説明

座席倒し表示装置

【課題】 既存の座席にも簡単に取り付けることができ、かつ、座席背部への電線引き込みが不要で、簡単かつ安価に実施できる座席倒し表示装置を提供する。
【解決手段】 電車、航空機、バス、船舶からなる乗合輸送機の座席背部101の背面側上部に、背部を倒し操作する際に表示する倒し表示部22と倒した背部を戻し操作する際に表示する戻し表示部23を両側に併記した表示カード20を設け、該表示カード20を窓部14を設けた収容ケース11内に摺動自在に収容し、かつ、表示カード20より操作棒21を突設すると共に収容部12の上面に設けたガイド穴13を通して操作棒21を上部に突出させ、該操作棒21の左右方向あるいは上下方向の移動で、窓部14の位置に、倒し表示部22あるいは戻し表示部23が移動して後部座席乗員に座席背部の倒し/戻し操作を表示できる構成としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電車、航空機、バス、船舶等の乗合輸送機において、並列させて設置されている座席を乗員が倒す際に、後部座席の乗員に座席を倒すことを表示できるようにした座席倒し表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、倒れ角度を調節可能とした座席が前後方向に並列状態に配置されている乗合輸送機において、前席乗員が座席背部を急に大きく倒してきた場合、後席乗員は非常に不快な思いをする場合が多く、また、前席背部に取り付けられたテーブル上に飲み物等をおいている場合に飲み物が倒れたりする場合もある。特に、航空機、新幹線、長距離バス等で長時間着席する必要がある場合、最初に不快な思いすると、長時間にわたり不快な思いが持続することとなり、更には、前後座席の乗員同士の諍いにまで発展する場合がある。
この問題は、座席背部を倒す時に、後席乗員に一言挨拶すると不快な思いは緩和されるが、殆どの場合、座席を倒すことを拒否される場合もある事などを考えたりすると挨拶しにくくなり、かつ、基本的に不知の人に声をかけにくいく等の理由等で、挨拶なしで座席背部が倒されている現状である。
【0003】
前記問題に鑑みて、従来、実開平7−2131号公報(特許文献1)において、座席背部の背面側に設け、文字と灯りと音で座席背部の操作を後部座席の乗員に知らせ、許可・承諾を得るための掲示灯が提案されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1では、電気を用いているため、座席背部まで電線を配線する必要がある。新幹線や航空機では座席の両側アーム部に各種の電装品が取り付けられ、電線がアーム部内に埋設されている場合もあるが、可動の座席背部へは配線されていない場合が殆どである。また、前記のようなアーム部に電線が配線されていない場合には、各座席への配線はない。
よって、既設の座席に電線を配線する必要がある特許公報1の装置を取り付けること困難である。また、新設の座席においても、座席背部まで電線を配線するとコスト高になる問題がある。
【特許文献1】実開平7−2131号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記問題に鑑みてなされたもので、既存の座席にも簡単に取り付けることができ、かつ、座席背部への電線引き込みが不要で、簡単かつ安価に実施できる座席倒し表示装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、第1に、電車、航空機、バス、船舶からなる乗合輸送機の座席背部の背面に、表示カードを摺動自在に収容すると共に窓部を備えた収容ケースを固定し、前記表示カードに「倒し表示部」を設けると共に操作棒を突設し、該操作棒の左右方向あるいは上下方向の移動で、前記窓部の位置に前記「倒し表示部」を位置させ、後部座席乗員に座席背部の倒し操作を表示できる構成としている座席倒し表示装置を提供している。
【0007】
前記表示カードに「戻し表示部」も設け、該表示カードを前記操作棒で移動させて、前記「倒し表示部」と「戻し表示部」を選択的に前記窓部に位置させ、後部座席乗員に座席背部の倒し操作と戻し操作を表示できる構成としていることが好ましい。
