説明

廃棄物の空気カプセル輸送方法

【課題】放射性廃棄物の地層処分等に適用される空気カプセル輸送システムにおいて、従来よりも効率的かつ経済的で安全性に優れた空気カプセル輸送が可能となる廃棄物の空気カプセル輸送方法を提供する。
【解決手段】地上から地下へと配設されている空気搬送管路1内におけるカプセルの前後の圧力差によりカプセルを地下へと下降搬送するに際し、空気搬送管路1の上部に接続されたカプセル発射管路11と、カプセル発射管路に設けられたカプセル移動装置12を使用し、カプセル発射管路の上部にカプセル2を配置し、カプセル発射管路の上部の開閉弁16を開いてカプセル発射管路の管端とカプセルとの間の空間に空気を導入しつつカプセルをカプセル移動装置により下降移動させて所定速度まで加速し、下降速度を一定速度に保持した後、開閉弁を閉じ、カプセルをカプセル移動装置から解放して自由落下させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高・中レベル放射性廃棄物、その他の廃棄物の地層処分に用いられる廃棄物の空気カプセル輸送方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
搬送容器としてのカプセルを空気圧により搬送する空気カプセル輸送システムは、建設土木工事の立坑などにおいて、人や機材、生コン、掘削土砂などの搬送に利用されている(例えば、特許文献1、2、3、4参照)。
【0003】
また、このような空気カプセル輸送システムは、放射性廃棄物の地層処分にも利用されている(例えば、特許文献5、6、7参照)。特許文献5の発明は、立坑や斜坑、地下坑道の建設に利用した空気搬送管路を利用し、地上施設で廃棄体と緩衝材を一体化した搬送体を空気搬送し、処分空間に定置埋設するものである。
【0004】
特許文献6の発明は、港湾施設の地上施設において、海上輸送されてきた廃棄体を止水性の収納容器に収納すると共に廃棄体の周囲に緩衝剤を充填配置して廃棄体パックとし、この廃棄体パックをカプセルとして空気搬送管路により地上施設から地下施設へカプセル輸送し、廃棄体パックをそのまま処分孔または処分坑道に定置埋設するものである。
【0005】
特許文献7の発明は、地上施設から中間施設に接続された斜坑と、中間施設から伸びる主要坑道および主要坑道から分岐された複数の処分坑道と、廃棄体を搭載して前記坑道を移動自在な気送台車とを具備し、斜坑内に給排気する加減圧空気により気送台車を地上施設と中間施設との間で往復移動させると共に、主要坑道および処分坑道に給排気する加減圧空気により気送台車を中間施設と処分坑道との間で往復移動させる気送ポンプユニットを設けたものである。
【0006】
【特許文献1】特開2001−31243号公報
【特許文献2】特開2001−31244号公報
【特許文献3】特開2001−158532号公報
【特許文献4】特開2004−26480号公報
【特許文献5】特開2003−148097号公報
【特許文献6】特開2004−286451号公報
【特許文献7】特開2005−194078号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
高レベル放射性廃棄物の地層処分において、地下から大深度地下まで空気カプセル輸送システムにより、放射性廃棄物を収納したカプセルを空気搬送するに際し、制御系によりカプセル前後の圧力差を調整してカプセル速度を制御する場合、制御系が複雑となり、コストがかかるなどの課題があり、従来よりも効率的かつ経済的で安全性に優れた空気カプセル搬送システムが望まれている。
【0008】
本発明は、放射性廃棄物の地層処分等に適用される空気カプセル輸送システムにおいて、従来よりも効率的かつ経済的で安全性に優れた空気カプセル輸送が可能となる廃棄物の空気カプセル輸送方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1は、地上から地下へと配設されている空気搬送管路の内部に、廃棄物を収納した搬送容器のカプセルを地上において投入し、空気搬送管路内におけるカプセルの前後の圧力差によりカプセルを下降させて地下へと搬送する廃棄物の空気カプセル輸送方法において、空気搬送管路の地上側の端部に接続されたカプセル発射管路と、このカプセル発射管路に設けられたカプセル移動装置を使用し、前記カプセル発射管路の上部における内部にカプセルを配置し、カプセル発射管路の上部に設置した開閉弁を開いてカプセル発射管路の管端とカプセルとの間の空間に空気を導入しつつカプセルをカプセル移動装置により下降移動させて所定の速度まで加速し、下降速度を一定の速度に保持した後、前記開閉弁を閉じ、カプセルをカプセル移動装置から解放して自由落下させることを特徴とする廃棄物の空気カプセル輸送方法である(図1、図2参照)。
