説明

廃棄物処理プラント,廃棄物処理プラントの運転方法

【課題】本発明は安定的に溶融炉の運転を行うことを目的とする。
【解決手段】本発明は、第一の手段として、熱分解残渣を排出する熱分解炉と熱分解残渣が供給される溶融炉との間に、熱分解残渣を粉砕する粉砕力を熱分解残渣の状態に基づいて変更することが可能な粉砕機を備えたことを特徴とする。また、第二の手段として、一方の設備系統における熱分解残渣を排出する熱分解炉と熱分解残渣が供給される溶融炉との間に、複数の設備系統における熱分解残渣の状態に基づいて他方の設備系統を流れる熱分解残渣と混合する混合装置を備えたことを特徴とする。
【効果】本発明によれば、安定的に溶融炉の運転を行うことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は廃棄物処理プラント,廃棄物処理プラントの運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
廃棄物を熱分解炉で熱分解した後、熱分解ガスと熱分解残渣に分離し、熱分解残渣は残渣中の金属分を除去した後に溶融炉で燃焼溶融処理するガス化溶融システムがある。熱分解炉に供給する廃棄物は水分,可燃分,灰分から構成され、一般にこれらの構成割合が一定であり続けることは少ない。また、廃棄物の形状も様々である。例えば、廃棄物処理量はあまり変化しない状態において廃棄物の水分率が急増した場合、熱分解炉で水分を蒸発するために熱が必要となり、熱分解炉の温度が一時的に急低下する可能性がある。この時、熱分解炉で生成した熱分解残渣は通常の状態とは異なるため、熱分解炉の下流側に設置した溶融炉の燃焼状態に影響する可能性もある。以上のように、熱分解炉に供給する廃棄物の質や供給量の変化は、熱分解炉や溶融炉が安定に運転できない事象につながる場合がある。
【0003】
そこで特許文献1では、熱分解炉に供給する廃棄物の質や供給量の変動が発生した場合、熱分解炉に供給する廃棄物の供給量を増減して、予め設定され熱分解炉が熱分解に必要な最小必要温度以上になるように廃棄物量を供給及び制御する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−344213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された技術は、熱分解炉から排出される熱分解残渣の可燃分や熱分解の程度が所定の状態に保たれるように熱分解炉に供給する廃棄物の量を制御する技術であり、熱分解残渣を排出する熱分解炉出口から上流側の位置で熱分解中の残渣の温度を計測する。そのため、熱分解残渣の状態の変動を感知するまでに既に熱分解炉に供給した廃棄物については考慮していない。即ち、廃棄物の質や供給量の変動を熱分解炉の内部で感知した後、プラントの運転条件を変更して安定な運転状態に戻す間、一時的に可燃分や熱分解の程度が所定の状態にない熱分解残渣が発生する。特許文献1には、一時的に可燃分や熱分解の程度が所定の状態にない熱分解残渣の処理方法について開示していない。
【0006】
前述の処理方法として、一時的にプラントが不安定な状態で発生した熱分解残渣はそのまま溶融炉で処理することが考えられる。例えば、前述のように水分の多い廃棄物を熱分解して熱分解炉の温度が下がった場合、熱分解温度が下がることによって熱分解されない可燃分が増加する。このため、熱分解残渣中の可燃分量が増加する。熱分解残渣を燃料として燃焼する溶融炉では急に可燃分が増加するため、可燃分量と空気の割合が変化する燃焼状態の急変により燃焼温度が上昇したり、COが多量発生したりする可能性があり、溶融炉に影響を与える。また、熱分解温度の低下は、熱分解炉において十分に廃棄物を熱分解できないことを意味し、燃焼に適さないいわゆる生焼けの熱分解残渣の量が一時的に増加する可能性もある。この時、燃焼不適物の増加を引き起こし、溶融炉で本来処理されるべきものが処理されないことを意味し、溶融炉に影響を与える。
