説明

座標入力装置とそれを備えた表示装置及び電子機器

【課題】加飾印刷層の領域にカメラやセンサーなどを配置する場合であっても、光学的な性能を良好にすることのできる座標入力装置とそれを備えた表示装置及び電子機器を提供する。
【解決手段】第1の透光性基板10と、一方の面が操作面側とされ可撓性を有する第2の透光性基板20とが、絶縁層40を介して対向配置され、各透光性基板の内面側に透明導電膜11、21が形成され、第2の透光性基板20の透明導電膜21が形成される面と反対側面の外周領域には、粘着層25を介して加飾印刷層23が形成され、加飾印刷層23は所定位置に空間部27を備え、第2の透光性基板20と透明導電膜21及び粘着層25の空間部27の位置には、空間部27と連通する連続空間部28が形成されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面状の入力部を備え該入力部の押圧された座標位置を出力することのできる座標入力装置とそれを備えた表示装置及び電子機器に関し、特に入力部の周囲に加飾印刷層を備えた座標入力装置とそれを備えた表示装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やPDA、PCなどの情報端末は、液晶表示パネル等の表示画面を備えており、その表面をタッチペンや指で押圧することにより、メニューの選択やデータの入力を行うことができるように、表示画面の表面を覆うように座標入力装置が設けられることがある。座標入力装置を備えた機器は、最近ではさらにデジタルカメラや携帯ゲーム機などにも広がっている。
【0003】
座標入力装置は、表示画面の表面に設けられるため、それ自身は透明である必要がある。透明な入力部を備えた座標入力装置としては、抵抗膜型のものが知られている。抵抗膜型の座標入力装置は、表示画面側に例えばITO(Indium Tin Oxide)等の透明導電材料からなる透明導電膜を表面に形成した樹脂板またはガラス板からなる第1の透光性基板を配置し、操作側に透明導電膜が形成された透明なフィルムからなる第2の透光性基板を配置し、これら透光性基板の各透明導電膜が対向するように、間に絶縁層を設けて構成されている。第2の透光性基板は可撓性を有しており、タッチペンや指で押圧することにより撓んで、対向する透明導電膜同士が接触する。透光性基板の各外周部には、印刷回路が形成されており、押圧操作された際の透明導電膜の抵抗による分圧比を、互いに直交するX方向とY方向についてそれぞれ測定することで、入力部における押圧位置を特定することができる。
【0004】
座標入力装置が携帯電話機などに用いられる場合、第2の透光性基板の操作面側に粘着層を介して加飾印刷層が形成される。加飾印刷層は、表示画面を取り囲む枠として、機器のデザインの一部を構成するものである。このように加飾印刷層を備えた座標入力装置としては、例えば特許文献1に挙げるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開2008/111505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
座標入力装置が設けられる携帯電話等においては、カメラ部や光学的なセンサーを備えていることが多い。カメラ部や光学センサーは、座標入力装置の加飾印刷層が形成された領域の直下に配置されることがあり、この場合にはカメラ部や光学センサーの位置だけ加飾印刷層を形成せずに空間部とし、光を透過できるようにしている。しかし、加飾印刷層の下には粘着層や透光性基板があって、これらは光を透過させるものの、光の一部は吸収されたりあるいは反射されたりする。このため、光学的な性能を悪化させる要因となっていた。
【0007】
本発明は前記課題を鑑みてなされたものであり、加飾印刷層の領域にカメラ部や光学センサーなどを配置する場合であっても、光学的な性能を良好にすることのできる座標入力装置とそれを備えた表示装置及び電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明に係る座標入力装置は、第1の透光性基板と、一方の面が操作面側とされ可撓性を有する第2の透光性基板とが、絶縁層を介して対向配置され、各透光性基板の内面側に透明導電膜が形成された座標入力装置において、
前記第2の透光性基板の前記透明導電膜が形成される面と反対側面の外周領域には、粘着層を介して加飾印刷層が形成され、
前記加飾印刷層は所定位置に空間部を備え、前記第2の透光性基板と透明導電膜及び粘着層の前記空間部の位置には、該空間部と連通する連続空間部が形成されてなることを特徴として構成されている。
【0009】
また、本発明に係る座標入力装置は、前記第1の透光性基板の前記空間部及び連続空間部の位置には、該空間部及び連続空間部と連通する対向空間部が形成されてなることを特徴として構成されている。
【0010】
