説明

廃水の処理方法

【課題】難分解性廃水に適した新たな生物学的な廃水処理方法を提供する。
【解決手段】Bacillus-subtilus KS-3、 Bacillus-amyloliquefaciens KS-4、Bacillus-agaradhaerens KS-5、 Paenibacillus-lentimorbus KS-6、Bacillus-Laevolacticus KS-7、 Leuconostoc paramesenteroides KS-9、Kurthia-sibirica KS-13 及び Sphingobacterium-spiritivorum-GC subgroup B (Flavobacterium) KS-18からなる群から選択される1種又は2種以上の微生物Bを用いて廃水を処理する工程、を含む、廃水処理方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は廃水の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環境に悪影響のある産業排水は、河川、湖、海岸、湾などを汚染し、その水質を低下させる原因となっている。例えば、皮革製造業において排出される廃水は、皮革に由来する有機化合物と化学薬品等が混在する難分解性廃水であることが知られており、全世界的に物理的化学的な廃水処理が主としてなされ、生物学的処理が補足的に行われているのが現状である(特許文献1)。
【0003】
皮革製造業においては、廃水処理時に多量のスラッジも同時に発生するため、これらスラッジの処理にも大きなコストが発生する。また、皮革製造業の多くの事業場は、小規模でかつ上水源地域に密集していることが多いため、水質汚染の影響が大きく、廃水処理の要請は大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−227599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、皮革製造廃水などの難分解性廃水は、環境上望ましい程度にまで全窒素含有量を低減し、あるいは効率的にスラッジを低減することは、現状において極めて困難であった。また、生物学的処理のさらなる活用も試みられてはいる。しかし、皮革製造廃水は、生物学的処理には不適切な液性であるため、処理量を制限したり、中和、凝集沈殿などの多工程の前処理を施した後に、生物学的処理を実施せざるを得なかった。また、こうした前処理工程は、多量のスラッジの原因となっていた。加えて、従来の皮革廃水処理においては、臭気も伴っていた。
【0006】
以上のことから、難分解性廃水については、窒素量の低減、スラッジの低減及び臭気の発生抑制を実現しつつかつ効率的な廃水処理が要請されている。
【0007】
そこで、本発明は、難分解性廃水に適した新たな生物学的な廃水処理方法及び処理製剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を実現するために種々の検討したところ、難分解性廃水に好適な微生物群を見出し、これらのうち1種又は2種以上の微生物を用いることにより、難分解性廃水を効果的に廃水処理できることを見出し、本発明を完成した。本明細書の開示によれば、以下の手段が提供される。
【0009】
本明細書の開示によれば、Bacillus-subtilus KS-3、 Bacillus-amyloliquefaciens KS-4、 Bacillus-agaradhaerens KS-5、Paenibacillus-lentimorbus KS-6、 Bacillus-Laevolacticus KS-7、 Leuconostoc paramesenteroides KS-9、 Kurthia-sibirica KS-13 及び Sphingobacterium-spiritivorum-GC subgroup B (Flavobacterium) KS-18からなる群から選択される1種又は2種以上の微生物を用いて廃水を処理する工程、を含む、廃水処理方法が提供される。
【0010】
前記廃水処理方法においては、前記廃水は、皮革製造廃水としてもよい。また、前記微生物は液状製剤として供給されるものであってもよい。さらに、前記微生物は、担体に固定された形態で供給されるものであってもよい。
【0011】
