説明

廃棄物最終処分場の埋立管理システム

【課題】 受け入れる廃棄物の性状や組み合わせなどについて、減容化の観点からデータ分析を行い、最終処分場における廃棄物の減容化を実現し得る埋立管理システムを提供する。
【解決手段】 廃棄物最終処分場の埋立管理システムであって、最終処分場に搬入された廃棄物に識別情報を付与して廃棄物のマニフェスト記載情報とともに記録する手段と、該廃棄物の重量情報をその識別情報とともに記録する手段と、該処分場において廃棄物を埋立施工する前後両時点における所定箇所の3次元位置情報をその所定箇所に埋め立てられた廃棄物の全ての識別情報とともに記録する手段と、埋立施工後の廃棄物の密度を最適にし得る搬入廃棄物の組合せを分析するために前記識別情報に基づいて前記マニフェスト記載情報と前記重量情報と前記3次元位置情報とをそれぞれ対応づけて所望情報の組合せで表示する情報分析表示手段とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元地理情報システム、すなわちGeographic Information System(以下、GISという)を利用した最終処分場の埋立管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今の環境情勢のめまぐるしい変化に呼応し、PRTR(Pollutant Release and Transfer Register:環境汚染物質排出移動登録)のように、最終処分場に受け入れた有害化学物質に対する厳格な管理が求められるようになっている。例えば、現行法では埋立が許可されている物質であっても、将来その有害性が強いものと認められた場合には、それら廃棄物は最終処分場から取り出して処理する必要が生じるが、現状の埋立管理手法では有害と認定された廃棄物の最終処分場における所在が分からないため、有害成分が流出しないように封じ込める対策しか採り得ないといった状況が想定される。
また現在は廃棄物として埋め立てているものが、新技術により効率的な再生が可能になった場合に、資源有効利用の観点から、それらを掘り起こして加工することも考えられる。すなわち、これらの状況は、最終処分場における廃棄物の追跡可能性(トレーサビリティ)を高めて確かなものにする必要があることを意味している。
【0003】
以上のような現状の課題に対し、廃棄物に関連する情報を収集してコンピューターで管理する手法が提案されている。例えば、特開2002−109154号公報(特許文献1)には、搬入される廃棄物の種類、搬入量、搬入者および搬入日時等の情報が廃棄物情報入力装置からサーバーへ伝送されて登録され、最終処分場における廃棄物投入場所の三次元空間座標が空間情報入力装置からサーバーへ伝送されて登録され、これらの登録されたデータを表示する機能を備える廃棄物最終処分場の管理システムが提案されている。
【0004】
また特開平11−192466号公報(特許文献2)には、3次元測量手段を用いて廃棄物埋め立て中の特定処分場における対象廃棄物の埋立位置と、埋立完了済み容積及び埋立可能な残りの処分容積を算出し、3次元実測データと他の廃棄物排出、運搬、搬入、処分データに基づき、特定の排出場所で排出した廃棄物が特定の処分場の特定の場所に保存されていることを示すことができる廃棄物最終処分場の管理システムが提案されている。
【特許文献1】特開2002−109154号公報
【特許文献2】特開平11−192466号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、最終処分場の現在の運営状況に目を向けると、廃棄物を受入れ可能な処分場の減少にともい、廃棄物の持ち込みが特定の処分場に集中しており、当初の計画より早く埋立許容量に達することが予想され、それを回避するためには埋立施工の過程において、廃棄物の容積を減少させる減容化の必要性が高まっている。つまり、廃棄物を処分場に受け入れる段階で、減容化の観点から廃棄物を管理し得るシステムの必要性が高まっているのである。
