座標入力装置
【課題】 操作者が意図する操作を指示具を選択することによって実現することを可能とすると共に、識別のための信号を指示具より発信しなくても良くする。
【解決手段】 指示具を円柱形あるいは円筒形光透過部材で、もしくは遮光部材による網目状円環部材で構成し、その指示具による座標入力動作を行う。検出される遮光影により、その指示具を識別するように構成する。
【解決手段】 指示具を円柱形あるいは円筒形光透過部材で、もしくは遮光部材による網目状円環部材で構成し、その指示具による座標入力動作を行う。検出される遮光影により、その指示具を識別するように構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座標入力装置、より詳しくは、入力面に指示具や指によって指示して座標を入力することにより、接続されたコンピュータを制御したり、文字や図形などを書き込むために用いられる座標入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の装置としてはタッチパネルとして、各種方式のものが提案、または製品化されており、特殊な器具などを用いずに、画面上でPCなどの操作が簡単にできるため、広く用いられている。
【0003】
方式としては、抵抗膜を用いたもの、また、超音波を用いたものなど、さまざまなものがあるが、光を用いたものとして特許文献1などに見られるように、座標入力面外側に再帰性反射シートを設け、光を照明する手段からの光束を再帰反射シートで再帰反射し、受光手段により光量分布を検出する構成において、入力領域内にある、指などで遮蔽された領域の角度を検出し、遮蔽位置つまり入力位置の座標を決定するものが、知られている。
【0004】
また、特許文献2や、特許文献3などにあるように、再帰反射部材を入力領域周辺に構成し、再帰反射光が遮光される部分の座標を検出する装置が開示されている。
【0005】
これらの装置において、例えば特許文献2では、微分などの波形処理演算によって遮光部分のピークを検出することにより、遮光部分の角度を検出し、また、特許文献3では、特定のレベルパターンとの比較によって遮光部位の一方の端と他方の端を検出しそれらの座標の中心を検出する構成が示されている。
【0006】
また、先の特許文献1においては、RAMイメージャーの各画素を読み出し、コンパレータで比較する事で、遮光部分を検出し、一定幅以上の遮光部位があった場合に、その両端の画素の中心(1/2位置)を検出する検知方式が示されている。
【特許文献1】米国特許第4507557号明細書
【特許文献2】特開2000−105671号公報
【特許文献3】特開2001−147264号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上の従来の入力面周囲に設けられた再帰反射材からの再帰反射光を遮る方式は、ペン状の指示具以外にも指等の指示でも座標入力が可能、つまり光を遮るものであれば指示手段を選ばない。従ってこの種の座標入力装置に有っては、先が尖ったペン状の筆記具を用いて、細かい図形や細かい文字の入力を可能とする他、座標入力面の特定部分を例えば指で押圧することによって、その部分(領域)に割り付けられたコマンドを実行するようなタッチパネルとして動作させることも可能となる。特に指によるタッチ動作は、筆記具を必要としないので、誰でもが簡単に操作することができるメリットが有り、普及が進んでいる。
【0008】
このように指示具を選ばないと言うことは、この種の座標入力装置の最大のメリットであるが、次のような操作を行う場合にはこのメリットがデメリットとなってしまう。
【0009】
この種の座標入力装置は、単純な遮光影による検出光量変化を検出して、指示手段の位置を検出する方式であるので、例えば指示具による入力なのか指による入力かを識別することは困難であり、例えばこの種の座標入力装置を表示装置と一体に重ねて、指示具による入力時にはその筆跡を表示手段が表示するように構成し、指による入力時には、表示手段により表示されている表示内容を、その軌跡に従って、その部分の表示内容を消去することができない。つまり、操作者が通常のホワイトボードで実現している『マーカーによる情報記入』『指先で記入されている内容をちょっと消して書き直す』『黒板消しを用いて記入内容を消去する』と言った直感的な操作を実現することができない。
【0010】
従って、この種の操作を実現するためには、例えば座標入力領域内の特定の場所に領域を設け、その部位を押圧することで、筆跡が残るような状態、あるいは軌跡部分を消去する様な状態を、その都度設定するように構成する方法が知られている。しかしながら、この方法は操作者に座標入力によってどの様な現象が起こるのかを認知させる必要があるし、また装置導入の際に、事前に学習、あるいは習熟を要求する。従って、経験豊かなユーザーのみが、違和感なく操作することができる装置となってしまい、一般のユーザが直感的に使いこなせるものとはならず、座標入力装置と表示装置を一体にした大型の装置をホワイトボード用途として使用する形態の普及が進んでいるとは言えない状態にある。
【0011】
以上の課題を解決する一つの方法として、専用の指示手段を複数設け、各々の指示手段から、赤外線、超音波、あるいは電波を用いてその指示手段が何であるかを送信して、座標入力装置本体に指示手段の種別を報知する方法が広く用いられている。このように構成することで座標入力装置が、専用指示手段1で座標入力動作が行われている際には鉛筆として黒の筆跡を残すように動作し、専用指示手段2で座標入力動作が行われている際には色鉛筆として例えば赤の筆跡を残すように動作し、さらには専用指示手段3で座標入力動作が行われている際には黒板消しとして表示されている表示内容をその軌跡に従って消去するように構成することができる。その場合、専用指示手段1は黒鉛筆として、専用指示手段2は赤鉛筆として、更には専用指示手段3はあたかも黒板消しの如く形状を構成すれば、操作者は目的に応じて直感的にツールを選択して操作させることができるので、誰でもが使いこなすことができる、優れた電子式ホワイトボードとなる。
【0012】
しかしながら、この方式に有っては、専用指示具と座標入力装置本体間での通信手段が必須であり、その分の製品コスト上昇は避けられない。さらには、指示具に通信手段を設けることで、電源を含む回路要素による指示具の重量アップは長時間の操作をした場合の疲労を考えると、決して好ましい形態とは言えず、さらには電源としての電池のランニングコストもユーザに負担させると言う課題が生じていた。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明では、上記課題を解決するために、光束を遮光する指示具の遮光部位の構成が、受光手段から観測して該指示具の中心部分の光透過率が大きく、遮光範囲の両端部分の光透過率を小さくするように構成することで、受光手段で検出される該指示手段の遮光影を特徴ある形状として検出できるように構成し、座標入力動作が前記指示手段により行われていると判断できるように構成したものである。更には、前記指示手段は、その種別を検知するための特別な通信手段等を設ける必要が無いので、操作性の良い指示手段を安価に構成できるようにしたものである。
【発明の効果】
【0014】
以上述べたように、単純な指示具の構成で軽量かつ安価な操作性に優れた指示具を提供できる他、その指示具の種別を判定できるように構成してあるので、『鉛筆』と『消しゴム』と言ったような直感的な操作を実現し、誰でもが気軽に操作できる優れた効果が得られるようになった。さらには、電池レスな指示具を実現しており、ユーザのランニングコストの削減、あるいは故障等の信頼生に関する問題も発生しないと言う利点も得られるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0016】
まず、本発明に係る座標入力装置の概略構成について図2を用いて説明する。
【0017】
図中1L、1Rは投光手段および検出手段を有するセンサユニット1であり、本実施例の場合、図示の如く座標入力有効領域4のX軸に平行に、かつY軸に対称な位置に所定距離離れて配置されている。センサユニット1は制御・演算ユニット2に接続され、制御信号を制御・演算ユニット2から受け取ると共に、検出した信号を制御・演算ユニット2に送信する。3は入射光を到来方向に反射する再帰反射面を有する反射手段であり、図示が如く座標入力有効領域4の外側周囲3辺に設けられ、左右それぞれのセンサユニット1から略90°範囲に投光された光を、センサユニット1に向けて再帰反射する。
【0018】
反射された光は、集光光学系とラインCCD等によって構成されたセンサユニット1の検出手段によって1次元的に検出され、その光量分布が制御・演算ユニット2に送られる。
【0019】
前述した座標入力有効領域4は、例えばPDPやリアプロジェクタ、LCDパネルなどの表示装置の表示画面で構成し、例えば座標入力動作を行うことでその軌跡を表示装置に出力することによって、入出力一体の装置として利用可能となる。
【0020】
このように構成することで、入力領域に指などによる入力指示がなされると、上記投光手段から投光された光が、指等の指示手段によって遮られ、センサユニット1の検出手段ではその部位のみの光(再帰反射による反射光)を検出する事ができなくなり、その結果、どの方向からの光が検出できなかったかを判別することが可能となる。つまり制御・演算ユニット2の演算制御手段は、左右のセンサユニット1の光量変化から入力指示された部分の遮光範囲を検出し、その遮光範囲の情報から遮光位置の方向(角度)をそれぞれ導出する。さらに、前記導出された方向(角度)、及びセンサユニット1L、及び1R間の距離情報等から、入力エリア上の座標位置を算出すると共に、表示装置に接続されているPCなどに、USBなどのインタフェースを経由して座標値を出力する。