本明細書の開示によれば、Bacillus-subtilus KS-3、 Bacillus-amyloliquefaciens KS-4、Bacillus-agaradhaerens KS-5、 Paenibacillus-lentimorbus KS-6、 Bacillus-Laevolacticus KS-7、 Leuconostoc paramesenteroides KS-9、Kurthia-sibirica KS-13 及びSphingobacterium-spiritivorum-GC subgroup B (Flavobacterium) KS-18からなる群から選択される1種又は2種以上の微生物を含有する、廃水処理剤が提供される。
【0012】
前記廃水処理剤は、皮革製造廃水処理用とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は本発明の皮革廃水処理工程のための廃水処理システムの構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書の開示は、廃水処理に関し、なかでも難分解性廃水の処理に関する。本明細書の開示によれば、従来に比較して、スラッジや臭気の発生を抑制しつつ、しかも効率的に窒素化合物等の有害成分を低濃度化することができる。このため、各種水質汚染を効率的にかつ確実に抑制できる。また、本明細書に開示の廃水処理方法によれば、物理・化学的な前処理の実施を回避又は抑制することができる。さらに、スラッジ発生量が低減されることで、スラッジ処理コストも低減できる。さらにまた、臭気発生を抑制されるため、臭気処理コストを低減でき、労働環境及び大気汚染への悪影響が一層低減される。また、本明細書に開示によれば、最終的に皮革又はその加工品の製造コストも低減できる。
【0015】
以下、本発明の最良の実施形態につき詳細に説明する。
【0016】
(廃水処理方法)
本明細書に開示の廃水処理方法は、Bacillus-subtilus KS-3、Bacillus-amyloliquefaciens KS-4、Bacillus-agaradhaerens KS-5、Paenibacillus-lentimorbus KS-6、Bacillus-Laevolacticus KS-7、Leuconostoc paramesenteroides KS-9、Kurthia-sibirica KS-13 及びSphingobacterium-spiritivorum-GC subgroup B (Flavobacterium) KS-18からなる群から選択される1種又は2種以上の微生物を用いて廃水を処理する工程を備えることができる。
【0017】
(廃水)
本明細書に開示の廃水処理方法が処理対象とする廃水は、特に限定されない。産業上発生する産業廃水であってもよいし、家庭等において発生する廃水であってもよい。好ましくは、産業廃水であり、より好ましくは難分解性の廃水である。難分解性の廃水とは、難分解性物質を含有する廃水である。難分解性物質とは、自然界において分解されにくい物質を意味している。典型的には、化学的酸素要求量(COD)及び/又はや、主として有機化合物である。難分解性物質としては、例えば、多環芳香族炭化水素類やニトロ化された多環芳香族炭化水素類が挙げられる。また、難分解性廃水としては、皮革の処理、製造に関連する施設から排出される廃水(以下、本明細書において皮革製造廃水という。)が挙げられる。
【0018】
(微生物)
本明細書において用いる微生物は、例えば、以下のようにして分離される。土壌試料(大韓民国、忠北提川の山林の腐熟土)を、60℃で30分間加熱処理した後、臼できれいに磨って準備する。この土壌試料1gを採取し、0.85%NaCl水溶液9mlに懸濁した後、同水溶液で10ないし10−7に希釈した。それぞれの希釈懸濁液100mlを、TSA、BL、BBL培地(以上、DIFCO社)に塗抹して28℃で培養し、嫌気性菌株を同定するためにANAEROGENTM COMPACT(OXOID製品)を使って培養した。培養された菌株はコロニー形態が違うものなどを選抜してTSA培地で少なくとも3回以上継代培養して単一コロニーで分離した。その後、分離した菌株を、液体培養してゲノムDNAを精製して16S rRNAのプライマーを利用して(配列番号9、10)、PCRにて増幅した。さらに、増幅された部分を鋳型として16SrRNAのユニバーサルプライマーである519rプライマー(配列番号12)と785rプライマー(配列番号11)を利用してPCR法により増幅産物を得て、その塩基配列を決定した。なお、16SrRNAで菌を同定するのに使われたプライマーセットは、“Nucleic acid techniques in bacterial systematics(John Wiley and Songs、 England)”と “nucleic acid research(2000) 28(1):173-174を参考して決定した。