【0008】
電車、航空機、バス、船舶からなる乗合輸送機の座席背部の背面に、「倒し表示部」を設けると共に該「倒し表示部」と対向位置に窓部を設けた収容ケースを固定し、
前記収容ケースに前記窓部を開閉する遮蔽板を摺動自在に収容し、該遮蔽板に操作棒を突設し、該操作棒を左右方向あるいは上下方向に移動させて前記遮蔽板で前記窓部を開閉し、該窓部を開いて前記「倒し表示部」により、後部座席乗員に座席背部の倒し操作を表示できる構成としている座席倒し表示装置を提供している。
【0009】
第2の本発明においても、前記収容ケースに「戻し表示部」も前記窓部と対向させて設け、前記遮蔽板を前記操作棒で移動させて、前記「倒し表示部」と「戻し表示部」とにそれぞれ対向する位置の窓部の一部を選択的に前記遮蔽板で開らき、後部座席乗員に座席背部の倒し操作と戻し操作を表示できる構成としていることが好ましい。
【0010】
前記構成によれば、座席背部に設けた座席倒し表示装置の表示カードもしくは遮蔽板に設けた操作棒を左右方向あるいは上下方向に移動させて座席背部の「倒し表示部」を表示するだけで、座席背部を倒し操作する意思を後部座席乗員に伝えることができる。よって、座席背部を操作するたびに後部座席乗員にわざわざ挨拶をする必要もなく、且つ、意思表示をせずに倒し操作をすることにより後部座席乗員に不快な思いをさせることもない。
また、「倒し表示部」だけでなく「戻し表示部」も設けておき、座席背部を戻し操作する際に前記操作棒を操作して「戻し表示部」を表示すれば、座席背部を戻し操作する意思を後部座席乗員に伝えることができる。特に、戻し操作すると座席背部は勢いよく元の位置に戻るため、背部に取り付けられたテーブル上に飲み物等をおいている場合に飲み物が倒れたりするおそれがあるが、予め座席背部を戻す意思を後部座席乗員に伝えておけば、このように飲み物等が倒れたりするのを回避することができる。
さらに、本発明の座席倒し表示装置は、電気作動ではないため、座席背部まで配線する必要がなく簡単な構造であるため、安価かつ容易に実施でき、かつ、既存の座席にも簡単に取り付けることができる。
【0011】
前記「倒し表示部」は、「シートを倒させていただきます」等の文言、シートを倒す様子や人がお辞儀をする様子等を示す絵図、あるいは、これら文言と絵図を組み合わせた表示としている。
同様に、「戻し表示部」も、「シートを戻します」等の文言、シートを戻す様子等を示す絵図、あるいは、これら文言と絵図を組み合わせた表示としている。
さらに、文字表示をする場合は、航空機の国際輸送機では日本語と共に英語等の所要の外国語での文字表示も付することが好ましい。
【0012】
前記収容ケースは偏平は樹脂製ケースからなり、前記窓部は透明とすると共に他の部分は不透明とし、あるいは前記窓部を刳り貫き、かつ、前記収容ケースの背面に両面粘着テープを張り付けて前記座席背部の背面に接着固定し、あるいは前記収容ケースを接着剤を介して前記座席背部の背面に接着固定していることが好ましい。
【0013】
前記構成によれば、樹脂製ケースを部分的に透明にして設けた窓部あるいは樹脂製ケースを部分的に刳り貫いて設けた窓部を通して前記表示部を後部座席乗員が見えるようにしている。
即ち、第1の本発明では、表示カードに設けた操作棒を移動させることにより、所要の表示部が窓部に対向する位置に移動して、後部座席乗員がその表示を見ることにより、前側乗員の操作意思を知ることができる。
一方、第2の本発明では、表示部に対向する位置に予め窓部が設けられており、遮蔽板に設けた操作棒を移動させることにより、窓部を開いて所要の表示部を窓部を通して後部座席乗員が見て前側乗員の意思を知ることができる。
さらに、前記収容ケースを背面に両面粘着テープを張り付けて座席背部の背面に接着固定し、あるいは接着剤を介して前記座席背部の背面に接着固定しているため、既存の座席にも容易に前記収容ケースを取り付けて本発明の座席倒し表示装置を設けることができる。
【0014】
前記操作棒を突出させた前記表示カードあるいは前記遮蔽板と前記収容ケースとの間にバネを取り付け、該バネの付勢力に抗して前記操作棒を押圧作動すると前記表示カードあるいは前記遮蔽板を移動して「倒し表示部」を外部に表示させる一方、
