座部用クッション材、背部用クッション材及びシート
【課題】ウレタンフォームを含む座部用クッション材の振動伝達特性を改善する。
【解決手段】座部用クッション材1が、ウレタンフォームから形成されるパッド10の表面に積層され、パッド10によって支持される立体編物20を有してなる。少なくとも、一対の座骨結節対応部位を結んだ横方向仮想線を基準として前後にそれぞれ49mmの範囲と、一対の座骨結節対応部位の中間を通過する縦方向仮想線を基準として左右にそれぞれ99mmの範囲とが重なる範囲(C領域)に、着座時において上記立体編物20の張力が機能するよう、該立体編物20をパッド10に固着した。着座時において、少なくとも、大きな体圧のかかる座骨結節対応付近で、立体編物の有する直径98mmの加圧板で加圧した際の略線形の荷重−たわみ特性が機能するため、振動吸収特性が、ウレタンフォームを含むパッドを用いただけの座部用クッション材と比較して改善される。
【解決手段】座部用クッション材1が、ウレタンフォームから形成されるパッド10の表面に積層され、パッド10によって支持される立体編物20を有してなる。少なくとも、一対の座骨結節対応部位を結んだ横方向仮想線を基準として前後にそれぞれ49mmの範囲と、一対の座骨結節対応部位の中間を通過する縦方向仮想線を基準として左右にそれぞれ99mmの範囲とが重なる範囲(C領域)に、着座時において上記立体編物20の張力が機能するよう、該立体編物20をパッド10に固着した。着座時において、少なくとも、大きな体圧のかかる座骨結節対応付近で、立体編物の有する直径98mmの加圧板で加圧した際の略線形の荷重−たわみ特性が機能するため、振動吸収特性が、ウレタンフォームを含むパッドを用いただけの座部用クッション材と比較して改善される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、航空機、列車、船舶、フォークリフト、自動車などの輸送機器用の座席に用いられる座部用クッション材、背部用クッション材及びシートに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、立体編物(三次元ネット材)からなるクッション材をクッションフレームに低い張力で張設したシート構造が開示されている。立体編物をこのようにクッションフレームに張って支持することにより、サイドフレーム間に設けた金属支持板やシートクッションスプリング上に設置して用いられる所定の厚みを備えたウレタンフォームを使用した通常のシートと比較して薄型で軽量なシートを提供できる。
【0003】
また、特許文献2の図28には、クッションフレームに張って支持される立体編物と、該立体編物の下方に配設され、着座時のストローク感やバネ感を高めるため、ワイヤを簾状ないしは網状に形成したプルマフレックスなどを金属バネを介してクッションフレームに弾性的に張設した面状支持部材と、この弾性的に支持された面状支持部材上に積層される粘弾性ウレタンとを備えたシート構造が開示されている。
【特許文献1】特開2002−177099号公報
【特許文献2】特開2004−188164号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び特許文献2に開示されたものは、いずれも立体編物をシートフレームに張って設けた構造を基本としており、従来一般の自動車等に使用されている、所定の厚みを備えたウレタンフォームをシートクッションスプリング等の上に載置したり、あるいはシートフレームに直接固定したフルフォーム(オールウレタン)構造のものとは、全く異なる。すなわち、前者は、シートフレームに対して、立体編物をシートフレーム間に張ることにより、着座時において、その張力を作用させて、振動吸収特性などのクッション特性を発揮させるものであるのに対し、後者は、シートクッションスプリングやシートフレームにウレタンフォームを置き、ウレタンフォームの有する弾性を利用して所定のクッション特性を発揮させている。なお、特許文献2に開示のものでは、粘弾性ウレタンを用いているが、脚部への反力の低減のために立体編物の下に挿入した補助的な役割を果たすものに過ぎず、振動吸収機能といった座部用クッション材に求められる主たる機能はあくまでシートフレームに張設された立体編物が担っている点で特許文献1に開示のものと変わらない。
【0005】
一方、本出願人が提案している上記特許文献2の図21には、クッションフレームに立体編物を張設したクッション材と、S字バネ上に厚さ100mmのウレタンフォームを配置したクッション材との振動伝達率の比較が示されており、立体編物を張設してなるクッション材の振動伝達率がウレタンフォームを用いたものよりも低周波域から高周波域に至るまで低くなっている。従って、立体編物をクッションフレームに張設しなくても、立体編物の張力を作用させることができる構造とすれば、従来一般に使用されているウレタンフォームを用いたシートにおいて、ウレタンフォーム自体による振動吸収機能に加えて、立体編物の張力の作用による振動吸収機能を重畳させることができると考えられる。その結果、ウレタンフォームの振動伝達特性を、より好ましい特性、例えば、高弾性ウレタンや低反発ウレタンであれば、共振峰が下がり、粘弾性ウレタンであれば、バネ感を補うため共振峰が若干上がるように改善できることが期待される。
【0006】
そこで、本発明は、立体編物をクッションフレームに張設することなく使用する構造でありながら、ウレタンフォームがシートクッションスプリング(S字バネ、コイルスプリングによって支持された面状支持部材など)上に配置される構造であるか、あるいはオールウレタン構造であるか否かを問わず、ウレタンフォームを含むパッドを備えた座部用クッション材の振動伝達特性を改善できる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記課題を解決するため種々検討した結果、立体編物、高弾性ウレタン、低反発ウレタン(スラブ材)の各荷重−たわみ特性の違いに注目した。図12〜図14は、直径30mm、直径98mm、直径200mmの加圧板により、50mm/minの速度で100Nまで、住江織物(株)製の2つの立体編物、品番49076D、49013D及び低反発ウレタン(スラブ材)を床面に置き、加圧した際の荷重−たわみ特性である。この結果から、直径30mm及び直径200mmの加圧板により加圧した場合には、荷重値に差はあるものの、2つの立体編物及び低反発ウレタン共に、非線形に変化する傾向を有しているのに対し、直径98mmの加圧板により加圧した場合のみ、2つの立体編物と低反発ウレタンとの間で全く異なる変化傾向を示す。すなわち、2つの立体編物は、直径30mm及び直径200mmの加圧板で加圧した場合と異なり、いずれもほぼ線形に変化するのに対し、低反発ウレタンの場合には、直径30mm及び直径200mmの加圧板で加圧した場合と同様に非線形に変化している。このことから、上記特許文献2に示されているように、立体編物の振動吸収特性がウレタンフォームより優れている要因として、立体編物が備える直径98mmの加圧板で加圧した際の略線形の荷重−たわみ特性が振動吸収機能の改善に大きく寄与しているものと推定した。
【0008】
直径98mmというのは、体重60kg(日本人成人の平均体重)の人が着座した際の体圧分布において、各座骨結節を中心として50mmHg以上の圧力がかかる大きさである。従って、ウレタンフォームを含むパッドを用いた場合であっても、少なくともその範囲に相当する部分のみに、立体編物の張力を作用させれば、立体編物の略線形の荷重−たわみ特性が機能し、立体編物をクッションフレームに張設しなくても、ウレタンフォームを含むパッドのみを用いた場合より、振動吸収特性を改善できると考え本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、請求項1記載の本発明では、座部に配設される座部用クッション材であって、
ウレタンフォームを含んで形成されるパッドと、
前記パッドの表面に積層され、前記パッドによって支持される立体編物とを有してなり、
少なくとも、一対の座骨結節対応部位を結んだ横方向仮想線を基準として前後にそれぞれ49mmの範囲と、一対の座骨結節対応部位の中間を通過する縦方向仮想線を基準として左右にそれぞれ99mmの範囲とが重なる範囲に、着座時において前記立体編物の張力が機能するよう、前記立体編物を前記パッドに固着したことを特徴とする座部用クッション材を提供する。
請求項2記載の本発明では、前記立体編物における、少なくとも、一対の座骨結節対応部位を結んだ横方向仮想線を基準として前後にそれぞれ49mmの範囲と、一対の座骨結節対応部位の中間を通過する縦方向仮想線を基準として左右にそれぞれ99mmの範囲とが重なる範囲を、前記パッドに固着したことを特徴とする請求項1記載の座部用クッション材を提供する。
請求項3記載の本発明では、前記立体編物における、少なくとも、一対の座骨結節対応部位を結んだ横方向仮想線を基準として前後にそれぞれ49mmの範囲の長さ分であって、一対の座骨結節対応部位の中間を通過する縦方向仮想線を基準として左右にそれぞれ99mmの範囲よりも外側に位置する部分を、それぞれ少なくとも1カ所ずつ前記パッドに固着したことを特徴とする請求項1記載の座部用クッション材を提供する。
請求項4記載の本発明では、前記立体編物における一対の側縁部を前後方向全長に亘って前記パッドに固着したことを特徴とする請求項3記載の座部用クッション材を提供する。
請求項5記載の本発明では、さらに、前記立体編物における前縁部及び後縁部の少なくとも一部を前記パッドに固着したことを特徴とする請求項4記載の座部用クッション材を提供する。
請求項6記載の本発明では、接着手段、縫製手段、溶着手段、両面テープによる固着手段、又は面ファスナーによる固着手段のいずれか少なくとも一つの手段により、前記立体編物が前記パッドに固着されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1に記載の座部用クッション材を提供する。
請求項7記載の本発明では、前記立体編物は、直径98mmの加圧板で加圧した際の荷重−たわみ特性が略線形であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1に記載の座部用クッション材を提供する。
請求項8記載の本発明では、輸送機器用シートの座部に用いられることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1に記載の座部用クッション材を提供する。
請求項9記載の本発明では、背部に配設される背部用クッション材であって、
