説明

床用配線部材

【課題】安全性を向上させた床用配線部材を提供する。
【解決手段】床用配線部材8は、プレート部材4と蓋材5とを主要な構成として備える。蓋材5は、電線を通すための通線孔52が設けられた蓋本体50と、蓋本体50に回転自在に支持されて通線孔52を閉塞する通線チップ53とで構成される。通線チップ53は、通線チップ53の回転軸となる軸53bと、通線チップ53を開いた状態においてプレート部材4の第1の載置部に少なくとも一部が載置される脚片53aとを有する。また、脚片53aには、蓋本体50の裏面に当接することで通線チップ53の浮き上がりを防止するストッパー53dが設けられている。さらに、軸53bは、軸53bの軸方向と直交する方向において、ストッパー53dが蓋本体50の裏面に当接する第1の位置と、ストッパー53dが蓋本体の裏面に当接しない第2の位置との間で移動自在に支持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床用配線部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、オフィスなどの床面に配設されるフロアコンセントが提供されている(例えば特許文献1参照)。このフロアコンセントは、内部に電源用コンセントや電話用端子装置などが配設されるフロアボックス本体と、フロアボックス本体に回転自在に支持されてフロアボックス本体の上面開口を閉塞する蓋体と、蓋体の軸支部分と反対側の端縁を切り欠いて形成したケーブル類の引出口に付設される通線チップとを備える。
【0003】
このフロアコンセントでは、ケーブル類を接続しない場合には、通線チップを閉じて蓋体に設けられた引出口を閉塞することでフロアボックス本体内に塵や埃が入り込むのを防止できる。一方、ケーブル類を接続する場合には、蓋体を開けた状態でケーブル類を電源用コンセント等に接続し、その後、通線チップを開けた状態で蓋体を閉じると通線チップが所定の角度で固定され、ケーブル類が保護される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平7−11828号公報(段落[0005]−段落[0011]、及び、第1図−第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述の特許文献1に示したフロアコンセントは、通線チップを閉じた状態において通線チップの浮き上がりを防止する構造を備えたものではなく、例えば振動などで通線チップが浮き上がった場合には通線チップに引っ掛かって躓く虞があった。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、安全性を向上させた床用配線部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の床用配線部材は、床下に配置された配線器具を露出させる開口部を有し、床材に取り付けられるプレート部材と、プレート部材に回転自在に支持されて開口部を閉塞する蓋材とを備え、蓋材は、電線を通すための通線孔が設けられた蓋本体と、蓋本体に回転自在に支持されて通線孔を閉塞する通線チップとで構成され、プレート部材は、通線チップを開いた状態において通線チップの一部が載置される第1の載置部を有し、通線チップは、当該通線チップの回転軸となる軸部と、当該通線チップを開いた状態において第1の載置部に少なくとも一部が載置される脚部とを有し、脚部には、蓋本体の裏面に当接することで通線チップの浮き上がりを防止するストッパーが設けられており、軸部は、当該軸部の軸方向と直交する方向において、ストッパーが蓋本体の裏面に当接する第1の位置と、ストッパーが蓋本体の裏面に当接しない第2の位置との間で移動自在に支持されることを特徴とする。
【0008】
この床用配線部材において、ストッパーは、軸部が第1の位置にある状態では蓋本体の裏面端部に当接するのが好ましい。
【0009】
また、この床用配線部材において、蓋本体は、通線チップを閉じた状態において通線チップの一部が載置される第2の載置部を有し、第2の載置部には、通線チップを開いた状態において通線チップの一部が当接し、通線チップの開口側と反対側への当該通線チップの移動を規制する移動規制部が設けられているのも好ましい。
【発明の効果】
【0010】
安全性を向上させた床用配線部材を提供することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態の床用配線部材を下側から見た斜視図である。
【図2】同上を用いた床用配線装置の分解斜視図である。
【図3】同上を用いた床用配線装置の一部省略せる分解斜視図である。