前記バネの戻りを遅くするバネ戻り制御手段を設け、前記操作棒の押圧動作を解くと、前記バネ戻り制御手段により前記表示カードあるいは遮蔽板を低速度で原位置に戻し、所要時間経過後に前記「倒し表示部」が自動的に外部に表示されなくなる構成としてもよい。
【0015】
即ち、「倒し表示部」は倒し操作する時だけ、後部座席乗員に表示すればよく、倒した後までも表示しておく必要はない。よって、操作棒により「倒し表示部」を表示させる操作をした後は、操作棒から手を離すと、表示カードあるいは遮蔽板が低速で自動復帰し、「倒し表示部」が隠れるようにしている。
【0016】
例えば、前記バネをコイルバネとし、該コイルバネをガイド筒に挿入し、該ガイド筒の内面に前記バネ戻り制御手段として円弧状膨出部を突設し、前記コイルバネの外周面が前記円弧状膨出部に当接して乗り越えさせることにより前記バネの戻り速度を制御出来る構成としている。
【0017】
また、「倒し表示部」で後部座席乗員に倒すことを表示したからしか、座席背部を倒せないようにしても良い。
即ち、前記操作棒に連動する背部倒れ防止板を設け、該背部倒れ防止板を背部より座席アーム部に設けた凹部へ嵌脱自在に配置し、前記操作棒を「倒れ表示部」が外部に表示された位置に移動されると、前記背部倒れ防止板が前記凹部より外れて背部内部に引き込まれ、背部の倒れを可能とする一方、該背部が戻り位置に移動して「戻り表示部」に操作棒を移動すると、前記背部倒れ防止板が前記凹部に嵌合される構成としている。
【0018】
また、前記操作棒の先端を、前記座席背部の上端位置と同等位置あるいは若干上方に突出させ、あるいは着席した状態で該操作棒が操作可能な位置に突出させることが好ましい。
【0019】
さらに、前記収容ケースの上面にガイド孔を設け、該ガイド孔を通して前記操作棒を突出させ、前記ガイド孔の左右両端に係止溝を設け、前記操作棒を係止溝に挿入停止できる構成としていることが好ましい。
電車、航空機、バス、船舶からなる乗合輸送機では揺れが生じるが、前記構成によれば、操作棒が係止溝に係止されているため、揺れによって勝手に移動することがなく、前側乗員の意思に反して操作棒が移動し、表示部が切り替わってしまうのを防止することができる。
【0020】
前記収容ケースの窓部以外の箇所に、座席倒し操作表示の表示部を設けている。
これにより、後部座席乗員は座席倒し表示装置の操作方法を知ることができ、自己の座席の背部に設けられた座席倒し表示装置を操作することができる。
【発明の効果】
【0021】
前述したように、本発明によれば、座席背部に設けた座席倒し表示装置の表示カードもしくは遮蔽板に設けた操作棒を左右方向あるいは上下方向に移動させることにより、座席背部の倒し表示部を表示して、座席背部を倒し操作する意思を後部座席乗員に伝えることができる。よって、座席背部を操作するたびに後部座席乗員にわざわざ挨拶をする必要がなく、後部座席乗員に不快な思いをさせることもない。
また、前記座席倒し表示装置は、電気を用いない簡単な構造であるため、安価であると共に、既存の座席にも簡単に取り付けることができる。
【0022】
また、「倒し表示部」だけでなく「戻し表示部」も設けておき、座席背部を戻し操作する際に前記操作棒を操作して「戻し表示部」を表示すれば、座席背部を戻し操作する意思を後部座席乗員に伝えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図4は、本発明の第1実施形態を示し、座席倒し表示装置10は、電車、航空機、バス、船舶等の乗合輸送機に並列させて設置されている座席100の座席背部101背面側上部に収容ケース11の背面に貼り付けた両面接着テープ102もしくは接着剤を介して取り付けている。
【0024】
座席倒し表示装置10は、収容ケース11と、該収容ケース11内に摺動自在に収容する表示カード20とからなる。
