説明

床用清掃シート

【課題】清掃持続性に優れると共に髪の毛・ホコリ等のダスト捕集性が向上し、且つ、拭き心地を改善することが可能な床用清掃シートを提供する。
【解決手段】あらかじめ水を30重量/体積%を含浸すると共にさらにそれ以上に水を吸収できる吸水能を有する湿式シート2と、湿式シート2の一方又は両方のシート表面を被覆する被覆シート3とを備え、被覆シート3の静止摩擦係数が0.3以上0.6未満の範囲であることを特徴とする床用清掃シート1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モップ状の掃除用具に装着されて用いられる取替え式の清掃シートであり、更に詳しくは、床上の清掃持続性及び髪の毛、ホコリ等に対するダスト捕集性に優れた発泡性樹脂を活用した床用清掃シートの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から一般の家庭では、床(フロア)の掃除用具として洗浄部使い捨て型床用モップが使用されている。そして、フロアのざらつき汚れやベタツキ汚れを簡便に除去するために、あらかじめ洗浄液を含浸させた不織布をモップ本体にとりつけた水拭き用の清掃用シートが広く用いられている。
【0003】
しかし、不織布を用いた清掃用シートは、不織布にあらかじめ含浸された洗浄液の量が十分ではないため、上述のざらつき汚れやベタツキ汚れを好適に除去できるのは使い始めの数畳程度の範囲のみであり、清掃力の持続性に問題があった。
【0004】
そこで、含水性に優れる発泡性樹脂を清掃シートに適用することで、清掃力の持続性の問題は解消される。しかしながら、このような清掃シートは、発泡性樹脂が充分な洗浄液を含浸しており、清掃力の持続性が維持されているときには、髪の毛やホコリを除去することができない。これに対して、発泡性樹脂に含浸された洗浄液がなると髪の毛やホコリを除去することができるようになるが、清掃力の持続性が維持されなくなる。このように、従来は、清掃力の持続性と髪・ホコリ等のダスト捕集性とが相反する性能であって、両立することが非常に困難であるという問題があった。
【0005】
また、上述のように含水性に優れる発泡性樹脂を清掃シートに用いることによって清掃力の持続性は確保されるが、含水した発泡性樹脂と床等の清掃面との摩擦の高さに起因して拭き心地が悪くなるという問題があった。
【0006】
ところで、発泡性樹脂を用いた清掃シートに係る公知文献として、例えば下記特許文献1〜3が知られている。また、不織布を用いた含水性に優れる清掃シートに関する公知文献として、4,5が知られている。
このうち、特許文献1には、スポンジシートの少なくとも片面に引張強度が100N/5cm以上である極細繊維不織布がホットメルトで結合し、一体化された清掃シートが開示されている。これにより、汚れの払拭性に優れた清掃シートが得られると記載されている。
一方、特許文献2には、保水性のあるスポンジ体を超極細繊維からなる不織布でくるんだ清掃具が開示されている。これにより、汚れを含んだ水滴が付着した部分を簡単且つ確実に清掃することができると記載されている。
【0007】
一方、特許文献3には、シート状に形成された軟質スポンジとこの軟質スポンジを覆う布袋とが接着されている洗浄具が開示されている。これにより、軟質スポンジと布袋とがずれることがなく、頑固な汚れも確実に除去することができると記載されている。
一方、特許文献4には、掃除具の清掃部に装着されて使用される、水性洗浄剤が含浸された床用清掃シートであって、シートの表面が所定の静摩擦抵抗値を有する不織布で形成されている床用清掃シートが開示されている。これにより、髪の毛・ホコリ等の捕集性が良好な湿式清掃シートを提供することができると記載されている。
一方、特許文献5には、繊維集合体に水性洗浄剤が含浸されるとともに、この繊維集合体が所定の静摩擦抵抗値を有するウェットシートが開示されている。これにより、ダストの捕集性能が高く、清掃時の摩擦抵抗が低く操作性が良好なウェットシートを提供することができると記載されている。
【特許文献1】特開2004−236732号公報
【特許文献2】特開2000−262453号公報
【特許文献3】特開2003−210381号公報
【特許文献4】特開2001−269300号公報