【0021】
このようにして、指等の指示手段によって、画面上に線を描画したり、表示画面上のアイコン操作によりPCの制御等が可能となる。
【0022】
以降、各部分毎にその構成、動作について詳細説明を行う。
〈センサユニット1の詳細説明〉
図3はセンサユニット1中における投光手段の構成例を示したものである。
【0023】
図3−1は投光手段を正面方向(座標入力領域4を形成する座標入力面の垂直方向)から見た図であり、図中31は赤外光を発する赤外LEDであり、発光した光は投光レンズ32によって、略90°範囲に光を投光する。一方、図3−2は同じ構成を横から見た側面図であり(入力面に対し水平方向)、この方向では、赤外LED31からの光は上下方向に制限された光束として投光され、主に、再帰反射手段3に対して光が投光されるように構成されている。
【0024】
図4はセンサユニット1中における検出手段を図示したのものであり、図3と同様に、図4-1は正面方向(座標入力領域4を形成する座標入力面の垂直方向)から、また図4-2はその側面図である。なお正面図4-1中の破線部分は、側面図4-2に示される前述したセンサユニット1中の投光手段の配置を示すものである。本実施例の場合、投光手段と検出手段を重ねて配置しており、その距離Lは、投光手段から再帰反射手段3までの距離に比べて十分に小さな値であり、距離Lを有していても十分な再帰反射光を検出手段で検知することが可能な構成となっている。
【0025】
また、図4-2において本願発明の検出手段は、1次元のラインCCD41および集光光学系としてのレンズ42,43および、入射光の入射方向を制限する絞り44、可視光など余分な光の入射を防止する赤外フィルター45からなり、投光手段で投光された光は、再帰反射部材3によって反射され、前述赤外フィルター45、絞り44を抜けて集光用レンズ42,43によって、CCDの検出面上に集光される。
【0026】
同様に図4-1において説明を加えると、前述した略90°方向に投光された投光手段の光は、再帰反射部材3によって反射され、前述赤外フィルター45、絞り44を抜けて集光用レンズ42,43によって、反射光の入射角に応じたCCD41の画素上に結像することになる。従って、CCD41の出力信号は、反射光の入射角に応じた光量分布を出力することになるので、CCD41画素番号が角度情報を示すことになる。
〈制御・演算ユニットの説明〉
図2の制御・演算ユニット2とセンサユニット1L、センサユニット1Rの間では、CCDの制御信号、CCD用クロック信号、CCDの出力信号、および、LEDの駆動信号がやり取りされている。
【0027】
図5は制御・演算ユニットのブロック図である。CCD制御信号は、ワンチップマイコンなどで構成される演算制御回路83から出力されており、CCDのシャッタタイミングや、データの出力制御などをおこなっている。CCD用のクロックはクロック発生回路87からセンサユニットに送られると共に、CCDとの同期をとって、各種制御を行うために、演算制御回路83にも入力されている。
【0028】
LED駆動信号は演算制御回路83からLED駆動回路84L、84Rをへて、センサユニット1中の赤外LED31に供給されている。
【0029】
センサユニット1の検出手段であるCCD41からの検出信号は、制御・演算ユニット2中のADコンバータ81L、81Rに入力され、演算制御回路83からの制御によって、デジタル値に変換される。変換されたデジタル値は必要に応じてメモリ82に記憶され、後述する方法で角度算出、さらには座標値が求められ、その結果を外部PCなどにシリアルインタフェース88などを介して出力される。
〈光量分布検出の説明〉
図6は制御信号のタイミングチャートである。
【0030】
91,92,93がCCD制御用の制御信号であり、91SH信号の間隔で、CCDのシャッタ解放時間が決定される。92、93はそれぞれ左右のセンサへのゲート信号であり、CCD内部の光電変換部の電荷を読み出し部へ転送する信号である。
【0031】
94、95は左右のLEDの駆動信号であり、SHの最初の周期で一方のLED(センサユニット1L中のLED)を点灯するために94の駆動信号がLED駆動回路(この場合LED駆動回路84L)を経てLEDに供給される。次の周期でもう一方のLED(この場合、センサユニット1R中のLED)が駆動される。双方のLEDの駆動が終了した後に、CCDの信号が左右のセンサから読み出される。
【0032】
読み出される信号は、例えば指、或いは指示具等による入力がない場合、つまり遮光部分が無い場合には、それぞれのセンサからの出力として、図7-1のような光量分布が得られる。もちろん、このような分布がどのシステムでも必ず得られるわけではなく、再帰反射シートの配置状態や再帰反射シートの特性(例えば再帰反射部材の入射角による再帰反射効率に依存)、LEDを含む投光手段の特性、また、経時変化(反射面の汚れなど)によって、この分布は変化する。
【0033】
図7-1において、Aのレベルが最大光量を検出した時のレベル、Bのレベルが最低レベルであるものとすれば、反射光のない状態では、得られるレベルはB付近になり、反射光量が増えるほどAのレベルに近づく事になる。この様にCCDから出力されたデータは、逐次AD変換されCPUにデジタルデータとして取り込まれる。
【0034】
図7-2は指等で入力を行った、つまり、反射光を遮った場合の出力の例である。Cの部分で指などにより光が遮られたため、その部分のみ光量が低下している。
【0035】
検出は、この光量分布の変化を検知して行うものであり、具体的に説明すれば、まず図7-1のような入力の無い初期状態(以後、初期状態で得られたデータを初期データと言う)を予めメモリ82に記憶しておき、それぞれのサンプル期間で得られるデータとあらかじめ記憶しておいた初期データとの差分を算出する事で、図7-2のような変化があるかどうかを判別する。
〈角度計算の説明〉
角度計算にあたっては、まず、遮光範囲を検出する必要がある。
【0036】
先にも述べた用に、光量分布は経時変化などで一定ではないため、システムの起動時などに前述した初期データを記憶する事が望ましい。つまり、工場等の出荷時に初期データを設定し、そのデータの更新が、逐次行われなければ、例えば所定の位置の再帰反射面にゴミが付着した場合、その部分での再帰反射効率が低下するので、あたかもその位置(センサから見た方向)で座標入力動作が行われた、すなわち誤検出してしまうと言う重大な結果を引き起こす。従って、システムの起動時などに前述した初期データを記憶する事で、再帰反射面が経時的にほこり等で汚れて再帰反射効率が落ちていても、その状態を初期状態として設定しなおすことができるので、誤動作をする事が無くなると言う優れた利点が得られる様になる。
【0037】
さて、電源投入時、入力の無い(遮光部分が無い)状態で、まず投光手段から照明すること無しにCCDの出力をAD変換して、これをBas_data[N]として、メモリ82に記憶する。これは、CCD41のバイアスのばらつき等を含んだデータとなり、図7-1のBのレベル付近のデータとなる。ここで、Nは画素番号であり、有効な入力範囲に対応する画素番号が用いられる。次に、投光手段から照明した状態での光量分布を記憶する。図7-1の実線で表されたデータであり、Ref_data[N]とし、初期データの記憶を完了する。
【0038】
これらのデータを用いてまずは入力が成されたか、遮光範囲があるかどうかの判定を行う。
【0039】
あるサンプル期間のデータをNorm_data[N]とする。まず遮光範囲を特定するために、データの変化の絶対量によって、有無を判定する。これは、ノイズなどによる誤判定を防止し、所定量の確実な変化を検出するためである。変化の絶対量を各々の画素において以下の計算を行い、予め決定してある閾値Vthaと比較する。
【0040】
Norm_data_a[N] = Norm_data[N] − Ref_data[N] (1)
従って、Norm_data_a[N]は各画素における絶対変化量に相当する事になる。
【0041】
この処理は、差をとり比較するだけなので、処理時間をさほど使わないので、入力の有無の判定を高速に行う事が可能である。
【0042】
Vthaを初めて超えた画素が所定数を超えて検出されたときに入力があったと判定する。
【0043】
次に、より高精度に検出するために、変化の比を計算して入力点の決定を行う。図8で121を再帰反射面とする。ここでα領域が汚れなどにより反射率が低下していたとすると、このときのRef_data[N]の分布は、図9−1のように、領域αの反射光量が少なくなる。この状態で、図8のように指などの指示具5が挿入され、ほぼ再帰反射部材の半分を覆ったとすると、反射光量は略半分となるため、図9−2の太線で示した分布Norm_data[N]が観測される。この状態に対して、式(1)を適用すると、図10−1のようになる。ここで、縦軸は初期状態との差分電圧になっている。
【0044】
