説明

床用樹脂建材

【課題】0℃〜40℃の温度帯における前記硬質樹脂層の熱膨張・熱収縮によって生じる、前記硬質樹脂層の突き上げや目すき等の不具合を改善すると同時に、施工時の利便性を向上させた床用樹脂建材を提供すること。
【解決手段】嵌合した際の表面側に、床用樹脂建材平面上で嵌合構造を有する側面と直交方向に対する0℃〜40℃の温度帯における硬質樹脂層の熱伸縮分を許容できる隙間が設けられてなり、かつ、下向きの係合突起を有する側面の建材側面側に突起を有し、突起の断面形状が、突起の上面が床面と略平行に設けられており、突起の上面と突起の下面から突起の頂点方向へ線を引いた場合の交差する角度が35°〜55°の範囲となることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は屋内や屋外の構造物床面に複数敷設して用いる床用建材であって、溶融押出樹脂を金型により略矩形平面形状に成型し、側面どうしを嵌合するための嵌合構造を設けてなる床用樹脂建材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の屋内や屋外の建造物床面にはフローリング材が多く用いられている。フローリング材には突板に塗装したものが一般的であったが、実用上の観点から耐傷性、耐汚染性などの様々な表面性能が要求されることから、木質系基材や樹脂系基材に化粧シートをラミネートしたものなどが用いられるようになってきた。また、耐衝撃性、歩行適性などから裏面側に軟質樹脂及び/又は発泡樹脂からなる緩衝層を設けたものも用いられるようになってきた。
【0003】
しかし、材料構成の要請から鑑みて、通常使用される温度帯(0℃〜40℃)における温度変化によって、前記硬質樹脂層の熱膨張や熱収縮による施工した床用樹脂建材の嵌合構造が突き上げや目すき等を生じるなど、床材としての性能を欠損する可能性があることが想定されていた。また広い用途に耐えうる床用樹脂建材として、近年普及し始めている床暖房への対応を考える上でも、温度変化に対する追従性についての問題を改善する必要があった。
【0004】
ところで、本発明者らは既に、それらの問題点を解決するための嵌合構造を提案している。(特許文献1参照)しかし、その構造上嵌め込みの際に強い力が必要であり、より簡便かつ大きな力を必要としない嵌合構造が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−224523
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたものであり、その課題とするところは、0℃〜40℃の温度帯における前記硬質樹脂層の熱膨張・熱収縮によって生じる、前記硬質樹脂層の突き上げや目すき等の不具合を改善すると同時に、施工時の利便性を向上させた床用樹脂建材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は前記課題を解決するものである。すなわちその請求項1記載の発明は、略矩形平面形状からなり、床面に複数敷設して施工する際に前記略矩形平面形状の相対する側面どうしを嵌合するための嵌合構造を硬質樹脂層に有してなる床用樹脂建材であって、前記相対する側面の一方の嵌合構造が、表面側が除かれ先端部に上向きの係合突起を有する形状からなり、相対する側面のもう一方の嵌合構造が、裏面側が除かれ先端部に下向きの係合突起を有する形状からなる床用樹脂建材において、嵌合した際の表面側に、前記床用樹脂建材平面上で前記嵌合構造を有する側面と直交方向に対する0℃〜40℃の温度帯における前記硬質樹脂層の熱伸縮分を許容できる隙間が設けられてなり、かつ、前記下向きの係合突起を有する側面の建材側面側に突起を有し、前記突起の断面形状が、前記突起の上面が床面と略平行に設けられており、前記突起の上面と前記突起の下面から前記突起の頂点方向へ線を引いた場合の交差する角度が35°〜55°の範囲となることを特徴とする床用樹脂建材である。
【0008】
またその請求項2記載の発明は前記嵌合構造で裏面側が除かれた部分以外の硬質樹脂層の裏面側に軟質樹脂及び/又は発泡樹脂からなる緩衝層を設けてなることを特徴とする請求項1記載の床用樹脂建材である。
【0009】
またその請求項3記載の発明は、前記嵌合構造で表面側が除かれた部分以外の硬質樹脂層の表面側に化粧シートを設けてなることを特徴とする請求項1または2のいずれか記載の床用樹脂建材である。
【発明の効果】