偏平な樹脂製ケースからなる収容ケース11は、図2に示すように、表示カード20を左右方向に摺動自在に収容する収容部12を設けており、該収容部12の上面に連続してガイド穴13を設けて上面開口としている。ガイド穴13は両端の溝幅をケース幅方向に大とし、表示カード20の操作棒21を係止する係止溝13aを設けている。また、収容ケース11の表面の中央には、透明の樹脂で成形した窓部14を設けており、窓部14以外の部分は不透明の樹脂により成形した二色成形としている。窓部14の下部には、「座席を倒す際は、背もたれ上部の操作棒を右へ移動させて下さい」と記載された座席倒し操作表示の表示部25を設けており、後部座席乗員が座席倒し表示装置10の操作方法を知ることができるようにしている。
なお、窓部は表面の所要箇所を収容部まで刳り貫いて形成してもよい。
【0025】
表示カード20は、図3に示すように、表面の左側に「倒させていただきます」と記載された倒し表示部22と、右側に「元に戻します」と記載された戻し表示部23を併記している。前記操作棒21は、表示カード20の上面中央より上方に向けて突出している。該操作棒21は、表示カード20を収容した収容ケース11を座席100の座席背部101の背面に取り付けた状態で、座席背部101の上端から若干突出している。
【0026】
前記表示カード20を収容ケース11の収容部12に摺動自在に収容し、図4(A)に示すように、操作棒21をガイド穴13に沿って右側に移動させ、ガイド穴13の右端に設けた係止溝13a内に挿入係止すると、窓部14を通して倒し表示部22が表示される。
逆に、図4(B)に示すように、操作棒21をガイド穴13に沿って左側に移動させ、ガイド穴13の左端に設けた係止溝13a内に挿入係止すると、倒し表示部22が窓部14以外の部分に隠れて、窓部14を通して戻し表示部23が表示される。
【0027】
前記構成によれば、座席背部101に設けた座席倒し表示装置10の操作棒21を所要方向、即ち、本実施形態では、座席背部101を倒し操作する際に右方向、戻し操作する際に左方向に移動させるだけで、座席背部101の倒し/戻し表示部22、23を切り替えて表示でき、座席背部101を倒し/戻し操作する意思を後部座席乗員に伝えることができる。よって、座席背部101を操作するたびに後部座席乗員にわざわざ挨拶をする必要がなく、かつ、意思表示をしないまま倒し/戻し操作をしてしまうことがないため、後部座席乗員に不快な思いをさせることもない。
また、座席倒し表示装置10は、電気を用いない簡単な構造であるため、安価であると共に、既存の座席にも簡単に取り付けることができる。
なお、表示カードに戻し表示部を設けず、倒し表示部だけを設け、倒し操作をする意思のみを後部座席乗員に表示する構成としてもよい。
【0028】
図5は、第1実施形態の第1変形例を示し、表示カード20の中央には表示部を設けず、左右方向に間隔をあけて左側に倒し表示部22、右側に戻し表示部23を併記している。本実施形態では、倒し表示部22をシートを倒す様子を示す絵図とし、戻し表示部23をシートを戻す様子を示す絵図としている。
収容ケース11のガイド穴13には長さ方向の中央にも係止溝13aを設けて、表示カードを3段階で移動可能としている。
【0029】
図5(A)に示すように、表示カード20の操作棒21をガイド穴13の中央の係止溝13aに挿入係止した状態では、表示カード20の中央部が窓部14に対向する位置に配置されて、窓部14に何も表示されない。
この状態から、図5(B)に示すように、操作棒21をガイド穴13に沿って右側に移動させ、ガイド穴13の右端に設けた係止溝13a内に挿入係止すると、窓部14を通して倒し表示部22が表示される。
逆に、図5(A)に示した状態から、操作棒21をガイド穴13に沿って左側に移動させ、ガイド穴13の左端に設けた係止溝13a内に挿入係止すると、図5(C)に示すように、窓部14を通して戻し表示部23が表示される。
【0030】
前記構成としても、座席倒し表示装置10の操作棒21を上下方向に移動させるだけで、座席背部101の倒し/戻し表示部22、23を切り替えて表示でき、座席背部101を倒し/戻し操作する意思を後部座席乗員に伝えることができる。
また、座席背部101を操作しない場合には、座席倒し表示装置10に何も表示させない状態とすることができる。