ウレタンフォームを含んで形成されるパッドと、
前記パッドの表面に積層され、前記パッドによって支持される立体編物とを有してなり、
少なくとも腰椎対応部位において、前記立体編物の張力が機能するよう、前記立体編物を前記パッドに固着したことを特徴とする背部用クッション材を提供する。
請求項10記載の本発明では、前記立体編物は、直径98mmの加圧板で加圧した際の荷重−たわみ特性が略線形であることを特徴とする請求項9記載の背部用クッション材を提供する。
請求項11記載の本発明では、座部に、請求項1〜7のいずれか1に記載の座部用クッション材が設けられていることを特徴とするシートを提供する。
請求項12記載の本発明では、背部に、請求項9又は10記載の背部用クッション材が設けられていることを特徴とするシートを提供する。
請求項13記載の本発明では、輸送機器用であることを特徴とする請求項11又は12記載のシートを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、座部用クッション材が、ウレタンフォームを含んで形成されるパッドの表面に積層され、このパッドによって支持される立体編物を有してなる。そして、少なくとも、一対の座骨結節対応部位を結んだ横方向仮想線を基準として前後にそれぞれ49mmの範囲と、一対の座骨結節対応部位の中間を通過する縦方向仮想線を基準として左右にそれぞれ99mmの範囲とが重なる範囲に、着座時において上記立体編物の張力が機能するよう、該立体編物をパッドに固着した構造である。
【0011】
従って、本発明では、クッションフレームに立体編物を張設していないにも拘わらず、着座時において、少なくとも、大きな体圧のかかる座骨結節対応付近で、立体編物の有する直径98mmの加圧板で加圧した際の略線形の荷重−たわみ特性が機能するように該立体編物がパッドに固着されているため、振動吸収特性が、ウレタンフォームを含むパッドを用いただけの座部用クッション材と比較して改善される。また、背部用クッション材においても、腰椎対応部位における面剛性が高まるように立体編物をパッドに固着することにより、上記座骨結節対応部位の面剛性を高める場合と同様に、振動吸収特性の改善を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面に示した本発明の実施形態に基づき、本発明をさらに詳細に説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る座部用クッション材1を示す図である。この座部用クッション材1は、ウレタンフォームからなるパッド10、立体編物20及び表皮30を有して構成される。
【0013】
パッド10は、ウレタンフォームを含んで構成される従来公知のものであり、高弾性ウレタン、低反発ウレタン(スラブ材)、粘弾性ウレタン、あるいは、これらを適宜に複合させた構造のものを用いることができる。パッド10は、S字バネ等のシートクッションスプリングの上に載置したものであってもよいし、クッションフレームに直接固定したフルフォーム(オールウレタン)構造のものであってもよい。
【0014】
立体編物20は、例えば、特開2002−331603号公報に開示されているように、互いに離間して配置された一対のグランド編地と、該一対のグランド編地間を往復して両者を結合する多数の連結糸とを有する立体的な三次元構造となった編地である。
【0015】
一方のグランド編地は、例えば、単繊維を撚った糸から、ウェール方向及びコース方向のいずれの方向にも連続したフラットな編地組織(細目)によって形成され、他方のグランド編地は、例えば、短繊維を撚った糸から、ハニカム状(六角形)のメッシュを有する編み目構造に形成されている。もちろん、この編地組織は任意であり、細目組織やハニカム状以外の編地組織を採用することもできるし、両者とも細目組織を採用するなど、その組み合わせも任意である。連結糸は、一方のグランド編地と他方のグランド編地とが所定の間隔を保持するように、この一対のグランド編地間に編み込んだもので、立体編物20に所定の剛性を付与する。
【0016】
グランド編地を形成するグランド糸の太さ等は、特に限定されるものではなく、立体編地に必要な腰の強さを具備させることができると共に、編成作業が困難にならない範囲のものが選択される。また、グランド糸としてはモノフィラメント糸を用いることも可能であるが、風合い及び表面感触の柔らかさ等の観点から、マルチフィラメント糸やスパン糸を用いることが好ましい。連結糸としては、例えば、モノフィラメント糸を用いることが好ましく、太さ167〜1100デシテックスのものが好適である。マルチフィラメント糸では復元力の良好なクッション性を付与できず、また、太さが上記範囲を下回ると腰の強さが得られにくくなるからである。
【0017】
グランド糸又は連結糸の素材は、特に限定されるものではなく、例えば、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、レーヨン等の合成繊維や再生繊維、ウール、絹、綿等の天然繊維が挙げられる。上記素材は単独で用いてもよいし、これらを任意に併用することもできる。好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などに代表される熱可塑性ポリエステル樹脂類、ナイロン6、ナイロン66などに代表されるポリアミド樹脂類、ポリエチレン、ポリプロピレンなどに代表されるポリオレフィン樹脂類、あるいはこれらの樹脂を2種類以上混合した樹脂である。なお、ポリエステル系樹脂はリサイクル性に優れており好適である。また、グランド糸又は連結糸の糸形状も限定されるものではなく、丸断面糸でも異形断面糸等でもよい。
【0018】
連結糸は、表層と裏層のグランド編地中にループ状の編み目を形成してもよく、挿入組織で表層と裏層のグランド編地に引っかけた構造でもよいが、少なくとも2本の連結糸が表層と裏層の編地を互いに逆方向に斜めに傾斜して、クロス状(X状)やトラス状に連結することが、立体編地の形態安定性を向上させる上で好ましい。
【0019】
なお、立体編物20は、相対する2列の針床を有する編機で編成することができる。このような編機として、ダブルラッセル編機、ダブル丸編機、Vベッドを有する横編機等がある。寸法安定性のよい立体編物を得る上で、ダブルラッセル編機を用いるのが好ましい。
【0020】
本実施形態において使用可能な立体編物20の材料の例及びそれらの物性値をいくつか示す。
【0021】
(表1)
(1)製品番号:49013D(住江織物(株)製)
材質:
表側のグランド編地・・・ポリエチレンテレフタレート繊維仮撚加工糸
裏側のグランド編地・・・ポリエチレンテレフタレート繊維仮撚加工糸
連結糸・・・・・・・・・ポリトリメチレンテレフタレートモノフィラメント
目付:981g/m2
厚さ:10.66mm
引張強さ:縦・・・1531N/50mm、横・・・1367N/50mm
伸び:縦・・・68%、横・・・107%
定荷重伸率(8cm幅、10kg、10分):
縦・・・15.5%、横・・・38.5%
残留歪み率(8cm幅、10kg、10分):
縦・・・0.9%、横・・・1.1%
縫目強さ:縦・・・724N、横・・・869N
縫目疲労:縦・・・0.9mm、横・・・1.1mm
(2)製品番号:49076D(住江織物(株)製)
材質:
表側のグランド編地・・・ポリエチレンテレフタレート繊維仮撚加工糸
裏側のグランド編地・・・ポリエチレンテレフタレート繊維仮撚加工糸とポリトリメチレンテレフタレートモノフィラメントとの組み合わせ
連結糸・・・・・・・・・ポリトリメチレンテレフタレートモノフィラメント
定荷重伸率(8cm幅、10kg、10分):
縦・・・14.0%、横・・・14.6%
縫目強さ:縦・・・746N、横・・・537N
縫目疲労:縦・・・0.3mm、横・・・0.5mm
【0022】
上記した立体編物20は、パッド10の表面に固着され、該パッド10によって支持される。固着部位は任意であるが、少なくとも、一対の座骨結節対応部位を結んだ横方向仮想線Pを基準として前後にそれぞれ49mmの範囲(図1のA領域)と、一対の座骨結節対応部位の中間を通過する縦方向仮想線Qを基準として左右にそれぞれ99mmの範囲(図1のB領域)とが重なる範囲(図1のC領域)に、着座時において立体編物20の張力が機能するように固着される。
【0023】
図1のC領域に立体編物20の張力を機能させるには、少なくとも、図1のA領域において、各座骨結節対応部位よりも外側にそれぞれ1カ所ずつA領域の長さ分(98mm)固着するか、あるいは、少なくとも、図1のC領域の範囲を全て固着することが必要である。立体編物20が固着されたいない場合には、立体編物20に荷重がかかっても、立体編物20はパッド10の沈み込み変位に伴ってほぼ同様に変位するのみである。従って、その場合には、立体編物20自体の有する荷重−たわみ特性よりも、パッド10自体の荷重−たわみ特性が優位のままである。これに対し、上記のようにして固着することにより、立体編物20のC領域に荷重が付与された場合には、立体編物20は、パッド10に接合されたまま固着面の位置がずれないため、立体編物20を構成する連結糸の倒れないしは座屈特性、それらに伴う連結糸の復元力、及び連結糸やグランド糸の糸間摩擦等による張力が機能し、C領域における面剛性が高まる。すなわち、立体編物20自体の荷重−たわみ特性がパッド10自体の荷重−たわみ特性よりも優位となって現れる。
【0024】
但し、座骨結節の位置、各座骨結節間の間隔には個人差があり、また、着座姿勢によっても座骨結節対応部位の位置が変化することから、C領域よりも広い範囲において立体編物20の張力が機能するように設けることが好ましい。本実施形態では、立体編物20の各側縁部の全長に相当する部分と、前縁部及び後縁部のほぼ全長に相当する部分とを、それぞれ所定の幅でパッド10に固着している。図1において、パッド10の表面に表した黒色の帯状部分D〜Gが固着部位に相当する。好ましい固着部位は、図1に示した帯状部分D〜Gのほか、図2に示したように、帯状部分D,E、すなわち、立体編物20の側縁部の全長に相当する部分のみを固着部位とすることが挙げられる。また、立体編物20の全面をパッド10に固着することも可能である。
【0025】
