説明

廃棄物のリサイクル方法及びそのリサイクル装置

【課題】インジウム酸化物と有機物とガラスを含む廃棄物を有効にリサイクルする。
【解決手段】インジウム酸化物と有機物とガラスを含む廃棄物11を2価の銀イオンを含む硝酸電解液21を用いてリサイクルする。廃棄物11を粉砕し、その廃棄物11を電解液に加えて有機物を二酸化炭素と水に酸化分解し、インジウム酸化物を電解液に選択的に溶解させるとともに電解液に沈殿したガラスを分離回収する。インジウム酸化物が溶解した電解液を燐酸系有機抽出溶媒と接触させて銀を抽出することなくインジウム含有電解液からインジウムを選択的に燐酸系有機抽出溶媒に抽出し、その燐酸系有機抽出溶媒に水又はアルカリ水溶液を接触させてインジウムを沈殿させて回収する。有機物を酸化分解することにより2価の銀イオンから転化した1価の銀イオンを電解装置31の陽極反応により2価の銀イオンに転化させ、その電解液に粉砕した廃棄物11を再び加える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば液晶や有機EL(organic electroluminescence)等の表示装置からなる廃棄物のようなインジウム酸化物と有機物とガラスを含む廃棄物を2価の銀イオンを含む硝酸電解液を用いてリサイクルする方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、パソコン等の情報処理装置、携帯電話、携帯情報端末等の携帯用電子機器、家庭用電化製品等においても液晶や有機EL等の表示装置が多く用いられている。この種の液晶や有機EL等の表示装置であって、特に透過型カラー液晶パネルにあっては、対向配置された一対の基板の外面側に樹脂フィルムからなる偏光板が貼付されている。また、一対の基板の各々の内面(互いに対向する面)側には、インジウム錫酸化物(Indium Tin Oxide, 以下、ITOと略記する)からなる透明電極が形成され、さらにその上にポリイミド等の樹脂からなる配向層が形成されている。これら一対の基板はスペーサが介在した状態で接着剤により貼り合わされ、一対の基板と接着剤で囲まれた空間内に液晶が封入されている。
【0003】
ところで、液晶や有機EL等の表示装置の用途の拡大に伴い、製造工場から廃棄される液晶や有機EL等の表示装置や、市場で廃棄された電子機器、電化製品に用いられていた液晶や有機EL等の表示装置の廃棄量の増加が社会的な問題となっている。しかしながら、現在、これらの液晶や有機EL等の表示装置はそのまま埋め立てるか、もしくは焼却後に埋め立てるのみであり、資源の有効活用、処分場の不足といった観点から対応が十分であるとは言い難かった。また、液晶や有機EL等の表示装置に用いられているインジウムは高価な金属材料でありまた地球上での賦存量も極めて少ない貴重な資源であるから、資源保護の意義も大きい。
一方、インジウムの分離方法にあっては、水溶液相のインジウム及びその他重金属を含む硝酸溶液から、有機相である燐酸基を含む陽イオン交換型の抽出溶剤、またはこれに疎水性有機溶剤であるシクロアルカンを主成分とした石油系炭化水素を加えた混合液によって、インジウムを有機相へ抽出する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2000−128531号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述したインジウムの分離方法にあっては、インジウムを含む無機原料を処理対象とし、有機物を含む液晶や有機EL等の表示装置を処理することができない不具合があった。
本発明の目的は、インジウムと有機物とガラスを含む液晶や有機EL等の表示装置からなる廃棄物であっても、各種構成材料を有効にリサイクルし得る廃棄物のリサイクル方法及びそのリサイクル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、図1に示すように、インジウム酸化物と有機物とガラスを含む廃棄物11を2価の銀イオンを含む硝酸電解液21を用いてリサイクルする方法である。