【特許文献5】特開2007−151821号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1は、清掃用具に装着するものではなく、特許文献2は、シート状のものではないために床用清掃シートへの応用は困難である。また、特許文献3では、スポンジ等が何ら規定されておらず、清掃持続力に優れるものではない。さらに、特許文献4及び特許文献5には2層、3層の不織布からなる清掃シートによって、ダストの捕集性及び拭き心地が改善されているが、清掃持続性の向上については開示されておらず、示唆もされていない。
【0009】
そこで、本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、清掃持続性に優れると共に髪の毛・ホコリ等のダスト捕集性が向上し、且つ、拭き心地を改善することが可能な床用清掃シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、特定の発泡性樹脂を用い、表面層には特定の発泡性樹脂、織布、不織布を用いることにより、上記目的を達成できることを知見し、本発明に至ったものである。
すなわち、本発明の床用清掃シートは、清掃用具の清掃部に装着されて使用される床用清掃シートであって、あらかじめ水を30重量/体積%を含浸すると共にさらにそれ以上に水を吸収できる吸水能を有する湿式シートと、湿式シートの一方又は両方のシート表面を被覆する被覆シートとを備え、被覆シートの静止摩擦係数が0.3以上0.6未満の範囲であることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る床用清掃シートは、あらかじめ水を30重量/体積%を含浸すると共にさらにそれ以上に水を吸収できる吸水能を有する湿式シートを備えている。このように吸水性に優れる湿式シートを用いているため、所定量の水を含浸した状態でさらに水分の吸収及び放出をすることができる。これにより、乾いた床を水拭きできると共に濡れた床の水分を吸い取ることができる。したがって、床への清掃力持続性を向上することができる。
また、湿式シートの表面には、所定の静止摩擦係数を有する被覆シートが被覆されているため、髪の毛・ホコリ等のダスト捕集性を向上すると共に、拭き心地を改善することができる。
【0012】
また、本発明の床用清掃シートは、湿式シートがPVA、セルロース、ウレタン樹脂から選ばれる1種であることが好ましい。これらのような水分の吸収能が高いものを湿式シートとして用いることにより、清掃持続性を向上することができる。
さらに、本発明の床用清掃シートは、湿式シートの吸水能が0.5cm/cm以上であることが好ましい。これにより、床の清掃において、11m以上の清掃持続力を発揮することができる。
【0013】
更にまた、本発明の床用清掃シートは、被覆シートが、吸水能を有しない発泡性樹脂、織布、不織布から選ばれる1種であることが好ましい。これらのような素材を被覆シートに適用することにより、被覆シートを介して湿式シートが水分を吸収及び放出することができる。これにより、被覆シート表面が水分を保持しないため、被覆シートによる髪の毛・ホコリ等のダスト捕集性を向上することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、清掃持続性に優れると共に髪の毛・ホコリ等のダスト捕集性が向上し、且つ、拭き心地を改善することが可能な床用清掃シートを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を適用した床用清掃シートについて、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明を適用した一実施形態を示す床用清掃シートの斜視図である。また、図2は、湿式シートの吸水能の測定方法を示す斜視図である。さらに、図3は、被覆シートの静止摩擦係数の測定方法を示す模式図である。更にまた、図4は、本発明を適用した床用清掃シートの具体例を示す斜視図である。なお、以下の図1〜図4は本発明の実施形態の構成を説明するためのものであり、図示される各部の大きさ、厚さ、寸法等は、実際の床用清掃シートの寸法関係とは異なる場合がある。
【0016】
図1に示すように、本発明を適用した床用清掃シート1は、図示しない清掃用具の清掃部に装着する装着面2aと床と接触する接地面2bとを有する湿式シート2と、接地面2bを被覆する被覆シートとから概略構成されている。具体的には、床用清掃シート1は、あらかじめ水を30重量/体積%を含浸し、さらにそれ以上に水を吸収可能な湿式シート2と、静止摩擦係数が0.3以上0.6未満の範囲であって湿式シート2の接地面2bを被覆する被覆シート3とを備えている。
【0017】
<湿式シート>
