説明

廃水からのフッ素化界面活性剤の除去

本発明は、フルオロポリマー粒子を含む廃水からフッ素化界面活性剤を除去する方法を提供する。該方法は、(i)非フッ素化界面活性剤を廃水に添加することと、(ii)こうして得られた廃水を吸着剤粒子と接触させて、フッ素化界面活性剤の少なくとも一部を吸着剤粒子に吸着させることと、(iii)廃水と吸着剤粒子とを分離することとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃水、特にフルオロポリマー粒子を含有する廃水からのフッ素化界面活性剤の除去および/または回収に関する。
【背景技術】
【0002】
フルオロポリマー、すなわちフッ素化骨格を有するポリマーは長い間にわたって知られており、耐熱性、耐薬品性、耐候性、UV安定性などのいくつかの望ましい特性のために、様々な用途において使用されている。様々なフルオロポリマーは、例えば、(非特許文献1)に記載されている。フルオロポリマーは、部分的にフッ素化された骨格、一般には少なくとも40重量%がフッ素化された骨格、あるいは完全にフッ素化された骨格を有し得る。フルオロポリマーの特定の例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン(TFE)およびヘキサフルオロプロピレン(HFP)のコポリマー(FEPポリマー)、ペルフルオロアルコキシコポリマー(PFA)、エチレン−テトラフルオロエチレン(ETFE)コポリマー、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよびフッ化ビニリデンのターポリマー(THV)、ならびにポリフッ化ビニリデンポリマー(PVDF)が挙げられる。
【0003】
頻繁に使用されるフルオロポリマーの製造方法は、1つまたは複数のフッ素化モノマーの水性乳化重合を伴い、フルオロポリマーの水性分散体を生成する。フッ素化モノマーの水性乳化重合は、一般に、フッ素化界面活性剤の使用を伴う。頻繁に使用されるフッ素化界面活性剤としては、ペルフルオロオクタン酸およびその塩、特にペルフルオロオクタン酸アンモニウム(ammonium perfluorooctanoic acid)が挙げられる。更に、使用されるフッ素化界面活性剤としては、(特許文献1)、(特許文献2)、(特許文献3)、(特許文献4)、(特許文献5)、(特許文献6)および(特許文献7)に開示されるようなペルフルオロポリエーテル界面活性剤が挙げられる。また更に、使用されている界面活性剤は、(特許文献8)、(特許文献9)、(特許文献10)、(特許文献11)、(特許文献12)、(特許文献13)、(特許文献14)および(特許文献15)に開示されている。
【0004】
ペルフルオロカルボン酸(PFCA)は、フッ素化ポリマー、例えば、PTFE、FEP、PFA、過フッ素化エラストマーなどのような過フッ素化ポリマーを製造するために好ましい乳化剤である。特にその塩(例えばアンモニウム塩、APFO)の形態のペルフルオロオクタン酸(PFOA)は、広く使用されている。しかしながら、APFOおよび他のフッ素化界面活性剤、特に過フッ素化界面活性剤は、環境問題を引き起こしている。もう1つの重要な側面は、これらの界面活性剤が高価な材料であるという事実であり、製造過程からのその損失は最小限にされるべきである。今までのところ、これらの乳化剤、特にAPFOは、連鎖移動特性を示さないので不可欠である。従って、PFOAまたはAPFOはそれぞれ、全種類のフッ素化界面活性剤、特にカルボン酸基を有するフッ素化界面活性剤のただ顕著な例である。
【0005】
フルオロポリマーを使用して基材を被覆し、例えば耐薬品性、耐候性、撥水性および撥油性などの望ましい特性を基材に提供することができる。例えば、フルオロポリマーの水性分散体を使用して、台所用品を被覆し、布またはテキスタイル、例えばガラス布を含浸させ、紙または高分子基材を被覆することができる。節約および利便性のために、フルオロポリマー分散体は、通常、35重量%〜70重量%のフルオロポリマー固形分を有することができ、これは通常、高濃度化(upconcentration)過程を用いて達成される。あるいは、いくつかの用途では、フルオロポリマーは、顆粒状または粉末の形態で提供される。フルオロポリマー顆粒または粉末を得るために、フルオロポリマーは、通常凝固され、その結果得られる凝固物を水で1回または複数回洗浄して、所望のレベルの純度を得ることができる。
【0006】