その特徴ある点は、(a)廃棄物11を粉砕する工程と、(b)粉砕した廃棄物11を2価の銀イオンを含む硝酸電解液21に加えることにより廃棄物11中の有機物を二酸化炭素と水に酸化分解し廃棄物11中のインジウム酸化物を電解液21に選択的に溶解する工程と、(c)有機物から分解した二酸化炭素中の不純ガスを除去するとともに電解液21に沈殿した廃棄物11中のガラスを電解液21から分離回収する工程と、(d)インジウム酸化物が選択的に溶解した電解液21を燐酸系有機抽出溶媒と接触させて銀を抽出することなくインジウム含有電解液21からインジウムを選択的に燐酸系有機抽出溶媒に抽出する工程と、(e)インジウムを抽出した燐酸系有機抽出溶媒に水又はアルカリ水溶液を接触させてインジウムを沈殿させて回収する工程と、(f)有機物を酸化分解することにより2価の銀イオンから転化した1価の銀イオンを含む電解液21を電解装置31の陽極31a反応により1価の銀イオンを活性な2価の銀イオンに転化する工程と、(g)陽極31a反応により転化した活性な2価の銀イオンを含む硝酸電解液21に工程(a)で粉砕した廃棄物11を加える工程とを含む廃棄物のリサイクル方法である。
【0006】
請求項2に係る発明は、インジウム酸化物と有機物とガラスを含む廃棄物11を粉砕する粉砕機12と、水平面に対して傾斜する横型に形成され傾斜した低位置である一端に粉砕した廃棄物11を投入可能なホッパ13が設けられた処理槽14と、陽極31aと陰極31bが設けられ銀イオンを含む硝酸電解液21が貯留された電解槽17と、陽極31aと陰極31bに電圧を印加する電源31cを有し1価の銀イオンを陽極31a反応により2価の銀イオンに転化させる電解装置31と、電解槽17と処理槽14の一端を連結する供給管18と、処理槽14の高位置である他端と電解槽17とを連結する排出管19と、供給管18又は排出管19のいずれか一方又は双方に設けられ供給管18を介して電解槽17から2価の銀イオンを含む電解液21を処理槽14の一端に供給し排出管19を介して処理槽14の他端から電解液21を電解槽17に戻す循環ポンプ22と、処理槽14に貫通して設けられた中心軸23aと中心軸23aの周囲に螺旋状に設けられた搬送羽根23bとを有し中心軸23aを回転させることにより搬送羽根23bが粉砕した廃棄物11を2価の銀イオンを含む硝酸電解液21に加えて廃棄物11中の有機物を二酸化炭素と水に酸化分解させるとともに廃棄物11中のインジウム酸化物を電解液21に選択的に溶解させながら廃棄物11を処理槽14の一端から他端に搬送する搬送手段23と、処理槽14で発生した二酸化炭素中の不純ガスを除去する中和槽24と、処理槽14の他端に設けられ電解液21に溶解しないガラスを処理槽14から取出す固形物取出し手段26と、処理槽14又は排出管19に接続されインジウム酸化物が選択的に溶解した電解液21を処理槽14又は排出管19から取出して燐酸系有機抽出溶媒と接触させて銀を抽出することなくインジウム含有電解液21からインジウムを選択的に燐酸系有機抽出溶媒に抽出する抽出槽28とを備えた廃棄物のリサイクル装置である。
【0007】
この請求項1に記載された廃棄物のリサイクル方法及び請求項2に記載された廃棄物のリサイクル装置では、廃棄物11がインジウムと有機物とガラスを含むものであっても、2価の銀イオンが有機物を二酸化炭素と水に酸化分解するとともに、インジウムは電解液に溶解して分離回収し、不溶なガラスとそれぞれを別々に分離回収することができる。従って、インジウムと有機物とガラスを含む液晶パネル等の廃棄物11であっても、連続的に各種構成材料を分離回収することができ、これによりそれらを有効にリサイクルさせることができる。
なお、請求項2記載の廃棄物のリサイクル装置にあっては、インジウムを抽出した燐酸系有機抽出溶媒に水又はアルカリ水溶液を接触させてインジウムを沈殿させて回収するpH調整槽29を抽出槽28に接続することが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の廃棄物のリサイクル方法及びそのリサイクル装置では、廃棄物を粉砕し、その粉砕した廃棄物を2価の銀イオンを含む硝酸電解液に加えることにより、廃棄物中の有機物を二酸化炭素と水に酸化分解し、廃棄物中のインジウム酸化物を電解液に選択的に溶解させ、かつ電解液に沈殿した廃棄物中のガラスを電解液から分離回収するので、インジウム酸化物と有機物とガラスを含む液晶パネル等の廃棄物であっても、各種構成材料を分離回収することができ、これによりそれらを有効にリサイクルさせることができる。