このデータに対して、閾値Vthaと比較すると、本来の入力範囲をはずれてしまうような場合(図10-1の破線領域)がある。もちろん、閾値Vthaをより小さな値に設定する事で、ある程度の検出は可能となるが、ノイズなどの影響を受ける可能性が大きくなり、座標算出性能を劣化させると言う弊害が発生する。そこで、指示具5によって遮られる光量は、α領域、β領域ともに最初の半分(α領域ではV1レベル相当、β領域ではレベルV2相当)であるので、次式で変化の比を計算する。
【0045】
Norm_data_r[N] = Norm_data_a[N] / (Bas_data[N] - Ref_data[N]) (2)
この計算結果を示すと、図10−2のようになり、変動比であらわされるため、反射率が異なる場合でも、等しく扱う事が可能になり、このデータに対して、閾値Vthrを別途設定して、その立ち上がり部と立下り部の画素番号から、例えば両者の中央を入力画素として、高精度に画素情報が取得可能となる。
【0046】
ところで、図10−2は説明のために模式的に描いたものであり、実際の検出信号波形は詳細に表示すると、図11の様になる。いま閾値Vthrと比較して遮光領域の立ちあがり部分は、Nr番目の画素で閾値Vthrを越えたとし、Nf番の画素で閾値Vthrを下まわったと仮定する。この時、出力すべきCCDの画素番号Npを、先に説明した様に、立ち上がり部と立下り部の画素番号の中央値として
Np = Nr + (Nf-Nr)/2 (3)
のように計算してもよいが、そうすると、CCDの画素間隔が出力画素番号の分解能になる。そこで、より高分解能に検出するために、画素の出力レベル情報を用いて演算を行う。
【0047】
図11において、画素番号NrのCCD出力レベルをLr 画素番号Nr-1の出力レベルをLr-1とする。同様に、画素番号Nfの出力レベルをLf、画素番号Nf-1の出力レベルをLf-1とする。このとき検出すべき画素番号を、それぞれのNrv、Nfvとすれば、
Nrv = Nr-1 + ( Vthr - Lr-1 ) / ( Lr - Lr-1 ) (4)
Nfv = Nf-1 + ( Vthr - Lf-1 ) / ( Lf - Lf-1 ) (5)
と計算すれば、出力レベルに応じた仮想の画素番号、つまりCCDの画素番号よりも細かい画素番号を取得でき、出力される仮想中心画素Npvは、
Npv = Nrv + (Nfv-Nrv)/2 (6)
で決定される。
【0048】
このように、画素番号とその画素の出力レベルから仮想的な画素番号を計算することで、より分解能の高い検出が可能となる。
〈CCD画素情報から角度情報への変換〉
さて、得られた中央画素番号から、実際の座標値を計算するためには、前述の画素番号を角度情報に変換する必要がある。
【0049】
図12は得られた画素番号と角度Θの関係をプロットしたものである。この関係の近似式
Θ=f(N) (7)
を求め、この近似式よりデータの変換を行う。本願発明では、1次近似式を用いて近似できる様に、先に説明したセンサユニット1中の検出手段のレンズ群を構成するが、レンズの光学的収差等により、より高次な近似式を用いたほうが、より高精度に角度情報を得る事が可能となる場合がある。どのようなレンズ群を採用するかは、製造コストと密接に関連し、レンズ群の製造原価を下げる事によって一般的に発生する光学的な歪を、より高次の近似式を用いて補正する場合には、それなりの演算能力(演算速度)を要求されるので、目的とする製品に要求される座標算出精度を鑑みながら、その両者を適宜設定すれば良い。
【0050】
一方、後述する方法で角度情報から座標値を算出する場合には、得られた画素番号から角度そのものを算出するよりも、その角度における正接(tangent)の値を求めるほうが、三角関数の演算を省略する事が可能となるので都合が良い。図13はこの観点に立ち、画素番号に対するtanθ値をプロットしたものであり、この関係より近似式を求め、その近似式を用いて画素番号からtanθ値への変換を行う。例えば、近似式として5次多項式を用いる場合には、係数が6個必要になるので、出荷時などにこのデータを不揮発性メモリーなどに記憶する。今5次多項式の係数をL5,L4,L3,L2,L1,L0とした時、tanθは
tanθ=(L5 *Npr + L4) *Npr + L3) *Npr + L2) *Npr + L1) *Npr + L0 (8)
で得られる。同様な演算を各々のセンサに対して行えば、それぞれの角度データを決定できる。
〈座標計算方法の説明〉
図14は画面座標との位置関係を示す図である。座標入力崇高エリア4の水平方向にX軸、垂直方向にY軸を、そして座標入力有効エリア4の中央を原点位置に配置するものとし、入力範囲4の上辺左右にセンサユニット1L、及びセンサユニット1RをY軸に対称に取り付け、そのセンサユニット間の距離をDsとする。また図示されている様に、センサユニット1のCCDの受光面は、その法線方向がX軸と45°の角度を成すように配置され、その法線方向を0°と定義する。この時角度の符号は、左側に配置されたセンサユニット1Lの場合には、時計回りの方向を『+』方向に、また右側に配置されたセンサユニット1Rの場合には、反時計回りの方向を『+』方向と定義する。さらには、図中P0は前述した各センサの法線方向の交点位置であり、Y軸方向の原点からの距離をP0yと定義する。この時、それぞれのセンサユニット1で得られた角度をθL、θRとして、検出すべき点Pの座標P(x,y)は、
【0051】
【数1】
で得られる。
〈指示具識別の詳細説明〉
以上述べたように、指、あるいは指示具等による遮光位置を検出して、指、あるいは指示具等の位置座標を検出する座標入力装置について説明した。次に本願発明の趣旨となる指示具の識別につい説明する。
【0052】
図1は本願発明の指示具の具体的構成等について説明する説明図である。
【0053】
図1(A)に示されるように、指示具60は、操作者が持つ部分としてのホールド部63、指示具として先が尖った先端部62、それとは反対側に設けられた後端部61よりなる、軸対称な棒状の構成となっている。
【0054】
特に先が尖った先端部62は光を完全に遮光する遮光部材より構成されており、操作者が該指示具の先端部を座標入力面に当接させて、文字や図形の情報を入力しようとすると、先に説明した通り、座標入力面の近傍に設けられている光束を遮り、結果としてその指示具の位置を算出して指示具の軌跡を表示装置等に出力することができる様になる。またその際に検出手段(CCD)より出力される遮光影は、図11のようになることが説明されている。
【0055】
一方指示具60の後端部61は図1(B)に示すような構造をしており、61-1は細い円柱状の光遮光部材を円環状に隙間を持って多数配置した構成であり、61-2は遮光部材で構成された網目状の部材を円環状にした構成であり、更には61-3はガラス等の光透過材を円環状にした構造を示している。
【0056】
これらの構造物に光を一方から投光して、その反対側に光が抜けるかどうかを考察すると、61-1、61-2のように光遮光部材を隙間を持って円環状に配置すると、円環の中心軸近くを通過する光の量に比べ、その円環軸から離れるに従って光遮光部材の存在確立が増大するので、離れるに従って通過できる光の量は減少する(図1(C-1)参照。矢印の粗密でその様子を示す)。その結果、図中61-1の構成にあっては、凹凸が有るもののほぼ図1(D)の信号波形が得られ、図中61-2の構成に有っても同様の信号波形となる。つまり、投光手段、あるいは再帰反射手段で再帰反射した光は、構造部61の周辺部の光をほぼ完全に遮光する一方で、構造部61の中央部では光をより透過することができるので、図1(D)のように凹状の検出信号波形が得られることになる。
【0057】
同様に、61-3の様にガラス、あるいは透明樹脂(例えばポリカーボネートやポリメタクリル酸メチル)からなる光透過材で筒状の構造物を構成すれば、筒の中心軸付近を透過する光線は、その光透過材に対してほぼ垂直に入射するのに対し、中心軸を離れるに従って光線の入射角は増大し、61-3の表面で反射する光線の割合が増大していく(図1(C-2)参照)。さらには、材料の屈折率やその曲率によって生じる光学的歪(レンズの収差に相応する)により、後端部61-3を通過できる光線の割合は、中心軸付近を通過する光線で最大となり、結果として図1(D)の様な信号波形がやはり同様に得られることになる。つまり、見かけの光の透過率が、中心軸付近では大きく、中心軸より離れるに従って小さくなる現象として観測されるようになる。以上の説明は、光透過材からなる筒状構造物で説明したが、光透過材からなる円柱状部材でも同様の効果が期待できるし、さらには、該円筒状光透過材に一様に、例えば光拡散材を混ぜて構成しても良い。
【0058】
また、上記説明にあっては、遮光部材を隙間を持って円環状に配置、あるいは円環状に網目部材を配置することによって、その円環の中心軸付近での見かけの透過率を大きく、中心軸から離れるに従って、見かけの透過率を小さくする構成としているので、本願発明にあっては、これらの遮光部材で構成される円環状部材をも、光透過部材として称す。さらには、素材として光を透過できる材料を、光透過材と称し、光透過部材と区別する。
【0059】
また、上記説明にあっては軸対象形状を有する円環状部材で説明したが、光透過部材を例えば楕円状に配置しても同様の効果を得ることができることは言うまでも無いが、軸対象とすることで次のようなメリットが得られる。
【0060】