フルオロポリマーをその最終市販形態に製造する間に、フッ素化界面活性剤を含有する廃水流が生じる。例えば、廃水流は、分散体の高濃度化、重合容器および装置の清浄化、フルオロポリマー顆粒または粉末を得るための分散体の凝固および洗浄に起因し得る。更に、フッ素化界面活性剤を含有する廃水は、フルオロポリマーの適用中に生じ得る。廃水流は、フッ素化界面活性剤だけでなく、少量のフルオロポリマー粒子などの他の成分も含有することが多い。
【0007】
水性媒体からPFCAを除去するためにいくつかの方法が知られている。例えば、逆浸透を用いる方法は、(特許文献16)に記載されている。塩素化炭化水素を用いて低pHレベルの水溶液からPFCAを抽出することと、有機層をアルミナと接触させてPFCAを回収することとを併せた方法は、(特許文献17)および(特許文献18)に記載されている。(特許文献19)は、PFCAを水溶液から分離するためのシリカゲルの使用を開示する。
【0008】
PFCA汚染水の処理は、(非特許文献2)に記載されるように、逆浸透を適用した後、エタノールによるその再生を含む活性炭床の吸収によって行なうことができる。ロシアの著者らにより報告されるように、PFCA汚染水(1リットルあたり40〜4000mgのPFCA)は、最初の段階で逆浸透によって精製され、1リットルあたり20mg未満のPFCAを含有する水を生じる。このレベルは、活性炭床を用いる追加の精製工程で、更に低下させることができる。PFCAが通り抜けたときに、負荷された活性炭床は再生される。いくつかの異なる方法が試験されたが、溶媒、特にエタノール−水の混合物によるソックスレー抽出が最良の結果を示した。しかしながら、この場合でさえ、吸収されたPFCAのわずか65%しか除去できなかった。こうして再生された活性炭は、25〜40%の範囲の活性の低下を示した。この結果に基づいて、活性炭は、廃棄すべき前に2〜3回しか再使用できないと記載されている。
【0009】
上述の方法は、フッ素化界面活性剤、特にPFCAを水から除去するために適用することができるが、該方法は、更なる汚染物質、特にフルオロポリマー粒子を含有する複雑な産業廃水に容易に適用することはできない。これらの粒子は、除去過程を妨害し得る。特に、カーボンブラックまたはシリカゲルなどの吸着剤粒子の効率は、フルオロポリマー粒子による吸着剤粒子の目詰まり(clogging)のために大幅に低下する。
【0010】
更に、高価なフッ素化界面活性剤を重合過程で再使用し、そして吸着剤粒子を廃水の精製において再使用できるように、フッ素化界面活性剤を吸着剤粒子から回収することが通常所望されるであろう。吸着剤粒子の効率は再生後に低下するかもしれないが、容認できない低効率レベルのために廃棄する前により何度も再使用できるように、吸着剤粒子を再生することが望ましいであろう。
【0011】
従って、フルオロポリマー粒子を含有する廃水からフッ素化界面活性剤を回収または除去するためのカーボンブラックまたはシリカゲルなどの吸着剤粒子の使用は、実用的な用途を見出していない。代わりに、フルオロポリマー粒子含有廃水からPFCAを回収するためのアニオン交換樹脂の使用は、(特許文献20)および(特許文献21)に開示されている。(特許文献20)によると、フルオロポリマー粒子は、廃水をアニオン交換樹脂と接触させる前に廃水から除去される。(特許文献21)によると、廃水を交換樹脂と接触させる前に、非イオン性界面活性剤が廃水に添加される。
【0012】
【特許文献1】EP1059342号明細書
【特許文献2】EP712882号明細書
【特許文献3】EP752432号明細書
【特許文献4】EP816397号明細書
【特許文献5】米国特許第6,025,307号明細書
【特許文献6】米国特許第6,103,843号明細書
【特許文献7】米国特許第6,126,849号明細書
【特許文献8】米国特許第5,229,480号明細書
【特許文献9】米国特許第5,763,552号明細書
【特許文献10】米国特許第5,688,884号明細書
【特許文献11】米国特許第5,700,859号明細書
【特許文献12】米国特許第5,804,650号明細書
【特許文献13】米国特許第5,895,799号明細書
【特許文献14】国際公開第00/22002号パンフレット
【特許文献15】国際公開第00/71590号パンフレット
【特許文献16】国際公開第02/139593
【特許文献17】EP194692号明細書
【特許文献18】EP194691号明細書
【特許文献19】DE2407834号明細書
【特許文献20】国際公開第99/62858号パンフレット
【特許文献21】国際公開第99/62830号パンフレット