【0019】
16sRNA
27mf:5'-AGAGTTTGATCMTGGCTCAG-3’
1492r:5'-GGYTACCTTGTTACGACTT-3’
785r:5'-CTACCAGGGTATCTAATC-3'
519r:5'- GWATTACCGCGGCKGCTG3'
【0020】
決定した塩基配列を、NCBIのデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)で調査し、種を同定した。分離された本明細書に開示される7種の微生物はKorea Research Institute of Bioscience and Biotechnology(KRIBB)(#52, Oun-dong, Yusong-ku, Taejon 305-333, Republic of Korea)を寄託機関として、それぞれ以下の番号を受託番号として、2007年9月4日付けでそれぞれ寄託されている。廃水処理に用いられる微生物はこれらのうち1種でもよいが2種以上を適宜組み合わせて用いることもできる。より好ましくは、3種類以上であり、さらに好ましくは4種類以上であり、一層好ましくは5種類以上である。もっとも好ましくは7種類(全種類)を用いる。なお、Bacillus-subtilus KS-3は、その16SrRNAの塩基配列(配列番号1)に基づいて特定されており、当該KS-3株を用いることが好ましく、受託された上記7種類の菌の1種又は2種以上、好ましくは3種類以上、さらに好ましくは4種類以上であり、一層好ましくは5種類以上、もっとも好ましくは7種類と組み合わせて用いられることが好ましい。
微生物名 受託番号
(1)Bacillus-amyloliquefaciens KS-4 KCTC 11186BP
(2)Bacillus-agaradhaerens KS-5 KCTC 11187BP
(3)Paenibacillus-lentimorbus KS-6 KCTC 11188BP
(4)Bacillus-Laevolacticus KS-7 KCTC 11189BP
(5)Leuconostoc paramesenteroides KS-9 KCTC 111890P
(6)Kurthia-sibirica KS-13 KCTC 11191BP
(7)Sphingobacterium-spiritivorum-GC
subgroup B(Flavobacterium) KS-18 KCTC 11192BP
【0021】
(廃水に対する微生物の供給形態)
本明細書に開示される廃水処理方法は、本明細書に開示される微生物の1種又は2種以上を廃水あるいは前処理後の廃水の少なくとも一部に接触させる工程を含んでいればよく、その具体的実施形態は特に限定されない。廃水処理にあたって、微生物は、直接廃水に対して供給されるほか、例えば、以下の形態で廃水に対して供給される。
【0022】
(液状製剤)
本明細書に開示の廃水処理方法では、本明細書に開示の微生物の1種又は2種以上を含有する液状製剤を用いることができる。液状製剤は、本明細書に開示の微生物を1種又は2種以上を液状媒体中に含むことができる。液状製剤に含有される微生物量としては特に限定されない。液状媒体としては、好ましくは水である。
【0023】
液状製剤は、好ましくは、微生物と微生物以外の成分として微生物の生育等に有効な培養原料を含有して微生物を増殖させて得られる液状体である。かかる培養原料としては、例えば、各種の炭素源、各種の窒素源、各種のミネラル類、各種のビタミン類等が挙げられる。適当な微生物量及び活性の微生物を含有する液状製剤は、例えば、以下の方法で製造される。すなわち、微生物を全体の0.001質量部以上0.02質量部以下とし、米ぬかを2質量部以上5質量部以下、糖蜜を2質量部以上4質量部以下、及び黄砂糖を2質量部以上4質量部以下に対して、水を混合して100質量部とした懸濁液を調製後、20℃以上25℃以下で、2時間以上6時間以下の間隔で5以上10m3/hで空気を1時間以上3時間以下で曝気する工程を一日2回以上6回以下程度繰り返し実施して15日間以上21日間培養することにより、製造することができる。
【0024】
なお、液状製剤は、上記例示される形態に限定されるものでなく、当業者であれば、適宜変更を加えた形態で実施することができる。
【0025】
(固形製剤)
本明細書に開示の廃水処理方法では、本明細書に開示の微生物の1種又は2種以上を含有する固形製剤を用いることもできる。固形製剤は、本明細書に開示の微生物を1種又は2種以上をそのままあるいは固体成分とともに含むことができる。固形製剤に含有される微生物量としては特に限定されない。