【0006】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2は、以上のような課題を解決し得る管理システムを提供するものではない。つまり、特許文献1及び特許文献2の管理システムは、ただ単に、廃棄物最終処分場に埋め立てられた廃棄物の所在や性状などを数値により把握するものであり、さらに特許文献2の技術では、埋立可能な残りの処分容積を算出するだけである。
【0007】
以上のような現状を鑑みて本発明の課題は、受け入れる廃棄物の性状や組み合わせなどについて、減容化の観点からデータ分析を行い、最終処分場における廃棄物の減容化を実現し得る埋立管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明では、最終処分場に搬入された廃棄物に識別情報を付与して廃棄物のマニフェスト記載情報とともに記録する手段と、該廃棄物の重量情報をその識別情報とともに記録する手段と、該処分場において廃棄物を埋立施工する前後両時点における所定箇所の3次元位置情報をその所定箇所に埋め立てられた廃棄物の全ての識別情報とともに記録する手段と、埋立施工後の廃棄物の密度を最適にし得る搬入廃棄物の組合せを分析するために前記識別情報に基づいて前記マニフェスト記載情報と前記重量情報と前記3次元位置情報とをそれぞれ対応づけて所望情報の組合せで表示する情報分析表示手段とを備えることを特徴とする廃棄物最終処分場の埋立管理システムが提供される。
本発明の埋立管理システムでは、廃棄物を埋立施工する前後両時点における所定箇所の3次元位置情報を記録し、埋立施工された廃棄物の重量情報を記録することにより、埋立施工された廃棄物の密度を求めることができる。一方、最終処分場に搬入された廃棄物は、識別情報が付与されてマニフェスト記載情報とともに記録されているので、密度が大きい埋立箇所や、逆に密度が小さい埋立箇所がどのような廃棄物の組み合わせから構成されているかが分かる。これにより、最終処分場における廃棄物の減容化を実現し得る廃棄物の組み合わせになるように、施工計画を作成することが可能になる。
なお、マニフェストとは、廃棄物の種類や性状等を記載した伝票(廃棄物管理票)であって、廃棄物処理法には、廃棄物を排出した事業所や収集運搬業者などが作成し、管轄行政機関へ提出することが定められているものである。
【0009】
本発明では、請求項1の埋立管理システムにおいて、さらに、廃棄物を埋め立て施工する埋立施工機械の稼動情報を収集する情報収集手段を備え、埋立施工後の廃棄物の密度を最適にし得る搬入廃棄物の組合せ及び埋立施工機械の稼動方法を分析するために、前記情報分析表示手段により、該埋立施工機械稼動情報と前記マニフェスト記載情報と前記重量情報と前記3次元位置情報とをそれぞれ対応づけて所望情報の組合せで表示することを特徴とする廃棄物最終処分場の埋立管理システムが提供される。
本発明の埋立管理システムでは、廃棄物を埋め立て施工する埋立施工機械の稼動情報が記録されているので、密度が比較的大きい埋立施工箇所や、逆に密度が比較的小さい埋立施工箇所がどのように埋立施工されたかが分かる。したがって、これを参照して、最終処分場における廃棄物の減容化を実現し得る最適な施工計画を作成することが可能になる。
【0010】
本発明では、請求項1の埋立管理システムにおいて、さらに、搬入されることが予定される廃棄物のマニフェスト記載情報を記録する手段を備え、予定される埋立施工により廃棄物の密度を最適にし得る搬入廃棄物の組合せを分析するために、前記情報分析表示手段により、過去の前記マニフェスト記載情報と前記重量情報と前記3次元位置情報とをそれぞれ対応づけて所望情報の組合せで表示することを特徴とする廃棄物最終処分場の埋立管理システムが提供される。
【0011】
本発明では、請求項2の埋立管理システムにおいて、さらに、搬入されることが予定される廃棄物のマニフェスト記載情報を記録する手段を備え、予定される埋立施工により廃棄物の密度を最適にし得る搬入廃棄物の組合せ及び埋立施工機械の稼動方法を分析するために、前記情報分析表示手段により、過去の前記埋立施工機械稼動情報と前記マニフェスト記載情報と前記重量情報と前記3次元位置情報とをそれぞれ対応づけて所望情報の組合せで表示することを特徴とする廃棄物最終処分場の埋立管理システムが提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、受け入れる廃棄物の性状や組み合わせなどについて、減容化の観点からデータ分析を行い、最終処分場における廃棄物の減容化を実現し得る埋立管理システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0014】