【0010】
本発明は、放射性廃棄物の地層処分などに適用されるものであり、立坑や斜坑などに空気搬送管路を配置し、廃棄物を収納したカプセルを地上から地下施設へと空気搬送し、廃棄物を地下施設に埋設するものである。空気搬送管路は直線状や曲線状などが用いられる。空気搬送管路の上部または下部に排気弁を介してブロワーを設け、カプセル前後の圧力差により廃棄物搭載のカプセルを下降搬送し、空カプセルを上昇搬送する。
【0011】
本発明では、下降搬送ではブロワーを運転しない無動力で、カプセルをカプセル前後の圧力差による自由落下で下降搬送し、空カプセル返送時のみブロワー運転するのが、コストの低減を図れるなどの点から好ましい。また、外力による空気搬送管路の破損あるいはカプセルシール部の破損等の事態に対応するため、空気搬送管路の下部に、通常時には管路内の空気の流入を許容し、かつ、故障時等には管路外への空気の流出を阻止する逆止弁等を設け、カプセルの無動力降下時、空カプセル返送時に上記トラブルが発生した場合、逆止弁が閉じ、カプセル下部の空気の圧縮作用(ダンパー効果)によりカプセルが空気搬送管路の下部に激突して災害が発生するのを防止し、安全性を確保するのが好ましい。
【0012】
ブロワーを運転しない無動力でカプセルを下降搬送する場合、カプセル挙動が無制御で安定しないため、本発明では、空気搬送管路の上部に、カプセル発射管路とカプセル移動装置からなるカプセル発射装置を設置し、カプセルの上部の空間に空気を吸い込みながら、カプセルをカプセル移動装置により所定速度まで加速して一定速度に保持した後、カプセルを放出することにより、空気搬送管路に投入されたカプセルを一定の下降速度で自由落下させることができ、無制御で自由落下するカプセルの挙動を安定させることができる。カプセルの降下開始時に速度を制御し、その後は自由落下させるため、従来よりも効率的かつ経済的で安全性に優れた空気カプセル輸送が可能となる。
【0013】
本発明の請求項2は、請求項1に記載の空気カプセル輸送方法において、カプセル発射管路は空気搬送管路の上部に略鉛直に立設され、カプセル移動装置は、駆動装置によりカプセル発射管路内を昇降移動する把持装置を有しており、カプセルを前記把持装置に取付けて下降移動させることを特徴とする廃棄物の空気カプセル輸送方法である(図1参照)。
【0014】
鉛直ランチャー定速リリース方式のカプセル発射装置の場合であり、例えばシリンダ方式のアクチュエータのピストンロッド等の作動部材をカプセル発射管路の内部に挿入し、この作動部材の下端にカプセルを着脱可能に把持する把持装置を設けて構成し、カプセルを把持装置で把持し、作動部材を押し下げることにより所定の速度に加速し、一定の速度に保持することができ、把持装置を解放することによりカプセルを放出することができる。
【0015】
本発明の請求項3は、請求項2に記載の空気カプセル輸送方法において、カプセル発射管路の一部が分離されて横方向に平行移動可能な部分管路とされており、カプセル発射管路の側方に平行移動させて配置した部分管路内にカプセルを挿入した後、この部分管路を平行移動させてカプセル発射管路に組み込み、カプセル移動装置の把持装置によりカプセルをカプセル発射管路内の発射位置に移動させることを特徴とする廃棄物の空気カプセル輸送方法である(図3参照)。
【0016】
鉛直ランチャー定速リリース方式のカプセル発射装置におけるランチャー一部分離方式のカプセル積み込み装置の場合である。例えばカプセル発射管位置とその側方を横行可能な走行台車を設け、その上に部分管路を設置し、側方に配置した部分管路内にカプセルを投入し、走行台車を横行させて空気搬送管路上に部分管路を配置し、空気搬送管路に気密的に接続し、カプセルをカプセル移動装置でカプセル発射管路の発射位置に移動させ、前述のようにカプセルを下降移動させリリースして空気搬送管路内を定速降下させる。カプセル発射装置を使用してカプセルの積み込みと発射を行うことができる。
【0017】
本発明の請求項4は、請求項2に記載の空気カプセル輸送方法において、カプセル発射管路が鉛直面内の回転により起倒可能に設置されており、略水平に倒した状態のカプセル発射管路に対して略水平状態のカプセルを接近移動させ、カプセル移動装置の把持装置によりカプセルをカプセル発射管路内の発射位置に引き込み、カプセル発射管路を立て起こして下部を空気搬送管路の上部に接続することを特徴とする廃棄物の空気カプセル輸送方法である(図5参照)。
