説明

廃材処理装置

【課題】廃材を容易に粉砕することができる廃材処理装置を提供する。
【解決手段】廃材処理装置1には、廃材31の粉砕が行われる粉砕部11と、粉砕部11の下方に設けられたフィルタ21と、フィルタ21の下方に設けられ、フィルタ21を通過した粉砕物33を収集する収集部12と、が設けられている。廃材31の粉砕は、収集部12及び粉砕部11に冷媒が入れられた状態で行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃材処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、パーソナルコンピュータ(PC)、サーバ等の電子機器には、貴金属を含む半導体チップ及び電解コンデンサ等の部品が搭載されたプリント配線基板が用いられている。また、プリント配線基板自体に貴金属が含まれていることもある。従って、電子機器の廃棄に当たっては、貴金属を回収することが望ましい。また、プリント配線基板の大きさは多岐にわたるため、貴金属を回収の際には、前もって、プリント配線基板を粉砕して取り扱いが容易な大きさにしておくことが重要である。
【0003】
しかしながら、プリント配線基板には、セラミック、金属、樹脂等の種々の硬さの材料が含まれているため、粉砕の進行にばらつきが生じやすく、所望のサイズまで粉砕するのに多大な時間がかかってしまう。従って、粉砕の効率が高いとは言い難い。従来の粉砕装置には、縦置き、横置き、一軸刃、二軸刃等の粉砕の対象及び効率に応じたものもあるが、いずれもプリント配線基板のように種々の材料を含む廃材の処理には適していない。また、材料毎に粉砕装置を設けると、設備投資が巨額になる。更に、粉砕装置の種類に拘わらず、粉塵が大量に生じることがあり、大気中に舞い上がらないようにするための回収装置等が必要とされることもある。
【0004】
また、従来、プリント配線基板に搭載された半導体チップ及び電解コンデンサ等の部品は手作業で取り外されている。このため、人件費が大きなものとなっている。
【0005】
なお、これらの問題は、電線ケーブル等のプリント配線基板以外の廃材の処理にも存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−218962号公報
【特許文献2】特開2008−6380号公報
【特許文献3】特開平8−80528号公報
【特許文献4】特開2008−62141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、廃材を容易に粉砕することができる廃材処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
廃材処理装置の一態様には、廃材の粉砕が行われる粉砕部と、前記粉砕部の下方に設けられたフィルタと、前記フィルタの下方に設けられ、前記フィルタを通過した粉砕物を収集する収集部と、を有し、前記粉砕は、前記収集部及び前記粉砕部に冷媒が入れられた状態で行われることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上記の廃材処理装置等によれば、廃材をフィルタの開放径に応じた大きさにまで容易に粉砕することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態に係る廃材処理装置の構成を示す断面図である。
【図2】廃材処理方法を工程順に示す断面図である。
【図3】第2の実施形態に係る廃材処理装置の構成を示す断面図である。
【図4】第3の実施形態に係る廃材処理装置の構成を示す断面図である。
【図5】第4の実施形態に係る廃材処理方法を示す断面図である。
【図6】第5の実施形態に係る廃材処理装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
先ず、第1の実施形態について説明する。図1は、第1の実施形態に係る廃材処理装置の構成を示す断面図である。
【0013】
第1の実施形態に係る廃材処理装置1には、廃材の粉砕が行われる筒状の粉砕部11、粉砕部11での廃材の粉砕により得られる粉砕物を収集する椀状の収集部12、及び粉砕部11を覆う蓋部13が設けられている。また、粉砕部11及び収集部12により、メッシュフィルタ21が挟持されている。メッシュフィルタ21の開放径は、収集部12に落下させる粉砕物のサイズに応じて設定することができ、例えば25mmである。また、メッシュフィルタ21の材料としては、例えばステンレスが用いられる。収集部12には、後述の冷媒を排出するドレン22が設けられている。ドレン22の廃材処理装置1内側の口には、回収する粉砕物の排出を防止するフィルタが設けられている。このフィルタの開放径は、例えば1mmである。蓋部11には、粉砕部11内で廃材を粉砕するT型のハンマー23及びハンマー23を回転駆動するモータ24が設けられている。ハンマー23の材料としては、例えばタングステンが用いられる。
【0014】
次に、廃材処理装置1を用いた廃材処理方法について説明する。図2は、廃材処理方法を工程順に示す断面図である。
【0015】
先ず、図2(a)に示すように、蓋部13が開いた状態で、プリント配線基板等の廃材31を粉砕部11内に搬入し、収集部12及び粉砕部11内に冷媒32を流し込む。冷媒32としては、例えば液体窒素を用いる。
【0016】
