説明

座席の脚部構造

【課題】消火器を取り出しやすい位置に設置し、かつ消火器を固定する取付台が簡易、かつ確実に車体に取り付けられる座席の脚部構造を提供すること。
【解決手段】車両乗降口の車室内前方に、該乗降口のドアを開閉させるドアエンジンが配置されている車両において、前記ドアエンジンの車両前方側に取り付けられた座席の脚部から前記ドアエンジンの前部上方に向けて消火器載置用棚を突出させたことを特徴とする座席の脚部構造。これにより、消火器の上部及び後方に障害物がなくなり、取出しが容易となる。また、構成が一体化され、製造、取付が簡易となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型バスの座席の脚部構造に関し、特に幼児送迎用バスにおいて消火器を載置可能とした座席の脚部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
乗客数が所定数を超えるバスなどには、消火器の設置が義務付けられている。そこで、小型バスなどでは通常、座席の下側などに消火器を設置していた。
【0003】
ところが幼児送迎用小型バスの座席は、床面から座面までの高さが通常の座席の半分ほどの高さに規制され、座席の下側に消火器を収納させるスペースがない。
【0004】
そのため従来は、図6に示すように、運転席と反対側の側面に設けられた乗降口14とその乗降口14の直前に設けられた座席18との間に取付台62を床16に固定し、取付台62に消火器60を設置していた。
【0005】
また、特許第2554977号公報には、シート後方に消火器105を備えた車両の発明が記載されている。
【特許文献1】特許第2554977号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、乗降口14のドアが折り戸式の自動ドアである場合には、図6に示すようにドアを自動開閉させるドアエンジン22が、乗降口14の車両前方側に設置されている。そのため、消火器60は、座席18とドアエンジン22との間で、座席18が覆いかぶさるようにして取り付けられており、取り出しにくい状況であった。
【0007】
また、消火器60の取付台62を床16上に固定するため組付工程が多くなり、また座席18とドアエンジン22に挟まれ、狭いために固定作業がしにくいという問題があった。また、取付台62を斜め上方に高くすることも考えられたが、その先端に消火器60を取り付けるので床16にかかる応力が大きくなり、床16の補強が必要となるという問題があった。
【0008】
本発明は上記課題を解決し、消火器を取り出しやすい位置に設置し、かつ消火器を固定する取付台が簡易、かつ確実に車体に取り付けられる座席の脚部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するため、ドア前席の脚部構造を次のように構成した。
【0010】
1、 車両乗降口の車室内前方に、該乗降口のドアを開閉させるドアエンジンが配置されている車両において、前記ドアエンジンの車両前方側に取り付けられた座席(「ドア前席」とする。)の脚部から前記ドアエンジンの前部上方に向けて消火器載置用棚を突出させることとした。
【0011】
2、 1に記載の座席の脚部構造において、前記ドア前席の脚部は、車幅方向に離間した左右一対の脚が上下方向に延び、前記消火器載置用棚は、載置された消火器を固定する固定具を有する載置部と、一端が、前記各脚の上下方向中間部に固定され、他端が、前記一端から車両後方に延び、前記載置部を支持固定する左右一対の第1アームと、一方端が、前記各脚の下端に固定され、他方端が、前記車両の床面に沿って前記一方端から車両後方に延び、その後上方に屈曲して前記第1アームの中間位置、もしくは前記載置部に固着した左右一対の第2アームと、から構成することとした。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかる座席の脚部構造は、次の効果を有している。
消火器が、ドアエンジンの前方上部に取り付けられるので、消火器の上部及び車両後方側に障害物がなくなり、取付金具の施錠、解錠操作が容易となり、消火器を容易に取り出すことができる。
【0013】
消火器を据え付ける載置用棚と座席の脚部とを一体に形成したので、床部への補強が不要となり、また取付作業が容易となり、組み付け工程を簡略化できる。第2アームが第1アーム、もしくは載置台を下部から支持しているので、消火器を強固に固定できる。取付台を座席の脚部と一体に形成するので、別途取付台を形成した場合と比較して製造工程を省略し、製造コストを低減できる。
【0014】
脚部の下端に設けられた第2アームを車両後方に、かつ床面上に載置させた状態で延長させているので、床面との当接面積が増大し、床面への当接応力を小さくできる。第1アームと脚部との取り付け部分に生じる応力が、第2アームの支持により低減でき、部材を細くし全体の重量を軽減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明にかかる座席の脚部構造の一実施形態について、図を参照して説明する。
図1に、バス10の全体構成を示す。バス10は、車室内右側前方に運転席12を備え、左側面に乗降口14を備えた幼児送迎用のバスである。バス10の室内は、ほぼ中央に通路を備え、通路を挟んだ両側に座席(図示せず。)がそれぞれ設けられている。各座席は、座面が床面からほぼ250mmの高さに設定されている幼児用座席である。
【0016】
バス10は、図3に示すように車両前方の床下にエンジン19が搭載してあるフロントエンジン形式で、エンジン19の上部にはエンジンリッド21が設けられている。図3は、車両を上方から示し、図の左側が車両前方である。エンジンリッド21の左右両側に位置する床16は、エンジンリッド21と同様に、車両後方の床より一段高く形成されている。床16の下部には、フロントタイヤ25(図2参照。)が配置されている。
【0017】