[システムの概要]
図1に本実施形態にかかるシステム全体の概略的なブロック図を示す。図1のシステムは、3次元位置計測部10とデータベースサーバー部20とから構成される。
【0015】
[3次元位置計測部]
ここで、3次元位置計測部10は廃棄物最終処分場における3次元位置計測を実施するためのものであり、GPS固定局11と埋立機械側計測部12と作業員側計測部13とから構成することが可能であるが、場合によっては、作業員側計測部13は省略することも可能である。
GPS固定局11は3次元位置計測の基準点を得るためのものであり、GPS受信機と、無線A系統送信局(データ発信機)と電源装置(図示せず)とを備えている。
埋立機械側計測部12は、埋立機械の稼動軌跡データ(3次元座標と時刻)を計測するためのものであり、データは併せて廃棄物埋立位置を特定するためにも使用し得るものである。埋立機械側計測部12は、GPS固定局11から送信されたGPS位置補正データを受信するための無線A系統受信局(データ受信機)と、転圧機械等の埋立機械に設置される耐振動型のGPS受信機と、演算装置と、GPS計測データを表示したり或いはGPS受信機や演算装置等を操作するために使用されるディスプレイと、GPS計測データを記録するために選択的に埋立機械に設置されるICカード又はCFカード等の記録装置と、演算装置からGPS計測データを受理してデータベースサーバー部20に送信するための無線B系統送信局(データ送信機)とを備えている。
埋立機械側計測部12の演算装置には、埋立機械の3次元位置をリアルタイムで演算し、稼動軌跡データ(3次元座標と時刻)を求めるソフトウェアが搭載されている。
【0016】
作業員側計測部13は、一日の廃棄物埋め立て作業を開始する前および終了時点に、作業員が装置を携行して埋立施工箇所の3次元位置データ(3次元座標と時刻)を計測するためのものである。しかしながら、埋立機械の稼動軌跡データ(3次元座標と時刻)を、埋立施工箇所の3次元位置データとみなして使用できる場合には、作業員側計測部13を省略することが可能である。この作業員側計測部13は、埋立機械側計測部12とほぼ同様に、GPS固定局11から送信されたGPS位置補正データを受信するための無線A系統受信局(データ受信機)と、埋立機械に設置される耐振動型のGPS受信機と、演算装置と、GPS計測データを記録するためのICカード又はCFカード等の記録装置とから構成することができる。
作業員側計測部13の演算装置には、計測地点の3次元位置をリアルタイムで演算するソフトウェアが搭載されている。
【0017】
[データベースサーバー部]
次に、データベースサーバー部20では、図1に示したように、メイン演算装置21、メインサーバー22、バックアップサーバー23、本部端末24、RS−232C−TCP/IP変換器25がネットワーク接続されている。そして、メイン演算装置21には、さらにトラックスケール自動記録装置21a、電子マニフェスト読取装置21b、入力端末21c、ICカード又はCFカード等の読み取り装置21d、プリンタ21e、ディスプレイ21fがそれぞれ接続されている。またRS−232C−TCP/IP変換器25には無線B系統受信局26が接続されている。この無線B系統受信局26が、3次元位置計測部10の無線B系統送信局からGPSデータ(転圧前又は転圧後の処理場地形形状データ等)を受理することにより、データベースサーバー部20は3次元位置計測部10と接続されるものである。