湿式シート2は、図1に示すように、長方形のシート形状を有しているが、特にこれに限定されるものではなく、床用清掃シート1を装着する清掃用具の清掃部の形状にあわせて適宜変更することが可能である。したがって、湿式シート2の大きさ、形状、厚みは、特に限定されるものではない。
【0018】
湿式シート2は、あらかじめ水分を含浸させておくことが可能であって、この水分を含浸した状態からさらに吸水することが可能な吸水性に優れた素材、すなわち、吸水性発泡性樹脂であることが好ましい。また、湿式シート2には、清掃持続性を保持するため、含浸している水分を放出することができる素材であることが好ましい。本実施形態の床用清掃シート1は、吸水性に優れた素材からなる湿式シート2に後述する水性洗浄剤が含浸されて本実施形態の床用清掃シート1としての特性が発現する。
【0019】
(吸水性発泡性樹脂)
湿式シート2を構成する吸水性発泡性樹脂には、ポリイソシアネートとポリオールを原料とし、ウレタン化、発泡化により生成するプラスチックフォームである硬質又は軟質ウレタンフォームである発泡性樹脂を適用することができる。また、ポリビニルアルコールにホルムアルデヒドを添加してアセタール化したPVAスポンジ、さらには植物繊維で作られたセルローススポンジ等を適用することもできる。これらのいずれも、水を充分に含むことができるスポンジ、フォームであることが好ましい。
【0020】
(吸水能)
湿式シート2は、水分を放出するだけでなく、あらかじめ水分を含浸させた状態からさらに水分を吸収できる素材であることが好ましい。このような素材でない場合には、清掃時に床に放出される水性洗浄剤が過剰となり、清掃後の床にベタツキが生じてしまうという問題が生じる。
【0021】
床用清掃シート1の清掃持続性は、6畳(11m)以上であることが好ましい。したがって、湿式シート2は、6畳以上の床を拭く事が可能な水分量を保持するために、あらかじめ30重量/体積%の水分を吸収させている。例えば、湿式シート2が3gの水分を含んで膨らんだ状態の体積が10cmの場合に、水の含水量が30重量/体積%となる。また、清掃時において床面に過剰の水分を残さないようにするために、上述のようにあらかじめ30重量/体積%の水分を吸収させた湿式シート2が、なお水分を吸収できる能力(吸水能)を備えていることが好ましい。
【0022】
湿式シート2(吸水性発泡性樹脂)の吸水能は、0.5cm/cm以上であることが好ましい。
ここで、上述の吸水能の測定は、図2に示すように、あらかじめ30重量/体積%の水分を吸収させた10mm×10mm×250mmの湿式シート2の下部を水面に接触させて、さらにどれだけ水分を吸収できるかどうかを確認することにより行った。
より具体的には、先ず、10mm×10mm×250mmの湿式シート2のサンプル芯材に、25℃、65%RHの恒温恒湿室であらかじめ30重量/体積%の水を含浸させる。次に、この湿式シート2を青色(色素名:ブリリアントブルーFCF;アイゼン製)に着色した水に接するように垂らして、2分後の青色水の浸透した高さ(cm)を測定する。この青色水の浸透した高さを吸水能とし、この数値を用いて湿式シート2の吸水性を判断する。そして、湿式シート2(吸水性発泡性樹脂)の吸収能が0.5cm/cm以上であると、床の表面に過剰の水分を放出することなく、清掃持続力を維持することができるため好ましい。
【0023】
(水性洗浄剤)
湿式シート2は、使用時に水性洗浄剤を含浸させて使用することができる。含浸させる水性洗浄剤は、水を媒体として、界面活性剤、アルカリ剤、増粘剤及び水溶性溶剤を含有することが望ましい。また、水性洗浄剤に含有される各成分は、全て実質的に水溶性であることが好ましい。さらに、水性洗浄剤中に含有される不揮発残留成分は、10重量%以下であることが好ましく、1重量%以下であることがより好ましい。
【0024】
界面活性剤は、特に限定されるものではなく、例えば、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤および両性界面活性剤の何れも用いることが可能である。そして、界面活性剤には、特に洗浄性と仕上がり性の両立の面から、ポリオキシアルキレン(アルキレンオキサイド付加モル数1〜20)アルキル(炭素数8〜22の直鎖又は分岐鎖)エーテル、ソルビタン脂肪酸(炭素数8〜22の直鎖又は分岐鎖)エステル、アルキルカルボキシベタイン、アルキルスルホベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン、アルキルアミドカルボキシベタイン、アルキルアミドスルホベタイン、アルキルアミドヒドロキシスルホベタイン等のアルキル炭素数8〜24の両性界面活性剤を適用することが好ましい。また、界面活性剤は、水性洗浄剤中に0.01〜1.0重量%の範囲で含有されることが洗浄性及び被清掃面の仕上がり性の面で好ましく、特に0.05〜0.5重量%の範囲で含有されることが好ましい。
