説明

廃棄物溶融処理方法

【課題】コンクリート製品のポップアウトを防止するためにスラグ中への不純物混入を防止する廃棄物溶融処理方法を提供する。
【解決手段】廃棄物を乾燥する乾燥用シャフト部1の頂部から廃棄物を乾燥用シャフト部1内に装入して廃棄物充填層を形成し、形成した廃棄物充填層に、熱分解残渣を生成する火格子部2とコークスを熱源として熱分解残渣を溶融する熱分解残渣溶融部3とで発生したガスを通過させて廃棄物を乾燥させるとともに、廃棄物充填層を通過したガスは乾燥用シャフト部1の頂部から排出し、乾燥用シャフト部1で乾燥した廃棄物を火格子部2で熱分解して熱分解残渣19を生成し、生成した熱分解残渣19を火格子部2から連続的に落下させて熱分解残渣溶融部3へ供給して溶融する廃棄物溶融処理方法において、出湯中に石灰石の投入を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥用シャフト部と熱分解残渣溶融部が火格子部を介して連設された廃棄物溶融装置による廃棄物溶融処理方法において、スラグ中への未溶融物の混入を防止してスラグ品質を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物を溶融処理するシャフト炉式廃棄物溶融炉では、廃棄物中に生ごみ等の高水分ごみや木等の揮発分が多いため、廃棄物の一部が十分に乾燥されることなくまた、揮発分のガス化が行われることなく炉下部に下降した場合、水分や揮発分はいずれも雰囲気温度を低下させることになる。そのため、雰囲気温度を高く維持し非燃焼物を完全溶融するためには、結果としてコークス使用量を増やす必要があった。
【0003】
そこで、廃棄物溶融処理において、乾燥・熱分解を、燃焼・溶融と分離して行うことによりごみ中の水分や揮発分を除去して廃棄物が乾燥や熱分解されない状態で炉下部に下降することを防止し、それによって炉最下部における雰囲気温度の低下による灰分の溶融に使用されるコークス消費量を抑制して熱分解残渣の持つ熱量と少量のコークスの熱量にて完全溶融を達成することができる廃棄物溶融処理技術が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
前記特許文献1に示す廃棄物溶融炉は、図2に示すように、装入された廃棄物を乾燥する乾燥用シャフト部1、乾燥用シャフト部1で乾燥された廃棄物を熱分解して熱分解残渣を生成する火格子部2、熱分解残渣を燃焼・溶融する熱分解残渣溶融部3を下部に備えた溶融炉6からなる。乾燥用シャフト部1が火格子部2の入側の上方に配置され、熱分解残渣溶融部3が火格子部2の出側の下方に配置されてクランク形状に連通して一体に連設されている。なお、火格子部2から落下した熱分解残渣等は灰搬送装置により排出される。
【0005】
熱分解残渣溶融部3は下方の炉床部4、この炉床部4の上に連なる朝顔部5を備える。炉床部4には酸素源として空気と酸素を吹き込む下段羽口7を備える。朝顔部5に空気を吹き込む上段羽口8が配置されていてもよい。熱分解残渣溶融部3には、従来のシャフト炉式廃棄物溶融炉の炉底部と同じくコークスベット18が形成される。コークス、石灰石などの副資材は溶融炉6の頂部の副資材装入口15から投入する。
【0006】
乾燥用シャフト部1の頂部には、排ガス出口9と廃棄物装入口10が設けられ、廃棄物装入口10は、装入の際にガスが吹き出すのを防ぐシール用蓋11が設けられている。乾燥用シャフト部1の下部にはプッシャー等の廃棄物移送装置12が設けられている。
【0007】
火格子部2は、乾燥用シャフト部1から装入された廃棄物を熱分解させながら熱分解残渣溶融部3へ移動させる火格子13を備えている。なお、16は起動用のバーナ、17は乾燥用シャフト部に燃焼空気を吹き込むための空気吹込口である。
【0008】