【0026】
固形製剤は、本明細書に開示の微生物を水分量が抑制された、典型的には乾燥した形態で含有することができる。固形製剤は、好ましくは、微生物と微生物以外の成分として微生物の生育等に有効な培養原料を含有して微生物を増殖させて得られる発酵液に由来する固形物である。なお、本明細書において固形製剤及び固形物は、ペレットやタブレットなどの三次元形態を採るものに限定するものではなく、不定形の粉末状製剤や粒状製剤を含むものである。
【0027】
適当な微生物量及び活性の微生物を含有する固形製剤は、例えば、以下の方法で製造される。固形製剤の好ましい製造方法は、接種工程、培養工程、乾燥工程を備えることができる。さらに、成形工程を備えることができる。
【0028】
(固形製剤製造のための接種工程)
接種工程は、本明細書に開示の液状製剤など本明細書に開示の微生物と培養原料との混合原料に対して、上記微生物の種菌を接種する工程とすることができる。混合原料は、特に限定しないが、例えば、液状製剤を70質量部以上80質量部以下と培養原料20質量部以上30質量部以下を混合して調製することができる。
【0029】
固形製剤製造に用いる培養原料としては、入手容易性やコストの観点から、好ましくは、農林産物及びその副産物から適宜選択される。かかる培養原料は、適宜水分が調整されたものであることが好ましくい。培養原料としては、例えば、米ぬか、廃糖蜜、胡麻粕、大豆粕、小麦ぬか、とうもろこし茎(芯)、残飯等が挙げられる。これは単独で用いられてもよいが、複数種類を組み合わせて用いるのが好ましい。培養原料は、100メッシュサイズ以下程度に粉砕して粉末状であることが好ましい。
【0030】
混合原料は、例えば、粉砕された培養原料を直化培養機に入れた後、微生物醗酵に適切な環境を維持するために液状製剤で適宜水分量等を調節することによって得られる。
【0031】
本明細書に開示の微生物の種菌としては、バチルス属及び/又は乳酸菌を含む種菌を接種することができる。上記の混合種菌は、季節的、環境的多様性が存在する土壌の微生物を、人工的に選別することなくそのまま採取して天然物培地上で6ヶ月間培養する。この培養期間においては、特に条件をコントロールしないことで環境適応可能であって有害性の低いか又は有しない微生物群を得ることができる。こうして得た微生物群を乾燥して粉末状としてもよい。
【0032】
本明細書に開示の固形製剤の製造の際には、上記の混合種菌を混合原料に対して、0.01質量%以上0.1質量%以下の範囲で接種することが好ましい。
【0033】
(培養工程)
培養工程は、混合原料と混合種菌の混合物を培養する工程とすることができる。培養条件は、特に限定しないで、用いた液状製剤、培養原料及び種菌の種類等に応じて適宜決定することができる。例えば、種菌接種後の混合原料を80℃以上85℃以下の温度で、2時間以上8時間以下程度培養する高温培養ステップを含むことが好ましい。かかる高温で培養することで、本明細書に開示の微生物の生存及び増殖を確保しつつ、不必要な微生物の増殖を効果的に抑制することができる。80℃未満であると、不必要な微生物の増殖を抑制することが困難となり、85℃を超えると、本明細書に開示の微生物の活性度が低下する傾向が生じる。通常の微生物培養は、20℃以上40℃以下程度で成立することを参酌すると、本明細書に開示の固形製剤は、かなりの高温の培養条件で製造される。
【0034】
高温での培養ステップにおいては、攪拌を適宜行うことが好ましい。例えば、30rpm/分以上80rpm/分以下で攪拌することが好ましい。こうした範囲であると、混合物を均一に混合し培養することができる。
【0035】
(乾燥工程)
本明細書に開示の固形製剤の製造方法は、必要に応じて乾燥工程を備えることができる。培養工程における高温培養ステップの実施により、培養工程実施後の培養物は、ある程度水分が蒸発した状態となっている。保存や使用に差し支えない場合には、培養工程を実施後の培養物をそのまま固形製剤とすることができる。また、水分を一層蒸発させることが好ましい場合には、85℃以下での乾燥工程を実施することが好ましい。乾燥工程で用いられる乾燥方法は、特に限定されないで公知の乾燥手段を適宜用いることができる。例えば、85℃以下での加熱を伴うものであってもよいし、また、凍結乾燥等であってもよい。好ましくは、50℃以上80℃以下で乾燥工程を実施する。
【0036】
接種工程及び培養工程を実施して得られる固形製剤又はさらに乾燥工程を実施して得られる固形製剤は、粉末状や粒状等の形態を備えることができる。
【0037】
(成形工程)
