説明

床空調システム

【課題】低床下空間内の空気の流れが平準化され、床面の温度分布が改善されて、空調効果が高くなる床空調システムを提供する。
【解決手段】上部荒床と下部荒床との間に複数の小根太を配置して形成された低床下空間(9)0に空気調和機(8)からの調和空気を導入させて床面温度を加減する床空調システムであって、低床下空間は、調和空気の流れる範囲を画定する周壁(30)と、空気調和機から吹き出された調和空気を導入する導入口(14)と、導入口から離れて設けられ、導入口から導入された調和空気を被空調室へ導出する導出口(15、15’)と、複数の小根太23、24によって形成され、調和空気が流れる平行通気路27、連絡通気路28、および周縁通気路29を有して構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は床空調システムに係り、特に、床下に空調空気を循環させる通気床空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、生活の洋風化や清掃などのメンテナンス性の点から、畳に代わってフローリングを施す家が増加しており、この場合でも、絨毯などの敷物を使わずに、畳感覚でじかに座ったり、寝転んだりする生活が行われている。この時、床の温度がじかに体に伝わり、冷温感を引起す。この冷温感は室内の空気の温度にはあまり左右されず、上手に使うと冷暖房の省エネにつながる可能性を持っている。
【0003】
現在の空気調和機は冷温風を室内に吹き出し、気流で室内を素早く空調する方式が主流であるが、この状況のなかでも、床空調システムは床面からの輻射で快適性を得ることができることから、騒音や気流を意識せずに済む快適性に根強い人気がある。この種の従来技術として、特許文献1〜3が公知である。
【0004】
特許文献1には、床裏部材と、床裏部材の上面にほぼ平行に配置された複数の根太と、その根太によって支持されたフローリングと根太によって仕切られた複数の空気経路を形成する一方、根太の一部分を切り取って各空気経路を互いに連通し、その連通部となる根太を切り取った部分に、熱源機からの暖かい空気を供給口から各空気経路へ流す連通孔を備えた根太補助ユニットを設け、その根太補助ユニットによってフローリングを支持する技術が開示されている。この特許文献1に記載の技術によれば、根太が取り除かれた領域のフローリングの支持剛性を確保すると共に、各空気経路へ供給口からの温風を確実に送風することができる。
【0005】
特許文献2には、床の冷暖房装置において、床パネルの下面に複数の平行な突出片を設け、複数枚のこの床パネルを床下地材上に並べて敷設することによって、床パネルと床下地材との間において各突出片間に冷風や温風が通される通気路を形成すると共に隣合う各床パネル間において通気路を連続させるようにした技術が開示されている。この特許文献2に記載の技術によれば、床下地材に床パネルを敷き並べるという通常の床施工と同様な作業で容易に施工をおこなうことができると共に、室内の大小や形状に合わせて床パネルを配置することによって現場に応じた施工を容易におこなうことができる。
【0006】
特許文献3には、床下地材上に縦横方向に組まれた格子を配備し、その上に多数の通孔を列設した畳支持パネル材を敷き、更にその上に畳材を敷いた畳床構造に対して、前記格子の各区画に面する格子材に連通孔を形成するようにした技術が開示されている。この特許文献3に記載の技術によれば、畳中の湿気を減少させ、防虫効果を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−81217号公報
【特許文献2】実開昭63−181722号公報
【特許文献3】登録実用新案第3036990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
フローリングに床空調システムを組み合わせると、床にじかに座ったり、寝転んだりするときにほんわりした温かさを得たり、ちょっとひんやりした涼しさを得ることができるものの、床下での冷温風の回り具合をうまく考えないと、床面の温度分布が居住空間とマッチしなかったり、床下での冷温風の流通に過大な風圧を必要としてエネルギーを消費したり、送風騒音を低減できなかったり、送風性能を確保できなかったりする。また、特許文献1〜3に記載の従来技術では、次のような具体的な課題がある。
【0009】
即ち、特許文献1では根太の方向は一方向だけであり、直交根太を配置して、床下空間全体に一様に吹き出し空気を流す工夫や気流の圧力損失を減らす工夫についての言及はない。
【0010】
また、特許文献2では突出片を設けた床パネルを特注しなければならず、現場ごとに寸法の違う部屋に適用するには施工者の負担が大きく普及の障害になっていた。また、床下空間全体に一様に吹き出し空気を流す工夫や気流の圧力損失を減らす工夫についての言及はない。