前記構成の廃棄物溶融装置において、乾燥用シャフト部1の頂部の廃棄物装入口10から装入されて乾燥用シャフト部1内に形成された廃棄物充填層は、火格子部2および熱分解残渣溶融部3から発生したガスが通過し、効率的に熱交換されて乾燥が行われる。乾燥用シャフト部1で乾燥された廃棄物を火格子部2で移動させながら熱分解により熱分解残渣19を生成し、生成した熱分解残渣は熱分解残渣溶融部3内へ落下してコークスベット18の熱源により燃焼・溶融され、溶融物は炉床部4の出湯口14から出湯される。排ガスは、乾燥用シャフト部1の廃棄物中を通過して排ガス出口9から排気される。
【0009】
出湯された溶融スラグは水砕設備で急冷して固化し、細かい粒子の水砕スラグとなる。得られた水砕スラグは、コンクリートの骨材などとして利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−255890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前記引用文献1記載の溶融処理方法では、熱分解残渣溶融部に副資材であるコークス及び石灰石を熱分解残渣溶融部に直接投入する方式であることから、投入されたコークス、石灰石が未溶融のままスラグ中に混入した水砕スラグを骨材としてコンクリートに使用すると、コンクリートの表面部分が部分的に飛び出すように剥がれてくるポップアウトが起こるおそれがある。
【0012】
そこで、本発明は、乾燥用シャフト部と熱分解残渣溶融部が火格子部を介して連設された廃棄物溶融装置による廃棄物溶融処理方法において、コンクリートのポップアウトを防止するためにスラグ中への不純物混入を防止する廃棄物溶融処理方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の廃棄物溶融処理方法は、廃棄物を乾燥する乾燥用シャフト部の頂部から廃棄物を乾燥用シャフト部内に装入して廃棄物充填層を形成し、形成した廃棄物充填層に、熱分解残渣を生成する火格子部とコークスを熱源として熱分解残渣を溶融する熱分解残渣溶融部とで発生したガスを通過させて廃棄物を乾燥させるとともに、廃棄物充填層を通過したガスは乾燥用シャフト部の頂部から排出し、乾燥用シャフト部で乾燥した廃棄物を火格子部で熱分解して熱分解残渣を生成し、生成した熱分解残渣を火格子部から連続的に落下させて溶融炉の熱分解残渣溶融部へ供給して溶融し、溶融スラグを出湯して水砕する廃棄物溶融処理方法において、出湯中に石灰石の投入を停止することを特徴とする。
【0014】
前記構成において、出湯中に火格子のうち少なくとも最終段の火格子を停止して熱分解残渣の熱分解残渣溶融部への供給を停止したり、コークスの投入を停止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、出湯直前に熱分解残渣溶融部に石灰石の未溶融物を供給しないで溶融スラグ中への不純物の混入、さらには熱分解残渣あるいはコークスの混入を防ぐので、ポップアウトの原因物質を取り除くことができ、スラグを含むコンクリート製品の品質が向上する。また、スラグ品質が向上することで、用途が拡大し、資源の有効活用ができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の廃棄物溶融炉の概略図である。
【図2】従来の廃棄物溶融炉の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に示す本発明の廃棄物溶融装置は、図2に示した従来の廃棄物溶融炉と同一構成には同一符号を付している。
【0018】
図1において、本発明の廃棄物溶融処理装置は、装入された廃棄物を乾燥・熱分解する乾燥用シャフト部1、乾燥用シャフト部1で乾燥・熱分解された廃棄物をさらに熱分解して熱分解残渣を生成する火格子部2、火格子部2で生成された熱分解残渣を燃焼・溶融する、溶融炉6の熱分解残渣溶融部3からなる。乾燥用シャフト部1が火格子部2の入側の上方に配置され、熱分解残渣溶融部3が火格子部2の出側の下方に配置されてクランク形状に連通して一体に接続されている。
【0019】