また、有機物を酸化分解することにより2価の銀イオンから転化した1価の銀イオンを電解装置の陽極反応により2価の銀イオンに転化させ、その転化した2価の銀イオンを含む硝酸電解液に再び廃棄物を加えるので、廃棄物を有効にかつ連続的にリサイクルさせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
図1に本発明における廃棄物のリサイクル装置10を示す。この装置10がリサイクルさせる廃棄物11はインジウム酸化物と有機物とガラスを含むものであって、具体的には、パソコン等の情報処理装置、携帯電話、携帯情報端末等の携帯用電子機器、家庭用電化製品における表示装置である液晶パネルや有機ELディスプレイ等における廃棄物11が該当する。そして本発明におけるリサイクル装置10は、これらの廃棄物11を粉砕する粉砕機12と、一端に粉砕した廃棄物11を投入可能なホッパ13が設けられた処理槽14とを備える。
【0010】
処理槽14は、水平面に対して傾斜する横型に形成され、ホッパ13は傾斜した低位置である一端に設けられる。ホッパ13には定量供給装置16を介して粉砕機12が接続され、定量供給装置16は粉砕機12が粉砕した廃棄物11をホッパ13に供給するものであるけれども、その供給量は所定時間に所定量のいわゆる定量供給が可能に構成される。この処理槽14には電解槽17が併設され、電解槽17と処理槽14の一端は供給管18により連結され、処理槽14の高位置である他端と電解槽17とは排出管19により連結される。電解槽17は2価の銀イオンを含む硝酸電解液21が貯留され、供給管18には、その供給管18を介して電解槽17から2価の銀イオンを含む電解液21を処理槽14の一端に供給し、その一端から他端に向かって流れた電解液21を処理槽14の他端から電解槽17に再び戻す循環ポンプ22が設けられる。
【0011】
処理槽14には、2価の銀イオンを含む硝酸電解液21にホッパ13から連続的に加えられた廃棄物11をその処理槽14の一端から他端にその電解液21とともに搬送する搬送手段23が設けられる。この実施の形態における搬送手段23は、処理槽14に貫通して設けられた中心軸23aと、その中心軸23aの周囲に螺旋状に設けられた搬送羽根23bとを有する。処理槽14の外部には中心軸23aを回転させるモータ23cが設けられ、このモータ23cを駆動して中心軸23aを回転させることにより搬送羽根23bはホッパ13に連続的に投入されて電解液21に加えられた廃棄物11を電解槽17の一端から他端に搬送させて、その廃棄物11中の有機物を二酸化炭素と水に酸化分解させるとともに、廃棄物11中のインジウム酸化物を電解液21に選択的に溶解させるように構成される。
【0012】
また、処理槽14には、その処理槽14で発生した二酸化炭素に含まれる微量の不純ガス(例えば、H2S、HCl、HBr、HCN等が挙げられる。)を除去する中和槽24が接続され、処理槽14の他端には、電解液21に溶解しないガラスをその処理槽14から取出す固形物取出し手段26が設けられる。この実施の形態における中和槽24には、金属酸化物の充填層或いはアルカリ水溶液のようのものが使用される。また、固形物取出し手段26は、処理槽14の他端に搬送手段23の中心軸23aに沿って延長して設けられた延長筒26aと、その延長筒26aに貫通して設けられかつ中心軸23aの他端側を延長して設けられた延長軸26bと、その延長軸26bの周囲に螺旋状に設けられた取出し羽根26cとを備える。そして延長筒26aの端部下方にはガラス貯槽27が設けられ、この固形物取出し手段26では、中心軸23aとともに延長軸26bが回転すると取出し羽根26cも回転して硝酸溶液に溶解しないガラスを延長筒26a内部で移動させてその処理槽14から取出し、延長筒26aの端部から自重により落下させてその下方に設けられたガラス貯槽27に堆積させるように構成される。
【0013】