【0011】
また、特許文献3では連通口を設けた根太を特注しなければならず、現場ごとに寸法の違う部屋に適用するには施工者の負担が大きく普及の障害になっていた。また、床下空間全体に一様に吹き出し空気を流す工夫や気流の圧力損失を減らす工夫についての言及はない。
【0012】
本発明は、上記した実情を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、低床下空間内の空気の流れが平準化され、床面の温度分布が改善されて、空調効果が高くなる床空調システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記した課題を解決するために、本発明は、上部荒床と下部荒床との間に複数の小根太を配置して形成された低床下空間に空気調和機からの調和空気を導入させて床面温度を加減する床空調システムであって、前記低床下空間は、調和空気の流れる範囲を画定する周壁と、前記空気調和機から吹き出された調和空気を導入する導入口と、前記導入口から離れて設けられ、前記導入口から導入された調和空気を被空調室へ導出する導出口と、前記複数の小根太によって形成され、調和空気が流れる複数の通気路と、を有し、前記複数の通気路は、前記複数の小根太の一部を構成する平行小根太を複数個並べて形成された通気路であって、前記空気調和機が調和空気を前記導入口へ吹き出す吹出し方向に前記平行小根太の長手方向が合致するようにして前記複数の平行小根太を互いに間隔を空けて並べて前記複数の平行小根太の列を形成し、その列を前記吹出し方向に略直交する方向に互いに間隔を空けて複数設けた構成とし、前記平行小根太の列と列の間を調和空気が前記吹出し方向に沿って流れるようにした平行通気路と、前記複数の小根太の一部を構成する直交小根太を複数個並べて形成された通気路であって、前記空気調和機が調和空気を前記導入口へ吹き出す吹出し方向に交差する方向に前記直交小根太の長手方向が合致するようにして前記複数の直交小根太を互いに間隔を空けて並べて前記複数の直交小根太の列を形成し、その列を前記吹出し方向に互いに間隔を空けて複数設けた構成とし、前記直交小根太の列と列の間を調和空気が前記吹出し方向に交差する方向に沿って流れるようにした連絡通気路と、前記導入口から導入され、前記平行通気路および前記連絡通気路を流れた調和空気を前記周壁に沿って流しながら前記導出口へと導く周縁通気路とを備えて成ることを特徴としている。この発明によれば、空調空気は、平行通気路を流れながら連絡通気路へも分流しながら低床下空間内を流れていくため、低床下空間内の空気の流れが平準化され、床面の温度分布が改善されて、空調効果が高くなる。
【0014】
また、本発明は、上記構成において、土台である地面に束石を置き、前記束石に床束を載せ、前記床束により大引を支持させ、前記大引に根太をかけ渡し、前記根太の間を断熱材で埋め、前記根太の上に前記下部荒床を載置したことを特徴としている。この発明によれば、断熱材により床下の冷気を断熱することができるため、暖房効果が高まるうえ、従来の根太の上に下部荒床を載置できるため、本発明の床空調システムを従来の床に簡単に設置することができ、低コストを実現できる利点もある。
【0015】
また、本発明は、上記構成において、前記平行小根太と前記直交小根太は互いに直交する方向に向けて配置されていることを特徴としている。この発明によれば、床下地材と根太間および根太と床材間を直角、平行の関係で固定することができ、床の施工が容易になる。
【0016】
また、本発明は、上記構成において、前記導出口は前記平行通気路を挟んで両側に少なくとも1つずつ設けられていることを特徴としている。この発明によれば、導入口から低床下空間に流れる込む調和空気を、適宜な量で分割し、複数の導出口に分配することが可能になる。
【0017】
また、本発明は、上記構成において、前記連絡通気路は、前記平行通気路を挟んで両側に形成されていることを特徴としている。この発明によれば、より一層、床面の温度分布が改善されて、空調効果が高くなる。
【0018】
また、本発明は、上記構成において、前記空気調和機が床置型空気調和機であることを特徴としている。この発明によれば、通気ダクトの施工が簡単で、低床下空間に導入する通気量の確保が容易になる。
【0019】