【0007】
よって、本発明は安定的に溶融炉の運転を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、第一の手段として、熱分解残渣を排出する熱分解炉と熱分解残渣が供給される溶融炉との間に、熱分解残渣を粉砕する粉砕力を熱分解残渣の状態に基づいて変更することが可能な粉砕機を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、第二の手段として、一方の設備系統における熱分解残渣を排出する熱分解炉と熱分解残渣が供給される溶融炉との間に、複数の設備系統における熱分解残渣の状態に基づいて他方の設備系統を流れる熱分解残渣と混合する混合装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、安定的に溶融炉の運転を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の熱分解残渣の粉砕制御システムを組み込んだ廃棄物処理プラントの構成図(実施例1)。
【図2】廃棄物の供給量及び質が変動した時のプラント挙動を示した図。
【図3】廃棄物の水分率,熱分解残渣の温度、及び粉砕機の粉砕力の制御結果を示す図。
【図4】本発明の熱分解残渣の混合制御システムを組み込んだ廃棄物処理プラントの構成図(実施例2)。
【図5】本発明の熱分解残渣の混合及び貯留制御システムを組み込んだ廃棄物処理プラントの構成図(実施例3)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は一般ごみのガス化溶融炉や汚泥処理施設などの廃棄物処理プラントにおいて、熱分解炉に供給する廃棄物の質や供給量の変化が生じて所定の状態にない熱分解残渣が発生しても、この熱分解残渣が下流側の溶融炉に与える影響を抑制し、安定にプラントの運転を継続する発明に関するものである。
【実施例1】
【0013】
図1は、実施例1における熱分解残渣の粉砕制御システムを組み込んだ廃棄物処理プラントの構成図を示す。破砕された廃棄物1をロータリーキルンや流動層を用いた熱分解炉2に供給し、還元雰囲気で加熱して熱分解した後、熱分解ガス3と熱分解残渣4を生成する。本実施例では熱分解炉としてロータリーキルンを用いた例を示す。熱分解炉2の排出部50から排出された熱分解残渣4は450℃程度であり発火の可能性があるので、熱分解残渣冷却装置5で80℃以下程度に冷却する。ここで、排出部50とは熱分解炉2で熱分解された熱分解残渣を下流側の熱分解残渣冷却装置5に供給する経路の起点となる位置である。従って、熱分解残渣が熱分解炉2から排出され、熱溶融炉19に供給されるまでの経路の起点ともなる。冷却装置5で冷却された熱分解残渣は粉砕機6で粉砕して小径化し、分級器7で粗大なものを分離する。なお、粉砕機6としてボールミルやロッドミルなどがある。分級器7で分離された粗大な熱分解残渣8はさらに磁選器などの金属類分離装置10で金属類を分離回収し、回収した金属類11は金属貯留バンカ12に送る。金属貯留バンカ12の金属類は有価物として定期的に系外に搬送する。また、金属類分離装置10で分離した金属類以外の燃焼不適物13は、燃焼不適物貯留バンカ14に送る。燃焼不適物貯留バンカ14の燃焼不適物は、処理不能物として最終処分場に埋める。
【0014】