【非特許文献1】「最新のフルオロポリマー(Modern Fluoropolymers)」ジョン・シェアーズ(John Scheirs)編、ウィリー・サイエンス(Wiley Science)1997年
【非特許文献2】G.A.ビストロフ(Bystrov)ら、Plasticheskie Massy,(1990),(4),75−8(CA113,11571)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
フルオロポリマー粒子を含有する廃水から、フッ素化界面活性剤、特にカルボン酸基含有フッ素化界面活性剤を除去および/または回収するための更なる方法を見出すことが今望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、フルオロポリマー粒子を含む廃水からフッ素化界面活性剤を除去する方法を提供する。該方法は、(i)非フッ素化界面活性剤を廃水に添加することと、(ii)こうして得られた廃水を吸着剤粒子と接触させて、フッ素化界面活性剤の少なくとも一部を吸着剤粒子に吸着させることと、(iii)廃水と吸着剤粒子とを分離することとを含む。
【0015】
用語「吸収剤粒子(absorbent particles)」とは、本発明との関連では、フッ素化界面活性剤を物理的に吸着することができる粒子を意味する。しかしながら、用語「吸着剤粒子(adsorbent particles)」は、イオン交換樹脂への吸着がイオン交換過程以外の物理吸着過程によっても生じ得るという事実にもかかわらず、通常イオン交換過程の結果としてイオン基を有するフッ素化界面活性剤と結合するイオン交換樹脂を含むことは意図しない。
【0016】
驚くことに、吸着剤粒子は通常、非フッ素化界面活性剤も吸着するという事実にもかかわらず、フルオロポリマー粒子による吸着剤粒子の目詰まりの危険なしに、フルオロポリマー粒子を含有する廃水中のフッ素化界面活性剤の量を有効に削減可能であることが分かった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
フルオロポリマーの取扱い、使用または製造から生じる廃水は、本発明の方法を用いて処理することができる。通常、このような廃水は、いくらかのフッ素化界面活性剤に加えてフルオロポリマー粒子を含有し得る。廃水中のフルオロポリマー粒子の量は、一般には限定されており、水の量を基準にして通常5重量%未満、または2重量%未満である。廃水中のフルオロポリマー粒子の一般的な量は、1重量%未満、例えば0.01〜0.5重量%である。フルオロポリマー粒子はどんな形状を有してもよいが、一般には球形であり、広範囲にわたって様々なサイズを有し得る。通常、フルオロポリマー粒子は10nm〜1000nmの直径を有し、一般に30〜500nmの直径を有し得る。
【0018】
フルオロポリマー粒子の性質は重要でなく、任意のフルオロポリマーおよび異なるフルオロポリマーの混合物が、水中に含有されてもよい。例えば、フルオロポリマー粒子は、PTFEおよび変性PTFEなどの非溶融加工可能なフルオロポリマー粒子でも、フルオロプラスチックおよびフルオロエラストマーを含む溶融加工可能なフルオロポリマー粒子でもよい。溶融加工可能なフルオロポリマーの例としては、ETFE、FEP、PFAおよびTHVポリマーがある。
【0019】
フッ素化界面活性剤およびフルオロポリマー粒子を含有することに加えて、廃水は、重合過程からの残余原料、例えば塩、開始剤、連鎖移動剤などのその他の成分を含有することもある。
【0020】
本発明によると、非フッ素化界面活性剤は、排水と吸着剤粒子とを接触させる前に廃水に添加されなければならない。非フッ素化界面活性剤は吸着剤粒子に吸着され得るが、それでもなお、非フッ素化界面活性剤の使用はフルオロポリマー粒子による吸着剤粒子の目詰まりの問題を防止または低減することが分かっている。必要とされる非フッ素化界面活性剤の量は、通常、使用される吸着剤粒子の性質と、分散体中のフルオロポリマー粒子の量とに依存するであろう。適切な量は、当業者による慣例の実験を通して容易に決定することができる。一般に、非フッ素化界面活性剤の量は、廃水中のフルオロポリマー粒子の量を基準にして1〜1000ppmであろう。都合のよい量は5〜500ppmである。
【0021】