少なくともC領域において立体編物20の張力を機能させたのは、上記したように、立体編物20の荷重−たわみ特性が、直径98mmの加圧板により加圧した場合に、直径30mm、直径200mmの加圧板により加圧した際には見られないウレタンフォームと異なる略線形の特性を示すからである。直径98mmというのは、体圧分布において各座骨結節を中心として50mmHg以上の圧力を示す範囲であり、ちょうど日本人成人の片側臀部を1つの質量体とみなした場合の、クッション特性に影響を与える有効面積と考えられ、少なくともかかる範囲において立体編物20の張力が機能すれば、その略線形の特性により当該範囲の面剛性が高くなる。A領域を、横方向仮想線Pを基準として前後にそれぞれ49mm、合わせて98mmの範囲と規定したのは、上記直径98mmの加圧板の直径に一致させたものであり、B領域を、一対の座骨結節対応部位の中間を通過する縦方向仮想線Qを基準として左右にそれぞれ99mm、合わせて198mmの範囲と規定したのは、一対の座骨結節間の間隔が、日本人成人の男性の平均で100mm(因みに欧米女性は平均で120mm)であるため、これに直径98mmの加圧板の直径を加えた長さとしたものである。これにより、A領域とB領域とが重なるC領域は、体圧分布において各座骨結節を中心として50mmHg以上の圧力を示す範囲をカバーすることになる。
【0026】
立体編物20は、着座時に張力が作用するようにパッド10に固着され、C領域における面剛性を高めることができるものであれば、表1に例示したものを含めその材質、厚み等は限定されるものではないが、直径30mm及び直径200mmの加圧板で加圧した際にはウレタンフォームと同様の非線形の荷重−たわみ特性を示す一方で、直径98mmの加圧板で加圧した際に現れる略線形の荷重−たわみ特性がパッド10の非線形の荷重−たわみ特性より優位に作用することが必要であり、そのためには、直径98mmの加圧板で、床面において厚み方向に加圧した際のバネ定数が、変位範囲の平均値で、パッド10の非線形の荷重−たわみ特性から求められるバネ定数よりも高いことが必要であり、さらには、15N/mm以上100N/mm以下であることが好ましい。
【0027】
立体編物20を利用してパッド10に面剛性を付与する手段としては、パッド10に立体編物20を固着することが好ましく、その手段としては、例えば、接着手段、縫製手段、溶着手段、両面テープによる固着手段、又は面ファスナーによる固着手段のいずれか一つの手段、あるいは、これらを適宜に組み合わせた手段を挙げることができる。また、面剛性をさらに高める手段として、立体編物20の端縁の剛性を上げる手段、例えば、該端縁を振動溶着したり、端縁にワイヤを挿入する手段などを併用することもできる。但し、立体編物20は、面ファスナーの雄面に直接接合するという特性を有する。従って、面ファスナーの雄面をパッド10の表面の固着部位に配設すれば、面ファスナーの雌面を用いることなく、きわめて簡易に固着することができる。この場合、パッド10を発泡成形する際に、その表面に面ファスナーの雄面が一体成形されるような型を用いることもできる。また、型の所定位置に立体編物20を配置して、パッド10を発泡成形することにより、パッド10の成形時に立体編物20を一体化する手段を採用することもできる。
【0028】
表皮30は、立体編物20を被覆するように配設され、皮革、ファブリックなど、種々のものを用いることができる。また、ワディングを備えたものを用いることもできる。さらに、別途の表皮を用いずに、立体編物20がそのまま表皮を兼用する構成としてもよい。なお、表皮30の裏面の少なくとも一部を、立体編物20に固定することもできる。この場合、上記のように、立体編物20は面ファスナーの雄面に直接固着するため、図3(a)に示したように、表皮30の裏面に面ファスナー31の雄面を縫製、接着などにより設けておけば、立体編物20に容易に固定できる。なお、立体編物20は、図3(b)に示したように、そのまま単独で用い、表皮を兼用するものであってもよいし、図3(c)に示したように、表皮30と立体編物20とを予め固着して一体化しておき、その一体化したものをパッド10に面ファスナー等を介して固定する構成とすることもできる。
【0029】
本実施形態によれば、立体編物20をウレタンフォームを含んで形成されたパッド10に、少なくとも所定の範囲でその張力が機能するように支持させることで、立体編物20の特性により、パッド10に表皮30を被覆しただけの構造と比較して、振動伝達特性が向上する。
以下、試験例に基づき説明する。
【0030】
(荷重−たわみ特性)
図1に示した構造の座部用クッション材1を備えたシートに直径30mm、直径98mmの加圧板により、50mm/minの速度で100Nまで加圧し、荷重−たわみ特性を測定した(試験例1)。また、立体編物20をパッド10に固着していない座部用クッション材(比較例1)、立体編物20が積層されておらず、パッド10を表皮30で直接被覆した座部用クッション材(比較例2)、さらに、パッド10のみで表皮30による被覆を行っていないもの(比較例3)についても荷重−たわみ特性を測定し、試験例1と比較した。結果を図4及び図5に示す。図4は、直径30mmの加圧板で加圧した場合、図5は、直径98mmの加圧板で加圧した場合をそれぞれ示す。
【0031】
試験例1及び比較例1で使用した立体編物20は、表1の品番49076Dであり、その単体の荷重−たわみ特性は、図12〜図14に示した通りである。また、試験例1、比較例1〜3で使用したパッド10は、いずれも、平均厚さ30mmの低反発ウレタン(スラブ材)である。また、試験例1,比較例1〜2で使用した表皮30はファブリックである。
【0032】
図4から、直径30mmの加圧板で加圧した場合は、試験例1、比較例1〜3のいずれも非線形でバネ定数の小さな値を示している。直径30mmというのは、着座者の突出している尾骨や座骨結節に相当する部分がクッション材に当接する場合に有効に作用する大きさであり、この荷重−たわみ特性のバネ定数が、立体編物20を積層した試験例1及び比較例1のいずれも、立体編物を有しない比較例2,3と大差なく、骨突出部が接触した際にはやわらかなバネ作用、減衰作用により容易にたわみ、当たり感を軽減する。
一方、直径98mmの加圧板で加圧した場合は、図5に示したように、立体編物20を積層した試験例1及び比較例1のものは、比較例2,3よりも線形性が高くなっている。従って、負荷面積が直径98mmの場合には、立体編物20の有する略線形の荷重−たわみ特性(図13参照)の影響が強くなることがわかる。但し、試験例1と比較例1とを比較すると、比較例1の場合にはヒステリシスロスが大きく、パッド10の荷重−たわみ特性の影響が、試験例1より大きく残っており、直径98mmの負荷面積における、立体編物20の有する略線形の荷重−たわみ特性を生かすためには、立体編物20をパッド10に固着する必要があることがわかる。
【0033】
(重りを使用しての振動伝達特性の試験)
図1に示した構造の座部用クッション材1を備えたシートに直径98mm、重さ6.7kgの重りを置き、片側振幅0.25mm(ピーク間振幅0.5mm)で振動実験を行った。
【0034】
座部用クッション材1で使用した立体編物20は、表1の品番49076Dであり、その単体の荷重−たわみ特性は、図12〜図14に示した通りである。
パッド10としては、平均厚さ100mmの高弾性ウレタン、平均厚さ30mmの低反発ウレタン(スラブ材)、平均厚さ30mmの粘弾性ウレタンを用い、各パッド10の表面に上記立体編物20の両側縁部、前縁部及び後縁部を面ファスナーを用いて固着し、ファブリックからなる表皮30により被覆した。なお、高弾性ウレタンに立体編物20を固着したものを試験例11、低反発ウレタンに立体編物20を固着したものを試験例12、粘弾性ウレタンに立体編物20を固着したものを試験例13とする。
【0035】
また、比較のため、立体編物20を固着せずに、パッド10上に単に積層した場合、立体編物20を積層せずにパッド10に直接表皮30を被覆した場合についても振動実験を行った。高弾性ウレタンに立体編物20を固着せずに積層したものを比較例11、低反発ウレタンに立体編物20を固着せずに積層したものを比較例12、粘弾性ウレタンに立体編物20を固着せずに積層したものを比較例13とし、また、立体編物20を用いずに、高弾性ウレタンから構成したものを比較例14、低反発ウレタンから構成したものを比較例15、粘弾性ウレタンから構成したものを比較例16とする。
結果を図6〜図9に示す。
【0036】
図6から明らかなように、立体編物20を積層した構造である試験例11〜13及び比較例11〜13のものは、立体編物20を積層しない比較例14〜16と比較して、共振峰が大幅に下がり、特に、10Hz以上の高周波領域においては振動伝達率が大幅に低減している。
【0037】
試験例11と比較例11とを比較すると、図7に示したように、共振峰は試験例11が比較例11よりも下がっているが、10Hz以上の高周波域では、比較例11より試験例11,12の方が若干高くなっている。振動伝達特性の改善という点では、共振峰が低下するだけでなく、10Hz以上の高周波域においても振動伝達率は低下することが理想的である。しかしながら、高弾性ウレタンはバネ感が強いため、立体編物20を固着させることにより、共振峰を低下させ、減衰性を向上させることが着座フィーリングの向上のためには望ましい。従って、立体編物20を固着した構成は、高弾性ウレタンの振動伝達特性をこのような望ましい着座フィーリングを達成できるように改善している。
【0038】
また、試験例12と比較例12とを比較した場合は、図8に示したように、共振峰が比較例12より試験例12の方が下がっているだけでなく、10Hz以上の高周波域においても、試験例12の振動伝達率が急激に低下して、11Hz以上になると比較例12より下回り、立体編物20を固着させた試験例12の方が、ほぼ理想的な振動伝達特性を示す。
【0039】
一方、図9より、試験例13と比較例13とを比較した場合には、10Hz以上の高周波域では、試験例13の方が振動伝達率は低くなっているが、図7と逆に、共振峰は試験例13の方が比較例13よりも若干高くなっている。粘弾性ウレタンの場合には、バネ感の不足が着座フィーリングの低下をもたらしていることから、立体編物20を固着して面剛性を高めることによって、このように共振峰を若干高めに誘導することが望ましい。
【0040】
(被験者を着座させての振動伝達特性の試験)
試験例12と同様の、低反発ウレタンに立体編物20を固着した座部用クッション材1、比較例15と同様の、低反発ウレタンを備え、立体編物20が積層されていない座部用クッション材に、それぞれ被験者を着座させ、片側振幅0.25mm(ピーク間振幅0.5mm)で振動実験を行った。前者を試験例21、後者を比較例21とする。結果を図10に示す。なお、被験者は、体重95kgの日本人男性である。
図10から明らかなように、試験例21では共振峰が比較例21より低くなっていると共に、10Hz以上の高周波領域における振動伝達率が低減していることがわかる。