【図4】同上を用いた床用配線装置において通線チップを閉じた状態を示し、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図5】(a)(b)は同上を用いた床用配線装置において通線チップを閉じた状態の斜視図である。
【図6】同上を用いた床用配線装置において通線チップを開けた状態を示し、(a)は斜視図、(b)は側断面図である。
【図7】同上を用いた床用配線装置を構成する第1配線器具ブロックを示し、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は上面図である。
【図8】同上を用いた床用配線装置を構成する第1配線器具ブロックを示し、(a)は前側から見た斜視図、(b)は後側から見た斜視図である。
【図9】同上を用いた床用配線装置を構成する第2配線器具ブロックを示し、(a)は正面図、(b)は斜視図である。
【図10】(a)〜(e)は同上を用いた床用配線装置を構成する配線器具ブロックを床材に取り付ける手順を説明する模式的な説明図である。
【図11】(a)は同上を用いた床用配線装置を床材に取り付けた状態を示す説明図、(b)は第1配線器具ブロックを床材に取り付けた状態を示す説明図である。
【図12】(a)〜(g)は同上を用いた床用配線装置において通線チップを開く動作を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本実施形態の床用配線部材を用いた床用配線装置について図1〜図12を参照しながら説明する。なお、以下の説明では特に断りがない限り、図4(b)に示す向きにおいて上下左右の方向を規定して説明を行う。
【0013】
本実施形態の床用配線装置1は、第1天板部材2Aと、第2天板部材2Bと、第1配線器具ブロック3Aと、第2配線器具ブロック3Bと、プレート部材4と、蓋材5とを主要な構成として備えている。また、床用配線装置1は、第1及び第2配線器具ブロック3A,3Bに接続された電線を収納する空間を、床材100の裏側の空間と仕切るための仕切り部材6と、パッキン7とを備えている。ここに本実施形態では、プレート部材4と、蓋材5とで床用配線部材8が構成されている。
【0014】
第1天板部材2A及び第2天板部材2Bは、それぞれ金属の薄板にプレス加工を施して形成され、中央片20と、中央片20の両端から一方向に突出する側片21,22とで略U字型に形成されている。第1天板部材2A及び第2天板部材2Bは、側片21,22の先端部の形状を除いて線対称の形状に形成されており、側片21同士、側片22同士をそれぞれ付き合わせた状態で床材100に載置されることで、各辺の長さが略等しい四角枠を構成している。第1天板部材2Aの側片21,22には、各々の先端側に、L字状の係合部23a,24aが形成されている。また、第2天板部材2Bの側片21,22にも、各々の先端側に、対応する係合部23a,24aと係止するL字状の係合部23b,24bが形成されている。
【0015】
また、第1天板部材2A及び第2天板部材2Bの中央片20には、各々の内側縁(他方の天板部材と対向する側縁)から下方に突出する当接片25が形成されている。また、中央片20には、対応する配線器具ブロック(第1配線器具ブロック3A又は第2配線器具ブロック3B)を取り付けるための取付ねじ28がそれぞれ挿通される挿通孔26,27が、中央片20の両端付近に設けられている。さらに、中央片20には、後述するプレート部材4を固定するための取付ねじ44がそれぞれねじ込まれるねじ穴29a,29bが、中央片20の両端付近に設けられている。
【0016】
第1配線器具ブロック3Aは、強電用の配線器具として用いられるAC100V用の電源コンセント31Aと、取付枠32と、取付金具33と、電線固定金具34と、絶縁カバー35とを主要な構成として備えている。
【0017】
電源コンセント31Aには、大角形連用配線器具として規格化された既存の配線器具が用いられ、この電源コンセント31Aを保持して取付金具33に取り付けるために合成樹脂製の取付枠32が使用される。
【0018】
取付金具33は、金属板にプレス加工を施して形成され、側面視の形状が略U字状となっている。取付金具33は、取付枠32が裏側に取り付けられ、開口33bを通して電源コンセント31Aの前面を露出させる器具保持片33aを備えている。この器具保持片33aは、下側に向かって斜め前方(図7(b)の斜め右側)に傾斜しており、電源コンセント31Aにプラグを差し込みやすくなっている。器具保持片33aの上側縁中央部からは、床材100の下面に当接する当接片33cが一方向(床材100の取付孔101と反対側)に突出して設けられている。器具保持片33aの上側縁両端部からは、当接片33cと逆方向(取付孔101側)に突出する固定片33d,33eが設けられている。また、器具保持片33aの下側縁からは、当接片33cと同じ方向に突出し、電線固定金具34がねじ止めされる金具取付片33fが設けられている。さらに、器具保持片33aの下側縁には、金具取付片33fと逆方向に突出して、仕切り部材6を固定するための固定片33gが設けられている。