【0025】
アルカリ剤は、特に限定されるものではなく、例えば、水酸化ナトリウム等の水酸化物、炭酸ナトリウム等の炭酸塩、硫酸水素ナトリウム等のアルカリ性の硫酸塩、第1リン酸ナトリウム等のリン酸塩、酢酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム等の有機アルカリ金属塩、アンモニア、モノ、ジ又はトリエタノールアミン等のアルカノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等のβ−アミノアルカノール並びにモルホリン等を用いることが可能である。そして、アルカリ剤には、特に感触とpHの緩衝性の点でモノ、ジ又はトリエタノールアミン等のアルカノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等のβ−アミノアルカノール並びにモルホリンを適用することが好ましい。また、アルカリ剤は、水性洗浄剤中に0.01〜1重量%の範囲で含有されることが洗浄性及び感触の面で好ましく、特に0.05〜0.5重量%の範囲で含有されることが好ましい。
【0026】
増粘剤は、特に限定されるものではなく、例えば、天然多糖類、セルロース系高分子及びデンプン系高分子、ビニル系高分子およびポリエチレンオキシド等のその他合成高分子、粘土鉱物等の水溶性高分子を用いることが可能である。そして、増粘剤には、特にベタツキ感、ヌルツキ感が低いという点で、ポリアクリル酸系増粘剤、もしくは、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体系増粘剤又はこれらの混合物を適用することが好ましい。また、増粘剤は、水性洗浄剤中に0.01〜2重量%の範囲で含有されることが被清掃面の仕上がり性の点で好ましく、特に0.02〜1重量%の範囲で含有されることが好ましい。
【0027】
水溶性溶剤は、特に限定されるものではなく、一価アルコール、多価アルコール及びその誘導体から選ばれる1種以上のものを適用することが好ましい。そして水溶性溶剤には、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等を適用することが好ましい。また、水溶性溶剤は、水性洗浄剤中に1〜50重量%の範囲で含有されることが臭い及び皮膚刺激性の低減の点から好ましく、特に1〜20重量%の範囲で含有されることが好ましい。
【0028】
また、水性洗浄剤は、前述の各成分に加えて除菌剤を含有させることもできる。これによって、水性洗浄剤に、洗浄効果に加えて除菌効果を付与することができる。
【0029】
除菌剤は、特に限定されるものではなく、例えば、過酸化水素、次亜塩素酸、次亜塩素酸ナトリウム、第4級アンモニウム塩、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸ナトリウム、天然除菌剤等を用いることが可能である。そして除菌剤には、特に配合安定性と除菌性能の点から、第4級アンモニウム塩、天然除菌剤のポリリジン等を適用することが好ましい。また、除菌剤は、水溶性洗浄剤中に0.005〜2重量%の範囲で含有することが除菌効果と皮膚刺激性低減とのバランスの点から好ましく、特に0.01〜1重量%含有されることが好ましい。
【0030】
更に、水溶性洗浄には、必要に応じて香料、防腐剤、色素(染料、顔料)、キレート剤、ワックス剤等を含有させることもできる。
更にまた、水性洗浄剤には、媒体として水が水性洗浄剤中に50〜99.9重量%の範囲で含有されることが被清掃面の仕上がり性の点から好ましく、特に80〜99重量%の範囲で含有されることが好ましい。
【0031】
<被覆シート>
被覆シート3は、図1に示すように、湿式シート2の接地面2b側に設けられており、接地面2bを被覆するように形成されている。また、被覆シート3は、湿式シート2と同じサイズの長方形のシート形状を有しているが、特にこれに限定されるものではなく、少なくとも湿式シート2の接地面2bを被覆できればよい。
【0032】
