説明

廃棄物焼却灰等の脱塩素化方法

【課題】
従来、廃棄物焼却灰等の脱塩素化は、減圧下において800〜1000度Cで加熱処理する方法等が行われているが、脱塩効果が低くエコセメント用の原料として用いることはできても、ポルトランドセメント等の塩素量基準が高いセメントの場合には原料として用いることができないという問題があった。
【解決手段】
脱塩素処理対象物に、対象物含有塩素のモル等量以上の易揮発性金属を加えて粉砕混合し、処理対象物の含水率が30〜50重量%程度となるように水を加えて造粒して700度C以上の高温炉内において通気ガスによる酸化雰囲気又は還元雰囲気中において30分以上加熱するようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般廃棄物や産業廃棄物の焼却工場から排出される焼却灰(飛灰を含む)、土壌や下水道汚泥等を脱塩素化してセメントの原料等として利用するための廃棄物焼却灰等の脱塩素化方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、焼却灰(飛灰を含む)、土壌や下水道汚泥中の塩素を除去する脱塩素化方法としては、例えば特許文献1に示されるように、塩素化合物を水に溶出する湿式方式と焼却灰等を加熱処理する塩化揮発法があり、塩化揮発法では特許文献2に示されるように減圧下において800〜1000度Cで加熱処理する方法等が行われている。
【特許文献1】特開平9−165243号公報
【特許文献2】特開2003−320339号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、これらの方法により脱塩素化した焼却灰中の塩素分は0.1〜0.2%程度で、基準が0.1%以下となっているエコセメント用の原料として用いることはできても、ポルトランドセメント等の塩素量基準が高いセメントの場合には原料として用いることができないという問題があった。
【0004】
また、脱塩素化対象物としての焼却灰に含有される塩素分は1〜5%、飛灰に含有される塩素分は10数%となっており、産業廃棄物の焼却灰と一般廃棄物の焼却灰等、焼却物の性状によって塩素分の種類や形態も異なってくるという問題もある。
【0005】
出願人は焼却物の性状による焼却灰組成を比較検討すべく、5ケ所の焼却工場から5検体としてA〜Eの焼却灰を集め、それぞれ105〜110度Cで一晩乾燥させた後、非金属製で2mmの目のふるいを通過させて各検体を作成して分析した結果、表1の結果を得ている。
【表1】