【0019】
この第1配線器具ブロック3Aは、第1天板部材2Aとの間で床材100を挟持することによって床材100に固定される。すなわち、第1天板部材2Aの挿通孔26,27にそれぞれ通された取付ねじ28,28を、対応する固定片33d,33eのねじ穴にねじ込むことによって、第1天板部材2Aと第1配線器具ブロック3Aとが連結される。そして、第1天板部材2Aと第1配線器具ブロック3Aとの間に床材100を挟んだ状態で取付ねじ28,28をねじ込むと、第1天板部材2Aと当接片33cとの間で床材100が強く挟持され、第1配線器具ブロック3Aが床材100に固定されるようになっている。
【0020】
電線固定金具34は、取付金具33の金具取付片33fにねじ固定されており、その後側縁には、合成樹脂により帯状に形成された結束バンド(図示せず)を挿通する挿通孔34aが複数形成されている。電源コンセント31Aの後面には電線挿通孔31aが開口しており、床材100の下側の配線スペースに配線された電力線(図示せず)を電線挿通孔31aに挿通すると、内部に収納された速結端子構造の端子部(図示せず)に電力線が接続されるようになっている。本実施形態では、施工者が、電源コンセント31Aに接続した電力線を、挿通孔34aに通した結束バンドで結束することによって、電力線を電線固定金具34に固定することができ、端子部に加わる張力を低減することができる。また、取付枠32には、係止爪35aを取付枠32の周縁部に引っ掛けることによって、電源コンセント31Aの後面を覆う絶縁カバー35が着脱自在に取り付けられるようになっている。
【0021】
第2配線器具ブロック3Bは、弱電用の配線器具として用いられるLANコンセント31Bと、取付枠32と、取付金具33とで構成される。LANコンセント31Bには、大角形連用配線器具として規格化された既存の配線器具が用いられ、それぞれ単位モジュール寸法に形成された3個のLANコンセント31Bが取付枠32を介して取付金具33に取り付けられている。なお、第2配線器具ブロック3Bは、配線器具としてLANコンセント31Bを備える点を除いては、第1配線器具ブロック3Aと同様の構成を有しているので、共通する構成要素には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0022】
仕切り部材6は、金属板を略U字型に曲げ加工することによって形成され、中央片6aには第1及び第2配線器具ブロック3A,3Bの取付金具33に設けられた固定片33gのねじ穴にそれぞれ対応する位置に挿通孔6bが形成されている。この仕切り部材6は、挿通孔6bに通した固定ねじ6cが対応する固定片33gのねじ穴にねじ込まれることで、各取付金具33に固定されるようになっている。そして、この仕切り部材6は、取付金具33,33とともに、床材100の下側の空間を仕切って、第1及び第2配線器具ブロック3A,3Bに接続される電線を収める収納空間を形成する。
【0023】
プレート部材4は、例えばアルミダイキャストにより、4辺の長さが略等しい矩形枠状に形成されており、中央部には矩形の開口部41が設けられている。開口部41の開口端縁には、1辺を除く3辺から内側方向に突出して、蓋材5が閉じられた際に蓋材5の一部が載置される載置片42が形成されている。この載置片42には、第1天板部材2A及び第2天板部材2Bにそれぞれ設けられたねじ穴29a,29bに対応する位置に、取付ねじ44を挿通する各2個の挿通孔43a,43bが設けられている。蓋材5は、開口部41の開口端縁のうち載置片42が形成されていない1辺と平行な回転軸を中心に回転自在となっており、蓋材5の軸51を回転自在に支持する軸孔45(図2では片側のみ図示)が開口端縁に設けられている。ここに本実施形態では、後述する通線チップ53を開いた状態において通線チップ53に設けられた脚部53aが載置片42に当接するようになっており、載置片42により第1の載置部が構成されている。
【0024】
蓋材5は、例えばアルミダイキャストにより矩形板状に形成された蓋本体50を有し、蓋本体50の一端側の両側面には軸51がそれぞれ突設されている。蓋本体50において、一方の軸51が突設された側縁には、第1及び第2配線器具ブロック3A,3Bに接続される電線(図示せず)を通すための矩形の通線孔52が切欠形成されている。また、通線孔52の開口端縁において対向する2辺には、後述する通線チップ53の一部が載置される載置片50cが設けられるとともに、通線チップ53の回転軸となる軸53bが差し込まれる横長の軸孔50bが設けられている。さらに、通線孔52の開口端縁の残りの1辺には、通線チップ53の一部が載置される載置片(第2の載置部)50aが横並びに2個設けられている。なお、各載置片50aの一面(図2中の上面)には、通線チップ53を開けた状態で通線チップ53の端部(蓋本体50側の端部)が当接する凹みが設けられている。