また、排出管19には抽出槽28が取出し管28aを介して併設され、取出し管28aには第1バルブ28bが設けられ、その抽出槽28が併設された排出管19には第2バルブ28cが設けられる。この第1バルブ28bを開放すると取出し管28aを介して処理槽14においてインジウムが溶解した硝酸溶液の一部をその排出管19から抽出槽28に取出され、この第1バルブ28bを開放するとともに第2バブル28cを閉止すると排出管からインジウムが溶解した硝酸溶液の前部を抽出槽28に取出すことができるようになっている。そして、抽出槽28では、燐酸系有機抽出溶媒と接触させて電解液21から銀を抽出することなくインジウム含有電解液21からインジウムを選択的に燐酸系有機抽出溶媒に抽出するように構成される。ガラス貯槽27の下部と抽出槽28とは連結管27aにより接続され、処理槽14から取出したガラスに付着する電解液21をそのガラスから分離して抽出槽28に供給するように構成される。また、この実施の形態では、抽出槽28にpH調整槽29が接続され、pH調整槽29は抽出槽28においてインジウムを選択的に抽出した燐酸系有機抽出溶媒に水又はアルカリ水溶液を接触させてインジウムを沈殿させて回収するように構成される。
【0014】
更に、電解槽17には有機物と反応して2価の銀イオンから転化した1価の銀イオンを陽極31a反応により2価の銀イオンに転化させる電解装置31が設けられる。この電解装置31は前述した陽極31aと、その陽極31aとともに電解液21に浸漬された陰極31bと、その陽極31aと陰極31bに直流電圧を印加する直流電源31cとを有する。陽極31aと陰極31bはそれぞれPt等の金属材料からなり、陰極31bの周囲は多孔性セパレータ31dにより包囲されて電解液21中で陽極31aと隔離される。そして、直流電源31cにより陽極31aと陰極31bの間に直流電圧を印加するとその電位差により陽極31a反応が生じ、電解液21の1価の銀イオンが2価の銀イオンに転化するように構成される。
【0015】
次に、このように構成された廃棄物のリサイクル装置を用いた本発明における廃棄物のリサイクル方法について説明する。
(a) 廃棄物11の粉砕工程
廃棄物11のリサイクルに当たり、最初にその廃棄物11を粉砕する。廃棄物11としては、パソコン等の情報処理装置、携帯電話、携帯情報端末等の携帯用電子機器、家庭用電化製品における液晶表示装置である液晶パネルや有機EL等における廃棄物11が該当する。これらの廃棄物11はインジウム酸化物と有機物とガラスを含む廃棄物11で有り、この粉砕は粉砕機12により行われる。
【0016】
(b) インジウムの溶解工程
次に、電解液21を用意する。この電解液21は、硝酸水溶液に硝酸銀を添加して調製したものであって、硝酸水溶液は0.1〜10Nであって、その硝酸銀は0.1〜1.0Nであることが好ましい。この電解液21の1価の銀イオンを陽極31a反応により2価に銀イオンに転化させる。そして、粉砕した廃棄物11を2価の銀イオンを含む硝酸電解液21に加える。ここで、2価の銀イオンは酸化力が高いため、廃棄物11中の有機物を二酸化炭素と水に酸化分解するとともに、廃棄物11中のインジウム酸化物はその電解液21に選択的に溶解させられる。
【0017】
この実施の形態では、電解槽17に硝酸水溶液と硝酸銀が添加されて調製され、電解装置31の陽極31a反応により1価の銀イオンは2価に銀イオンに転化させられる。そして2価の銀イオンを含む硝酸電解液21は循環ポンプ22により供給管18を介して電解槽17から処理槽14に供給される。粉砕された廃棄物11はホッパ13を介して処理槽14に投入されて処理槽14内部に流通する電解液21に加えられる。そして、処理槽14に設けられた搬送手段23である中心軸23aを回転させることにより廃棄物11は処理槽14の一端から他端に搬送され、その間に電解液21と混合されて廃棄物11中の有機物が二酸化炭素と水に酸化分解されるとともに、廃棄物11中のインジウム酸化物が電解液21に選択的に溶解される。
ここで、廃棄物11を加える電解液21の温度は、室温(25℃)〜100℃が好ましく、30℃〜60℃であることがより好ましい。電解液21の温度が室温(25℃)未満であると有機物の酸化分解速度が遅くなり、電解液21の温度が100℃を越えると硝酸水溶液の蒸気圧が上昇して操作と環境上の不具合が生じる。
【0018】
(c) 二酸化炭素中の不純ガスの除去とガラスの回収工程
次に有機物から分解した二酸化炭素中の微量な不純ガスを除去するとともに電解液21に沈殿した廃棄物11中のガラスを電解液21から分離回収する。二酸化炭素中の微量な不純ガスの除去は中和槽24により行われ、中和槽24は処理槽14で発生した二酸化炭素含中の微量な不純ガスを除去し、その後大気に開放する。