ここで、マニフェストは、フロッピディスク等の電子媒体に情報が予め記録された電子マニフェストと、書類として紙に情報が記載された紙マニフェスト伝票とがあり、電子マニフェストの情報は電子マニフェスト読取装置21bにより入力されてメインサーバーに登録され、紙マニフェスト伝票の情報は入力端末21cによりマニュアル入力される。入力端末21cは他の諸データをサーバーにマニュアル入力するためにも使用される。本部端末24は、廃棄物最終処理場の内部或いは離れた場所にある処理場管理運営会社の本部事務所に設けられた端末であり、廃棄物最終処理場における埋立状況等を把握するために使用される。トラックスケール自動記録装置21aはトラックにより搬入された廃棄物の重量を計測して記録するために使用される。ICカード又はCFカード等の読み取り装置21dは、作業員側計測部13からのデータを読み取るために使用されたり、埋立機械側計測部12からのデータがICカード又はCFカードの記録媒体に入力されている場合に使用される。
【0018】
メイン演算装置21、メインサーバー22又はバックアップサーバー23の少なくとも一つの装置には、マニフェストデータ入力管理プログラム、GPSデータ入力管理プログラム、データ統合プログラム、データ分析プログラム、データ3次元管理プログラムがインストールされている。
マニフェストデータ入力管理プログラムは、主な機能として、マニフェストデータ入力機能、トラックスケールデータ入力機能、廃棄物ID発行機能、マニフェストデータ管理機能、トラックスケールデータ管理機能を有する。
GPSデータ入力管理プログラムは、主な機能として、GPSデータ入力機能、GPSデータ管理機能、搬入廃棄物の体積(容積)算定機能を有する。
データ統合プログラムは、主な機能として、マニフェストデータとトラックスケールデータと廃棄物IDとGPSデータとを統合する(対応づける)機能を有する。
データ分析プログラムは、主な機能として、多変量解析や回帰分析等の多様な手法を利用して、データ統合プログラムにより統合されたデータ間の関連を分析するための機能を有する。
データ3次元管理プログラムは、主な機能として、埋め立てられた廃棄物の面的形状を3次元的形状で表示する機能と、その3次元的形状にリンクしているマニフェストデータやトラックスケールデータを表示する機能を有する。
【0019】
次に、図2は本発明の埋立管理システムで作成されるデータベースのデータ構造を示した図である。
本発明にかかるデータテーブルは、図3に示したように、1)廃棄物重量テーブル、2)マニフェストテーブル、3)廃棄物IDテーブル、4)GPSデータテーブル、5)品目別処分価格テーブル、6)受入予定データテーブルの各種類がある。
1)廃棄物重量テーブル
一台のトラックに積載されている廃棄物の重量を示すものであり、ヘッダ、廃棄物ID、廃棄物重量、テーブル作成年月日時分から構成される。
2)マニフェストテーブル
廃棄物のマニフェストに記載されている情報を示すものであり、書類によるマニフェストの場合には端末からマニュアル入力され、一方、フロッピディスク等の電子媒体によるマニフェストの場合には電子媒体から読み取り入力される。ヘッダ、廃棄物ID、受入日、整理番号、排出業者名・排出現場名、排出業者ID・排出現場ID、売り上げ金額、受入廃棄物種類、受入廃棄物種類ID、廃棄物個別重量、テーブル作成年月日時分から構成される。
3)廃棄物IDテーブル
埋立施工された所定箇所毎のGPSデータに関連付けられる全ての廃棄物情報を示すものであり、ヘッダ、GPSデータID、全ての廃棄物ID、テーブル作成年月日時分から構成される。
4)GPSデータテーブル
埋立施工された所定箇所毎の3次元位置情報を示すものであり、ヘッダ、GPSデータID、全ての3次元位置データ(3次元座標と時刻)、テーブル作成年月日時分から構成される。ここで、GPS受信機を埋立機械に搭載した場合にはその埋立機械の軌跡データが記録される。一方、GPS受信機を作業員が携行して測定した場合には、すべての計測点の位置座標が記録される。
5)品目別処分価格テーブル
廃棄物最終処分場が設定している廃棄物各品目の処分単価情報を示すものであり、ヘッダ、廃棄物各品目の処分単価、テーブル作成年月日時分から構成される。
6)受入予定データテーブル