【0025】
また、蓋本体50には、例えばアルミダイキャストにより横長の矩形板状に形成されて、通線孔52を開閉自在に閉塞する通線チップ53が回転自在に取り付けられている。この通線チップ53の一端側(図2中の蓋本体50側)の両側面には軸53bがそれぞれ突設されており、蓋本体50の対応する軸孔50bにそれぞれ差し込むことで回転軸として機能する。また、通線チップ53の下面には、下方に突出する複数(図2では3個)の脚片(脚部)53aが所定の間隔を空けて設けられている。さらに、左右両側の脚片53aには、それぞれ通線チップ53の開方向への回転角度を制限するストッパー53cが設けられるとともに、通線チップ53を閉じた状態において蓋本体50の裏面に当接することで通線チップ53の浮き上がりを防止するストッパー53dが設けられている。なお、図1に示すように、隣接する脚片53aの間には、通線チップ53の開口を通して床下に配線される電線(図示せず)を保護するためのブッシング55が保持されている。
【0026】
ここにおいて、各脚片53aは、側面視の形状が、通線チップ53を開いた状態で水平方向に延びる第1の辺と、通線チップ53を閉じた状態で鉛直方向に延びる第2の辺とを有する三角形状に形成されている。また、中央の脚片53aは、強電流電線(例えば電源コンセント31Aに接続される電源線)と弱電流電線(例えばLANコンセント31Bに接続される通信線)とを隔てる隔壁として兼用される。例えば中央の脚片53aの片側に強電流電線を通し、反対側に弱電流電線を通すことで、両電線の間を脚片53aで隔てることができる。
【0027】
パッキン7は、例えば合成樹脂により矩形枠状に形成されており、第1及び第2天板部材2A,2Bとプレート部材4との間に配置される。
【0028】
ここで、本実施形態の床用配線部材8の特徴部分について詳述する。図1はこの床用配線部材8を下側から見た斜視図であり、蓋材5を構成する蓋本体50及び通線チップ53がともに閉じた状態を示している。このとき、通線チップ53は蓋本体50に設けられた載置片50a,50c上に載置された状態にあり、また載置片50cの裏面先端にはストッパー53dが当接しており、通線チップ53の上方への浮き上がりを防止している。またこのとき、通線チップ53の軸53bは、軸孔50b内において通線チップ53の開口側と反対側(図1の右側)に位置しており、本実施形態ではこの位置が軸53bの第1の位置となる。そして、蓋本体50を開いた状態で上記開口側(図1の左側)に通線チップ53を移動させると、軸53bが長孔状の軸孔50b内を上記開口側に移動するとともに、ストッパー53dが載置片50cに当接しない位置まで移動し、その結果、通線チップ53の開閉動作が可能になる。ここに本実施形態では、軸孔50b内における上記開口側の位置が軸53bの第2の位置となる。つまり、通線チップ53の軸53bは、軸孔50b内において上記第1の位置と第2の位置との間で移動自在となっている。
【0029】
また、図6(b)は本実施形態の床用配線部材8を用いた床用配線装置1の側断面図であり、通線チップ53が開いた状態を示している。このとき、通線チップ53の開口側と反対側(図6(b)の右側)の端部が、蓋本体50に設けられた載置片50aの上記凹み部分に当接した状態にある。そのため、例えば上記開口側(図6(b)の左側)から通線チップ53に衝撃力が加えられた場合でも、この衝撃力を載置片50aが受けることで軸53bに応力が集中することなく、軸53bにかかる荷重を低減することができる。ここに本実施形態では、載置片50aの上記凹みにより移動規制部が構成されている。
【0030】
次に、床用配線装置1の施工手順について図10及び図11を参照しながら説明する。
【0031】
まず、施工者は、図10(a)に示すように第1天板部材2Aの挿通孔26,27に通した取付ねじ28,28を第1配線器具ブロック3Aの取付金具33の固定片33d,33eにねじ込むことで、第1天板部材2Aと第1配線器具ブロック3Aとを仮組みする。
【0032】