被覆シート3の素材は、水拭きをした際の静止摩擦係数が0.3以上0.6未満の範囲となるものであれば、特に限定されるものではない。被覆シート3で被覆されていない湿式シート2では、床との摩擦力が大きく拭き心地が悪かったが、このような被覆シート3によって湿式シート2を被覆することによって、床清掃時の拭き心地を良好なものに改善することができる。また、被覆シート3の素材には、例えば、上述した0.5cm/cm以上の吸水能を有しない発泡性樹脂、織布、不織布から選ばれる1種を適用することが好ましい。
【0033】
(発泡性樹脂)
被覆シート3には、静止摩擦係数が0.3以上0.6未満の範囲に入る発泡性樹脂3Aを適用することができる。発泡性樹脂3Aには、例えば、ポリイソシアネートおよびポリオールを原料とし、ウレタン化、発泡化により生成するプラスチックフォームである硬質および軟質ウレタンフォームを適用することが好ましく、疎水性であることがより好ましい。また、発泡性樹脂3Aは、吸水能を有している湿式シート2の性能を生かして毛髪洗浄力を向上させるために、セル数(個/25mm)が10〜50個を有するものが好ましく、より好ましくは15〜40個の有するものである。
【0034】
(織布)
また、被覆シート3には、静止摩擦係数が0.3以上0.6未満の範囲に入る織布3Bを適用することができる。織布3Bは、湿式シート2の高い吸水能を生かすために、大きな隙間を有するものが好ましい。また、織布3Bには、毛髪やホコリ等を効果的に除去するために極細な化学繊維が含まれていることが好ましい。さらに、織布3Bには、親水性に富む繊維を有すると共に、疎水性の極細繊維で髪の毛・ホコリをかきとる能力を備えた、体や皮膚にやさしいボディタオルを適用することが最も好ましい。
【0035】
(不織布)
さらに、被覆シート3には、静止摩擦係数が0.3以上0.6未満の範囲に入る不織布3Cを適用することができる。不織布3Cは、スパンレース製法を用いて、表面加工はプレーン、目付けは30〜70g/mの範囲となるように製造されたものが好ましい。また、不織布3Cは、親水性成分を含まないことが好ましい。不織布3Cに親水性成分であるパルプ、コットン等が含まれると静止摩擦係数が高くなり、拭き心地が悪くなるため好ましくない。
【0036】
(静止摩擦係数の測定方法)
被覆シート3の静止摩擦係数は、その表面がJISG4305に規定のNo.2Bに仕上げされたSUS304ステンレス鋼板に対する静止摩擦係数をいう。この静止摩擦係数の測定は、図3に示すように、先ず、300mm×300mmのSUS304ステンレス鋼板(両表面はJISG4305に規定のNo.2B仕上げ)で成型されたプレート上の右端にサンプル(調整方法は後述する)を置く。次に、このサンプルに400gの荷重をかけた状態で、プレートの左端を支点として右端を徐々に持ち上げる。そして、荷重がかかったサンプルが滑り落ちる瞬間のプレートの傾きθを計測する。この傾きθにおいて、図3に示すaとbとを求めて、静止摩擦係数μ=b/aを算出する。静止摩擦係数μが小さいほど床との抵抗が小さくなるため、良い拭き心地が得られる。
「発泡性樹脂3Aのサンプル調整方法」
先ず、60mm×100mm×10mm(厚さ)に調整された湿式シート2の表面に発泡性樹脂3Aを取り付ける。次に、湿式シート2の体積を基準として、あらかじめ30重量/体積%の洗浄液(塩化ベンザルコニウム:0.05質量%、エタノール:5質量%、残部:水)を含浸させて、静止摩擦係数測定用のサンプルとした。
「織布3B、不織布3Cのサンプル調整方法」
先ず、織布3B又は不織布3Cを60mm×100mmのサイズに形成する。次に、この織布3B又は不織布3Cの表面に2mlの水を添加し、均一に吸収させて(吸収しない場合はそのまま)静止摩擦係数測定用のサンプルとした。
【0037】
(被覆方法)
被覆シート3による湿式シート2の表面を被覆する方法は、特に限定されるものではなく、湿式シート2の少なくとも接地面2bが床と直接接触しないような態様であればよい。例えば、被覆シート3として発泡性樹脂3Aを用いた場合には、図1に示すように、湿式シート2の接地面2bに発泡性樹脂3Aを熱溶着によって一体化することで被覆することができる。これにより、湿式シート2と被覆シート3とにより2層構造とされた床用清掃シート1を提供することができる。
【0038】
また、被覆シート3として織布3B又は不織布3Cを用いた場合には、例えば図4(a)〜(c)に示すように、一対の織布3B又は不織布3Cの間に湿式シート2を挿入し、被覆シート3同士を袋状(図4(a),(b)参照)あるいは両端が開口した状態(図4(c)参照)に熱溶着する。これにより、湿式シート2の装着面2a及び接地面2bの両表面が被覆シート3によって被覆された3層構造の床用清掃シート11,12,13を提供することができる。なお、織布3B及び不織布3Cには、熱溶着成分が含まれていることを要する。
