説明

床面粗化機

【課題】固化前のコンクリート床面に存在するレイタンスを効率良く分断、破砕するとともに、コンクリート床面に凹痕を形成可能な床面粗化機を提供する。
【解決手段】床面粗化機10は、固化前のコンクリート床面C上を転動可能な複数のローラ11,12と、平行配置されたローラ11,12を回転自在に保持する保持体13と、ローラ11,12の転動方向に沿ってコンクリート床面C上を摺動可能な状態で保持体13に取り付けられた擦過部材21と、を備えている。ローラ11,12は筒状体11a,12aと、筒状体11a,12aのそれぞれの両端部に設けられた支軸11b,12bと、で構成され、支軸11b,12bがそれぞれ軸受11c,12cを介して保持体13の左右両側に取り付けられている。擦過部材21は、棒状体22bの長手方向に沿って、外径及び長さの等しい複数の線材22aが一定間隔ごとに配列された櫛状部材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋コンクリート建築物や構造体などのコンクリート床面の施工工程において、固化前のコンクリート床面を粗面化する作業に使用する床面粗化機に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート床面の施工の際に、床面に打設され、固化する前のコンクリート床面には、ブリージング現象によってレイタンスが生じることが多い。レイタンスは、セメント中の石灰石の微粒子や骨材の微粒が、ブリージングとともにコンクリート床面に上昇して形成された層膜状の物質である。表面均し作業が終わった後のコンクリート床面にレイタンスが存在する状態のまま、その後の仕上げ作業を行うと、固化した後のコンクリート床面の表層部分に、極めて脆く、簡単に割れたり、剥離したりする部分が生じることがある。
【0003】
このような弊害を防止する技術として、例えば、特許文献1には「コンクリートのレイタンス除去工法」が提案されているが、大型商業施設などのコンクリート建築物のコンクリート床面を施工する場合、広大な面積に亘ってレイタンスが生じるので、特許文献1記載の除去工法で対応することは極めて困難である。
【0004】
そこで、本出願人は、特願2010−281795において、固化前のコンクリート床面に生じたレイタンスを所定の粗化作業を行って分断、破砕した後、コンクリート改質剤を散布して仕上げ作業を施すことにより、固化後のコンクリート床面の脆化や剥離を防止する施工技術を提案している。
【0005】
一方、本発明とは異なる技術分野であるが、例えば、特許文献2において、コンクリート舗装に縦断方向の箒目やグルービングを施すことのできる「自走式縦断粗面仕上げ機」が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−220895号公報
【特許文献2】特開2002−69924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特願2010−281795において、本出願人が提案している床面施工技術においては、固化前のコンクリート床面に生じたレイタンスを分断、破砕し、コンクリート床面に凹部を形成する作業を効率的に行うことを要するが、前述したように、特許文献1記載の除去工法によって対応することは極めて困難である。
【0008】
一方、特許文献2記載の「自走式縦断粗面仕上げ機」は、面積の広いコンクリート舗装面に対して施工する場合には好適であるが、車体部の両側に配置された車輪が走行するためのレールや専用スペースを設けなければならないので、固化前のコンクリート床面の粗面化工事には不向きである。また、この「自走式縦断粗面仕上げ機」を、レールや専用スペースを設けることなく、固化前のコンクリート床面に使用した場合、車輪の轍がコンクリート床面に残るので、現実には使用不可能である。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、固化前のコンクリート床面に存在するレイタンスを効率良く分断、破砕するとともに、コンクリート床面に凹痕を形成することのできる床面粗化機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の床面粗化機は、固化前のコンクリート床面上を転動可能なローラと、前記ローラを回転自在に保持する保持体と、前記ローラの転動方向に沿って前記コンクリート床面上を摺動可能な状態で前記保持体に設けられた擦過部材と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