なお、他の構成及び作用効果は第1実施形態と同様のため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0031】
図6は、第1実施形態の第2変形例を示し、表示カード20を収容ケース11の収容部12内に上下方向に摺動自在に収容している。表示カード20には、上側に倒し表示22、下側に戻し表示23を設け、上下に併記している。また、表示カード20の両側の所要箇所に係止爪24を突設すると共に、収容部12の内面の所要箇所に係止溝12aを設けている。
【0032】
図6(A)に示すように、操作棒21を下方に押すと、窓部14を通して倒し表示部22が表示される。
一方、図6(B)に示すように、操作棒21を引き上げると、窓部14を通して戻し表示部23が表示される。このとき、表示カード20の係止爪24が収容部12の係止溝12aに係止されて、表示カード20が所要箇所で保持されている。
【0033】
前記構成としても、座席倒し表示装置10の操作棒21を上下方向に移動させるだけで、座席背部101の倒し/戻し表示部22、23を切り替えて表示でき、座席背部101を倒し/戻し操作する意思を後部座席乗員に伝えることができる。
なお、第1実施形態の第1変形例のように、表示カードの中央に表示部を設けず、座席背部を操作しない場合には座席倒し表示装置に何も表示しない構成としてもよい。
また、他の構成及び作用効果は第1実施形態と同様のため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0034】
図7及び図8は、本発明の第2実施形態を示す。
本実施形態では、収容ケース11の収容部12内に表示カードを摺動自在に収容せず、収容部12の内面に直接記載、シールの貼付、もしくはカードを固定して収容することにより左側に倒し表示部15、右側に戻し表示部16を設け、該倒し表示部15と戻し表示部16と対向する位置に窓部14を設けている。また、収容部12内には、倒し表示部15と戻し表示部16のいずれか一方を遮蔽して見えなくする遮蔽板30を収容している。該遮蔽板30は、第1実施形態の表示カードと略同様の形状とし、上面中央から上方に向けて操作棒31を突設し、ガイド穴13を通してケース外に突出させている。
【0035】
図8(A)に示すように、操作棒31をガイド穴13に沿って右側に移動させると、遮蔽板30により戻し表示部16が遮蔽されて、窓部14を通して倒し表示部15が表示される。
逆に、図8(B)に示すように、操作棒31をガイド穴13に沿って左側に移動させると、遮蔽板30により倒し表示15が遮蔽されて、窓部14を通して戻し表示部16が表示される。
【0036】
前記構成としても、座席倒し表示装置10の遮蔽板30に設けた操作棒31を左右方向に移動させるだけで、座席背部101の倒し/戻し表示部15、16を切り替えて表示でき、座席背部101を倒し/戻し操作する意思を後部座席乗員に伝えることができる。
なお、本実施形態では、遮蔽板を左右方向に移動させているが、第1実施形態の第2変形例のように、遮蔽板を上下方向に移動させて表示部を表示する構成としてもよい。
【0037】
図9および図10は第3実施形態を示し、収容ケース11内に表示カード20を上下動自在に収容し、該表示カード20には「倒し表示部」22のみを設けている。該表示カート20の上面より操作棒21を突設して、収容ケース11の上面に設けたガイド穴を通して上方へ突出させる一方、該表示カード20の下面と収容ケース11の下面との間にコイルバネ40を取り付け、該コイルバネ40により表示カード20を上方へと付勢している。よって、原状位置では、図9(A)に示すように、収容ケース11の窓部14より上方に位置させて通常は外部に表示されないようにしている。
【0038】
前記上下方向に配置されるコイルバネ40は、図10に示すようにガイド筒41内に通し、該ガイド筒41の内面の所要高さ位置に円弧状膨出部41aを環状に突出させている。該円弧状膨出部41の内径はコイルバネ40の外径と略一致させ、コイルバネ40の各巻部が外周面が円弧状膨出部41を乗り越えるのに時間がかかるようにして、コイルバネ40の戻り速度を非常に低速としている。
【0039】
