうした天然木材に塗装を施した床材は、塗装、研磨、塗装を繰り返すことにより、奥行き感のある平滑な仕上げが可能となり、非常に塗装感のある美麗な意匠を得ることができる。
【0003】
しかしながら、今日、世界的に木材資源が不足している等の観点から、天然木材を使用した床材を安定的に大量生産することが難しい。
【0004】
こうした問題点に鑑みて、例えば、木目模様等を印刷することにより外観を天然木材に近づけた化粧シートを木質基材上に積層した床材が提案されている。前記床材は、安定的に大量生産することができる。
【0005】
ところが、前記床材は、耐キャスター性が不十分である。このような耐キャスター性の問題を解決するために、木質基材と化粧シートとの間に、表面硬度がデュロメーター硬さ試験タイプD(JIS K 6253)にて60以上である硬質シート層を設けた床材が提案されている(特許文献1)。
【0006】
しかしながら、特許文献1の床材は、耐傷性及び耐衝撃性が劣る。また、クッション性に欠け、歩行性にも劣る。
【0007】
従って、耐キャスター性に加え、耐傷性、耐衝撃性及び歩行感にも優れた、安定的に大量生産が可能な床用化粧材の開発が切望されている。
【特許文献1】特開2003−11277
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、耐キャスター性に加え、耐傷性、耐衝撃性及び歩行感にも優れた、安定的に大量生産が可能な床用化粧材を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、木質基材上に、化粧シートを積層してなる床用化粧材であって、化粧シート側から測定した床用化粧材の表面硬度を特定の範囲に設定することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、下記の床用化粧材に関する。
1. 木質基材上に、化粧シートを積層してなる床用化粧材であって、
JIS K 6253の規定の従って、タイプDのデュロメーターを用いて前記化粧シート側から測定した場合の表面硬度が60未満である床用化粧材。
2. 前記木質基材と前記化粧シートとの間に、JIS K 6253の規定の従って、タイプDのデュロメーターを用いて測定した場合の表面硬度が60未満である中間層を有する、上記項1に記載の床用化粧材。
3. 前記中間層がポリエチレン樹脂層である項2に記載の床用化粧材。
4. 前記化粧シートが、樹脂シート上に、絵柄模様層、透明性接着剤層、透明性樹脂層及び透明性表面保護層を順に積層してなる積層体である、上記項1〜3のいずれかに記載の床用化粧材。
5. 前記中間層がポリエチレン樹脂層であり且つ前記樹脂シートがポリエチレンシートである上記項4に記載の床用化粧材。
6. 前記透明性表面保護層が、電離放射線硬化型樹脂が樹脂架橋し、硬化された電離放射線硬化型樹脂層である、上記項4又は5に記載の床用化粧材。
【0011】
本発明の床用化粧材は、木質基材上に、化粧シートを積層してなる床用化粧材であって、JIS K 6253の規定の従って、タイプDのデュロメーターを用いて前記化粧シート側から測定した場合の表面硬度が60未満である。
【0012】
床用化粧材の表面硬度
本発明の床用化粧材は、JIS K 6253の規定の従って、タイプDのデュロメーターを用いて測定した場合の表面硬度が60未満、好ましくは25〜59、より好ましくは45〜59である。
【0013】
前記表面硬度を60未満にすることにより、歩行感に優れた床用化粧材を得ることができる。また、床用化粧材の耐傷性及び耐衝撃性を向上させることができる。
【0014】
なお、本明細書において、「歩行感に優れる」とは、荷重の分散性に優れ、足裏への負担を十分に軽減できるクッション性を有することを意味する。
【0015】
本発明の床用化粧材は、耐キャスター性にも優れている。特に、前記表面硬度を45以上とすることにより、耐キャスター性を床用化粧材に好適に付与できる。
【0016】
表面硬度の測定は、タイプDのデュロメーターを用い、JIS K 6253の規定の従って行われる。具体的には、タイプDのデュロメーターの押針と加圧面を床用化粧材の化粧シート側に押しつけ、該押針が該化粧材にくい込んだときの該押針移動量を測定することにより、表面硬度を求める。
【0017】