施工対象である固化前のコンクリート床面上に置かれた床面粗化機を、ローラの転動方向に沿って移動させると、コンクリート床面上を摺動する擦過部材によってコンクリート床面が引き掻かれるため、固化前のコンクリート床面に存在するレイタンスを効率良く分断、破砕するとともに、擦過部材が通過した後の当該コンクリート床面に凹痕を形成することができる。
【0012】
また、前記擦過部材として、櫛状部材、熊手状部材若しくはブラシ状部材を設ければ、コンクリート床面の広い範囲に層膜状に生じるレイタンスを確実に分断、破砕しながら、コンクリート床面に凹痕を形成していくことができる。
【0013】
さらに、前記擦過部材を前記コンクリート床面に押し付ける押圧手段を設ければ、コンクリート床面上を摺動中の擦過部材が、当該コンクリート床面から受ける反発力により浮き上がったり、縦揺れしたりするのを防止することができるため、粗面化作業の確実化を図ることができる。
【0014】
なお、押圧手段は、特に限定しないが、例えば、コンクリート床面に対し擦過部材を一定姿勢で押圧する姿勢保持機構あるいは擦過部材をコンクリート床面に一定圧力で押し付ける押圧機構などを設けることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、固化前のコンクリート床面に存在するレイタンスを効率良く分断、破砕するするとともに、コンクリート床面に凹痕を形成可能な床面粗化機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態である床面粗化機を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A線における一部省略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1,図2に示すように、本実施形態の床面粗化機10は、固化前のコンクリート床面C上を転動可能な複数のローラ11,12と、互いに平行に配置されたローラ11,12を回転自在に保持する保持体13と、ローラ11,12の転動方向に沿ってコンクリート床面C上を摺動可能な状態で保持体13に取り付けられた擦過部材22と、を備えている。ローラ11,12は筒状体11a,12aと、筒状体11a,12aのそれぞれの両端部に設けられた支軸11b,12bと、で構成され、支軸11b,12bがそれぞれ軸受11c,12cを介して保持体13の左右両側に取り付けられている。筒状体11,12は外径及び長さが等しく、外周面が滑らかな金属製の円筒状部材である。
【0018】
保持体13は、筒状体11,12の支軸11b,12bと平行に配置された断面コ字状の基盤材14と、基盤材14の両端にそれぞれ支軸11b,12bと直交する方向に固着されたサイド部材15L,15Rと、サイド部材15L,15Rに両端を固着した状態で筒状体11,12と平行に配置された前方バー16及び中間バー17と、を備えている。
【0019】
前方バー16の左右端部に設けられたヒンジ部20を介して断面L字状の補強部材22が回動可能に取り付けられ、補強部材21に擦過部材22が着脱可能に取り付けられている。擦過部材22は、棒状体22bの長手方向に沿って、外径及び長さの等しい複数の線材22aが一定間隔ごとに配列された櫛状部材である。擦過部材21は、その長手方向が筒状体11,12の支軸11a,12aと平行をなすように配置されている。
【0020】
前方バー16の略中央に設けられた支持部23に、シーソー状に起伏する連接部材24が取り付けられている。連接部材24の前端部はリンク部材25を介して補強部材21の略中央の支持部26に軸支されている。中央バー17の略中央に設けられた支持部29に、L字状のアーム部材28の角部が回動可能に軸支され、アーム部材28の前端部と、連接部材24の後端部と、がリンク部材27を介して連結されている。
【0021】
アーム部材28の後端部には、後述する操作ハンドル18に設けられた昇降レバー30の操作に伴ってチューブ31aの先端部31bから出入りするワイヤ31が係止されている。連接部材24とアーム部材28との間には、両者を近づける方向に付勢するバネ32が配置されている。基盤材14の上面に立設されたL字状の支持部33に、ワイヤ31のチューブ31aの先端部31bが係止されている。
【0022】
操作ハンドル18は、作業者が手で掴む水平部18hと、水平部18hの左右端部からそれぞれ連接部材14に向かって延設された連結部18aと、連結部18a間に水平に架設された補強部18bと、で形成されている。基盤材14上面に固着された左右一対のL字状の支持部19に、操作ハンドル18の連結部18aの前端が着脱可能に取り付けられている。操作ハンドル18は、基盤材14上面から後方に向かって上り勾配の傾斜姿勢をなすように取り付けられている。
【0023】
