説明

廃棄物処理装置

【課題】燃料ガスの質を低下させる原因となっている熱分解工程への空気やガスの漏入を防止するとともに、廃棄物前処理工程への熱分解ガス逆流を阻止することにより熱分解工程の上流で非意図的な燃焼等が起きる可能性を排除して、より良質の製品が安全かつ確実に製造できる廃棄物処理装置および廃棄物処理方法を提供する。
【解決手段】有機物を含む廃棄物を空気を遮断した状態下で間接的に加熱することにより、ガス状の熱分解生成物と固体状の残さを得る熱分解手段5と、熱分解手段の上流に接続される廃棄物前処理手段2と、熱分解手段と廃棄物前処理手段とを接続する廃棄物流路3と、廃棄物流路に設けられ廃棄物前処理手段と廃棄物挿入手段とを結ぶ経路を遮断する遮断機構13と、遮断機構より廃棄物前処理手段側の圧力と遮断機構より熱分解手段側の圧力差を計測する圧力差計測手段17と、圧力差計測手段に基づいて遮断機構の制御を行う制御手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物を熱分解した後、ガス改質およびガス浄化を行うことによりクリーンな燃料ガスを得る廃棄物処理装置および廃棄物処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、廃棄物を熱分解した後、ガス改質およびガス浄化を行うことにより、クリーンな燃料ガスを得る廃棄物処理技術が知られている。
【0003】
このような技術においては、廃棄物処理装置に供給される被処理物が過大な水分を含んでいる場合には、熱分解工程での温度上昇が不十分となり、熱分解ガスの発生に支障をきたすことがあるため、廃棄物前処理工程で乾燥を実施するのが一般的である。
【0004】
乾燥に際しては、後流の熱分解工程へ空気を持ち込むことを避けつつ、乾燥を実現する必要がある。乾燥を効率よく実現させるためには、蒸発してきた水蒸気やガス成分を吸引および排除することにより廃棄物表面における水蒸気分圧や蒸気ガス成分の分圧を下げ蒸発へのライビングフォースを確保する必要があり、吸引ブロワのような機器を適用するのが一般的であるが、吸引の度合が強すぎると廃棄物前処理工程の圧力が熱分解工程の圧力よりも低くなり、熱分解工程で発生した熱分解ガスの廃棄物前処理工程への圧力よりも低くなってしまい、熱分解工程で発生した熱分解ガスの廃棄物前処理工程への逆流が起こりうる状況となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、従来の技術においては圧力逆転や熱分解ガスの逆流が生じる可能性がある。これにより、逆流量が多くなると廃棄物処理装置から得られる製品(浄化ガス)の量および質に悪影響がでるばかりでなく、熱分解ガス中の可燃成分による燃焼や高沸点成分の固着による閉塞などの弊害が生ずる可能性もある。このため、そのような逆流を防止するための手段を確立する必要がある。
【0006】
また、廃棄物前処理工程で乾燥を実施する場合のように、仮に廃棄物前処理工程の圧力が下流の熱分解工程の圧力よりも低い状況にあったとしても、熱分解ガスの逆流防止に有効な手段を採ることができれば、さらに望ましい。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、燃料ガスの質を低下させる原因となっている熱分解工程への空気やガスの漏入を防止するとともに、廃棄物前処理工程への熱分解ガス逆流を阻止することにより熱分解工程の上流で非意図的な燃焼等が起きる可能性を排除し、それにより良質の製品が、安全かつ確実に製造できる廃棄物処理装置および廃棄物処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、本発明では、燃料と空気とを燃焼させて得られた高温の燃焼ガスを用いて、有機物を含む廃棄物を空気を遮断した状態下で間接的に加熱することにより、ガス状の熱分解生成物と固体状の残さを得る熱分解手段と、前記熱分解手段の上流に接続される廃棄物前処理手段と、前記熱分解手段と前記廃棄物前処理手段とを接続する廃棄物流路と、前記廃棄物流路に設けられ前記廃棄物前処理手段と前記廃棄物挿入手段とを結ぶ経路を遮断する遮断機構と、前記遮断機構より廃棄物前処理手段側の圧力と前記遮断機構より熱分解手段側の圧力差を計測する圧力差計測手段と、前記圧力差計測手段に基づいて前記遮断機構の制御を行う制御手段とを備えたことを特徴とする廃棄物処理装置を提供する。