乾燥用シャフト部1の頂部には、廃棄物装入口10と排ガス出口9が設けられる。乾燥用シャフト部1内に廃棄物装入口10から装入された廃棄物により廃棄物充填層が形成される。廃棄物充填層には火格子部2及び熱分解残渣溶融部3で発生したガスが通過して熱交換により廃棄物を乾燥させ、廃棄物充填層を抜けたガスは頂部の排ガス出口9から排出される。
【0020】
火格子部2は、乾燥用シャフト部1で乾燥された廃棄物を熱分解により熱分解残渣を生成させながら熱分解残渣溶融部3へ移動させる火格子13を備えている。火格子部2は、スト−カ炉と同様に、可動火格子13aと固定火格子13bとを交互に階段状又は傾斜状に組み合せることにより形成されており、各可動火格子13aを流体圧シリンダ等の駆動装置で前後方向へ一定のピッチで往復動させることによって、火格子上の廃棄物を撹拌しながら上流側から下流側へ前進させるようになっている。火格子部2へは下方から空気が送風される。火格子構造とすることによって、熱分解残渣溶融部3への熱分解残渣19の供給が連続的且つ安定的となって熱分解残渣溶融部3において熱分解残渣の安定的な溶融を確保することが可能となる。
【0021】
火格子部2は前段の火格子群2aと後段の火格子群2bの2段階に分かれ、前段の火格子群2aと後段火格子群2bがそれぞれ独立した駆動装置を有している。火格子部を前段の火格子群2aと後段の火格子群2bの2段とすることで、火格子部2における廃棄物の撹拌を強化することができ、より効率的に乾燥、熱分解を行うことが可能となる。
【0022】
また、火格子部2における廃棄物の乾燥、熱分解状況によって、前段の火格子群2aと後段火格子群2bの独立した駆動装置により可動火格子13aの駆動速度、火格子からの送風量、送風温度等を個別に変化させて火格子部2における廃棄物の乾燥、熱分解状況を容易に制御することが可能となるので、廃棄物の乾燥、熱分解を適正化することが可能となる。例えば、廃棄物の乾燥・熱分解状態が不十分である場合は、前段の火格子群2aと比較して後段火格子群2bの火格子駆動速度を遅くすることによって乾燥、熱分解状態を改善することが可能となる。
【0023】
このようにすることによって、火格子燃焼負荷を300〜1000kg/h/mの範囲とすることができ、コークス使用量を低減するとともに、火格子部位の設備を小さくすることが可能となる。なお、火格子部2は、3段、4段としても良いが、縦横比が長くなるために最適な段数を選定することが重要である。
【0024】
また、後段の火格子群2bの傾斜角度は前段の火格子群2aの傾斜角度より小さくすることが望ましい。例えば、図1に示すように、後段の火格子群2bを水平にすることにより、後段の火格子群2bに向かって下方向に傾斜している前段の火格子群2aの傾斜角度より小さくしている。傾斜角度を変えることで、ごみの撹拌を強化することが可能となる。さらに後段の火格子2bの傾斜角度を前段の火格子2aよりも緩やかにすることで、火格子部2から乾燥、熱分解が不十分な熱分解残渣が熱分解残渣溶融部3に供給されることを抑制することが容易となる。そうすることによって、熱分解残渣溶融部3におけるコークス等の外部燃焼使用量を適正化することが可能となる。なお、乾燥用シャフト部1から火格子部2へ廃棄物を確実に供給するため、前段の火格子群2aは、図1に示すように、水平階段状に設置されていることが望ましい。なお、火格子部2から落下した熱分解残渣等はコンベア20で排出される。
【0025】
熱分解残渣溶融部3は、炉床部4には酸素源として空気と酸素を吹き込む下段羽口7を備えるとともに、朝顔部5に空気を吹き込む上段羽口8が配置されている。炉床部4には、従来のシャフト炉式廃棄物溶融炉と同じくコークスベット18が形成され、溶融物を出湯する出湯口14が設けられる。コークス、石灰石などの副資材は、溶融炉6の頂部の副資材装入口15から投入する。
【0026】
前記構成を有する廃棄物処理装置において、乾燥用シャフト部1の頂部の廃棄物装入口4から廃棄物が乾燥用シャフト部1内に装入されて形成された廃棄物充填層に火格子部2および熱分解残渣溶融部3で発生した排ガスが通過することによって熱交換され廃棄物が効率的に乾燥される。乾燥用シャフト部1の廃棄物充填層を抜けた熱交換後のガスは、排ガス出口9から排気される。