さらに、本発明に係る座標入力装置は、前記絶縁層の前記空間部及び連続空間部の位置には、該空間部及び連続空間部と連通する絶縁層空間部が形成されてなることを特徴として構成されている。
【0011】
さらにまた、本発明に係る表示装置は、表示パネルの表面に前記いずれかの座標入力装置が設けられて構成されている。
【0012】
そして、本発明に係る電子機器は、前記表示装置を表示部として備え、前記空間部及び連続空間部の直下位置にカメラ部または光学センサーを備えて構成されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る座標入力装置によれば、加飾印刷層は所定位置に空間部を備え、第2の透光性基板と透明導電膜及び粘着層の空間部の位置には、空間部と連通する連続空間部が形成されてなることにより、空間部の直下にカメラ部や光学センサーを配置したときに、透光性基板や透明導電膜及び粘着層による光の吸収や反射をなくすことができるので、光学的な性能を向上させることができる。
【0014】
また、本発明に係る座標入力装置によれば、第1の透光性基板の空間部及び連続空間部の位置には、空間部及び連続空間部と連通する対向空間部が形成されてなることにより、第1の透光性基板についても、光の吸収や反射をなくすことができるので、さらなる光学的性能の向上を図ることができる。
【0015】
さらに、本発明に係る座標入力装置によれば、絶縁層の空間部及び連続空間部の位置には、空間部及び連続空間部と連通する絶縁層空間部が形成されてなることにより、絶縁層の位置にカメラ部や光学センサーが配置される場合であっても、確実に光を透過させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態における座標入力装置の概念的な分解斜視図である。
【図2】座標入力装置の動作原理を表した模式図である。
【図3】座標入力装置を取付けられた表示装置の断面図である。
【図4】座標入力装置が用いられた携帯電話機の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態について図面に沿って詳細に説明する。図1には、本実施形態における座標入力装置の概念的な分解斜視図を示している。この図に示すように、座標入力装置1は、大まかには平面状に形成された第1の透光性基板10と、該第1の透光性基板10と略同形状で平面状の第2の透光性基板20とが絶縁層40を介して対向配置され、第1の透光性基板10の第2の透光性基板20側と反対側面には、出力用電極部31を備えたフレキシブル基板30が取付けられて構成される。
【0018】
第1の透光性基板10は、透明な樹脂板によって形成されており、第2の透光性基板20と対向する面には透明導電膜11が形成されている。また、第2の透光性基板20は、可撓性を有する透明なフィルムによって形成されており、第1の透光性基板10と対向する面には透明導電膜21が形成されている。透明導電膜11、21は、例えば透明無機材料としては、ITO(Indium Tin Oxide)、ZnO、透明有機材料としてはカーボンナノチューブを含んだ樹脂フィルムなどの透明導電材料が用いられており、面内で均一な抵抗値を有している。また、第2の透光性基板20を構成するフィルムには、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂などが用いられる。これらにより、第2の透光性基板20の第1の透光性基板10側と反対側面が、押圧操作を行うことのできる入力部1aとされている。
【0019】
また、第1の透光性基板10の透明導電膜11が形成された面の外周部には、図中Y方向において対向する二辺に沿って電極部12aが形成されている。一方、第2の透光性基板20の透明導電膜21が形成された面の外周部には、Y方向と直交する図中X方向において対向する二辺に沿って電極部22aが形成されている。これらの電極部12a、22aは、フレキシブル基板30の出力用電極部31と電気的に接続される。
【0020】
第2の透光性基板20の外周部には、加飾印刷層23が全周に渡る枠形状に形成されていて、入力部1aを取り囲んでいる。入力部1aの領域は透明で、その下部に配置される表示装置に表示される文字や画像などを透過して見ることができるのに対し、加飾印刷層23は、着色されて光を透過せず、表示装置の額縁として座標入力装置1が取付けられる電子機器におけるデザインの一部を構成する。また、加飾印刷層23には、着色の他に、模様、文字、マーク、絵柄等を加えることができる。
【0021】
加飾印刷層23は、長方形状をなす座標入力装置1の一方の短辺側が、他辺よりも幅広に形成されており、この幅広に形成された辺には、3箇所に加飾印刷層23が設けられていない空間部27が形成されており、空間部27において光を透過させることができる。3箇所の空間部27のうち、中央の空間部27は、円形状を有しており、座標入力装置1が用いられる携帯電話機において直下にカメラ部が配置される。また、残り2箇所の空間部27は、長方形状をなすように形成されており、座標入力装置1が用いられる携帯電話機において直下に光学センサーが配置される。