【0018】
鉛直ランチャー定速リリース方式のカプセル発射装置におけるランチャー起倒方式のカプセル積み込み装置の場合である。例えばカプセル発射管路をヒンジ装置と立て起こしシリンダにより起倒可能とし、空気搬送管路の上部とその側方を横行可能な走行台車を設け、その上にカプセルを略水平に設置し、略水平に倒した状態のカプセル発射管路に対して走行台車を横行させ、カプセル発射装置の手前に位置した略水平状態のカプセルをカプセル移動装置の把持装置により把持し、カプセル発射管路内の発射位置に引き込み、カプセル発射管路を立て起こして下部を空気搬送管路の上部に気密的に接続し、カプセルを前述のように下降移動させリリースして空気搬送管路内を定速降下させる。この場合も、カプセル発射装置を使用してカプセルの積み込みと発射を行うことができる。
【0019】
本発明の請求項5は、請求項1に記載の空気カプセル輸送方法において、カプセル発射管路は、空気搬送管路の上方に略水平に配置された上部の直線管路と、この直線管路と空気搬送管路の上部とを連結する曲線管路とから構成され、カプセル移動装置は、駆動装置により直線管路及び曲線管路内を昇降移動する把持装置を有しており、カプセルを前記把持装置に取付けて下降移動させることを特徴とする廃棄物の空気カプセル輸送方法である(図2参照)。
【0020】
曲管路ランチャー定速リリース方式のカプセル発射装置の場合であり、例えば直線管路と曲線管路の下部にカプセル移動装置の把持装置を移動可能に設置し、直線管路内に配置されたカプセルを把持装置に取付けて下降移動させることにより所定の速度に加速し、一定の速度に保持することができ、把持装置を解放することによりカプセルを放出することができる。
【0021】
本発明の請求項6は、請求項5に記載の空気カプセル輸送方法において、直線管路内にカプセルを挿入することを特徴とする廃棄物の空気カプセル輸送方法である(図6参照)。
【0022】
曲管路ランチャー定速リリース方式のカプセル発射装置におけるカプセル積み込み装置の場合である。例えばシリンダでスライド台車を水平移動させ、直線管路内にカプセルを挿入し、前述のようにカプセルを下降移動させリリースして空気搬送管路内を定速降下させる。この場合も、カプセル発射装置を使用してカプセルの積み込みと発射を行うことができる。
【0023】
本発明の請求項7は、請求項1から請求項6までいずれか一つに記載の空気カプセル輸送方法において、空気搬送管路の断面形状が略円弧と略直線から構成されるかまぼこ型であることを特徴とする廃棄物の空気カプセル輸送方法である(図8、図9参照)。
【0024】
空気搬送管路が上から順に、鉛直管路・曲線管路・水平管路から構成される場合に適用される。曲線管路及び水平管路では、カプセルがかまぼこ型の略平坦な底面上を走行することにより、走行が安定するなどの利点がある。断面かまぼこ型の空気搬送管路は、断面円形の管路に底面版を設置することにより簡単に製作することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、以上のような構成からなるので、次のような効果が得られる。
【0026】
(1)空気搬送管路の上部に、カプセル発射管路とカプセル移動装置からなるカプセル発射装置を設置し、カプセルの上部の空間に空気を吸い込みながら、カプセルをカプセル移動装置により所定速度まで加速して一定速度に保持した後、カプセルを放出することにより、空気搬送管路に投入されたカプセルを一定の下降速度で自由落下させることができ、無制御で自由落下するカプセルの挙動を安定させることができる。カプセルの降下開始時に速度を制御し、その後は自由落下させるため、従来よりも効率的かつ経済的で安全性に優れた空気カプセル輸送が可能となる。
【0027】
(2)カプセル発射装置を使用してカプセルの積み込みと発射を行うことができ、コストの低減および搬送効率の向上を図れる。
【0028】
(3)空気搬送管路の断面形状が略円弧と略直線から構成されるかまぼこ型とすることにより、曲線管路及び水平管路では、カプセルがかまぼこ型の略平坦な底面上を走行することで走行が安定するなどの利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明を図示する実施形態に基づいて説明する。図1、図2は本発明の廃棄物の空気カプセル輸送方法で用いるカプセル発射装置の例を示す鉛直断面図である。
【0030】