床用化粧材の表面硬度は、使用する樹脂の種類、層構成等を適宜設定することによりを上記範囲に調整できる。特に、上記表面硬度を有する本発明の床用化粧材としては、前記木質基材と前記化粧シートとの間に、JIS K 6253の規定の従って、タイプDのデュロメーターを用いて測定した場合の表面硬度が60未満であるシート(以下、「中間層」と略記する場合がある)を有する床用化粧材が好ましい態様としてあげられる。
【0018】
中間層
本発明の床用化粧材は、前記木質基材と前記化粧シートとの間に、JIS K 6253の規定の従って、タイプDのデュロメーターを用いて測定した場合の表面硬度が60未満、好ましくは25〜59、より好ましくは45〜59である中間層を有することが好ましい。表面硬度は、木質基材上に中間層を積層して測定することができる。
【0019】
前記中間層の形成には、例えばポリエチレン(低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン)、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体等のポリオレフィン系樹脂を用いることができる。これらは1種単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。特に、前記樹脂として、ポリエチレンを用いることが好ましい。ポリエチレンを用いた場合は、床用化粧材を溝加工や面取加工する場合に中間層の加工面の毛羽立ちを押さえることができる。
【0020】
前記ポリオレフィン系樹脂を用いる際、必要に応じて、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーに代表される各種エラストマーをさらに添加してもよい。前記エラストマーを添加することにより、前記中間層の表面硬度を好適に調整することができる。
【0021】
また、前記ポリオレフィン系樹脂以外にも、ポリエステル系樹脂(例えば、非晶性ポリエチレンテレフタレート、非晶性PETコポリマー、ポリブチレンテレフタレート等)、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリカーボネート、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS)等も使用できる。
【0022】
前記非晶性PETコポリマーは、テレフタル酸と1,4シクロヘキサンジメタノールとを共重合させることにより得られる樹脂である。市販品としては、例えば、商品名「PET−G」(イーストマン社製)が挙げられる。
【0023】
前記のようなポリオレフィン系樹脂以外の樹脂を用いる場合、必要に応じて、公知の添加剤を添加したり、前記樹脂内のモノマー成分の比率を調整してもよい。
【0024】
前記中間層は、例えば、上記ポリオレフィン系樹脂等を含む樹脂組成物を、例えば、カレンダー法、インフレーション法、Tダイ押し出し法等によりシート状(フィルム状)に成形することにより作製できる。
【0025】
中間層の厚みは、50〜500μmが好ましく、200〜400μmがより好ましい。
【0026】
木質基材
木質基材としては、床用化粧材の基材として適したものであれば限定されない。例えば、杉、檜、松、ラワン、チーク等の樹木からなる単板、合板、パーティクルボード等が挙げられる。なお、これらの2つ以上を組み合わせてなる木質基材も使用できる。特に、本発明の床用化粧材に用いる木質基材としては、前記表面硬度が60未満の床用化粧材を好適に作製できる点で、ラワンを用いた合板が好ましい。
【0027】
木質基材の形状は特に限定されないが、通常は直方体又は立方体とする。木質板の厚みも限定的ではないが、3〜15mm程度が好ましく、6〜12mm程度がより好ましい。また、木質基材は、側面にサネハギ加工が施されていてもよい。
【0028】
化粧シート
本発明の床用化粧材は、前記木質基材(又は前記中間層)上に、化粧シートを貼着してなるものである。
【0029】
前記化粧シートとしては、例えば、樹脂シート上に、絵柄模様層、透明性接着剤層、透明性樹脂層及び透明性表面保護層を順に形成してなる積層体が挙げられる。
【0030】
以下、前記積層体を代表例として、前記化粧シートについて具体的に説明する。
【0031】
(樹脂シート)
樹脂シートとしては、ポリオレフィン系樹脂からなるシート(フィルム)を用いることが好ましい。
【0032】