非フッ素化界面活性剤は、アニオン性、両性および非イオン性界面活性剤から選択することができ、非イオン性界面活性剤が好ましい。適切な非イオン性の非フッ素化界面活性剤の例には、1つまたは複数の非イオン性親水基に結合した1つまたは複数の飽和または不飽和脂肪族部分を含有する界面活性剤が含まれる。飽和または不飽和脂肪族部分は、線状、分枝状および/または環状構造を含むことができ、エステル、エーテル結合、アミド結合などの官能基によって非イオン性親水基に結合され得る。非イオン性親水基は、一般に、アルキレン基が2、3または4個の炭素原子を有するオキシアルキレン基を含む。例えば、非イオン性親水基は、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、あるいはオキシエチレンおよびオキシプロピレン基を含むコポリマー(ブロックコポリマーを含む)でよい。
【0022】
非イオン性界面活性剤の特定の例としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル界面活性剤、ポリソルベートおよびアルコキシ化アセチレンジオール、好ましくはエトキシ化アセチレンジオールが挙げられる。使用可能な市販のエトキシ化アセチレンジオールとしては、エア・プロダクツ(Air Products)からサーフィノール(SURFYNOL)TM商標で入手可能なもの、特にサーフィノール(SURFYNOL)TM465がある。
【0023】
本発明に関連する特定の実施形態によると、非イオン性界面活性剤は、式
1−O−[CH2CH2O]n−[R2O]m−R3 (I)
に相当し、式中、R1は、少なくとも8個の炭素原子を有する芳香族または脂肪族炭化水素基を表し、R2は、3個の炭素原子を有するアルキレンを表し、R3は、水素またはC1〜C3アルキル基を表し、nは0〜40の値を有し、mは0〜40の値を有し、そしてn+mの和は少なくとも2である。
【0024】
上記式(I)において、nおよびmで示される単位はブロックとして現れてもよいし、あるいは、交互またはランダム構造で存在してもよいことは理解されるであろう。
【0025】
上記式(I)に従う非イオン性界面活性剤の例としては、式
【化1】


のアルキルフェノールオキシエチレートが挙げられ、式中、Rは4〜20個の炭素原子のアルキル基であり、rは4〜20の値を表す。式(II)に従う界面活性剤の例としては、例えばトリトン(TRITON)TMX100(エトキシ単位の数が約10)またはトリトン(TRITON)TMX114(エトキシ単位の数が約7〜8)などの商標名トリトン(TRITON)TMで市販されているエトキシ化p−イソオクチルフェノールが挙げられる。
【0026】
また更なる例としては、上記式(I)中のR1が4〜20個の炭素原子のアルキル基を表し、mが0であり、そしてR3が水素のものがある。その例としては、約8個のエトキシ基でエトキシ化され、クラリアント社(Clariant GmbH)からジェナポール(GENAPOL)(登録商標)X080で市販されているイソトリデカノールが挙げられる。親水性部分がエトキシ基およびプロポキシ基のブロックコポリマーを含む式(I)に従う非イオン性界面活性剤も同様に使用することができる。このような非イオン性界面活性剤は、クラリアント社(Clariant GmbH)から商品名ジェナポール(GENAPOL)(登録商標)PF40およびジェナポール(GENAPOL)(登録商標)PF80で市販されている。
【0027】
本発明で使用するためのアニオン性炭化水素界面活性剤の特定の例としては、ラウリルスルホネートなどのアルキルスルホネート、ラウリルスルフェートなどのアルキルスルフェート、アルキルアリールスルホネートおよびアルキルアリールスルフェート、ラウリン酸およびそれらの塩などの脂肪(カルボン)酸およびそれらの塩、ならびにリン酸アルキルまたはアルキルアリールエステルおよびこれらの塩が挙げられる。使用可能な市販のアニオン性炭化水素界面活性剤としては、ステパン・カンパニー(Stepan Company)からのポリステップ(Polystep)TMA16(ドデシルベンジルスルホン酸ナトリウム)、クラリアント社(Clariant GmbH)から入手可能なホスタプァー(Hostapur)TMSAS30(第2級アルキルスルホネートナトリウム塩)、エマルソゲン(Emulsogen)TMLS(ラウリル硫酸ナトリウム)およびエマルソゲン(Emulsogen)TMEPA1954(C12〜C14アルキル硫酸ナトリウムの混合物)、ならびにユニオン・カーバイド(Union Carbide)から入手可能なトリトン(TRITON)TMX−200(アルキルスルホン酸ナトリウム)が挙げられる。好ましいのは、スルホネート基を有するアニオン性炭化水素界面活性剤である。
【0028】
