説明

床頭キャビネット

【課題】ベッド上において、患者などの位置が、前後方向に大きく異なっても、物品等の出し入れを何ら支障なく行いうるようにする。
【解決手段】少なくとも前方から物品の出し入れを可能とした箱状筐体6を備える固定キャビネット1におけるベッドB側の側面に、ベッド側の側面が開口された収納箱10を備える可動キャビネット2を、ガイド手段13を介して、前方に移動可能に取付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病院や介護施設等のベッドサイドに設置して、患者などが日常使う物品等を収納したり、テレビを載置したりするための床頭キャビネットに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の床頭キャビネットとしては、例えば特許文献1〜4に記載されているものがある。
【特許文献1】実開平3−82036号公報
【特許文献2】特開平11−169237号公報
【特許文献3】特開2005−198923号公報
【特許文献4】特開2006−227510号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
病院等のベッドサイドに設置される床頭キャビネットは、患者などがベッドに寝ているときや、ベッドを起こしてそれに凭れかかっているときなど、患者の手の届く範囲が、前後方向(ベッドの長手方向)に異なっても、床頭キャビネットに収容してある物品の出し入れや、テレビの視聴に支障を来さないようにすることが望ましい。
【0004】
しかし、上記特許文献1〜4に記載されている床頭キャビネットにおいては、いずれも、物品の収納部は、キャビネット本体に固定的に設けられているため、患者の手の届く範囲が前後方向に大きく異なった際に、物品等の出し入れに支障を来す恐れがある。
【0005】
また、上記特許文献に記載の床頭キャビネットは、いずれも、テレビの視聴位置についての対策は講じられているが、単にキャビネット本体に設けた水平回動板や前後移動枠、又は支持アームに、薄型テレビを、その向きや前後左右位置を調整可能に取付けているのみであるため、テレビの位置を前後に大きく変えることはできず、患者の前後位置が大きく異なった際に、テレビの視聴位置を最適に調整することができないという問題がある。
【0006】
この問題に対処するためには、前後移動枠や支持アームの移動ストロークを大とすることが考えられるが、このようにすると、前後移動枠や支持アームに大きな偏荷重が加わり、テレビを安定して支持するのが困難になるとともに、床頭キャビネット自体も不安定となる恐れがある。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、ベッド上において、入院患者などの位置が、前後方向に大きく異なっても、物品等の出し入れを、何ら支障なく行いうるとともに、テレビ等の視聴位置を最適に調整しうるようにした床頭キャビネットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
(1)病院等のベッドにおける頭部側と隣接する側方に設置される床頭キャビネットであって、少なくとも前方から物品の出し入れを可能とした箱状筐体を備える固定キャビネットにおける前記ベッド側の側面に、ベッド側から使用可能な収納箱を備える可動キャビネットを、ガイド手段を介して、前方に移動可能に取付ける。
【0009】
(2)上記(1)項において、ガイド手段を、固定キャビネットと可動キャビネットとの対向面に設けた、前後方向を向く上下複数のサスペンションレールとする。
【0010】
(3)上記(1)または(2)項において、可動キャビネットにおける収納箱に、支持手段を介して、テレビを取付ける。
【0011】
(4)上記(1)〜(3)項のいずれかにおいて、可動キャビネットの下面に、キャスタを取付ける。
【0012】
(5)上記(1)〜(4)項のいずれかにおいて、収納箱におけるベッドと反対側の側面の上下方向の中間部に、水平をなす可動台を、固定キャビネットの筐体内に収容された位置から前方に移動しうるようにして設ける。
【0013】
(6)上記(5)項において、可動台の側端面と筐体の内側面との対向面に、サスペンションレールを設ける。
【0014】
(7)上記(1)〜(4)項のいずれかにおいて、収納箱におけるベッドと反対側の側面の上端に、可動天板を、固定キャビネットの筐体の上面と重合する位置から前方に移動しうるようにして設ける。
【0015】
(8)上記(1)〜(7)項のいずれかにおいて、固定キャビネットと可動キャビネットとの上下及び前後寸法を、互いにほぼ等しくする。