ポリオレフィン系樹脂としては特に限定されず、化粧シートの分野で通常用いられているものが使用できる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらの中でも、特にポリプロピレン、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー等が好ましい。また、中間層がポリエチレン樹脂層である場合には、樹脂シートとしてもポリエチレンを用いることが好ましい。中間層と樹脂シートの両方をポリエチレンで形成することにより、相乗効果によって耐傷性が向上する上、樹脂成分が同一であるため、両層は熱ラミネートによって容易に密着させることができる。
【0033】
樹脂シートは、前記ポリオレフィン系樹脂を、例えば、カレンダー法、インフレーション法、Tダイ押し出し法等によりシート状(フィルム状)に成形することにより作製できる。
【0034】
樹脂シートには、必要に応じて、無機充填剤等の公知の添加剤を含有させてもよい。
【0035】
樹脂シートの厚みは特に限定されず、製品特性に応じて設定できるが、通常40〜150μm、好ましくは50〜100μm程度である。
【0036】
樹脂シートの片面又は両面には、必要に応じて、コロナ放電処理等の表面処理を施してもよい。例えば、コロナ放電処理を行う場合には、樹脂シート表面の表面張力が30dyne以上、好ましくは40dyne以上となるようにすればよい。表面処理は、各処理の常法に従って行えばよい。
【0037】
樹脂シート裏面(前記基材貼着面)には、前記基材の接着を容易とするための裏面プライマー層を設けてもよい。また、樹脂シートの上面(前記基材貼着面とは逆面)には、絵柄模様層の形成を容易とするための印刷用プライマー層を設けてもよい。
【0038】
前記裏面プライマー層及び印刷用プライマー層は、公知のプライマー剤を樹脂シートの片面又は両面に塗布することにより形成できる。プライマー剤としては、樹脂成分を溶剤に分散させたものを用いることができる。樹脂成分としては、例えば、アクリル−ウレタン系樹脂、ウレタン−セルロース系樹脂(例えば、ウレタンと硝化綿の混合物にヘキサメチレンジイソシアネートを添加してなる樹脂)等が挙げられる。
【0039】
プライマー剤の塗布量は特に限定されないが、通常0.1〜100g/m、好ましくは0.1〜50g/m程度である。
前記裏面プライマー層及び印刷用プライマー層の乾燥後の厚みは特に限定されないが、それぞれ通常0.01〜10μm、好ましくは0.1〜1μm程度である。
【0040】
(絵柄模様層)
樹脂シートの上(前記木質基材貼着面とは逆面、以下各層において同じ側を指す)には、絵柄模様層が形成されている。
【0041】
絵柄模様層は、化粧シートに所望の絵柄による意匠性を付与するものであり、絵柄の種類等は特に限定的ではない。例えば、木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様等が挙げられる。
【0042】
絵柄模様層の形成方法は特に限定されず、例えば、公知の着色剤(染料又は顔料)を結着剤樹脂とともに溶剤(又は分散媒)中に溶解(又は分散)させて得られる着色インキ、コーティング剤等を用いた印刷法などにより形成すればよい。
【0043】
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、チタン白、亜鉛華、弁柄、紺青、カドミウムレッド等の無機顔料;アゾ顔料、レーキ顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、フタロシアニン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料等の有機顔料;アルミニウム粉、ブロンズ粉等の金属粉顔料;酸化チタン被覆雲母、酸化塩化ビスマス等の真珠光沢顔料;蛍光顔料;夜光顔料等が挙げられる。これらの着色剤は、単独又は2種以上を混合して使用できる。これらの着色剤には、シリカ等のフィラー、有機ビーズ等の体質顔料、中和剤、界面活性剤等をさらに配合してもよい。
【0044】
結着剤樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル−ウレタン系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アルキド系樹脂、石油系樹脂、ケトン樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、繊維素誘導体、ゴム系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独又は2種以上を混合して使用できる。