例えばセンサユニット1L、センサユニット1Rで観測される遮光影は同様の波形となり、その遮光影の判定を複数のセンサユニットで各々判別でき、指示具の判定をより高いものとすることができる。つまり、一方のセンサユニットで図1(D)の信号が得られたと判別した時には、他方のセンサユニットでも同種の遮光影が得られているはずであり、他方のセンサユニットで遮光影が異なると判別した時には、座標出力を停止、あるいは保留し、両者の遮光影が一致して始めてその座標値と遮光影の情報を外部機器に出力するように構成する。
【0061】
さて、指示具60を用いて座標入力を行った場合、先端部62を使って座標入力を行えば、図11の様な形状の遮光影が得られ、後端部61を使って座標入力を行えば図1(D)の様な遮光影が得られることになる。つまり、遮光影の形状解析を行えば、どちらを使って入力動作を行ったかを判別でき、アプリケーション的に優れた効果が期待される。
【0062】
つまり、先端部62を使って操作した場合には、その軌跡を筆跡として表示装置に出力し、後端部61を使って操作した場合には、その軌跡に沿って、例えば表示されている情報を消していく様に構成することが可能となる。つまり操作者は、消しゴム付鉛筆をあたかも持っているが如く、直感的な操作で『文字』『図形』を入力したり、表示してある情報を消去することが可能となる。
【0063】
通常この種の操作を実現するためには、例えば同一の指示具を用いて行う場合は何らかのスイッチ手段を用いて描画するモードと消去するモードを変更しなければならないし、複数の指示手段を用いて実現するためには、その指示具が何であるかを指示具からその情報を発して本体にその旨を通信しなければならない。
【0064】
前者は、モード変更する操作をあらかじめ習得しなければ使えないし、『書く』『消去』すると言う意思を表示するための操作の他に、スイッチ変更動作を強要するので、誰でもが直感的に使える装置とは成らず、使いこなすのにそれなりの熟練が必要となる大きな問題を有する。また後者は、指示手段が何であるかを報知するための通信手段が必要であり、コストアップは避けられ無いばかりか、回路要素を駆動するための電源(例えば電池)を内蔵することになるので、重量アップによる操作性低下も免れることができない。
【0065】
それに対し本願発明の指示手段60は、コスト的にも優れた非常に単純な構成であり、直感的操作を可能とする優れた操作性を有する指示具となりえる。以上の説明に有っては、『鉛筆』と『消しゴム』を使い分けるアプリケーションで説明したが、これに限定されるものではなく、例えば先端部を『黒鉛筆』、後端部を『赤鉛筆』に割り付けることも可能である。
【0066】
また本実施例では、先端部62と後端部61を有する指示具60を使って説明したが、後端部61と同様な構造のみを有する指示具を用いても良い。この場合、指や別の指示具により座標入力が行われた場合にはその筆跡を残すように動作し、後端部61と同様な構造のみを有する指示具を用いて入力が行われた場合には、『消しゴム』として動作するように構成する。この指示具を、例えば通常用いているホワイトボード等の『黒板消し』と同様のイメージを持たせる形状にしておけば、例えば『指』で入力して、『黒板消し』で消去すると言う直感的な動作をやはり実現することが可能となる。
【0067】
さて、遮光影の形状解析方法について一例を述べる。先に述べたとおり、遮光範囲の両端の角度方向から、その中心の角度方向を求めて、指示具の位置を算出する方式であるので、遮光影の両端に相当するCCD画素番号の出力電圧と、導出した遮光影の中心に相当するCCD画素番号の出力電圧を比較することによって、図11の遮光影(つまり先端部62)なのか、図1(D)の遮光影(つまり後端部61)なのかを簡単に判定することができる。もちろんカーブフィッティング等の手法を用いて判定することも可能である。
【0068】
図15はデータ取得から座標計算までの工程を示したフローチャートであり、本願発明の座標入力装置の一連の処理工程を詳述する。
【0069】
まずS101で電源投入が行われると、S102で演算制御回路などのポート設定、タイマ設定などさまざまな初期化が行われる。S103は立ち上げ時のみに行う不要電荷除去のための準備である。CCDなどの光電変換素子においては、動作させていない時に不要な電荷が蓄積している場合があり、そのデータをそのままリファレンスデータとして用いると、検出不能、あるいは誤検出の原因となる。それを避けるために、前述した投光手段の照明無しの状態で、CCDからのデータをS103で予め設定された回数読み出す(S104)ことにより、CCDに蓄積されていた不要電荷の除去を行っている。S105は所定回数繰り返すための判断文である。S106は投射手段の照明無しの状態でのデータの取り込みであり、リファレンスデータとして上述したBas_data[N]の取得に相当し、S107にてメモリに記憶され、以降の計算に用いられる。
【0070】
S108では、投射手段で照明したときの初期光量分布に相当するリファレンスデータRef_data[N]の取り込みを行い、S109にて同様にメモリーに記憶する。
【0071】
以上のステップまでが、電源投入時の初期設定動作と言う事になるが、この初期設定動作は、リセットスイッチ等により操作者の意図によって動作するように構成しても良い事は言うまでも無く、この初期設定動作を経て、通常の取り込み動作状態に移行することになる。
【0072】
S110で信号が正常に取得できたら、S111でRef_dataとの差分値で遮光部分の有無を判定する。無いと判定されたときには、S110にもどりまた取り込みを行う。S112で遮光領域が有りと判定されたら、S113で式(2)の処理により比を計算する。S114にて、得られた比に対して閾値で立ち上がり部、立下り部を決定し、(4)、(5)、(6)式で画素番号を計算する。得られた画素番号から近似多項式より例えばTanθを算出し(S115)、左右のセンサユニットでのTanθ値からx、y座標を(9)、(10)式を用いて算出する(S116)。
【0073】
次にS117にて特定の指示具61による座標入力動作が行われているかを上述した方法で判定し、その判定結果に基づきFlagを設定し(S118、S119)、ステップS120にて得られた座標値と指示具の判定結果を合わせて、例えばホストPCにその情報を出力するように構成し、ステップS110にもどる。
【0074】
出力形態はUSB、RS232などのシリアル通信で送っても良いし、任意のインタフェースで送っても良い。送られたPC側では、ドライバーがデータを解釈し、カーソルの移動、マウスボタン状態の変更などを座標値、フラグなどを参照しておこなう事で、PC画面の操作が可能になる。S120の処理が終了したら、S110の動作に戻り、以降電源OFF、もしくは、操作者の意図によってリセット状態が設定されるまで、この処理を繰り返す事になる。このときの繰り返し周期を10[msec]程度に設定すれば、この座標入力装置は100回/秒の座標サンプリングが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の指示具61の構成とCCD出力の特徴を説明する説明図。
【図2】座標入力装置の概略構成図
【図3】センサユニット1中の投光手段を説明する説明図
【図4】センサユニット1中の検出手段を説明する説明図
【図5】制御・演算ユニット2のブロック図
【図6】発光のタイミングチャート
【図7】光量分布(CCD出力)の一例
【図8】経時変化の例の説明図
【図9】光量変化の説明図
【図10】光量変化量と光量変化率の説明図
【図11】遮光範囲検出の説明図
【図12】画素番号Nと角度Θの関係の説明図
【図13】画素番号NとtanΘの関係の説明図
【図14】座標算出の説明図
【図15】座標算出のためのフローチャート
【符号の説明】
【0076】
1L,1R センサユニット
2 制御ユニット
3 再帰反射部材
4 座標入力有効領域
5 指示具
60 指示具
【技術分野】
【0001】
本発明は、座標入力装置、より詳しくは、入力面に指示具や指によって指示して座標を入力することにより、接続されたコンピュータを制御したり、文字や図形などを書き込むために用いられる座標入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の装置としてはタッチパネルとして、各種方式のものが提案、または製品化されており、特殊な器具などを用いずに、画面上でPCなどの操作が簡単にできるため、広く用いられている。
【0003】
方式としては、抵抗膜を用いたもの、また、超音波を用いたものなど、さまざまなものがあるが、光を用いたものとして特許文献1などに見られるように、座標入力面外側に再帰性反射シートを設け、光を照明する手段からの光束を再帰反射シートで再帰反射し、受光手段により光量分布を検出する構成において、入力領域内にある、指などで遮蔽された領域の角度を検出し、遮蔽位置つまり入力位置の座標を決定するものが、知られている。
【0004】
また、特許文献2や、特許文献3などにあるように、再帰反射部材を入力領域周辺に構成し、再帰反射光が遮光される部分の座標を検出する装置が開示されている。
【0005】
これらの装置において、例えば特許文献2では、微分などの波形処理演算によって遮光部分のピークを検出することにより、遮光部分の角度を検出し、また、特許文献3では、特定のレベルパターンとの比較によって遮光部位の一方の端と他方の端を検出しそれらの座標の中心を検出する構成が示されている。
【0006】
また、先の特許文献1においては、RAMイメージャーの各画素を読み出し、コンパレータで比較する事で、遮光部分を検出し、一定幅以上の遮光部位があった場合に、その両端の画素の中心(1/2位置)を検出する検知方式が示されている。