本明細書に開示の固形製剤をペレットやタブレット等の成形体として取得する場合には、成形工程を備えることができる。成形工程を実施するにあたっては、培養物を常温程度にまで予め冷却しておくことが好ましい。また、成形工程に先立って、培養物の成形性を調節するために適宜水分調整がなされていてもよい。すなわち、必要に応じて成形工程に先立って乾燥や水分供給がなされてもよい。水分供給にあたっては、水や緩衝液等を用いることもできるが、好ましくは、本明細書に開示の液状製剤を用いる。液状製剤を用いる場合、培養物100質量部に対して10質量部以上15質量部以下程度の液状製剤を混合することが好ましい。
【0038】
成形方法は特に限定されない。いわゆるタブレット成形機でタブレット状に成形することもできるし、チューブ状に成形した後、長さ方向に切断して柱状ペレット等としてもよい。
【0039】
(微生物固定化製剤)
本明細書に開示の廃水処理方法では、本明細書に開示の微生物の1種又は2種以上を適当な固相担体に対して微生物を固定化した固定化製剤(微生物固定化製剤)を用いることもできる。微生物固定化製剤は、微生物の活性を長期に確保できる点において好ましい。すなわち、微生物固定化製剤を利用すれば微生物の活性が高くなり、分解期間が短縮される。
【0040】
微生物を固定化するための固相担体としては、特に限定されない。微生物を固定化するのに使用される公知の固相担体を、微生物の固定化手法等に応じて適宜選択すて用いることができる。固相担体としては、微生物の效果的な担持と言う点で表面に微生物が強く吸い付くこと、微生物を微小空隙内に侵入させることで保管維持力を高めることができることのような多孔性の物、マイクロ粒子が凝集して実質的に吸着あるいは吸藏表面を増大させた、等の特徴を備えていることが望ましい。
【0041】
固相担体としては、例えば、セルロース、デキストラン、アガロースのような多糖類;コラーゲン、ゼラチン、アルブミンなどの不活化タンパク質;イオン交換樹脂、ポリビニールクロライドのような合成高分子化合物;セラミックスや多孔性硝子等の無機物;寒天、アルギン酸、カラギナンなどの天然炭水化物;またはセルロースアセテート、ポーリアクリルアミド、ポリビニールアルコール、エポッキシ樹脂、光硬化性樹脂、ポリエステル、ポリスチレン、ポリウレタンなど包括担体として得ることができる高分子化合物などをあげることができる。また、リグニン、澱粉、キチン、キトサン、濾過紙、木片などであってもよい。
【0042】
望ましい固相担体の三次元形態としては、球状、立方体状、直方体状、円筒状、チューブ状、柱状等である。なかでも、製造しすい球状や表面積を増大させやすい直方体状が好ましい。
【0043】
微生物固定化製剤における微生物の固相担体への固定化形態は、固相担体の表面への単純な吸着による結合固定化による担持であってもゲル状体のゲル格子内に内包させる包括固定化による担持であってもよいが、好ましくは、包括固定化あるいはマイクロカプセルの内部等に固定化される形態である。包括固定化法の特徴は菌体を高濃度で維持することができるので、処理効率を高めることができ、増殖が遅れた菌を固定化することができる。またpH、温度などの条件変化に対する耐性が大きくて、高負荷状態にも耐えることもできる。
【0044】
(微生物固定化製剤の製造)
微生物を固相担体に対して固定化する各種方法(結合固定化、包括固定化、マイクロカプセル化等)は、当業者においては周知であり、当業者であれば適宜手法を選択して所望の微生物固定化製剤を得ることができる。微生物を包括固定化して添加する形態は微生物の活動を安定また活性化する点において好ましい。
【0045】
微生物固定化製剤の製造方法としては、従来公知の任意の方法を利用することができる。たとえば微生物と担体物質(またその前駆体)の混合溶液を不溶解性の液体内に積荷して液体内に液滴を固化させて微生物の担持用担体粒子の分散物を作る方法、微生物と担体物質(またはその前駆体)の混合溶液を低温化、ゲル化剤や固体化剤の添加などの方法で固化させた後、固化体を適当なサイズで切って微生物を担持した直方体粒子を得る方法、微生物と担体物質(またはその前駆体)の混合溶液を圧出してノズルから不溶解液体内に入れ込んで液体内で固化させて微生物の担持用担体の糸状固化物を得てこれを適当に切って円筒状粒子を作る方法、またこの場合の圧出成台を環状にして円環状(チューブ状)の微生物の担持用担体粒子を得る方法が挙げられる。
【0046】