【0041】
また、同じ被験者を同じシートに着座させ、片側振幅1mm(ピーク間振幅2mm)に設定した振動実験も行った。結果を図11に示す。試験例12と同様の、低反発ウレタンに立体編物20を固着した座部用クッション材1に着座した場合が試験例22であり、比較例15と同様の低反発ウレタンを備え、立体編物20が積層されていない座部用クッション材に着座した場合が比較例22である。この実験においても、試験例22は比較例22より共振峰が低減し、10Hz以上の高周波領域における振動伝達率が低減している。
【0042】
図15〜図20は、上記した特徴を備えた座部用クッション材を有するシート100の具体的構造例を示すものである。図16に示したように、座部用クッション材110は、クッションフレーム120に金属バネ121を介して支持されたベースネット材(面状支持材)111、該ベースネット材111の上面に積層されるウレタンフォーム112及び該ウレタンフォーム112の上面に積層される立体編物113を備えている。ベースネット材111としては、二次元ネット材や立体編物等を用いることができる。ウレタンフォーム112は、高弾性ウレタン、低反発ウレタン、粘弾性ウレタン等のいずれであってもよく、高弾性ウレタンを用いた場合や立体編物113との固着面積を広げた場合には、バネ感の強い構造とすることができ、低反発ウレタンや粘弾性ウレタンを用いた場合、あるいは立体編物113との固着面積を小さくした場合には減衰性の強い構造とすることができる。
【0043】
立体編物113は、そのまま単独で用い、表皮を兼用するものであってもよいし(図3(b)参照)、立体編物113の表面を表皮で被覆して用いてもよいし、表皮との間にワディングを介装した構成としてもよいが、いずれにしても、ウレタンフォーム112における、上記した少なくとも座骨結節対応部位を含む領域の面剛性が増すように固着されて配設される。図19及び図20の断面図では、サイドフレーム122をサイド用ウレタンフォーム130を介して覆うトリム131に立体編物113の両側部が連結されているが、これは意匠性を考慮してトリム131に連結しているものであり、立体編物113をサイドフレーム122に張って支持させるものではなく、上記実施形態で説明したように、立体編物113はあくまでウレタンフォーム112に固着されて支持される。
【0044】
図19は、立体編物113の側縁部を面ファスナー114を介してウレタンフォーム112の表面に固着する態様を示し、図20は、同じく立体編物113の側縁部を面ファスナー114によってウレタンフォーム112の表面に固着すると共に、立体編物113の側縁部から下方に引き出した連結布115を介して、ベースネット材111の側縁部にも面ファスナー116を介して固着させた態様を示している。なお、固着手段は、上記と同様、面ファスナーを用いる手段のほか、接着、両面テープを用いる手段等によってもよいことはもちろんである。このほか、固着部位は上記実施形態で説明したように、少なくとも座骨結節対応部位を含む領域の面剛性を増すことができる限り、種々の部位に設定できる。なお、ウレタンフォーム112への実質的な固着面積が大きくなれば、立体編物113とウレタンフォーム112との境界面の面剛性が高くなり、負荷質量の変動により発生する力が上下方向に逃げずに平面方向で作用し、高い張力を平面上に発生させる。一方、固着面積が小さくなれば立体編物113にかかる力が上下方向、平面方向に作用し、立体編物に伸びを生じさせ、減衰作用をもたらす。従って、固着面積を調整することにより、立体編物113の張力は調整可能となる。固着面積を増減させる手段としては、面ファスナーの幅、両面テープの幅等を変化させることにより達成できることはもちろんのこと、面ファスナーや両面テープ等により周縁部(例えば、図1の黒色の帯状部分D〜G)を固着すると共に、接着により座骨結節対応部位であるC領域をさらに固着する手段を併用することもできる。この場合、周縁部を面ファスナー等で固着すると共にC領域も固着すれば、弾性機能がさらに向上し、C領域を固着せずに面ファスナー等で周縁部のみを固着した場合には、C領域を固着した場合と比較して減衰機能が向上する。また、立体編物113として、特性の異なるものを使用することによっても張力を調整できる。すなわち、立体編物113とウレタンフォーム112との固着面積、立体編物113の種類などにより、バネ感を重視した構造、減衰性を重視した構造とすることができる。また、上記したウレタンフォーム112の種類の選択等との組み合わせにより、様々な特性を有するシートを容易に製作できる。
【0045】
また、上記した説明ではいずれも座部用クッション材の座骨結節対応部位における面剛性を高める構造を説明しているが、図17に示したように、背部用クッション材150における腰椎対応部位にウレタンフォーム(パッド)151を配設し、このウレタンフォーム151に立体編物152の適宜部位(例えば、側縁部)を固着する構造とすることにより、少なくとも腰椎対応部位において、立体編物152の張力が機能する構成とすることもできる。腰椎対応部位は、背部用クッション材150において大きな体圧がかかる部位であるため、上記した座骨結節対応部位の面剛性を高める場合と同様に、振動吸収特性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1は、本発明の一の実施形態に係る座部用クッション材を示す分解斜視図である。
【図2】図2は、立体編物とパッドとの固着部位を図1と異ならせた態様を示す分解斜視図である。
【図3】図3(a)〜(c)は、表皮又は立体編物を固着する各種態様を示す断面図である。
【図4】図4は、直径30mmの加圧板を用いた試験例1、比較例1〜3の荷重−たわみ特性を示す図である。
【図5】図5は、直径98mmの加圧板を用いた試験例1、比較例1〜3の荷重−たわみ特性を示す図である。
【図6】図6は、試験例11〜13、比較例11〜16の振動伝達率を示す図である。
【図7】図7は、試験例11及び比較例11の振動伝達率を示す図である。
【図8】図8は、試験例12及び比較例12の振動伝達率を示す図である。
【図9】図9は、試験例13及び比較例13の振動伝達率を示す図である。
【図10】図10は、試験例21及び比較例21の振動伝達率を示す図である。
【図11】図11は、試験例22及び比較例22の振動伝達率を示す図である。
【図12】図12は、直径30mmの加圧板を用いて加圧した際の立体編物とウレタンフォームとの荷重−たわみ特性の違いを示す図である。
【図13】図13は、直径98mmの加圧板を用いて加圧した際の立体編物とウレタンフォームとの荷重−たわみ特性の違いを示す図である。
【図14】図14は、直径200mmの加圧板を用いて加圧した際の立体編物とウレタンフォームとの荷重−たわみ特性の違いを示す図である。
【図15】図15は、上記実施形態に係る座部用クッション材を有するシートの具体的構造例を示す外観斜視図である。
【図16】図16は、図15に示したシートの一部断面斜視図である。
【図17】図17は、図15のA−A線矢視図である。
【図18】図18は、図15のB−B線矢視図である。
【図19】図19(a)は、図15のC−C線矢視図の一例であり、図19(b)は、図15のD−D線矢視図の一例である。
【図20】図20(a)は、図15のC−C線矢視図の他の例であり、図20(b)は、図15のD−D線矢視図の他の例である。
【符号の説明】
【0047】
1 座部用クッション材
10 パッド
20 立体編物
30 表皮
100 シート
110 座部用クッション材
112 ウレタンフォーム(パッド)
113 立体編物
150 背部用クッション材
151 ウレタンフォーム(パッド)
152 立体編物
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、航空機、列車、船舶、フォークリフト、自動車などの輸送機器用の座席に用いられる座部用クッション材、背部用クッション材及びシートに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、立体編物(三次元ネット材)からなるクッション材をクッションフレームに低い張力で張設したシート構造が開示されている。立体編物をこのようにクッションフレームに張って支持することにより、サイドフレーム間に設けた金属支持板やシートクッションスプリング上に設置して用いられる所定の厚みを備えたウレタンフォームを使用した通常のシートと比較して薄型で軽量なシートを提供できる。
【0003】
また、特許文献2の図28には、クッションフレームに張って支持される立体編物と、該立体編物の下方に配設され、着座時のストローク感やバネ感を高めるため、ワイヤを簾状ないしは網状に形成したプルマフレックスなどを金属バネを介してクッションフレームに弾性的に張設した面状支持部材と、この弾性的に支持された面状支持部材上に積層される粘弾性ウレタンとを備えたシート構造が開示されている。
【特許文献1】特開2002−177099号公報
【特許文献2】特開2004−188164号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び特許文献2に開示されたものは、いずれも立体編物をシートフレームに張って設けた構造を基本としており、従来一般の自動車等に使用されている、所定の厚みを備えたウレタンフォームをシートクッションスプリング等の上に載置したり、あるいはシートフレームに直接固定したフルフォーム(オールウレタン)構造のものとは、全く異なる。すなわち、前者は、シートフレームに対して、立体編物をシートフレーム間に張ることにより、着座時において、その張力を作用させて、振動吸収特性などのクッション特性を発揮させるものであるのに対し、後者は、シートクッションスプリングやシートフレームにウレタンフォームを置き、ウレタンフォームの有する弾性を利用して所定のクッション特性を発揮させている。なお、特許文献2に開示のものでは、粘弾性ウレタンを用いているが、脚部への反力の低減のために立体編物の下に挿入した補助的な役割を果たすものに過ぎず、振動吸収機能といった座部用クッション材に求められる主たる機能はあくまでシートフレームに張設された立体編物が担っている点で特許文献1に開示のものと変わらない。
【0005】