次いで、図2(b)に示すように、蓋部13で粉砕部11を閉じ、モータ24によりハンマー23を回転させる。この結果、冷媒32及び廃材31が撹拌され、ハンマー23に衝突した廃材31が粉砕される。また、廃材31に、部品が搭載されたプリント配線基板が含まれている場合、ハンマー23への衝突に伴って部品がプリント配線基板から外れていく。そして、メッシュフィルタ21の開放径よりも小さいサイズまで粉砕されると、粉砕物33となってメッシュフィルタ21を通って収集部21まで落下する。また、廃材31の粉砕に伴って粉塵34が発生するが、粉塵34は冷媒32内を滞留する。
【0017】
そして、所定の時間が経過した後に、図2(c)に示すように、ハンマー23の回転を停止する。
【0018】
続いて、図2(d)に示すように、粉塵34を含む冷媒32をドレン22から排出する。また、廃材31に、大型の半導体チップ、電解コンデンサ、冷却フィン等が含まれている場合、ハンマー23によっても、これらをメッシュフィルタ21の開放径よりも小さいサイズまで粉砕できずに、未処理物が残存することがある。そこで、蓋部13を開き、粉砕部11に残っている未処理物を取り除く。更に、粉砕部11を収集部12から取り外し、収集部12内の粉砕物33を回収する。
【0019】
この第1の実施形態によれば、冷媒32によって廃材31が冷却されるため、廃材31が硬化及び脆化する。従って、廃材31が粉砕されやすくなり、粉砕の効率を向上することができる。このため、廃材31の材料に拘わらず、高効率で廃材31の粉砕及び回収を行うことが可能となる。また、廃材31に電解コンデンサ等の液体を含む部品が含まれていても、当該液体は液体窒素等の冷媒32によって冷却され凍結するため、当該液体の粉砕物32への付着を防止することができる。更に、粉塵34は冷媒32と共に排出されるため、粉塵34が大気中に舞い上がることを防止することができる。
【0020】
また、回収後の粉砕物32は、メッシュフィルタ21の開放径よりも小さいため、その取り扱いが容易である。そして、粉砕物32に、貴金属、金属、樹脂、セラミック等が含まれている場合には、例えば比重分離法等により、これらを容易に分離することができる。このため、粉砕前の廃材31の処理を他者に行わせる場合には費用がかかるような場合であっても、廃材31にCu、Au、Pt、Ir等が含まれている場合には、粉砕後の粉砕物32は、いわゆる都市鉱山原料としての価値を有することとなり、他者に販売することが可能になることもある。つまり、第1の実施形態によれば、廃棄に費用がかかる廃材31を、資源として有効利用することが可能な粉砕物32に容易に変化させることができる。更に、人手で部品の取り外しを行う必要もないため、人件費を低減することも可能である。
【0021】
なお、ハンマー23の回転の停止は、時間制御により行う必要はなく、例えばオペレータが粉砕部11内の状態を観察し、廃材31の全部又は大部分が粉砕されて粉砕物33となったところで、停止させてもよい。
【0022】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。図3は、第2の実施形態に係る廃材処理装置の構成を示す断面図である。
【0023】
第2の実施形態では、粉砕部11の壁に集塵フィルタ41が取り付けられている。集塵フィルタ41の開放径は、例えば500μmである。また、集塵フィルタ41の材料としては、例えばフッ素樹脂が用いられる。他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0024】
この第2の実施形態では、廃材31の粉砕に伴って発生する粉塵34は、図3(b)に示すように、冷媒32内を滞留しながら、冷媒32の撹拌に伴って集塵フィルタ41に溜まっていく。このため、ハンマー23の回転の停止後では、冷媒32中に粉塵34がほとんど存在しない。第1の実施形態では、ドレン22から排出される冷媒32に粉塵34が含まれるため、その後に粉塵34を除去する処理が必要となり得るが、第2の実施形態によれば、冷媒32の排出前に予め粉塵34を回収することが可能となる。
【0025】
本発明者が、第2の実施形態と同様の構造の廃材処理装置を用いて、廃材31として質量が560gのプリント配線基板の処理を行ったところ、サイズが約20mmの粉砕物32が得られ、約25gの粉塵34が回収された。なお、この処理では、メッシュフィルタ21として、開放径が25mmのステンレス製メッシュフィルタを用い、集塵フィルタ41として、開放径が500μmのフッ素樹脂フィルタを用い、冷媒32として、約5リットルの液体窒素を用いた。また、ハンマー23の回転速度を2000rpmとし、粉砕時間を5分間とした。
【0026】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。図4は、第3の実施形態に係る廃材処理装置の構成を示す断面図である。
【0027】
第3の実施形態では、収集部12に冷媒循環パイプ44が繋がっており、冷媒循環パイプ44にポンプ43及び集塵フィルタ42が設けられている。集塵フィルタ42は、ポンプ43の入り側に配置されている。集塵フィルタ42の開放径は、例えば500μmである。また、集塵フィルタ42の材料としては、例えばフッ素樹脂が用いられる。他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0028】