包括固定化法としては、固相担体内で微生物の活性を維持しつつ微生物を内包することができる方法であれば特に限定されない。固相担体は、長期間使用できる程度に物理的強度が高いことが好ましい。包括固定化に特化した方法としては、アクリルアミド法、寒天−アクリルアミド法、PVC−硼酸法、PVA−冷凍法、光硬化性樹脂法、アクリル係合成高分子樹脂法、ポーリアクリル酸ソーダ法、アルギル酸ナトリウム法、K−カラギナン法などが挙げられる。
【0047】
また、他の包括固定化方法としては活性炭粒子に固定化する方法を挙げることができる。さらに他の包括固定化方法としては特定微生物を炭素纎維制の布地に固定化する方法が挙げられる。固相担体として利用される炭素纎維は例えば、石炭ピッチを高温に溶融放射して不融炭素化して得ることができる繊維である。好ましくは直径1μm以上30μm以下程度の炭素纎維で構成される厚さ0.3mm以上6.0mm以下程度の単位重量20g/m2以上300g/m2以下程度の炭素纎維製の織物又は編成体からなるシート状体等が挙げられる。
【0048】
なお、以上説明した本明細書に開示の微生物を含有する廃水処理用の製剤は、必要に応じて、各種添加剤、例えば鉱物(凝集制)、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、成形材料などを含むことができる。
【0049】
(微生物による廃水処理)
本明細書に開示の微生物又はその製剤を廃水に接触させることにより、廃水に含まれる成分を微生物が分解等してその廃水の水質を改善することができる。高いCOD値やBOD値を有する難分解性廃水であっても、効果的に分解できる。好ましくは、高いCOD値を有する難分解性廃水を効果的に分解できる。
【0050】
上記のように製造されることができる微生物又はその製剤の添加方法は廃水が処理される処理槽内に均一に分散することができることであればよく、その形態は特に限定されない。例えば、処理槽の廃水の中に空気を入れて排水浄化または撹拌機などによる撹拌を行いながら微生物を収納容器から手動又は自動で直接投入してもよい。また、連続して投与しても、一定時間を決めて投与しても関係はないが、廃水が流入する箇所へ合わせての投入が望ましい。連続して一定量の廃水が流入する場合は連続式、一時的に廃水が流入する場合は、回文式と同様の形式となる。
【0051】
微生物又はその製剤を供給して廃水を処理する復数処理槽全体の容量と滞留期間は廃水量によって違うが一般的には処理槽全体における廃水の滞留時間が0.2日から20日位になるように調整される。特に滞留時間が0.5日から5日位になるように調整するのが望ましい。また、廃水処理工程を構成する処理槽(好ましくは微生物又はその製剤が直接に供給される処理槽)の数には制限はないが、效率、装置費用の観点から2槽ないし3槽であることが好ましい。
【0052】
微生物又はその製剤による廃水処理はpH、DO(溶存酸素)、処理前のCOD値などを測定して管理することができる。pHは4.0以上8.5以下、望ましくは4.5以上8.0以下であり、廃水の性質によってもっと狭い管理幅が選択されることができる。DOは5.0mg/l以上15.0mg/l以下、望ましくは7.0mg/l以上13.0mg/l以下である。pHは酸またはアルカリの添加によって、DOは廃水の中に空気を入れて排水浄化量の調節によって制御することができる。
【0053】
廃水中の特定化合物の濃度測定は直接的な定量も可能だが、管理上の現実的な方法としては、濃度に対応する値にしてCODを利用するのが好ましい。CODの測定は最初廃水処理槽の入口と最終処理槽の出口双方の濃度を測定するのが望ましい。
【0054】
廃水処理槽では栄養源として微生物の生育に適当な炭素源、窒素源あるいは有機栄養源、無機塩が投入されることができる。有機栄養源としてポーリペプトン、酵母エキス、肉エキス、糖蜜などを、無機栄養源として各種燐酸塩、マグネシュム塩などが投与されてその添加量は有機栄養源は廃水量の0.001質量%以上5質量%以下、望ましくは0.01質量%以上1質量%以下であり、無機栄養源は有機栄養源の0.1質量%以上1質量%以下程度である。なお、こうした栄養源の添加量は、特に限定されるものではなく、適宜設定される。
【0055】
本明細書に開示の微生物又はその製剤を用いた廃水処理方法は、現在の廃水排出許容基準を満足した。さらに、本明細書に開示の廃水処理方法を用いる前は、毎日40〜50トンほどスラッジが発生していたところ、本明細書に開示の廃水処理方法を用いた84日間適用した結果、スラッジ発生量を84日間を通じた総量で80トンにまで減少させることができた。これは4千〜5千万ウォンの費用節減效果を持つ。海洋投機が禁止される2011年以後にはスラッジ処理費用が天文学的に発生されることと予想されるが、本明細書の開示によれば、かかる処理費用を大きく抑制できる。また、本発明による廃水処理方法によれば廃水処理施設の悪臭を減少させることができる。