一方、粗大な金属類や燃焼不適物を取り除いた熱分解残渣9は、熱分解残渣供給ホッパ15で一時的に貯留する。熱分解残渣供給ホッパ15の熱分解残渣は熱分解残渣搬送装置16に送り、時間当たり一定量を熱分解残渣搬送空気ファン17から供給する空気で溶融炉19に搬送する。熱分解残渣は溶融炉19の供給部51から溶融炉内に供給される。ここで、供給部51とは熱分解残渣搬送装置16から搬送された熱分解残渣を下流側の溶融炉19に供給する経路の終点となる位置である。従って、熱分解残渣が熱分解炉2から排出され、熱溶融炉19に供給されるまでの経路の終点ともなる。溶融炉19に空気とともに供給した熱分解残渣18は、熱分解残渣18とは別系統から供給した燃焼空気20とともに完全燃焼する。溶融炉19における燃焼温度は1300℃以上となるため、熱分解残渣中の灰分がスラグ化する。また、燃焼によって生じた排ガス21は、熱回収した後、系外に排出する。本実施例では、熱分解残渣を排出する熱分解炉2の排出部50を起点とし、熱分解残渣を供給する溶融炉19の供給部51を終点とする経路に熱分解残渣が流れることになる。そして、前記経路の両端を構成する熱分解炉2と溶融炉19の間に熱分解残渣冷却装置5,粉砕機6,分級器7,熱分解残渣供給ホッパ15,熱分解残渣搬送装置16を備える。
【0015】
ここで、熱分解炉2で熱分解中の熱分解残渣の状態は以下に示すような検知装置22で測定したデータから予測できる。例えば、(1)熱分解炉内に設置した熱分解残渣の温度あるいは周辺の壁面温度を測定する温度計、(2)熱分解ガスの流量を測定する流量計、(3)熱分解ガスの組成比を測定するガス組成分析計、又は(4)熱分解残渣の硬度を測定する硬度計である。なお、(1)の温度計では直接熱分解残渣の温度や壁面温度が測れない場合、その他のデータより前記温度を推定する温度検知手段を用いても良い。(2)乃至(4)でも同様であり、直接、熱分解ガスの流量・ガス組成比・熱分解残渣の硬度が測れない場合、別のデータより推定する検知手段を用いることも可能である。
【0016】
熱分解炉2は熱分解残渣4の温度が所定の温度になるように運転するため、温度計(1)を利用すると直接的に熱分解残渣の状態を把握可能である。また、熱分解温度の高低や熱分解残渣中における可燃分量の増減に応じて熱分解ガスの量が増減するため、流量計(2)を利用すると熱分解状態や廃棄物性状が予測できる。さらにガス組成分析計(3)を利用して熱分解ガスの組成を調べると、熱分解残渣中に含まれている水分や可燃分量が予測可能である。また、熱分解残渣の硬度を硬度計(4)を利用して測定すると、硬度によって熱分解の程度が予測可能である。熱分解の程度が進むにつれて、熱分解残渣の硬度が上昇するからである。このように、各種の計測器を用いることで熱分解残渣の状態を容易に把握可能である。
【0017】
以上の構成を備える廃棄物処理プラントにおいて、熱分解炉2に供給する廃棄物1の供給量や質に急な変動が発生した場合、熱分解炉2において熱分解の状態が変化する。廃棄物1の供給量や質の変動に対するプラント機器の挙動を図2に示す。本実施例は廃棄物1の供給量や質の一時的な変動を対象としているため、廃棄物の質が変動しても処理量はほぼ一定として考える。そのため、廃棄物中の水分率や可燃分率の増加は廃棄物中の灰分率の低下を意味する。
【0018】
まず、廃棄物の供給量,廃棄物中の水分率及び廃棄物中の可燃分比率が急増した場合、熱分解炉2において熱分解に必要な熱量が一時的に増加するため、廃棄物が十分に熱分解できなくなる可能性がある。一般に、熱分解が十分でない熱分解残渣の状態は、粒径が大きくなり数センチの大きさになることもある。この熱分解残渣は揮発分が通常時よりも多く、やわらかいことが多い。この時、一時的に増加した廃棄物1の熱吸収にともなって熱分解炉2の壁面温度が低下することや、熱分解残渣中に揮発分が残存するために熱分解ガスの流量が低下することが発生する。また、熱分解ガスの組成は可燃分の比率が減少したり、水分の比率が増加したりする。これらの現象は熱分解炉2に設置した検知装置22で検知可能である。検知した情報は電気信号23として、制御装置24で受信する。また、検知した信号23から得た量や温度、また粉砕機6の粉砕力の状態はモニタなどの出力装置100で監視する。