一方、ガラスの回収は固形物取出し手段26により行われる。即ち、この固形物取出し手段26では、中心軸23aとともに延長軸26bが回転すると取出し羽根26cも回転して硝酸溶液に溶解しないガラスを延長筒26a内部で移動させてその処理槽14から取出し、延長筒26aの端部から自重により落下させてその下方に設けられたガラス貯槽27に堆積させてガラスを分離回収する。
【0019】
(d) インジウムの抽出工程
次に、インジウム酸化物が溶解した電解液21を燐酸系有機抽出溶媒と接触させて銀を抽出することなくインジウム含有電解液21からインジウムを選択的に燐酸系有機抽出溶媒に抽出する。この実施の形態におけるインジウムの抽出は、排出管19に併設された抽出槽28により行われる。この抽出槽28は、処理槽14においてインジウム濃度の高い硝酸溶液をその排出管19から定期的に又は連続的に取出して燐酸系有機抽出溶媒と接触させ、その電解液21から銀を抽出することなくインジウムのみを燐酸系有機抽出溶媒により抽出する。ここで、燐酸系有機抽出溶媒としては酸性燐酸エステル系が好ましい。そして、インジウムが抽出された電解液21は電解槽17に戻されて、循環させられる。
【0020】
(e) インジウムの回収工程
次に、インジウムを選択的に抽出した燐酸系有機抽出溶媒に水又はアルカリ水溶液を接触させてインジウムを沈殿させて回収する。この実施の形態では、抽出槽28に接続されたpH調整槽29において、インジウムを選択的に抽出した燐酸系有機抽出溶媒に水又はアルカリ水溶液を接触させてインジウムを沈殿させて回収する。
【0021】
(f) 銀イオンを1価から2価に転化する工程
処理槽14において有機物を酸化分解した銀イオンは2価から1価の銀イオンに転化する。この1価の銀イオンを含む電解液21は排出管19を介して電解槽17に戻る。電解槽17には電解装置31が設けられており、電解装置31では電解液21中の1価の銀イオンをその陽極31a反応により2価の銀イオンに転化する。
【0022】
(g) 電解液21に廃棄物11を加える工程
陽極31a反応により転化した2価の銀イオンを含む硝酸電解液21に前述した工程(a)で粉砕した廃棄物11を加える。これにより、廃棄物11中の有機物は再び二酸化炭素と水に酸化分解し、廃棄物11中のインジウム酸化物は再び電解液21に選択的に溶解する。
【0023】
このような廃棄物11のリサイクル方法では、廃棄物11がインジウム酸化物と有機物とガラスを含むものであっても、有機物を二酸化炭素と水に酸化分解するとともに、インジウムとガラスを別々に分離回収することができる。従って、インジウム酸化物と有機物とガラスを含む液晶や有機EL等の表示装置からなる廃棄物11であっても、連続的に各種構成材料を分離回収することができ、これによりそれらを有効にリサイクルさせることができる。
なお、上述した実施の形態では、電解槽17から電解液21を処理槽14に供給する循環ポンプ22が供給管18に設けられる場合を示したが、電解液21を電解槽17から処理槽14に供給可能である限り、循環ポンプ22は排出管19に設けても良く、供給管18と排出管19の双方に設けても良い。
また、上述した実施の形態では、インジウムを含む電解液21を排出管19から抽出槽28に取出す場合を示したが、インジウムを含む電解液21は処理槽14から直接取出して抽出槽28に供給するように構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明実施形態の廃棄物のリサイクル装置の構成を示す概念図である。
【符号の説明】
【0025】
10 廃棄物のリサイクル装置
11 廃棄物
12 粉砕機
13 ホッパ
14 処理槽
17 電解槽
18 供給管
19 排出管
21 電解液
22 循環ポンプ
23 搬送手段
23a 中心軸
23b 搬送羽根
24 中和槽
26 固形物取出し手段
28 抽出槽
29 pH調整槽
31 電解装置
31a 陽極
31c 電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インジウム酸化物と有機物とガラスを含む廃棄物(11)を2価の銀イオンを含む硝酸電解液(21)を用いてリサイクルする方法であって、
(a) 前記廃棄物(11)を粉砕する工程と、