一方、本出願人が提案している上記特許文献2の図21には、クッションフレームに立体編物を張設したクッション材と、S字バネ上に厚さ100mmのウレタンフォームを配置したクッション材との振動伝達率の比較が示されており、立体編物を張設してなるクッション材の振動伝達率がウレタンフォームを用いたものよりも低周波域から高周波域に至るまで低くなっている。従って、立体編物をクッションフレームに張設しなくても、立体編物の張力を作用させることができる構造とすれば、従来一般に使用されているウレタンフォームを用いたシートにおいて、ウレタンフォーム自体による振動吸収機能に加えて、立体編物の張力の作用による振動吸収機能を重畳させることができると考えられる。その結果、ウレタンフォームの振動伝達特性を、より好ましい特性、例えば、高弾性ウレタンや低反発ウレタンであれば、共振峰が下がり、粘弾性ウレタンであれば、バネ感を補うため共振峰が若干上がるように改善できることが期待される。
【0006】
そこで、本発明は、立体編物をクッションフレームに張設することなく使用する構造でありながら、ウレタンフォームがシートクッションスプリング(S字バネ、コイルスプリングによって支持された面状支持部材など)上に配置される構造であるか、あるいはオールウレタン構造であるか否かを問わず、ウレタンフォームを含むパッドを備えた座部用クッション材の振動伝達特性を改善できる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記課題を解決するため種々検討した結果、立体編物、高弾性ウレタン、低反発ウレタン(スラブ材)の各荷重−たわみ特性の違いに注目した。図12〜図14は、直径30mm、直径98mm、直径200mmの加圧板により、50mm/minの速度で100Nまで、住江織物(株)製の2つの立体編物、品番49076D、49013D及び低反発ウレタン(スラブ材)を床面に置き、加圧した際の荷重−たわみ特性である。この結果から、直径30mm及び直径200mmの加圧板により加圧した場合には、荷重値に差はあるものの、2つの立体編物及び低反発ウレタン共に、非線形に変化する傾向を有しているのに対し、直径98mmの加圧板により加圧した場合のみ、2つの立体編物と低反発ウレタンとの間で全く異なる変化傾向を示す。すなわち、2つの立体編物は、直径30mm及び直径200mmの加圧板で加圧した場合と異なり、いずれもほぼ線形に変化するのに対し、低反発ウレタンの場合には、直径30mm及び直径200mmの加圧板で加圧した場合と同様に非線形に変化している。このことから、上記特許文献2に示されているように、立体編物の振動吸収特性がウレタンフォームより優れている要因として、立体編物が備える直径98mmの加圧板で加圧した際の略線形の荷重−たわみ特性が振動吸収機能の改善に大きく寄与しているものと推定した。
【0008】
直径98mmというのは、体重60kg(日本人成人の平均体重)の人が着座した際の体圧分布において、各座骨結節を中心として50mmHg以上の圧力がかかる大きさである。従って、ウレタンフォームを含むパッドを用いた場合であっても、少なくともその範囲に相当する部分のみに、立体編物の張力を作用させれば、立体編物の略線形の荷重−たわみ特性が機能し、立体編物をクッションフレームに張設しなくても、ウレタンフォームを含むパッドのみを用いた場合より、振動吸収特性を改善できると考え本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、請求項1記載の本発明では、座部に配設される座部用クッション材であって、
ウレタンフォームを含んで形成されるパッドと、
前記パッドの表面に積層され、前記パッドによって支持される立体編物とを有してなり、
少なくとも、一対の座骨結節対応部位を結んだ横方向仮想線を基準として前後にそれぞれ49mmの範囲と、一対の座骨結節対応部位の中間を通過する縦方向仮想線を基準として左右にそれぞれ99mmの範囲とが重なる範囲に、着座時において前記立体編物の張力が機能するよう、前記立体編物を前記パッドに固着したことを特徴とする座部用クッション材を提供する。
請求項2記載の本発明では、前記立体編物における、少なくとも、一対の座骨結節対応部位を結んだ横方向仮想線を基準として前後にそれぞれ49mmの範囲と、一対の座骨結節対応部位の中間を通過する縦方向仮想線を基準として左右にそれぞれ99mmの範囲とが重なる範囲を、前記パッドに固着したことを特徴とする請求項1記載の座部用クッション材を提供する。
請求項3記載の本発明では、前記立体編物における、少なくとも、一対の座骨結節対応部位を結んだ横方向仮想線を基準として前後にそれぞれ49mmの範囲の長さ分であって、一対の座骨結節対応部位の中間を通過する縦方向仮想線を基準として左右にそれぞれ99mmの範囲よりも外側に位置する部分を、それぞれ少なくとも1カ所ずつ前記パッドに固着したことを特徴とする請求項1記載の座部用クッション材を提供する。
請求項4記載の本発明では、前記立体編物における一対の側縁部を前後方向全長に亘って前記パッドに固着したことを特徴とする請求項3記載の座部用クッション材を提供する。
請求項5記載の本発明では、さらに、前記立体編物における前縁部及び後縁部の少なくとも一部を前記パッドに固着したことを特徴とする請求項4記載の座部用クッション材を提供する。
請求項6記載の本発明では、接着手段、縫製手段、溶着手段、両面テープによる固着手段、又は面ファスナーによる固着手段のいずれか少なくとも一つの手段により、前記立体編物が前記パッドに固着されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1に記載の座部用クッション材を提供する。
請求項7記載の本発明では、前記立体編物は、直径98mmの加圧板で加圧した際の荷重−たわみ特性が略線形であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1に記載の座部用クッション材を提供する。
請求項8記載の本発明では、輸送機器用シートの座部に用いられることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1に記載の座部用クッション材を提供する。
請求項9記載の本発明では、背部に配設される背部用クッション材であって、
ウレタンフォームを含んで形成されるパッドと、
前記パッドの表面に積層され、前記パッドによって支持される立体編物とを有してなり、
少なくとも腰椎対応部位において、前記立体編物の張力が機能するよう、前記立体編物を前記パッドに固着したことを特徴とする背部用クッション材を提供する。
請求項10記載の本発明では、前記立体編物は、直径98mmの加圧板で加圧した際の荷重−たわみ特性が略線形であることを特徴とする請求項9記載の背部用クッション材を提供する。
請求項11記載の本発明では、座部に、請求項1〜7のいずれか1に記載の座部用クッション材が設けられていることを特徴とするシートを提供する。
請求項12記載の本発明では、背部に、請求項9又は10記載の背部用クッション材が設けられていることを特徴とするシートを提供する。
請求項13記載の本発明では、輸送機器用であることを特徴とする請求項11又は12記載のシートを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、座部用クッション材が、ウレタンフォームを含んで形成されるパッドの表面に積層され、このパッドによって支持される立体編物を有してなる。そして、少なくとも、一対の座骨結節対応部位を結んだ横方向仮想線を基準として前後にそれぞれ49mmの範囲と、一対の座骨結節対応部位の中間を通過する縦方向仮想線を基準として左右にそれぞれ99mmの範囲とが重なる範囲に、着座時において上記立体編物の張力が機能するよう、該立体編物をパッドに固着した構造である。
【0011】
従って、本発明では、クッションフレームに立体編物を張設していないにも拘わらず、着座時において、少なくとも、大きな体圧のかかる座骨結節対応付近で、立体編物の有する直径98mmの加圧板で加圧した際の略線形の荷重−たわみ特性が機能するように該立体編物がパッドに固着されているため、振動吸収特性が、ウレタンフォームを含むパッドを用いただけの座部用クッション材と比較して改善される。また、背部用クッション材においても、腰椎対応部位における面剛性が高まるように立体編物をパッドに固着することにより、上記座骨結節対応部位の面剛性を高める場合と同様に、振動吸収特性の改善を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面に示した本発明の実施形態に基づき、本発明をさらに詳細に説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る座部用クッション材1を示す図である。この座部用クッション材1は、ウレタンフォームからなるパッド10、立体編物20及び表皮30を有して構成される。
【0013】
パッド10は、ウレタンフォームを含んで構成される従来公知のものであり、高弾性ウレタン、低反発ウレタン(スラブ材)、粘弾性ウレタン、あるいは、これらを適宜に複合させた構造のものを用いることができる。パッド10は、S字バネ等のシートクッションスプリングの上に載置したものであってもよいし、クッションフレームに直接固定したフルフォーム(オールウレタン)構造のものであってもよい。
【0014】
立体編物20は、例えば、特開2002−331603号公報に開示されているように、互いに離間して配置された一対のグランド編地と、該一対のグランド編地間を往復して両者を結合する多数の連結糸とを有する立体的な三次元構造となった編地である。
【0015】
一方のグランド編地は、例えば、単繊維を撚った糸から、ウェール方向及びコース方向のいずれの方向にも連続したフラットな編地組織(細目)によって形成され、他方のグランド編地は、例えば、短繊維を撚った糸から、ハニカム状(六角形)のメッシュを有する編み目構造に形成されている。もちろん、この編地組織は任意であり、細目組織やハニカム状以外の編地組織を採用することもできるし、両者とも細目組織を採用するなど、その組み合わせも任意である。連結糸は、一方のグランド編地と他方のグランド編地とが所定の間隔を保持するように、この一対のグランド編地間に編み込んだもので、立体編物20に所定の剛性を付与する。
【0016】
グランド編地を形成するグランド糸の太さ等は、特に限定されるものではなく、立体編地に必要な腰の強さを具備させることができると共に、編成作業が困難にならない範囲のものが選択される。また、グランド糸としてはモノフィラメント糸を用いることも可能であるが、風合い及び表面感触の柔らかさ等の観点から、マルチフィラメント糸やスパン糸を用いることが好ましい。連結糸としては、例えば、モノフィラメント糸を用いることが好ましく、太さ167〜1100デシテックスのものが好適である。マルチフィラメント糸では復元力の良好なクッション性を付与できず、また、太さが上記範囲を下回ると腰の強さが得られにくくなるからである。