【0022】
次に、座標入力装置1の動作原理について説明する。図2には、座標入力装置1の動作原理を表した模式図を示している。座標入力装置1においては、入力部1aからの押圧操作時において、X方向とY方向のそれぞれについて押圧座標位置を特定する動作を行う。図2(a)は、X方向について押圧座標位置を特定する際の動作原理を示している。
【0023】
図2(a)に示すように、例えば第2の透光性基板20の点Sをタッチペン等で押圧操作したとすると、可撓性を有する第2の透光性基板20が撓むことによって、点Sにおいて第2の透光性基板20の透明導電膜21と第1の透光性基板10の透明導電膜11とが接触し導通する。
【0024】
X方向における座標を検出する際には、第2の透光性基板20の電極部22a、22a間に電圧が印加される。これにより、第2の透光性基板20の表面に形成された透明導電膜21には、点Sと各電極22aとの間に、それぞれの距離に応じた抵抗値RX1、RX2でX方向に電位勾配が形成される。この点Sにおける電位を、第1の透光性基板10に形成された電極12aから取り出し、A/D変換することにより、X方向における座標を検出することができる。
【0025】
Y方向における座標を検出する際には、図2(b)に示すように、第1の透光性基板10の電極部12a、12a間に電圧が印加される。これにより、第1の透光性基板10の表面に形成された透明導電膜11には、点Sと各電極12aとの間に、それぞれの距離に応じた抵抗値RY1、RY2でY方向に電位勾配が形成される。そして、点Sにおける電位を、第2の透光性基板20に形成された電極22aから取り出し、A/D変換することにより、Y方向における座標を検出することができる。
【0026】
図3には、座標入力装置1を取付けられた表示装置2の断面図を示している。この表示装置2は、後述するように電子機器としての携帯電話機に設けられるものであって、液晶画面を有した液晶表示ユニットとして構成されている。座標入力装置1は、タッチペンや指による入力を可能とするために表示装置2の表面に取付けられる。
【0027】
表示装置2は、互いに対向して配置された上基板50と、下基板51との間に、シール材53で封止された液晶層52を挟持して構成されている。この表示装置2は反射型とされており、外部から入射した外光を液晶層52内の反射層により反射させて表示を行うようになっている。
【0028】
座標入力装置1は、前述のように第1の透光性基板10と第2の透光性基板20とが、絶縁層40を介して対向配置されている。第1の透光性基板10の両面のうち、第2の透光性基板20と対向する側の面の表面には、透明導電膜11が形成されると共に、印刷回路部12を構成する電極部12aが形成されている。
【0029】
第2の透光性基板20には、第1の透光性基板10と対向する面側に、透明導電膜21と印刷回路部22を構成する電極部22aが形成されており、それと反対側の面はタッチペン4等により押圧操作される入力部1aとなっている。また、第2の透光性基板20の操作面側の外周部には、粘着層25を介して加飾印刷層23が形成されている。加飾印刷層23の内周側領域には、透明な樹脂材からなる透明加厚層24が形成されている。さらに、加飾印刷層23及び透明加厚層24を覆うように、透明な被覆膜26が最表面に設けられている。第2の透光性基板20に形成される透明導電膜21は、図1に示す入力部1aの領域よりも外方まで延出して形成されている。これにより、第2の透光性基板20の積層構造を均一に近づけ、積層応力による反りの発生を低減することができる。
【0030】
図3に示す表示装置2に対し、携帯電話機に設けられるカメラ部60は、図中破線で示す位置に配置される。カメラ部60と対向する座標入力装置1には、前述のように加飾印刷層23の当該位置に空間部27が形成される。また、空間部27の位置には、第2の透光性基板20と透明導電膜21及び粘着層25に渡って貫通状の連続空間部28が形成されており、空間部27と連通する空間を形成している。
【0031】
また、空間部27の位置には、絶縁層40も形成されているので、この絶縁層40についても、絶縁層空間部41が形成されていて、空間部27及び連続空間部28と連続状の空間を形成する。さらには、第2の透光性基板20と対向する第1の透光性基板10の当該位置にも、貫通状の孔が形成されて対向空間部16を構成している。対向空間部16は、第1の透光性基板10に形成される透明導電膜11も貫通している。
【0032】
すなわち、座標入力装置1において直下にカメラ部60が配置される位置には、加飾印刷層23と粘着層25、第2の透光性基板20、透明導電膜21、絶縁層40、第1の透光性基板10及び透明導電膜11に渡る貫通状の空間部が形成されており、カメラ部60と外部との間には、透明な被覆膜26のみが配置されることとなる。
【0033】