図1、図2等において、空気カプセル搬送システムは、地上から地下へと空気搬送管路1を配設し、廃棄物を収納した搬送容器のカプセル2を地上において空気搬送管路1の内部に投入し、空気搬送管路1内におけるカプセル2の前後の圧力差によりカプセル2を下降させて地下へと搬送するように構成されている。地下で廃棄物を降ろした空カプセル2は、同様にカプセル前後の圧力差により上昇させ、地上へと返送する。
【0031】
空気駆動方式には、空気搬送管路1の上部に排気装置(ブロワーと排気弁)を設置して空気搬送管路1内の空気を外部に排気する負圧による吸引方式、空気搬送管路1の下部に排気装置(ブロワーと排気弁)を設置して地下の空気を空気搬送管路1内に押し込む正圧による圧入方式、両者の併用方式などを採用することができる。
【0032】
廃棄物のカプセル輸送時にはブロワーを運転しない無動力でカプセルを下降搬送し、空カプセル返送時のみブロワー運転するのが、コストの低減を図れるなどの点から好ましい。この空気駆動方式の場合、廃棄物のカプセル輸送時には、空気搬送管路1の上部に設置されたブロワーの排気弁を閉じて、カプセル前後の圧力差によりカプセル2を自由落下させることになる。
【0033】
また、この空気駆動方式の場合、空気搬送管路1の下部には、空気搬送管路内の空気の外部への流出を阻止する逆止弁等の閉鎖装置を設置するのが好ましい。即ち、外力による空気搬送管路の破損あるいはカプセルシール部の破損等の事態に対応するため、空気搬送管路内の圧力・カプセル速度の監視システムを常時運転し、閉鎖装置を常時閉じておき、カプセルの無動力降下時のみ閉鎖装置を動力で開にする。従って、カプセルの無動力降下時、空カプセル返送時に上記トラブルが発生した場合、閉鎖装置が閉じるため、カプセル下部の空気の圧縮作用(ダンパー効果)によりカプセルが空気搬送管路の下部に激突して災害が発生するのを防止することができ、安全性を確保することができる。
【0034】
また、放射性廃棄物の地層処分の場合、立坑、斜坑、スパイラル坑道等のアクセス坑道内に空気搬送管路を配設し、廃棄物を収納したカプセルを地上施設から地下の処分施設へ空気搬送する。また、空気搬送管路には、鉛直管や傾斜管による直管路タイプあるいは曲管路タイプなどを用いることができる。
【0035】
以上のような空気カプセル搬送システムにおいて、廃棄物のカプセル輸送時にブロワーを運転しない無動力でカプセルを下降搬送する場合、カプセル挙動が無制御であることから、本発明では、カプセル挙動を安定させるため、カプセルを挟んだ管内圧力差による下降搬送において例えば図1、図2に示すカプセル発射装置により設定下降速度でカプセルを放出できるようにする。
【0036】
図1は、鉛直ランチャー定速リリース方式のカプセル発射装置の一例であり、このカプセル発射装置10は、空気搬送管路1の地上側の端部である上部に直管状のカプセル発射管路11を鉛直に接続し、このカプセル発射管路11の上部にカプセル移動装置12を設けて構成されている。カプセル発射管路11は鉛直に限らず、傾斜させて設置する場合もある。
【0037】
カプセル移動装置12は、例えばシリンダ方式のアクチュエータであり、駆動装置の装置本体13をカプセル発射管路11の上端部に外部設置し、駆動装置により昇降移動するピストンロッド等の作動部材14をカプセル発射管路11の内部に挿入し、この作動部材14の下端にカプセル2を着脱可能に把持する把持装置15を設けて構成されている。把持装置15は例えばカプセル2に設けられた突起状のつかみ部を開閉腕で挟持するようにされている。
【0038】
カプセル2は、後に詳述するように、車輪とシール部材を有しており、カプセル2の前後の圧力差により、廃棄物を収納したカプセル2を下降搬送し、空カプセル2を上昇搬送することができるようにされているが、本発明では、カプセル発射管路11の上端部に開閉弁16を設け、この開閉弁16を開閉させることにより、カプセル2の前後の圧力差を調整する。
【0039】
以上のような鉛直ランチャー定速リリース方式のカプセル発射装置10を用いて次のような手順でカプセル2を発射させる(図1参照)。
【0040】
(1)カプセル発射管路11の上部における内部に、廃棄物を収納したカプセル2を配置する。このカプセル2の配置は、後に詳述するように、カプセル移動装置12を用いて行うことができる。カプセル2はカプセル移動装置12の把持装置15により発射位置に保持される。
【0041】
(2)カプセル発射管路11の上部に設置した開閉弁16を開いてカプセル発射管路11上部の管端とカプセル2との間の空間に空気を導入しつつカプセル2をカプセル移動装置12により下降移動させて所定の速度まで加速する。カプセル2の上部から空気を吸い込み収束時の圧力差に近づけることにより、またカプセル移動装置12によりカプセル2を押し下げることにより、加速することができる。カプセル2の下降速度が例えば5km/hになるまで加速する。