【0027】
乾燥用シャフト部1で乾燥された廃棄物は、火格子部2で熱分解させて熱分解残渣19を生成する。生成された熱分解残渣19は火格子部2の出側の残渣落とし口から熱分解残渣溶融部3内へ落下して堆積し、コークスベット18の熱源により燃焼、溶融される。溶融物は炉床部4の出湯口14から排出される。
【0028】
出湯された溶融スラグは水砕設備で急冷により水砕固化されて、水砕スラグとして回収される。
【0029】
本発明では、出湯直前に火格子を停止して熱分解残渣の熱分解残渣溶融部への供給を停止し、また、出湯中にコークス、石灰石の熱分解残渣溶融部への投入を停止する。この操作により、溶融スラグ中への不純物の混入を防ぐことができるので、ポップアウトの原因物質を取り除くことができる。
【実施例1】
【0030】
<従来の制御方法>
出湯に関係なく、副資材(コークス・石灰石)が炉内に投入される。
投入は通常1回/10分のピッチで設定した投入量(kg/h)を6回に分割して投入される。
【0031】
<本発明を適用した場合の制御方法>
出湯中は、水砕水循環ポンプ(溶融物冷却用水噴射ポンプ)を運転するため、その運転信号を検知している間は副資材の投入を自動的に停止させる。
出湯(通常5〜10分間程度)が終了し、水砕水循環ポンプが停止すれば、副資材の投入を再開する。
出湯中にスキップされた副資材は、次回の投入でスキップされた分と合わせて投入される。
副資材を1回飛ばす程度であれば、炉底のコークスベッド層およびスラグ塩基度(流動性)への影響はほとんどない。
【0032】
溶融スラグのポップアウトはフリー石灰(f−CaO)の量が関係している。TBF法による測定値ではf−CaOが0.1%を超えると、ポップアウト発生の危険性がある。f−CaOの測定法の一つであるトリブロムフェノール法(TBF法)によってf−CaOを測定した例を表1に示す。
【0033】
【表1】

従来の制御方法ではf−CaOが0.1%以上含まれることがあり、ポップアウトの危険性があるが、本発明では、0.1%未満であることが確認された。
【符号の説明】
【0034】
1:乾燥用シャフト部 2:火格子部
3:熱分解残渣溶融部 4:炉床部
5:朝顔部 6:溶融炉
7:下段羽口 8:上段羽口
9:排ガス出口 10:廃棄物装入口
11:シール用蓋 12:廃棄物移送装置
13:火格子 14:出湯口
15:副資材装入口 16:バーナ
17:乾燥用シャフト部羽口 18:コークスベット
19:熱分解残渣 20:コンベア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物を乾燥する乾燥用シャフト部の頂部から廃棄物を乾燥用シャフト部内に装入して廃棄物充填層を形成し、
形成した廃棄物充填層に、熱分解残渣を生成する火格子部とコークスを熱源として熱分解残渣を溶融する熱分解残渣溶融部とで発生したガスを通過させて廃棄物を乾燥させるとともに、廃棄物充填層を通過したガスは乾燥用シャフト部の頂部から排出し、
乾燥用シャフト部で乾燥した廃棄物を火格子部で熱分解して熱分解残渣を生成し、
生成した熱分解残渣を火格子部から連続的に落下させて溶融炉の熱分解残渣溶融部へ供給して溶融し、溶融スラグを出湯して水砕する廃棄物溶融処理方法において、
出湯中に石灰石の投入を停止することを特徴とする廃棄物溶融処理方法。
【請求項2】
出湯中に火格子のうち少なくとも最終段の火格子を停止して熱分解残渣の熱分解残渣溶融部への供給を停止することを特徴とする請求項1記載の廃棄物溶融処理方法。
【請求項3】
出湯中にコークスの投入を停止することを特徴とする請求項1又は2に記載の廃棄物溶融処理方法。

【図1】
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【図2】
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