【0045】
溶剤(又は分散媒)としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の石油系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル等のエステル系有機溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤、;ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤;水等の無機溶剤等が挙げられる。これらの溶剤(又は分散媒)は、単独又は2種以上を混合して使用する。
【0046】
絵柄模様層の形成に用いる印刷法としては、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、静電印刷法、インクジェット印刷法等が挙げられる。また、全面ベタ状の絵柄模様層を形成する場合には、例えば、ロールコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法、ダイコート法、リップコート法、コンマコート法、キスコート法、フローコート法、ディップコート法等の各種コーティング法が挙げられる。その他、手描き法、墨流し法、写真法、転写法、レーザービーム描画法、電子ビーム描画法、金属等の部分蒸着法、エッチング法等を用いたり、他の形成方法と組み合わせて用いたりしてもよい。
【0047】
絵柄模様層の厚みは特に限定されず、製品特性に応じて適宜設定できるが、塗工時の層厚は1〜15μm程度、乾燥後の層厚は0.1〜10μm程度である。
【0048】
(着色隠蔽層)
樹脂シートと絵柄模様層との間には、必要に応じて、さらに着色隠蔽層を形成してもよい。着色隠蔽層は、化粧シートのおもて面から被着材の地色を隠蔽したい場合に設けられる。前記樹脂シートが透明性である場合は勿論、前記樹脂シートが隠蔽着色されている場合でも、隠蔽性を安定化するために形成してもよい。
【0049】
着色隠蔽層を形成するインクとしては、絵柄模様層を形成するインクであって隠蔽着色が可能なものが使用できる。
【0050】
着色隠蔽層の形成方法は、樹脂シート全体を被覆(全面ベタ状)するように形成できる方法が好ましい。例えば、前記したロールコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法、ダイコート法、リップコート法、コンマコート法、キスコート法、フローコート法、ディップコート法等が好ましいものとして挙げられる。
【0051】
着色隠蔽層の厚みは特に限定されず、製品特性に応じて適宜設定できるが、塗工時の層厚は0.2〜10μm程度、乾燥後の層厚は0.1〜5μm程度である。
【0052】
(透明性接着剤層)
絵柄模様層の上には、透明性接着剤層が形成されている。透明性接着剤層は、透明性のものであれば特に限定されず、無色透明、着色透明、半透明等のいずれも含む。この接着剤層は、絵柄模様層と透明性樹脂層とを接着するために形成されている。
【0053】
接着剤としては特に限定されず、化粧シートの分野で公知の接着剤を使用できる。
【0054】
化粧シートの分野で公知の接着剤としては、例えば、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂、熱硬化性ウレタン樹脂等の硬化性樹脂等が挙げられる。また、イソシアネートを硬化剤とする二液硬化型ポリウレタン樹脂又はポリエステル樹脂も適用し得る。
【0055】
接着剤層は、例えば、接着剤を絵柄模様層の上に塗工後、乾燥・硬化させることにより形成できる。乾燥温度・乾燥時間等の条件は特に限定されず、接着剤の種類に応じて適宜設定すればよい。接着剤の塗布方法は特に限定されず、例えば、ロールコート、カーテンフローコート、ワイヤーバーコート、リバースコート、グラビアコート、グラビアリバースコート、エアーナイフコート、キスコート、ブレードコート、スムースコート、コンマコート等の方法が採用できる。
【0056】
接着剤層の厚みは特に限定されないが、乾燥後の厚みが0.1〜30μm、好ましくは1〜20μm程度である。
【0057】
(透明性樹脂層)
透明性接着剤層の上には、透明性樹脂層が形成されている。透明性樹脂層は、透明性である限り、無色透明、着色透明、半透明等のいずれも含む。
【0058】
透明性樹脂層に含まれる樹脂成分は限定的ではないが、熱可塑性樹脂であれば好ましく、特にポリプロピレンが好ましい。