【0016】
(9)上記(1)〜(8)項のいずれかにおいて、収納箱におけるベッド側の側面を開口し、その内部に物品収納部を設ける。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の発明によれば、患者などがベッドに寝ているときはもとより、その姿勢からベッドを起こしてそれに凭れかかったときなど、患者の前後位置が大きく異なった際でも、可動キャビネットを前方に移動させることにより、収納箱を、患者の手の届く範囲に位置させうるので、収納箱を、ベッド側から何ら支障なく使用することができる。
【0018】
請求項2記載の発明によれば、可動キャビネットは、上下複数のサスペンションレールにより支持されながら、前後方向に円滑に移動することができる。
【0019】
請求項3記載の発明によれば、テレビをも、可動キャビネットと共に前後方向に移動させうるため、患者などの前後位置が大きく異なっても、テレビの視聴位置を最適に調整することができる。
また、テレビの支持アーム等を前後方向に大きく伸長させて、テレビの前後位置を調節する必要がないので、重量のあるテレビであっても、これを安定よく支持しうるとともに、床頭キャビネット自体が不安定となることはない。
【0020】
請求項4記載の発明によれば、収納箱やテレビの重量が大であっても、可動キャビネットは、床面上を安定よく前後方向に移動することができる。
また、ガイド手段に大きな荷重が作用しなくなるので、その寿命が延びる。
【0021】
請求項5記載の発明によれば、可動キャビネットを前方に移動させると、可動台も前方に移動するので、その上面を、物品の載置台として使用することができる。
また、可動キャビネットを前方に移動させた際、可動台の下方に、患者などのための下肢空間が形成されるので、椅子を用いて、可動キャビネットを、机代わりとして使用することができる。
【0022】
請求項6記載の発明によれば、可動台を設けても、可動キャビネットは、左右のサスペンションレールにより支持されているので、安定よく前後方向に移動させることができる。
また、テレビの重量や可動台に載せた物品の重量が大であっても、可動キャビネットを、固定キャビネットに安定よく支持することができる。
【0023】
請求項7記載の発明によれば、可動キャビネットを前方に移動させると、可動天板も前方に移動するので、筐体の上面と可動天板とにより、前後方向に長い大きな物品の載置面積が確保される。
また、可動キャビネットを前方に移動させると、可動天板の下方に、患者などための大きな下肢空間が形成されるので、上記請求項5記載の発明の効果と同様、可動キャビネットを、机代わりに使用することができる。
【0024】
請求項8記載の発明によれば、可動キャビネットを前方に移動させないときには、可動キャビネットと固定キャビネットとは一体感を呈し、違和感がなくなるので、床頭キャビネットとしての外観的体裁が向上する。
【0025】
請求項9記載の発明によれば、収納箱のベッド側の側面を開口して、内部に物品収納部を設けたことにより、収納箱に種々の物品を収納することができるとともに、物品収納部への物品の出し入れを、ベッド側より容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の床頭キャビネットの第1の実施形態を示す斜視図、図2は、同じく、一側部の可動キャビネットを前方に移動させたときの斜視図、図3は、同じく図2の状態を、左外側方より見た斜視図、図4〜図6は、それぞれ、同じく正面図と右側面図と平面図である。なお、以下の説明において、床頭キャビネットの前後方向は、図5の左方(図1の左前側方)、すなわちベッドの足元側を前方、ベッドの頭部側を後方とし、左右方向は、ベッドに関して言うものとする。
【0027】
床頭キャビネットは、ベッドBの頭部側の側方に隣接して設置されるもので、固定キャビネット1と、そのベッドB側の側面に取付けられた左右幅の小さな可動キャビネット2とからなり、固定キャビネット1の下面の四隅部には、ストッパ付きのキャスタ3が取付けられ、また、可動キャビネット2の下面のやや外側方寄りにも、前後1対のストッパ付きのキャスタ4、4が取付けられている。
【0028】
固定キャビネット1は、前面が開口するとともに、上面に天板5が取付けられた箱状の筐体6を備え、筐体6内の中央部のやや上方寄りには、水平をなす仕切板7が取付けられている。筐体6内の上部には、前方に引き出し可能な引出し8が収容され、また、仕切板7の下方に形成された収納空間には、例えば小型の冷蔵庫9が収容されている。
【0029】