また、本発明は、上記構成において、前記空気調和機は運転モードとして床空調単独運転モードを備え、床空調単独運転モード時には、前記空気調和機は、調和空気の吹き出し口のうち前記低床下空間への吹き出し口以外の吹き出し口を閉鎖することを特徴としている。この発明によれば、空気調和機の床空調単独運転時に室内熱交換器を通らない空気が低床下空間に流れ込むのを防ぎ、送風機の無駄な運転を回避できて、省エネになる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、低床下空間を複数の小根太によって平行通気路、連絡通気路、周縁通気路を構成したので、低床下空間内の空気の流れが平準化され、床面の温度分布が改善されて、空調効果が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施例に係る床空調システムの小根太配置図。
【図2】実施例に係る床空調システムに使用する床置き形空気調和機の断面図。
【図3】実施例に係る床空調システムを使用した室内の断面図。
【図4】従来の床下構造。
【図5】実施例に係る床空調システムを適用した場合の床構造。
【図6】変形例に係る床空調システムの小根太配置図。
【図7】比較例1に係る床空調システムの小根太配置図。
【図8】比較例2に係る床空調システムの小根太配置図。
【図9】比較例3に係る床空調システムの小根太配置図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の床空調システムの実施例について図を用いて説明する。図における同一符号は同一物または相当物を示す。
【0023】
まず、本発明の実施例に係る床空調システムの概要について図1〜図3を用いて説明する。図1は本発明の実施例に係る床空調システムの小根太配置図である。図2は、実施例に係る床空調システムに使用する床置き形空気調和機の断面図である。図3は、実施例に係る床空調システムを使用した室内の断面図である。
【0024】
実施例に係る床空調システムでは、図3のように、被空調室10の床下には低床下空間9が設けられ、床に置かれた空気調和機8から吹き出される調和空気の一部は、導入口14からこの低床下空間9に導入されて、床面温度を直に加減した後に、導出口15から低床下風11として室内に吹き出される。そして、室内に吹き出された低床下風11は、空気調和機8から直接、室内に吹き出される直接風12による空調と協調して、室内の空気調和が行われるようなシステムになっている。
【0025】
このとき、使用する空気調和機8としては床置き型が好都合である。床置き型空気調和機を使用する場合、空気調和機8の吹き出し口から吹き出す調和空気を、低床下空間9に導くための送風ダクトの長さを短くできるので、送風機3の騒音の増加は小さくなり、低床下空間9に導入される調和空気の量を送風機3の回転数を上げるなどして確保することが容易になる。
【0026】
更に、床置き型空気調和機でも、下吹き出し型が好適である。下吹き出し型の床置き型空気調和機を使用する場合、空気調和機8の下吹出し口6から吹き出す調和空気を、低床下空間9に導くための送風ダクトの長さを最短にできるので、送風機3の騒音の増加は更に小さくなり、低床下空間9に導入される調和空気の量を送風機3の回転数を上げるなどして確保することが更に容易になる。このとき、床置き型空気調和機8を床下地に据付けて、一部を図3のように床に埋め込むようにすると、空気調和機8の吹出し空気を直接低床下空間9に導入することができ、更に、良好な床空調システムとすることができる。
【0027】
更に又、下吹出し型の床置き型空気調和機でも、上下吹出し型が最適である。上下吹出し型の床置き型空気調和機8を使用する場合、床面からの穏やかな床空調に加えて、床置き型空気調和機8の上吹出し口5からの強制対流による空気調和ができ、空調の開始時には上吹出し口5からの強制対流による空気調和で素早く室内を快適にし、定常時には床面からの穏やかな空調で快適性と省エネに適う空気調和ができる。
【0028】
図2はこのような上下吹き出し型床置き型空気調和機の一例である。図2において、1は外箱、2は上送風機、3は下送風機、4は熱交換器、5は上吹出し口、6は下吹出し口、7は吸込み口、17はフィルタである。図2のような上下吹き出し型の床置き型空気調和機8を図3のように、被空調室10の下部荒床31に据付け、空調運転を行うと、図示しない室外機に搭載された圧縮機が運転し、室外空気を熱源とした冷凍サイクル運転で、床置き型空気調和機8の熱交換器4に冷媒が循環される。他方、床置き型空気調和機8の上下に設けられた送風機2、3によって吸い込み口7から室内空気が吸い込まれ、フィルタ17で塵埃を除去されて熱交換器4に流される。熱交換器4を通る時に室内空気は冷媒と熱交換し、調和空気となって、上下の吹き出し口5、6から吹き出され、上吹き出し口5から直接室内に吹き出された調和空気は素早く室内を快適な状態にし、下吹き出し口6から吹き出された調和空気は導入口14から低床下空間9に導入される。
【0029】