【0059】
透明性樹脂層には、必要に応じて、無機充填剤等の添加剤を含有させることができる。
【0060】
透明性樹脂層は、例えば、樹脂を、カレンダー法、インフレーション法、Tダイ押し出し法等により形成する。また既成のフィルムを用いてもよい。
【0061】
透明性樹脂層の厚みは通常20〜300μm程度とすればよい。
【0062】
透明性樹脂層の表面であって、後記する透明性表面保護層を形成する面には、必要に応じて、コロナ放電処理、オゾン処理、プラズマ処理、電離放射線処理、重クロム酸処理等の表面処理を施してもよい。表面処理は、各処理の常法に従って行えばよい。
【0063】
また、必要に応じて、表面にプライマー層(表面保護層の形成を容易とするためのプライマー層)を設けてもよい。
【0064】
プライマー層は、公知のプライマー剤を透明樹脂層の表面に塗布することにより形成できる。プライマー剤としては、例えば、アクリル変性ウレタン樹脂等からなるウレタン樹脂系プライマー剤、アクリルとウレタンのブロック共重合体からなる樹脂系プライマー剤等が挙げられる。
【0065】
プライマー剤の塗布量は特に限定されないが、通常0.1〜100g/m2、好ましくは0.1〜50g/m2程度である。
プライマー層の厚みは特に限定されないが、通常0.01〜10μm、好ましくは0.1〜1μm程度である。
【0066】
(透明性表面保護層)
透明性樹脂層の上には、透明性表面保護層が形成されている。
【0067】
透明性表面保護層としては、電離放射線硬化型樹脂が樹脂架橋し、硬化された電離放射線硬化型樹脂層が、高い表面硬度、生産性等の観点から好ましい。
【0068】
電離放射線硬化型樹脂は、電離放射線の照射により架橋重合反応を生じ、3次元の高分子構造に変化する樹脂であれば限定されない。例えば、電離放射線の照射により架橋可能な重合性不飽和結合又はエポキシ基を分子中に有するプレポリマー、オリゴマー及びモノマーの1種以上が使用できる。例えば、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート等のアクリレート樹脂;シロキサン等の珪素樹脂;ポリエステル樹脂;エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0069】
電離放射線としては、可視光線、紫外線(近紫外線、真空紫外線等)、X線、電子線、イオン線等があるが、この中でも、紫外線、電子線が望ましい。
【0070】
紫外線源としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト蛍光灯、メタルハライドランプ灯の光源が使用できる。紫外線の波長としては、190〜380nm程度できる。
【0071】
電子線源としては、例えば、コッククロフトワルト型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器が使用できる。電子線のエネルギーとしては、100〜1000keV程度が好ましく、100〜300keV程度がより好ましい。電子線の照射量は、2〜15Mrad程度が好ましい。
【0072】
電離放射線硬化型樹脂は電子線を照射すれば十分に硬化するが、紫外線を照射して硬化させる場合には、光重合開始剤(増感剤)を添加することが好ましい。
【0073】
ラジカル重合性不飽和基を有する樹脂系の場合の光重合開始剤は、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、ミヒラーケトン、ジフェニルサルファイド、ジベンジルジサルファイド、ジエチルオキサイト、トリフェニルビイミダゾール、イソプロピル−N,N−ジメチルアミノベンゾエート等の少なくとも1種が使用できる。また、カチオン重合性官能基を有する樹脂系の場合は、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル、フリールオキシスルホキソニウムジアリルヨードシル塩等の少なくとも1種が使用できる。
【0074】
光重合開始剤の添加量は特に限定されないが、一般に電離放射線硬化型樹脂100重量部に対して0.1〜10重量部程度である。
【0075】
電離放射線硬化型樹脂で保護層を形成する方法としては、例えば、電離放射線硬化型樹脂の溶液をグラビアコート法、ロールコート法等の塗布法で塗布すればよい。溶液の塗布量としては、固形分として概ね5〜30μm、好ましくは15〜25μm程度である。