【0042】
(3)カプセル2の下降速度を所定の時間だけ一定の速度に保持する。例えば5km/hの定速度を0.2秒ほど保持する。
【0043】
(4) 開閉弁16を閉じ、カプセル2をカプセル移動装置12の把持装置15から解放して自由落下させ、カプセル2を定速降下させる。
【0044】
図2は曲管路ランチャー定速リリース方式のカプセル発射装置の一例であり、このカプセル発射装置20は、曲管路によるカプセル発射管路21とカプセル移動装置22から構成されている。
【0045】
カプセル発射管路21は、空気搬送管路1の上方における水平に配置された上部の直線管路21aと、この直線管路21aと空気搬送管路1の上部とを連結する曲線管路21bとから構成されている。直線管路21aは水平に限らず、傾斜して設置される場合もある。
【0046】
カプセル移動装置22は、駆動装置により直線管路21a及び曲線管路21bの下部に沿って昇降移動する把持装置23を有しており、カプセル2を把持装置23に取付けて下降移動させる。把持装置23は例えばカプセル2の本体胴部を把持するようにされ、この把持装置23を曲線部に対応できる無端チェーン駆動装置などのアクチュエータに取り付ける。
【0047】
この場合も、直線管路21aの管端部に開閉弁24を設け、この開閉弁24を開閉させることにより、カプセル2の前後の圧力差を調整する。
【0048】
以上のような曲管路ランチャー定速リリース方式のカプセル発射装置20を用いて次のような手順でカプセル2を発射させる(図2参照)。
【0049】
(1)カプセル発射管路21の直線管路21aの管端部における内部に、廃棄物を収納したカプセル2を配置する。このカプセル2の配置は、カブセル移動装置22を用いて行うことができる。カプセル2はカプセル移動装置22の把持装置23により発射位置に保持される。
【0050】
(2)直線管路21aに設置した開閉弁24を開いて直線管路21aの管端とカプセル2との間の空間に空気を導入しつつカプセル2をカプセル移動装置22により水平移動・下降移動させて所定の速度まで加速する。カプセル2の上部から空気を吸い込み収束時の圧力差に近づけることにより、またカプセル移動装置22によりカプセル2を押し下げることにより、加速することができる。カプセル2の下降速度が例えば5km/hになるまで加速する。
【0051】
(3)カプセル2の下降速度を所定の時間だけ一定の速度に保持する。例えば5km/hの定速度を0.2秒ほど保持する。
【0052】
(4) 開閉弁24を閉じ、カプセル2をカプセル移動装置22の把持装置23から解放して自由落下させ、カプセル2を定速降下させる。
【0053】
次に、図3は鉛直ランチャー定速リリース方式のカプセル発射装置10におけるランチャー一部分離方式のカプセル積み込み装置30の一例である。図3に示すように、カプセル発射管路11の下部を分離して横方向に平行移動可能な部分管路31とし、カプセル発射管路11の側方に平行移動させて配置した部分管路31内にカプセル2を挿入した後、この部分管路31を平行移動させてカプセル発射管路11に組み込み、カプセル移動装置12の把持装置によりカプセル2をカプセル発射管路11内の発射位置に移動させる。
【0054】
カプセル発射管路11及び部分管路31は、管をリングなどで補強し、カプセル発射管路11の上部を支持架台32により支持する。空気搬送管路1の上部から側方に向かって走行レール33を配設し、この走行レール33上を走行する走行台車34上に部分管路31を設置する。側方に配置した部分管路31内にカプセル2を上から投入し、走行台車34を横行させて空気搬送管路1上に部分管路31を配置し、その上部と下部をそれぞれカプセル発射管路11、空気搬送管路1に気密的に接続する。カプセル2をカプセル移動装置12でカプセル発射管路11の上部に移動させ、図1の手順でカプセル2を下降移動させリリースして空気搬送管路1内を定速降下させる。
【0055】
図4はカプセル積み降ろし装置40の一例であり、空気搬送管路1が鉛直部だけの場合である。図4に示すように、立坑が到達する地下施設の水平坑道にカプセル積み降ろし装置40を設ける。このカプセル積み降ろし装置40は、カプセル積み込み装置30と同様に、カプセル到達管路41の上部を部分管路42とし、走行レール43と走行台車44により横行可能とする。
【0056】