可動キャビネット2は、上下と前後寸法が固定キャビネット1のそれとほぼ等しい、ベッドB側の側面(右側面)が開口された収納箱10と、この収納箱10の左側面の上部に取付けられた可動台11とを備えている。可動台11の前後寸法は、収納箱10のそれよりも短寸とされ、前面が収納箱10の前面と整合するようにして取付けられている。また、可動台11の左右寸法は、固定キャビネット1における筐体6内に収容される大きさ、すなわち、仕切板7の左右寸法とほぼ等しくされている。
【0030】
可動台11は、固定キャビネット1における筐体6の右方の側板6aに形成された、前方に開口する前後方向を向く切欠き孔12を通して、筐体6内に前後方向に移動可能に挿入されている。
【0031】
図3及び図4に示すように、固定キャビネット1における筐体6の側板6aと、可動キャビネット2の収納箱10の側板10aとの対向面には、前後方向を向く上下1対の公知のサスペンションレール13、13が取付けられている。また、筐体6の左方の側板6bの内側面と、可動台11の左側面との対向面にも、サスペンションレール13が取付けられている。
【0032】
これにより、可動キャビネット2は、実質的に両側端部がサスペンションレール13により支持されることとなり、固定キャビネット1に対し、前後方向に円滑かつ安定よく移動させることができる。なお、可動キャビネット2の前方への最大移動量は、その後端が、固定キャビネット1の前端部付近まで移動する程度とし、その位置において、各サスペンションレール13に設けたストッパ(図示略)により停止するようになっている。
【0033】
可動キャビネット2における収納箱10の上面板10b の前端部には、支持ポール14の下端部が着脱可能に取付けられ、この支持ポール14には、伸縮可能で、かつ前後及び上下方向に首振り可能な支持アーム15を介して、液晶等の薄型テレビ16が取付けられている。
上面板10bの適所には、テレビ16の電源コード18のための挿通孔17が設けられている。
【0034】
可動キャビネット2の収納箱10におけるテレビ16の下方には、患者Pがテレビ16を一定時間視聴する際に使用するプリペイドカード等を挿入するための課金機19が、その一部を可動台11内に嵌合させて収容されている。また、課金機19の下方には、上向きコ字状のタオル掛け20と、雑誌等を立て掛けて保持する書架ワイヤ21、21が取付けられている。
【0035】
さらに、収納箱10内を左右に仕切る上下方向を向く仕切板22を挟む右方の収納箱10内の上部には、上下2段の物品載置棚23、23が、またその下方には、物品の滑落等を防止するワイヤストッパ24が、それぞれ取付けられている。
上面板10b の後端部には、缶やペットボトル入りの飲み物を挿入し、上部の物品載置棚23の上面により支持可能な長方形の保持孔25が形成されている。
【0036】
以上説明したように、上記第1の実施形態の床頭キャビネットにおいては、固定キャビネット1の筐体6におけるベッドB側の側面に、ベッドB側の側面が開口された収納箱10を有する可動キャビネット2を、前方に移動可能に取付けているため、図1及び図2に示すように、患者PがベッドBに寝ている姿勢から、ベッドBを起こしてそれに凭れかかった場合など、患者Pの前後位置が大きく異なった際でも、可動キャビネット2を前方に移動させることにより、収納箱10に収納した書籍やタオルなどの物品や課金機19等を、手の届く範囲に位置させることができ、使い勝手がよくなる。
【0037】
また、テレビ16も、可動キャビネット2に、支持ポール14と支持アーム15とからなる支持手段により支持され、可動キャビネット2と共に前後方向に移動させうるため、患者Pの前後位置が大きく異なっても、テレビ16の視聴位置を最適に調整することができる。しかも、支持アーム15を大きく伸長させて、テレビ16の前後位置を調整する必要がないので、比較的重量のあるテレビ16であっても、これを安定よく支持しうるとともに、床頭キャビネット自体が不安定となることはない。
【0038】
可動キャビネット2における収納箱10の左側面の上部には、これと共に前方に移動する可動台11が取付けられているため、可動キャビネット2を前方に移動させると、可動台11を、来訪者や看護師等が持参した物品の載置台として使用することができ、固定キャビネット1の天板5と合わせて、物品の載置面積を増大しうる。
また、可動キャビネット2を前方に移動させると、可動台11の下方に、患者P等のための下肢空間が形成されるので、可動キャビネット2を、椅子等を用いて机代わりとして使用することもできる。
【0039】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