【0076】
前記透明性表面保護層は、減摩剤を含有することが好ましい。
【0077】
前記減摩剤としては、例えばアルミナ、ダイヤモンド、炭化珪素、シリカ、ガラス、ジルコニア、ゼオライト、シラスバルーン、珪藻土等が挙げられる。これらは単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。前記減摩剤は、平均粒径が5〜50μm程度の粉粒体であることが好ましい。前記減摩剤の平均粒径と前記透明性表面保護層の膜厚とを適宜調整することにより、前記減摩剤の全部又は一部を前記透明性表面保護層の表面より突出させて、前記透明性表面保護層の表面に微細凸状部を形成することができる。このような微細凸状部を形成させることにより、床用化粧材に表面硬度、耐摩耗性、耐擦傷性、耐滑り性(滑り止め性)等を好適に付与することができる。
【0078】
但し、前記減摩剤が前記透明性表面保護層の表面に突出した状態で露出している場合、歩行する人の靴下の裏面を摩耗させたり、子供が転んだ時に膝小僧をすりむいたりするおそれがある。そこで、前記透明性表面保護層を複数層から構成すると共に、減摩剤はその最上層以外の層に添加しておき、その層の平均表面より突出した減摩剤の表面を覆う様に、減摩剤が添加されていない最上層を設けることが望ましい。この場合、前記透明性表面保護層の平均表面からの減摩剤の突出による微細凸部がなす鋭い表面凹凸が、最上層の表面保護層によって鈍化される結果、上記した接触物の摩耗の低減のほか、表面に触れた時のざらつきや、視覚的な過度の艶消感(粉っぽさ)などをも軽減することができる。
【0079】
前記減摩剤の添加量としては、樹脂成分100重量部に対して1〜80重量部程度である。
【0080】
透明性表面保護層の厚みは、特に限定されないが、1〜15μm程度が好ましい。
【0081】
前記化粧シートの厚みは、特に限定されないが、100〜200μm程度が好ましい。
【0082】
床用化粧材
本発明の床用化粧材は、前記木質基材上に、前記化粧シートを形成してなるものである。
【0083】
前記化粧シートを、前記木質基材上又は表面硬度が60未満のシート上に、形成する方法としては、例えば、前記基材又はシートに接着剤を塗工し、その塗工面側に前記化粧シートを載せて、化粧シート側からロールで圧力をかけることにより、両者をラミネートする方法が好ましい。前記接着剤としては、例えば、ウレタン変性エチレン・酢酸ビニル系エマルション接着剤等の公知の接着剤を使用できる。
【0084】
本発明の床用化粧材の前記木質基材の裏面(化粧シートと反対側)に、透湿度が3〜30g/m・24hである防湿シートを積層することが好ましい。前記木質基材の裏面に、前記防湿シートを貼着させることにより、床用化粧材にさらに優れた耐湿性を付与できる。
【0085】
前記防湿シートとしては、透湿度が3〜30g/m・24hである限り特に限定されるものではない。例えば、厚み10〜100μm程度の防湿性樹脂層を主体とし、必要に応じて、その表面及び/又は裏面に紙層を積層してなるシート等が挙げられる。
【0086】
前記防湿性樹脂層としては、例えばポリエチレン(高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン)等のポリオレフィン系樹脂や、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂等の透湿度の低い疎水性熱可塑性樹脂を好適に使用することができる。
【0087】
前記紙層としては、例えば、薄葉紙、樹脂含浸紙、紙間強化紙等が挙げられる。
【0088】
前記紙層には、必要に応じて、例えばジシアンジアミドやメラミン等のアミノ化合物、尿素、バルビツール酸、セミカルバジッド塩酸塩等のアマイド類、グルタミン酸、グリシン、アラニン等のアミノ酸類、ヒドラゾベンゼン、プロピオン酸ヒドラジド、カルボヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド等のヒドラジン誘導体等の含窒素化合物に代表されるホルムアルデヒド捕捉剤を含有させることが好ましい。これにより、前記木質基材が発散するホルムアルデヒドの捕捉除去機能を前記床用化粧材に好適に付与できる。
【0089】
本発明の床用化粧材には、必要に応じて、テノーナーを用いて四辺の実加工、V字形状の条溝付与等を施してもよい。さらに、塗料を塗布後、ワイピング処理を施してもよい。前記塗料としては、特に限定されないが、水系の2液硬化型ウレタン系着色塗料が好ましい。