【0019】
ここで、熱分解炉2の排出部50から粉砕機6までに熱分解残渣が移動する時間は、予め時間遅れを試運転などで計測しておくと予測可能である。また、熱分解炉2から粉砕機6までの容積を廃棄物の体積流量で割ると、概ねの滞留時間が分かるので、この時間を時間遅れとしても良い。この予測した時間に合うように、制御装置24から粉砕機6の粉砕力を増加する信号25を送信する。また、予め熱分解残渣の温度などといった検知装置22の検知信号と粉砕力の関係を調査しておくと、この関係を制御装置に関数化して組み込める。これにより、粉砕力の増加幅を決めることができる。この粉砕力の調整により、熱分解の十分でない粗大な熱分解残渣も粉砕後の粒径が大きくなることを抑制できる。なお、粉砕力を大きくするには粉砕機の加振力を大きくすればよい。粒径の大型化を抑制できるため、分級器7に達した熱分解残渣が燃焼不適物として系外に排出する量を低減できる。系外排出量の低減は最終処分場への搬送量の低減となり、環境への負荷も減少する。また、熱分解残渣の粒径が大きいままでは、溶融炉19において着火できずに燃え残るような熱分解残渣が発生し、溶融炉内の温度の維持に影響をきたすことになる。しかし、熱分解残渣の粒径を数十〜千μm程度の低粒径に調整すると、溶融炉19において着火時間などの特性はあまり変化しないので、燃焼状態を安定に保ちやすくなる。
【0020】
一方、熱分解炉2に供給する廃棄物1の供給量や廃棄物中の水分率及び廃棄物中の可燃分比率が急減した場合、上述と反対の現象が起こる。熱分解炉2において、熱分解に必要な熱量が一時的に減少するため、廃棄物1の単位重量当りの受熱量が増加して廃棄物の熱分解が進む。一般に、熱分解が十分な廃棄物は粒径の小さな熱分解残渣となる。この熱分解残渣は揮発分が通常時よりも少なく、硬い場合が多い。この時、熱分解炉2の壁面温度上昇や、熱分解ガスの流量増加及び熱分解ガスの組成が可燃分の比率が増加したり、水分の比率が減少したりする。そのため、検知装置22で検知可能である。従って、粉砕機6の粉砕力を低下すれば、熱分解状態の十分な熱分解残渣が過度の粉砕によって小さくなりすぎることを回避できる。熱分解残渣の粒径が小さすぎると、溶融炉19において熱分解残渣が空気に追随して移動しやすくなるため、燃焼する位置が変化する可能性が生じる。
熱分解残渣が所定の燃焼位置で燃えないことにより、COなどのガスが発生する可能性が高くなるため、粉砕機6の粉砕力を低下させ熱分解残渣が過度の粉砕によって小さくなり過ぎることを防ぐ必要があるためである。
【0021】
本実施例では、熱分解残渣を排出する熱分解炉2と熱分解残渣が供給される溶融炉19との間に、熱分解残渣4を粉砕する粉砕力を熱分解残渣4の状態に基づいて変更することが可能な粉砕機6を備える。なお、熱分解残渣の状態とは、熱分解残渣の粒径によって規定される。また、熱分解残渣が所定の状態にある場合とは、熱分解炉2が設計時に想定された通常の熱分解能力を発揮した場合に規定される熱分解残渣の粒径の範囲である。
【0022】
ここで、熱分解残渣の状態に基づいて粉砕機6の粉砕力を変更する方法について説明する。熱分解残渣の状態を検知する検知装置22では、前述の通り熱分解ガスの流量や組成などを検知することが可能であるが、以下では熱分解残渣の温度を用いて説明する。
【0023】