【0039】
さらに、発泡性樹脂3Aの場合であっても、図4(d)に示すように、湿式シート2の両表面に熱溶着することで3層構造の床用清掃シート14を提供することができる。このように3層構造の床用清掃シート11,12,13,14では、シートの両面を清掃に使用することができるため好ましい。
【0040】
上述したような床用清掃シート1(11,12,13,14)を用いて床の清掃を行う場合には、まず清掃用具の清掃部に装着面2aを装着する。次に、接地面2bを被覆する被覆シート3を床と接触させて、清掃用具の操作を行う。このようにして、床用清掃シート1によって床を清掃することができる。そして、湿式シートにより、床が乾いていても濡れていても快適に水拭き掃除をすることができ、またその清掃力が持続する。さらに、被覆シートによって、髪の毛やホコリといったダスト捕集性が向上すると共に、その静止摩擦係数によって拭き心地も改善することができる。
【0041】
図5は、清掃用具に装着した床用清掃シート1(11,12,13,14)の具体例を示す斜視図である。本実施形態の床用清掃シート1(11,12,13,14)は、図5(a)に示すように、市販の床用ワイパー及び雑巾ワイパーのいずれの掃除用具にも適用することが可能である。さらに、床用清掃シート1(11,12,13,14)の形状を変えることにより、ポリッシャーの底(図5(b)参照)や、全自動掃除機(図5(c)参照)の清掃部にも取り付けることが可能である。
【0042】
以上説明したように、本実施形態に係る床用清掃シート1は、あらかじめ水を30重量/体積%を含浸すると共にさらにそれ以上に水を吸収できる吸水能を有する湿式シート2を備えているため、所定量の水を含浸した状態でさらに水分の吸収及び放出をすることができる。これにより、乾いた床を水拭きできると共に濡れた床の水分を吸い取ることができ、床への清掃力持続性を向上することができる。
また、湿式シート2の表面には、所定の静止摩擦係数を有する被覆シート3で被覆しているため、髪の毛・ホコリ等のダスト捕集性を向上すると共に、拭き心地を改善することができる。
【0043】
また、本実施形態の床用清掃シート1は、湿式シート2がPVA、セルロース、ウレタン樹脂から選ばれる1種であることが好ましい。これらのような水分の吸収能が高いものを湿式シート2として用いることにより、清掃持続性を向上することができる。
さらに、湿式シート2の吸水能が0.5cm/cm以上とすることで、11m以上の清掃持続力とすることができる。
更にまた、被覆シート3が吸水能を有しない発泡性樹脂、織布、不織布から選ばれる1種であると、被覆シート3を介して湿式シート2が水分を吸収及び放出することができる。これにより、被覆シート3表面が水分を保持しないため、被覆シート3による髪の毛・ホコリ等のダスト捕集性を向上することができる。
【0044】
以上のように、本実施形態によれば、清掃持続性に優れると共に髪の毛・ホコリ等のダストの捕集性が向上し、且つ、拭き心地を改善することが可能な床用清掃シート1を提供することができる。
【実施例】
【0045】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の効果をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0046】
<サンプル作成>
先ず、表1に示す種々の湿式シート(吸水性発泡性樹脂)の吸水能を測定した。次に、表2〜4に示す種々の被覆シートの静止摩擦係数を測定した。さらに、これらの湿式シートと被覆シートとを組み合わせて本発明を適用した床用清掃シートを製造し、実施例1〜30及び比較例1〜7とした。そして、これらの実施例1〜30及び比較例1〜7について、静止摩擦係数、清掃持続性、ダスト捕集性、拭き心地の各性能評価を行った。以下に、評価方法及び評価基準について説明する。
【0047】
<吸水能>
(評価方法)
表1に示した各湿式シートa−1〜a−10について、吸水能を測定した。吸水能の測定は、先ず、各湿式シートa−1〜a−10について10mm×10mm×250mmのサンプル芯材を作成し、これにあらかじめ30重量/体積%の水を含浸させた。次に、25℃、65%RHの恒温恒湿室で、上述したサンプル芯材を青色(色素名:ブリリアントブルーFCF;アイゼン製)に着色した水に接するように垂らした(図3を参照)。そして、2分後の青色水の浸透した高さ(cm)を測定し、吸水能とした。