【特許文献1】米国特許第4507557号明細書
【特許文献2】特開2000−105671号公報
【特許文献3】特開2001−147264号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上の従来の入力面周囲に設けられた再帰反射材からの再帰反射光を遮る方式は、ペン状の指示具以外にも指等の指示でも座標入力が可能、つまり光を遮るものであれば指示手段を選ばない。従ってこの種の座標入力装置に有っては、先が尖ったペン状の筆記具を用いて、細かい図形や細かい文字の入力を可能とする他、座標入力面の特定部分を例えば指で押圧することによって、その部分(領域)に割り付けられたコマンドを実行するようなタッチパネルとして動作させることも可能となる。特に指によるタッチ動作は、筆記具を必要としないので、誰でもが簡単に操作することができるメリットが有り、普及が進んでいる。
【0008】
このように指示具を選ばないと言うことは、この種の座標入力装置の最大のメリットであるが、次のような操作を行う場合にはこのメリットがデメリットとなってしまう。
【0009】
この種の座標入力装置は、単純な遮光影による検出光量変化を検出して、指示手段の位置を検出する方式であるので、例えば指示具による入力なのか指による入力かを識別することは困難であり、例えばこの種の座標入力装置を表示装置と一体に重ねて、指示具による入力時にはその筆跡を表示手段が表示するように構成し、指による入力時には、表示手段により表示されている表示内容を、その軌跡に従って、その部分の表示内容を消去することができない。つまり、操作者が通常のホワイトボードで実現している『マーカーによる情報記入』『指先で記入されている内容をちょっと消して書き直す』『黒板消しを用いて記入内容を消去する』と言った直感的な操作を実現することができない。
【0010】
従って、この種の操作を実現するためには、例えば座標入力領域内の特定の場所に領域を設け、その部位を押圧することで、筆跡が残るような状態、あるいは軌跡部分を消去する様な状態を、その都度設定するように構成する方法が知られている。しかしながら、この方法は操作者に座標入力によってどの様な現象が起こるのかを認知させる必要があるし、また装置導入の際に、事前に学習、あるいは習熟を要求する。従って、経験豊かなユーザーのみが、違和感なく操作することができる装置となってしまい、一般のユーザが直感的に使いこなせるものとはならず、座標入力装置と表示装置を一体にした大型の装置をホワイトボード用途として使用する形態の普及が進んでいるとは言えない状態にある。
【0011】
以上の課題を解決する一つの方法として、専用の指示手段を複数設け、各々の指示手段から、赤外線、超音波、あるいは電波を用いてその指示手段が何であるかを送信して、座標入力装置本体に指示手段の種別を報知する方法が広く用いられている。このように構成することで座標入力装置が、専用指示手段1で座標入力動作が行われている際には鉛筆として黒の筆跡を残すように動作し、専用指示手段2で座標入力動作が行われている際には色鉛筆として例えば赤の筆跡を残すように動作し、さらには専用指示手段3で座標入力動作が行われている際には黒板消しとして表示されている表示内容をその軌跡に従って消去するように構成することができる。その場合、専用指示手段1は黒鉛筆として、専用指示手段2は赤鉛筆として、更には専用指示手段3はあたかも黒板消しの如く形状を構成すれば、操作者は目的に応じて直感的にツールを選択して操作させることができるので、誰でもが使いこなすことができる、優れた電子式ホワイトボードとなる。
【0012】
しかしながら、この方式に有っては、専用指示具と座標入力装置本体間での通信手段が必須であり、その分の製品コスト上昇は避けられない。さらには、指示具に通信手段を設けることで、電源を含む回路要素による指示具の重量アップは長時間の操作をした場合の疲労を考えると、決して好ましい形態とは言えず、さらには電源としての電池のランニングコストもユーザに負担させると言う課題が生じていた。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明では、上記課題を解決するために、光束を遮光する指示具の遮光部位の構成が、受光手段から観測して該指示具の中心部分の光透過率が大きく、遮光範囲の両端部分の光透過率を小さくするように構成することで、受光手段で検出される該指示手段の遮光影を特徴ある形状として検出できるように構成し、座標入力動作が前記指示手段により行われていると判断できるように構成したものである。更には、前記指示手段は、その種別を検知するための特別な通信手段等を設ける必要が無いので、操作性の良い指示手段を安価に構成できるようにしたものである。
【発明の効果】
【0014】
以上述べたように、単純な指示具の構成で軽量かつ安価な操作性に優れた指示具を提供できる他、その指示具の種別を判定できるように構成してあるので、『鉛筆』と『消しゴム』と言ったような直感的な操作を実現し、誰でもが気軽に操作できる優れた効果が得られるようになった。さらには、電池レスな指示具を実現しており、ユーザのランニングコストの削減、あるいは故障等の信頼生に関する問題も発生しないと言う利点も得られるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0016】
まず、本発明に係る座標入力装置の概略構成について図2を用いて説明する。
【0017】
図中1L、1Rは投光手段および検出手段を有するセンサユニット1であり、本実施例の場合、図示の如く座標入力有効領域4のX軸に平行に、かつY軸に対称な位置に所定距離離れて配置されている。センサユニット1は制御・演算ユニット2に接続され、制御信号を制御・演算ユニット2から受け取ると共に、検出した信号を制御・演算ユニット2に送信する。3は入射光を到来方向に反射する再帰反射面を有する反射手段であり、図示が如く座標入力有効領域4の外側周囲3辺に設けられ、左右それぞれのセンサユニット1から略90°範囲に投光された光を、センサユニット1に向けて再帰反射する。
【0018】
反射された光は、集光光学系とラインCCD等によって構成されたセンサユニット1の検出手段によって1次元的に検出され、その光量分布が制御・演算ユニット2に送られる。
【0019】
前述した座標入力有効領域4は、例えばPDPやリアプロジェクタ、LCDパネルなどの表示装置の表示画面で構成し、例えば座標入力動作を行うことでその軌跡を表示装置に出力することによって、入出力一体の装置として利用可能となる。
【0020】
このように構成することで、入力領域に指などによる入力指示がなされると、上記投光手段から投光された光が、指等の指示手段によって遮られ、センサユニット1の検出手段ではその部位のみの光(再帰反射による反射光)を検出する事ができなくなり、その結果、どの方向からの光が検出できなかったかを判別することが可能となる。つまり制御・演算ユニット2の演算制御手段は、左右のセンサユニット1の光量変化から入力指示された部分の遮光範囲を検出し、その遮光範囲の情報から遮光位置の方向(角度)をそれぞれ導出する。さらに、前記導出された方向(角度)、及びセンサユニット1L、及び1R間の距離情報等から、入力エリア上の座標位置を算出すると共に、表示装置に接続されているPCなどに、USBなどのインタフェースを経由して座標値を出力する。
【0021】
このようにして、指等の指示手段によって、画面上に線を描画したり、表示画面上のアイコン操作によりPCの制御等が可能となる。
【0022】
以降、各部分毎にその構成、動作について詳細説明を行う。
〈センサユニット1の詳細説明〉
図3はセンサユニット1中における投光手段の構成例を示したものである。
【0023】
図3−1は投光手段を正面方向(座標入力領域4を形成する座標入力面の垂直方向)から見た図であり、図中31は赤外光を発する赤外LEDであり、発光した光は投光レンズ32によって、略90°範囲に光を投光する。一方、図3−2は同じ構成を横から見た側面図であり(入力面に対し水平方向)、この方向では、赤外LED31からの光は上下方向に制限された光束として投光され、主に、再帰反射手段3に対して光が投光されるように構成されている。
【0024】
図4はセンサユニット1中における検出手段を図示したのものであり、図3と同様に、図4-1は正面方向(座標入力領域4を形成する座標入力面の垂直方向)から、また図4-2はその側面図である。なお正面図4-1中の破線部分は、側面図4-2に示される前述したセンサユニット1中の投光手段の配置を示すものである。本実施例の場合、投光手段と検出手段を重ねて配置しており、その距離Lは、投光手段から再帰反射手段3までの距離に比べて十分に小さな値であり、距離Lを有していても十分な再帰反射光を検出手段で検知することが可能な構成となっている。
【0025】
また、図4-2において本願発明の検出手段は、1次元のラインCCD41および集光光学系としてのレンズ42,43および、入射光の入射方向を制限する絞り44、可視光など余分な光の入射を防止する赤外フィルター45からなり、投光手段で投光された光は、再帰反射部材3によって反射され、前述赤外フィルター45、絞り44を抜けて集光用レンズ42,43によって、CCDの検出面上に集光される。
【0026】