所定の廃棄物受入日に予定されている廃棄物情報を示すものであり、受け入れ後の埋立計画の立案に使用されるものである。廃棄物情報はトラック毎に、排出業者名・排出現場名、排出業者ID・排出現場ID、受入廃棄物種類、受入廃棄物種類ID、受入予定重量が入力され、さらに、ヘッダとテーブル作成年月日時分とが付与される。
【0020】
次に、図3は本発明にかかる廃棄物の埋立管理フローチャートである。
[データ入力]
最初に、マニフェストにより受入予定を作成する(S201)。マニフェストは、実際に廃棄物が搬入される以前、例えば、1日〜1週間程度前には廃棄物最終処理場に提出されており、このマニフェストにより受入予定廃棄物のデータを作成し(S202)、サーバーのデータベースに登録する(S210)。これらS202、S210の工程では、図2の6)受入予定データテーブルが作成されて登録される。
次に、予定のトラックが到着(S203)したら所定の手続きを行い、トラックスケールより積載された廃棄物の計量を実施し(S204)、計量結果を自動記録し(S205)、廃棄物を識別するための識別情報(廃棄物ID)を発行し(S206)、この廃棄物IDとともに廃棄物重量データを作成し(S207)、サーバーのデータベースに登録する(S210)。これらS207、S210の工程では、図2の1)廃棄物重量テーブルが作成されて登録される。
またマニフェストは、トラックによる廃棄物の搬入時にも提出されるため、これが紙マニフェストである場合にはマニュアル入力し(S208)、電子マニフェストである場合には電子マニフェスト読取装置21bにより入力し(S209)、サーバーのデータベースに登録する(S210)。これらS208、S209、S210の工程においても、図2の2)マニフェストテーブルが作成されて登録される。
【0021】
[データ分析]
次に、サーバーのデータベースに登録された情報をデータ処理して分析し(S211)、廃棄物の荷下ろし位置と、廃棄物の埋立施工パターンとを求める。なお、S211のデータ処理分析の手順は、ここでは説明せず、図4を参照して後述する。
【0022】
[埋立施工]
一方、トラックは処理場内に廃棄物を搬入する(S212)。そして、S211の分析結果により、埋立箇所あるいはストックヤードなどの場所を、廃棄物の荷下ろし位置としてトラックに指示する(S213)。次に、廃棄物の荷下ろし前の地形形状をGPS受信機により計測し、(S214)、この計測結果から図2の4)GPSデータテーブルを作成してサーバーのデータベースに登録する。
次に、トラックは、指示された場所に廃棄物を荷下ろしする(S215)。次に、転圧機械などの埋立施工機械に施工パターンを指示する(S216)。次に、埋立箇所あるいはストックヤードなどに荷下ろしした廃棄物を攪拌したり敷き均す(S217)。次に、3次元位置計測部10におけるGPS固定局11や埋立機械側計測部12などのシステムの電源をONにし(S218)、転圧対象となる全ての廃棄物のIDを登録して図2の3)廃棄物IDテーブルを作成する(S219)。次に、転圧機械の電源を入れて稼動準備を行い(S218)、埋立機械側計測部12によるGPSデータ(3次元位置データ)の取得を開始する(S221)。この取得されたGPSデータからは、図2の4)GPSデータテーブルを作成する。S221の工程を行いながら、転圧機械により転圧作業を開始する(S222)。転圧作業が終了(S223)したら、廃棄物の転圧作業後の地形形状をGPS受信機により計測し(S224)、この計測結果をサーバーのデータベースに登録する(S225)。このS225では、図2の4)GPSデータテーブルが作成されて登録される。次に、当日受入予定の廃棄物が未だ有る場合(S226)には、再び、S211の工程に戻って埋立施工を繰り返し、当日受入予定の廃棄物が無い場合(S226)には、当日の作業を終了する(S227)。
図3のフローチャートの各工程により1日に収集したデータは、図2のデータテーブルにしたがってデータベースに格納し、図4のようなデータ処理、データ分析を行い、その結果もデータベースに格納する。
【0023】