次に、低床下空間9の内部構造の詳細について説明する。まず、低床下空間9は、上部荒床21と下部荒床31の間に複数の小根太23、24を配置して形成されており(図5参照)、図1に示すように、その四辺は周壁30で覆われている。よって、導入口14から導入された調和空気は、周壁30によって流れが制限されることとなる。つまり、周壁30が、調和空気の流れる範囲を画定しているのである。そして、上部荒床21と下部荒床31と周壁30とで仕切られた内部空間には、複数の小根太23、24によって複数の通気路27、28、29が形成されている。
【0030】
平行通気路27は、空気調和機8が調和空気を導入口14へ吹き出す吹出し方向(図1の白地太矢印の方向)に平行小根太23の長手方向が合致するようにして3個の平行小根太23を互いに間隔を空けて並べて形成された平行小根太23の列を、吹出し方向に直交する方向に互いに間隔を空けて3列設けた構成となっている。そして、平行小根太23の列と列の間を調和空気が吹出し方向に沿って図1の実線矢印の方向に流れるようになっている。
【0031】
この平行通気路27を挟んで両側(図1の上側と下側)には、連絡通気路28が形成されている。一方(図1の上側)の連絡通気路28は、空気調和機8が調和空気を導入口14へ吹き出す吹出し方向(図1の白地太矢印の方向)に直交する方向に直交小根太24の長手方向が合致するようにして、吹出し方向に互いに間隔を空けて7個の直交小根太24を1個ずつ並べて形成される7列の直交小根太24から成る通気路であり、直交小根太24の列と列の間を調和空気が吹出し方向に直交する方向に沿って図1の実線矢印の方向に流れるようになっている。
【0032】
また、他方(図1の下側)の連絡通気路28は、空気調和機8が調和空気を導入口14へ吹き出す吹出し方向(図1の白地太矢印の方向)に直交する方向に直交小根太24の長手方向が合致するようにして2個の直交小根太24を互いに間隔を空けて並べて形成された2個の直交小根太24の列を、吹出し方向に互いに間隔を空けて7列設けた構成となっている。そして、直交小根太24の列と列の間を調和空気が吹出し方向に直交する方向に沿って図1の実線矢印の方向に流れるようになっている。
【0033】
周縁通気路29は、周壁30に沿って形成された通気路であり、導入口14から導入され、平行通気路27および連絡通気路28を流れた調和空気は、この周縁通気路29を流れて導出口15、15’へと導かれていくようになっている。
【0034】
なお、図1より明らかなように、平行小根太23と直交小根太24とは互いに直交する方向に取り付けられている。
【0035】
次に、低床下空間9が載置される床下構造について説明する。図4は、従来から広く用いられている住宅の床下の構造を示した図である。図4に示すように、土台である地面37に束石36を置き、これに大引34を支持する床束35を載せ、大引34に根太32をかけ渡し、根太32の間を断熱材33で埋め、根太32の上に荒床19を張って畳18などの仕上げ床材を敷くのが一般的である。本実施例に係る低床下空間9は、このような従来の床下構造にそのまま載置することができる。
【0036】
具体的に説明すると、本発明の実施例に係る床空調システムは、従来の仕上げ床材である畳18などの代わりに、図5に示すように、従来の荒床19を下部荒床31として、その上に、低床下空間9から調和空気が漏れないように気密シート25を敷き詰め、小根太23、24で上部荒床21、フローリング材20を支持して低床下空間9を形成する。低床下空間9の高さは34mm程度とし、これに上部荒床15mm、フローリング材9mmを加えて、従来の畳の厚さである約60mmにすることで、従来の畳式の部屋を、床空調システムを組み込んだフローリングに簡単にリフォームすることができる。勿論、低床下空間の高さはこの寸法に限定されるものではなく、小根太の高さ寸法を変えることで、容易に変えられることは言うまでも無い。
【0037】
このとき、図1に示すように、平行小根太23同士および直交小根太24同士は平行に配置され、平行小根太23と直交小根太24とは直交する方向に向けて配置されているため、従来使用していた規格化された床下地材を使用して、一般的な工法で低床下空間9の造作の作業を進めることができ、建築作業が簡単になる。しかも、断熱材33により床下の冷気が断熱されるため、低床下空間9内の温度が床下の冷気によって下がることを防止でき、暖房効果が高まることとなる。
【0038】
続いて、このように構成された低床下空間9内の調和空気の流れについて説明する。低床下空間9に導入された調和空気は、図1のように低床下空間9に配置された平行小根太23、直交小根太24の間を通って2個所に設けられた導出口15、15’に向かう。この間に、この気流は、床材と熱交換して床温度を加減し、導出口15、15’から室内に導出され、図3の低床下風11で示すように流れ、室内空気と混じり合って、室内を空気調和して空気調和機8に戻る。
【0039】