図3は、横軸に時間をとり、縦軸に熱分解炉2に供給する廃棄物の水分率,熱分解残渣の温度,粉砕機の粉砕力をそれぞれ示している。そして、時刻t1において熱分解炉2に供給する廃棄物の水分率が急上昇し、Δt2だけ経過した後に廃棄物の水分率が戻った場合を考える。時刻t1で廃棄物の水分率が急上昇しても、熱分解炉2に配置された検知装置22が熱分解残渣の所定状態からの変化(即ち、熱分解炉2に供給された廃棄物の質や量の変化)を検知するには時間遅れが生じる。図3では、時刻t1からある時間遅れが生じ、時刻t2で初めて検知装置22が熱分解残渣の状態の変化を熱分解残渣の温度低下として検知している。そのため、時刻t1から時刻t2までに既に熱分解炉2に供給された水分率が高い廃棄物の処理方法が問題となる。時刻t1から時刻t2までに既に熱分解炉2に供給された水分率が高い廃棄物は、前述の通り、熱分解炉2から排出されても熱分解残渣の粒径が大きく、そのまま溶融炉19に供給することは困難である。そこで、本実施例では、時刻t1から時刻t2までに既に熱分解炉2に供給された水分率が高い廃棄物により生成する熱分解残渣を粉砕機6で粉砕する際の粉砕力をf0からf1まで増加することで、熱分解残渣の粒径を溶融炉19に適した大きさに調整する。ここで、粉砕機6の粉砕力f0は、熱分解炉2から排出される熱分解残渣が所定の状態にある場合に、熱溶融炉19への供給に適した熱分解残渣の粒径を得られるように定めている。そして、熱分解残渣が所定の状態にある場合とは、廃棄物処理プラントを通常運転する際に熱分解炉2に供給する廃棄物の供給量,水分率及び可燃分率と熱分解炉2の運転条件で得られる熱分解残渣の粒径で規定できると言い換えることもできる。
【0024】
また、本実施例では、時刻t2で熱分解炉2に配置された検知装置22が熱分解残渣の状態の変化(熱分解残渣の温度低下)を検知してから、更に所定の時間遅れΔt1だけ遅れた時刻t3で粉砕機6の粉砕力を増加させている。時刻t2で検知装置22に到達した熱分解中の熱分解残渣が冷却装置5を経て粉砕機6に至るまでには、更に所定の時間がかかるためである。この時間遅れΔt1は、試運転などで計測しておくと予測可能である。なお、粉砕機6の粉砕力を増加させる時間Δt2″は、熱分解炉2に廃棄物の水分率が一時的に高くなったΔt2′の間だけ発生した熱分解残渣の量を粉砕機の処理速度で除した時間である。このΔt2′は、熱分解炉2に設けられた検知装置22が検知する熱分解残渣の状態によって定めることが可能である。また、一般に単位時間の熱分解残渣発生量Mは事前に分っているので、Δt2′とMを乗すると状態変化が発生した熱分解残渣発生量を求められる。図3では、廃棄物の水分率が急上昇した場合について説明したが、廃棄物の供給量や可燃分の急変に対しても、同様に粉砕機の粉砕力を制御することで対応可能である。
【0025】
このように、本実施例の廃棄物プラントにおいて、熱分解残渣を排出する熱分解炉2と熱分解残渣が供給される溶融炉19との間に、熱分解残渣4を粉砕する粉砕力を熱分解残渣4の状態に基づいて変更することが可能な粉砕機6を備えることで、所定の状態にない熱分解残渣によって溶融炉における熱分解残渣の直下時間や燃焼率が変動するといった影響を抑制することが可能となり、燃焼状態を安定に維持し、安定的に溶融炉の運転を行うことが可能となる。これにより、COなどの増加を抑制することや、急激に燃焼状態が変化することによる溶融炉内壁の損傷を抑制することが可能である。また、粗大な熱分解残渣が発生するときは、粒径を小径化することで燃焼不適物として系外に排出する量を低下できる。系外排出量の低下は最終処分場への運込み量の低下となり、環境への負荷を減少させることも可能である。
【実施例2】
【0026】