部分管路42を空気搬送管路1の下部に接続し、空気搬送管路1内を下降してくるカプセル2をカプセル到達管路41内の圧縮空気により制動して停止させた後、部分管路42内にカプセル2を配置し、この部分管路42を側方に移動させ、側方位置においてカプセル2を取り出す。カプセル2は適当な搬送手段により処分空間まで搬送され、廃棄物を取り出した空カプセル2が返送される。この空カプセル2を部分管路42内に投入し、この部分管路42を空気搬送管路1の下部に接続し、上昇搬送により空カプセル2を地上へと返送する。
【0057】
図5は鉛直ランチャー定速リリース方式のカプセル発射装置10におけるランチャー起倒方式のカプセル積み込み装置50の一例である。図5に示すように、カプセル発射管路11を鉛直面内の回転により起倒可能に設置し、略水平に倒した状態のカプセル発射管路11に対して略水平状態のカプセル2を挿入すると共に、カプセル移動装置12の把持装置15によりカプセル2をカプセル発射管路11内の発射位置に引き込み、カプセル発射管路11を立て起こして下部を空気搬送管路1の上部に接続する。
【0058】
カプセル発射管路11は、下部をヒンジ装置51により空気搬送管路1の上部における側部に設置して回転自在とし、一対の立て起こしシリンダ52により起倒可能とする。空気搬送管路1の上部から側方に向かって走行レール53を配設し、この走行レール53上を走行する走行台車54上にカプセル2を設置する。略水平に倒した状態のカプセル発射管路11に対して走行台車54を水平移動させ、カプセル発射装置11の手前に位置した略水平状態のカプセル2をカプセル移動装置12の把持装置15により把持し、カプセル発射管路11内の発射位置に引き込む。次いで、カプセル発射管路11を立て起こして下部を空気搬送管路1の上部に気密的に接続し、カプセル2を図1の手順で下降移動させリリースして空気搬送管路1内を定速降下させる。
【0059】
図6は曲管路ランチャー定速リリース方式のカプセル発射装置20におけるカプセル積み込み装置60の一例である。このカプセル積み込み装置60は、直線管路21aに連続するように設置され、一対のシリンダ61でスライド台車62を水平移動させ、直線管路21a内にカプセル2を挿入するものである。なお、直線管路21aの管端には管路蓋21cが設けられている。カプセル2を図2の手順で下降移動させリリースして空気搬送管路1内を定速降下させる。なお、カプセル積み込み装置は図示例に限らず、その他の方式のものを用いることもできる。
【0060】
図7はカプセル2の構造の具体例を示したものである。空気搬送管路1とカプセル2との間のシール隙間を例えば14mm程度確保し、シール部の破損を防止するようにする。
【0061】
図7(a)は、カプセル本体に直接シール版を設置するタイプであり、カプセル本体の前面と後面にシール版3を設け、このシール版3に主走行車輪4a、補助走行車輪4b、ガイド車輪4cを取り付ける。このタイプの場合、部品点数が少なく信頼度が高く、カプセルの構造が単純・安価となる。一方で、空気搬送管路1の曲管路の管路曲率が小さい場合、シール版が管路内壁と干渉するため、曲率を大きくする必要がある。また、車輪の撓みによりシール隙間が変化するため、硬質ウレタン製や鋼製の車輪が好ましい。
【0062】
図7(b)は、ボギー台車にシール版を設置するタイプであり、カプセル本体の前面と後面にカプセル本体に対して傾動可能なボギー台車5を連結し、ボギー台車5にシール版3を設ける。このタイプの場合、曲率が小さい管路であってもシール版と管路内壁とが干渉することはない。一方で、車輪の撓みによりシール隙間が変化するため、硬質ウレタン製や鋼製の車輪が好ましい。また、鉛直管路走行時にはカプセル重心とシール版受圧中心との偏心調整機構を必要とする。
【0063】
図7(c)は、カプセル本体とシール台車をドローバーで連結して牽引するタイプであり、カプセル本体の片側にドローバーを介してシール台車6を連結する。このタイプの場合、曲率が小さい管路であってもシール版と管路内壁とが干渉することはない。また、往路・復路におけるカプセル本体重量の変化による車輪の撓みの変化はあるが、シール台車6のシール隙間に与える影響がなく、ゴムタイヤを採用できる。また、鉛直管路走行時にはカプセル重心とシール版受圧中心との偏心調整機構を必要とはしない。
【0064】
図8、図9は、空気搬送管路1の断面形状を略円弧と略直線から構成される所謂かまぼこ型とした例である。空気搬送管路1が上から順に、鉛直管路・曲線管路・水平管路から構成される場合に適用される。曲線管路及び水平管路では、カプセル2がかまぼこ型の略平坦な底面上を走行することにより、走行が安定するなどの利点がある。
【0065】