上記実施形態では、可動キャビネット2を安定して前後方向に移動させるために、その下面に前後2個のキャスタ4を設けているが、例えばテレビ16を取り付けないときや、収納物品が比較的軽量であるときには、キャスタ4を省略し、サスペンションレール13のみで、可動キャビネット2を支持するようにしてもよい。
また、床頭キャビネットを病室内等の定位置に設置し、あまり移動する必要のないときには、固定キャビネット1に設けたキャスタ3を省略することもある。
【0040】
さらに、図7に示す第2の実施形態の床頭キャビネットのように、可動台11の代わりに、収納箱10の左側面の上端に、固定キャビネット1の天板5とほぼ同じ大きさの可動天板26を、天板5の直上を左右方向に移動しうるように取付けてもよい。このようにしても、可動キャビネット2を前方に移動させると、双方の天板5、26により、前後方向に長い大きな物品の載置面積が確保されるとともに、上記と同様、可動キャビネット2を、机代わりとして使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の床頭キャビネットの第1の実施形態を示す斜視図である。
【図2】同じく、可動キャビネットを前方に移動させたときの斜視図である。
【図3】同じく、図2の状態を左前側方より見た斜視図である。
【図4】同じく、正面図である。
【図5】同じく、右側面図である。
【図6】同じく、平面図である。
【図7】同じく、第2の実施形態の床頭キャビネットにおいて、可動キャビネットを前方に移動させたときの斜視図である。
【符号の説明】
【0042】
1 固定キャビネット
2 可動キャビネット
3、4 キャスタ
5 天板
6 筐体
6a、6b 側板
7 仕切板
8 引出し
9 冷蔵庫
10 収納箱
10a 側板
10b 上面板
11 可動台
12 切欠き孔
13 サスペンションレール
14 支持ポール(支持手段)
15 支持アーム(支持手段)
16 テレビ
17 挿通孔
18 電源コード
19 課金機
20 タオル掛け
21 書架ワイヤ
22 仕切板
23 物品載置棚
24 ワイヤストッパ
25 保持孔
26 可動天板
B ベッド
P 患者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
病院等のベッドにおける頭部側と隣接する側方に設置される床頭キャビネットであって、少なくとも前方から物品の出し入れを可能とした箱状筐体を備える固定キャビネットにおける前記ベッド側の側面に、ベッド側から使用可能な収納箱を備える可動キャビネットを、ガイド手段を介して、前方に移動可能に取付けたことを特徴とする床頭キャビネット。
【請求項2】
ガイド手段を、固定キャビネットと可動キャビネットとの対向面に設けた、前後方向を向く上下複数のサスペンションレールとしてなる請求項1記載の床頭キャビネット。
【請求項3】
可動キャビネットにおける収納箱に、支持手段を介して、テレビを取付けてなる請求項1または2記載の床頭キャビネット。
【請求項4】
可動キャビネットの下面に、キャスタを取付けてなる請求項1〜3のいずれかに記載の床頭キャビネット。
【請求項5】
収納箱におけるベッドと反対側の側面の上下方向の中間部に、水平をなす可動台を、固定キャビネットの筐体内に収容された位置から前方に移動しうるようにして設けてなる請求項1〜4のいずれかに記載の床頭キャビネット。
【請求項6】
可動台の側端面と筐体の内側面との対向面に、サスペンションレールを設けてなる請求項5記載の床頭キャビネット。
【請求項7】
収納箱におけるベッドと反対側の側面の上端に、可動天板を、固定キャビネットの筐体の上面と重合する位置から前方に移動しうるようにして設けてなる請求項1〜4のいずれかに記載の床頭キャビネット。
【請求項8】
固定キャビネットと可動キャビネットとの上下及び前後寸法を、互いにほぼ等しくしてなる請求項1〜7のいずれかに記載の床頭キャビネット。
【請求項9】
収納箱におけるベッド側の側面を開口し、その内部に物品収納部を設けてなる請求項1〜8のいずれかに記載の床頭キャビネット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−113916(P2008−113916A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−301056(P2006−301056)
【出願日】平成18年11月7日(2006.11.7)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)
【Fターム(参考)】