【0010】
本発明はその請求項1記載の発明により、0℃〜40℃の温度帯における前記硬質樹脂層の熱膨張・熱収縮によって生じる、床用樹脂建材の突き上げや目すき等の不具合を防止するという効果を有する。また、下向きの係合突起を有する側面の建材側面側に、上向きの係合突起を嵌合しかつ外れるのを防止するための突起を有し、前記突起の形状・角度を限定した範囲のものとすることによって、嵌合構造を嵌め合わせる際に、例えば上向きの係合突起を有する側面側を平置した状態で下向きの係合突起を有する側面側を斜めに傾けた状態で嵌合構造を嵌め込んでから前記下向きの係合突起を有する側面側の角度を戻すことで、従来の、上向きの係合突起を有する側面側の直上から下向きの係合突起を有する側面側を力を込めて嵌め合わせるよりもはるかに容易に、ほとんど力をかけずに嵌合させることが可能となる。
【0011】
またその請求項2記載の発明により、裏面側に緩衝層を設けることで耐衝撃性、歩行適性などを有するものとすることが可能となる。
【0012】
またその請求項3記載の発明により、表面側に化粧シートを設けることで意匠性のほかにも耐傷性、耐汚染性などの様々な表面性能が有するものとすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の床用樹脂建材の一実施例の断面の形状を示す説明図である。
【図2】本発明の床用樹脂建材の一実施例の嵌合構造を示す説明図である。
【図3】従来の床用樹脂建材の嵌合構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を図面に基づき詳細に説明する。図1に本発明の床用樹脂建材の一実施例の断面の形状を示す。緩衝層1と、嵌合構造4及び5を相対する側面にもつ硬質樹脂層3と、化粧シート7とを、適宜の接着剤層2、6で貼り合わせてなる。
【0015】
緩衝層1としては、後述する硬質樹脂層3との組み合わせにより衝撃吸収性能を有するものとなるのであれば適宜用いられる。特にはJIS−K−7220に準拠して測定した圧縮弾性率が0.01〜0.06MPaのものが好ましい。この値の範囲内となるものとしては、具体的には厚み3〜9mmで発泡倍率が5〜8倍のポリオレフィン系樹脂シートからなるものが挙げられる。ポリオレフィン系樹脂としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレンビニルアルコール、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、これら数種のうちの2種以上の混合体などが挙げられる。
【0016】
接着剤層2としては、前記緩衝層1および後述する硬質樹脂層3を接着するために適宜使用され、接着可能となるものであれば特に限定されるものではない。2液ウレタン水性接着剤や1液酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤、湿気硬化型ウレタン樹脂系ホットメルト接着剤などがあげられるが、具体的には前記緩衝層1が発泡ポリオレフィン系樹脂シートであり、後述する硬質樹脂層3がポリオレフィン系樹脂に木粉とタルクを配合したものであるならば、湿気硬化型ウレタン系ホットメルト接着剤が好適に用いられる。厚みとしては乾燥後で10〜100μm程度が好適である。
【0017】
本発明における硬質樹脂層3としては、0℃〜40℃の温度帯における熱伸縮を嵌合構造どうしの隙間で許容できる程度のものであればよく、特には線膨張が長手方向および短手方向どちらにおいても0.1〜0.5mmの間であれば隙間を0.5mm程度とすればよく、好適に用いられる。これらの特性を有する硬質樹脂としては、具体的には、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して木粉10〜30重量部とタルク5〜15重量部とを配合し溶融押出成形し、かつ層厚が3.0〜9.0mmであり、JIS−K−7220に準拠して測定した圧縮弾性率が0.7〜2.6MPaであるものが好適に用いられる。ポリオレフィン系樹脂としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレンビニルアルコール、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、これら数種のうちの2種以上の混合体などが挙げられる。圧縮弾性率が前記範囲内に収まる範囲であれば、発泡剤を添加して1〜2倍程度の発泡を行ってもよい。さらにはマイカ、熱安定剤、これらの相溶化剤などを適宜添加してもよい。