同様に図4-1において説明を加えると、前述した略90°方向に投光された投光手段の光は、再帰反射部材3によって反射され、前述赤外フィルター45、絞り44を抜けて集光用レンズ42,43によって、反射光の入射角に応じたCCD41の画素上に結像することになる。従って、CCD41の出力信号は、反射光の入射角に応じた光量分布を出力することになるので、CCD41画素番号が角度情報を示すことになる。
〈制御・演算ユニットの説明〉
図2の制御・演算ユニット2とセンサユニット1L、センサユニット1Rの間では、CCDの制御信号、CCD用クロック信号、CCDの出力信号、および、LEDの駆動信号がやり取りされている。
【0027】
図5は制御・演算ユニットのブロック図である。CCD制御信号は、ワンチップマイコンなどで構成される演算制御回路83から出力されており、CCDのシャッタタイミングや、データの出力制御などをおこなっている。CCD用のクロックはクロック発生回路87からセンサユニットに送られると共に、CCDとの同期をとって、各種制御を行うために、演算制御回路83にも入力されている。
【0028】
LED駆動信号は演算制御回路83からLED駆動回路84L、84Rをへて、センサユニット1中の赤外LED31に供給されている。
【0029】
センサユニット1の検出手段であるCCD41からの検出信号は、制御・演算ユニット2中のADコンバータ81L、81Rに入力され、演算制御回路83からの制御によって、デジタル値に変換される。変換されたデジタル値は必要に応じてメモリ82に記憶され、後述する方法で角度算出、さらには座標値が求められ、その結果を外部PCなどにシリアルインタフェース88などを介して出力される。
〈光量分布検出の説明〉
図6は制御信号のタイミングチャートである。
【0030】
91,92,93がCCD制御用の制御信号であり、91SH信号の間隔で、CCDのシャッタ解放時間が決定される。92、93はそれぞれ左右のセンサへのゲート信号であり、CCD内部の光電変換部の電荷を読み出し部へ転送する信号である。
【0031】
94、95は左右のLEDの駆動信号であり、SHの最初の周期で一方のLED(センサユニット1L中のLED)を点灯するために94の駆動信号がLED駆動回路(この場合LED駆動回路84L)を経てLEDに供給される。次の周期でもう一方のLED(この場合、センサユニット1R中のLED)が駆動される。双方のLEDの駆動が終了した後に、CCDの信号が左右のセンサから読み出される。
【0032】
読み出される信号は、例えば指、或いは指示具等による入力がない場合、つまり遮光部分が無い場合には、それぞれのセンサからの出力として、図7-1のような光量分布が得られる。もちろん、このような分布がどのシステムでも必ず得られるわけではなく、再帰反射シートの配置状態や再帰反射シートの特性(例えば再帰反射部材の入射角による再帰反射効率に依存)、LEDを含む投光手段の特性、また、経時変化(反射面の汚れなど)によって、この分布は変化する。
【0033】
図7-1において、Aのレベルが最大光量を検出した時のレベル、Bのレベルが最低レベルであるものとすれば、反射光のない状態では、得られるレベルはB付近になり、反射光量が増えるほどAのレベルに近づく事になる。この様にCCDから出力されたデータは、逐次AD変換されCPUにデジタルデータとして取り込まれる。
【0034】
図7-2は指等で入力を行った、つまり、反射光を遮った場合の出力の例である。Cの部分で指などにより光が遮られたため、その部分のみ光量が低下している。
【0035】
検出は、この光量分布の変化を検知して行うものであり、具体的に説明すれば、まず図7-1のような入力の無い初期状態(以後、初期状態で得られたデータを初期データと言う)を予めメモリ82に記憶しておき、それぞれのサンプル期間で得られるデータとあらかじめ記憶しておいた初期データとの差分を算出する事で、図7-2のような変化があるかどうかを判別する。
〈角度計算の説明〉
角度計算にあたっては、まず、遮光範囲を検出する必要がある。
【0036】
先にも述べた用に、光量分布は経時変化などで一定ではないため、システムの起動時などに前述した初期データを記憶する事が望ましい。つまり、工場等の出荷時に初期データを設定し、そのデータの更新が、逐次行われなければ、例えば所定の位置の再帰反射面にゴミが付着した場合、その部分での再帰反射効率が低下するので、あたかもその位置(センサから見た方向)で座標入力動作が行われた、すなわち誤検出してしまうと言う重大な結果を引き起こす。従って、システムの起動時などに前述した初期データを記憶する事で、再帰反射面が経時的にほこり等で汚れて再帰反射効率が落ちていても、その状態を初期状態として設定しなおすことができるので、誤動作をする事が無くなると言う優れた利点が得られる様になる。
【0037】
さて、電源投入時、入力の無い(遮光部分が無い)状態で、まず投光手段から照明すること無しにCCDの出力をAD変換して、これをBas_data[N]として、メモリ82に記憶する。これは、CCD41のバイアスのばらつき等を含んだデータとなり、図7-1のBのレベル付近のデータとなる。ここで、Nは画素番号であり、有効な入力範囲に対応する画素番号が用いられる。次に、投光手段から照明した状態での光量分布を記憶する。図7-1の実線で表されたデータであり、Ref_data[N]とし、初期データの記憶を完了する。
【0038】
これらのデータを用いてまずは入力が成されたか、遮光範囲があるかどうかの判定を行う。
【0039】
あるサンプル期間のデータをNorm_data[N]とする。まず遮光範囲を特定するために、データの変化の絶対量によって、有無を判定する。これは、ノイズなどによる誤判定を防止し、所定量の確実な変化を検出するためである。変化の絶対量を各々の画素において以下の計算を行い、予め決定してある閾値Vthaと比較する。
【0040】
Norm_data_a[N] = Norm_data[N] − Ref_data[N] (1)
従って、Norm_data_a[N]は各画素における絶対変化量に相当する事になる。
【0041】
この処理は、差をとり比較するだけなので、処理時間をさほど使わないので、入力の有無の判定を高速に行う事が可能である。
【0042】
Vthaを初めて超えた画素が所定数を超えて検出されたときに入力があったと判定する。
【0043】
次に、より高精度に検出するために、変化の比を計算して入力点の決定を行う。図8で121を再帰反射面とする。ここでα領域が汚れなどにより反射率が低下していたとすると、このときのRef_data[N]の分布は、図9−1のように、領域αの反射光量が少なくなる。この状態で、図8のように指などの指示具5が挿入され、ほぼ再帰反射部材の半分を覆ったとすると、反射光量は略半分となるため、図9−2の太線で示した分布Norm_data[N]が観測される。この状態に対して、式(1)を適用すると、図10−1のようになる。ここで、縦軸は初期状態との差分電圧になっている。
【0044】
このデータに対して、閾値Vthaと比較すると、本来の入力範囲をはずれてしまうような場合(図10-1の破線領域)がある。もちろん、閾値Vthaをより小さな値に設定する事で、ある程度の検出は可能となるが、ノイズなどの影響を受ける可能性が大きくなり、座標算出性能を劣化させると言う弊害が発生する。そこで、指示具5によって遮られる光量は、α領域、β領域ともに最初の半分(α領域ではV1レベル相当、β領域ではレベルV2相当)であるので、次式で変化の比を計算する。
【0045】
Norm_data_r[N] = Norm_data_a[N] / (Bas_data[N] - Ref_data[N]) (2)
この計算結果を示すと、図10−2のようになり、変動比であらわされるため、反射率が異なる場合でも、等しく扱う事が可能になり、このデータに対して、閾値Vthrを別途設定して、その立ち上がり部と立下り部の画素番号から、例えば両者の中央を入力画素として、高精度に画素情報が取得可能となる。
【0046】
ところで、図10−2は説明のために模式的に描いたものであり、実際の検出信号波形は詳細に表示すると、図11の様になる。いま閾値Vthrと比較して遮光領域の立ちあがり部分は、Nr番目の画素で閾値Vthrを越えたとし、Nf番の画素で閾値Vthrを下まわったと仮定する。この時、出力すべきCCDの画素番号Npを、先に説明した様に、立ち上がり部と立下り部の画素番号の中央値として
Np = Nr + (Nf-Nr)/2 (3)
のように計算してもよいが、そうすると、CCDの画素間隔が出力画素番号の分解能になる。そこで、より高分解能に検出するために、画素の出力レベル情報を用いて演算を行う。
【0047】
図11において、画素番号NrのCCD出力レベルをLr 画素番号Nr-1の出力レベルをLr-1とする。同様に、画素番号Nfの出力レベルをLf、画素番号Nf-1の出力レベルをLf-1とする。このとき検出すべき画素番号を、それぞれのNrv、Nfvとすれば、
Nrv = Nr-1 + ( Vthr - Lr-1 ) / ( Lr - Lr-1 ) (4)
Nfv = Nf-1 + ( Vthr - Lf-1 ) / ( Lf - Lf-1 ) (5)
と計算すれば、出力レベルに応じた仮想の画素番号、つまりCCDの画素番号よりも細かい画素番号を取得でき、出力される仮想中心画素Npvは、
Npv = Nrv + (Nfv-Nrv)/2 (6)
で決定される。
【0048】
このように、画素番号とその画素の出力レベルから仮想的な画素番号を計算することで、より分解能の高い検出が可能となる。