断面かまぼこ型の空気搬送管路1は、断面円形の管路に底面版1aを設置することにより簡単に製作することができる。カプセル2は、カプセル本体の前部・後部にシール台車6を連結し、各シール台車6にかまぼこ型のシール版3を設ける(図8参照)。あるいは、カプセル本体の前部・後部にボギー台車5を連結し、片側のボギー台車5にシール台車6を連結し、このシール台車6にかまぼこ型のシール版3を設ける(図9参照)。底面版1a上を多数の主走行車輪4aが転動し、安定した走行が得られる。また、曲線管路でもシール版が管路内壁と干渉することがなく、良好なシール性能が得られる。
【0066】
図10は高レベル放射性廃棄物の地層処分における処分孔縦置き方式の人工バリアの基本構成の例を示したものである。放射性廃棄物をガラス固化体として格納したステンレス鋼製のキャニスターが収納された所謂オーバーパック70を、隙間充填材71を介して緩衝材ブロック72で取り囲み、上部には遮蔽用貧配合ブロック73を配置し、外周には隙間充填材71を充填することにより、放射性廃棄物が定置埋設される。
【0067】
このような放射性廃棄物の地層処分において、カプセルにオーバーパックや緩衝材ブロック等をそれぞれ収納して、地下施設まで空気搬送し、オーバーパックや緩衝材ブロックをそれぞれ処分孔や処分坑道に配置する。また、地上施設において、オーバーパックと緩衝材を収納容器に収納して廃棄体パックとし、この廃棄体パックを地下施設へ空気搬送し、地下施設へ運ばれた廃棄体パックをそのまま処分孔や処分坑道に定置埋設することもできる。例えば直径約3.5mで長さ約1kmの空気搬送管の中を定速自由落下させて地下施設の目的地まで空気輸送する。
【0068】
図11、図12は、海上輸送された放射性廃棄物を地層処分場の地上施設に搬送する場合にも空気カプセル搬送システムを用いる場合である。図11に示すように、港湾施設に海上輸送されてきたステンレス鋼製のキャニスターを輸送容器としてキャスク80に収納し、このキャスク80を搬送台車81に搭載して地上施設まで空気カプセル輸送する。搬送台車81は、走行車輪82と走行レール83により空気搬送管路84内を走行自在とされ、搬送台車81の前後両側あるいは片側に設置したシール版85により空気搬送される。
【0069】
図12に示すように、港湾施設から地上施設までシールドトンネルにより空気搬送管路84を形成し、港湾施設でキャスク80を搬送台車81に積み込み、地上施設でキャスク80を荷降ろしし、オーバーパック組立場へ搬送する。
【0070】
なお、本発明は以上のような図示例に限定されないことはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明で用いる鉛直ランチャー定速リリース方式のカプセル発射装置の一例であり、カプセル発射工程を順に示す鉛直断面図である。
【図2】本発明で用いる曲管路ランチャー定速リリース方式のカプセル発射装置の一例であり、カプセル発射工程を順に示す鉛直断面図である。
【図3】本発明で用いる鉛直ランチャー定速リリース方式のカプセル発射装置におけるランチャー一部分離方式のカプセル積み込み装置の一例を示す斜視図であり、(a)はセット時、(b)はカプセル投入時である。
【図4】図3のカプセル積み込み装置に対応するカプセル積み降ろし装置の一例を示す斜視図であり、(a)はカプセル到達時、(b)はカプセル取り出し時である。
【図5】本発明で用いる鉛直ランチャー定速リリース方式のカプセル発射装置におけるランチャー起倒方式のカプセル積み込み装置の一例を示す斜視図であり、(a)はカプセル挿入時、(b)は立て起こし時である。
【図6】本発明で用いる曲管路ランチャー定速リリース方式のカプセル発射装置におけるカプセル積み込み装置の一例であり、(a)は斜視図、(b)は鉛直断面図である。
【図7】本発明で用いるカプセルの構造の具体例を示す斜視図である。
【図8】本発明で用いるかまぼこ型の空気搬送管路とそのカプセルの一例であり、(a)は斜視図、(b)は鉛直断面図である。
【図9】本発明で用いるかまぼこ型の空気搬送管路とそのカプセルの一例を示す斜視図であり、(a)は鉛直管部、(b)は曲管路部である。
【図10】高レベル放射性廃棄物の地層処分における処分孔縦置き方式の人工バリアの基本構成の例を示す鉛直断面図である。
【図11】海上輸送された放射性廃棄物を地層処分場の地上施設に搬送する場合の空気カプセル搬送システムの例を示す斜視図である。
【図12】海上輸送された放射性廃棄物を地層処分場の地上施設に搬送する場合の空気カプセル搬送システムの例であり、(a)は空気搬送管路部の横断面図、(b)はキャスク積み込み部の横断面図、(c)は空気搬送管路部の縦断面図、(d)全体の縦断面図である。