このように、実施例に係る床空調システムによれば、空気調和機8からの吹出正面の小根太(平行小根太23)を吹出方向に対して平行に配置することで吹出し口正面での床面温度を加減できる範囲の幅が広くなり、更に、その範囲の両側の小根太(直交小根太24)を吹出方向と直角に配置することで直角に配置した小根太に沿った流れが形成されるため、この流れが分流となり、低床下空間9内全体へ調和空気が拡がり易くなる。このため、低床下空間9内での温度分布が良くなる。
【0040】
次に、上記した低床下空間9の変形例について図6を用いて説明する。変形例に係る低床下空間9は、平行小根太23で形成される平行通気路27(図6には図示せず)を挟んで両側に対称となるように連絡通気路28(図6には図示せず)が形成されている。具体的には、平行通気路27(図6には図示せず)は、空気調和機8が調和空気を導入口14(図6には図示せず)へ吹き出す吹出し方向(図6の白地太矢印の方向)に平行小根太23の長手方向が合致するようにして3個の平行小根太23を互いに間隔を空けて並べて形成された平行小根太23の列を、吹出し方向に直交する方向に互いに間隔を空けて2列設けた構成となっている。そして、平行小根太23の列と列の間を調和空気が吹出し方向に沿って図6の点線矢印の方向に流れるようになっている。
【0041】
また、連絡通気路28は、空気調和機8が調和空気を導入口14(図6には図示せず)へ吹き出す吹出し方向(図6の白地太矢印の方向)に直交する方向に直交小根太24の長手方向が合致するようにして2個の直交小根太24を互いに間隔を空けて並べて形成された2個の直交小根太24の列を、吹出し方向に互いに間隔を空けて5列設けた構成となっている。そして、直交小根太24の列と列の間を調和空気が吹出し方向に直交する方向に沿って図6の点線矢印の方向に流れるようになっている。
【0042】
この変形例に係る低床下空間9を採用しても、空気調和機8からの吹出正面の小根太(平行小根太23)を吹出方向に対して平行に配置することで吹出し口正面での床面温度を加減できる範囲の幅が広くなり、更に、その範囲の両側の小根太(直交小根太24)を吹出方向と直角に配置することで直角に配置した小根太に沿った流れが形成されるため、この流れが分流となり、低床下空間9内全体へ調和空気が拡がり易くなる。このため、低床下空間9内での温度分布が良くなる。
【0043】
ところで、従来の通気路の確保方法には、根太を一方向に配置し、その末端部の床面に導出口を設けて通気路を確保する方法や、高さのある根太の一部を切り欠いて通気路としたり、分岐口を有する専用の通風路部材を使用する方法等により、低床下空間における通気路を構築していた。根太を一方向に配置する方法では空気調和機からの吹出空気が拡がり難く、分岐口を有する専用の通風路部材のように高さのある根太を使用する場合は、床面が根太を高くした分だけ高くなり、その分、部屋の天井との間が低くなって、低い天井となってしまう。また、専用の通風路部材を使用する場合には、専用部材とその物に合わせた特殊施工が必要となる。また、空気調和機からの吹出空気を拡がり易くするために、従来は専用の多翼の風向板を利用して空気調和機の吹出し口近辺で流れを拡げていた。
【0044】
ここで、低床下風11が通る低床下空間9の流路の違いによって、床面温度の加減の効果が変わることが考えられるので、低床下空間9内の小根太の配置を変化させて、床面温度の加減の効果がどのように変わるかをシミュレーションにより確かめた。
【0045】
比較例1は図7のように、空気調和機8からの吹出方向と直角に小根太24を一方向に配置したものである。図中の白地太矢印は空気調和機8からの吹出し方向を示し、点線矢印は低床下空間9内の調和空気の流れを示す。このようにすると、空気調和機8からの吹出正面の流れは良いが、この気流の両側への拡がりが悪いため、局部的に温度分布が悪くなる。
【0046】
比較例2は図8のように、空気調和機8からの吹出方向と平行に小根太23を一方向に配置したものである。図中の白地太矢印は空気調和機8からの吹出し方向を示し、点線矢印は低床下空間9内の調和空気の流れを示す。このようにすると、空気調和機8からの吹出正面部での気流の拡がり易さが良くなり、吹出し正面での床面温度を加減できる範囲が広くなるが、吹出方向と直角方向への流れが悪いため、局部的に温度分布の悪い場所ができる。
【0047】
比較例3は図9のように、小根太22の配置を空気調和機8からの吹出し方向に対して斜めにして、導出口15、15’の方向に配置したものである。図中の白地太矢印は空気調和機からの吹出し方向を示し、点線矢印は低床下空間内の調和空気の流れを示す。このように小根太22の配置を斜めにすると、導出口15、15’へ向かう一部の流れだけが強くなり、局部的に温度分布の悪い場所が生じる。また、このような配置では建築作業性が悪くなる。
【0048】