【0018】
本発明における、裏面側が除かれ先端部に下向きの係合突起を有する形状からなる嵌合構造4および表面側が除かれ先端部に上向きの係合突起を有する形状からなり嵌合構造5は、前記硬質樹脂層3と同様の素材を用いて、前記硬質樹脂層3と同時に溶融押出成形によって成形したものを用いる。仔細な形状については任意であるが、少なくとも嵌合構造4については角度4aが35〜55°の間のものを用いる。また、嵌合構造4は係合突起4bおよび4cを、嵌合構造5は係合突起5a、5bを持ち、各部寸法d1〜d4の大小について、d1>d2>d3>d4が成り立つ形状のものを用いるのが好適である。
【0019】
図3に特開2007−224523号公報記載の床用樹脂建材の比較例となる嵌合構造を示す。本発明では角度4aが35〜55°の間でこの線上を係合突起5cが交差しないものであれば特に問題ないが、係合突起5cは従来有している嵌合のためにの役割を本発明では有していない。よって無いものとするのが好適である。
【0020】
本発明における接着剤層6としては前記硬質樹脂層3および後述する化粧シート7を接着するために適宜使用され、接着可能となるものであれば特に限定されるものではない。2液ウレタン水性接着剤や1液酢酸ビニル樹脂エマルジョン系接着剤、湿気硬化型ウレタン樹脂系ホットメルト接着剤などがあげられるが、具体的には前記硬質樹脂層3がポリオレフィン系樹脂に木粉とタルクを配合したものであり、後述する化粧シートがポリオレフィン系樹脂シートであるならば、湿気硬化型ウレタン系ホットメルト接着剤が好適に用いられる。厚みとしては乾燥後で10〜100μm程度が好適である。厚みとしては乾燥後で10〜100μm程度が好適である。
【0021】
化粧シート7としては、基材シート上に意匠性を付与する絵柄模様層、床材表面の耐傷性や各種物性を付与する表面保護層等からなる公知のものであれば適宜使用可能であり、特に限定しない。前記硬質樹脂層3がポリオレフィン系樹脂からなるものであればポリオレフィン系樹脂シートを基材とするものが好適に用いられる。ポリオレフィン樹脂としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレンビニルアルコール、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、これら数種のうちの2種以上の混合体などが挙げられる。
【実施例1】
【0022】
<硬質樹脂層3の作成>
ポリオレフィン樹脂としてポリプロピレン(プライムポリマー(株)製「E105」)70重量部を用い、これにタルク10重量部、木粉20重量部を200℃設定で溶融加熱混合した。一方厚み5mm、巾150mm、本実形状金型を押出機の先端に取り付けておき、これを用いて前記溶融樹脂を発泡倍率1.6倍で押出し、冷却水を循環させた前記金型と同型の冷却金型に引き込み、冷却固化したのち900mmの長さに切断、堆積し、80℃オーブンで6時間加熱した後外気冷却を行い、木質樹脂からなる硬質樹脂層3とした。この硬質樹脂層3は図2に示すような嵌合構造4,嵌合構造5を両側端に持つものであり、その寸法を実測したところ、d1=4.21mm、d2=3.85mm、d3=3.67mm、d4=3.23mm、4a=43°であった。
【0023】
<緩衝層1の作成>
低密度ポリエチレン(密度:0.92g/cm、メルトインデックス:3.6g/10分)100重量部に発泡剤としてアゾジカルボンアミド10重量部をヘンシェルミキサーに投入し300rpmで3分間回転させた後、さらに1000rpmで3分間回転させ、ポリエチレンフォームを作成した。それを160℃のT台から押出し、架橋させた後、230℃の縦型熱風発泡機に連続的に導入し、厚み6.5mmで発泡倍率5.0倍の緩衝層1とした。
【0024】
<化粧シート7の作成>
厚み0.070mmのポリプロピレン樹脂製着色熱可塑性樹脂層(リケンテクノス(株)製「RIVEST−TPO」)に絵柄模様層として2液ウレタン樹脂系バインダー樹脂製のグラビアインキにて木目柄を印刷し、その上に透明熱可塑性樹脂層として透明ポリプロピレン樹脂を押出ラミネートし、さらに表面保護層を設ける前に、乾燥後の塗布量1.3g/mの2液ウレタン樹脂のリコート層の上に紫外線硬化型塗料を10g/m塗布、硬化させ、化粧シート7を得た。
【0025】