〈CCD画素情報から角度情報への変換〉
さて、得られた中央画素番号から、実際の座標値を計算するためには、前述の画素番号を角度情報に変換する必要がある。
【0049】
図12は得られた画素番号と角度Θの関係をプロットしたものである。この関係の近似式
Θ=f(N) (7)
を求め、この近似式よりデータの変換を行う。本願発明では、1次近似式を用いて近似できる様に、先に説明したセンサユニット1中の検出手段のレンズ群を構成するが、レンズの光学的収差等により、より高次な近似式を用いたほうが、より高精度に角度情報を得る事が可能となる場合がある。どのようなレンズ群を採用するかは、製造コストと密接に関連し、レンズ群の製造原価を下げる事によって一般的に発生する光学的な歪を、より高次の近似式を用いて補正する場合には、それなりの演算能力(演算速度)を要求されるので、目的とする製品に要求される座標算出精度を鑑みながら、その両者を適宜設定すれば良い。
【0050】
一方、後述する方法で角度情報から座標値を算出する場合には、得られた画素番号から角度そのものを算出するよりも、その角度における正接(tangent)の値を求めるほうが、三角関数の演算を省略する事が可能となるので都合が良い。図13はこの観点に立ち、画素番号に対するtanθ値をプロットしたものであり、この関係より近似式を求め、その近似式を用いて画素番号からtanθ値への変換を行う。例えば、近似式として5次多項式を用いる場合には、係数が6個必要になるので、出荷時などにこのデータを不揮発性メモリーなどに記憶する。今5次多項式の係数をL5,L4,L3,L2,L1,L0とした時、tanθは
tanθ=(L5 *Npr + L4) *Npr + L3) *Npr + L2) *Npr + L1) *Npr + L0 (8)
で得られる。同様な演算を各々のセンサに対して行えば、それぞれの角度データを決定できる。
〈座標計算方法の説明〉
図14は画面座標との位置関係を示す図である。座標入力崇高エリア4の水平方向にX軸、垂直方向にY軸を、そして座標入力有効エリア4の中央を原点位置に配置するものとし、入力範囲4の上辺左右にセンサユニット1L、及びセンサユニット1RをY軸に対称に取り付け、そのセンサユニット間の距離をDsとする。また図示されている様に、センサユニット1のCCDの受光面は、その法線方向がX軸と45°の角度を成すように配置され、その法線方向を0°と定義する。この時角度の符号は、左側に配置されたセンサユニット1Lの場合には、時計回りの方向を『+』方向に、また右側に配置されたセンサユニット1Rの場合には、反時計回りの方向を『+』方向と定義する。さらには、図中P0は前述した各センサの法線方向の交点位置であり、Y軸方向の原点からの距離をP0yと定義する。この時、それぞれのセンサユニット1で得られた角度をθL、θRとして、検出すべき点Pの座標P(x,y)は、
【0051】
【数1】
で得られる。
〈指示具識別の詳細説明〉
以上述べたように、指、あるいは指示具等による遮光位置を検出して、指、あるいは指示具等の位置座標を検出する座標入力装置について説明した。次に本願発明の趣旨となる指示具の識別につい説明する。
【0052】
図1は本願発明の指示具の具体的構成等について説明する説明図である。
【0053】
図1(A)に示されるように、指示具60は、操作者が持つ部分としてのホールド部63、指示具として先が尖った先端部62、それとは反対側に設けられた後端部61よりなる、軸対称な棒状の構成となっている。
【0054】
特に先が尖った先端部62は光を完全に遮光する遮光部材より構成されており、操作者が該指示具の先端部を座標入力面に当接させて、文字や図形の情報を入力しようとすると、先に説明した通り、座標入力面の近傍に設けられている光束を遮り、結果としてその指示具の位置を算出して指示具の軌跡を表示装置等に出力することができる様になる。またその際に検出手段(CCD)より出力される遮光影は、図11のようになることが説明されている。
【0055】
一方指示具60の後端部61は図1(B)に示すような構造をしており、61-1は細い円柱状の光遮光部材を円環状に隙間を持って多数配置した構成であり、61-2は遮光部材で構成された網目状の部材を円環状にした構成であり、更には61-3はガラス等の光透過材を円環状にした構造を示している。
【0056】
これらの構造物に光を一方から投光して、その反対側に光が抜けるかどうかを考察すると、61-1、61-2のように光遮光部材を隙間を持って円環状に配置すると、円環の中心軸近くを通過する光の量に比べ、その円環軸から離れるに従って光遮光部材の存在確立が増大するので、離れるに従って通過できる光の量は減少する(図1(C-1)参照。矢印の粗密でその様子を示す)。その結果、図中61-1の構成にあっては、凹凸が有るもののほぼ図1(D)の信号波形が得られ、図中61-2の構成に有っても同様の信号波形となる。つまり、投光手段、あるいは再帰反射手段で再帰反射した光は、構造部61の周辺部の光をほぼ完全に遮光する一方で、構造部61の中央部では光をより透過することができるので、図1(D)のように凹状の検出信号波形が得られることになる。
【0057】
同様に、61-3の様にガラス、あるいは透明樹脂(例えばポリカーボネートやポリメタクリル酸メチル)からなる光透過材で筒状の構造物を構成すれば、筒の中心軸付近を透過する光線は、その光透過材に対してほぼ垂直に入射するのに対し、中心軸を離れるに従って光線の入射角は増大し、61-3の表面で反射する光線の割合が増大していく(図1(C-2)参照)。さらには、材料の屈折率やその曲率によって生じる光学的歪(レンズの収差に相応する)により、後端部61-3を通過できる光線の割合は、中心軸付近を通過する光線で最大となり、結果として図1(D)の様な信号波形がやはり同様に得られることになる。つまり、見かけの光の透過率が、中心軸付近では大きく、中心軸より離れるに従って小さくなる現象として観測されるようになる。以上の説明は、光透過材からなる筒状構造物で説明したが、光透過材からなる円柱状部材でも同様の効果が期待できるし、さらには、該円筒状光透過材に一様に、例えば光拡散材を混ぜて構成しても良い。
【0058】
また、上記説明にあっては、遮光部材を隙間を持って円環状に配置、あるいは円環状に網目部材を配置することによって、その円環の中心軸付近での見かけの透過率を大きく、中心軸から離れるに従って、見かけの透過率を小さくする構成としているので、本願発明にあっては、これらの遮光部材で構成される円環状部材をも、光透過部材として称す。さらには、素材として光を透過できる材料を、光透過材と称し、光透過部材と区別する。
【0059】
また、上記説明にあっては軸対象形状を有する円環状部材で説明したが、光透過部材を例えば楕円状に配置しても同様の効果を得ることができることは言うまでも無いが、軸対象とすることで次のようなメリットが得られる。
【0060】
例えばセンサユニット1L、センサユニット1Rで観測される遮光影は同様の波形となり、その遮光影の判定を複数のセンサユニットで各々判別でき、指示具の判定をより高いものとすることができる。つまり、一方のセンサユニットで図1(D)の信号が得られたと判別した時には、他方のセンサユニットでも同種の遮光影が得られているはずであり、他方のセンサユニットで遮光影が異なると判別した時には、座標出力を停止、あるいは保留し、両者の遮光影が一致して始めてその座標値と遮光影の情報を外部機器に出力するように構成する。
【0061】
さて、指示具60を用いて座標入力を行った場合、先端部62を使って座標入力を行えば、図11の様な形状の遮光影が得られ、後端部61を使って座標入力を行えば図1(D)の様な遮光影が得られることになる。つまり、遮光影の形状解析を行えば、どちらを使って入力動作を行ったかを判別でき、アプリケーション的に優れた効果が期待される。
【0062】
つまり、先端部62を使って操作した場合には、その軌跡を筆跡として表示装置に出力し、後端部61を使って操作した場合には、その軌跡に沿って、例えば表示されている情報を消していく様に構成することが可能となる。つまり操作者は、消しゴム付鉛筆をあたかも持っているが如く、直感的な操作で『文字』『図形』を入力したり、表示してある情報を消去することが可能となる。
【0063】
通常この種の操作を実現するためには、例えば同一の指示具を用いて行う場合は何らかのスイッチ手段を用いて描画するモードと消去するモードを変更しなければならないし、複数の指示手段を用いて実現するためには、その指示具が何であるかを指示具からその情報を発して本体にその旨を通信しなければならない。
【0064】
前者は、モード変更する操作をあらかじめ習得しなければ使えないし、『書く』『消去』すると言う意思を表示するための操作の他に、スイッチ変更動作を強要するので、誰でもが直感的に使える装置とは成らず、使いこなすのにそれなりの熟練が必要となる大きな問題を有する。また後者は、指示手段が何であるかを報知するための通信手段が必要であり、コストアップは避けられ無いばかりか、回路要素を駆動するための電源(例えば電池)を内蔵することになるので、重量アップによる操作性低下も免れることができない。
【0065】
それに対し本願発明の指示手段60は、コスト的にも優れた非常に単純な構成であり、直感的操作を可能とする優れた操作性を有する指示具となりえる。以上の説明に有っては、『鉛筆』と『消しゴム』を使い分けるアプリケーションで説明したが、これに限定されるものではなく、例えば先端部を『黒鉛筆』、後端部を『赤鉛筆』に割り付けることも可能である。