【0056】
以下、本発明を、具体例を挙げて説明する。しかし、これらは本発明をより詳細に説明するためのものであって、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0057】
<実験例1> 複合微生物菌株の培養
微生物が含有された土壌試料(大韓民国、忠北提川の山林の腐熟土)を60℃で30分間熱処理した後、臼できれいに磨って準備しておいた。その土壌試料1gを採取して、0.85%NaCl水溶液9mlに懸濁した後、10ないし10−7で希釈した。それぞれの希釈懸濁液100mlをTSA、BL、BBL培地(DIFCO社)に塗抹して、28℃で培養して土壌微生物の複合種菌を培養した。上記の土壌微生物混合種菌を分離同定した結果、バチルスの中の菌株または乳酸菌であるBacillus subtilis、 Bacillus sonorensis、 Bacillus sp. TUT1206、 Bacillus sp. Q-12、 Bacillus thermoamylovorans、 Leuconostoc paramesenteroides及びPediococcus pentosaceis strain LM2632などで構成されていることが分かった。
【0058】
<実験例2>微生物製剤の製造
上記のように培養された土壌微生物種菌0.01kg、米ぬか4kg、糖蜜2kg及び黄砂糖4kgを飲用水基準に相応しい水と混合して重さが100kgになるように混合した後、20℃ないし25℃を維持して4時間間隔で10m3/hの空気を2時間の間バッキする過程を一日4回繰り返して遂行して21日間培養して複合微生物液剤を製造した。上記の複合微生物液剤は総菌数4.3x10cfu/gであった。
【0059】
これとは別に、前もって粉碎した65kgの米ぬか、35kgの農産物の副産物(米ぬか、胡麻粕、大豆粕、小麦ぬか、とうもろこし茎(芯)及び残飯など日々入手できるものを適宜混合した。)を混合機能がある培養機に入れて30分間混合した。混合した原料に上記の複合微生物液剤200kgを入れて水分濃度70質量%で調節した後、上記の土壌微生物複合種菌を培養原料の全体重量の0.01質量%で接種した。接種された培養原料を外気温度300℃、培養機の内部温度80℃ないし85℃で、30ないし80rpm/minで撹拌しながら超高温培養を4時間継続した。
【0060】
<実験例3>微生物の同定
上記のように製造した微生物製剤の中でコロニー形態が違うものなどを選抜してTSA培地で少なくとも3回以上継代培養して単一コロニーで分離した後、分離した菌株は液体培養してゲノムDNAを精製して16S rRNAのプライマー(配列番号9,10)を利用してPCR法にて増幅した。さらに得られた増幅産物を鋳型にして、16S rRNAのユニバーサルプライマー519r(配列番号12)と785r(配列番号11)を用いて、その塩基配列を決定した。その結果物をNCBIのDBで調査して種を同定した。なお、16S rRNAで菌を同定するのに使われたプライマーセットは “Nucleic acid techniques in bacterial systematics(John Wiley and Sons、 England)”と “nucleic acid research(2000) 28(1):173-174を参考した。また、上記の16s rRNAの塩基配列の決定以外にGC−MIDI分析、BIOLOG分析を行って菌種を同定をした。
【0061】
上記の16s rRNAの塩基配列の解析結果と、GC−MIDIの結果が相異なっている場合にはGC−MIDIの結果に従う方向に同定した。表1は上記の16s rRNAの塩基配列の解析結果とGC−MIDI及びBiolog分析結果を通じて確認された本発明の微生物製剤に含まれた新規した菌株に対する同定結果を示す。
【0062】
【表1】

【0063】
表1に示すように、取得した微生物は、植物性病源菌に対して拮抗作用を持つ合計8種の新規な菌株を含んでいた。表1に示す各微生物の16s rRNAをコードするDNAの塩基配列を配列番号1〜8にそれぞれ示す。
【0064】
<実験例4>粉末状の微生物製剤の製造
上記の実験例2で製造した液状の微生物製剤を室温(20℃ないし25℃)に冷却した後熱風乾燥(60℃)の過程を経て水分含量12質量%の微生物製剤92kgを製造した。
【0065】
<実験例5>皮革製造廃水への適用