なお、上記S214の工程について更に詳細に説明すれば、この工程では、最初に、3次元位置計測部10におけるGPS固定局11や埋立機械側計測部12などのシステムの電源をONにし、次に、転圧機械を稼動させて、埋立機械側計測部12によるGPSデータ(3次元位置データ)の取得を開始し、このGPSデータが取得し終わったら転圧機械を停止し、この計測結果を、図2の4)GPSデータテーブルに作成してサーバーのデータベースに登録する。
なお、S214の工程において、GPSデータの取得は、埋立機械側計測部12の代わりに作業員側計測部13によっても実施可能である。
また荷下ろし前の地形形状データとしては、例えば、前回の転圧後の地形形状データを採用することも可能である。つまり、前回の転圧後データを当日の転圧前データとし、当日の転圧後データとの差分で当日の容積計算をすることも可能である。しかしながら、荷下ろし指示場所によっては、前回の埋立施工後から数日あるいは数週間が経過していることも考えられ、この場合、廃棄物の性状によっては、沈下したり隆起したりすることも予想される。したがって、最も正確な埋立容積が求めるためには、当日の転圧前と転圧後で地形データを計測し、その差分により当日の埋立容積を算出することが好ましい。
【0024】
次に、図4を参照してデータ処理分析の手順について説明する。
最初に、それぞれA〜Eの各項目ごとにデータ入力する(S401)。すなわち、A.廃棄物重量の項目では、一台のトラックにより搬入された廃棄物の1)搬入重量が入力される。B.マニフェストの項目では、一台のトラックにより搬入された廃棄物毎の、2)排出現場、3)処分費用合計、4)廃棄物種類、5)品目別重量が入力され。C.GPSデータの項目では、6)搬入前GPSデータ(3次元形状)、7)搬入後GPSデータ(3次元形状)が入力される。D.価格表の項目では、8)品目別処分単価が入力される。E.受入れ予定データの項目では、1日〜1週間などの所定期間に受入を予定している廃棄物の、受入台数、受入品目・組合せ、予定総重量が入力される。
【0025】
次に、データの1次処理を行う(S402)。A.廃棄物重量の項目では、一日に処理場に搬入された廃棄物の1)搬入重量の積算を行い、9)搬入総重量を求める。B.マニフェストの項目では、一日に処理場に提出されたマニフェストの枚数、すなわち一日に処理場に廃棄物を搬入したトラックの台数を求める。C.GPSデータの項目では、7)搬入後GPSデータ(3次元形状)から6)搬入前GPSデータ(3次元形状)を差し引いて11)埋立容量を求め、所定の埋立施工箇所における11)埋立容量を積算して11')総埋立容量を求める。
【0026】
次に、データの2次処理を行う(S403)。A.廃棄物重量の項目では、一日毎に収集した9)搬入総重量をグラフ化し、12)搬入重量の変化を求める。B.マニフェストの項目では、13)品目別処分費用、14)埋立品目パターン化、15)埋立品目パターンの変化、16)品目別重量の変化、17)処分費用合計の変化、18)品目別処分費用の変化を求める。ここで、13)品目別処分費用は、5)品目別重量と8)品目別処分単価とを掛け合わせることにより求める。また14)埋立品目パターン化として、例えば、図5に示したようなグラフを作成することができる。C.GPSデータの項目では、19)埋立密度、20)埋立密度の変化、21)施工条件を求める。この21)施工条件は、施工時間、施工速度、施工範囲、層厚、重機(埋立機械)稼動パターン、燃費の各項目からなるデータテーブルである。
なお、図5では円グラフの埋立品目をすべて空白で図示したが、各埋立品目をそれぞれ異なる色彩或いはそれぞれ異なる模様で図示しても良く、このように図示すれば、埋立品目パターンは更に判別し易くなる。
【0027】
次に、S403により2次処理されたデータの分析を行い(S404)、最後に、分析結果を活用する(S405)。
すなわち、2次処理データ同士の回帰分析を実施し、データ相互の関係を見出す。例えば、A.廃棄物重量の項目では、12)搬入重量の変化と14)埋立品目パターン化との回帰分析を実施したり、或いは12)搬入重量の変化と21)施工条件との回帰分析を実施する。