【0017】
グランド糸又は連結糸の素材は、特に限定されるものではなく、例えば、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、レーヨン等の合成繊維や再生繊維、ウール、絹、綿等の天然繊維が挙げられる。上記素材は単独で用いてもよいし、これらを任意に併用することもできる。好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などに代表される熱可塑性ポリエステル樹脂類、ナイロン6、ナイロン66などに代表されるポリアミド樹脂類、ポリエチレン、ポリプロピレンなどに代表されるポリオレフィン樹脂類、あるいはこれらの樹脂を2種類以上混合した樹脂である。なお、ポリエステル系樹脂はリサイクル性に優れており好適である。また、グランド糸又は連結糸の糸形状も限定されるものではなく、丸断面糸でも異形断面糸等でもよい。
【0018】
連結糸は、表層と裏層のグランド編地中にループ状の編み目を形成してもよく、挿入組織で表層と裏層のグランド編地に引っかけた構造でもよいが、少なくとも2本の連結糸が表層と裏層の編地を互いに逆方向に斜めに傾斜して、クロス状(X状)やトラス状に連結することが、立体編地の形態安定性を向上させる上で好ましい。
【0019】
なお、立体編物20は、相対する2列の針床を有する編機で編成することができる。このような編機として、ダブルラッセル編機、ダブル丸編機、Vベッドを有する横編機等がある。寸法安定性のよい立体編物を得る上で、ダブルラッセル編機を用いるのが好ましい。
【0020】
本実施形態において使用可能な立体編物20の材料の例及びそれらの物性値をいくつか示す。
【0021】
(表1)
(1)製品番号:49013D(住江織物(株)製)
材質:
表側のグランド編地・・・ポリエチレンテレフタレート繊維仮撚加工糸
裏側のグランド編地・・・ポリエチレンテレフタレート繊維仮撚加工糸
連結糸・・・・・・・・・ポリトリメチレンテレフタレートモノフィラメント
目付:981g/m2
厚さ:10.66mm
引張強さ:縦・・・1531N/50mm、横・・・1367N/50mm
伸び:縦・・・68%、横・・・107%
定荷重伸率(8cm幅、10kg、10分):
縦・・・15.5%、横・・・38.5%
残留歪み率(8cm幅、10kg、10分):
縦・・・0.9%、横・・・1.1%
縫目強さ:縦・・・724N、横・・・869N
縫目疲労:縦・・・0.9mm、横・・・1.1mm
(2)製品番号:49076D(住江織物(株)製)
材質:
表側のグランド編地・・・ポリエチレンテレフタレート繊維仮撚加工糸
裏側のグランド編地・・・ポリエチレンテレフタレート繊維仮撚加工糸とポリトリメチレンテレフタレートモノフィラメントとの組み合わせ
連結糸・・・・・・・・・ポリトリメチレンテレフタレートモノフィラメント
定荷重伸率(8cm幅、10kg、10分):
縦・・・14.0%、横・・・14.6%
縫目強さ:縦・・・746N、横・・・537N
縫目疲労:縦・・・0.3mm、横・・・0.5mm
【0022】
上記した立体編物20は、パッド10の表面に固着され、該パッド10によって支持される。固着部位は任意であるが、少なくとも、一対の座骨結節対応部位を結んだ横方向仮想線Pを基準として前後にそれぞれ49mmの範囲(図1のA領域)と、一対の座骨結節対応部位の中間を通過する縦方向仮想線Qを基準として左右にそれぞれ99mmの範囲(図1のB領域)とが重なる範囲(図1のC領域)に、着座時において立体編物20の張力が機能するように固着される。
【0023】
図1のC領域に立体編物20の張力を機能させるには、少なくとも、図1のA領域において、各座骨結節対応部位よりも外側にそれぞれ1カ所ずつA領域の長さ分(98mm)固着するか、あるいは、少なくとも、図1のC領域の範囲を全て固着することが必要である。立体編物20が固着されたいない場合には、立体編物20に荷重がかかっても、立体編物20はパッド10の沈み込み変位に伴ってほぼ同様に変位するのみである。従って、その場合には、立体編物20自体の有する荷重−たわみ特性よりも、パッド10自体の荷重−たわみ特性が優位のままである。これに対し、上記のようにして固着することにより、立体編物20のC領域に荷重が付与された場合には、立体編物20は、パッド10に接合されたまま固着面の位置がずれないため、立体編物20を構成する連結糸の倒れないしは座屈特性、それらに伴う連結糸の復元力、及び連結糸やグランド糸の糸間摩擦等による張力が機能し、C領域における面剛性が高まる。すなわち、立体編物20自体の荷重−たわみ特性がパッド10自体の荷重−たわみ特性よりも優位となって現れる。
【0024】
但し、座骨結節の位置、各座骨結節間の間隔には個人差があり、また、着座姿勢によっても座骨結節対応部位の位置が変化することから、C領域よりも広い範囲において立体編物20の張力が機能するように設けることが好ましい。本実施形態では、立体編物20の各側縁部の全長に相当する部分と、前縁部及び後縁部のほぼ全長に相当する部分とを、それぞれ所定の幅でパッド10に固着している。図1において、パッド10の表面に表した黒色の帯状部分D〜Gが固着部位に相当する。好ましい固着部位は、図1に示した帯状部分D〜Gのほか、図2に示したように、帯状部分D,E、すなわち、立体編物20の側縁部の全長に相当する部分のみを固着部位とすることが挙げられる。また、立体編物20の全面をパッド10に固着することも可能である。
【0025】
少なくともC領域において立体編物20の張力を機能させたのは、上記したように、立体編物20の荷重−たわみ特性が、直径98mmの加圧板により加圧した場合に、直径30mm、直径200mmの加圧板により加圧した際には見られないウレタンフォームと異なる略線形の特性を示すからである。直径98mmというのは、体圧分布において各座骨結節を中心として50mmHg以上の圧力を示す範囲であり、ちょうど日本人成人の片側臀部を1つの質量体とみなした場合の、クッション特性に影響を与える有効面積と考えられ、少なくともかかる範囲において立体編物20の張力が機能すれば、その略線形の特性により当該範囲の面剛性が高くなる。A領域を、横方向仮想線Pを基準として前後にそれぞれ49mm、合わせて98mmの範囲と規定したのは、上記直径98mmの加圧板の直径に一致させたものであり、B領域を、一対の座骨結節対応部位の中間を通過する縦方向仮想線Qを基準として左右にそれぞれ99mm、合わせて198mmの範囲と規定したのは、一対の座骨結節間の間隔が、日本人成人の男性の平均で100mm(因みに欧米女性は平均で120mm)であるため、これに直径98mmの加圧板の直径を加えた長さとしたものである。これにより、A領域とB領域とが重なるC領域は、体圧分布において各座骨結節を中心として50mmHg以上の圧力を示す範囲をカバーすることになる。
【0026】
立体編物20は、着座時に張力が作用するようにパッド10に固着され、C領域における面剛性を高めることができるものであれば、表1に例示したものを含めその材質、厚み等は限定されるものではないが、直径30mm及び直径200mmの加圧板で加圧した際にはウレタンフォームと同様の非線形の荷重−たわみ特性を示す一方で、直径98mmの加圧板で加圧した際に現れる略線形の荷重−たわみ特性がパッド10の非線形の荷重−たわみ特性より優位に作用することが必要であり、そのためには、直径98mmの加圧板で、床面において厚み方向に加圧した際のバネ定数が、変位範囲の平均値で、パッド10の非線形の荷重−たわみ特性から求められるバネ定数よりも高いことが必要であり、さらには、15N/mm以上100N/mm以下であることが好ましい。
【0027】
立体編物20を利用してパッド10に面剛性を付与する手段としては、パッド10に立体編物20を固着することが好ましく、その手段としては、例えば、接着手段、縫製手段、溶着手段、両面テープによる固着手段、又は面ファスナーによる固着手段のいずれか一つの手段、あるいは、これらを適宜に組み合わせた手段を挙げることができる。また、面剛性をさらに高める手段として、立体編物20の端縁の剛性を上げる手段、例えば、該端縁を振動溶着したり、端縁にワイヤを挿入する手段などを併用することもできる。但し、立体編物20は、面ファスナーの雄面に直接接合するという特性を有する。従って、面ファスナーの雄面をパッド10の表面の固着部位に配設すれば、面ファスナーの雌面を用いることなく、きわめて簡易に固着することができる。この場合、パッド10を発泡成形する際に、その表面に面ファスナーの雄面が一体成形されるような型を用いることもできる。また、型の所定位置に立体編物20を配置して、パッド10を発泡成形することにより、パッド10の成形時に立体編物20を一体化する手段を採用することもできる。
【0028】
表皮30は、立体編物20を被覆するように配設され、皮革、ファブリックなど、種々のものを用いることができる。また、ワディングを備えたものを用いることもできる。さらに、別途の表皮を用いずに、立体編物20がそのまま表皮を兼用する構成としてもよい。なお、表皮30の裏面の少なくとも一部を、立体編物20に固定することもできる。この場合、上記のように、立体編物20は面ファスナーの雄面に直接固着するため、図3(a)に示したように、表皮30の裏面に面ファスナー31の雄面を縫製、接着などにより設けておけば、立体編物20に容易に固定できる。なお、立体編物20は、図3(b)に示したように、そのまま単独で用い、表皮を兼用するものであってもよいし、図3(c)に示したように、表皮30と立体編物20とを予め固着して一体化しておき、その一体化したものをパッド10に面ファスナー等を介して固定する構成とすることもできる。
【0029】
本実施形態によれば、立体編物20をウレタンフォームを含んで形成されたパッド10に、少なくとも所定の範囲でその張力が機能するように支持させることで、立体編物20の特性により、パッド10に表皮30を被覆しただけの構造と比較して、振動伝達特性が向上する。
以下、試験例に基づき説明する。
【0030】
(荷重−たわみ特性)
図1に示した構造の座部用クッション材1を備えたシートに直径30mm、直径98mmの加圧板により、50mm/minの速度で100Nまで加圧し、荷重−たわみ特性を測定した(試験例1)。また、立体編物20をパッド10に固着していない座部用クッション材(比較例1)、立体編物20が積層されておらず、パッド10を表皮30で直接被覆した座部用クッション材(比較例2)、さらに、パッド10のみで表皮30による被覆を行っていないもの(比較例3)についても荷重−たわみ特性を測定し、試験例1と比較した。結果を図4及び図5に示す。図4は、直径30mmの加圧板で加圧した場合、図5は、直径98mmの加圧板で加圧した場合をそれぞれ示す。