図4は、実施例2における熱分解残渣の混合制御システムを組み込んだ廃棄物処理プラントの構成図である。一般に廃棄物処理プラントは複数の設備系統をもつ。ここで、設備系統とは廃棄物を熱分解する熱分解炉と前記熱分解炉が生成する熱分解残渣を溶融燃焼させる溶融炉で構成され、熱分解残渣が熱分解炉から排出され熱溶融炉に供給されるまでの経路を実施例1と同様に備える。これらの各々の設備系統で生成する熱分解残渣は、常時完全に同じ組成や温度であることは少ない。また、設備系統毎に運転条件を変更することが可能である。本実施例は、これらの特性を利用して廃棄物処理プラントを安定に運転するものである。図4では2つの設備系統A,Bについて説明するが、それ以上の設備系統数を有するプラントにも適用可能である。
【0027】
一方の設備系統Aには、図1と同様に廃棄物を加熱して熱分解する熱分解炉2aと熱分解残渣を溶融燃焼させる溶融炉19aを備え、熱分解炉2aから排出した熱分解残渣を冷却装置5a,粉砕機6a,分級器7aを経て溶融炉19aに供給する点は同じである。但し、分級器7aにおいて粗大なものを除いた熱分解残渣が、熱分解残渣供給ホッパ15a又は熱分解残渣の混合装置28のいずれかに送ることができる点が異なっている。また、他方の設備系統Bにも、図1と同様に廃棄物を加熱して熱分解する熱分解炉2bと熱分解残渣を溶融燃焼させる溶融炉19bを備え、熱分解炉2bから排出した熱分解残渣を冷却装置5b,粉砕機6b,分級器7bを経て溶融炉19bに供給する点は同じである。そして、分級器7bからも熱分解残渣を熱分解残渣の混合装置28に送ることができる。熱分解残渣の混合装置28への熱分解残渣の搬送流量は、分級器7aは流量調節装置26aで、分級器7bは流量調節装置26bで調節可能である。混合装置28で混合した複数の設備系統の熱分解残渣は、流量調節装置29a及び29bで各設備系統に戻す量を調整できる。
【0028】
以上の特徴を備える廃棄物プラントにおいて、片方の設備系統で廃棄物の供給量や廃棄物中の水分率,廃棄物中の可燃分比率が急変した場合を考える。図の左側の系である設備系統Aで廃棄物の変動が生じ、設備系統Bと熱分解状態の違う熱分解残渣が発生したとする。ここで、熱分解炉2aから分級器7aまでにこの熱分解残渣が移動する時間は、予め時間遅れを試運転などで計測しておくと予測可能である。熱分解残渣が分級器7aに到達した時間に合わせ、混合装置28に熱分解残渣を移動する信号を制御装置24から流量調節装置26aと27aに送信する。信号を受信した流量調節装置26aは廃棄物の変動時間分だけ混合装置28へ熱分解残渣を送り、流量調節装置27aは熱分解残渣供給ホッパ15aへ熱分解残渣を搬送するのを中止する。同時に、図の右側の系統である設備系統Bからも熱分解残渣を混合装置28に搬送するため、制御装置24から信号を流量調節装置26bと27bに信号を送信する。信号を受信した流量調節装置26bは混合装置28へ熱分解残渣を送り、流量調節装置27bは熱分解残渣供給ホッパ15bへの熱分解残渣の搬送速度を減速するか、停止する。混合装置28における熱分解残渣の混合の比率はプラント毎、運転状況ごとに異なるので、予め調査して決める。混合装置28において熱分解残渣は出来る限り均等に混ざり合うことが望ましい。そのため混合装置28は内部に羽のついたリボンブレンダのような機器で機械的な混合をすることが望ましい。混合された熱分解残渣は混合装置28から流量調節装置29aを経て、熱分解残渣供給ホッパ15aに戻し入れる。これにより、熱分解状態の違う熱分解残渣の影響で、溶融炉19aの燃焼状態が急変するような事象を抑制することが可能になる。また、混合装置28から熱分解残渣を戻す時は、図のように流量調節装置29bを稼動して供給量の過不足が起きないように制御することが望ましい。
【0029】