粘着層25と第2の透光性基板20及び透明導電膜21は、いずれも透明な材質からなり、光を透過させることができるが、図3に示すように直下にカメラ部60が配置される位置に、加飾印刷層23の空間部27と連続する連続空間部28を形成することにより、光の吸収及び反射を低減させることができ、光学的な性能を高くすることができる。また、第1の透光性基板10及び透明導電膜11についても、対向空間部16を形成することにより、さらに光の透過性を良好にして、性能を高くすることができる。
【0034】
図3では、加飾印刷層23に形成された空間部27のうち、カメラ部60が配置されるものについて断面図を示したが、直下に光学センサーが配置される空間部27の位置においても、同様に連続空間部28や対向空間部16を形成することにより、光学的な性能を向上させることができる。また、カメラ部60としては、レンズ及び撮像素子を備えたカメラモジュールであってもよいし、フラッシュ装置であってもよい。
【0035】
なお、空間部27と連続状となる空間部分は、少なくとも粘着層25と第2の透光性基板20及び透明導電膜21に渡る連続空間部28が形成されていればよい。空間部27及び連続空間部28の位置が絶縁層40の配置される領域にある場合には、絶縁層空間部41も必要となる。対向空間部16は、必ずしも必要ではないが、形成されていた方が性能向上により寄与することができる。
【0036】
図4には、本実施形態の座標入力装置1が用いられている電子機器の一例である、携帯電話機3の斜視図を示している。この図に示すように、本実施形態の座標入力装置1は、表示装置2の表面を構成する部品として、携帯電話機3に用いられる。また、座標入力装置1の第2の透光性基板20に形成される加飾印刷層23は、透明な第2の透光性基板20を介して外部から見ることができ、携帯電話機3の表示部を縁取る枠として、携帯電話機3のデザインの一部を構成する。
【0037】
また、カメラ部や光学センサーに対応して形成されている加飾印刷層23の空間部27は、携帯電話機3の上端側に配置されている。図4には表れていないが、各空間部27の直下には、それぞれカメラ部または光学センサーが配置されている。携帯電話機3に設けられる光学センサーは、赤外線を検知するものなどであって、例えば使用者が電話をかけようとして顔を近づけているか否かを検出するために用いられる。
【0038】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の適用は本実施形態には限られず、その技術的思想の範囲内において様々に適用されうるものである。本実施形態では、座標入力装置1が用いられる電子機器として、携帯電話機3を挙げたが、これには限られず、デジタルカメラやPDA、携帯ゲーム機、カーナビゲーション装置等、カメラ部または光学センサーが配置される様々な電子機器に適用されうる。
【符号の説明】
【0039】
1 座標入力装置
1a 入力部
2 表示装置
3 携帯電話機
10 第1の透光性基板
11 透明導電膜
12 印刷回路部
16 対向空間部
20 第2の透光性基板
21 透明導電膜
22 印刷回路部
23 加飾印刷層
24 透明加厚層
25 粘着層
26 被覆膜
27 空間部
28 連続空間部
30 フレキシブルケーブル
40 絶縁層
41 絶縁層空間部
60 カメラ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の透光性基板と、一方の面が操作面側とされ可撓性を有する第2の透光性基板とが、絶縁層を介して対向配置され、各透光性基板の内面側に透明導電膜が形成された座標入力装置において、
前記第2の透光性基板の前記透明導電膜が形成される面と反対側面の外周領域には、粘着層を介して加飾印刷層が形成され、
前記加飾印刷層は所定位置に空間部を備え、前記第2の透光性基板と透明導電膜及び粘着層の前記空間部の位置には、該空間部と連通する連続空間部が形成されてなることを特徴とする座標入力装置。
【請求項2】
前記第1の透光性基板の前記空間部及び連続空間部の位置には、該空間部及び連続空間部と連通する対向空間部が形成されてなることを特徴とする請求項1記載の座標入力装置。
【請求項3】
前記絶縁層の前記空間部及び連続空間部の位置には、該空間部及び連続空間部と連通する絶縁層空間部が形成されてなることを特徴とする請求項1または2記載の座標入力装置。
【請求項4】
表示パネルの表面に請求項1〜3のいずれか1項に記載の座標入力装置が設けられてなる表示装置。
【請求項5】
請求項4記載の表示装置を表示部として備え、前記空間部及び連続空間部の直下位置にカメラ部または光学センサーを備えた電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−53738(P2011−53738A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−199410(P2009−199410)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】