【0031】
試験例1及び比較例1で使用した立体編物20は、表1の品番49076Dであり、その単体の荷重−たわみ特性は、図12〜図14に示した通りである。また、試験例1、比較例1〜3で使用したパッド10は、いずれも、平均厚さ30mmの低反発ウレタン(スラブ材)である。また、試験例1,比較例1〜2で使用した表皮30はファブリックである。
【0032】
図4から、直径30mmの加圧板で加圧した場合は、試験例1、比較例1〜3のいずれも非線形でバネ定数の小さな値を示している。直径30mmというのは、着座者の突出している尾骨や座骨結節に相当する部分がクッション材に当接する場合に有効に作用する大きさであり、この荷重−たわみ特性のバネ定数が、立体編物20を積層した試験例1及び比較例1のいずれも、立体編物を有しない比較例2,3と大差なく、骨突出部が接触した際にはやわらかなバネ作用、減衰作用により容易にたわみ、当たり感を軽減する。
一方、直径98mmの加圧板で加圧した場合は、図5に示したように、立体編物20を積層した試験例1及び比較例1のものは、比較例2,3よりも線形性が高くなっている。従って、負荷面積が直径98mmの場合には、立体編物20の有する略線形の荷重−たわみ特性(図13参照)の影響が強くなることがわかる。但し、試験例1と比較例1とを比較すると、比較例1の場合にはヒステリシスロスが大きく、パッド10の荷重−たわみ特性の影響が、試験例1より大きく残っており、直径98mmの負荷面積における、立体編物20の有する略線形の荷重−たわみ特性を生かすためには、立体編物20をパッド10に固着する必要があることがわかる。
【0033】
(重りを使用しての振動伝達特性の試験)
図1に示した構造の座部用クッション材1を備えたシートに直径98mm、重さ6.7kgの重りを置き、片側振幅0.25mm(ピーク間振幅0.5mm)で振動実験を行った。
【0034】
座部用クッション材1で使用した立体編物20は、表1の品番49076Dであり、その単体の荷重−たわみ特性は、図12〜図14に示した通りである。
パッド10としては、平均厚さ100mmの高弾性ウレタン、平均厚さ30mmの低反発ウレタン(スラブ材)、平均厚さ30mmの粘弾性ウレタンを用い、各パッド10の表面に上記立体編物20の両側縁部、前縁部及び後縁部を面ファスナーを用いて固着し、ファブリックからなる表皮30により被覆した。なお、高弾性ウレタンに立体編物20を固着したものを試験例11、低反発ウレタンに立体編物20を固着したものを試験例12、粘弾性ウレタンに立体編物20を固着したものを試験例13とする。
【0035】
また、比較のため、立体編物20を固着せずに、パッド10上に単に積層した場合、立体編物20を積層せずにパッド10に直接表皮30を被覆した場合についても振動実験を行った。高弾性ウレタンに立体編物20を固着せずに積層したものを比較例11、低反発ウレタンに立体編物20を固着せずに積層したものを比較例12、粘弾性ウレタンに立体編物20を固着せずに積層したものを比較例13とし、また、立体編物20を用いずに、高弾性ウレタンから構成したものを比較例14、低反発ウレタンから構成したものを比較例15、粘弾性ウレタンから構成したものを比較例16とする。
結果を図6〜図9に示す。
【0036】
図6から明らかなように、立体編物20を積層した構造である試験例11〜13及び比較例11〜13のものは、立体編物20を積層しない比較例14〜16と比較して、共振峰が大幅に下がり、特に、10Hz以上の高周波領域においては振動伝達率が大幅に低減している。
【0037】
試験例11と比較例11とを比較すると、図7に示したように、共振峰は試験例11が比較例11よりも下がっているが、10Hz以上の高周波域では、比較例11より試験例11,12の方が若干高くなっている。振動伝達特性の改善という点では、共振峰が低下するだけでなく、10Hz以上の高周波域においても振動伝達率は低下することが理想的である。しかしながら、高弾性ウレタンはバネ感が強いため、立体編物20を固着させることにより、共振峰を低下させ、減衰性を向上させることが着座フィーリングの向上のためには望ましい。従って、立体編物20を固着した構成は、高弾性ウレタンの振動伝達特性をこのような望ましい着座フィーリングを達成できるように改善している。
【0038】
また、試験例12と比較例12とを比較した場合は、図8に示したように、共振峰が比較例12より試験例12の方が下がっているだけでなく、10Hz以上の高周波域においても、試験例12の振動伝達率が急激に低下して、11Hz以上になると比較例12より下回り、立体編物20を固着させた試験例12の方が、ほぼ理想的な振動伝達特性を示す。
【0039】
一方、図9より、試験例13と比較例13とを比較した場合には、10Hz以上の高周波域では、試験例13の方が振動伝達率は低くなっているが、図7と逆に、共振峰は試験例13の方が比較例13よりも若干高くなっている。粘弾性ウレタンの場合には、バネ感の不足が着座フィーリングの低下をもたらしていることから、立体編物20を固着して面剛性を高めることによって、このように共振峰を若干高めに誘導することが望ましい。
【0040】
(被験者を着座させての振動伝達特性の試験)
試験例12と同様の、低反発ウレタンに立体編物20を固着した座部用クッション材1、比較例15と同様の、低反発ウレタンを備え、立体編物20が積層されていない座部用クッション材に、それぞれ被験者を着座させ、片側振幅0.25mm(ピーク間振幅0.5mm)で振動実験を行った。前者を試験例21、後者を比較例21とする。結果を図10に示す。なお、被験者は、体重95kgの日本人男性である。
図10から明らかなように、試験例21では共振峰が比較例21より低くなっていると共に、10Hz以上の高周波領域における振動伝達率が低減していることがわかる。
【0041】
また、同じ被験者を同じシートに着座させ、片側振幅1mm(ピーク間振幅2mm)に設定した振動実験も行った。結果を図11に示す。試験例12と同様の、低反発ウレタンに立体編物20を固着した座部用クッション材1に着座した場合が試験例22であり、比較例15と同様の低反発ウレタンを備え、立体編物20が積層されていない座部用クッション材に着座した場合が比較例22である。この実験においても、試験例22は比較例22より共振峰が低減し、10Hz以上の高周波領域における振動伝達率が低減している。
【0042】
図15〜図20は、上記した特徴を備えた座部用クッション材を有するシート100の具体的構造例を示すものである。図16に示したように、座部用クッション材110は、クッションフレーム120に金属バネ121を介して支持されたベースネット材(面状支持材)111、該ベースネット材111の上面に積層されるウレタンフォーム112及び該ウレタンフォーム112の上面に積層される立体編物113を備えている。ベースネット材111としては、二次元ネット材や立体編物等を用いることができる。ウレタンフォーム112は、高弾性ウレタン、低反発ウレタン、粘弾性ウレタン等のいずれであってもよく、高弾性ウレタンを用いた場合や立体編物113との固着面積を広げた場合には、バネ感の強い構造とすることができ、低反発ウレタンや粘弾性ウレタンを用いた場合、あるいは立体編物113との固着面積を小さくした場合には減衰性の強い構造とすることができる。
【0043】
立体編物113は、そのまま単独で用い、表皮を兼用するものであってもよいし(図3(b)参照)、立体編物113の表面を表皮で被覆して用いてもよいし、表皮との間にワディングを介装した構成としてもよいが、いずれにしても、ウレタンフォーム112における、上記した少なくとも座骨結節対応部位を含む領域の面剛性が増すように固着されて配設される。図19及び図20の断面図では、サイドフレーム122をサイド用ウレタンフォーム130を介して覆うトリム131に立体編物113の両側部が連結されているが、これは意匠性を考慮してトリム131に連結しているものであり、立体編物113をサイドフレーム122に張って支持させるものではなく、上記実施形態で説明したように、立体編物113はあくまでウレタンフォーム112に固着されて支持される。
【0044】
図19は、立体編物113の側縁部を面ファスナー114を介してウレタンフォーム112の表面に固着する態様を示し、図20は、同じく立体編物113の側縁部を面ファスナー114によってウレタンフォーム112の表面に固着すると共に、立体編物113の側縁部から下方に引き出した連結布115を介して、ベースネット材111の側縁部にも面ファスナー116を介して固着させた態様を示している。なお、固着手段は、上記と同様、面ファスナーを用いる手段のほか、接着、両面テープを用いる手段等によってもよいことはもちろんである。このほか、固着部位は上記実施形態で説明したように、少なくとも座骨結節対応部位を含む領域の面剛性を増すことができる限り、種々の部位に設定できる。なお、ウレタンフォーム112への実質的な固着面積が大きくなれば、立体編物113とウレタンフォーム112との境界面の面剛性が高くなり、負荷質量の変動により発生する力が上下方向に逃げずに平面方向で作用し、高い張力を平面上に発生させる。一方、固着面積が小さくなれば立体編物113にかかる力が上下方向、平面方向に作用し、立体編物に伸びを生じさせ、減衰作用をもたらす。従って、固着面積を調整することにより、立体編物113の張力は調整可能となる。固着面積を増減させる手段としては、面ファスナーの幅、両面テープの幅等を変化させることにより達成できることはもちろんのこと、面ファスナーや両面テープ等により周縁部(例えば、図1の黒色の帯状部分D〜G)を固着すると共に、接着により座骨結節対応部位であるC領域をさらに固着する手段を併用することもできる。この場合、周縁部を面ファスナー等で固着すると共にC領域も固着すれば、弾性機能がさらに向上し、C領域を固着せずに面ファスナー等で周縁部のみを固着した場合には、C領域を固着した場合と比較して減衰機能が向上する。また、立体編物113として、特性の異なるものを使用することによっても張力を調整できる。すなわち、立体編物113とウレタンフォーム112との固着面積、立体編物113の種類などにより、バネ感を重視した構造、減衰性を重視した構造とすることができる。また、上記したウレタンフォーム112の種類の選択等との組み合わせにより、様々な特性を有するシートを容易に製作できる。
【0045】