これに対して、上記した本発明の実施例および変形例に係る床空調システムでは空気調和機の吹出し口の位置に合わせて小根太を配置することで吹出し口近辺での気流の拡がり易さを良くして空気調和機正面に近い部分で気流の幅を拡げ、その後、吹出方向と直角に配置した分岐路で低床面全体に気流を拡げて、作業性と低床下空間全体を有効利用した床面全体からの輻射熱を補助空調として利用した空調方式を可能とした。
【0049】
実施例に係る床空調システムに用いられる低床下空間9は、図1のように、空気調和機8からの吹出正面の小根太23を吹出方向と平行に配置し、その両側の小根太24を吹出方向と直角方向に配置したものである。図中の白地太矢印は空気調和機8からの吹出し方向を示し、実線矢印は低床下空間9内の調和空気の流れを示す。このようにすると、導入口14から低床下空間9に入った空調空気は低床下空間9に図1のように配置された平行小根太23、直交小根太24の間に設けられた、平行通気路27、連絡通気路28、周縁通気路29を通って複数個所に設けられた導出口15、15’に向かう。ここで、平行通気路27により吹出し口正面での床面温度を加減できる範囲の幅が広くなり、更に、平行通気路27を流れる調和空気が連絡通気路28に分流することにより、低床下空間9内全体へ調和空気が広がり易くなる。よって、低床下空間9内での温度分布が良くなる。
【0050】
変形例に係る低床下空間9も、上記と同様の手法で、図6のように小根太23、24を配置したものである。図中の白地太矢印は空気調和機8からの吹出し方向を示し、点線矢印は低床下空間9内の調和空気の流れを示す。このようにすると、空気調和機8からの吹出正面の小根太23を吹出方向に対して平行に配置することで吹出し口正面での床面温度を加減できる範囲の幅が広くなり、更に、その範囲の両側の小根太24を吹出方向と直角に配置することで直角に配置した小根太24に沿った流れが形成されるため、この流れが分流となり、低床下空間9内全体へ調和空気が拡がり易くなる。このため、低床下空間9内での温度分布が良くなる。
【0051】
以上、説明したように、実施例および変形例に係る床空調システムによれば、導入口14より吹き出された調和空気は平行小根太23間の通気路27に向かって進むが、吹き出し気流の左右端の部分は導入口14と最初の平行小根太23間に設けられた離間部から流れの拡散により、左右に広がって連絡通気路28に流れ込み、吹き出し気流の残部が平行通気路27に流れ込む。平行通気路27に流れ込んだ吹き出し気流は平行小根太23に沿って真っ直ぐに進み、その一部が途中に設けられた平行小根太23の途切れ部から連絡通気路28に流れ込み、平行通気路27に流れる吹き出し気流の量は段々その量を減じながら周縁通気路29に到達し、周縁通気路29に沿いながら導出口15、15’に向かって進み、該導出口15、15’から室内に吹き出す。また、平行小根太23の途切れ部から連絡通気路28に流れ込んだ気流も周縁通気路29に到達し、周縁通気路29を流れて導出口15、15’から室内に吹き出す。
【0052】
このように、低床下空間9の周縁通気路29で囲まれた部分に万遍なく調和空気が流れ、床面温度を加減し、床面からの輻射を主とした穏やかな空調に加えて、導出口15、15’からの調和空気の気流による空調で室内を快適にする。このため、低床下空間9内の空気の流れが平準化され、床面の温度分布が改善されて、空調効果が高くなる床空調システムを提供することができる。
【0053】
また、平行小根太23と直交小根太24とは、互いに直交する方向に向けられて取り付けられている。これにより、長方形で供給されることが多い、下部荒床31、上部荒床21、フローリング材20の敷設方向に合わせて平行小根太23、直交小根太24を配置できるので、平行小根太23、直交小根太24の位置決めが簡単になり、敷設現場の作業が容易になる。このため、床下地材と根太間および根太と床材間を直角、平行の関係で固定することができ、床の施工が容易になる床空調システムを提供することができる。
【0054】
一般に、室内で最も使用頻度が高いと想定される場所は部屋の中央部であり、ここを効率よく空調するためには、この中央部に近い壁際に空気調和機8からの吹き出し空気の導入口14を設けるのが望ましいところ、本床空調システムの例では、導入口14は図1および図6に示すように低床下空間9の長辺におけるほぼ中央の位置に設けられているので、導入口14から部屋の中央部にかけての床面が真っ先に冷却または加温され一番早く空調効果が表れる。
【0055】
さらに、実施例および変形例に係る床空調システムでは、よくある長方形の部屋の長辺の中央部に導入口14を設けた場合であっても、導入口14から部屋の中央部にかけての中央領域の低床下空間9に平行通気路27が配置されているので、中央領域を効果的に空調することができる。
【0056】