本実施例では、一方の設備系統である設備系統Aにおける熱分解残渣を排出する熱分解炉2aと熱分解残渣が供給される溶融炉19aとの間に、前記複数の設備系統A,Bにおける熱分解残渣の状態に基づいて他方の設備系統である設備系統Bの経路を流れる熱分解残渣と混合する混合装置28を備えている。例えば、設備系統Aの熱分解炉2aに供給する廃棄物の水分率が増加すると、熱分解残渣の粒径は大きくなるため、この熱分解残渣をそのまま溶融炉19aに供給することは困難である。そこで、本実施例では設備系統Bの熱分解炉2bから排出された熱分解残渣を混合装置28に供給し、設備系統Aからの熱分解残渣と混合することで、粒径が大きい熱分解残渣の時間当たりの供給量を減少させることが出来る。従って、熱分解炉2aの下流側に配置された溶融炉19aに与える影響を抑制することが可能となり、溶融炉19aを安定的に運転させることができる。即ち、一部の設備系統で熱分解炉2に供給する廃棄物の供給量や廃棄物中の水分率,廃棄物中の可燃分比率が急変した場合に、混合装置28で複数の設備系統の熱分解残渣を混合することにより、所定の状態にない熱分解残渣を溶融炉に供給する時間当たりの量を減少させることが出来る。そのため、混合装置28を設置しない場合に比べ、熱分解炉2aに供給する廃棄物の質や量の変動に伴う熱分解残渣の状態の変動を抑制することで、下流側の溶融炉19aに与える影響を抑えることが可能である。
【実施例3】
【0030】
図5は、実施例2のシステムに、さらに熱分解残渣貯留ホッパ33を設置した実施例である。実施例2に追加した機器について説明する。分級器7aにおいて粗大なものを除いた熱分解残渣は、熱分解残渣供給ホッパ15aあるいは熱分解残渣の混合装置28あるいは熱分解残渣貯留ホッパ33のいずれかに送ることができる。また、分級器7bからも熱分解残渣を熱分解残渣の混合装置28あるいは熱分解残渣貯留ホッパ33に送ることができる。分級器7aは流量調節装置30aで、分級器7bは流量調節装置30bで熱分解残渣貯留ホッパ33への熱分解残渣の搬送流量を調節可能である。混合装置28で混合した複数設備系統の熱分解残渣は、流量調節装置29a及び29bで各設備系統に戻すことと、流量調節装置32で混合装置28の下流側に設けられた熱分解残渣貯留ホッパ33に搬送することが可能である。熱分解残渣貯留ホッパ33に貯留した熱分解残渣は、流量調節装置31a及び31bで各系統に戻す量を調整し、熱分解残渣供給ホッパ15aに搬送することができる。以上の特徴を備える廃棄物プラントにおいて、廃棄物1の供給量や質に急な変動が起きた場合の運転方法について説明する。
【0031】
実施例2と同様、片方の設備系統Aで熱分解炉2aに供給する廃棄物の供給量や廃棄物中の水分率や廃棄物中の可燃分比率が急変した場合を考える。この時、以下のように熱分解残渣貯留ホッパ33を利用して、プラントの運転が不安定になる現象を抑制可能である。所定の状態にない熱分解残渣が分級器7aに到達した時間に合わせ、熱分解残渣貯留ホッパ33に移動する信号を制御装置24から流量調節装置30aに送信する。なお、熱分解炉2aから分級器7aまでに熱分解残渣が移動する時間は、予め時間遅れを試運転などで計測しておくと予測可能である。信号を受信した流量調節装置30aは、廃棄物の変動時間分だけ熱分解残渣貯留ホッパ33へ所定の状態にない熱分解残渣を送る。熱分解残渣貯留ホッパ33中の熱分解残渣は、流量調節装置31aを調整し、少量ずつ系統に戻入れれば下流の溶融炉19aに影響を与えずに処理が可能となる。また、設備系統Aへの戻入れ量は熱分解残渣貯留ホッパ33に送った量とつりあうように、流量調節装置31aの稼働時間を設定すると良い。また、実施例2と同様、廃棄物の質などの変動を検知し、混合装置28で熱分解残渣を混合した後、熱分解残渣貯留ホッパ33に搬送する。熱分解残渣の性状が極端に通常と違う場合、実施例2のように全量を設備系統Aに戻入れると溶融炉19aの運転に影響が生じる可能性がある。このため、一旦、熱分解残渣貯留ホッパ33で熱分解残渣を貯留して、少量ずつ系統に戻入れることが可能である本実施例は、プラントの安定運転(即ち、熱分解炉の運転)に対し効果が大きい。