図1に示すように、操作ハンドル18に設けられた昇降レバー30を後方(矢線A方向)に引いて、レバーボックス30bのストッパ部30aに係合させると、ワイヤ31が昇降レバー30方向に引き込まれ、アーム部材28が支持部29を中心に後方(矢線B方向)に回動し、リンク部材27を介して連接部材24の後端部が引き上げられる。
【0024】
これにより、図2に示すように、連接部材24の前端部が下降し、リンク部材25及び支持部26を介して補強部材21と共に擦過部材22がヒンジ部20を中心にコンクリート床面Cに近づく方向に回動する結果、擦過部材22の線材22aの先端部がコンクリート床面Cより低くなるような状態にセットされる。
【0025】
図2に示す状態にセットした後、操作ハンドル18の後方にて保持体13に向かって立った作業者(図示せず)が、水平部18h(図1参照)を手で掴んで、後方(矢線D方向)に引っ張れば、ローラ11,12が転動して床面粗化機10が後方に移動する。このとき、コンクリート床面C上を摺動する擦過部材22の線材22aによってコンクリート床面Cが引き掻かれるため、固化前のコンクリート床面Cに存在するレイタンス(図示せず)を効率良く分断、破砕するとともに、擦過部材22の線材22aが通過した後の当該コンクリート床面Cに細溝状の凹痕35を形成することができる。
【0026】
擦過部材22の線材22aは、昇降レバー30の操作によって生じたワイヤ31の引っ張り力によってコンクリート床面Cに向かって押圧された状態に保たれるので、作業者は操作ハンドル18を掴んで後退するだけで、安定した作業を行うことができる。床面粗化機10においては、擦過部材22をコンクリート床面Cに押し付ける押圧手段としてワイヤ31の張力を利用しているが、これに限定しないので、バネなどの弾性部材や重りを利用することもできる。
【0027】
一方、昇降レバー30をレバーボックス30bのストッパ30aから離脱させると、ワイヤ31の張力が解除され、バネ32の復元力により、アーム部材28が矢線Bと反対方向に回動して連接部材24の後端部が下降し、擦過部材22の線材22aがコンクリート床面Cから離れた状態となる。この状態でローラ11,12は回動自在であるため、作業者は操作ハンドル18を押したり、引いたりすることによって、床面粗化機10を任意に移動させることができる。
【0028】
床面粗化機10においては、擦過部材20として、棒状体22bに複数の線材22aが植設された櫛状部材を用いているが、これに限定しないので、熊手状部材あるいはブラシ状部材などを用いることもできる。
【0029】
図1,図2に示す床面粗化機10は、本発明の一例を示すものであり、本発明に係る床面粗化機は床面粗化機10に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0030】
鉄筋コンクリート建築物や構造体などのコンクリート床面の施工工事において広く利用することができる。
【符号の説明】
【0031】
10 床面粗化機
11,12 ローラ
13 保持体
14 基盤材
15L,15R サイド部材
16 前方バー
17 中間バー
18 操作ハンドル
18h 水平部
18a 連結部
18b 補強部
19,23,26,29,33 支持部
20 ヒンジ部
21 補強部材
22 擦過部材
22a 線材
22b 棒状体
24 連接部材
25,27 リンク部材
28 アーム部材
30 昇降レバー
30a ストッパ
30b レバーボックス
31 ワイヤ
31a チューブ
31b 先端部
32 バネ
35 凹痕
C コンクリート床面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固化前のコンクリート床面上を転動可能なローラと、前記ローラを回転自在に保持する保持体と、前記ローラの転動方向に沿って前記コンクリート床面上を摺動可能な状態で前記保持体に設けられた擦過部材と、を備えたことを特徴とする床面粗化機。
【請求項2】
前記擦過部材として、櫛状部材、熊手状部材若しくはブラシ状部材を設けた請求項1記載の床面粗化機。
【請求項3】
前記擦過部材を前記コンクリート床面に押し付ける押圧手段を設けた請求項1または2記載の床面粗化機。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−64302(P2013−64302A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204911(P2011−204911)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(509205696)株式会社上成テクノ (5)
【Fターム(参考)】