またB.マニフェストの項目では、例えば、14)埋立品目パターン化と19)埋立密度の回帰分析を実施し、両者の関係を見出すために図6のようなグラフを作成する。図6において、Level-Aは埋立密度が0.7〜1.0、Level-Bは埋立密度が1.0〜1.3、Level-Cは埋立密度が1.3〜1.6、Level-Dは埋立密度が1.6以上である。このように14)埋立品目パターン化と19)埋立密度との関係を見出すことにより、埋立廃棄物の容積を減少させる(高密度に埋立する)ために最適な廃棄物品目の組合せ比率を求めることができる。また17)処分費用合計の変化と20)埋立密度の変化の回帰分析を実施し、両者の関係を見出すことにより、廃棄物処理により所定の利益を上げるために最適な埋立密度を求めることができる。
次に、C.GPSデータの項目では、例えば、19)埋立密度と21)施工条件との回帰分析を実施し、両者の関係を見出すことにより、埋立密度を上げるために最適な施工条件を求めることが可能になる。また21)施工条件の各項目間の比較分析をし、それぞれの関係を見出すことにより、埋立施工の速度を高めるために最適な施工条件を求めることも可能になる。
【0028】
埋立廃棄物の容積を減少させる(高密度に埋立する)ためには、処分場の所定箇所に高密度に廃棄物を埋立ることが必要であり、埋立密度は、搬入される廃棄物の多少、埋立てる廃棄物の組み合わせ、廃棄物を転圧して締固める方法などにより大きく影響を受けるものである。
例えば、廃棄物は、その種類により密度が大きいものと小さいものがあり、予め廃棄物の種類による密度を把握し、密度が大きいものと小さいものとを最適な組み合わせで埋め立てることにより、その埋立て箇所の密度を比較的大きくすることが可能になり、減容化が図れる。密度が大きいものとしては、例えば、汚泥、燃え殻、金属くず、鉱さい等があり、密度が小さいものとしては、例えば、廃プラスチック、紙くず、木くず等がある。
また廃棄物は、その種類により粒径が大きいものと小さいものがあり、両者を混合して埋め立てれば、粒径の小さい廃棄物が粒径の大きい廃棄物の隙間に入り込むことが考えられる。したがって、比較的粒径が大きく密度が小さいプラスチックと、比較的粒径が小さく密度が大きい燃え殻や汚泥とを一緒に埋め立てれば、結果的に密度を高くすることができて、減容化が図れる。
したがって、本発明では、これらの影響要因と埋立密度との関係を、上記S404のデータ分析により求めデータベースに登録し、搬入される予定の廃棄物の情報が入力されたら、これに対して適切な埋立施工の計画を作成するものである。例えば、明日の搬入される予定の廃棄物が、「10品目、Level-A、全量25トン」という情報が与えられた場合、蓄積されているデータ分析結果を参照し、「処分場内のB地点、10m×30mのヤードに層厚50cmで施工。転圧機械の速度3km/h、転圧方向は長手方向。」といった埋立施工計画を作成するものである。
また本発明では、廃棄物IDを指定することにより、その廃棄物の内容が分かると同時に、どのGPSデータと関係付けられているかが、廃棄物IDテーブルを参照することにより把握できる。GPSデータIDを指定すれば、それにどの廃棄物が関係しているかが分かる。以上のことから、本発明にかかる埋立管理システムを用いれば、どういう種類の廃棄物が、3次元空間内のどこに、いつ埋立てられたかを即時に把握することもできる。
【0029】
一方、蓄積されたデータ分析結果は、例えば、図7〜図9のようにグラフや図を作成することにより、日々の施工管理データとしても活用することも可能である。
図7は、日々の埋立密度の変化を表したグラフであり、このグラフの変化を見ることにより、比較的大きな埋立密度の月日や、比較的小さな埋立密度の月日を探し出し、これら月日に収集したデータを、本発明にかかる方法で分析すれば、埋立密度に影響を与えた要因が判明し、埋立施工計画の作成にフィードバックすることができる。
また図8は各埋立施工日毎の断面図であり、図9は埋め立てた廃棄物の3次元配置の状況と、各3次元配置毎の廃棄物の属性情報を表示する図である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態にかかるシステム全体の概略的なブロック図を示す。