このとき、平行気流の片側に導出口15、15’のうち一方しか設けられていない場合には、導出口と平行気流を挟んだ反対側の領域に空気調和機8からの調和空気を流すには、平行気流から導出口側の連絡通気路28の気流の抵抗を大きくしなければならない。このことは、導入口14から導出口までの気流の抵抗が大きくなることにつながり、通気量の減少となって、床面温度を加減する能力の減少を招き、室内の空調効果を阻害する。
【0057】
ところが、実施例および変形例に係る床空調システムでは、導出口15と導出口15’が平行小根太23を挟んで部屋の短片となる壁際に設けられているので、導入口14から導出口15、15’までの気流の抵抗を大きくすることなしに、部屋の中央部から短片壁までの部分を平行気流から分流して連絡通気路28に流れる連絡気流でほぼ均等に床面温度を加減することができる。つづいて、中央領域の周りに連絡通気路28を配置して程よく床面を加減し、更にその周りに周縁通気路29を配置して床面の温度を上げ下げし、最後に導出口15、15’から室内に吹き出して、空気調和機8からの冷温熱を余すことなく使用して室内を空調することができる。
【0058】
このとき、導入口14から導出口15、15’までの低床下空間9の気流の分布を小根太間隔や途切れ寸法で調節して均一化することもでき、室内をバランスよく空調することができる。このため、導入口14から低床下空間9に流れる込む調和空気を、適宜な量で分割し、複数の導出口15、15’に分配することが可能になる床空調システムを提供することができる。
【0059】
また、実施例および変形例に係る床空調システムは、空気調和機として床置型空気調和機が用いられている。一般に、送風機が空気調和機などの機器に組み込まれる場合には、機器の性能を発揮するために、所定の風量を流すことが求められる。このとき、風路の抵抗が異なると、同じ風量が流れるようにしても、送風機の騒音は大きくなる。ところが、実施例および変形例に係る床空調システムでは、床置型空気調和機8を被空調室10の床に据付け、その吹出し口6と導入口14を通気ダクトで接続し、吹き出し空気を低床下空間9に導入する。このとき、床置型空気調和機は床面に接して据付けられるため、空気調和機の吹き出し口6と床面までの距離は短く、通気ダクトも短い単純な形状にできる。
【0060】
また、通気ダクトが短いため吹き出し気流の受ける抵抗も少なくなり、送風機の騒音の増加も小さく、低床下空間9に導入される通気の量を送風機の回転数を上げるなどして確保することが容易である。また、床置型空気調和機を使用することで、被空調室10内の空気を直接吸い込んで空調処理できるので、吸気用の通気ダクトが不要になる。このため、通気ダクトの施工が簡単で、低床下空間に導入する通気量の確保が容易になる床空調システムを提供することができる。
【0061】
また、実施例および変形例に係る床空調システムは、空気調和機として下吹出し型の床置型空気調和機8を用いることもできる。これにより、空気調和機8の吹き出し空気をごく短い通気ダクトで、低床下空間に導入することができ、通気ダクトを最短にできる。このとき、床置型空気調和機8を下部荒床に据付けて、一部を床に埋め込むようにすると、空気調和機8の吹き出し空気を直接、低床下空間に導入することができ、更に、良好な床空調システムとすることができる。
【0062】
また、実施例および変形例に係る床空調システムは、空気調和機として上下吹出し型の床置型空気調和機8(図2参照)を用いることもできる。これにより、床面からの穏やかな床空調に加えて、床置型空気調和機8の上吹き出し口5からの強制対流による空気調和ができ、空調の開始時には上吹き出し口5からの強制対流による空気調和で素早く室内を快適にし、定常時には下吹き出し口6からの床空調で穏やかで、省エネに適った空調を行うことができる。このため、床面からの輻射空調と調和空気の強制対流による空調を使い分けることで、素早く、快適に、省エネ空調ができる床空調システムを提供することができる。
【0063】
また、実施例および変形例に係る床空調システムは、空気調和機8が運転モードとして床空調単独運転モードを備え、床空調単独運転モード時には低床下空間9への吹き出し口(例えば、下吹出し口6)以外の吹き出し口(例えば、上吹出し口5)を閉鎖する。これにより、空気調和機8から直接室内に吹き出す直接空調と空気調和機8の調和空気の一部を低床下空間9に吹き出す床空調を併用して室内を空気調和している状態から、空気調和機8のサーモスタットがオフしたとき、室内に直接調和空気を送る吹き出し口5を閉じて、床空調のみが機能している状態にすることができる。床空調のみが機能している状態では空気調和の能力が大幅に低下するので、室温の変化は反転し、室内を快適な温度に維持し続けることができる。なお、床空調の単独運転でも室温が下がり又は上がり続けるときは、空調負荷が小さい場合なので、圧縮機や送風機の回転数を更に減ずるとか、圧縮機を停止するとかの方法で室内の快適性を引き続き維持することができる。