乗降口14には、折り戸式の自動ドア20(図1参照)が設けられている。乗降口14の前方側の床16上には、図2にも示すように自動ドア20を開閉駆動させるドアエンジン22が設置されている。ドアエンジン22は、ほぼ直方体のカバーを有し、カバーの内部に駆動機構(図示せず。)が収納されており、駆動機構の駆動端が自動ドア20の内の一枚の内側面に連結されている。
【0018】
床16上には座席(ドア前席)18が取り付けてある。座席18は、乗降口14の直前に設けられ、乗降口14側の最前列の座席である。座席18は固定台17を介して、上述したように車両前方の一段高く形成された床16上に取り付けられている。座席18の前方には、固定台17と連続した高さをもって、足置き台23が取り付けられている。
【0019】
座席18は、着座部24と背当て部26と、それらを支持する脚部28などから構成されている。着座部24は、脚部28上に取り付けてあり、固定台17から250mm程度の高さに設定されている。背当て部26は、脚部28の後方に延びる背当て支持用のパイプ30に取り付けられている。
【0020】
脚部28の全体を図4に示す。脚部28は、着座部24を支持する4本の脚32を四隅に上下方向に備え、前後方向に並べられた脚32の下面にはそれぞれ底板34が取り付けられている。底板34には、固定用ねじ33を通すねじ孔35が2箇所に形成してある。
【0021】
消火器載置用棚は、後方の脚32の後方に配置されており、後方の脚32のそれぞれには、第1アーム36が取り付けられている。第1アーム36は、着座部24より若干下に取り付けてあり、ほぼ水平に車両後方に延びている。第1アーム36の後方端部には、左右の第1アーム36を連結して載置板38が取り付けてある。
【0022】
また底板34の後方には、第2アーム40が取り付けられている。第2アーム40は、後方の脚32から車両後方に延び、その後上方に屈曲して、第1アーム36の中程の位置に連結されている。第2アーム40は、底板34と同じ高さに形成してあり、底板34を固定台(床面)17に固定すると、第2アーム40の下面41も固定台17上に当接する。尚、底板34と第2アーム40は、説明上分けたが、同一の部材で構成してもよい。
【0023】
載置板38には、消火器60の取付金具42が取り付けてある。取付金具42は、一端に消火器60の下端を掛ける爪部44が形成してあり、中程にバックル式の固定ベルト46を具えている。固定ベルト46は、レバー48を具え、レバー48の操作で消火器60を施錠し、また解錠する。
【0024】
消火器60を載置板38に固定した状態を、図5に示す。図5に示すように消火器60は、その長手方向をバス10の横方向に沿わせて、取付金具42に着脱可能に固定される。
【0025】
したがって、消火器60は、ドアエンジン22の上方に取り付けられ、しかも座席18の着座部24や背当て部26からも距離が離れているので、固定ベルト46の操作が容易で、すばやい取り外しが可能となっている。
【0026】
載置板38等と脚32とが一体に形成されているので、座席用の脚部と消火器固定用の固定台とを個別に製作する場合と比較して、製造コストが低減できる。載置板38等と脚32とが一体に形成してあるので、脚32を床16上に固定すると、載置板38を床16に固定でき、固定台と座席とを分けて取り付ける場合と比較して、取り付け工程が非常に簡易となる。
【0027】
第1アーム36が、第2アーム40で下方から支持されているので、十分な強度が得られる。第2アーム40が、底板34から車両後方に延び、かつて床16上に当接しているので、荷重が分散され、また載置板38に消火器60が取り付けられて、座席18の重心が後方に変位していても取り付けが不安定になることがない。
【0028】
尚、上記例では、自動ドアを例に説明したが、自動ドア用の駆動機構が設けられていない車両にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明にかかる座席を具えた車両の一実施形態を示す斜視図。
【図2】座席部分を示す側面図。
【図3】座席部分を示す平面図。
【図4】脚部を示す斜視図。
【図5】座席部分を示す斜視図。
【図6】従来の例を示す側面図。
【符号の説明】
【0030】
10…車両
12…運転席
14…乗降口
16…床
22…ドアエンジン
28…脚部
36…第1アーム
38…載置台
40…第2アーム
60…消火器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両乗降口の車室内前方に、該乗降口のドアを開閉させるドアエンジンが配置されている車両において、
前記ドアエンジンの車両前方側に取り付けられた座席(「ドア前席」とする。)の脚部から前記ドアエンジンの前部上方に向けて消火器載置用棚を突出させたことを特徴とする座席の脚部構造。
【請求項2】
前記ドア前席の脚部は、車幅方向に離間した左右一対の脚が上下方向に延び、
前記消火器載置用棚は、載置された消火器を固定する固定具を有する載置部と、一端が、前記各脚の上下方向中間部に固定され、他端が、前記一端から車両後方に延び、前記載置部を支持固定する左右一対の第1アームと、一方端が、前記各脚の下端に固定され、他方端が、前記車両の床面に沿って前記一方端から車両後方に延び、その後上方に屈曲して前記第1アームの中間位置、もしくは前記載置部に固着した左右一対の第2アームと、から構成したことを特徴とする請求項1に記載の座席の脚部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−90677(P2009−90677A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−260074(P2007−260074)
【出願日】平成19年10月3日(2007.10.3)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)
【Fターム(参考)】