【発明の効果】
【0090】
本発明の床用化粧材は、歩行感に優れている。具体的に、本発明の床用化粧材は、荷重の分散性に優れ、足裏への負担を十分に軽減できるクッション性を有する。
【0091】
また、本発明の床用化粧材は、耐キャスター性、耐傷性及び耐衝撃性に優れている。
【0092】
さらに、本発明の床用化粧材は、安定的に大量生産できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0093】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
【0094】
実施例1
(化粧シートの作製)
60μm厚の着色ポリエチレンフィルムからなる樹脂シートの上に、アクリル−ウレタン系樹脂(アクリルポリオール100重量部にヘキサメチレンジイソシアネート5重量部を添加してなる樹脂)をメチルエチルケトン及び酢酸ブチルの混合溶剤に溶かした溶液をグラビア印刷法により固形分量が2g/m2となるように塗工して印刷用プライマー層を形成した。
【0095】
印刷用プライマー層の上に、アクリル−ウレタン系樹脂(アクリルポリオール100重量部にヘキサメチレンジイソシアネート5重量部を添加してなる樹脂)溶液を印刷インキとしたグラビア印刷法により、4μmの木目絵柄模様層を形成した。
【0096】
前記樹脂シートの絵柄模様層と反対側の面にウレタン−セルロース系樹脂の溶液をグラビア印刷法により固形分量が2g/m2となるように塗工して裏面プライマー層を形成した。
【0097】
なお、前記ウレタン−セルロース系樹脂の溶液は、メチルエチルケトンとメチルイソブチルケトン混合溶剤中に、ウレタン及び硝化綿を添加し、さらに、ヘキサメチレンジイソシアネートをウレタン及び硝化綿の混合物100重量部に対して5重量部添加することにより調製した。
【0098】
絵柄模様層の上に、熱硬化性ウレタン樹脂系接着剤を固形分量が8g/m2となるように塗工し、さらにポリプロピレン系樹脂をTダイ押出し機により加熱溶融押出しし、厚み8μmの透明性接着剤層及び厚み80μmの透明性樹脂層を形成した。
【0099】
透明性樹脂層の上に、ウレタンアクリレート系電子線硬化型樹脂をロールコート法により固形分が15g/m2となるように塗工・乾燥して未硬化の電子線硬化型樹脂層を形成した。その後、酸素濃度200ppmの環境下において、未硬化樹脂層に加速電圧125KeV、5Mradの条件で電子線を照射して樹脂を硬化させて15μm厚の電子線硬化型樹脂層(透明性表面保護層)を形成した。
【0100】
以上の方法により、厚み160μmの化粧シートを作製した。
【0101】
(中間層)
高密度ポリエチレンをTダイ押出し機を用いて押し出し形成することにより、厚み400μmの透明高密度ポリエチレンシート(中間層)を得た。
【0102】
前記透明高密度ポリエチレンシートは、厚さ12mmのラワン合板上に貼着し、JIS K 6253の規定の従って、タイプDのデュロメーターを用いて測定した場合の表面硬度が55であった。
【0103】
さらに、得られた中間層の両面をコロナ放電処理した。
【0104】
(床用化粧材の作製)
前記化粧シートの裏面プライマー面に、熱硬化性ウレタン樹脂系接着剤を固形分量が8g/m2となるように塗工し、その上に前記中間層を積層した。前記中間層上に(化粧シートの反対面に)、ウレタン−セルロース系樹脂の溶液をグラビア印刷法により固形分量が2g/m2となるように塗工して裏面プライマー層を形成した。
【0105】
そして、前記中間層の裏面プライマー層を、厚さ12mmのラワン合板上に貼着させ床用化粧材を作製した。貼着にはウレタン変性エチレン・酢酸ビニル系エマルション接着剤(9g/尺wet)を利用した。
【0106】
JIS K 6253の規定の従って、タイプDのデュロメーターを用いて前記化粧シート側から測定した場合の前記床用化粧材の表面硬度は52であった。
【0107】
実施例2
前記樹脂シートの代わりに、60μm厚の着色ポリプロピレンフィルムを用いた以外は実施例1と同様の方法により、床用化粧材を作製した。
【0108】
そして、実施例1と同様の方法に従って床用化粧材の表面強度を測定した。得られた床用化粧材の表面硬度は59であった。
【0109】
比較例1
前記中間層の代わりに、JIS K 6253の規定の従って、タイプDのデュロメーターを用いて測定した場合の表面硬度が78である厚み400μmのポリカーボネートシートを作製し、そのシートを用いて床用化粧材を作製した以外は実施例1と同様の方法により、床用化粧材を作製した。