前記構成とすると、操作棒21をコイルバネ40の付勢力に抗して押し下げると、表示カード20も下降し、図9(B)に示すように「倒し表示部」22が窓部14に位置して、後部座席乗員に倒し操作をすることを表示できる。
操作棒21から手を離すと、コイルバネ40により表示カード20は徐々に上昇し、最終的に図9(A)に示す位置に自動復帰させることができる。
【0040】
図11(A)(B)は第4実施形態を示し、倒し表示をした後でなければ、座席背部を倒せない構成としている。
第4実施形態の座席倒し表示装置は、座席製造時に予め設けておくもので、背部101に前記第1実施形態と同様の収容ケース11を埋め込み、該収容ケース11の表面側を背部101より若干外部に突出させ、窓部14を外部に露出させている。該収容ケース11の内部に左右方向に移動自在に表示カード20を収容し、該表示カード20の上端より突出した操作棒20も外部に突出させて乗員が操作棒を左右方向に移動可能としている。
上記表示カード20の下端から強度を有する連動ロッド50を背部101の内部に垂下させると共に、該連動ロッド50の下端を左右いずれか一方に屈折させ、その先端に背部倒れ防止板51を連結している。
一方、座席の左右アーム部102のいずれか一方に凹部55を設けている。該凹部55の形成位置は前記背部倒れ防止板51が挿入および離脱できる位置に設定している。
【0041】
前記構成とすると、倒れ防止板51は表示カード20を移動する前記操作棒20の操作に応じて連動ロッド50を介して移動し、アーム部102の凹部55に挿入・離脱する。
表示カード20の倒れ表示部22を窓部14に位置するように操作棒20を移動すると、連動ロッド50を介して倒れ防止板51が凹部55より離脱し、座席背部101の倒れ作動を可能とする。
一方、表示カード20を移動しない場合には、倒れ防止板51は凹部55に挿入された状態であるため、背部101の倒れ作動を阻止することとなる。
【0042】
前記構成とする場合、背部101の背面から露出している収容ケース11に、「倒し表示操作をしないと、座席を倒すことはできません」との表示を記載しておくことが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1実施形態を示し、(A)は座席の背部に座席倒し表示装置を取り付けた状態を示す斜視図、(B)は要部拡大図である。
【図2】座席倒し表示装置の斜視図である。
【図3】表示カードの斜視図である。
【図4】(A)(B)は座席倒し表示装置の操作方法を示す図面である。
【図5】(A)〜(C)は第1実施形態の第1変形例を示す図面である。
【図6】第1実施形態の第2変形例を示す図面である。
【図7】第2実施形態の収容ケースの正面図である。
【図8】(A)(B)は第2実施形態の座席倒し表示装置の操作方法を示す図面である。
【図9】(A)(B)は第3実施形態を示す図面である。
【図10】第3実施形態の一部拡大説明図である。
【図11】(A)(B)は第4実施形態を示す図面である。
【符号の説明】
【0044】
10 座席倒し表示装置
11 収容ケース
12 収容部
13 ガイド穴
14 窓部
15、22 倒し表示部
16、23 戻し表示部
20 表示カード
21、31 操作棒
30 遮蔽板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電車、航空機、バス、船舶からなる乗合輸送機の座席背部の背面に、表示カードを摺動自在に収容すると共に窓部を備えた収容ケースを固定し、前記表示カードに「倒し表示部」を設けると共に操作棒を突設し、該操作棒の左右方向あるいは上下方向の移動で、前記窓部の位置に前記「倒し表示部」を位置させ、後部座席乗員に座席背部の倒し操作を表示できる構成としている座席倒し表示装置。
【請求項2】
前記表示カードに「戻し表示部」も設け、該表示カードを前記操作棒で移動させて、前記「倒し表示部」と「戻し表示部」を選択的に前記窓部に位置させ、後部座席乗員に座席背部の倒し操作と戻し操作を表示できる構成としている請求項1に記載の座席倒し表示装置。
【請求項3】
電車、航空機、バス、船舶からなる乗合輸送機の座席背部の背面に、「倒し表示部」を設けると共に該「倒し表示部」と対向位置に窓部を設けた収容ケースを固定し、