【図2】本発明にかかるデータベースのデータ構造を示した図である。
【図3】本発明にかかる廃棄物の埋立管理フローチャートである。
【図4】本発明にかかるデータ処理・分析について説明するための図である。
【図5】本発明にかかるデータ処理・分析により得られた埋立品目パターンを示すグラフである。
【図6】本発明にかかるデータ処理・分析により得られた、廃棄物埋立パターンと埋立密度との関係を示したグラフである。
【図7】日々の埋立密度の変化を表したグラフである。
【図8】各埋立施工日毎の断面図である。
【図9】埋め立てた廃棄物の3次元配置の状況と、各3次元配置毎の廃棄物の属性情報を表示する図である。
【符号の説明】
【0031】
10 3次元位置計測部
11 GPS固定局
12 転圧機械側計測部
13 作業員側計測部
20 データベースサーバー部
21 メイン演算装置
21a、 トラックスケール自動記録装置
21b 電子マニフェスト読取装置
21c 入力端末
21d ICカード又はCFカード等の読み取り装置
21e プリンタ
21f ディスプレイ
22 メインサーバー
23 バックアップサーバー
24 本部端末
25 RS−232C−TCP/IP変換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
最終処分場に搬入された廃棄物に識別情報を付与して廃棄物のマニフェスト記載情報とともに記録する手段と、該廃棄物の重量情報をその識別情報とともに記録する手段と、該処分場において廃棄物を埋立施工する前後両時点における所定箇所の3次元位置情報をその所定箇所に埋め立てられた廃棄物の全ての識別情報とともに記録する手段と、埋立施工後の廃棄物の密度を最適にし得る搬入廃棄物の組合せを分析するために前記識別情報に基づいて前記マニフェスト記載情報と前記重量情報と前記3次元位置情報とをそれぞれ対応づけて所望情報の組合せで分析表示する情報分析表示手段とを備えることを特徴とする廃棄物最終処分場の埋立管理システム。
【請求項2】
請求項1の埋立管理システムにおいて、さらに、廃棄物を埋め立て施工する埋立施工機械の稼動情報を収集する情報収集手段を備え、埋立施工後の廃棄物の密度を最適にし得る搬入廃棄物の組合せ及び埋立施工機械の稼動方法を分析するために、前記情報分析表示手段により、該埋立施工機械稼動情報と前記マニフェスト記載情報と前記重量情報と前記3次元位置情報とをそれぞれ対応づけて所望情報の組合せで分析表示することを特徴とする廃棄物最終処分場の埋立管理システム。
【請求項3】
請求項1の埋立管理システムにおいて、さらに、搬入されることが予定される廃棄物のマニフェスト記載情報を記録する手段を備え、予定される埋立施工により廃棄物の密度を最適にし得る搬入廃棄物の組合せを分析するために、前記情報分析表示手段により、過去の前記マニフェスト記載情報と前記重量情報と前記3次元位置情報とをそれぞれ対応づけて所望情報の組合せで分析表示することを特徴とする廃棄物最終処分場の埋立管理システム。
【請求項4】
請求項2の埋立管理システムにおいて、さらに、搬入されることが予定される廃棄物のマニフェスト記載情報を記録する手段を備え、予定される埋立施工により廃棄物の密度を最適にし得る搬入廃棄物の組合せ及び埋立施工機械の稼動方法を分析するために、前記情報分析表示手段により、過去の前記埋立施工機械稼動情報と前記マニフェスト記載情報と前記重量情報と前記3次元位置情報とをそれぞれ対応づけて所望情報の組合せで分析表示することを特徴とする廃棄物最終処分場の埋立管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−53726(P2006−53726A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−234364(P2004−234364)
【出願日】平成16年8月11日(2004.8.11)
【出願人】(303057365)株式会社間組 (138)
【出願人】(502074312)株式会社ジオスケープ (1)
【出願人】(503024147)仙台環境開発株式会社 (1)
【Fターム(参考)】