その後、施工者は、第1天板部材2Aと第1配線器具ブロック3Aとを仮組みした状態で、第1配線器具ブロック3Aを取付孔101から床材100の裏側に挿入し、図10(b)に示すように第1天板部材2Aを取付孔101の周縁部に載置する。図10では図示を省略しているが、この状態では第1天板部材2Aの当接片25が取付孔101の端面と当接することで、第1天板部材2Aの載置位置が位置決めされる。また、図10(b)では図示を簡単にするため、片側の床材100を省略して図示してある。施工者は、この状態で取付ねじ28,28を締め付け、第1天板部材2Aと第1配線器具ブロック3Aとの間で床材100を挟持させることにより、第1天板部材2A及び第1配線器具ブロック3Aを床材100に仮固定する。
【0033】
次に、施工者は、第2天板部材2Bと第2配線器具ブロック3Bとを同様に仮組みした状態で、第2配線器具ブロック3Bを取付孔101から床材100の裏側に挿入する。このとき、施工者は、第1天板部材2A及び第2天板部材2Bの係合部23a,23b同士、係合部24a,24b同士をそれぞれ係止させた状態で、第2天板部材2Bを取付孔101の周縁部に載置する。施工者は、この状態で取付ねじ28,28を締め付け、第2天板部材2Bと第2配線器具ブロック3Bとの間で床材100を挟持させることによって、第2天板部材2B及び第2配線器具ブロック3Bを床材100に仮固定する。
【0034】
その後、施工者は、図10(d)に示すように、取付孔101から仕切り部材6を挿入し、仕切り部材6の挿通孔6bに通した固定ねじ6cを固定片33gのねじ穴にねじ込むことによって、仕切り部材6を第1及び第2配線器具ブロック3A,3Bに固定する(図10(e)参照)。
【0035】
次に、施工者は、図11(a)に示すように、床材100の上面にカーペット103を敷き、第1及び第2天板部材2A,2Bの上面にパッキン7を載せ、さらにパッキン7の上側にプレート部材4を載置する。そして、施工者は、プレート部材4の挿通孔43a,43bに通した取付ねじ44を、それぞれ第1及び第2天板部材2A,2Bの対応するねじ穴29a,29bにねじ込むことで、プレート部材4を第1及び第2天板部材2A,2Bに固定する。最後に、施工者は、プレート部材4に対して蓋材5を回転自在に取り付けることで、床用配線装置1の施工が完了する。
【0036】
また、床用配線装置1に電線を接続する手順について図12を参照しながら説明する。図12(a)は蓋本体50及び通線チップ53が閉じた状態を示し、この状態では開閉用釦54と一体に形成された保持片56(図1参照)によって蓋本体50が閉状態に保持され、通線チップ53もストッパー53dが載置片50cの裏面先端に当接することによって、閉じた状態で保持される。
【0037】
施工者が、この状態で開閉用釦54を開方向にスライドさせると、保持片56による保持状態が解除され、蓋本体50の裏側に配置された板ばね(図示せず)のばね力を受けて、蓋本体50が僅かに開いた状態となる(図12(b)参照)。この状態から施工者が蓋本体50を開方向(図12(c)中の矢印D1方向)に移動させ、蓋本体50が大きく開かれた状態で電源コンセント31A又はLANコンセント31Bへの配線が行われる。また施工者は、電源コンセント31A又はLANコンセント31Bに接続された電線を外部に引き出すために、通線チップ53を手前(図12(d)中の矢印D2方向)に引き出すとともに、開方向(図12(d)中の矢印D3方向)に回転させる。なおこのとき、通線チップ53を手前に引き出すことで、ストッパー53dが載置片50cに当接しない位置(第2の位置)まで移動するため、開方向への回転が可能になる。またこのとき、通線チップ53はストッパー53cによって回転角度が制限されており、施工者は、通線チップ53が開いた状態で蓋本体50を閉方向(図12(e)中の矢印D4方向)に移動させる。
【0038】
さらに施工者が、板ばねのばね力に抗して蓋本体50を閉方向(図12(f)中の矢印D5方向)に移動させ、蓋本体50が完全に閉じると、保持片56によって蓋本体50が閉状態で保持される。また通線チップ53に設けた脚片53aが載置片42に載置された状態となり、通線チップ53が開いた状態で保持され(図12(g)参照)、隣接する脚片53aの間のスペースから電線が外部に引き出されることになる。通線チップ53は開いた状態で保持されるから、通線チップ53が踏まれたとしても、通線チップ53と床材100との間で電線が挟まれることはなく、電線を保護することができる。またこのとき、図6(b)に示すように通線チップ53の開口側と反対側の端部(蓋本体50側の端部)が載置片50aの上記凹み部分に当接しており、上記開口側から通線チップ53に衝撃力が加えられた場合でもこの衝撃力を載置片50aが受けることで軸53bに応力が集中することなく、軸53bにかかる荷重を低減することができる。
【0039】
以上のような手順により、施工者が蓋本体50を開いて配線を行った後、通線チップ53を開いた状態で蓋本体50を閉じることができ、また施工者が上述と逆の手順を行うことによって、通線チップ53が開いた状態から閉じた状態へと切り替えることができる。