この第3の実施形態では、廃材31の粉砕の際に、ポンプ43を動作させる。この結果、ポンプ43の動作に伴って、粉塵34を含む冷媒32が冷媒循環パイプ44を循環し、この循環の際に、図4(b)に示すように、粉塵34が集塵フィルタ42に溜まっていく。このため、ハンマー23の回転の停止後では、冷媒32中に粉塵34がほとんど存在せず、第3の実施形態によっても、冷媒32の排出前に予め粉塵34を回収することが可能となる。
【0029】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。第4の実施形態では、第2の実施形態に係る廃材処理装置を用いて廃材31の粉砕を行うに際して、図5に示すように、冷媒32中にドライアイス45を投入しておく。ドライアイス45は冷媒32で砕け散り、廃材31及び粉砕物32の表面に付着するため、粉塵34が廃材31及び粉砕物32の表面に付着しにくくなると共に、一旦、廃材31及び粉砕物32の表面に付着した粉塵34も離脱しやすくなる。
【0030】
本発明者が、第4の実施形態と同様にして、廃材31として質量が560gのプリント配線基板の処理を行ったところ、サイズが約20mmの粉砕物32が得られ、約80gの粉塵34が回収された。なお、この処理では、メッシュフィルタ21として、開放径が25mmのステンレス製メッシュフィルタを用い、集塵フィルタ41として、開放径が500μmのフッ素樹脂フィルタを用い、冷媒32として、約5リットルの液体窒素を用い、1kgのドライアイスを用いた。また、ハンマー23の回転速度を2000rpmとし、粉砕時間を5分間とした。
【0031】
なお、第1又は第3の実施形態においてドライアイス45を用いても、同様の効果を得ることができる。
【0032】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態について説明する。図6は、第5の実施形態に係る廃材処理装置の構成を示す断面図である。
【0033】
第5の実施形態には、第2の実施形態における粉砕部11及び蓋部13を一体化した粉砕部51が設けられている。即ち、粉砕部51に蓋が設けられており、この蓋にハンマー23及びモータ24が取り付けられている。また、蓋には、廃材31の投入口53が形成されている。また、第2の実施形態における収集部12に代えて、粉砕部51の下方から側方まで広がる収集部52が設けられている。収集部52の蓋には、粉砕物33の取出口54が形成されている。投入口53及び取出口54は、冷媒32の液面よりも上方に位置する。粉砕部51及び収集部52は、鉛直方向ではメッシュフィルタ21により仕切られており、水平方向では仕切板55により仕切られている。また、冷媒循環パイプ44の吸引口は取出口54の下方に位置し、排出口は粉砕部51に繋がっている。
【0034】
この第5の実施形態では、投入口53から廃材31が粉砕部51に投入され、回収部54から粉砕物33が回収される。従って、廃材31の連続的な処理が可能となる。即ち、ポンプ43の動作に伴って、収集部52内では、冷媒32が粉砕部51の下方から取出口54の下方に向けて流れる。従って、粉砕物33は徐々に取出口54の下方に集まってくる。そして、取出口54からクレーン等で粉砕物33を取り出し、外部のベルトコンベア等に搬送することが可能である。また、粉砕部51内の廃材31の量が減少すれば、その分だけ新たな廃材31を粉砕部51に投入することが可能となる。
【0035】
なお、第4の実施形態と同様に、冷媒32中にドライアイスを混合すれば、粉塵34の粉砕物33への付着の抑制等が可能となる。
【符号の説明】
【0036】
1:廃材処理装置
11、51:粉砕部
12、52:収集部
13:蓋部
21:メッシュフィルタ
23:ハンマー
31:廃材
32:冷媒
33:粉砕物
34:粉塵
41、42:集塵フィルタ
45:ドライアイス
53:投入口
54:取出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃材の粉砕が行われる粉砕部と、
前記粉砕部の下方に設けられたフィルタと、
前記フィルタの下方に設けられ、前記フィルタを通過した粉砕物を収集する収集部と、
を有し、
前記粉砕は、前記収集部及び前記粉砕部に冷媒が入れられた状態で行われることを特徴とする廃材処理装置。
【請求項2】
前記冷媒は、液体窒素であることを特徴とする請求項1に記載の廃材処理装置。
【請求項3】
前記粉砕に伴って前記冷媒中に発生する粉塵を前記冷媒から分離する粉塵分離手段を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の廃材処理装置。
【請求項4】
前記冷媒中にドライアイスが混合されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の廃材処理装置。
【請求項5】
前記粉砕部は、前記廃材が投入される投入口を有し、
前記収集部は、前記粉砕物が取り出される取出口を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の廃材処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−50932(P2012−50932A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−195655(P2010−195655)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】