【0009】
このような本発明においては、各工程の圧力を計測するための計測手段を設け、それらによる計測結果を基に廃棄物前処理工程を起点としてガス浄化工程に至る各工程の圧力が単調減少していくように運転圧力を制御することにより、ガス逆流を防止することができる。
【0010】
即ち、熱分解ガスの逆流が生じるのを防止するための手段を確立しようとする場合、廃棄物処理装置の運転時を通して、常に廃棄物前処理工程の圧力を熱分解工程の圧力より若干高く静翼し続けるのは高度な制御が必要となりコスト高にもなる一方で十分な乾燥が達成できなくなる可能性もあり、現実的な対策とは言えない。
【0011】
本発明では、十分な乾燥を実現できるとともに、圧力的な逆転が生じないような機器プロセス構成とその運用方法についてなされたものである。
【0012】
また、廃棄物前処理工程で乾燥を実施する場合、仮に廃棄物前処理工程の圧力が下流の熱分解工程の圧力よりも低い状況にあっても、廃棄物前処理工程から熱分解工程へ至る複数本の経路を用意し、そのそれぞれに廃棄物前処理工程と熱分解工程とを遮断する遮断機構を設置することにより、熱分解ガスの逆流を防止することが可能である。複数本の経路に設置された遮断機構を開閉させながら複数本の経路を順次切り替えていくことにより、廃棄物前処理工程と熱分解工程との接続を絶ちながら連続的廃棄物処理を達成することが可能である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、熱分解ガス中の可燃成分による燃焼・爆発や高沸点成分の固着による閉塞などの弊害を回避することができ信頼性、安全性の確保が有効に図れる。
【0014】
また、熱分解工程への非意図的なガスの流入・特に空気の流入を阻止することができ廃棄物処理装置性能低下防止や安全性確保にも有効なものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態による廃棄物処理装置を示すシステム構成図である。
【0017】
この図1に示すように、廃棄物処理装置は前段に、廃棄物導入路1および廃棄物前処理手段2を備える。
【0018】
そして、これらの後段に、順に、廃棄物流路3、廃棄物挿入手段4、熱分解手段5、ガス改質手段6、ガス冷却手段7、ガス浄化手段8、ガス吸引・昇圧手段9、ガス取り出し路10、固体状残さ取り出し路11、固体状残さ排出手段12および遮断機構13を備える。
【0019】
廃棄物前処理手段2は、例えば破砕装置、分級装置、乾燥装置等を備え、ここで被処理物である廃棄物が所定粒度の乾燥粉体状に前処理された後、供給手段によって廃棄物流路3に供給される。
【0020】
次に、図1に示すように、被処理物58は廃棄物流路3を介して廃棄物挿入手段4から熱分解手段5に送られ、ここで熱分解処理され、その後、ガス改質手段6、ガス冷却手段7、ガス浄化手段8、ガス吸引・昇圧手段9、ガス取り出し路10、固体状残さ取り出し路11および固体状残さ排出手段12に順次に送られる。
【0021】
熱分解手段5では、燃料と空気とを燃焼させて得られた高温の燃焼ガスを用いて、有機物を含む廃棄物を空気を遮断した状態下で間接的に加熱することにより、ガス状の熱分解生成物と固体状の残さを得る。
【0022】
ガス改質手段6では、ガス状の熱分解生成物を導入するとともに空気または酸素富化空気あるいは酸素から成る酸化剤ガスの導入を行い、ガス状の熱分解生成物中に含まれる可燃成分の少なくとも一部と酸化剤ガス中の酸素とが介在する反応を起こさせて、ガス状の熱分解生成物中の高位炭化水素成分を低位炭化水素成分や一酸化炭素、二酸化炭素、水素、水蒸気へと変換させ、高位炭化水素成分を含まない高温ガス混合物を得る。
【0023】