(評価基準)
吸水能は、上述した吸水能の数値が大きいほど吸水能が良いと判断した。そして、吸水能の評価基準は、0.5cm以上をOK判定(合格)とし、0.5cm未満をNG判定(不合格)とした。
【0048】
【表1】

【0049】
<静止摩擦係数>
(評価方法)
被覆シートの静止摩擦係数の測定は、図3に示すように、先ず、300mm×300mmのSUS304ステンレス鋼板(両表面はJISG4305に規定のNo.2B仕上げ)で成型されたプレート上の右端に表2〜表4中に示す被覆シートのサンプル(調整方法は後述)を置いた。次に、このサンプルに400gの荷重をかけた状態で、プレートの左端を支点として右端を徐々に持ち上げて、荷重がかかったサンプルが滑り落ちる瞬間のプレートの傾きθを計測した。そして、この傾きθにおける、図3に示すaとbとを求めて、静止摩擦係数μ=b/aを算出した。
「発泡性樹脂(表2)の調整方法」
先ず、60mm×100mm×10mm(厚さ)に調整した湿式シートの表面に発泡性樹脂を取り付ける。次に、湿式シートの体積を基準として、あらかじめ30重量/体積%の洗浄液(塩化ベンザルコニウム:0.05質量%、エタノール:5質量%、残部:水)を含浸させて、静止摩擦係数測定用のサンプルとした。
「織布(表3)、不織布(表4)の調整方法」
先ず、織布又は不織布を60mm×100mmのサイズに形成した。次に、この織布又は不織布の表面に2mlの水を添加し、均一に吸収させて(吸収しない場合はそのまま)静止摩擦係数測定用のサンプルとした。
「実施例1〜30及び比較例1〜7の調整方法」
先ず、60mm×100mm×10mm(厚さ)に調整した湿式シートの表面に被覆シートを取り付ける。次に、湿式シートの体積を基準として、あらかじめ30重量/体積%の洗浄液(塩化ベンザルコニウム:0.05質量%、エタノール:5質量%、残部:水)を含浸させて、静止摩擦係数測定用のサンプルとした。
(評価基準)
静止摩擦係数は、上述した静止摩擦係数μの数値が小さいほど床との抵抗が小さいと判断した。そして、静止摩擦係数の評価基準は、0.3以上0.6未満の範囲をOK判定(合格)とし、それ以外をNG判定(不合格)とした。
【0050】
【表2】

【0051】
【表3】

【0052】
【表4】

【0053】
<清掃持続性>
(評価方法)
実施例1〜30及び比較例1〜7の床用清掃シートのサイズを100mm×2500mm×10mmとして、先ず、これらの各清掃シートにあらかじめ30重量/体積%となるように洗浄液Aを含浸させた。次に、これらの含浸したサンプルに1666gの荷重をかけて、フローリング板(松下電工製 NEWオーマイティフロアー KE12SP)で乾かずに拭き取れる面積(m)を求めた。そして、この面積を清掃持続性とした。
なお、床用清掃シートに含浸させる洗浄液Aには、以下の組成のものを適用した。
「洗浄液A」
塩化ベンザルコニウム:0.05質量%
エタノール: 5質量%
残部: 水
(評価基準)
清掃持続性は、乾かずに拭き取れる面積の数値が大きいほど清掃持続性が高いと判断した。そして、清掃持続性の判断基準は、11m以上広く拭けるものを合格とし、11m未満を不合格とした。
【0054】
<ダスト捕集性>
(評価方法)
実施例1〜30及び比較例1〜7の床用清掃シートのサイズを60mm×100mm×10mmとして、先ず、これらの各清掃シートにあらかじめ30重量/体積%となるように上記の洗浄液Aを含浸させた。次に、500mm×200mmのモデルフローリング上(松下電工製 NEWオーマイティフロアー KE12SP)に長さ10cmの髪の毛10本を散布した。さらに、洗浄液Aを含浸した各清掃シートに400gの荷重をかけながらモデルフローリング上を2往復した際の除去数(捕集数)を測定した。この試験を5回繰り返して平均の除去率を求めて、これをダスト捕集性とした。
(評価基準)
ダスト捕集性は、除去率が高いほどダスト捕集性が高いと判断した。そして、ダスト捕集性の判断基準は、除去率が60%以上を合格とし、60%未満を不合格とした。
【0055】
<拭き心地>
(評価方法)
実施例1〜30及び比較例1〜7の床用清掃シートのサイズを100mm×2500mm×10mmとして、先ず、これらの各清掃シートにあらかじめ30重量/体積%となるように上記の洗浄液Aを含浸させた。次に、この清掃シートを市販の「ぞうきんワイパー300(ヘッド部分:105mm×2700mm、全長1250mm、山崎産業製)」に取り付けた。そして、専門パネラー3名に6畳のフローリングを拭いてもらい、その時の使用実感を官能評価した。この使用実感を拭き心地とした。