【課題を解決するための手段】
【0006】
出願人は上記の課題に対処するため、セメント原料への受入れ基準値である塩素分0.05wt%以下に適合する脱塩素化方法を模索すべく、各検体についてマッフル炉を用いて1時間、1000度Cの加熱を行った結果、検体B、C、Dについては85%以上の塩素除去率を示したが、検体A、Eについては極めて低い塩素除去率しか得られず上記基準値に達しなかった。
【0007】
そこで、出願人は最も脱塩素化が困難な検体A、Eについて、加熱温度、加熱時間、添加物の種類と添加量、水分添加量、検体の形状をそれぞれ要因として各要因についての実験を行い、本発明を完成したものである。
【0008】
即ち、本発明は、処理後の原料を塩素量基準が高いポルトランドセメント等の原料として用いることに主眼を置き、最も脱塩素化が困難な検体焼却灰A、検体焼却灰Eについて、セメント原料への受入れ基準値である塩素分0.05wt%以下に適合する脱塩素化方法を基準としたものである。
【0009】
その結果、脱塩素処理対象物に、対象物含有塩素のモル等量以上の易揮発性金属の酸化物又はその金属の水酸物やその金属の炭酸化物を加えて粉砕混合し、更に、処理対象物の含水率が30〜50重量%程度となるように水を加えて造粒して700度C以上の高温炉内において空気、酸素ガス、二酸化炭素ガス、窒素ガス、水蒸気等の通気ガスによる酸化雰囲気又は還元雰囲気中において30分以上加熱するように構成した。
【0010】
また、易揮発性金属酸化物を加えて粉砕混合した処理対象物の造粒は、粒径が10ミリ径程度の球形又はペレットとして処理するように構成し、更に、易揮発性金属酸化物をシリカ、チタン、アルミニウム、鉄、亜鉛等の金属化合物の単独又は混合物として構成した。
【実施例】
【0011】
以下、本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
図1は本発明による廃棄物焼却灰等の脱塩素化方法の実施例を示すもので、脱塩処理の工程を示す工程模式図である。そこに示される原料の焼却灰等には産業廃棄物、一般廃棄物の飛灰、焼却灰、或いは土壌や下水道汚泥等があり、排出事業所から排出される場合には鉄くずや石ころ、プラスチック類等の雑物が混入されている。
【0012】
そこで、先ずスクリーン1によりこれらの雑物を除去した原料を、脱塩素化剤となる5〜10重量%の二酸化珪素と共に、或いは添加しながら奈良式粉砕機やフェサーミル等の粉砕機11に投入し粉砕・混合する。
【0013】
易揮発性金属としては、シリカ、チタン、アルミニウム、鉄、亜鉛等の酸化物、水酸化物、炭酸化物の金属化合物を単独又は混合物を用いるが、具体的には二酸化珪素、三酸化アルミニウム、シリカ系固化剤を用いることが好ましく、特に二酸化珪素が効果的である。
【0014】
処理原料と脱塩素化剤とを粉砕・混合した後、これに水を添加し、処理対象物の含水率が30〜50重量%程度となるようにリボンミキサー、セメントミキサー等により混合して造粒機又はペレット化機12に送る。
【0015】
造粒機又はペレット化機では、直径10mmのボール或いはペレットに造粒して高温炉に投入して連続的に脱塩素化反応を行わせるものであるが、熟成中に粒又はペレット内の含有水分を介して塩素と易揮発性元素とを接触させ加熱によって水分と共に揮発するので粒又はペレット内の含有水分は多い方が好ましい。
【0016】
脱塩素化剤と攪拌混合されて造粒或いはペレット化された被処理物は管状の高温加熱炉ロータリーキルン炉2に導入され、700度C以上好ましくは900度C以上に高温加熱されながら傾斜角に従って回転進行するが、この間に高温中で被処理物中の塩素基が脱塩素化剤の易揮発性金属と反応して気化され、被処理物と分離される。
【0017】
ロータリーキルン炉2の高温加熱は、外部加熱と内部加熱の両方式あるが、外部加熱の場合は、炉内加熱はないので被処理物の回転進行に対向する吹き込み口から通気ガスとして水蒸気、空気等を吹き込み、炉外から加熱するため燃焼系ガスの吹き込みはない。
【0018】
内部加熱方式には向流加熱と並流加熱がある。図1は向流加熱として被処理物の回転進行に対向する吹き込み口21より燃焼ガスとして酸素ガス、窒素ガス、水蒸気、二酸化炭素ガス等を吹き込むが、図2は並流加熱として被処理物の回転進行と併流する石炭やPDFによるバーナーで吹き込み口22より酸素ガス、窒素ガス、水蒸気、二酸化炭素ガス等が通気ガスとなる。
【0019】
炉内での温度と時間は被処理物の組成によっても異なるが、流量(線速として)0.05メートル/秒以上の通気化で、空気、酸素ガス、二酸化炭素ガス、窒素ガス、水蒸気等の通気ガスによる酸化雰囲気又は還元雰囲気中において加熱温度700度C以上、好ましくは900度C以上で30分以上加熱することにより、検体A、Eのような組成の焼却灰でもセメント原料への受入れ基準値に適合する脱塩素化を行うことができた。
【0020】
ロータリーキルン炉2内は原則的に高温気化した塩素類は低分子化合物として発散され、固形物と分離されて排ガスとなり、固形物は処理物としてロータリーキルン炉2の排出口23より排出され、脱塩素化物としてポルトランドセメント等の原料として用いるものである。
【0021】
固形物と分離された排ガスは、通常、そのまま、冷却塔に送られ急冷されてダイオキシン類の再生への反応が防止されて排ガスとして放出されるが、本発明の場合には高基準の脱塩素化が行われるので、排ガス中の塩素濃度が高いため排ガスはバーナーを備えた二次燃焼炉3を経て急冷塔4に送り、更に水を加えて急冷する。
【0022】
加水急冷されてダイオキシン類の再生への反応が防止された排ガスは、除害塔5でアルカリ液洗浄を行って放出するが、洗浄アルカリ液と急冷塔で用いた水は、ピットから水処理施設に送られて汚泥と排水に分離処理される。
【0023】
本発明は以上のように構成したので、検体A、Eのような塩素濃度が高い組成の焼却灰でもセメント原料への受入れ基準値、即ち、0.05wt%以下を十分に適合する脱塩素化を行うことができ、エコセメントではなくポルトランドセメントの原料として幅広く活用することができたものである。

【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施例による廃棄物焼却灰等の脱塩素化方法脱塩素化方法を示すもので、ロータリーキルン炉において向流加熱する場合の工程模式図
【図2】同じく、ロータリーキルン炉において並流加熱する場合の工程模式図
【符号の説明】
【0025】
1 スクリーン
11 粉砕機
12 造粒機又はペレット化機
2 ロータリーキルン炉
21 ロータリーキルン炉の対向吹き込み口
22 ロータリーキルン炉の併流吹き込み口
23 ロータリーキルン炉の処理物排出口
3 二次燃焼炉
4 急冷塔
5 除害塔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱塩素処理対象物に、対象物含有塩素のモル等量以上の易揮発性金属の酸化物又はその金属の水酸物やその金属の炭酸化物を加えて粉砕混合し、更に、処理対象物の含水率が30〜50重量%程度となるように水を加えて造粒して700度C以上の高温炉内において空気、酸素ガス、二酸化炭素ガス、窒素ガス、水蒸気等の通気ガスによる酸化雰囲気又は還元雰囲気中において30分以上加熱することを特徴とする廃棄物焼却灰等の脱塩素化方法
【請求項2】
処理対象物の造粒は、粒径が10ミリ程度の球形又はペレットとするようにした請求項1記載の廃棄物焼却灰等の脱塩素化方法
【請求項3】
易揮発性金属をシリカ、チタン、アルミニウム、鉄、亜鉛等の酸化物、水酸化物、炭酸化物の金属化合物の単独又は混合物とした請求項1又は請求項2記載の廃棄物焼却灰等の脱塩素化方法

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−69178(P2007−69178A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−262048(P2005−262048)
【出願日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(591054886)三友プラントサービス株式会社 (5)
【Fターム(参考)】