廃水中に含有されるフッ素化界面活性剤はどのフッ素化界面活性剤でもよく、すなわち本発明の方法は、様々なフッ素化界面活性剤(その混合物を含む)を廃水から除去するために広く実施することができる。しかしながら、本発明の方法は、特に、(過)フッ素化脂肪族酸界面活性剤またはその塩を除去および/または回収するために適する。本発明の方法は、以下の式
Q−Rf−Z−Ma (III)
に従うフッ素化界面活性剤を廃水から除去するために便利に使用することができ、式中、Qは水素、ClまたはFを表し、それによってQは末端位置に存在してもしなくてもよく、Rfは、4〜15個の炭素原子を有する線状または分枝状の過フッ素化アルキレンを表し、ZはCOO-を表し、Maは、アルカリ金属イオンまたはアンモニウムイオンを含むカチオンを表す。上記式(III)に従うフッ素化界面活性剤の代表例は、ペルフルオロオクタン酸およびその塩、特にアンモニウム塩などのペルフルオロアルカン酸およびその塩である。
【0029】
廃水中に含有されるフッ素化界面活性剤の量は特に重要ではないが、通常、5〜10000ppmであり、一般には100〜5000ppmである。また、廃水は、フッ素化界面活性剤の混合物を含有し得るが、そのようなものは一般には好ましくないであろう。
【0030】
本発明の方法によると、廃水は吸着剤粒子と接触される。適切な吸着剤粒子には、カーボンブラック、シリカゲル、クレイおよびゼオライトが含まれる。便利に使用されるのは、カーボンブラック粒子である。吸着剤粒子の形状は、特に重要でない。例えば、吸着剤粒子はプレート形状を有してもよいし、球形、円筒形でもよいし、あるいは棒状でもよい。また、様々な異なる形状を有する吸着剤粒子は、混合物として使用されてもよい。吸着剤粒子のサイズは、通常、0.05mm〜20mmであり、一般には0.1〜10mmである。実際的な範囲は、0.5〜5mmである。吸着剤粒子は、通常、その表面にフッ素化酸界面活性剤を吸着し、従って、粒子の比表面積、すなわち単位重量あたりの表面の量を最適化することが一般に好ましいであろう。通常、吸着剤粒子の比表面積は、10〜5000m2/g、一般に100〜3000m2/gであり、実際的な範囲は、300〜2000m2/gであろう。
【0031】
フッ素化界面活性剤を除去するために使用される吸着剤粒子の量は、一般に、使用される吸着剤粒子の性質、および廃水の組成、特に廃水に含有されるフッ素化界面活性剤の量に依存し得る。吸着剤粒子の適切な量は、当業者による慣例の実験を通して決定することができる。
【0032】
本発明の好ましい実施形態によると、フッ素化界面活性剤が上に吸着された吸着剤粒子は、最大容量まで負荷されたときに廃棄しなければならないのではなく、フッ素化界面活性剤を廃水から除去するために多数回再使用できるように再生される。
【0033】
例えば、ペルフルオロ脂肪族酸界面活性剤またはその塩、もしくは上記式(III)の界面活性剤などの酸基含有フッ素化界面活性剤が負荷された吸着剤粒子を再生する特に有用な方法は、フッ素化界面活性剤が負荷された吸収剤粒子と、アルコール、任意に酸を含み、そして一般には水も含む再生流体とを混合することを含む。こうして得られた混合物において、一般には混合物を加熱することによってアルコールによる酸基含有フッ素化界面活性剤のエステル化が生じて、フッ素化酸界面活性剤のエステル誘導体が生成される。再生流体の成分の添加順序は重要ではないが、まず吸着剤粒子にアルコールを添加し、次に任意で酸を添加するのが一般に好ましいであろう。アルコールおよび任意に酸を混合し、次にこれをひとつの流体として吸着剤粒子と混合することによって、再生流体を前もって調製することも、もちろん可能である。好ましくは、再生流体は、水も含有するであろう。フッ素化酸界面活性剤はアルコールとのエステル化を自己触媒できるので、酸の添加は必須ではない。それにもかかわらず通常、再生流体には酸が添加される。
【0034】
使用することができる適切なアルコールとしては、特に、メタノール、エタノールおよびプロパノールなどの1〜5個の炭素原子を有する低級脂肪族アルコールが挙げられる。しかしながら、芳香族アルコールも使用することができる。更に、アルコールは、アルコール前駆体の形態で添加されてもよい。しかしながら、このような前駆体は、エステル化を引き起こすために使用される条件下で、アルコールを形成しなければならない。アルコールの適切な前駆体は、吸着剤粒子を有する再生流体またはその混合物中に存在する酸性条件下で対応のアルコールを容易に形成するケタールなどの化合物を含むことができる。再生流体と共に使用される場合、任意選択的な酸は無機酸であるのが好ましいが、有機酸の使用も除外されない。また、酸は、好ましくは、例えば硫酸、塩酸、リン酸または硝酸などの強酸である。使用される酸の量および性質は、通常、再生流体および吸着剤粒子の混合物中で4未満、好ましくは3以下、そしてより好ましくは2以下のpHが達成されるようなものである。