【0032】
熱分解残渣貯留ホッパ33から熱分解残渣を戻す時は、図のように流量調節装置31a及び31bを稼動して、複数の設備系統に戻せるようにしておくと良い。例えば廃棄物の性状が変動することが多くなるような事象が生じ、一時的に熱分解残渣の貯留量が増加した場合、複数の設備系統に戻せるようにしておくと、熱分解残渣貯留ホッパ33の容量が不足するような事態を回避できる。
【0033】
これにより、熱分解状態の違う熱分解残渣の影響で、溶融炉の燃焼状態が急変するような事象を防止することが可能になる。
【符号の説明】
【0034】
2,2a,2b…熱分解炉、6,6a,6b…粉砕機、7,7a,7b…分級器、19,19a,19b…溶融炉、22…検知装置、24…制御装置、28…混合装置、33…熱分解残渣貯留ホッパ、100…出力装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物を加熱して熱分解し熱分解ガスと熱分解残渣を生成する熱分解炉と該熱分解残渣を溶融燃焼させる溶融炉とを備えた設備系統を複数備える廃棄物処理プラントであって、 一方の設備系統における熱分解残渣を排出する前記熱分解炉と該熱分解残渣が供給される前記溶融炉との間に、
前記複数の設備系統における前記熱分解残渣の状態に基づいて他方の設備系統を流れる熱分解残渣と混合する混合装置を備えたことを特徴とする廃棄物処理プラント。
【請求項2】
廃棄物を加熱して熱分解し熱分解ガスと熱分解残渣を生成する熱分解炉と該熱分解残渣を溶融燃焼させる溶融炉とを備えた設備系統を複数備える廃棄物処理プラントであって、 一方の設備系統における熱分解残渣を排出する前記熱分解炉と該熱分解残渣が供給される前記溶融炉との間に、
前記複数の設備系統における前記熱分解残渣の状態に基づいて他方の設備系統を流れる熱分解残渣と混合する混合装置と、
該混合装置の下流側に設けられ、前記複数の設備系統における熱分解残渣を貯留する貯留装置を備えたことを特徴とする廃棄物処理プラント。
【請求項3】
請求項1乃至2記載の廃棄物処理プラントであって、
前記熱分解残渣の状態を検知する手段として、熱分解残渣又は前記熱分解炉の壁面温度を検知する温度検知手段、若しくは前記熱分解炉が排出する熱分解ガスの流量を検知する流量検知手段又は該熱分解ガスの組成比を検知するガス組成分析検知手段を使用することを特徴とする廃棄物処理プラント。
【請求項4】
熱分解炉で廃棄物を熱分解して熱分解残渣を生成する第1の工程と、
該熱分解残渣を溶融炉で溶融燃焼させる第2の工程とを含む設備系統を複数備えた廃棄物処理プラントの運転方法であって、
前記第1の工程と前記第2の工程との間で他方の設備系統における前記熱分解残渣と混合する第3の工程を含み、該第3の工程では前記熱分解残渣と混合する際の混合比率を前記複数の設備系統における前記熱分解残渣の状態に基づいて変更することを特徴とする廃棄物処理プラントの運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−252701(P2011−252701A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177391(P2011−177391)
【出願日】平成23年8月15日(2011.8.15)
【分割の表示】特願2005−355536(P2005−355536)の分割
【原出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】