(b) 前記粉砕した廃棄物(11)を前記2価の銀イオンを含む硝酸電解液(21)に加えることにより前記廃棄物(11)中の有機物を二酸化炭素と水に酸化分解し前記廃棄物(11)中のインジウム酸化物を前記電解液(21)に選択的に溶解する工程と、
(c) 前記有機物から分解した前記二酸化炭素中の不純ガスを除去するとともに前記電解液(21)に沈殿した前記廃棄物(11)中のガラスを前記電解液(21)から分離回収する工程と、
(d) 前記インジウム酸化物が選択的に溶解した前記電解液(21)を燐酸系有機抽出溶媒と接触させて前記銀を抽出することなく前記インジウム含有電解液(21)からインジウムを選択的に前記燐酸系有機抽出溶媒に抽出する工程と、
(e) 前記インジウムを抽出した前記燐酸系有機抽出溶媒に水又はアルカリ水溶液を接触させて前記インジウムを沈殿させて回収する工程と、
(f) 前記有機物を酸化分解することにより2価の銀イオンから転化した1価の銀イオンを含む電解液(21)を電解装置(31)の陽極(31a)反応により前記1価の銀イオンを活性な2価の銀イオンに転化する工程と、
(g) 陽極(31a)反応により転化した活性な2価の銀イオンを含む硝酸電解液(21)に工程(a)で粉砕した廃棄物(11)を加える工程と
を含む廃棄物のリサイクル方法。
【請求項2】
インジウム酸化物と有機物とガラスを含む廃棄物(11)を粉砕する粉砕機(12)と、
水平面に対して傾斜する横型に形成され傾斜した低位置である一端に粉砕した前記廃棄物(11)を投入可能なホッパ(13)が設けられた処理槽(14)と、
陽極(31a)と陰極(31b)が設けられ銀イオンを含む硝酸電解液(21)が貯留された電解槽(17)と、
前記陽極(31a)と前記陰極(31b)に電圧を印加する電源(31c)を有し1価の銀イオンを陽極(31a)反応により2価の銀イオンに転化させる電解装置(31)と、
前記電解槽(17)と前記処理槽(14)の一端を連結する供給管(18)と、
前記処理槽(14)の高位置である他端と前記電解槽(17)とを連結する排出管(19)と、
前記供給管(18)又は前記排出管(19)のいずれか一方又は双方に設けられ前記供給管(18)を介して前記電解槽(17)から2価の銀イオンを含む前記電解液(21)を前記処理槽(14)の一端に供給し前記排出管(19)を介して前記処理槽(14)の他端から前記電解液(21)を前記電解槽(17)に戻す循環ポンプ(22)と、
前記処理槽(14)に貫通して設けられた中心軸(23a)と前記中心軸(23a)の周囲に螺旋状に設けられた搬送羽根(23b)とを有し前記中心軸(23a)を回転させることにより前記搬送羽根(23b)が前記粉砕した廃棄物(11)を前記2価の銀イオンを含む硝酸電解液(21)に加えて前記廃棄物(11)中の有機物を二酸化炭素と水に酸化分解させるとともに前記廃棄物(11)中のインジウム酸化物を前記電解液(21)に選択的に溶解させながら前記廃棄物(11)を前記処理槽(14)の一端から他端に搬送する搬送手段(23)と、
前記処理槽(14)で発生した二酸化炭素中の不純ガスを除去する中和槽(24)と、
前記処理槽(14)の他端に設けられ前記電解液(21)に溶解しない前記ガラスを前記処理槽(14)から取出す固形物取出し手段(26)と、
前記処理槽(14)又は前記排出管(19)に接続され前記インジウム酸化物が選択的に溶解した電解液(21)を前記処理槽(14)又は前記排出管(19)から取出して燐酸系有機抽出溶媒と接触させて前記銀を抽出することなく前記インジウム含有電解液(21)からインジウムを選択的に前記燐酸系有機抽出溶媒に抽出する抽出槽(28)と
を備えた廃棄物のリサイクル装置。
【請求項3】
インジウムを選択的に抽出した燐酸系有機抽出溶媒に水又はアルカリ水溶液を接触させて前記インジウムを沈殿させて回収するpH調整槽(29)が抽出槽(28)に接続された請求項2記載の廃棄物のリサイクル装置。

【図1】
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【公開番号】特開2006−75741(P2006−75741A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−263139(P2004−263139)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】