前記収容ケースに前記窓部を開閉する遮蔽板を摺動自在に収容し、該遮蔽板に操作棒を突設し、該操作棒を左右方向あるいは上下方向に移動させて前記遮蔽板で前記窓部を開閉し、該窓部を開いて前記「倒し表示部」により、後部座席乗員に座席背部の倒し操作を表示できる構成としている座席倒し表示装置。
【請求項4】
前記収容ケースに「戻し表示部」も前記窓部と対向させて設け、前記遮蔽板を前記操作棒で移動させて、前記「倒し表示部」と「戻し表示部」とにそれぞれ対向する位置の窓部の一部を選択的に前記遮蔽板で開らき、後部座席乗員に座席背部の倒し操作と戻し操作を表示できる構成としている請求項3に記載の座席倒し表示装置。
【請求項5】
前記収容ケースは偏平な樹脂製ケースからなり、前記窓部は透明とすると共に他の部分は不透明とし、あるいは前記窓部を刳り貫き、かつ、前記収容ケースの背面に両面粘着テープを張り付けて前記座席背部の背面に接着固定し、あるいは前記収容ケースを接着剤を介して前記座席背部の背面に接着固定している請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の座席倒し表示装置。
【請求項6】
前記操作棒を突出させた前記表示カードあるいは前記遮蔽板と前記収容ケースとの間にバネを取り付け、該バネの付勢力に抗して前記操作棒を押圧作動すると前記表示カードあるいは前記遮蔽板を移動して「倒し表示部」を外部に表示させる一方、
前記バネの戻りを遅くするバネ戻り制御手段を設け、前記操作棒の押圧動作を解くと、前記バネ戻り制御手段により前記表示カードあるいは遮蔽板を低速度で原位置に戻し、所要時間経過後に前記「倒し表示部」が自動的に外部に表示されなくなる構成としている請求請1乃至請求項5のいずれか1項に記載の座席倒し表示装置。
【請求項7】
前記バネをコイルバネとし、該コイルバネをガイド筒に挿入し、該ガイド筒の内面に前記バネ戻り制御手段として円弧状膨出部を突設し、前記コイルバネの外周面が前記円弧状膨出部に当接して乗り越えさせることにより前記バネの戻り速度を制御出来る構成としている請求項6に記載の座席倒し表示装置。
【請求項8】
前記操作棒に連動する背部倒れ防止板を設け、該背部倒れ防止板を背部より座席アーム部に設けた凹部へ嵌脱自在に配置し、前記操作棒を「倒れ表示部」が外部に表示された位置に移動されると、前記背部倒れ防止板が前記凹部より外れて背部内部に引き込まれ、背部の倒れを可能とする一方、該背部が戻り位置に移動して「戻り表示部」に操作棒を移動すると、前記背部倒れ防止板が前記凹部に嵌合される構成としている請求項2、4〜7のいずれか1項に記載の座席倒れ表示装置。
【請求項9】
前記操作棒の先端を、前記座席背部の上端位置と同等位置あるいは若干上方に突出させ、あるいは着席した状態で該操作棒が操作可能な位置に突出させている請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の座席倒し表示装置。
【請求項10】
前記収容ケースの上面にガイド孔を設け、該ガイド孔を通して前記操作棒を突出させ、前記ガイド孔の左右両端に係止溝を設け、前記操作棒を係止溝に挿入停止できる構成としている請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の座席倒し表示装置。
【請求項11】
前記収容ケースの窓部以外の箇所に、座席倒し表示部の操作方法を記載した操作表示部を設けている請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の座席倒し表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−56370(P2006−56370A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−239680(P2004−239680)
【出願日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(504313424)
【Fターム(参考)】