また、上記した説明ではいずれも座部用クッション材の座骨結節対応部位における面剛性を高める構造を説明しているが、図17に示したように、背部用クッション材150における腰椎対応部位にウレタンフォーム(パッド)151を配設し、このウレタンフォーム151に立体編物152の適宜部位(例えば、側縁部)を固着する構造とすることにより、少なくとも腰椎対応部位において、立体編物152の張力が機能する構成とすることもできる。腰椎対応部位は、背部用クッション材150において大きな体圧がかかる部位であるため、上記した座骨結節対応部位の面剛性を高める場合と同様に、振動吸収特性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1は、本発明の一の実施形態に係る座部用クッション材を示す分解斜視図である。
【図2】図2は、立体編物とパッドとの固着部位を図1と異ならせた態様を示す分解斜視図である。
【図3】図3(a)〜(c)は、表皮又は立体編物を固着する各種態様を示す断面図である。
【図4】図4は、直径30mmの加圧板を用いた試験例1、比較例1〜3の荷重−たわみ特性を示す図である。
【図5】図5は、直径98mmの加圧板を用いた試験例1、比較例1〜3の荷重−たわみ特性を示す図である。
【図6】図6は、試験例11〜13、比較例11〜16の振動伝達率を示す図である。
【図7】図7は、試験例11及び比較例11の振動伝達率を示す図である。
【図8】図8は、試験例12及び比較例12の振動伝達率を示す図である。
【図9】図9は、試験例13及び比較例13の振動伝達率を示す図である。
【図10】図10は、試験例21及び比較例21の振動伝達率を示す図である。
【図11】図11は、試験例22及び比較例22の振動伝達率を示す図である。
【図12】図12は、直径30mmの加圧板を用いて加圧した際の立体編物とウレタンフォームとの荷重−たわみ特性の違いを示す図である。
【図13】図13は、直径98mmの加圧板を用いて加圧した際の立体編物とウレタンフォームとの荷重−たわみ特性の違いを示す図である。
【図14】図14は、直径200mmの加圧板を用いて加圧した際の立体編物とウレタンフォームとの荷重−たわみ特性の違いを示す図である。
【図15】図15は、上記実施形態に係る座部用クッション材を有するシートの具体的構造例を示す外観斜視図である。
【図16】図16は、図15に示したシートの一部断面斜視図である。
【図17】図17は、図15のA−A線矢視図である。
【図18】図18は、図15のB−B線矢視図である。
【図19】図19(a)は、図15のC−C線矢視図の一例であり、図19(b)は、図15のD−D線矢視図の一例である。
【図20】図20(a)は、図15のC−C線矢視図の他の例であり、図20(b)は、図15のD−D線矢視図の他の例である。
【符号の説明】
【0047】
1 座部用クッション材
10 パッド
20 立体編物
30 表皮
100 シート
110 座部用クッション材
112 ウレタンフォーム(パッド)
113 立体編物
150 背部用クッション材
151 ウレタンフォーム(パッド)
152 立体編物
【特許請求の範囲】
【請求項1】
座部に配設される座部用クッション材であって、
ウレタンフォームを含んで形成されるパッドと、
前記パッドの表面に積層され、前記パッドによって支持される立体編物とを有してなり、
少なくとも、一対の座骨結節対応部位を結んだ横方向仮想線を基準として前後にそれぞれ49mmの範囲と、一対の座骨結節対応部位の中間を通過する縦方向仮想線を基準として左右にそれぞれ99mmの範囲とが重なる範囲に、着座時において前記立体編物の張力が機能するよう、前記立体編物を前記パッドに固着したことを特徴とする座部用クッション材。
【請求項2】
前記立体編物における、少なくとも、一対の座骨結節対応部位を結んだ横方向仮想線を基準として前後にそれぞれ49mmの範囲と、一対の座骨結節対応部位の中間を通過する縦方向仮想線を基準として左右にそれぞれ99mmの範囲とが重なる範囲を、前記パッドに固着したことを特徴とする請求項1記載の座部用クッション材。
【請求項3】
前記立体編物における、少なくとも、一対の座骨結節対応部位を結んだ横方向仮想線を基準として前後にそれぞれ49mmの範囲の長さ分であって、一対の座骨結節対応部位の中間を通過する縦方向仮想線を基準として左右にそれぞれ99mmの範囲よりも外側に位置する部分を、それぞれ少なくとも1カ所ずつ前記パッドに固着したことを特徴とする請求項1記載の座部用クッション材。
【請求項4】
前記立体編物における一対の側縁部を前後方向全長に亘って前記パッドに固着したことを特徴とする請求項3記載の座部用クッション材。
【請求項5】
さらに、前記立体編物における前縁部及び後縁部の少なくとも一部を前記パッドに固着したことを特徴とする請求項4記載の座部用クッション材。
【請求項6】
接着手段、縫製手段、溶着手段、両面テープによる固着手段、又は面ファスナーによる固着手段のいずれか少なくとも一つの手段により、前記立体編物が前記パッドに固着されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1に記載の座部用クッション材。
【請求項7】
前記立体編物は、直径98mmの加圧板で加圧した際の荷重−たわみ特性が略線形であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1に記載の座部用クッション材。
【請求項8】
輸送機器用シートの座部に用いられることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1に記載の座部用クッション材。
【請求項9】
背部に配設される背部用クッション材であって、
ウレタンフォームを含んで形成されるパッドと、
前記パッドの表面に積層され、前記パッドによって支持される立体編物とを有してなり、
少なくとも腰椎対応部位において、前記立体編物の張力が機能するよう、前記立体編物を前記パッドに固着したことを特徴とする背部用クッション材。
【請求項10】
前記立体編物は、直径98mmの加圧板で加圧した際の荷重−たわみ特性が略線形であることを特徴とする請求項9記載の背部用クッション材。
【請求項11】
座部に、請求項1〜7のいずれか1に記載の座部用クッション材が設けられていることを特徴とするシート。
【請求項12】
背部に、請求項9又は10記載の背部用クッション材が設けられていることを特徴とするシート。
【請求項13】
輸送機器用であることを特徴とする請求項11又は12記載のシート。
【請求項1】
座部に配設される座部用クッション材であって、
ウレタンフォームを含んで形成されるパッドと、
前記パッドの表面に積層され、前記パッドによって支持される立体編物とを有してなり、
少なくとも、一対の座骨結節対応部位を結んだ横方向仮想線を基準として前後にそれぞれ49mmの範囲と、一対の座骨結節対応部位の中間を通過する縦方向仮想線を基準として左右にそれぞれ99mmの範囲とが重なる範囲に、着座時において前記立体編物の張力が機能するよう、前記立体編物を前記パッドに固着したことを特徴とする座部用クッション材。
【請求項2】
前記立体編物における、少なくとも、一対の座骨結節対応部位を結んだ横方向仮想線を基準として前後にそれぞれ49mmの範囲と、一対の座骨結節対応部位の中間を通過する縦方向仮想線を基準として左右にそれぞれ99mmの範囲とが重なる範囲を、前記パッドに固着したことを特徴とする請求項1記載の座部用クッション材。
【請求項3】
前記立体編物における、少なくとも、一対の座骨結節対応部位を結んだ横方向仮想線を基準として前後にそれぞれ49mmの範囲の長さ分であって、一対の座骨結節対応部位の中間を通過する縦方向仮想線を基準として左右にそれぞれ99mmの範囲よりも外側に位置する部分を、それぞれ少なくとも1カ所ずつ前記パッドに固着したことを特徴とする請求項1記載の座部用クッション材。
【請求項4】
前記立体編物における一対の側縁部を前後方向全長に亘って前記パッドに固着したことを特徴とする請求項3記載の座部用クッション材。
【請求項5】
さらに、前記立体編物における前縁部及び後縁部の少なくとも一部を前記パッドに固着したことを特徴とする請求項4記載の座部用クッション材。
【請求項6】
接着手段、縫製手段、溶着手段、両面テープによる固着手段、又は面ファスナーによる固着手段のいずれか少なくとも一つの手段により、前記立体編物が前記パッドに固着されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1に記載の座部用クッション材。
【請求項7】
前記立体編物は、直径98mmの加圧板で加圧した際の荷重−たわみ特性が略線形であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1に記載の座部用クッション材。
【請求項8】
輸送機器用シートの座部に用いられることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1に記載の座部用クッション材。
【請求項9】
背部に配設される背部用クッション材であって、
ウレタンフォームを含んで形成されるパッドと、
前記パッドの表面に積層され、前記パッドによって支持される立体編物とを有してなり、
少なくとも腰椎対応部位において、前記立体編物の張力が機能するよう、前記立体編物を前記パッドに固着したことを特徴とする背部用クッション材。
【請求項10】
前記立体編物は、直径98mmの加圧板で加圧した際の荷重−たわみ特性が略線形であることを特徴とする請求項9記載の背部用クッション材。
【請求項11】
座部に、請求項1〜7のいずれか1に記載の座部用クッション材が設けられていることを特徴とするシート。
【請求項12】
背部に、請求項9又は10記載の背部用クッション材が設けられていることを特徴とするシート。
【請求項13】
輸送機器用であることを特徴とする請求項11又は12記載のシート。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2006−149471(P2006−149471A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−341071(P2004−341071)
【出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(594176202)株式会社デルタツーリング (111)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(594176202)株式会社デルタツーリング (111)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]