【0040】
上述のように本実施形態の床用配線部材8は、プレート部材4と、蓋材5とを備えている。蓋材5は、電線を通すための通線孔52が設けられた蓋本体50と、蓋本体50に回転自在に支持されて通線孔52を閉塞する通線チップ53とで構成されている。通線チップ53は、通線チップ53の回転軸となる軸53bと、通線チップ53を開いた状態においてプレート部材4に設けられた載置片42に少なくとも一部が載置される脚片53aとを有している。また、脚片53aには、蓋本体50の裏面に当接することで通線チップ53の浮き上がりを防止するストッパー53dが設けられている。さらに、軸53bは、軸53bの軸方向と直交する方向において、ストッパー53dが蓋本体50の裏面に当接する第1の位置と、ストッパー53dが蓋本体の裏面に当接しない第2の位置との間で移動自在に支持されている。
【0041】
これにより、通線チップ53の軸53bが第1の位置にある状態、つまり通線チップ53が通線孔52を閉塞している状態では、ストッパー53dが蓋本体50の載置片50cの裏面に当接することで通線チップ53の浮き上がりを防止でき、その結果、通線チップ53の浮き上がりによる躓きを防止できて安全性が向上するという利点がある。
【0042】
また本実施形態では、図1に示すように、軸部53bが上記第1の位置にある状態において、ストッパー53dが蓋本体50に設けられた載置片50cの裏面端部に当接するのが好ましい。
【0043】
これにより、ストッパー53dの当接位置を載置片50cの途中位置とした場合に比べて、ストッパー53dが載置片50cに当接しない第2の位置までの軸53dの移動量を小さくすることができる。
【0044】
また本実施形態では、蓋本体50は、通線チップ53が閉じられた状態において通線チップ53の一部が載置される載置片50aを有している。この載置片50aは、通線チップ53を開いた状態では通線チップ53の開口側と反対側の端部が当接しており、通線チップ53が上記反対側に移動するのを規制している。
【0045】
これにより、例えば上記開口側から通線チップ53に衝撃力が加えられた場合でも、この衝撃力を載置片50aが受けることで軸53bに応力が集中することなく、軸53bにかかる荷重を低減することができる。
【符号の説明】
【0046】
4 プレート部材
5 蓋材
8 床用配線部材
42 載置片(第1の載置部)
50 蓋本体
52 通線孔
53 通線チップ
53a 脚片(脚部)
53b 軸(軸部)
53d ストッパー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床下に配置された配線器具を露出させる開口部を有し、床材に取り付けられるプレート部材と、
前記プレート部材に回転自在に支持されて前記開口部を閉塞する蓋材とを備え、
前記蓋材は、電線を通すための通線孔が設けられた蓋本体と、前記蓋本体に回転自在に支持されて前記通線孔を閉塞する通線チップとで構成され、
前記プレート部材は、前記通線チップを開いた状態において前記通線チップの一部が載置される第1の載置部を有し、
前記通線チップは、当該通線チップの回転軸となる軸部と、当該通線チップを開いた状態において前記第1の載置部に少なくとも一部が載置される脚部とを有し、
前記脚部には、前記蓋本体の裏面に当接することで前記通線チップの浮き上がりを防止するストッパーが設けられており、
前記軸部は、当該軸部の軸方向と直交する方向において、前記ストッパーが前記蓋本体の裏面に当接する第1の位置と、前記ストッパーが前記蓋本体の裏面に当接しない第2の位置との間で移動自在に支持されることを特徴とする床用配線部材。
【請求項2】
前記ストッパーは、前記軸部が前記第1の位置にある状態では前記蓋本体の裏面端部に当接することを特徴とする請求項1記載の床用配線部材。
【請求項3】
前記蓋本体は、前記通線チップを閉じた状態において前記通線チップの一部が載置される第2の載置部を有し、
前記第2の載置部には、前記通線チップを開いた状態において前記通線チップの一部が当接し、前記通線チップの開口側と反対側への当該通線チップの移動を規制する移動規制部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の床用配線部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−244871(P2012−244871A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115648(P2011−115648)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】