図1に示す廃水処理施設に本発明の実施例による微生物製剤を適用した。1トンタンクに種菌150kgと上記の粉末状の微生物製剤10kg及び糖蜜20リットルを入れて3時間撹拌した。撹拌した内容物を常温で24時間熟成させた後熟成された内容物1トンを49トンの水で希釈して100トンタンクに投入した。100トンタンクの安全在庫(safety inventory)が50トンである時、上記の希釈液50トンを入れて使った。100トンタンクに入った微生物の液状製剤を1日6トンずつ流量調節槽、バッキ槽、醗酵合成槽に1日6トンずつ投入した。また、1日廃水流入量は7、000トンとした。一切の他の化学的処理過程は遂行しなかった。このような処理を4ヶ月間継続した。結果を表2に示す。
【0066】
上記処理を実施したところ、スラッジはほとんど発生しなかった。また、悪臭が減少した。さらに、表2に示すように、BOD、COD及びT−N(全窒素量)などの測定値で確認することができるように放流水の水質が画期的に改善された。また、表2においては、処理月数が長くなるにつれ、明らかに汚染物質の数値が低下している。これは、処理の継続により本発明の微生物の増殖、発酵状態が安定化して、汚染物質が、微生物の増殖や発酵のための栄養源として利用されるようになってきているからである。
【0067】
【表2】

【0068】
以上、実施例を示して本明細書の開示を説明したが、該当の技術分野の熟練された当業者なら下記の特許請求範囲に記載した本発明の思想及び領域から脱しない範囲内で本発明を多様に修正及び変形させる可能性があることを理解することができる。
【配列表フリーテキスト】
【0069】
配列番号9〜12:プライマー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Bacillus-subtilus KS-3、 Bacillus-amyloliquefaciens KS-4(受託番号KCTC 11186BP)、Bacillus-agaradhaerens KS-5(受託番号KCTC 11187BP)、 Paenibacillus-lentimorbus KS-6(受託番号KCTC 11188BP)、Bacillus-Laevolacticus KS-7(受託番号KCTC 11189BP)、Leuconostoc paramesenteroides KS-9(受託番号KCTC 111890P)、Kurthia-sibirica KS-13 (受託番号KCTC 11191BP)及び Sphingobacterium-spiritivorum-GC subgroup B (Flavobacterium) KS-18(受託番号KCTC 11192BP)からなる群から選択される1種又は2種以上の微生物Bを用いて廃水を処理する工程、を含む、廃水処理方法。
【請求項2】
前記廃水は、皮革製造廃水である、請求項1に記載の廃水処理方法。
【請求項3】
前記微生物は液状製剤として供給される、請求項1又は2に記載の廃水処理方法。
【請求項4】
前記微生物は、担体に固定された形態で供給される、請求項1〜3のいずれかに記載の廃水処理方法。
【請求項5】
Bacillus-subtilus KS-3、 Bacillus-amyloliquefaciens KS-4(受託番号KCTC 11186BP)、Bacillus-agaradhaerens KS-5(受託番号KCTC 11187BP)、 Paenibacillus-lentimorbus KS-6(受託番号KCTC 11188BP)、Bacillus-Laevolacticus KS-7(受託番号KCTC 11189BP)、Leuconostoc paramesenteroides KS-9(受託番号KCTC 111890P)、Kurthia-sibirica KS-13 (受託番号KCTC 11191BP)及び Sphingobacterium-spiritivorum-GC subgroup B (Flavobacterium) KS-18(受託番号KCTC 11192BP)からなる群から選択される1種又は2種以上の微生物を含有する、廃水処理剤。
【請求項6】
皮革製造廃水処理用である、請求項5に記載の廃水処理剤。

【図1】
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【公開番号】特開2010−158649(P2010−158649A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−4013(P2009−4013)
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【出願人】(509012061)
【Fターム(参考)】