<床用樹脂建材の作成>
前記化粧シートの裏面に湿気硬化型ウレタン樹脂系ホットメルト接着剤(大日本インキ(株)製「タイフォース」)を乾燥後の塗布厚が50μmとなるよう塗布し、前記硬質樹脂層の表面に貼り合わせた。その後、前記硬質樹脂層の裏面と緩衝層の表面とを緩衝層の表面に湿気硬化型ウレタン樹脂系ホットメルト接着剤(大日本インキ(株)製「タイフォース」)を乾燥後の塗布厚が50μmとなるよう塗布してから貼り合わせ、床用樹脂建材を作成した。
【0026】
<床用樹脂建材の嵌合>
以上のようにして設けた床用樹脂建材を、嵌合凹部を有する部材側を平置した状態で嵌合係合突起を有する部材側を床面に対して約45度に斜めに傾けた状態から嵌め込み、その後嵌合係合突起を有する部材側の角度を床面に戻すことで、殆ど力をかけずに嵌合させることができた。必要荷重は20N/cm程度だった。また、嵌合凹部側の部材の直上から嵌合係合突起側の部材を嵌め合わせる際に必要な荷重は80N/cm程度であった。
【0027】
<床用樹脂建材の温度追随性>
また、同様の床用樹脂建材を7枚用意し、0℃で冷却した後、0℃で普通合板上に両面テープで施工した上で7時間養生を行った状態で各嵌合構造の隙間を測定した。その後40℃へ室温を上昇させて7時間放置した後、再び隙間を測定した。結果を表1に示す。
【0028】
【表1】

【0029】
<比較例1>
材料構成および層構成は実施例とまったく同じままに、図3に示すような嵌合構造に変えたものを用意した。また、その寸法を実測したところ、d1=4.24mm、d2=3.87mm、d3=3.71mm、d4=3.26mm、4a=85°であった。
【0030】
<床用樹脂建材の嵌合>
以上のようにして設けた床用樹脂建材を実施例1と同様にして嵌め合わせようとしたが、下部突起3cがあるためにうまくいかず、結果として嵌合凹部側の部材の直上から嵌合係合突起側の部材を嵌め合わせる際にかけた力(80N/cm)とほぼ同等の力を込めて嵌め合わせることとなった。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の床用樹脂建材は、屋内や屋外の構造物床面に複数敷設して用いることが可能である。特には床暖房などを備えた温度変化のある床面に対しても熱伸縮による突き上げなどの問題も無く適用可能である。
【符号の説明】
【0032】
1…緩衝層
2…接着剤層
3…硬質樹脂層
4…嵌合構造
5…嵌合構造
6…接着剤層
7…化粧シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略矩形平面形状からなり、床面に複数敷設して施工する際に前記略矩形平面形状の相対する側面どうしを嵌合するための嵌合構造を硬質樹脂層に有してなる床用樹脂建材であって、
前記相対する側面の一方の嵌合構造が、表面側が除かれ先端部に上向きの係合突起を有する形状からなり、相対する側面のもう一方の嵌合構造が、裏面側が除かれ先端部に下向きの係合突起を有する形状からなる床用樹脂建材において、
嵌合した際の表面側に、前記床用樹脂建材平面上で前記嵌合構造を有する側面と直交方向に対する0℃〜40℃の温度帯における前記硬質樹脂層の熱伸縮分を許容できる隙間が設けられてなり、
かつ、前記下向きの係合突起を有する側面の建材側面側に突起を有し、前記突起の断面形状が、前記突起の上面が床面と略平行に設けられており、前記突起の上面と前記突起の下面から前記突起の頂点方向へ線を引いた場合の交差する角度が35°〜55°の範囲となることを特徴とする床用樹脂建材。
【請求項2】
前記嵌合構造で裏面側が除かれた部分以外の硬質樹脂層の裏面側に軟質樹脂及び/又は発泡樹脂からなる緩衝層を設けてなることを特徴とする請求項1記載の床用樹脂建材。
【請求項3】
前記嵌合構造で表面側が除かれた部分以外の硬質樹脂層の表面側に化粧シートを設けてなることを特徴とする請求項1または2のいずれか記載の床用樹脂建材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−11137(P2013−11137A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145650(P2011−145650)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(593173840)株式会社トッパン・コスモ (243)
【Fターム(参考)】