【符号の説明】
【0072】
1……空気搬送管路
1a…底面版
2……カプセル
3……シール版
4……車輪
4a…主走行車輪
4b…補助走行車輪
4c…ガイド車輪
5……ボギー台車
6……シール台車
10…カプセル発射装置
11…カプセル発射管路
12…カプセル移動装置
13…装置本体
14…作動部材
15…把持装置
16…開閉弁
20…カプセル発射装置
21…カプセル発射管路
21a…直線管路
21b…曲線管路
21c…管路蓋
22…カプセル移動装置
23…把持装置
24…開閉弁
30…カプセル積み込み装置
31…部分管路
32…支持架台
33…走行レール
34…走行台車
40…カプセル積み降ろし装置
41…カプセル到達管路
42…部分管路
43…走行レール
44…走行台車
50…カプセル積み込み装置
51…ヒンジ装置
52…立て起こしシリンダ
53…走行レール
54…走行台車
60…カプセル積み込み装置
61…シリンダ
62…スライド台車
70…オーバーパック
71…隙間充填材
72…緩衝材ブロック
73…遮蔽用貧配合ブロック
80…キャスク
81…搬送台車
82…走行車輪
83…走行レール
84…空気搬送管路
85…シール版

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上から地下へと配設されている空気搬送管路の内部に、廃棄物を収納した搬送容器のカプセルを地上において投入し、空気搬送管路内におけるカプセルの前後の圧力差によりカプセルを下降させて地下へと搬送する廃棄物の空気カプセル輸送方法において、
空気搬送管路の地上側の端部に接続されたカプセル発射管路と、このカプセル発射管路に設けられたカプセル移動装置を使用し、前記カプセル発射管路の上部における内部にカプセルを配置し、カプセル発射管路の上部に設置した開閉弁を開いてカプセル発射管路の管端とカプセルとの間の空間に空気を導入しつつカプセルをカプセル移動装置により下降移動させて所定の速度まで加速し、下降速度を一定の速度に保持した後、前記開閉弁を閉じ、カプセルをカプセル移動装置から解放して自由落下させることを特徴とする廃棄物の空気カプセル輸送方法。
【請求項2】
請求項1に記載の空気カプセル輸送方法において、カプセル発射管路は空気搬送管路の上部に略鉛直に立設され、カプセル移動装置は、駆動装置によりカプセル発射管路内を昇降移動する把持装置を有しており、カプセルを前記把持装置に取付けて下降移動させることを特徴とする廃棄物の空気カプセル輸送方法。
【請求項3】
請求項2に記載の空気カプセル輸送方法において、カプセル発射管路の一部が分離されて横方向に平行移動可能な部分管路とされており、カプセル発射管路の側方に平行移動させて配置した部分管路内にカプセルを挿入した後、この部分管路を平行移動させてカプセル発射管路に組み込み、カプセル移動装置の把持装置によりカプセルをカプセル発射管路内の発射位置に移動させることを特徴とする廃棄物の空気カプセル輸送方法。
【請求項4】
請求項2に記載の空気カプセル輸送方法において、カプセル発射管路が鉛直面内の回転により起倒可能に設置されており、略水平に倒した状態のカプセル発射管路に対して略水平状態のカプセルを接近移動させ、カプセル移動装置の把持装置によりカプセルをカプセル発射管路内の発射位置に引き込み、カプセル発射管路を立て起こして下部を空気搬送管路の上部に接続することを特徴とする廃棄物の空気カプセル輸送方法。
【請求項5】
請求項1に記載の空気カプセル輸送方法において、カプセル発射管路は、空気搬送管路の上方に略水平に配置された上部の直線管路と、この直線管路と空気搬送管路の上部とを連結する曲線管路とから構成され、カプセル移動装置は、駆動装置により直線管路及び曲線管路内を昇降移動する把持装置を有しており、カプセルを前記把持装置に取付けて下降移動させることを特徴とする廃棄物の空気カプセル輸送方法。
【請求項6】
請求項5に記載の空気カプセル輸送方法において、直線管路内にカプセルを挿入することを特徴とする廃棄物の空気カプセル輸送方法。
【請求項7】
請求項1から請求項6までいずれか一つに記載の空気カプセル輸送方法において、空気搬送管路の断面形状が略円弧と略直線から構成されるかまぼこ型であることを特徴とする廃棄物の空気カプセル輸送方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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