(評価基準)
拭き心地は、パネラー3名の使用実感が下記の判定基準で○又は◎を拭き心地が良いと判断した。そして、拭き心地の判断基準は、○又は◎を合格とし、△又は×を不合格とした。
「判定基準」
◎:非常に良い
○:良い
△:悪い(使用感が重すぎ)
×:悪い(使用感が軽すぎ)
なお、3名の判定が異なった場合は、2名の判定結果を採用した。
【0056】
<評価結果>
実施例1〜30及び比較例1〜7について、上記の評価方法に従って静止摩擦係数、清掃持続性、ダスト捕集性、拭き心地を評価した。
表5には、被覆シートとして表2に示した発泡性樹脂を用いた実施例1〜17及び比較例1〜4の評価結果を示す。
また、表6には、被覆シートとして表3に示した織布を用いた実施例18〜21及び比較例5の評価結果を示す。
さらに、表7には、被覆シートとして表4に示した不織布を用いた実施例22〜30及び比較例6,7の評価結果を示す。
なお、表5〜7において、静止摩擦係数、清掃持続性、ダスト捕集性、拭き心地のいずれの評価項目も合格のものについては、「OK」判定(合格)とし、上記評価項目においていずれか一つでも不合格のものについては、「NG」判定(不合格)とした。
【0057】
表5の結果から、比較例1〜4は、湿式シートとして吸水能を有する発泡性樹脂を用いないと清掃持続性に欠けることを確認した。また、被覆シートとして静止摩擦係数を下げると共に吸水能を有しない発泡性樹脂を用いないと、ダスト捕集性に劣ることを確認した。
これに対して、実施例1〜17は、吸水能を有する発泡性樹脂を湿式シートに用いており、静止摩擦係数を下げると共に吸水能を有しない発泡性樹脂を被覆シートに用いているため、清掃持続性及びダスト捕集性に優れ、且つ、拭き心地が良い床用清掃シートが得られることを確認した。
【0058】
また、表6及び表7の結果から、比較例5,6,7は、被覆シートとして静止摩擦係数が0.3以上0.6未満の範囲を満たさない織布及び不織布を用いているため、拭き心地に劣ることを確認した。
これに対して、実施例18〜21及び実施例22〜30は、吸水能を有する発泡性樹脂を湿式シートに用いており、静止摩擦係数が0.3以上0.6未満の範囲を満たす織布又は不織布を被覆シートに用いているため、清掃持続性及びダスト捕集性に優れ、且つ、拭き心地が良い床用清掃シートが得られることを確認した。
【0059】
【表5】

【0060】
【表6】

【0061】
【表7】

【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】図1は、本発明を適用した床用清掃シートを示す斜視図である。
【図2】図2は、湿式シートの吸水能の測定方法を示す斜視図である。
【図3】図3は、被覆シートの静止摩擦係数の測定方法を示す模式図である。
【図4】図4は、本発明を適用した床用清掃シートの具体例を示す斜視図である。
【図5】図5は、清掃用具に装着した床用清掃シートの具体例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0063】
1,11,12,13,14…床用清掃シート、2…湿式シート、2a…装着面、2b…接地面、3…被覆シート、3A…発泡性樹脂、3B…織布、3C…不織布

【特許請求の範囲】
【請求項1】
清掃用具の清掃部に装着されて使用される床用清掃シートであって、
あらかじめ水を30重量/体積%を含浸すると共にさらにそれ以上に水を吸収できる吸水能を有する湿式シートと、
前記湿式シートの一方又は両方のシート表面を被覆する被覆シートとを備え、
前記被覆シートの静止摩擦係数が0.3以上0.6未満の範囲であることを特徴とする床用清掃シート。
【請求項2】
前記湿式シートがPVA、セルロース、ウレタン樹脂から選ばれる1種であることを特徴とする請求項1に記載の床用清掃シート。
【請求項3】
前記湿式シートの吸水能が0.5cm/cm以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の床用清掃シート。
【請求項4】
前記被覆シートが、前記吸水能を有しない発泡性樹脂、織布、不織布から選ばれる1種であることを特徴とする請求項1乃至3に記載の床用清掃シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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