ガス冷却手段7では、ガス改質手段6で得られた高温ガス混合物の冷却が行われ、ガス浄化手段8では、ガス冷却手段7で得られたガスを導入してその中に含まれるダストや有害成分の浄化処理が行われる。ガス吸引・昇圧手段9では、ガス浄化手段8で得られたガスを吸引し、その後の工程で利用可能な圧力まで昇圧し、ガスをガス取り出し路10によって取出す。
【0024】
なお、熱分解手段5で得られた固体状の残さは、固体状残さ取り出し路11および固体状残さ排出手段12を介して排出される。
【0025】
このような構成の下で、本実施形態では、廃棄物前処理手段2と廃棄物流路3とを結ぶ経路を遮断する少なくとも一つの遮断機構13を備えている。この遮断機構13は、例えばシャッタ機構により構成されており、廃棄物流路3および熱分解手段5に接続した圧力計測手段の計測値に基づいて、例えば熱分解手段5の内部圧力が廃棄物流路3の内部圧力よりも高くなったような場合に、図示省略の制御手段または操作手段により瞬時に閉となる。
【0026】
したがって、本実施形態によれば、遮断機構13の閉動作によって、廃棄物前処理手段2にガスが逆流することが確実に防止され、安全性の高い運転が確保できるようになる。
【0027】
本実施形態では、廃棄物前処理手段2と前記廃棄物挿入手段4の内部圧力を計測する圧力計測手段16と、両者間の運転圧力差を計測するための圧力差計測手段17とを備えている。
【0028】
そして、圧力差計測手段17によって検出された差圧に基づいて、図1と同様の制御手段によって遮断機構13の制御を行うようになっている。
【0029】
また、本実施形態ではこれに加えて熱分解手段5の内部の運転圧力を計測するための圧力計測手段18と、廃棄物前処理手段2と熱分解手段5との間の圧力差を計測するための圧力差計測手段19も備え、この圧力差検出値も制御手段に入力されて前記同様の遮断が行えようになっている。
【0030】
本実施形態によると、下流側に配される廃棄物挿入手段4および熱分解手段5の両方の圧力検出に基づく遮断制御を行うことで、差圧発生状況や差圧の消滅状況の把握、あるいは差圧発生場所の特定等がさらに高精度で行えるとともに、制御動作のタイミングをより的確に行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態による廃棄物処理装置を示すシステム構成図。
【符号の説明】
【0032】
1 廃棄物導入路
2 廃棄物前処理手段
3 廃棄物流路
4 廃棄物挿入手段
5 熱分解手段
6 ガス改質手段
7 ガス冷却手段
8 ガス浄化手段
9 ガス吸引・昇圧手段
10 ガス取り出し路
11 固体状残さ取り出し路
12 固体状残さ排出手段
13 遮断機構
14 廃棄物貯槽
15,16 圧力計測手段
17 圧力差計測手段
18 圧力計測手段
19 圧力差計測手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料と空気とを燃焼させて得られた高温の燃焼ガスを用いて、有機物を含む廃棄物を空気を遮断した状態下で間接的に加熱することにより、ガス状の熱分解生成物と固体状の残さを得る熱分解手段と、前記熱分解手段の上流に接続される廃棄物前処理手段と、前記熱分解手段と前記廃棄物前処理手段とを接続する廃棄物流路と、前記廃棄物流路に設けられ前記廃棄物前処理手段と前記廃棄物挿入手段とを結ぶ経路を遮断する遮断機構と、前記遮断機構より廃棄物前処理手段側の圧力と前記遮断機構より熱分解手段側の圧力差を計測する圧力差計測手段と、前記圧力差計測手段に基づいて前記遮断機構の制御を行う制御手段とを備えたことを特徴とする廃棄物処理装置。

【図1】
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【公開番号】特開2008−101223(P2008−101223A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−293782(P2007−293782)
【出願日】平成19年11月12日(2007.11.12)
【分割の表示】特願平11−153085の分割
【原出願日】平成11年5月31日(1999.5.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】