【0035】
再生過程は、周囲圧力、正圧、および減圧で実行することができる。通常、再生過程は0.1〜2atmの圧力で実行され、周囲圧力、すなわち約1atmが便利である。混合物は、通常、混合物の沸点まで加熱され得るが、反応のためにそれより低い温度を使用することもできる。通常、再生過程は、30〜100℃の温度で実行される。
【0036】
再生流体の総量およびその組成は、通常、再生すべき負荷された吸着剤粒子の量および粒子の実際の負荷に基づいて決定される。一般に、再生流体は、再生に提供された吸着剤粒子上に負荷されたフッ素化酸界面活性剤の化学量論的な量または化学量論的に過剰な量で、アルコールを含有すべきである。このデータが得られなければ、再生液を過剰に適用しなければならない。これは、再生過程に悪影響を与えないが、最適でない量の再生液が使用されるという不都合を有する。過剰な再生液は、再生過程が終了した後、再生された吸着剤粒子から容易に排出され得る。排出される液体を秤量および分析して、排出される再生液の実際の量および組成を決定することができる。次に、排出される再生液が再使用されるようにその成分を適切な量で添加することによって、排出される再生液の組成および量を調整することができる。再生液の再使用はより少ない廃棄物を生じ、環境に優しく、そしてコストを削減するであろう。
【0037】
吸着剤粒子に対する再生流体の体積比は、好ましくは、少なくとも2であるが、これより低い体積比も同様に使用され得る。しかしながら、より低い体積比では、より低い体積比で生じる応力のために吸着剤粒子の損傷が生じ得る。より高い体積比は実施可能であるが、大きすぎる体積比は一般に非経済的であろう。通常、体積比は2〜4であろう。
【0038】
吸着剤粒子およびフッ素化酸界面活性剤のエステル誘導体を含有する混合物は、蒸留され得る。形成される留出物は、エステル誘導体を含有する。留出物中に十分な量の水が存在すれば、エステル誘導体は、一般に、留出物の残りの部分から別の相として容易に分離するであろう。再生流体中にかなりの量、例えば少なくとも10重量%の水が含有されれば、留出物は通常、十分な水を含有し得る。あるいは、水が留出物に添加されて分離を引き起こしてもよい。通常、エステル誘導体は、下相を形成するであろう。従って、エステル誘導体は、留出物から容易に分離することができ、留出物の残りの部分は、蒸留されている混合物中に、再導入することができる。従って、このような再生過程は吸着剤粒子の便利な再生を可能にし、最少量の再生流体が必要とされる。
【0039】
更に、再生過程は非常に有効であり、吸着剤粒子を多数回再使用することを可能にすることが分かった。すなわち、その効率が非経済的なレベル以下に下がり、吸着剤粒子が廃棄される必要がある時点より前に、数回再生することができる。更に、この過程は、フッ素化界面活性剤を吸着剤粒子から除去することにおいて非常に効率的なので、その効率の喪失のために吸着剤粒子を廃棄しなければならないときでも、吸着剤粒子中のフッ素化界面活性剤の残存レベルは非常に低い。また、非フッ素化界面活性剤を廃水に添加するにもかかわらず、そこに含有されるいくらかのフルオロポリマー粒子が吸着剤粒子にまだ吸着していることがあるが、吸着剤粒子の目詰まりを生じることはない。再生過程は、これらのフルオロポリマー粒子を完全に、あるいは少なくともかなりの程度まで吸着剤粒子から解放できることが分かった。
【0040】
当業者には認識されるように、再生過程は、再生された吸着剤粒子を生成するだけでなく、フッ素化酸界面活性剤のエステル誘導体も生成する。このエステル誘導体は、当業者には知られているようにエステル誘導体を加水分解することによって転化されて、対応のフッ素化酸界面活性剤またはその塩に戻ることができる。こうして得られたフッ素化酸界面活性剤またはその塩は、次にフッ素化モノマーの重合において再使用され、フルオロポリマーを製造することができる。
【0041】
本発明は、以下の実施例を参照してこれから更に説明されるが、本発明をそれに限定することは意図されない。
【実施例】
【0042】
実施例1