【0064】
このため、空気調和機8の床空調単独運転時に室内熱交換器を通らない空気が低床下空間に流れ込むのを防ぎ、送風機の無駄な運転を回避できて、省エネになる床空調システムを提供することができる。
【符号の説明】
【0065】
1…外箱、2…上送風機、3…下送風機、4…熱交換器、5…上吹出し口、6…下吹出し口、7…吸込み口、8…空気調和機、9…低床下空間、10…被空調室、11…低床下風、12…直接風、14…導入口、15,15’…導出口、17…フィルタ、18…畳、19…荒床、20…フローリング材、21…上部荒床、22…斜行小根太、23…平行小根太、24…直交小根太、25…気密シート、27…平行通気路、28…連絡通気路、29…周縁通気路、30…周壁、31…下部荒床、32…根太、33…断熱材、34…大引、35…床束、36…束石、37…地面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部荒床と下部荒床との間に複数の小根太を配置して形成された低床下空間に空気調和機からの調和空気を導入させて床面温度を加減する床空調システムであって、
前記低床下空間は、
調和空気の流れる範囲を画定する周壁と、
前記空気調和機から吹き出された調和空気を導入する導入口と、
前記導入口から離れて設けられ、前記導入口から導入された調和空気を被空調室へ導出する導出口と、
前記複数の小根太によって形成され、調和空気が流れる複数の通気路と、
を有し、
前記複数の通気路は、
前記複数の小根太の一部を構成する平行小根太を複数個並べて形成された通気路であって、前記空気調和機が調和空気を前記導入口へ吹き出す吹出し方向に前記平行小根太の長手方向が合致するようにして前記複数の平行小根太を互いに間隔を空けて並べて前記複数の平行小根太の列を形成し、その列を前記吹出し方向に略直交する方向に互いに間隔を空けて複数設けた構成とし、前記平行小根太の列と列の間を調和空気が前記吹出し方向に沿って流れるようにした平行通気路と、
前記複数の小根太の一部を構成する直交小根太を複数個並べて形成された通気路であって、前記空気調和機が調和空気を前記導入口へ吹き出す吹出し方向に交差する方向に前記直交小根太の長手方向が合致するようにして前記複数の直交小根太を互いに間隔を空けて並べて前記複数の直交小根太の列を形成し、その列を前記吹出し方向に互いに間隔を空けて複数設けた構成とし、前記直交小根太の列と列の間を調和空気が前記吹出し方向に交差する方向に沿って流れるようにした連絡通気路と、
前記導入口から導入され、前記平行通気路および前記連絡通気路を流れた調和空気を前記周壁に沿って流しながら前記導出口へと導く周縁通気路と、
を備えて成る
ことを特徴とする床空調システム。
【請求項2】
請求項1の記載において、
土台である地面に束石を置き、前記束石に床束を載せ、前記床束により大引を支持させ、前記大引に根太をかけ渡し、前記根太の間を断熱材で埋め、前記根太の上に前記下部荒床を載置した
ことを特徴とする床空調システム。
【請求項3】
請求項1または2の記載において、
前記平行小根太と前記直交小根太は互いに直交する方向に向けて配置されている
ことを特徴とする床空調システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項の記載において、
前記導出口は前記平行通気路を挟んで両側に少なくとも1つずつ設けられている
ことを特徴とする床空調システム。
【請求項5】
請求項4の記載において、
前記連絡通気路は、前記平行通気路を挟んで両側に形成されている
ことを特徴とする床空調システム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項の記載において、
前記空気調和機が床置型空気調和機である
ことを特徴とする床空調システム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項の記載において、
前記空気調和機は運転モードとして床空調単独運転モードを備え、床空調単独運転モード時には、前記空気調和機は、調和空気の吹き出し口のうち前記低床下空間への吹き出し口以外の吹き出し口を閉鎖する
ことを特徴とする床空調システム。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−247537(P2011−247537A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−122849(P2010−122849)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】