【0110】
そして、実施例1と同様の方法に従って床用化粧材の表面強度を測定した。得られた床用化粧材の表面硬度は75であった。
【0111】
試験例1(耐キャスター性)
実施例1及び2で得られた床用化粧材の耐キャスター性を、耐キャスター試験装置L6−O4(浅野機械製作(株)製)を使用して評価した。評価手順は次の通りである。即ち、試験対象である床用化粧材を試料固定台に固定した。この床用化粧材の表面に3個のキャスターが接しないように調節ハンドルによりキャスター固定台を上げた後に、重さ70kgとなるように荷重台に重りを載せた。次に調整ハンドルを用い3個のキャスターに載せた荷重が加わるようにした。回転速度20rpmの速度、5分間毎に反回転、1000回転とセットし1000回転完了後、調整ハンドルを回してキャスター固定台を浮かせて試験対象である床用化粧材を取り出した。
【0112】
取り出した床用化粧材の凹み深さは、100μm未満であった。よって、実施例1及び2で得られた床用化粧材は、耐キャスター性の要求される場所において有効に使用できる。
【0113】
試験例2(耐傷性)
ホフマンスクラッチ試験器(BYK−GARDNER社製)を用いて荷重1000gで、実施例1、2及び比較例1で得られた床用化粧材表面上を引き掻くことにより評価した。「○」を「表面にほとんど変化がない」、「△」を「表面にわずかな白化傷が見られる」、「×」を「表面に白化傷が目立つ」と評価した。
【0114】
評価結果を表1に示す。実施例1と2を比較すると実施例2の方がより低い荷重で白化傷が発生した。
【0115】
試験例3(耐衝撃性)
JIS K5600のデュポン衝撃試験に従って、実施例1、2及び比較例1で得られた床用化粧材表面上に、半径6.3mmの半球形状の先端を有した撃ち型を静置させ、前記撃ち型上に500g荷重のおもりを高さ30cmから落下させることにより評価した。「○」を「表面にほとんど変化がない」、「×」を「表面に割れが発生する」と評価した。評価結果を表1に示す。
【0116】
評価結果を表1に示す。
【0117】
試験例4(歩行感)
実施例1で得られた床用化粧材を前記化粧シート側が上向きになるよう床面に配置した。その上を歩行した際の歩きやすさ(足への負担等)を評価した。「○」を「比較的疲れ難い」、「×」を「比較的疲れやすい」と評価した。実施例2及び比較例1で得られた床用化粧材についても同様の評価を行った。
【0118】
評価結果を表1に示す。
【0119】
試験例5(切削性)
実施例1、2及び比較例1で得られた床用化粧剤に対して化粧シート側から、ラワン合板に達する深さの溝加工を行った。加工面を観察し、「○」を「中間層の毛羽立ちはほとんど認められない」、「×」を「中間層の毛羽立ちが顕著に認められる」と評価した。
【0120】
評価結果を表1に示す。
【0121】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質基材上に、化粧シートを積層してなる床用化粧材であって、
JIS K 6253の規定の従って、タイプDのデュロメーターを用いて前記化粧シート側から測定した場合の表面硬度が60未満である床用化粧材。
【請求項2】
前記木質基材と前記化粧シートとの間に、JIS K 6253の規定の従って、タイプDのデュロメーターを用いて測定した場合の表面硬度が60未満である中間層を有する、請求項1に記載の床用化粧材。
【請求項3】
前記中間層がポリエチレン樹脂層である請求項2に記載の床用化粧材。
【請求項4】
前記化粧シートが、樹脂シート上に、絵柄模様層、透明性接着剤層、透明性樹脂層及び透明性表面保護層を順に積層してなる積層体である、請求項1〜3のいずれかに記載の床用化粧材。
【請求項5】
前記中間層がポリエチレン樹脂層であり且つ前記樹脂シートがポリエチレンシートである請求項4に記載の床用化粧材。
【請求項6】
前記透明性表面保護層が、電離放射線硬化型樹脂が樹脂架橋し、硬化された電離放射線硬化型樹脂層である、請求項4又は5に記載の床用化粧材。

【公開番号】特開2009−97325(P2009−97325A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−85612(P2008−85612)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】