2つのガラスカラム(直径4.5cm)に乾燥活性炭(粒径1.5mm、メルク(Merck)から入手可能)を装填した。第1のカラムは201gの活性炭を含有し、第2のカラムは205gの活性炭を含有した。各ベッドボリュームは約400mlであった。カラムを接続し、全ての気体が排除されるまで水をポンプで通した。製造工場のいくつかのフルオロポリマー乳化重合から得られた廃水をろ過して、目に見える固形分を除去した。フルオロポリマーの乳化した微粒子および210〜240ppmのペルフルオロオクタン酸アンモニウム(APFOA)を含有するろ過した廃水に、30ppmのジェナポール(Genapol)TMX080(クラリアント社(Clariant GmbH)から入手可能な非イオン性界面活性剤)を添加した。この混合物に、底部から上部までカラムを通過させた。流速は、はじめは1時間あたり1ベッドボリュームに調整したが、4.8gのAPFOAを負荷した後、1時間あたり2.5ベッドボリュームまで上昇させた。負荷過程の間、活性炭床の目詰まりは見られなかった。第1のカラムの後にペルフルオロオクタン酸(PFOA)が通り抜けたときに(PFOAレベル45ppm)、68.3gのAPFOが炭素床に吸着していた。カラムを5リットルの脱イオン水で洗浄し、第1のカラムの内容物を、メカニカルスターラー、温度計、蒸気ラインおよびコンデンサーを備えたフラスコからなる蒸留装置に移した。メタノール、水および硫酸(60/20/20比)からなる再生液を添加した。混合物を70〜85℃の温度で加熱し、蒸留させた。凝縮した蒸気が2つの液相に分離した。ペルフルオロオクタン酸メチルからなる下相を除去し、上相を蒸留フラスコに戻した。下相の増大が観察されなくなったらすぐに蒸留を終了した。全部で68.1gのペルフルオロオクタン酸メチルが回収された(100%)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルオロポリマー粒子を含む廃水からフッ素化界面活性剤を除去する方法であって、(i)非フッ素化界面活性剤を前記廃水に添加することと、(ii)こうして得られた廃水を吸着剤粒子と接触させて、前記フッ素化界面活性剤の少なくとも一部を前記吸着剤粒子に吸着させることと、(iii)前記廃水と前記吸着剤粒子とを分離することとを含む方法。
【請求項2】
前記吸着剤粒子が、カーボンブラックを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記非フッ素化界面活性剤が、非イオン性界面活性剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記フッ素化界面活性剤が、フッ素化酸またはその塩を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記フッ素化界面活性剤が、ペルフルオロ脂肪族酸またはその塩を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記非フッ素化界面活性剤の量が、廃水中のフルオロポリマー粒子の量を基準にして、1〜1000ppmである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
更に、前記吸着剤粒子を再生することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記フッ素化界面活性剤がペルフルオロ脂肪族酸またはその塩を含み、前記再生が、吸着剤粒子をアルコールおよび酸と混合し、こうして得られた混合物を加熱して、前記ペルフルオロ脂肪族酸またはその塩と前記アルコールとのエステル化を引き起こし、前記ペルフルオロ脂肪族酸のエステル誘導体を生成することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
更に、前記混合物を蒸留し、それにより前記エステル誘導体を含有する留出物を形成することと、前記エステル誘導体を前記留出物から分離し、それにより前記ペルフルオロ脂肪族酸の前記エステル誘導体と、前記留出物の残りの部分とを生成することとを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記留出物の残りの部分が、前記混合物に再導入される、請求項9に記載の方法。

【公表番号】特表2007−520350(P2007−520350A)
【公表日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−552123(P2006−552123)
【出願日】平成17年1月12日(2005.1.12)
【国際出願番号】PCT/US2005/001030
【国際公開番号】WO2005/082785
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】