【0066】
また本実施例では、先端部62と後端部61を有する指示具60を使って説明したが、後端部61と同様な構造のみを有する指示具を用いても良い。この場合、指や別の指示具により座標入力が行われた場合にはその筆跡を残すように動作し、後端部61と同様な構造のみを有する指示具を用いて入力が行われた場合には、『消しゴム』として動作するように構成する。この指示具を、例えば通常用いているホワイトボード等の『黒板消し』と同様のイメージを持たせる形状にしておけば、例えば『指』で入力して、『黒板消し』で消去すると言う直感的な動作をやはり実現することが可能となる。
【0067】
さて、遮光影の形状解析方法について一例を述べる。先に述べたとおり、遮光範囲の両端の角度方向から、その中心の角度方向を求めて、指示具の位置を算出する方式であるので、遮光影の両端に相当するCCD画素番号の出力電圧と、導出した遮光影の中心に相当するCCD画素番号の出力電圧を比較することによって、図11の遮光影(つまり先端部62)なのか、図1(D)の遮光影(つまり後端部61)なのかを簡単に判定することができる。もちろんカーブフィッティング等の手法を用いて判定することも可能である。
【0068】
図15はデータ取得から座標計算までの工程を示したフローチャートであり、本願発明の座標入力装置の一連の処理工程を詳述する。
【0069】
まずS101で電源投入が行われると、S102で演算制御回路などのポート設定、タイマ設定などさまざまな初期化が行われる。S103は立ち上げ時のみに行う不要電荷除去のための準備である。CCDなどの光電変換素子においては、動作させていない時に不要な電荷が蓄積している場合があり、そのデータをそのままリファレンスデータとして用いると、検出不能、あるいは誤検出の原因となる。それを避けるために、前述した投光手段の照明無しの状態で、CCDからのデータをS103で予め設定された回数読み出す(S104)ことにより、CCDに蓄積されていた不要電荷の除去を行っている。S105は所定回数繰り返すための判断文である。S106は投射手段の照明無しの状態でのデータの取り込みであり、リファレンスデータとして上述したBas_data[N]の取得に相当し、S107にてメモリに記憶され、以降の計算に用いられる。
【0070】
S108では、投射手段で照明したときの初期光量分布に相当するリファレンスデータRef_data[N]の取り込みを行い、S109にて同様にメモリーに記憶する。
【0071】
以上のステップまでが、電源投入時の初期設定動作と言う事になるが、この初期設定動作は、リセットスイッチ等により操作者の意図によって動作するように構成しても良い事は言うまでも無く、この初期設定動作を経て、通常の取り込み動作状態に移行することになる。
【0072】
S110で信号が正常に取得できたら、S111でRef_dataとの差分値で遮光部分の有無を判定する。無いと判定されたときには、S110にもどりまた取り込みを行う。S112で遮光領域が有りと判定されたら、S113で式(2)の処理により比を計算する。S114にて、得られた比に対して閾値で立ち上がり部、立下り部を決定し、(4)、(5)、(6)式で画素番号を計算する。得られた画素番号から近似多項式より例えばTanθを算出し(S115)、左右のセンサユニットでのTanθ値からx、y座標を(9)、(10)式を用いて算出する(S116)。
【0073】
次にS117にて特定の指示具61による座標入力動作が行われているかを上述した方法で判定し、その判定結果に基づきFlagを設定し(S118、S119)、ステップS120にて得られた座標値と指示具の判定結果を合わせて、例えばホストPCにその情報を出力するように構成し、ステップS110にもどる。
【0074】
出力形態はUSB、RS232などのシリアル通信で送っても良いし、任意のインタフェースで送っても良い。送られたPC側では、ドライバーがデータを解釈し、カーソルの移動、マウスボタン状態の変更などを座標値、フラグなどを参照しておこなう事で、PC画面の操作が可能になる。S120の処理が終了したら、S110の動作に戻り、以降電源OFF、もしくは、操作者の意図によってリセット状態が設定されるまで、この処理を繰り返す事になる。このときの繰り返し周期を10[msec]程度に設定すれば、この座標入力装置は100回/秒の座標サンプリングが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の指示具61の構成とCCD出力の特徴を説明する説明図。
【図2】座標入力装置の概略構成図
【図3】センサユニット1中の投光手段を説明する説明図
【図4】センサユニット1中の検出手段を説明する説明図
【図5】制御・演算ユニット2のブロック図
【図6】発光のタイミングチャート
【図7】光量分布(CCD出力)の一例
【図8】経時変化の例の説明図
【図9】光量変化の説明図
【図10】光量変化量と光量変化率の説明図
【図11】遮光範囲検出の説明図
【図12】画素番号Nと角度Θの関係の説明図
【図13】画素番号NとtanΘの関係の説明図
【図14】座標算出の説明図
【図15】座標算出のためのフローチャート
【符号の説明】
【0076】
1L,1R センサユニット
2 制御ユニット
3 再帰反射部材
4 座標入力有効領域
5 指示具
60 指示具
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光を再帰的に反射する再帰反射手段と、
前記再帰反射手段に向けて光束を投光する投光手段と、
前記再帰反射手段で反射した光束を受光する受光手段とを有し、
指示手段によって前記投光手段により投光された光束を遮光することによって生じる前記受光手段で得られる光量分布の変化により、前記指示手段による遮光範囲を検出して位置座標を算出する座標入力装置であって、
遮光範囲中央部の光透過率が大きく、遮光範囲両端部の光透過率が小さくなる様な現象として遮光影が形成される様に、前記指示手段の遮光部位が、光透過部材を円環状に配置した円環状部材でなることを特徴とする座標入力装置。
【請求項2】
請求項1に記載の座標入力装置であって、少なくとも指示手段の遮光部位が軸対称形状であって、遮光影の形状が線対称となるように構成することを特徴とする座標入力装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の座標入力装置であって、前記指示手段の円環状部材が、光透過材で構成される円筒状形状を有することを特徴とする座標入力装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の座標入力装置であって、前記指示手段の円環状部材が、遮光特性を有する線材を、前記指示手段の軸方向に平行に、かつ円環状に隙間を設けて等間隔に配置した構成であることを特徴とする座標入力装置。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の座標入力装置であって、前記指示手段の円環状部材が、遮光特性を有する線材を網目状に配置した構成であることを特徴とする座標入力装置。
【請求項1】
入射光を再帰的に反射する再帰反射手段と、
前記再帰反射手段に向けて光束を投光する投光手段と、
前記再帰反射手段で反射した光束を受光する受光手段とを有し、
指示手段によって前記投光手段により投光された光束を遮光することによって生じる前記受光手段で得られる光量分布の変化により、前記指示手段による遮光範囲を検出して位置座標を算出する座標入力装置であって、
遮光範囲中央部の光透過率が大きく、遮光範囲両端部の光透過率が小さくなる様な現象として遮光影が形成される様に、前記指示手段の遮光部位が、光透過部材を円環状に配置した円環状部材でなることを特徴とする座標入力装置。
【請求項2】
請求項1に記載の座標入力装置であって、少なくとも指示手段の遮光部位が軸対称形状であって、遮光影の形状が線対称となるように構成することを特徴とする座標入力装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の座標入力装置であって、前記指示手段の円環状部材が、光透過材で構成される円筒状形状を有することを特徴とする座標入力装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の座標入力装置であって、前記指示手段の円環状部材が、遮光特性を有する線材を、前記指示手段の軸方向に平行に、かつ円環状に隙間を設けて等間隔に配置した構成であることを特徴とする座標入力装置。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の座標入力装置であって、前記指示手段の円環状部材が、遮光特性を有する線材を網目状に配置した構成であることを特徴とする座標入力装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−108052(P2010−108052A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−276804(P2008−276804)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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